説明

照明装置

【課題】任意形状の領域に照明光を照射して照明による空間演出を行うことができ、照明光の照射領域を簡単に補正することができる照明装置を提供する。
【解決手段】描画データ生成手段10は、任意形状の領域に照明光を照射するための照射光データを生成する照射光データ生成手段11と、投影手段20に供給される描画データに基づいて照明光の照射状態を示す描画像を表示する照明光モニタ手段12と、照明光モニタ手段12に表示されている描画像を視認しつつ照明光の照射領域を任意形状に補正するための照射領域補正手段13と、照射光データ生成手段11から供給される照射光データの照射領域を照射領域補正手段13からの補正指示に基づいて補正する照射光補正手段14と、照射光補正手段14により補正された照射光データに基づいて描画データを生成し投影手段20に供給する照射光描画手段15と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明による空間演出を行うための照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
店舗や展示会場、ホテルのロビーなどにおいては、陳列商品や展示物等に照明光を当ててそれらの陳列商品や展示物等に対する来場者の注目度を向上させる演出が多くなされる。この種の照明による空間演出に関連する従来の技術として、下記特許文献1、2に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、対象物の像を撮像してその対象物の位置及び範囲(輪郭形状)を演算により自動検出し、その検出した位置及び範囲に照明光を照射するように構成した照明装置が記載されている。
【0004】
特許文献2には、対象物の像を撮像してそれに色付け処理を施し、その像を対象物の外形及び寸法と一致させて投影するように構成した照明装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2008−71662号公報(段落0039、段落0042、図8)
【特許文献2】特表2008−71662号公報(第4頁第14行〜第18行、第6頁第26行〜第7頁第5行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1、2に記載の従来技術によれば、対象物ごとに照射領域や色を調整した照明による空間演出を行うことができる。
しかし、特許文献1の従来技術では、対象物の像を撮像してその対象物の位置及び範囲を自動検出して照明光の照射位置及び範囲を決定しているため、決定した位置及び範囲と実際の対象物の位置及び範囲とが一致しなかった場合あるいは一致しなくなった場合に、照明光の照射位置及び範囲を決定するための処理を初めからやり直す必要がある。また、特許文献2の従来技術においては、色付けの修正はできるようにしているが、投影光の照射領域を対象物の領域と一致させるように補正することについては何ら考慮されていない。このため、特許文献1、2記載の従来技術では、陳列商品や展示物等、照明光を照射する対象物の入れ替えや配置変えがなされた場合に、照明光の照射領域を簡単に補正することができない。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、3次元空間内の任意形状の領域に照明光を照射して照明による空間演出を行うことができ、照明光を照射する対象物の入れ替えや配置変えがなされた場合など、照明光の照射領域の補正を要する場合に、照明光の照射領域を簡単に補正することができる照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の照明装置は、描画データ生成手段と、前記描画データ生成手段から供給された描画データに基づいて3次元空間内の任意形状の領域に照明光を照射する投影手段と、を有し、前記描画データ生成手段は、前記任意形状の領域に照明光を照射するための照射光データを生成する照射光データ生成手段と、前記投影手段に供給される描画データに基づいて照明光の照射状態を示す描画像を表示する照明光モニタ手段と、前記照明光モニタ手段に表示されている描画像を視認しつつ照明光の照射領域を任意形状に補正するための照射領域補正手段と、前記照射光データ生成手段から供給される照射光データの照射領域を前記照射領域補正手段からの補正指示に基づいて補正する照射光補正手段と、前記照射光補正手段により補正された照射光データに基づいて描画データを生成し当該描画データを前記投影手段に供給する照射光描画手段と、を有するものである。ここで「補正」の意味には、修正あるいは変更が含まれる。
【0009】
この構成によれば、描画データ生成手段から投影手段に描画データを供給することにより、投影手段により3次元空間内の任意形状の領域に照明光を照射して空間演出を行う。その際、照明光モニタ手段に表示されている描画像を視認しつつ、照射領域補正手段により照明光の照射領域を任意形状に補正することができるので、照明光を照射する対象物の入れ替えや配置変えがなされた場合に、照明光の照射領域を簡単に補正することができる。
【0010】
本発明の照明装置において、前記照射領域補正手段は、照明光の照射領域を手書き入力により任意形状に補正可能であることが望ましい。この構成によれば、照明光を照射する対象物の入れ替えや配置変えがなされた場合に、照明光の照射領域を手書き入力により簡単に補正することができる。
【0011】
本発明の照明装置において、前記投影手段は、前記描画データに基づいて3次元空間内の任意形状の複数の領域に照明光を照射可能であり、前記照射領域補正手段は、複数の領域に照明光を照射する場合、各領域毎に各々任意形状に補正可能であることが望ましい。この構成によれば、3次元空間内の任意形状の複数の領域に照明光を照射して照明演出を行うことができ、その際、照明光モニタ手段に表示されている描画像を視認しつつ、照明光の照射領域を各領域毎に各々任意形状に補正することができる。したがって、照明光を照射する対象物が複数存在し、それらの一部または全ての入れ替えや配置変えがなされた場合でも、照明光の照射領域を簡単に補正することができる。
【0012】
本発明の照明装置は、前記照明光として映像を投影する機能を有していることが望ましい。この構成によれば、3次元空間内の任意形状の領域に映像を投影して照明による演出を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の照明装置によれば、3次元空間内の任意形状の領域に照明光を照射して照明による空間演出を行うことができ、その照明光の照射領域を簡単に補正することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は本発明の照明装置の第1の実施の形態を示すブロック図である。
この照明装置1は、描画データ生成手段としてのパーソナルコンピュータ(以下、PCと記す。)10と、投影手段としてのプロジェクタ20とからなる。
【0015】
PC10には、本発明の照明装置を実現するためのアプリケーションプログラムがインストールされている。PC10は、当該アプリケーションプログラムを実行することにより、照射光データ生成手段11と、照明光モニタ手段12と、照射領域補正手段13と、照射光補正手段14と、照射光描画手段15と、を有する描画データ生成手段として機能する。
【0016】
照射光データ生成手段11は、任意形状の領域に照射する照明光を得るための照射光データを生成する。照射光データ生成手段11における照射光データの生成は、照明演出を行う3次元空間をデジタルカメラで撮影し、その画像データをPC10に取り込むことによりなされる。また、PC10にインストールされている描画ソフト(描画用アプリケーションプログラム)を使用して描画することによっても、照射光データを生成することができる。照射光データは照射光補正手段14に与えられる。
【0017】
照明光モニタ手段12には、照射光描画手段15からプロジェクタ20に供給されるものと同じ描画データが入力される。照明光モニタ手段12は、入力された描画データに基づいて照明光の照射状態を示す描画像をディスプレイに表示する。オペレータは、照明光モニタ手段12により表示される描画像によって、プロジェクタ20による照明光の照射状態を確認することができる。
【0018】
照射領域補正手段13は、照明光モニタ手段12によりディスプレイに表示された描画像を視認しつつ照明光の照射領域を任意形状に補正するための構成要素である。照射領域補正手段13は、照明光の照射領域(あるいは照射しない領域)を手書き入力により任意形状に補正できるように構成されている。この照射領域補正手段13は、例えば、スタイラスペンや指先の接触を感知して入力を行う所謂タッチパネル式の入力装置と、その入力情報に基づいて描画処理を行う描画ソフトとを用いることにより実現される。照射領域補正手段13による補正指示情報は照射光補正手段14に与えられる。
【0019】
照射光補正手段14は、照射光データ生成手段11から供給される照射光データの照射領域(あるいは照射しない領域)を照射領域補正手段13からの補正指示情報に基づいて補正する。補正された照射光データは照射光描画手段15に与えられる。
【0020】
照射光描画手段15は、照射光補正手段14からの照射光データに基づいて描画データを生成し、その描画データをプロジェクタ20に供給する。
【0021】
プロジェクタ20は、PC10から供給される描画データに基づいて3次元空間内の照射領域に指定された領域だけに照明光を照射する。
【0022】
図2は、この照明装置1による照明演出の一態様を示している。ここでは、照明演出を行う3次元空間Sとして、平坦な背景面32の前に円柱形状の物体(対象物)31が設置されている空間を例にとり、円柱形状の物体31にのみ照明光を照射して照明演出を行う場合について例示する。この例の場合、まず照明演出を行う3次元空間Sをデジタルカメラで撮影し、その画像データをPC10に取り込む。オペレータが投影開始の指示操作を行うと、取り込まれた画像データに基づいて照射光データ生成手段11にて照射光データが生成され、その照射光データが照射光補正手段14を経て照射光描画手段15に与えられる。そして、照射光描画手段15にて生成された描画データがプロジェクタ20に供給されることにより、3次元空間Sへの照明光の照射が行われる。
【0023】
照射光描画手段15にて生成された描画データは、プロジェクタ20に供給されると同時に、照明光モニタ手段12にも供給され、照明光の照射状態を示す描画像15Gがディスプレイ15Dに表示される。オペレータは、ディスプレイ15Dに表示されている描画像15Gを目視して、照明光の照射状態を確認する。そして、照明光の照射領域を補正する必要がある場合、すなわち照明光の照射領域が物体31の輪郭を外縁とする領域と一致していない場合には、ディスプレイ15Dに表示されている描画像15Gを目視しつつ、照明光の照射領域を照射領域補正手段13により手入力で補正して、照らしたい物体31だけに照明光が照射されるようにする。
【0024】
上記のように、この形態例の照明装置1によれば、ディスプレイ15Dに表示されている描画像15Gを視認しつつ、照らしたい物体31だけに照明光が照射されるように照射領域を補正できるので、照らしたい物体31だけを切り取ったかのような、すなわち暗い背景面32の前に明るく照らされた物体31の領域が存在する明暗(光と陰)による注目度の高い照明演出を実現できる。その際、照射領域(あるいは照射しない領域)を手書き入力により簡単に補正できるので、照明演出を行う3次元空間S内の明暗の領域をキャンバスに絵を描くように思いどおりに創り出すことができる。そして、照明光を照射する対象の入れ替えや配置変えがなされた場合でも、照射領域を手書き入力補正することにより簡単に対応できる。照射領域の補正に加えて、照明光の成分(3原色)を自在に制御できるように構成しておけば、照明光の色や色温度を思い通りに指定して、色と明暗とによる多彩な照明演出を実現できる。
【0025】
[第2の実施の形態]
つぎに、本発明の第2の実施の形態を説明する。第2の実施の形態の照明装置は、描画データに基づいて3次元空間内の任意形状の複数の領域に照明光を照射する機能を有している。全体的な装置構成は図1の照明装置1の構成と同じであるが、照射領域補正手段13が照明光の照射領域を各領域毎に各々任意形状に補正する機能を有している点、及び、照射光データ生成手段11が照射光データとして映像(静止映像、動画映像)データを生成する機能を有している点が第1の実施の形態と異なる。
【0026】
図3は、第2の実施の形態における照明演出の一態様を示している。ここでは、照明演出を行う3次元空間Sとして、平坦な背景面(壁面、スクリーン、等)32の前に円柱形状の大小2つの物体31A、31Bが設置されている空間を例にとり、円柱形状の大きい方の物体31Aに照明光として白色光を照射するとともに、背景面32の領域に照明光として背景映像を照射して照明演出を行う場合について例示する。すなわち、この例では、円柱形状の大小2つの物体31A、31Bのうち、大きい方の物体31Aの領域を白色光照射領域、小さい方の物体31Bの領域を照明光を照射しない領域、背景面32を映像照射領域にそれぞれ設定している。
【0027】
この例の場合、まず照明演出を行う3次元空間Sをデジタルカメラで撮影し、その画像データをPC10に取り込む。また、背景映像に使用する画像データをPC10に取り込む。オペレータが投影開始の指示操作を行うと、取り込まれた画像データに基づいて照射光データ生成手段11にて照射光データが生成され、その照射光データが照射光補正手段14を経て照射光描画手段15に与えられる。そして、照射光描画手段15にて生成された描画データがプロジェクタ20に供給されることにより、3次元空間Sへの照明光(白色光及び背景映像)の照射が行われる。
【0028】
照射光描画手段15にて生成された描画データは、プロジェクタ20に供給されると同時に、照明光モニタ手段12にも供給され、照明光の照射状態を示す描画像15Gがディスプレイ15Dに表示される。オペレータは、ディスプレイ15Dに表示されている描画像15Gを目視して、照明光の照射状態を確認する。そして、照明光の照射領域を補正する必要がある場合には、ディスプレイ15Dに表示されている描画像15Gを目視しつつ、照明光の照射領域を照射領域補正手段13により手入力で補正して、物体31の領域だけに白色光が照射され、背景面32の領域に背景映像が照射されるようにする。
【0029】
上記のように、第2の実施の形態の照明装置1によれば、3次元空間S内の任意形状の複数の領域にそれぞれ異なる照明光(上記の例では、白色光と映像)を照射して照明演出を行うことができる。その際、ディスプレイ15Dに表示されている描画像15Gを視認しつつ、照明光の照射領域(あるいは照射しない領域)を手書き入力により各領域毎に各々任意形状に補正することができる。したがって、照明光を照射する対象が複数存在し、それらの一部または全ての入れ替えや配置変えがなされた場合でも、照射領域を手書き入力補正により簡単に対応できる。照射領域の補正に加えて、照明光の成分(3原色)を自在に制御できるように構成しておけば、照明光の色や色温度を思い通りに指定して、色と明暗と映像とによる多彩で多様な趣向を凝らした照明演出を実現できる。また、照明光を照射する任意形状の領域を複数設定するとともに、各領域ごとに照明光を照射するタイミングや照明光の色、映像を変化させるように照明演出動作をプログラミングしておくことで、より高いアイキャッチ効果を期待できる。
【0030】
なお、上記の実施の形態では、描画データ生成手段として、汎用の装置であるPCを使用した例を示したが、描画データ生成専用の装置を用いて本発明の照明装置を実現してもよい。また、描画データ生成手段の機能と投影手段の機能を兼ね備えた装置として本発明の照明装置を実現することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の照明装置の第1の実施の形態を示すブロック図
【図2】第1の実施の形態の照明装置による照明演出の一態様を示す説明図
【図3】第2の実施の形態の照明装置による照明演出の一態様を示す説明図
【符号の説明】
【0032】
10 パーソナルコンピュータ(描画データ生成手段)
11 照射光データ生成手段
12 照明光モニタ手段
13 照射領域補正手段
14 照射光補正手段
15 照射光描画手段
20 プロジェクタ(投影手段)
31 物体(対象物)
31A 物体(対象物)
31B 物体(対象物)
32 背景面(対象物)
S 3次元空間
15G 描画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画データ生成手段と、
前記描画データ生成手段から供給された描画データに基づいて3次元空間内の任意形状の領域に照明光を照射する投影手段と、を有し、
前記描画データ生成手段は、
前記任意形状の領域に照明光を照射するための照射光データを生成する照射光データ生成手段と、
前記投影手段に供給される描画データに基づいて照明光の照射状態を示す描画像を表示する照明光モニタ手段と、
前記照明光モニタ手段に表示されている描画像を視認しつつ照明光の照射領域を任意形状に補正するための照射領域補正手段と、
前記照射光データ生成手段から供給される照射光データに基づく照射光の照射領域を前記照射領域補正手段からの補正指示に基づいて補正する照射光補正手段と、
前記照射光補正手段により補正された照射光データに基づいて描画データを生成し当該描画データを前記投影手段に供給する照射光描画手段と、を有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記照射領域補正手段は、照明光の照射領域を手書き入力により任意形状に補正可能である照明装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の照明装置であって、
前記投影手段は、前記描画データに基づいて3次元空間内の任意形状の複数の領域に照明光を照射可能であり、
前記照射領域補正手段は、複数の領域に照明光を照射する場合、各領域毎に各々任意形状に補正可能である、照明装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の照明装置であって、
前記照明光として映像を照射する、照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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