説明

照明装置

【課題】LED照明装置と人体検知センサーを組み合わせた際、LED照明装置が発生するノイズにより、人体検知センサーが誤検知する。
【解決手段】LEDによって構成された照明負荷と、前記照明負荷の点灯を制御する点灯制御回路部と、投光エリアに対して赤外線光を間欠投光し、投光タイミングに同期して人体からの反射光を受光することで人体の存在を検知する人体検知手段と、前記人体検知手段の出力信号に基づいて前記点灯制御回路部を制御する制御回路部とから構成され、前記制御回路部は、前記人体検知手段が赤外線光を投光する期間は前記点灯制御回路部への通電を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED照明装置に係り、特に自動吐水機能を備えた洗面化粧台に好適な、人体検知センサーに入るノイズを抑制する機能を有するLED照明装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の白熱電球や蛍光灯ランプに比べ、省エネ性や長寿命性に優れるLED照明が急速に普及している。LED照明は、半導体素子であるLEDを発光原とするため、LEDにDC電流を流すための電源部が備わっている。
【0003】
LED照明の電源部には、商用AC電源をLED用のDC電源電流に変換するスイッチング・コンバータ電源が広く用いられている。スイッチング・コンバータ電源は、商用AC電源を平滑化した直流成分を、スイッチング素子により高速にスイッチングさせ、コイルの充放電を利用してDC電流を得る方式である。スイッチング・コンバータは70%以上の変換効率を有しており省エネ性に優れるが、スイッチ素子が電流のONとOFFを繰り返すので、DC電源部の出力にはスイッチ素子の電流のONとOFFのタイミングで脈流電流が発生する。
【0004】
DC電源部に接続される脈流電流がLEDに伝わることによって、LEDの輝度が脈動を繰り返す。しかし、LED輝度に変動は生じるものの、脈動周波数は20KHz以上であり、人間の目には違和感は感じられない。
【0005】
また従来より、特許文献1に示すような手洗い用自動水栓が知られている。この自動水洗では、人体を検知して吐水動作を行うとともに、照明を点灯する技術が用いられている。この自動水栓では、感知用センサーの発光部から光が照射され、その光が人体で反射し、感知用センサーの受光部で受光して、その受光レベルが閾値以上であれば、人体を検知し、吐水動作を行うとともに、照明点灯回路により照明を点灯させる。
【0006】
特許文献1では、照明光として白熱電球が用いられている。白熱電球は多くの赤外光を発生し、同じく赤外光をセンサー信号として用いる感知用センサーの受光部に、白熱電球由来の赤外光が流入する。センサーの発光部は、このような定常的な赤外光の乱入に対応するためパルス投光を行っている。パルス投光で変調することにより、白熱電球のような定常的な赤外光の影響を無くす工夫を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平03−042291
【特許文献2】特開2005−222792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、照明として白熱電球が用いられていたが、照明としてLED照明を用いた場合、LED照明光の脈動成分が人体センサーへ流入してしまう。LED照明光の脈動成分がパルス投光のタイミングにあってしまうと、センサーが誤検知する。
【0009】
また、照明装置から人体センサーには、照明光以外にも蛍光灯ランプの高周波点灯回路から発生する輻射電磁ノイズに影響を受ける。特許文献2では、照明装置を金属ケースとし、人体センサーと高周波点灯回路を金属ケースでシールドすることにより、人体センサーに流入するノイズを低減する工夫を行っているが、赤外線センサーを使用する場合、必ず金属ケースに投光用の穴をあけなければならず、電磁シールドは完全ではない。
【0010】
LED照明の場合も蛍光灯ランプと同等であり、赤外線センサーが前記スイッチングコンバータのスイッチング素子が発生する電磁ノイズからの影響を受けてしまう。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、赤外パルス投光式センサーに流入する電磁ノイズとパルス的に脈動する赤外光の乱入による誤動作を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、LEDによって構成された照明負荷と、前記照明負荷の点灯を制御する点灯制御回路部と、投光エリアに対して赤外線光を間欠投光し、投光タイミングに同期して人体からの反射光を受光することで人体の存在を検知する人体検知手段と、前記人体検知手段の出力信号に基づいて前記点灯制御回路部を制御する制御回路部とから構成され、前記制御回路部は、前記人体検知手段が赤外線光を投光する期間は前記点灯制御回路部への通電を停止するので、LED照明負荷より発生するノイズが前記人体検知手段に入ることを防止し、人体検知手段の誤検知を防止する。
【0013】
また、請求項2記載の発明によれば、前記照明装置は洗面器に設置されており、前記人体検知手段の出力信号に基づいて洗面器に設けられた吐水手段からの吐水を制御するので、人体検出手段と前記照明装置が近距離で設置された製品での人体検知手段の誤検知を防止する。
【発明の効果】
【0014】
LEDによる照明は、LEDの点灯制御回路部がスイッチングコンバータで構成されることにより、出力電流には25KHz〜70kHzの範囲の脈動成分があり、それに応じてLEDの光の強度が脈動している。LEDの発光光と人体検知手段より投光される赤外線光のスペクトルは一部重なっており、LED照明の脈動成分は人体検知手段へ流入する。請求項1記載の発明によれば、点灯制御回路部がLEDの点灯制御回路部を制御し、人体検知手段の赤外線発光期間はLEDを発光しないよう、LEDへの通電を停止するので、人体検知手段へLED照明の脈動成分は流入することはなく、人体検出手段の誤検知を防止できる。
【0015】
また、人体検知手段の赤外線発光期間は点灯制御回路部のスイッチングコンバータを停止するので、スイッチングコンバータが発生する電磁ノイズが人体検知手段へ流入することはない。本発明によれば、をタイミングを適切に調整することにより、誤検知を防止するため、電磁ノイズが外部に漏えいするのを防ぐ、点灯制御回路部の金属シールドや、フィルタ回路は必要としない。
【0016】
なお、点灯制御回路部を停止するのは、人体検知手段が間欠投光する例えば10ms程度の短い期間であり、ちらつきが発生することはない。また、人体検出手段の検出精度を向上するため、間欠投光期間と頻度は、ちらつきを感じない範囲でさらに長くすることもできる。
【0017】
また、請求項2記載の発明によれば、特に洗面化粧台のように、人体検知手段で吐水制御を行う自動水栓とLEDを使用した照明装置が一体となった製品では特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の制御方法示す基本構成図である。
【図2】本発明を照明付き洗面化粧台に適用した場合の概略図。
【図3】本発明のスパウトの詳細図である。
【図4】本発明の光電センサーの詳細図である。
【図5】本発明の点灯制御回路部とLED照明の回路図である。
【図6】本発明のLED点灯制御回路部のタイミングチャート図である。
【図7】本発明の光電センサーの動作のタイムチャート図である。
【図8】本発明の照明用白色LEDと光電センサーの発光スペクトル図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図に基づき本発明の最良の形態を説明する。図1は本発明の制御方法示す基本構成図であり、図2は本発明を照明付き洗面化粧台に適用した場合の概略図である。図1についての説明は後述する。図2において、14は化粧台、8はLEDによって構成された照明負荷であって使用者を照らすLED照明、7はLED照明8の点灯制御回路部である。19は化粧台のボウル面、15は使用者の手、17は水栓のスパウトであり、その先端には光電センサー16がある、18は光電センサ16の検知エリア、21は水の給水バルブを内蔵する吐水制御回路部、22は給水配管、20は吐水制御回路部21とスパウト17を接続する接続管である。洗面化粧台14には、洗面台14と使用者と照らすためのLED照明8が取り付けてある。LED照明8は点灯制御回路部7によって駆動させる。使用者が洗面化粧台14の前に立ち、手15をボウル面19に差し入れた時、手15が検知エリア18に入ると、光電センサー16が手15を検出対象物として検出する。検出信号は制御回路部21に送出され、制御回路部21は、検出信号を受信すると給水バルブを開放し、給水配管22の水を接続管20へ水を導いて、水はスパウト17より吐水される。洗面化粧台14の上方に位置するLED照明8は、使用者のまわりの照明エリア13を照らす。照明エリア13と検出エリア18は一部が重なっており、LED照明8の照明光が光電センサー16に入光する。
【0020】
図3にスパウト17の詳細を示す。16は光電センサーである。光電センサー16はスパウト17の先端に取り付けられており、光電センサー16からは人体などの対象物を照らすための赤外線光23が出力される。赤外線光23は、検出対象物を照らと検知対象物で反射し、反射光24として光電センサー16に入力される。光電センサー16は赤外線光23と入射光23の相関を分析し、2者に相関があると認められれば検出対象物が存在すると認識する。
【0021】
図4は光電センサー16の詳細図である。26は対象物に検出光を照射する発光LED、27は検出対象物からの光を受光する受光LED、25は発光LED26と受光LED27の前に取り付けられたセンサー窓、28はセンサー基板である。センサー基板28は発光パルス信号を発生し、発光LED26より光が照射される。センサー窓25にはIRフィルターが取り付けられており、発光LED26からの照射光は赤外線光のみがIRフィルターを透過し、光電センサー16の外部へ出力される。外部へ出力された赤外線光は、人体などの対象物で乱反射する。一部の反射光は、センサー窓25のIRフィルターを透過し、受光LED27へ入力される。受光LED27では、赤外線光が電気的な受光信号へ変換され、センサー基板に取り込まれる。
【0022】
図5に、点灯制御回路部7とLED照明8の回路図を示す。点灯制御回路部7の回路はフライバック式コンバータ回路で構成される。点灯制御回路部7の入力にはAC電源が接続される。点灯制御回路部7ではAC電流を整流器29で整流してDC化する。DC化された電源とパルストランス32とスイッチング素子31は直列接続される。制御IC30は、スイッチング素子31をパルス駆動することにより、パルストランス32にパルス電流を発生させ、パルストランス32が充放電を繰り返す。パルストランス32の放電電流は、整流ダイオード33によって整流され、コンデンサ34に充電される。点灯制御回路部7のコンデンサ34と照明用LEDチップ35を内蔵するLED照明部8とは配線で接続される。
コンデンサ34とパルストランス32の放電電流は、照明用LEDチップ35に流れて、LEDが発光する。
【0023】
図6に、LED点灯制御回路部7のタイミングチャートを示す。スイッチング素子31の駆動パルスは、一定周期でON、OFFを繰り返す。スイッチング素子駆動の周波数は、25KHz〜70kHzの範囲の周波数が使用される。LED発光電流は、パルストランスの充放電により生じるので、スイッチング素子の駆動パルスに同期して上下動を繰り返す。LED発光電流の波形形状はランプ形状となっており、スイッチング素子がOFFの時には上昇し、ONの時には下降する。LEDの発光強度は、LED電流に応じて変化するので、LED電流が多い時は明るく光り、少ない時は暗く光る。よって、LEDの発光強度は、スイッチング素子駆動パルスに同期して強弱を繰り返し、その周波数は、スイッチング素子駆動周波数と同じく、25KHz〜70kHzの範囲となる。
【0024】
図1に基づいて、本発明における制御の基本構成について説明する。5は人体検出手段であり、例えば図2の光電センサー16である。3は赤外線発光LEDであり、例えば図4の発光LED26である。赤外線発光LED3は赤外線光2を発光し、人体1へ照射する。人体検知手段5は、赤外線発光LED3の投光電流のオン・オフを制御し、赤外線発光LED3の電流のオン・オフ周波数は、例えば40KHzとなっている。すなわち赤外線光2は、40KHzの周波数で点滅を繰り返す。人体1で反射した赤外線の反射光の一部は、受光LED4に入射し、受光LED4には、受光強度の強弱に応じた40KHzの交流電流が発生する。人体検知手段5は、発光LED3の点滅周波数と同じ40KHzを通過周波数域とするバンドパスフィルタを用いて、直流成分やノイズ除去を行い、交流信号成分だけを取り出す。取り出した交流成分は、発光LED3の発光電流との相関性を検討した上で、検波回路と積分回路で直流レベルに平滑化される。すなわち直流レベルが、あらかじめ定められた検知閾値を超えたとき、検出対象物が存在する検知信号を発生する。人体検知手段5で発生した検知信号は、例えば図2の制御回路部21などへ送られ、水の吐水制御を行う。図1の6は制御回路部であり、人体検出手段5と、LED8の点灯制御を行う点灯制御回路部7と接続されている。制御回路部6は人体検出手段5と点灯制御回路部7との同期制御を行い、互いに干渉しないように動作タイミングを図る。
【0025】
図8に、照明用白色LEDの発光スペクトルを実線で、また光電センサー16の受光感度スペクトルを点線で示す。発光スペクトル(実線)と受光感度スペクトル(点線)は波長の長い700nm〜900nm部分で重なっている。照明用白色LEDの発光は、光電センサーの受光に影響する。前述のように、照明エリア13と検出エリア18の一部は重なっており、LED照明8から発光した照明光が光電センサー16に入り込む。この時、LED照明はスイッチング素子駆動パルスに同期した、25KHz〜70kHzの範囲の周波数で強弱を繰り返し、LED照明の光の脈動成分は、光電センサーに取り込まれる。光電センサー16は、フィルターにより40KHzの周波数の交流信号を選択して取込む。なお、光電センサー16のバンドパスフィルタでは、照明用LEDの強弱の周波数と周波数帯域が重なっており、光電センサー16では照明LED光と、自らが発した発光LEDの発光パルスとのそのままでは区別がつかない。
【0026】
さて、図5に示す点灯制御回路部7の回路には、制御IC30の駆動出力を制御するフォトカップラ36が取り付けてある。フォトカップラ36の入力LEDが発光している際にはフォトカップラ36の出力トランジスタがONし、制御IC30の駆動コントロール端子を短絡する。制御IC30は、駆動コントロール端子が短絡されているときは、スイッチング素子31をパルス駆動を停止する。反対に、フォトカップラ36の入力LEDが発光していない際には、フォトカップラ36の出力トランジスタがOFFし、制御IC30の駆動コントロール端子が開放される。制御IC30は、駆動コントロール端子が開放されているときは、スイッチング素子31をパルス駆動を継続する。
【0027】
本発明の図1の制御回路部6は、図5に示す点灯制御回路部7のフォトカップラ36と接続される。図1の人体検知手段5は、発光に同期したマスク信号を制御回路部6に送出する。
すなわち、人体検知手段5がマスク信号を出している間は、フォトカップラ36をONし、制御IC30の駆動コントロールを停止させ、LED照明8の発光が止まる。
【0028】
図7に光電センサーの発光と受光、LED照明の動作のタイムチャートを示す。光電センサーは赤外線発光パルスを間欠動作させる。例えば10ms期間の赤外線発光パルス期間を1秒間に20回程度照射する。図7の未検出期間のように、人体が存在しないときは赤外線受光パルスは存在しない。検出期間では、間欠駆動され、人体に反射した赤外線発光パルスが、光電センサーに赤外線受光パルスとして取り込まれる。さらに、赤外線投光パルスを発生させている期間は、前記フォトカップラ36をONすることにより、点灯制御回路部7に接続されたLED照明8の通電が停止され、LED照明8が滅灯する。反対に、赤外線投光パルスを発生させていない時はフォトカップラ36をOFFし、LED照明8を発光させる。
【0029】
このことにより、光電センサー16が発光し、検知対象物の検出を試みている期間はLED照明の発光を停止するので、光電センサー16にLED照明の光を受光することがない。このことにより検出の品質を向上させることが出来る。 さらには、LED照明の通電が定期的にOFFするので、照明光にちらつきが起きる場合があるが、その際はちらつきが目立たなくなるような通電間隔に設定する。また、間隔を一定の周期ではなく、乱数に基づいて毎回周期をずらすことによりちらつきを目立たなくさせることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によれば、LED照明装置と赤外線投光式の人体検知手段を組み合わせた構成の製品やシステムならば、本発明と同一の手段で人体検知品質を向上させることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
1…人体
2…赤外線光
3…発光LED
4…受光LED
5…人体検知手段
6…制御回路部
7…点灯制御回路部
8…LED照明(照明負荷)
13…LED照明の配光範囲
14…洗面化粧台
15…手
16…光電センサー
17…スパウト
18…検知範囲
19…洗面ボウル
20…接続管
21…制御装置
22…給水配管
23…送信赤外線光
24…受信赤外線光
25…センサー窓
26…送信赤外線LED
27…受信フォトダイオード
28…センサー基板
29…整流器
30…制御IC
31…スイッチング素子
32…パルストランス
33…整流ダイオード
34…コンデンサ
35…照明用LEDチップ
36…フォトカップラ
37…白色LEDのスペクトルの相対強度
38…フォトダイオードとIRフィルターの合成受光感度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDによって構成された照明負荷と、前記照明負荷の点灯を制御する点灯制御回路部と、投光エリアに対して赤外線光を間欠投光し、投光タイミングに同期して人体からの反射光を受光することで人体の存在を検知する人体検知手段と、前記人体検知手段の出力信号に基づいて前記点灯制御回路部を制御する制御回路部とから構成され、前記制御回路部は、前記人体検知手段が赤外線光を投光する期間は前記点灯制御回路部への通電を停止することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記照明装置は洗面器に設置されており、前記人体検知手段の出力信号に基づいて洗面器に設けられた吐水手段からの吐水を制御することを特徴とする請求項1記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−62224(P2013−62224A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201710(P2011−201710)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】