説明

熱交換器のシール構造

【課題】 複数の熱交換器が並列された複合型熱交換器等において、それらの各種隙間を容易に閉塞することができるとともに、その耐久性の高いものの提供。
【解決手段】 フレーム7と熱交換器1のサイド材8との間もしくは、並列された熱交換器のサイド材8の間に樹脂チューブ5を配置し、その樹脂チューブ5内に発泡樹脂6を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、建設車両のごとく複数の熱交換器が並列されたものにおいて、各熱交換器等の隙間を閉塞して、冷却風がその隙間から抜出ることを防止するシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器と、それを車両に固定する支持フレームとの間、あるいは並列した複数の熱交換器の間には隙間が存在する。従来この隙間は、それに応じた長さや形状の多種のスポンジをそこに貼り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−26153号公報
【特許文献2】特開2000−352315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一例として、建設機械において、複数の熱交換器間および熱交換器と取付用フレームとの間の隙間を埋めるシール用スポンジ材は、その隙間の長さや形状に合わせて多種類を用意する必要があった。そのため、そのシール材の管理や、その取付け作業が極めて面倒である欠点があった。また、シール材は劣化しやすく、しばしば交換が必要であった。
これらのシール材は、起風ファンによって冷却風を各熱交換器に通過させる際、その隙間を閉塞して空気流を熱交換器コアにのみ流通させ、熱交換性能を高めるものである。
そこで、本発明は上記の従来型シール構造の欠点を取除くことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、熱交換器(1)とその支持フレーム(7)との隙間(4)を埋めて、冷却風の隙間通過を防止するシール構造において、
その隙間(4)に拡縮自在な可撓性の樹脂チューブ(5)が配置され、そのチューブ(5)内に発泡樹脂(6)が充填されて、そのチューブ(5)が膨張することにより、そのチューブ(5)の外面がフレーム(7)内面および熱交換器に密着し、前記隙間(4)が閉塞されたことを特徴とする熱交換器のシール構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
並列された複数の熱交換器(1)(2)(3)を有し、
その熱交換器(1)(2)(3)の間の隙間に拡縮自在な可撓性の樹脂チューブ(5)が配置され、そのチューブ(5)内に発泡樹脂(6)が充填されて、そのチューブ(5)が膨張することにより、そのチューブ(5)の外面が対向する各熱交換器(1)(2)(3)に密着し、前記隙間(4)が閉塞されたことを特徴とする熱交換器のシール構造である。
【0007】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2において、
熱交換器コアの側面に予め、前記可撓性の樹脂チューブ(5)を貼着した状態で、複数の熱交換器を並列して組立てた後に、各可撓性チューブ(5)内に発泡樹脂(6)が充填されて、そのチューブ(5)が膨張するように構成された熱交換器のシール構造である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱交換器のシール構造は、樹脂チューブ5を隣り合う熱交換器の間の隙間、またはそれとフレーム7との隙間4に配置し、その内部に発泡樹脂6を充填することにより、隙間4を閉塞するものであるから、隙間のシールを容易に行いうる。それとともに、樹脂チューブ5の切断長さを各種熱交換器1のそれに整合させれば足りるので、シール材の管理が容易となる。即ち、従来のごとくスポンジを使用する場合のように、各種長さおよび太さのスポンジを用意する必要が無い。また、発泡樹脂6外周には樹脂チューブ5が被覆されているため、シール材の劣化が防止され、寿命の長いシール構造となる。さらには、熱交換器の分解・組立て等において、フィルム状のチューブを剥がすだけでよいので作業性が良い。また、リサイクル性も向上する。そして、各隙間に合わせて最適なシール構造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の熱交換器のシール構造を構成する第1手順を示す要部横断面図。
【図2】同第2手順を示す要部横断面図。
【図3】複数の熱交換器間のシール構造を示す説明図。
【図4】同シール構造を有する熱交換器の斜視略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施例)
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
図1および図2は、本発明の第1実施例の実施の形態を示し、この例では熱交換器1とそれを車両に取付けるフレーム7との間の隙間を閉塞するものである。
先ず、図1に示すごとく、熱交換器1のサイド材8とフレーム7内面との隙間に予め樹脂チューブ5を配置しておく。これはサイド材8外面またはフレーム7内面の一方に両面粘着テープ等の粘着材によって樹脂チューブ5を予め配置した状態で熱交換器1とフレーム7とを組立てればよい。なお、フレーム7と熱交換器1とは、図示しない連結フレーム材でボルト等により固定される。
樹脂チューブ5は一例としてポリエチレンフィルム(膜厚20〜50μm程度)のフィルムチューブを用いることができる。そのフィルム両端は開放している。
【0011】
次いで、熱交換器1とフレーム7とを組立て、樹脂チューブ5の一端開口から発泡樹脂6を充填する。この発泡樹脂6としては軟質発泡ウレタン材を使用することができる。これは耐熱性が120度以上である。発泡ウレタンは、ポリオールとイソシアネートの重合反応により炭酸ガスが発生するとともにそれ自体が膨張し、樹脂チューブ5を膨張し、時間の経過に伴い、その状態で硬化させるものである。
【0012】
樹脂チューブ5内に十分な発泡樹脂6が充填されたことを確認するには、樹脂チューブ5の他端から発泡樹脂6が流出したことを確認すれば足りる。その発泡倍率は30〜50倍程度である。この発泡樹脂6の発泡およびチューブ5の膨張により、サイド材8とフレーム7との隙間4は完全に閉塞される。
【0013】
(第2実施例)
次に、図3は複数の熱交換器1、2、3間およびそれらとフレーム7との間をシールする説明図である。
この場合、各熱交換器1、2、3の外面に予め樹脂チューブ5を貼り付けておく。この場合、樹脂チューブ5は隙間の長さで切断すれば足りる。そして、複数の熱交換器を並列し、且つそれらの両側に一対のフレーム7を配置するとともに、一対のフレーム7間を図示しない連結フレームで連結しておく。さらに、それらの組立て体の前面にシュラウド11を配置する。そのシュラウド11内には図示しない起風ファンが配置される。そして、各樹脂チューブ5内に発泡樹脂6を充填することにより、各隙間のシール構造を完成する。図4は、その状態を示す。図示しないファンを駆動することにより、各熱交換器に冷却風を送風する。このとき、各隙間4が閉塞されているため、空気は熱交換器コアのみを流通する。
【0014】
そして、各実施例の構造は、発泡樹脂6外周に樹脂チューブ5が被覆されているため、劣化しやすい発泡樹脂6を樹脂チューブ5が保護し、耐久性の高いシール構造となる。また、各熱交換器の分解・組立て等に際しては、樹脂チューブ5をサイド材8等から剥ぎ取れば容易にシール材を取り替えることができる。さらには、シール材の撤去が容易で熱交換器のリサイクル性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0015】
1,2,3 熱交換器
4 隙間
5 樹脂チューブ
6 発泡樹脂
7 フレーム
8 サイド材
9 偏平管
10 フィン
11 シュラウド
12 タンク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(1)とその支持フレーム(7)との隙間(4)を埋めて、冷却風の隙間通過を防止するシール構造において、
その隙間(4)に拡縮自在な可撓性の樹脂チューブ(5)が配置され、そのチューブ(5)内に発泡樹脂(6)が充填されて、そのチューブ(5)が膨張することにより、そのチューブ(5)の外面がフレーム(7)内面および熱交換器に密着し、前記隙間(4)が閉塞されたことを特徴とする熱交換器のシール構造。
【請求項2】
請求項1において、
並列された複数の熱交換器(1)(2)(3)を有し、
その熱交換器(1)(2)(3)の間の隙間に拡縮自在な可撓性の樹脂チューブ(5)が配置され、そのチューブ(5)内に発泡樹脂(6)が充填されて、そのチューブ(5)が膨張することにより、そのチューブ(5)の外面が対向する各熱交換器(1)(2)(3)に密着し、前記隙間(4)が閉塞されたことを特徴とする熱交換器のシール構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
熱交換器コアの側面に予め、前記可撓性の樹脂チューブ(5)を貼着した状態で、複数の熱交換器を並列して組立てた後に、各可撓性樹脂チューブ(5)内に発泡樹脂(6)が充填されて、そのチューブ(5)が膨張するように構成された熱交換器のシール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−163706(P2011−163706A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28948(P2010−28948)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)
【Fターム(参考)】