説明

熱交換器の取付構造および、熱交換器の取付構造に用いる熱交換器用ブラケット

【課題】熱交換器との接触や乗り物の振動による負荷を緩和しつつ、熱交換器同士の一体的な取付状態を安定させることができる熱交換器の取付構造および、熱交換器の取付構造を用いた熱交換器用ブラケットを提供する。
【解決手段】コンデンサ1の縁に備えたフレーム部材40に係合する第一係合部20と、この第一係合部20から立設してラジエータに係合する第二係合部30とから熱交換器用ブラケット10を構成し、フレーム部材40を、第一係合部20が係合する側を開放した略コ字状のフレーム側壁41により構成し、フレーム側壁41の縁を互いに離れる方向に屈折させてフレーム鍔部43を形成し、第一係合部20を、対峙する係合側壁22で構成し、係合側壁22に係合溝部50を形成し、係合側壁22がフレーム側壁41に平行にスライドして係合溝部50がフレーム鍔部43に係合することで、第一係合部20はフレーム部材40をフレーム側壁41の外側から係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器の取付構造および、熱交換器の取付構造に用いる熱交換器用ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの乗り物に備えられた熱交換器は、ブラケットによって車体に固定されている。また、他の熱交換器と合体して乗り物に備えられ、放熱を促す装置である。この熱交換器は、フィンと、このフィンを囲う互いに平行な一対のヘッダータンクおよび一対のレインフォースとで構成されている。ブラケットは、熱交換器の四隅に取り付けられている。このブラケットは、ヘッダータンクの端に被せるキャップと、レインフォースを挟むチャンネルとを有しており、キャップをヘッダータンクに垂直方向から被せることで、チャンネルでレインフォースを挟み、チャンネルの内側に形成されたリブによってフィンを挟んで熱交換器に留め付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,513,579号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したように従来のブラケットは、垂直方向から熱交換器をレインフォースおよびフィンごと直接挟む構成である。したがって、熱交換器はチャンネルおよびリブの接触による負荷や、乗り物からの垂直方向の振動による負荷の影響を受け易い構成となっていた。
【0005】
また、負荷の影響を受けてブラケットとの留め付けが緩むと、熱交換器は緩みから発生する振動により負荷が増し、乗り物への固定箇所や他の熱交換器との合体箇所にも影響を与える場合がある。
【0006】
本発明は、上記の実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、熱交換器同士の接触や乗り物の振動による負荷を緩和しつつ、熱交換器同士の一体的な取付状態を安定させることができる熱交換器の取付構造および、熱交換器の取付構造に用いる熱交換器用ブラケットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明にかかる熱交換器の取付構造は、第一熱交換器と第二熱交換器とを、熱交換器用ブラケットを介して一体的に取り付ける熱交換器の取付構造において、前記熱交換器用ブラケットは、前記第一熱交換器の縁に備えられたフレーム部材に係合する第一係合部と、この第一係合部から立設され、前記第二熱交換器に係合する第二係合部と、から構成され、前記フレーム部材は、対峙して備えられたフレーム側壁により前記第一係合部に係合される側が開放された略コ字状に形成され、前記フレーム側壁の縁が互いに離れる方向に屈折してフレーム鍔部が形成され、前記第一係合部は、対峙して備えられた係合側壁に溝部が形成され、前記係合側壁が前記フレーム側壁に平行にスライドして、前記溝部に前記フレーム鍔部が係合され、前記第一係合部は、前記フレーム部材に前記フレーム側壁の外側から係合することを特徴としている。
【0008】
また、前記溝部は、前記フレーム鍔部に面接触することを特徴としている。
【0009】
また、前記溝部は、前記フレーム鍔部を受け入れる側が拡大されたことを特徴としている。
【0010】
また、前記係合側壁には、嵌合部が形成され、前記フレーム側壁には、前記嵌合部に嵌合される嵌合孔が形成されたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明にかかる熱交換器用ブラケットは、熱交換器の取付構造に用いることを特徴としている。
【0012】
また、前記係合側壁の内側に側壁接触部が形成され、前記係合側壁同士を連接する端壁の内側に端壁接触部が形成され、前記側壁接触部および前記端壁接触部が前記フレーム側壁の外側に接触することを特徴としている。
【0013】
また、前記第二係合部には、グロメットと、このグロメットに挿入されたピンとが備えられ、前記グロメットおよび前記ピンにより、前記第二熱交換器と前記第一熱交換器とを一体的に取り付けることを特徴としている。
【0014】
また、前記第二係合部には、グロメットが一体的に形成され、前記グロメットおよびこのグロメットに挿入されたピンにより前記第二熱交換器と前記第一熱交換器とを一体的に取り付けることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る熱交換器の取付構造では、熱交換器用ブラケットは、第一熱交換器の縁に備えられたフレーム部材に係合する第一係合部と、この第一係合部から立設され、第二熱交換器に係合する第二係合部と、から構成され、フレーム部材は、対峙して備えられたフレーム側壁により第一係合部に係合される側が開放された略コ字状に形成され、フレーム側壁の縁が互いに離れる方向に屈折してフレーム鍔部が形成され、第一係合部は、対峙して備えられた係合側壁に溝部が形成され、係合側壁がフレーム側壁に平行にスライドして、溝部にフレーム鍔部が係合され、第一係合部は、フレーム部材にフレーム側壁の外側から係合する構成とした。
この構成により、熱交換器の取付構造は、第一係合部がフレーム部材に係合するため、接触による負荷が第一熱交換器にかからない。また、第一係合部が乗り物による垂直方向の振動に対して直交する向きでフレーム部材に係合するため、垂直方向に外れ難くなる。また、熱交換器の取付構造は、溝部がフレーム鍔部に係合するため、フレーム鍔部に引っ掛かって垂直方向にずれ難くなる。
したがって、熱交換器の取付構造は、垂直方向の振動による負荷が緩和され、第一熱交換器と第二熱交換器との一体的な取付状態を安定させることができる。
【0016】
特に、溝部は、フレーム鍔部に面接触することとした構成が好ましい。
この構成により、熱交換器の取付構造は、第一係合部がフレーム部材と接触する面積が増す。
したがって、垂直方向の振動による負荷に対する応力を緩和させることができる。
【0017】
特に、溝部は、フレーム鍔部を受け入れる側が拡大されていることとした構成が好ましい。
この構成により、熱交換器の取付構造では、拡大された溝部でフレーム鍔部を受け入れる際に位置決めされる。
したがって、熱交換器用ブラケットをフレーム部材に係合しやすくなる。
【0018】
特に、係合側壁には、嵌合部が形成され、フレーム側壁には、嵌合部に嵌合される嵌合孔が形成されていることとした構成が好ましい。
この構成により、熱交換器の取付構造は、嵌合部がフレーム側壁の嵌合孔に嵌合する。
したがって、熱交換器用ブラケットの抜け落ちを防ぐことができる。
【0019】
また、熱交換器の取付構造には、熱交換器用ブラケットを用いることが好ましい。
これにより、垂直方向の振動による負荷が緩和され、第一熱交換器と第二熱交換器との一体的な取付状態を安定させることができる。
【0020】
特に、係合側壁の内側に側壁接触部が形成され、係合側壁同士を連接する端壁の内側に端壁接触部が形成され、側壁接触部および端壁接触部がフレーム側壁の外側に接触することとした構成が好ましい。
この構成により、熱交換器用ブラケットは、側壁接触部と端壁接触部とがフレーム部材のフレーム側壁に接触し、密着する。
したがって、垂直方向の振動による負荷がさらに緩和され、第一熱交換器と第二熱交換器との一体的な取付状態をさらに安定させることができる。
【0021】
特に、第二係合部には、グロメットと、このグロメットに挿入されたピンとが備えられ、グロメットおよびピンにより、第二熱交換器と第一熱交換器とを一体的に取り付けることとした構成が好ましい。
この構成により、熱交換器用ブラケットは、第二係合部が、ボルトやドライバなどの工具を用いることなくグロメットおよびピンのみで第二熱交換器に係合する。
したがって、工数が減り作業効率が向上する。
【0022】
特に、第二係合部には、グロメットが一体的に形成され、グロメットおよびこのグロメットに挿入されたピンにより第二熱交換器と第一熱交換器とを一体的に取り付けることとした構成が好ましい。
この構成により、部品点数が減る。したがって、工数が減り作業効率がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る熱交換器の取付構造の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第一熱交換器に備えられたフレーム部材を示す図であり、(a)が正面図、(b)が側面図である。
【図3】本発明に係る熱交換器用ブラケットの実施形態の横断面図であり、第一係合部を示す横断面斜視図である。
【図4】第一係合部がフレーム部材に係合した状態を示す正面縦断面図である。
【図5】本発明に係る熱交換器の取付構造の実施形態を示す図であり、(a)が裏面図、(b)がA−A断面図、(c)がB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1において、本実施形態に係る熱交換器の取付構造では、熱交換器用ブラケット10は、略長方形板状の境界部31を含む第一係合部20と、この第一係合部20から立設され、境界部31より上側の第二係合部30とから構成されている。すなわち、熱交換器用ブラケット10は、第一熱交換器としてのコンデンサ1と、図示しない第二熱交換器としてのラジエータとを合体させている。具体的には、熱交換器用ブラケット10は、第一係合部20がフレーム部材40の外側に係合してコンデンサ1を支持し、第二係合部30がラジエータを構成するラジエータ受け具4に係合している。熱交換器用ブラケット10の素材には、例えば、ポリアセタール(POM)、ガラス繊維で強化されたポリプロピレン(PP−GF20)やポリアミド(PA66−GF30)などの合成樹脂が用いられる。
【0026】
コンデンサ1およびラジエータは、自動車などの乗り物に備えられる冷却装置を構成する熱交換器である。コンデンサ1はエンジンを冷却する熱交換器であり、ラジエータは空調装置を冷却する熱交換器である。なお、図示しないが、両熱交換器は向かい合って並列に並べられ、所定の間隔を空けて熱交換器用ブラケット10を介して一体的に取り付けられている。
【0027】
コンデンサ1は、表面積を増やして放熱効果を高めるためにフィン2が形成され、フィン2の両端には冷却水が流通するタンク3が備えられている。コンデンサ1の縁には、フレーム部材40を介して熱交換器用ブラケット10が備えられている。この熱交換器用ブラケット10はコンデンサ1の四隅に備えられている。したがって、図1に示す熱交換器用ブラケット10は、コンデンサ1の隅部に係合している。
【0028】
図1、図2(a)、(b)において、フレーム部材40は、横断面が略コ字状に形成され、両端が開放された長手の部材である。フレーム部材40は、略長方形のフレーム基板42と、このフレーム基板42の長手側の一対の縁からそれぞれ立設された略長方形のフレーム側壁41とから構成され、フレーム基板42の対面側が開放されている。フレーム側壁41の上端縁には、互いに離れる方向に屈折したフレーム鍔部43が形成されている。また、フレーム側壁41には、略四角形の嵌合孔44が形成されている。フレーム部材40は、フレーム基板42の外側がコンデンサ1の縁に沿ってろう付けされて固定されている。
【0029】
図3において、第一係合部20は、横断面が略コ字状に形成されている。第一係合部20は、第二係合部30との境界に設けられた略長方形板状の境界部31(図1参照)と、この境界部31の四辺のうち三辺の縁から下側に延設されたコ字状側壁21とから構成されている。コ字状側壁21は、下端が開放され、上端が境界部31により閉塞されているが、図3では理解しやすくするために境界部31を省略してある。さらに、コ字状側壁21は、対峙して備えられた一対の係合側壁22と、この係合側壁22の縁に連接して備えられた端壁23とから構成されている。境界部31とコ字状側壁21とで形成された空間は、フレーム部材40を受け入れるための被挿入路24である。被挿入路24は、端壁23に対面する側が開放されていることで被挿入口25を有している。
【0030】
係合側壁22には、溝部としての係合溝部50と、側壁傾斜部27と、この側壁傾斜部27に連接された側壁接触部28と、この側壁接触部28に連接された嵌合部60とがそれぞれ形成されている。また、端壁23には、端壁接触部26が形成されている。側壁傾斜部27、側壁接触部28、端壁接触部26は、それぞれ係合側壁22および端壁23の内面側(被挿入路24側)に形成され、被挿入路24を構成している。また、嵌合部60は係合側壁22の一部を構成するとともに、被挿入路24を構成している。
【0031】
係合溝部50は、係合側壁22の上端縁の内側の辺(被挿入路24側の辺)に沿って、被挿入口25側から端壁23に至って形成されている。係合溝部50は、被挿入口25側に形成された溝傾斜部51と、この溝傾斜部51に連接された第一面接触部52と、この第一面接触部52と間隔を空けて形成され、端壁23に突き当たった第二面接触部53とから構成されている。
【0032】
図4において、溝傾斜部51は、第一面接触部52から被挿入口25に向けて下る平坦な斜面であり、境界部31との間隔を被挿入口25側に向けて徐々に広げている。第一面接触部52および第二面接触部53は、嵌合部60を除いて溝傾斜部51から端壁23に突き当たるまでの平坦面であり、境界部31との間隔が一定となるように境界部31と略平行に形成されている。なお、溝傾斜部51は、係合溝部50を拡大する構成であれば、平坦な斜面の他、湾曲した面でもよい。
【0033】
図3において、側壁傾斜部27は、係合側壁22が側壁接触部28から被挿入口25に向けて徐々に薄くなるように形成された平坦な斜面であり、被挿入路24の幅を被挿入口25側に向けて徐々に広げている。なお、側壁傾斜部27は、被挿入路24の幅を広げる構成であれば、平坦な斜面の他、湾曲した面でもよい。
【0034】
側壁接触部28は、対峙する係合側壁22が平行になるように形成されている。また、端壁接触部26は、係合側壁22同士に連接された端壁23の両端側に形成されている。
【0035】
図5(a)おいて、嵌合部60は、係合側壁22に略コ字状の窓を設けることで係合側壁22と同一面上に形成された突状片である。図5(b)において、嵌合部60は、側壁接触部28に連接された基部61と、この基部61からフレーム部材40の受け入れ方向に延設された自由端部62と、係合側壁22の内面側(被挿入路24側)に突出した山形爪部63とから構成されている。山形爪部63には、フレーム部材40の受け入れ方向に向かってなだらかに上る緩斜面64が形成され、取り外し方向に険しく上る急斜面65が形成されている。
【0036】
係合側壁22、嵌合部60、端壁23のそれぞれの外面側(被挿入路24に面していない側)には凹状溝29が形成されている(図3参照)。
【0037】
図1において、第二係合部30は、境界部31を底とし、この境界部31から四角形の略板状に形成された基盤部32が立設されている。基盤部32の略中央には、グロメット33が貫通されている。グロメット33は、円形座部の中心にピン貫通孔が形成され、このピン貫通孔の縁から複数の脚部35が突出している。この貫通孔にはピン34が挿入されている(図5(a)参照)。なお、グロメット33は、第二係合部と一体的に形成されていてもよい。また、グロメット33、およびピン34は一般的な取付部材であるため、一部を図示省略する。
【0038】
以上のようにして、本実施形態は形成されている。次に、本実施形態の作用について、熱交換器用ブラケット10をコンデンサ1に係合する手順を交えて説明する。
【0039】
図1、図3において、フレーム基板42側がコンデンサ1の四隅にろう付けされたフレーム部材40に熱交換器用ブラケット10を係合する。具体的には、側壁傾斜部27によって幅広に形成された被挿入口25をフレーム側壁41に、溝傾斜部51によって被挿入口25側が拡大された係合溝部50をフレーム鍔部43にそれぞれ合わせて、第一係合部20をフレーム部材40にコンデンサ1のタンク3側からスライドする。すなわち、フレーム部材40が被挿入口25に挿入させられる。
【0040】
フレーム部材40が被挿入口25に挿入させられると、フレーム部材40は、フレーム鍔部43が係合溝部50に形成された第一面接触部52と境界部31とで挟まれ(図5(c)参照)、フレーム側壁41が係合側壁22に形成された側壁接触部28に外側から挟まれる(図5(b)参照)。
【0041】
図3、図5において、さらにフレーム部材40が被挿入路24へ進入させられると、フレーム部材40は、係合側壁22に形成された嵌合部60の緩斜面64に接触する。フレーム部材40は、緩斜面64に接触しながら進入させられ、同時に、嵌合部60は、基部61を基点に係合側壁22の外側面に向けて撓り、自由端部62が押し広げられる。フレーム部材40は、嵌合部60を押し広げた状態で進入させられる。フレーム部材40が端壁23まで進入させられると、嵌合部60は、フレーム部材40に形成された嵌合孔44と対峙する。
【0042】
嵌合部60は、復元力が係合側壁22との接触により抑えられていたが、嵌合孔44により接触による妨げがなくなって作用し、自由端部62が被挿入路24側に戻る。嵌合部60は元の位置に戻り、急斜面65が嵌合孔44の縁と接触して山形爪部63が嵌合孔44に嵌合する。また、フレーム部材40は、端が端壁接触部26に接触すると同時に、フレーム鍔部43に第二面接触部53が接触する。
【0043】
このようにして、第一係合部20はフレーム部材40に係合する。すなわち、第一係合部20は、側壁接触部28がフレーム側壁41に、端壁接触部26がフレーム部材40の端に、第一面接触部52および第二面接触部53がフレーム鍔部43にそれぞれ接触し、嵌合部60が嵌合孔44に嵌合することで、フレーム部材40に係合している。
【0044】
次に、熱交換器用ブラケット10をラジエータに係合する手順を説明する。
【0045】
図1において、第二係合部30の基盤部32に備えられたグロメット33の脚部35をラジエータ受け具4に形成された図示しない取付孔に挿入する(図5(a)参照)。この状態で、グロメット33の貫通孔に挿入されたピン34を奥まで押し込むと、グロメット33は、脚部35がピン34によって内側から径方向に押し広げられる。グロメット33は、脚部35の径が取付孔の径よりも拡大するため、抜去方向が規制されてラジエータ受け具4に係合する。
【0046】
上記したように、本実施形態によれば、第一係合部20がフレーム部材40に係合するため、接触による負荷がコンデンサ1にかからない。また、第一係合部20がフレーム鍔部43に平行にスライドすることで、乗り物による垂直方向の振動に対して直交する向きからフレーム部材40に係合するため、垂直方向に外れ難くなる。また、フレーム部材40にはフレーム鍔部43が形成され、第一係合部20には係合溝部50が形成されているため、フレーム鍔部43が係合溝部50に嵌り、垂直方向にずれ難くなる。さらに、係合溝部50がフレーム鍔部43に面接触すると、第一係合部20がフレーム部材40に接触する面積が増す。
【0047】
したがって、熱交換器用ブラケット10は、垂直方向の振動による負荷が緩和され、コンデンサ1とラジエータとの一体的な取付状態を安定させることができる。また、垂直方向の振動による負荷を受ける面積を増やすことで応力を緩和させることができる。さらに、熱やクリープによる変形も抑止することができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、係合溝部50には被挿入口25側を拡大する溝傾斜部51が、係合側壁22には被挿入路24の被挿入口25側の幅を広げる側壁傾斜部27がそれぞれ形成されている。この構成により、熱交換器用ブラケット10は、フレーム部材40を被挿入口25に受け入れる際、同時に、フレーム鍔部43を係合溝部50に受け入れる際に位置決めしやすい。したがって、第一係合部20をフレーム部材40に係合しやすくなる。
【0049】
また、本実施形態によれば、フレーム側壁41には嵌合孔44が、係合側壁21には嵌合部60がそれぞれ形成されている。さらに、嵌合部60は山形爪部63を有し、そこに急斜面65が形成されている。この構成により、嵌合部60は、急斜面65が嵌合孔44の縁と接触し、嵌合孔44に嵌合する。したがって、抜去方向が規制されて、熱交換器用ブラケット10の抜け落ちを防ぐことができる。
【0050】
また、本実施形態によれば、係合側壁21には内面側(被挿入路24側)に側壁接触部28が、端壁23に端壁接触部26がそれぞれ形成されている。この構成により、熱交換器用ブラケット10は、側壁接触部28と端壁接触部26とがフレーム側壁41に密着する。したがって、熱交換器用ブラケット10は、垂直方向による負荷がさらに緩和され、コンデンサ1とラジエータとの一体的な取付状態をさらに安定させることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、第二係合部にはグロメット33と、このグロメット33の貫通孔に挿入されたピン34とが備えら、ピン34を押し込むことによりグロメット33の脚部35が内側から径方向に拡げられてラジエータ受け具4の取付孔に係合することで、ラジエータとコンデンサ1とが一体的に取り付けられている。この構成により、熱交換器用ブラケット10は、第二係合部30がボルトやドライバ等の工具を用いることなくグロメット33およびピン34のみでラジエータに係合する。したがって、工数が減り、作業効率が向上する。
【0052】
また、第二係合部30とグロメット33とが一体的に形成されれば、部品点数が減り、工数が減って作業効率がさらに向上する。
【0053】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 コンデンサ
2 フィン
3 タンク
4 ラジエータ受け具
10 熱交換器用ブラケット
20 第一係合部
21 コ字状側壁
22 係合側壁
23 端壁
24 被挿入路
25 被挿入口
26 端壁接触部
27 側壁傾斜部
28 側壁接触部
29 凹状溝
30 第二係合部
31 境界部
32 基盤部
33 グロメット
34 ピン
35 脚部
40 フレーム部材
41 フレーム側壁
42 フレーム基板
43 フレーム鍔部
44 嵌合孔
50 係合溝部
51 溝傾斜部
52 第一面接触部
53 第二面接触部
60 係合部
61 基部
62 自由端部
63 山形爪部
64 緩斜面
65 急斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一熱交換器と第二熱交換器とを、熱交換器用ブラケットを介して一体的に取り付ける熱交換器の取付構造において、
前記熱交換器用ブラケットは、前記第一熱交換器の縁に備えられたフレーム部材に係合する第一係合部と、この第一係合部から立設され、前記第二熱交換器に係合する第二係合部と、から構成され、
前記フレーム部材は、対峙して備えられたフレーム側壁により前記第一係合部に係合される側が開放された略コ字状に形成され、前記フレーム側壁の縁が互いに離れる方向に屈折してフレーム鍔部が形成され、
前記第一係合部は、対峙して備えられた係合側壁に溝部が形成され、
前記係合側壁が前記フレーム側壁に平行にスライドして、前記溝部に前記フレーム鍔部が係合され、前記第一係合部は、前記フレーム部材に前記フレーム側壁の外側から係合する、
ことを特徴とする熱交換器の取付構造。
【請求項2】
前記溝部は、前記フレーム鍔部に面接触する、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器の取付構造。
【請求項3】
前記溝部は、前記フレーム鍔部を受け入れる側が拡大された、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱交換器の取付構造。
【請求項4】
前記係合側壁には、嵌合部が形成され、
前記フレーム側壁には、前記嵌合部に嵌合される嵌合孔が形成された、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器の取付構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の熱交換器の取付構造に用いる、
ことを特徴とする熱交換器用ブラケット。
【請求項6】
前記係合側壁の内側に側壁接触部が形成され、
前記係合側壁同士を連接する端壁の内側に端壁接触部が形成され、
前記側壁接触部および前記端壁接触部が前記フレーム側壁の外側に接触する、
ことを特徴とする請求項5に記載の熱交換器用ブラケット。
【請求項7】
前記第二係合部には、グロメットと、このグロメットに挿入されたピンとが備えられ、前記グロメットおよび前記ピンにより、前記第二熱交換器と前記第一熱交換器とを一体的に取り付ける、
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の熱交換器用ブラケット。
【請求項8】
前記第二係合部には、グロメットが一体的に形成され、前記グロメットおよびこのグロメットに挿入されたピンにより前記第二熱交換器と前記第一熱交換器とを一体的に取り付ける、
ことを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の熱交換器用ブラケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−88005(P2013−88005A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227968(P2011−227968)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】