説明

熱伝導緩衝材及び電気機器

【課題】適度なクッション性と良好な熱伝導性とを有し、該良好な熱伝導性を効果的に維持できる熱伝導緩衝材を提供する。
【解決手段】本発明に係る熱伝導緩衝材1は、基材シート2と、熱伝導体3と、発泡粒子の発泡物4とを含む。発泡物4はシェルを有し、該シェルの内部は空隙である。本発明に係る熱伝導緩衝材1は、複数の発熱部品12と、発熱部品12間に配置された少なくとも1つの放熱板13と、少なくとも1つの冷却器14とを備える電気機器11において、放熱板13と冷却器14との間に配置して好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器とを備える電気機器において、上記放熱板と上記冷却器との間に配置して用いることができる熱伝導緩衝材、並びに該熱伝導緩衝材を用いた電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な電気機器において、発熱部品から発せられる熱を逃がすために、放熱板が発熱部品間に挟まれている。さらに、放熱板に伝わった熱は、冷却器を通じて、外部に放散されている。
【0003】
下記の特許文献1には、連続して配置される複数の単位電池と、連続して配置される複数の上記単位電池の間に設けられており、かつ上記単位電池で発生する熱を伝達する隔板と、上記隔板の側端部に接するように設けられた冷却板と、上記冷却板と上記隔板の上記側端部に対向する側に対して反対側に設けられており、かつ上記冷却板に伝達される熱を放散させるための放熱部とを備える電気機器が開示されている。
【0004】
また、下記の特許文献2では、液状マトリックス樹脂及び熱伝導性フィラーを主成分として含む異方性熱伝導シートが開示されている。この異方性熱伝導シートは、エレクトロニクス機器に用いられる光半導体装置、集積回路(LSI)、電気機器、ソリッドステートリレー、トランス等の発熱部品の放熱スペーサーに使用されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−278327号公報
【特許文献2】特開平5−65347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、隔板と冷却板とが直接接触されているため、隔板と冷却板との剥離が生じやすい。このため、電気機器を使用しているうちに放熱性が低下し、良好な放熱性を維持できないことがある。
【0007】
特許文献2には、異方性熱伝導シートを、発熱部品間に挟み込まれた放熱板と冷却器との間に配置して用いることに関する記載はない。また、仮に特許文献2に記載の異方性熱伝導シートを電気機器において放熱板と冷却器との間に配置したとしても、振動や歪みに対する異方性熱伝導シートの追従性は低く、剥離が生じやすいという問題がある。このため、良好な放熱性を維持できないことがある。
【0008】
本発明の目的は、適度なクッション性と良好な熱伝導性とを有し、該良好な熱伝導性を効果的に維持できる熱伝導緩衝材、並びに該熱伝導緩衝材を用いた電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の広い局面によれば、基材シートと、熱伝導体と、発泡粒子の発泡物とを含み、上記発泡物はシェルを有し、該シェルの内部が空隙である、熱伝導緩衝材が提供される。
【0010】
本発明に係る熱伝導緩衝材のある特定の局面では、上記発泡粒子が熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡物が熱膨張発泡物である。
【0011】
本発明に係る熱伝導緩衝材の他の特定の局面では、上記熱伝導体100重量%中の90重量%以上が、上記発泡物の内部の空隙とは異なる領域に存在する。
【0012】
本発明に係る熱伝導緩衝材は、複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器とを備える電気機器において、上記放熱板と上記冷却器との間に配置して用いられる熱伝導緩衝材であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る電気機器は、複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器と、上記放熱板と上記冷却器との間に配置された熱伝導緩衝材とを備え、上記熱伝導緩衝材が、本発明に従って構成された熱伝導緩衝材である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る熱伝導緩衝材は、基材シートと熱伝導体と発泡粒子の発泡物とを含み、該発泡物はシェルを有し、該シェルの内部が空隙であるので、適度なクッション性と良好な熱伝導性とを有する。
【0015】
従って、複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器とを備える電気機器において、上記放熱板と上記冷却器との間に本発明に係る熱伝導緩衝材を配置させることにより、熱を効果的に放散させることができ、更に剥離を抑制できるので、良好な放熱性を効果的に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る熱伝導緩衝材を模式的に示す部分切欠断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る熱伝導緩衝材を用いた電気機器を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、比較例1で作製した熱伝導緩衝材を模式的に示す部分切欠断面図である。
【図4】図4は、比較例1で作製した熱伝導緩衝材を用いた電気機器を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明に係る熱伝導緩衝材は、基材シートと熱伝導体と発泡粒子の発泡物とを含む。該発泡物はシェルを有し、該シェルの内部は空隙である。従って、発泡物は内部に空隙を有する。
【0019】
本発明に係る熱伝導緩衝材は、発熱部品と他の部材との間に配置される熱伝導緩衝材であることが好ましい。本発明に係る熱伝導緩衝材は、複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器とを備える電気機器において、上記放熱板と上記冷却器との間に配置される熱伝導緩衝材であることが好ましい。また、本発明に係る熱伝導緩衝材は、発熱部品と冷却器とを備える電気機器において、該発熱部品と該冷却器との間に配置される熱伝導緩衝材であることも好ましい。
【0020】
本発明に係る電気機器は、複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器と、上記放熱板と上記冷却器との間に配置された熱伝導緩衝材とを備える。本発明に係る電気機器では、上記熱伝導緩衝材は、基材シートと熱伝導体と発泡粒子の発泡物とを含む。
【0021】
本発明に係る熱伝導緩衝材は、基材シート及び発泡粒子の発泡物を含み、更に該発泡物は内部に空隙を有するので、適度なクッション性を有する。さらに、本発明に係る熱伝導緩衝材は、熱伝導体を含むので良好な熱伝導性を有する。従って、発熱部品から発せられた熱が放熱板に伝わり、放熱板に伝わった熱が熱伝導緩衝材を介して冷却器に効果的に伝わる。さらに、本発明に係る熱伝導緩衝材は適度なクッション性を有するので、上記放熱板と上記冷却器との間に熱伝導緩衝材が配置されたときに、剥離が生じ難く、更に良好な熱伝導性を効果的に維持できる。
【0022】
また、本発明に係る熱伝導緩衝材では、適度なクッション性を持たせることで、組付け後の振動や歪みで剥離又は隙間が生じないように、熱伝導緩衝材の接触対象物に対する追従性を高めることができる。また、熱伝導緩衝材と放熱板及び冷却器との接触面では、従来と同等の熱伝導性を保持しつつ、従来空気層であった部分に本発明の熱伝導緩衝材を配置させることができる。例えば、発熱部品と冷却器とが熱伝導緩衝材を介して接触可能となり、熱伝導緩衝材に含まれている熱伝導体により一層効果的に熱を放散させることができる。また、本発明に係る熱伝導体では、熱伝導体の添加量を減らすことができるため、熱伝導緩衝材及び電気機器のコストを削減することも可能である。
【0023】
熱伝導体は、上記発泡物の内部の空隙とは異なる領域において、上記基材シート中に埋め込まれていることが好ましい。熱伝導性をより一層良好にする観点からは、熱伝導体100重量%中の90重量%以上が、上記発泡物の内部の空隙とは異なる領域に存在していることが好ましい。熱伝導性をかなり良好にする観点からは、熱伝導体100重量%中の95重量%以上が、上記発泡物の内部の空隙とは異なる領域に存在していることが好ましい。上記発泡物の内部の空隙は、上記シェルの内部の空隙である。
【0024】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより本発明を明らかにする。
【0025】
図1に、本発明の一実施形態に係る熱伝導緩衝材を模式的に断面図で示す。また、図2に、図1に示す熱伝導緩衝材を用いた電気機器を模式的に断面図で示す。
【0026】
図1に示す熱伝導緩衝材1は、基材シート2と、熱伝導体3と、発泡粒子の発泡物4とを有する。複数の熱伝導体3と複数の発泡粒子の発泡物4とが、基材シート2中に埋め込まれている。発泡粒子の発泡物4は、熱膨張マイクロカプセルの熱膨張発泡物であることが好ましい。
【0027】
図2に示す電気機器11は、複数の発熱部品12と、複数の放熱板13と、1つの冷却器14と、1つの熱伝導緩衝材1Aとを有する。電気機器11は、4組の発熱部品12と、3つの放熱板13とを有する。複数の発熱部品12,12と複数の発熱部品12,12との間に、放熱板13が配置されている。放熱板13は、複数の発熱部品12により挟み込まれている。発熱部品12の一端12a側に冷却器14が配置されている。放熱板13の一端13a側に、冷却器14が配置されている。発熱部品12と冷却器14との間に、熱伝導緩衝材1Aが配置され、挟み込まれている。放熱板13と冷却器14との間に、熱伝導緩衝材1Aが配置され、挟み込まれている。なお、最も外側に位置する発熱部品12の外周面には、プレート15が積層されている。プレート15は、モジュールプレートであることが好ましい。
【0028】
発熱部品12としては、半導体及び電池セル等が挙げられる。発熱部品12は電池セルであることが好ましい。また、発熱部品12は電池セルであり、電気機器11は、組電池であることが好ましい。
【0029】
放熱板13の一端13aは、発熱部品12の一端12aよりも突出している。放熱効果を高めるために、放熱板13の突出した一端13aは先端部分において90°折り曲げられている。
【0030】
熱伝導緩衝材1Aは、図1に示す熱伝導緩衝材1が圧縮変形された状態である。熱伝導緩衝材1Aは、発熱部品12及び放熱板13と冷却器14とで圧縮され、挟み込まれている。特に、放熱板13と冷却器14との間に位置する熱伝導緩衝材1A部分では、熱伝導体3が近接しており、該熱伝導緩衝材1A部分の熱伝導率が高くなっている。圧縮前の熱伝導緩衝材1Aの厚みに対して、圧縮後の熱伝導緩衝材1A部分の厚みを2/3以下にすることで熱伝導緩衝材1A部分の熱伝導率を効果的に高めることができ、圧縮後の熱伝導緩衝材1A部分の厚みを1/2以下にすることで熱伝導緩衝材1A部分の熱伝導率をかなり効果的に高めることができる。熱伝導緩衝材1Aの第1の主面1aは、発熱部品12の一端12aと放熱板13の一端13aとに接している。熱伝導緩衝材1Aの第1の主面1aとは反対の第1の主面1bは冷却器14の第1の主面14aに接している。
【0031】
電気機器11では、熱伝導緩衝材1Aが、発熱部品12の一端12aと、放熱板13の一端13aと冷却器14の第1の主面14aとに接しているため、発熱部品12から発せられた熱が放熱板13に伝わり、放熱板13に伝わった熱が熱伝導緩衝材1Aを介して冷却器14に効果的に伝わる。さらに、熱伝導緩衝材1Aがクッション性を有するので、電気機器11の耐衝撃特性を高めることができる。また、熱伝導緩衝材1Aがクッション性を有するので、電気機器11に振動又は歪みが付与されても、熱伝導緩衝材1Aと発熱部品12、放熱板13及び冷却器14との剥離が生じ難い。
【0032】
上記基材シートの素材は特に限定されない。上記基材シートの素材としては、光硬化性化合物及び熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、光硬化性化合物が好ましい。上記光硬化性化合物としては、特に限定されないが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−3−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2−[(メタ)アクリロイルオキシ]エチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、及び2−[(メタ)アクリロリルオキシ]エチル−2−ヒドロキシプロピルフタル酸等が挙げられる。
【0033】
上記熱伝導体は特に限定されない。上記熱伝導体としては、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、タルク、マイカ及びハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0034】
上記熱伝導体の形状としては球状、板状及び針状等が挙げられる。熱伝導体の充填性を高めたり、熱伝導体の分散性を高めたりする観点からは、上記熱伝導体の形状は、球状であることが好ましい。
【0035】
上記熱伝導体の分散性を高め、更に放熱性を効果的に高める観点からは、上記熱伝導体の粒子径は、好ましくは1μm以上、好ましくは50μm以下である。
【0036】
上記粒子径は、真球状である場合には直径を意味し、真球状以外の形状である場合には最大径を意味する。
【0037】
上記発泡粒子の使用により、上記基材シート中に発泡構造を形成できる。上記発泡粒子としては、ブタン、ペンタン等の低沸点液体をポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂でマイクロカプセル化した熱膨張性マイクロカプセル、ポリスチレンビース等が挙げられる。これらはいずれも使用可能であり、更にこれらを予め発泡させた発泡物や、白色顔料で被覆された発泡物等も有効に使用することができる。
【0038】
なかでも、適度な発泡構造を形成し、かつクッション性をより一層良好にする観点からは、上記発泡粒子は、熱膨張性マイクロカプセルであることが好ましい。
【0039】
上記発泡粒子を発泡させることにより、発泡粒子の発泡物を得ることができる。上記発泡粒子は、熱伝導緩衝材の成形時の熱を利用して発泡させてもよく、予め別工程で発泡させた発泡粒子の発泡物を混ぜて熱伝導緩衝材を成形してもよい。
【0040】
上記発泡粒子は熱膨張性マイクロカプセルであり、上記発泡粒子の発泡物は熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張発泡物であることが好ましい。
【0041】
上記熱膨張性マイクロカプセルを熱膨張させ、発泡させることにより、上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張発泡物が形成される。上記熱膨張性マイクロカプセルは、熱伝導緩衝材の成形時の熱を利用して発泡させてもよく、予め別工程で発泡させた熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張発泡物を混ぜて熱伝導緩衝材に成形してもよい。
【0042】
上記発泡粒子の発泡物及び上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張発泡物の大きさは、好ましくは30μm以上、より好ましくは60μm以上、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下である。また、発泡により生じた気泡の大きさ(空隙の大きさ)は、好ましくは30μm以上、より好ましくは60μm以上、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下である。上記発泡粒子の発泡物及び上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張発泡物の大きさ、及び発泡により生じた気泡の大きさが上記下限以上及び上記上限以下であると、熱伝導緩衝材のクッション性をより一層良好にすることができる。
【0043】
上記発泡粒子の発泡物及び上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張発泡物の大きさ、及び発泡により生じた気泡の大きさは、真球状である場合には直径を意味し、真球状以外の形状である場合には最大径を意味する。
【0044】
電気機器に組み込まれる前の熱伝導緩衝材及び基材シートの厚みTは、好ましくは0.5mm以上、好ましくは5.0mm以下である。熱伝導緩衝材及び基材シートの厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、クッション性と熱伝導性とをバランスよく高めることができる。
【0045】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0046】
(実施例1)
アクリルモノマーであるn−ブチルアクリレート(日本触媒社製)94.5重量部、アクリル酸(日本触媒社製)5.0重量部、及びトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製「A−TMPT」)0.5重量部と、ラジカル系光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)5.0重量部と、熱伝導体である球状アルミナ(1次平均粒子径10μm)100重量部と、チキソ剤であるフュームドシリカ(エボニックデグサジャパン社製「アエロジルRX200」)6重量部と、熱膨張性マイクロカプセル(積水化学工業社製「アドバンセルEML101」)の熱膨張発泡物(約70μm)25重量部とを混合した混合物を用意した。縦100mm×横100mm×深さ2mmの金型に上記混合物を流し込んで、上記混合物の上面と下面とをガラスで挟み込んだ。この状態で、上面側と下面側との双方から30Jの紫外線を照射した。この結果、上記アクリルモノマーが架橋した基材シート2と上記アルミナである熱伝導体3とチキソ剤と上記熱膨張性マイクロカプセルの熱膨張発泡物である発泡物4(約70μm)とを含む図1に示す熱伝導緩衝材1を得た。得られた熱伝導緩衝材1の厚みTは、2.0mmであった。得られた熱伝導体100重量%中の95重量%以上が、上記発泡物の内部の空隙とは異なる領域に存在していた。
【0047】
得られた熱伝導緩衝材1を、図2に示す電気機器11における熱伝導緩衝材1Aとして用いて、電気機器11を得た。発熱部品12として電池セルを用い、電気機器11として組電池を作製した。
【0048】
(比較例1)
アクリルモノマーであるn−ブチルアクリレート(日本触媒社製)94.5重量部、アクリル酸(日本触媒社製)5.0重量部、及びトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製(A−TMPT)0.5重量部と、ラジカル系光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガキュア651」)5.0重量部と、熱伝導体である球状アルミナ(1次平均粒子径10μm)100重量部と、チキソ剤であるフュームドシリカ(エボニックデグサジャパン社製「アエロジルRX200」)6重量部とを混合した混合物を用意した。縦100mm×横100mm×深さ2mmの金型に上記混合物を流し込んで、上記混合物の上面と下面とをガラスで挟み込んだ。この状態で、上面側と下面側との双方から30Jの紫外線を照射した。この結果、上記アクリルモノマーが架橋した基材シート102とアルミナである熱伝導体103とチキソ剤とを含み、発泡粒子の発泡物を含まない図3に示す熱伝導緩衝材101を得た。得られた熱伝導緩衝材101の厚みT1は、1.3mmであった。
【0049】
得られた熱伝導緩衝材101を用いて、図4に示す電気機器111を作製した。電気機器111は、熱伝導緩衝材を除いては、図2に示す電気機器11と同様に構成されている。
【0050】
図4に示す電気機器111は、複数の発熱部品112と、複数の放熱板113と、冷却器114と、熱伝導緩衝材101Aとを有する。電気機器111は、4組の発熱部品112と、3つの放熱板113とを有する。複数の発熱部品112,112と複数の発熱部品112,112との間に、放熱板113が配置されている。放熱板113は、複数の発熱部品112により挟み込まれている。発熱部品112の一端112a側に冷却器114が配置されている。放熱板113の一端113a側に、冷却器114が配置されている。発熱部品112と冷却器114との間に、熱伝導緩衝材101Aが配置されているが、挟み込まれていない。放熱板113と冷却器114との間に、熱伝導緩衝材101Aが配置され、挟み込まれている。なお、最も外側に位置する発熱部品112の外周面には、プレート115が積層されている。
【0051】
放熱板113の一端113aは、発熱部品112の一端112aよりも突出している。放熱板113の突出した一端113aは先端部分において90°折り曲げられている。
【0052】
熱伝導緩衝材101Aは、得られた熱伝導緩衝材101がわずかに圧縮変形された状態である。熱伝導緩衝材101Aは、放熱板113と冷却器114とで挟み込まれている。熱伝導緩衝材101Aの第1の主面101aは、発熱部品112の一端112aに接しておらず、放熱板113の一端113aに接している。熱伝導緩衝材101Aの第1の主面101aと発熱部品112の一端112aとの間には、内部空間A(空気層)が存在する。熱伝導緩衝材101Aの第1の主面101aとは反対の第2の主面101bは冷却器114の第1の主面114aに接している。発熱部品112として電池セルを用い、電気機器111として組電池を作製した。
【0053】
(評価)
(1)曲げ強度
得られた熱伝導緩衝材の曲げ強度は、万能試験機RTC−1310A(オリエンテック社製)を用いて、JIS K7111に準拠し、長さ8cm、幅1cm及び下記の表1に示す組付け前の熱伝導緩衝材の厚みの試験片を、支点間距離6cm及び速度1.5mm/分の各条件で測定した。測定温度は25℃とした。
【0054】
測定の結果、実施例1における曲げ強度に対して、比較例1における曲げ強度は2.5倍であった。
【0055】
(2)熱伝導率
レーザーフラッシュ法により、アルバック理工社製「TC−7000」を用いて、熱伝導率を25℃にて測定した。下記の表1に示す組付け前の熱伝導緩衝材の厚みにおける圧縮前の熱伝導緩衝材の熱伝導率T1と、下記の表1に示す組付け後の熱伝導緩衝材の厚みにおける圧縮後の熱伝導緩衝材の熱伝導率T2とを測定した。
【0056】
熱伝導率T2が熱伝導率T1の5倍以上であった場合を「○」、熱伝導率T2が熱伝導率T1の5倍未満であった場合を「×」と判定した。
【0057】
(3)電気機器の評価
4組の発熱部品のうち、両末端の2組の発熱部品と、中央の2組の発熱部品との温度差を測定した。「放熱板−冷却器接触部」における温度差と、「放熱板−冷却器非接触部」における温度差とを測定した。
【0058】
結果を下記の表1に示す。なお、下記の表1における組付け後の熱伝導緩衝材の厚みは放熱板と冷却器との間に配置された部分の熱伝導緩衝材の厚みを意味する。
【0059】
【表1】

【符号の説明】
【0060】
1,1A…熱伝導緩衝材
1a…第1の主面
1b…第2の主面
2…基材シート
3…熱伝導体
4…発泡物
11…電気機器
12…発熱部品
12a…一端
13…放熱板
13a…一端
14…冷却器
14a…第1の主面
15…プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、熱伝導体と、発泡粒子の発泡物とを含み、
前記発泡物がシェルを有し、該シェルの内部が空隙である、熱伝導緩衝材。
【請求項2】
前記発泡粒子が熱膨張性マイクロカプセルであり、前記発泡物が熱膨張発泡物である、請求項1に記載の熱伝導緩衝材。
【請求項3】
前記熱伝導体100重量%中の90重量%以上が、前記発泡物の内部の空隙とは異なる領域に存在する、請求項1又は2に記載の熱伝導緩衝材。
【請求項4】
複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器とを備える電気機器において、前記放熱板と前記冷却器との間に配置して用いられる熱伝導緩衝材である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱伝導緩衝材。
【請求項5】
複数の発熱部品と、該発熱部品間に配置された少なくとも1つの放熱板と、少なくとも1つの冷却器と、前記放熱板と前記冷却器との間に配置された熱伝導緩衝材とを備え、
前記熱伝導緩衝材が、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱伝導緩衝材である、電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−216813(P2012−216813A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−71567(P2012−71567)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】