説明

熱動形過負荷継電器

【課題】調整ダイヤルを定位置に保持し、安定した動作特性を得ることが可能な熱動形過負荷継電器を提供する。
【解決手段】外郭ケース1と、外郭ケース1に設けられた調整ダイヤル挿入穴1aに挿入され、整定電流の調整をする調整ダイヤル12と、該調整ダイヤル12を固定する線バネ13を備えた熱動形過負荷継電器において、前記調整ダイヤル12の軸部12aに傾斜面12bを設け、該傾斜面12bに前記線バネ13に設けた保持部13aを固定するとともに、前記調整ダイヤル12を前記外郭ケース1に保持した状態で調整ダイヤル12を回転させても前記線バネ13の回転を防止する掛止部1cを外郭ケース1の内部の設けた構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器などに組み合わせて使用する熱動形過負荷継電器(サーマルリレー)に関し、詳しくは調整ダイヤルの保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
まず、頭記した熱動形過負荷継電器の代表的な従来構造を図6に示す。
図6において、1は樹脂モールド製の外郭ケース、2は主回路に接続したヒータ2aの発熱を受けて湾曲する主バイメタル、3は主バイメタル2の自由端に連係させたシフター、4はシフター3の変位に従動する釈放レバー、5は釈放レバー4で駆動させる出力接点の開閉機構で、該開閉機構5は釈放レバー4に連係させた反転ばね6と、反転ばね6に連結したスライダ7と、スライダ7の動きに応動して開閉動作する出力接点8(a接点)および9(b接点)と、リセットスイッチ10との組立体からなる。また、11は前記釈放レバー4を揺動可能に軸支保持した調整リンク、12は調整リンク11の上端側に連係させて整定電流を調整する調整ダイヤルである。
上記の熱動形過負荷継電器の動作は周知の通りであり、主回路に流れる過負荷電流により主バイメタル2が湾曲すると、シフター3を介して釈放レバー4が支軸11aを中心に回転して反転ばね6を反転させ、開閉機構5のスライダ7を駆動して出力接点8,9を反転させて接点信号を出力する(例えば、特許文献1参照)。
次に、熱動形過負荷継電器の整定電流値の調整方法を説明する。図6において、調整ダイヤル12を回すと、カム部12cに当接している調整リンク11が外郭ケース1のケース支軸1bを支点として変位する。これに伴って調整リンク11に連結された釈放レバー4も変位して移動し、釈放レバー4とシフター3の先端との間のギャップを変化させることができる。
ここで、調整ダイヤル12を外郭ケース1への組立方法を図6,図7に基づいて説明する。調整ダイヤル12を所定の組立位置に保持させるために、調整ダイヤル12の軸部12aと外郭ケース1との間には、図7に示すようにバネ線材(例えばピアノ線)を図示のような形状に曲げ加工して撓ませた線バネ13を介装し、そのばね反力で調整ダイヤル12を定位置に押圧保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−160346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した従来の熱動形過負荷継電器では、調整ダイヤル12を定位置に保持するためには、調整ダイヤル12の側面にバネ線材を挿入するスペースが必要となる。更に、熱硬化性樹脂のケースであれば、ある程度の肉厚を確保することは可能だが、熱可塑性樹脂を外郭ケース1へ使用しているため、調整ダイヤル12挿入後に、調整ダイヤル12が傾斜しないように外郭ケース1の一部分に肉厚を設けることは、ケース自体の変形の原因になってしまうという問題がある。
【0005】
また、調整ダイヤル12を外郭ケース1に固定する際、バネ線材は調整ダイヤルの側面または1点支持により固定されているため、調整ダイヤル12の固定でガタが発生し、動作に不具合が発生してしまうという問題もある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、バネ線材を挿入するスペースが小さくても調整ダイヤルを保持できる構造であるとともに、熱可塑性樹脂のケースによる薄肉部でも採用できる構造にし、安定した動作を可能にした熱動形過負荷継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、外郭ケースと、外郭ケースに設けられた調整ダイヤル挿入穴に挿入され、整定電流の調整をする調整ダイヤルと、該調整ダイヤルを固定する線バネを備えた熱動形過負荷継電器において、前記調整ダイヤルの軸部に傾斜面を設け、該傾斜面に前記線バネに設けた保持部を固定するとともに、調整ダイヤルを前記外郭ケースに保持した状態で調整ダイヤルを回転させても前記線バネの回転を防止する掛止部を前記外郭ケースの内部に設けた構造とする(請求項1)。
【0008】
また、上記の熱動形過負荷継電器において、次記のような態様で構成することができる。
(1)前記掛止部を溝形状とする(請求項2)。
(2)前記掛止部を突起形状とする(請求項3)。
(3)前記線バネの保持部をU字形状に成形し、該U字形状の保持部を前記調整ダイヤルに設けた傾斜面の周面に固定する(請求項4)。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、構造上、線バネを挿入するスペースが小さくても、調整ダイヤルの周囲に線バネの径寸法程度のスペースがあれば固定でき、調整ダイヤルの回転時のトルクを確保するとともに、調整ダイヤルの抜け防止が可能となる。また、熱可塑性樹脂を用いたケースにおいても、ケースの肉厚を必要とせず、薄肉の部分においても適用可能となり、安定した動作特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図で、(a)は外郭ケースと調整ダイヤルと線バネの部品を示す斜視図,(b)は(a)を組み立てた状態の斜視図
【図2】本発明の実施例を示す熱動形過負荷継電器の斜視図
【図3】図2に示すA−A断面の拡大図
【図4】(a)は図3に示すB部の拡大図,(b)は図3に示すC部の拡大図
【図5】本発明のその他の実施の形態を示す斜視図
【図6】従来例を示す熱動形過負荷継電器の内部構造の正面図
【図7】従来の調整ダイヤルと線バネの斜視図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に示す実施例に基づいて説明する。なお、図6,図7に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
図1は、本発明の熱動形過負荷継電器の外郭ケースと調整ダイヤルと線バネを示しており、(a)は、外郭ケースと調整ダイヤルと線バネの各部品を示した斜視図、(b)は(a)を組み立てた状態の斜視図である。図2は、本発明の熱動形過負荷継電器の斜視図、図3は、図2に示したA−A断面の拡大図である。図4(a)は、図3に示したB部の拡大図であり、図4(b)は、図3に示したC部の拡大図である。
【0012】
すなわち、図1に示す実施例において、調整ダイヤル12の軸部12aには傾斜面12bが設けられおり、外郭ケース1内部には調整ダイヤル12を挿入する調整ダイヤル挿入穴1aと、線バネ13の回転を防止するための掛止部1cが設けられている。また、調整ダイヤル12の軸部12aに設けた傾斜面12bに線バネ13を保持するために、線バネ13に保持部13aを設け、U字形状に成形する。
【0013】
図1に示すように、調整ダイヤル12は、調整ダイヤル12の軸部12aに傾斜面12bを設け、外郭ケース1の調整ダイヤル挿入穴1aへ挿入される。外郭ケース1の調整ダイヤル挿入穴1aへ挿入された調整ダイヤル12は、調整ダイヤル12の傾斜面12bに線バネ13を図1(b)に示すように圧入する。圧入された線バネ13は、線バネ13の保持部13aを調整ダイヤル12の軸部12aに設けた傾斜面12bの周面に固定し、線バネ13の保持部13aを設けていない端部は、外郭ケース1に設けた掛止部1cに掛止され固定される。これによって、調整ダイヤル12が外郭ケース1の調整ダイヤル挿入穴1aからの抜け止めとするとともに、調整ダイヤル12に固定された線バネ13の回転防止とすることができる。
【0014】
また、図4(a),(b)にも示している通り、調整ダイヤル12の傾斜面12bに圧入固定された線バネ13は、線バネ13の張力方向に加わる「イ」の力と、調整ダイヤル12を下方に押し付ける「ロ」の力と、「ロ」の押し付ける力の反力により線バネ13が外郭ケース1を押し付ける「ハ」の力によって、強固に固定される。
【0015】
よって、上記に説明した構成によって、整定電流を調整する際に調整ダイヤル12を回転させるが、その回転時のトルクを確保するとともに、調整ダイヤル12の外郭ケース1からの抜け止めを防止することができる。また、構造的に線バネ13を挿入するスペースを必要とせず、調整ダイヤル12の周囲に線バネ13の径寸法程度のスペースがあれば充分にその機能を果たし、採用することが可能となる。
【0016】
なお、本実施例では外郭ケース1に設けた掛止部1cは突起形状と限定しているが、突起だけではなく、外郭ケース1自体に溝を設けて線バネ13の回転防止としても良い。
また、線バネ13の形状を図1に示すように保持部13aをU字形状としているが、図5に示すような形状としても良い。これによって線バネ13の脱着が容易となる。
【符号の説明】
【0017】
1 外郭ケース
1a 調整ダイヤル挿入穴
1b ケース支軸
1c 掛止部
2 主バイメタル
3 シフター
4 釈放レバー
5 接点開閉機構
6 反転ばね
7 スライダ
8 出力接点(a接点)
9 出力接点(b接点)
10 リセットスイッチ
11 調整リンク
11a 支軸
12 調整ダイヤル
12a 調整ダイヤル軸部
12b 調整ダイヤル傾斜面
12c 調整ダイヤルカム面
13 線バネ
13a 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭ケースと、外郭ケースに設けられた調整ダイヤル挿入穴に挿入され、整定電流の調整をする調整ダイヤルと、該調整ダイヤルを固定する線バネを備えた熱動形過負荷継電器において、前記調整ダイヤルの軸部に傾斜面を設け、該傾斜面に線バネに設けた保持部を固定するとともに、前記調整ダイヤルを前記外郭ケースに保持した状態で調整ダイヤルを回転させても前記線バネの回転を防止する掛止部を外郭ケースの内部に設けたことを特徴とする熱動形過負荷継電器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱動形過負荷継電器において、掛止部は突起形状としたことを特徴とする熱動形過負荷継電器。
【請求項3】
請求項1に記載の熱動形過負荷継電器において、掛止部は溝形状としたことを特徴とする熱動形過負荷継電器。
【請求項4】
請求項1に記載の熱動形過負荷継電器において、前記線バネの保持部をU字形状に成形し、該U字形状の保持部を調整ダイヤルに設けた傾斜面の周面に固定したことを特徴とする熱動形過負荷継電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109117(P2012−109117A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257015(P2010−257015)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(508296738)富士電機機器制御株式会社 (299)