説明

熱可塑性ポリウレタンを組み込んだゴルフボール

【課題】硬い感触を軽減し、またグリーンに向かってアプローチショットを打つ場合のコントロール性向上したツーピースゴルフボールの提供。
【解決手段】一つ以上のコアを有する、単数又は複数のコア層204、206、単数又は複数のコア層204、206を包囲する、熱可塑性ポリウレタンの擦過傷耐性カバ208ー、及び、必要に応じて、カバー208と単数又は複数のコア層204、206の間に位置づけられるマントル層を含む、高反撥弾性ゴルフボール。カバー208は、イソシアネートモノマー及び多分岐ポリオール、必要に応じて追加されるポリオール、及び一つ以上の鎖伸長剤を含む樹状熱可塑性ポリウレタンから製造される。必要に応じて使用されるマントル層も、熱可塑性ポリウレタン、特に、樹状熱可塑性ポリウレタンから製造されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、一つのコア層、又は一つ以上のコアを有する複数の層、擦過傷耐性カバーであって、該一つ又は複数のコア層を包囲する熱可塑性ポリウレタンを含むカバー、及び、カバーと、単数又は複数のコア層との間に必要に応じて設けられるマントル層を含む、反撥弾性ゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、ゴルフボールは著明な変化を遂げている。例えば、ゴムコアは、品質の一貫性、及び、比較的長距離を可能とするドライバースピンの減少などの性能利点のために、徐々に糸巻きコアに取って代わってきている。他にも、カバー、及びゴルフボール上のディンプルパターンにおいて著明な変化が起こっている。
【0003】
ゴルフボールのデザイン及び技術は進歩し、そのため、全米ゴルフ協会("USGA")は、USGA認可イベントにおいて、130フィート/秒の速度を有するドライバーによって打たれた場合(以後、「USGA試験」と呼ぶ)、250フィート/秒の初速を達成することが可能な全てのゴルフボールの使用を禁ずるとする規則を設けるまでに至った(ロイヤルアンドエンシェントクラブ、セントアンドリュース("R&A")も、R&A認可イベントのために同様の規則を設けた)。メーカーは、USGA試験においてこの限界を超えることなく可能な最高速度を一貫して実現するゴルフボールの生産に大きな力点を置いている。そうは言っても、市販のゴルフボールは、ある範囲の、例えば、速度、スピン、及び圧縮度などの、様々な特性及び特徴を有する。したがって、広範囲のゴルファーの要求及び願望に応えるために、種々の異なるボールが用意されてもよい。
【0004】
構造とは無関係に、多くのプレイヤーは、多くの場合、最大距離に達するゴルフボールを求める。当然、この性質のボールは、インパクトの際、高い初速を要求する。その結果、ゴルフボールメーカーは、常に、あらゆるスキルレベルのゴルファー達に最大性能を提供するゴルフボールを供給するための新規方法を探求し、より低い圧縮ボールでありながら、一般に高圧縮ボールと関連する性能の実現を可能とする組成を見出そうと追求している。
【0005】
ソリッド構造を持つボールは、一般に、平均的な休日ゴルファーにおいてもっともポピュラーである。なぜなら、それらのボールは、最大距離を実現する一方で、きわめて高耐久度のボールを提供するからである。ソリッドボールは、多くの場合、ポリブタジエンなどの架橋結合ゴム、すなわち、ジアクリル酸亜鉛及び/又は同様の架橋剤によって化学的に架橋結合されるゴムから製造される単一ソリッドコアを含み、これは、次に、丈夫でカットプルーフ(創傷耐性)な混合カバーを実現するために、SURLYN(登録商標)(DuPont(登録商標)によって生産されるアイオノマー樹脂に対する商標)などのカバー材料の内部に封入され、よく「ツーピース(二層)」ゴルフボールと呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単一ソリッドコアとカットプルーフカバーのこのような組み合わせは、このようなツーピースゴルフボールに高い初速を与えることを可能とし、距離の向上をもたらす。しかしながら、このようなツーピースゴルフボールに使用される材料は、きわめて硬い場合がある。そのため、ツーピースボールは、構造によっては、クラブで打った場合、硬い「感触」を与える。同様に、その硬さのために、これらのツーピースボールは、一方では比較的長い距離を与えるものの、スピン率が比較的低い可能性があり、例えば、グリーンに向かってアプローチショットを打つ場合、時としてコントロールが比較的難しい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1局面では、一コア層、又は、一つ以上のコアを含む複数層;及び、該単数又は複数のコア層を包囲し、複数のディンプルを含むディンプルパターンを含む外表面を有するカバーを含むゴルフボールを含む物品が提供され、ここで、カバーは、一つ以上のイソシアネートモノマー、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する、一つ以上の多分岐(hyperbranched)ポリオールから形成される熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0008】
第2局面では、一コア層、又は、一つ以上のコアを含む複数層;該単数又は複数のコア層を包囲し、複数のディンプルを含むディンプルパターンを含む外表面を有するカバーを含むゴルフボールを含む物品が提供され、ここで、該一つ以上のコアは、該一つ以上のコアの曲面で測定した場合約65以下のショアD硬度、約10から約130 kgの負荷の下で約2から約3.2mmの偏向量、及び、40 m/secにおいて約0.75から約0.89の反撥係数を有し;ここで、該カバーは、一つ以上のイソシアネートモノマー、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する、一つ以上の多分岐ポリオール、必要に応じて一つ以上の他のポリオール、及び、必要に応じて、一つ以上の鎖伸長剤から形成される熱可塑性ポリウレタンを含み、該単数又は複数のコア層よりも大きな比重、約0.5から約2 mmの厚みを有し、外表曲面で測定した場合約50から約65のショアD硬度を有し、且つ、目視による比較試験において1又は2の擦過傷耐性スコアを有する。
【0009】
第3局面では、一コア層又は複数コア層、該単数又は複数コア層を包囲するカバー、及び、該カバーと該単数又は複数コア層との間に必要に応じて設けられるマントル層を含むゴルフボールにおいて:該複数コア層は、曲面を有し、少なくとも部分的に中和される熱可塑性アイオノマー樹脂を含む内方コアにおいて、該内方コアの曲面で測定した場合約65以下のショアD硬度を有し、且つ、約10から約130 kgの負荷の下で約2.5から約4.5
mmの偏向量を有し、40 m/secで、約0.75から約0.89で、該ゴルフボールの単数又は複数コア層のものよりも大きな反撥係数を有する、内方コア;及び、曲面を有し、該内方コアを包囲する外方コアにおいて、弾性材料を含み、該外方コアの曲面で測定した場合約45から約65のショアD硬度を有する、外方コアを含み;該単数又は複数のコア層を包囲し、約550から約800 mm3の合計ディンプル体積を与える複数のディンプルを含むディンプルパターンを含む外表面を有するカバーにおいて、一つ以上のイソシアネートモノマー、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する、一つ以上の多分岐ポリオール、必要に応じて一つ以上の他のポリオール、及び、必要に応じて、一つ以上の鎖伸長剤から形成される熱可塑性ポリウレタンを含み、該単数又は複数のコア層よりも大きな比重、約0.5から約2 mmの厚みを有し、外表曲面で測定した場合約40から約65のショアD硬度を有し、且つ、1又は2の擦過傷耐性スコア(目視による比較試験に基づく)を有する、カバー;カバーと単数又は複数コア層の間に位置づけられる、必要に応じて設けられるマントル層において、少なくとも部分的に中和される熱可塑性アイオノマー樹脂又はウレタン樹脂を含み、外方コアのものよりも大きな比重を有し、約0.3から約3 mmの厚みを有する、マントル層を含むゴルフボール、を含む物品が提供される。
【0010】
第4局面では、ゴルフボールは、コア、該コアを包囲するカバー、及び、該カバーと該コアの間に配置されるマントル層を含み、ここで、該マントル層は、カバーに隣接して位置づけられる。カバーの少なくとも一つは、イソシアネートモノマー、ポリオール、鎖伸長剤、及び、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する多分岐ポリオールから形成される熱可塑性ポリウレタンを含む。この熱可塑性ポリウレタンの反撥性は、該熱可塑性ポリウレタンの硬度が増すにつれて増加する。
【0011】
本発明のこれらの局面に関する、他の変更、改変、特色、利益、及び利点は、当業者には明白であろうし、或いは、下記の図面及び詳細な説明を精査することによって明白となろう。そのような変更、改変、特色、利益、及び利点は全て、本明細書及び本概要の範囲に含まれ、本発明の範囲に含まれ、かつ、添付の特許請求項による定義に従って保護されることが意図される。
【0012】
本発明は、下記の図面及び説明を参照することによってさらによく理解することが可能である。図面の成分は必ずしも実尺に合致するものではなく、強調はむしろ本発明の原理の具体的説明に置かれる。さらに、図面において、同じ参照数字は、種々の投影図を通じて対応する部品を表示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ゴルフボールの斜視図である。
【図2】図1の直線2-2に沿って得られる、ゴルフボール実施態様の断面図である。
【図3】図1の直線2-2に沿って得られる、ゴルフボールの別実施態様の断面図である。
【図4】最高の擦過傷耐性、すなわち、「1」なる擦過傷スコアを持つカバーを有するゴルフボールの模式図である。
【図5】図4のゴルフボールの拡大模式図である。
【図6】最低の擦過傷耐性、すなわち、「5」なる擦過傷スコアを持つカバーを有するゴルフボールの模式図である。
【図7】図6のゴルフボールにおいて、異なる角度から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるゴルフボールには、イソシアネートモノマー、及び、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する多分岐ポリオールを含む熱可塑性材料を含むカバー材料(このカバー材料を以後「樹状TPU」と呼ぶ)が設けられる。色々の特性の内でも特に、このカバー材料は、下記に詳述するように、擦過傷耐性の向上を提供する点で有利である。
【0015】
比較的最近、アイオノマー材料などの複数の熱可塑性材料層を持つ、多層ゴルフボールが製造されている。このような多層ボールでは、ティーショットではスピンがより低くなるが、グリーンに対するアプローチショットではスピンが増すように、などの追加特色を加えるため、種々の材料から成る比較的薄い層が共に融合される場合がある。例えば、これらの層の一つは、マントル層中の硬いアイオノマー樹脂であり、一方、より柔らかいエラストマー材料は、外方カバーに隣接する層を形成する。アイオノマーの比較的薄い層が使用されるのは、アイオノマー樹脂の反撥弾性が比較的低いこと、特に、コア又はコアの種々の部分を形成するために使用されるエラストマー材料に比べて低いためである。
【0016】
DuPontによって開発されたものと同じような、高度に中和されるアイオノマーは、他のエラストマー材料の反撥弾性に対し、それと同等の、又はそれよりも優れた反撥弾性を有する。これらの高度に中和されるアイオノマーは、ゴルフボールコア製造技術発展の次段階を代表する可能性がある。さらに、熱可塑性材料から製造されるゴルフボールコアの品質は、例えば、架橋結合ポリブタジエンなどの熱硬化性エラストマーゴムコアと比べると、その品質がより均一であると考えられる。同様に、ゴルフボールに対し比較的スピンを与え易く、したがって、飛行中及び着地時のコントロールをし易くする、より柔らかい感触を実現するために、ゴルフボールのカバーにおいて、より硬く、より弾性の低い、架橋結合アイオノマー樹脂(例えば、SURLYN)の代わりに、より弾性の高い熱可塑性材料、例えば、熱可塑性ポリウレタンを使用してもよい。
【0017】
ゴルフボールの比較的大きいCOR(比較的大きい反撥弾性)を、該ゴルフボールのカバーにおける擦過傷耐性の向上と組み合わせることは、依然として難題である。ゴルフボールのカバーをより軟らかくすること(したがって、より大きなスピン及びより大きなコントロールだけでなく、より大きな反撥弾性を賦与すること)によって、カバーは、より切れ易く、擦られ易く、剥がされ易く、摩耗し易くなる傾向を持つ。このことは、特に、「四角い切れ込み溝を持つ」クラブヘッドの場合に当てはまる。このようなクラブヘッドは、他の一般的な溝形状よりも、より容易にゴルフボールのカバーを削いだり、切ったりする傾向がある。ゴルフボールの反撥弾性も、ゴルフボール内の様々なコア及び層の構成によって影響を受ける可能性がある。これはさらに、反撥弾性のみならず、スピンコントロールにも影響を及ぼす可能性がある。実際、矛盾する要求又は願望が生じる場合がある、すなわち、ドライバーショットなどの比較的長いショットでのゴルフボールには、少ないか又はより低いスピンを賦与したいが、一方、アプローチショット又は風に向かって放つショットではゴルフボールに対し、より高度の、又はより大きいスピンを賦与したいと思うのがそれである。
【0018】
<定義>
本発明について説明する前に、いくつかの用語を定義することは便利である。下記の定義は、本出願を通じて使用されることを了解していただきたい。
【0019】
この用語の定義が、該用語の一般的に使用される意味と乖離する場合、本出願人は、特にそうではないと明示しない限り、下記に提示される定義を用いるつもりである。
【0020】
本開示の目的のために、「ゴルフボール」という用語は、ゴルフゲームをプレイする際に使用される、任意の、全体として球形状のボールを指す。
【0021】
本開示の目的のために、「コア」という用語は、通常、ゴルフボールの中心により近いか、又は、中心に近接する、ゴルフボールの部分を指す。コアは、複数層であって、その際、ゴルフボールのもっとも中心に近い部分が「コア」又は「内方コア」であり、それを取り囲むコア層はいずれも、「外方コア」層である、複数層を有していてもよい。
【0022】
本開示の目的のために、「マントル」という用語は、一般に、単一又は複数のコア層と最外側カバーの間に位置づけられる、ゴルフボールの、必要に応じて設けられる単一又は複数層であって、カバーに対し近接又は隣接する層を指す。
【0023】
本開示の目的のために、「カバー」という用語は、一般に、ゴルフボールの最外側層であって、多くの場合、その外表面にディンプルから成るパターン(ディンプルパターン)を有する層を指す。
【0024】
本開示の目的のために、「ディンプル」という用語は、ゴルフボールカバーの外表面の中に沈む陥凹、又は、該外表面から浮上する突起であって、該ゴルフボールの飛行をコントロールするために使用される陥凹又は突起を指す。ディンプルは、半球状(すなわち、球体の半分)、又は、半・半球状(すなわち、半球の一部又は部分)において、半球状及び半・半球状ディンプルの各種の組み合わせを含んでもよいばかりでなく、楕円形状、正方形状、多角形状、例えば、六角形状などであってもよい。その形がより半球状であるディンプルは、「より浅い」ディンプルと呼んでもよく、一方、その形状がより球状であるディンプルは、「より深い」ディンプルと呼んでもよい。
【0025】
本開示の目的のために、「ディンプルパターン」という用語は、ゴルフボールカバーの外表面における複数のディンプルの配置を指す。ディンプルパターンは、同じ形、異なる形を有するディンプル、パターン内におけるディンプルの異なる配置(形及び/又はサイズの両方に関して)、反復サブパターン(すなわち、ディンプルパターン内部の、より小さいディンプルパターン)、例えば、球状三角などを含んでもよい。ある実施態様では、ディンプルパターン内のディンプルの合計数は、約250から約500の範囲、例えば、約300から400の範囲にあってもよい。ディンプルパターンにおけるディンプルの合計数は、多くの場合偶数(例えば、336又は384ディンプルであるが)、奇数(例えば、333ディンプル)であってもよい。
【0026】
本開示の目的のために、「総ディンプル体積」という用語は、ディンプルパターンを構成する全てのディンプルの、集合、合計、併合などの体積を指す。
【0027】
本開示の目的のために、「熱可塑性」という用語は、熱可塑性という用語の通例の意味を指す、すなわち、熱に暴露されると軟化し、室温(例えば、約20°から約25℃)に冷却されると、一般に、その元の形に復帰する材料の性質を提示する組成物、化合物、材料、媒体、物質など、例えば、高分子ポリマーを指す。
【0028】
本開示の目的のために、「熱硬化性」という用語は、熱硬化性という用語の通例の意味、すなわち、融解温度を持たないように架橋結合され、溶媒に溶解することはできないが、溶媒によって膨潤する場合がある、組成物、化合物、材料、媒体、物質などを指す。
【0029】
本開示の目的のために、「ポリマー」という用語は、30を超えるモノマー単位を有する分子で、一つ以上のモノマー又はオリゴマーの重合によって形成又は取得される分子を指す。
【0030】
本開示の目的のために、「オリゴマー」という用語は、2から30モノマー単位を有する分子を指す。
【0031】
本開示の目的のために、「モノマー」という用語は、一つ以上の官能基を有し、オリゴマー及び/又はポリマーを形成することが可能な分子を指す。
【0032】
本開示の目的のために、「アイオノマー」という用語は、少なくとも一つのカルボン酸基を有し、一つ以上の塩基(塩基の混合物を含む)によって、少なくとも部分的に、又は完全に中和されて、カルボン酸塩モノマー(又は、カルボン酸塩モノマーの混合物)を供給するモノマーを指す。例えば、このアイオノマーは、カルボン酸ナトリウム及び亜鉛塩の混合物、例えば、創傷耐性ゴルフボールカバーのために、DuPont社の商標SURLYNの下に販売されるアイオノマー樹脂の製造に使用される混合アイオノマーを含んでもよい。
【0033】
本開示の目的のために、「アイオノマー樹脂」という用語は、一つ以上のアイオノマー単位、又は複数のアイオノマーを含むか、又はそれらから形成されるオリゴマー又はポリマーであって、一つ以上のアイオノマー(例えば、少なくとも部分的に、又は完全に中和されるメタクリル酸)と、一つ以上の、エチレンなどの、アイオノマーではないモノマー又はオリゴマーとのコポリマーであってもよいオリゴマー又はポリマーを指す。
【0034】
本開示の目的のために、高度に中和されるポリマーという用語は、その電荷の大部分が、カウンターイオン材料の付加によって打ち消されるポリマーを指す。高度に中和されるポリマーでは、95%以上の電荷散逸が得られてもよい。
【0035】
本開示の目的のために、「エラストマー」という用語は、弾性性質を有するオリゴマー又はポリマーを指し、本明細書では「ゴム」という用語と相互交換的に用いられる場合がある。
【0036】
本開示の目的のために、「ポリイソシアネート」という用語は、二つ以上のイソシアネート官能基(例えば、ジイソシアネート)を有する有機分子を指す。本発明において有用なポリイソシアネートは、脂肪族又は芳香族、或いは、芳香族と脂肪族の組み合わせであってもよく、下記の、ただしこれらに限定されないが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、イソプレンジイソシアネート(IPDI)などを含んでもよい。
【0037】
本開示の目的のために、「ポリオール」という用語は、二つ以上のヒドロキシ官能基を有する有機分子を指す。
【0038】
本開示の目的のために、「ポリウレタン」という用語は、ウレタン(カルバメート)連結によって接合されるポリマーであって、例えば、ポリオール(又は、開環機構などによってポリオールを形成する化合物、例えば、エポキシド)及びポリイソシアネートから調製されてもよいポリマーを指す。本発明において有用なポリウレタンは、熱可塑性又は熱硬化性であってもよいが、カバーに使用される場合は熱可塑性である。熱可塑性ポリウレタンのソフトセグメントはさらに、擦過傷耐性の向上又は硬度の上昇を実現するように、多分岐又は樹状ポリオールと部分的に架橋結合されてもよい。
【0039】
本開示の目的のために、「樹状分子」という用語は、繰り返し分枝される(「多分岐」とも呼ばれる)分子であって、多くの場合、その構造はきわめて対称的で、モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマーであってもよい分子を指す。
【0040】
本開示の目的のために、「多分岐ポリオール」又は「樹状ポリオール」という用語は、反復的に分枝され(多分岐−hyper branched)、複数のヒドロキシ官能基(例えば、一つ以上のヒドロキシ基を含む官能基)を有する、樹状分子(モノマー、オリゴマー、及び/又はポリマー)と相互交換的に使用される。「多分岐ポリオール」又は「樹状ポリオール」としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールなどが挙げられる。例えば、ポリエステルポリオールは、ジオールから誘導される中心的ポリオール成分を含む「星形」であって、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオールなどの一つ以上のヒドロキシアルキル鎖を有し、ビス−2−ヒドロキシメチル−プロパノイン酸などの、一つ以上のポリヒドロキシカルボン酸、又はその誘導体から形成されるポリオールエステル分枝を含む星形ポリオールであってもよい。
【0041】
本開示の目的のために、用語「多分岐ポリオール」及び「樹状ポリオール」を参照して使用される「ヒドロキシ価」という用語は、該分子の中にどれだけの数の反応性ヒドロキシ基(又は、ヒドロキシ基の等価物)が存在するかを指す。例えば、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する多分岐ポリオールは、平均して、約2.1から約36の反応性ヒドロキシ基を有するポリオール(又は、ポリオール混合物)を意味する。
【0042】
本開示の目的のために、「他のポリオール」という用語は、「多分岐ポリオール」又は「樹状ポリオール」以外のポリオールを指す。これら他のポリオールとしては、ジオール、トリオールなど、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートジオールなどを含んでもよい。例えば、これらの他のポリオールは、「bio-renewable(生再生可能な)」ポリエーテルポリオール(すなわち、処理の際、環境に対するインパクトが緩和されるポリエーテルポリオール)、例えば、11.22から224.11 mg KOH/gのヒドロキシル価を有する、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)などの内の一つ以上を含んでもよい。これらの「生再生可能な」ポリエーテルポリオール、例えば、ポリトリメチレンエーテルグリコールは、生再生可能な資源から、例えば、天然のトウモロコシの発酵プロセス、或いはむしろ合成化学プロセスを通じて誘導、取得、又は抽出などによって得られてもよい。
【0043】
本開示の目的のために、「鎖伸長剤」という用語は、比較的低分子量のポリウレタンの分子量を、より高い分子量ポリウレタンに増大させる介在因子を指す。鎖伸長剤は、一つ以上のジオール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールなど;トリオール類、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロールなど;及び、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどを含んでもよい。
【0044】
本開示の目的のために、「擦過傷耐性」及び「摩耗耐性」という用語(以後、まとめて「擦過傷耐性」と呼ぶ)は、ボール材料において、クラブヘッドによる衝撃のために生じる、印刻、裂傷、表面材料の剥離、穴開きなど(これらをまとめて「擦過傷」と呼ぶ)に対抗する、ボール材料の能力を指す。擦過傷耐性は、一つの例示試験プロトコールでは、1-5スケールに等級目盛りされた擦過傷を持つ試験ボールにおける擦過傷との、目視比較によって測定される。該スケールでは、「1」の擦過傷耐性スコアは、最高度の擦過傷耐性を有するボールを表し、「5」の擦過傷耐性スコアは、最低の擦過傷耐性を有するボールを表す。擦過傷耐性を測定するための、一試験プロトコールが、擦過傷耐性試験プロトコールの下に後述される。ただし、擦過傷耐性を決定するために、他の試験プロトコールを使用することも可能である。
【0045】
本開示の目的のために、「反撥弾性率」という用語は、ゴム、又はゴム様特性を持つように処方される物質の材料特性を指し、その際、反撥弾性率は、材料の保存弾性率と該材料の損失弾性率の間の関係によって定義されるヒステレシスエネルギー損失の表示である。反撥弾性率は、一般に、パーセントで表され、このパーセントは、ヒステレシス損失に反比例する。材料単独については、反撥弾性率は、ASTM D7121-05標準法など、公知のいずれの方法を用いて測定してもよい。ゴルフボールシステムの反撥弾性率は、ゴルフボールの成分として使用される材料の反撥係数(COR)、ゴルフボールの分離部分(単数又は複数)又は分離成分(単数又は複数)(例えば、コア、層、カバーなど)のCOR、或いは、ゴルフボールのCORによって測定されてもよい。
【0046】
本開示の目的のために、「慣性モーメント(MOI)」という用語は、対象物が、その回転率の変化に対して示す抵抗に関する測定値を指し、gcm2の単位で与えられてもよい。MOIという用語はさらに、「質量慣性モーメント("mass moment of inertia")」及び"angular
mass"という用語を相互交換的に指す。
【0047】
本開示の目的のために、「反撥係数(COR)」という用語は、インパクト前後の対象物の速度の比を指す。1のCORは、衝突によるエネルギー損失がない、完全な弾性衝突を表し、一方、0のCORは、エネルギーの全てが衝突中に散逸される、完全な非弾性衝突を表す。
【0048】
本開示の目的のために、「比重(SG)」という用語は、ある特定の温度及び圧における水の密度に対する、与えられた固体(又は液体)の密度の比、という通例の意味を指す。
【0049】
本開示の目的のために、「偏向」という用語は、ある構造要素が負荷の下にずらされる角度を指す。偏向の量(偏向量)は、ゴルフボール(又は、ゴルフボールの一成分又は複数成分)を圧縮する能力の測定値として使用してもよく、したがって、反撥弾性率(すなわち、COR)の測定値となる。
【0050】
本開示の目的のために、「ショアD硬度」という用語は、硬度計による、材料の硬度、特に、陥凹形成に対する材料の抵抗の測定値を指す。ショアD硬度は、コア、層、カバーなどの曲面に直接置かれる硬度計によって、ASTM法D2240にしたがって測定されてもよい。別の実施態様では、硬度は、標準的プラークを用いて測定してもよい。
【0051】
本開示の目的のために、「曲面」という用語は、ゴルフボール、コアの単一層又は複数層、コア、カバーなどの表面の、該ゴルフボール、コアの単一層又は複数層、コア、カバーなどの各種特性、特徴などを測定するために使用される曲性部分を指す。
【0052】
飛距離は、ゴルフボールの性能を評価するためのインデックスとして使用してもよい。飛距離は、三つの主要因子によって影響される、すなわち、「初速」、「スピン率」、及び「打ち上げ角度」である。初速は、ゴルフボールの飛距離に影響を及ぼす、主要な物理特性の一つである。反撥係数(COR)を、ゴルフボールの初速に代わる代替えパラメータとして用いてもよい。
【0053】
ゴルフボールの性能を測定するために使用してもよい、もう一つのインデックスはスピン率である。ボールのスピン率は、「バックスピン」又は「サイドスピン」に関して測定されてもよい。なぜなら、これらの異なるタイプのスピンは、ボールの飛行に対して異なる影響を及ぼすからである。飛行方向とは反対の、ボールスピンは、「バックスピン」と呼ばれる。ボールに対するスピンで、飛行方向に対しある角度で方向づけられるスピンはいずれも「サイドスピン」である。バックスピンは、一般に、ボールの飛距離に影響を及ぼす。サイドスピンは、一般に、ボールの飛行軌道の方向に影響を及ぼす。
【0054】
ゴルフボールのスピン率は、一般に、該ボールの中心を通る長軸の周囲にボールが回転する速度を指す。ボールのスピン率は、多くの場合、1分当たりの回転数で測定される。ボールのスピンはリフト(浮上)を引き起こすので、ボールのスピン率は、ボールの軌道に直接影響を及ぼす。高いスピン率を持つショットは、低いスピン率を持つボールと比べると、より高い高度に飛ぶ傾向がある。より高いスピン率を持つボールはより高く飛ぶ傾向があるので、過剰量のスピンを伴って打たれたボールが移動する総合距離は、理想的スピン量を伴って打たれたボールのそれよりも小さくなる傾向がある。逆に、不十分なスピン量を伴って打たれたボールは、キャリー距離を延ばすほど十分なリフトを生みださないので、著明な距離の損失を招く。したがって、理想量のスピンを伴ってボールを打つことが、該ボールの移動距離を最大にすると考えられる。
【0055】
<説明>
図1は、本発明の実施態様によるソリッドゴルフボール100の斜視図である。ゴルフボール100は、ゴルフボール100の外表面108に、複数のディンプル102をパターン112として配置させる、全体として球形状であってもよい。
【0056】
内部的には、ゴルフボール100は、一般に、所望の任意の数のピースを有する、複数層ソリッドゴルフボールとして構築されてもよい。言い換えると、複数層の材料は、一緒に融合、混合、又は圧縮されてボールを形成してもよい。ゴルフボールの物理的特徴は、コア層(単数又は複数)、必要に応じて任意に設けられるマントル層、及びカバーなどの組み合わせ特性によって定められてもよい。これらの成分それぞれの物理的特徴は、それぞれの化学的組成物によって定められてもよい。ゴルフボールの成分の大部分は、オリゴマー又はポリマーを含む。オリゴマー及びポリマーの物理的特性は、その組成、例えば、含まれるモノマー単位、分子量、架橋結合の程度などに大きく依存する場合がある。このような特性の例としては、可溶性、粘度、比重(SG)、弾性、硬度(例えば、ショアD硬度として測定されるもの)、反撥弾性率、擦過傷耐性などが挙げられる。使用されるオリゴマー及びポリマーの物理的特性は、ゴルフボールの成分を製造するのに使用される工業プロセスにも影響を及ぼす場合がある。例えば、射出成形が、使用される加工法である場合、極端に粘っこい材料はプロセスを遅くする可能性があり、したがって、粘度が、生産の制限工程となる場合がある。
【0057】
図2に示すように、このようなゴルフボールの一実施態様(全体を200と呼ぶ)は、内方コア204、カバー208、及び、内方コア204とカバー208の間の外方コア206を含む。
【0058】
カバー208は、ボールのコア及び、いずれのものであれ、他の内部層を、包囲、封入、被覆などする。カバー208は、複数のディンプルを含むディンプルパターンを含んでもよい外表面を有する。カバー208は、一つ以上のイソシアネートモノマー、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する一つ以上の多分岐ポリオールから形成される樹状TPU、必要に応じて一つ以上の他のポリオール、及び、必要に応じて一つ以上の鎖伸長剤を含む。カバー208は、コアのそれよりも相対的に高いSGを持ち、例えば、ある実施態様では、少なくとも約1.2のSGを持つ。カバー208は、任意の厚みを有していてもよいが、ある実施態様では、約0.5から約2 mmの範囲の厚みを有し、ある実施態様では、約1.0から約1.5 mmの厚みを有する。カバー208は、カバー208の外表曲面において測定した場合、ショアDスケールにおいて約40から約65の範囲の硬度を有していてもよい。ある実施態様では、硬度は、ショアDスケールにおいて約50から約60の範囲にあってもよい。カバー208は、比較的高いスピン率を有していてもよい。
【0059】
カバー208に使用される樹状TPUは、約2.1から約36のヒドロキシ価、例えば、約12から約36のヒドロキシ価を有する、一つ以上の多分岐/樹状ポリオールを含む。反応性ヒドロキシ基の数が約2.1よりも少ないと、得られる熱可塑性材料を少なくとも部分的に架橋する能力が発揮されず、そのため、該ゴルフボールカバーの擦過傷耐性が低下する可能性がある。反応性ヒドロキシ基の数が約36よりも多いと、得られる樹状TPUの分散性が比較的劣るばかりでなく、比較的高い粘度を賦与するので、ゴルフボールカバーの製造の際、ポリウレタンの加工が難しくなる可能性がある。
【0060】
さらに、約2.1から約36のヒドロキシ価、例えば、約12から約36のヒドロキシ価を有する、一種類以上の多分岐/樹状ポリオールを用いても、得られるTPUエラストマーは、射出及び押出成形に適切な物理的特性を有しているだけでなく、成形ゴルフボールに対し、擦過傷耐性、及び、少なくとも満足すべき、又は十分な反撥弾性を賦与する。このような多分岐/樹状ポリオールがTPUの調製に使用されないと、得られるポリウレタンは軟らかくなりすぎて加工が難しく、ゴルフボールに賦与される反撥弾性及び擦過傷耐性は、比較的低くなる。
【0061】
カバー208の各種実施態様において使用される樹状TPUはさらに、必要に応じて、一つ以上の他のポリオール、及び一つ以上の鎖伸長剤を含んでもよい。例えば、これらの樹状TPUは:(A)一つ以上の生再生可能なポリエーテルポリオール約30部から約70部(全体反応混合物の重量に対して);(B)一つ以上のポリイソシアネート約15から約60部(全体反応混合物の重量に対して);(C)約2.1から約36のヒドロキシ価を持つ一つ以上の多分岐ポリオール約0.1から約10部(全体反応混合物の重量に対して);及び、(D)一つ以上の鎖伸長剤約10から約40部(全体反応混合物の重量に対して)、から調製されてもよい。このような樹状TPUは、下記の工程:(1)前記必要に応じて加えられる鎖伸長剤、前記一つ以上のポリイソシアネート、必要に応じて加えられる前記一つ以上の他のポリオール、及び、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する、前記一つ以上の多分岐ポリオールを、この順序に混ぜ合わせること、を含むプロセスによって調製されてもよい。
【0062】
樹状TPUを調製するための、このプロセスはさらに、下記の追加工程:(2)工程(1)の混合物を、指定の期間、ある実施態様では、約1時間から約48時間、約60℃から約140℃の温度で硬化させること;(3)工程(2)で得られた産物を約0℃から約50℃において磨砕すること;及び、(4)工程(3)の磨砕材料を、約150℃から約300℃の範囲内の温度で押出又は射出成形すること、を含んでもよい。
【0063】
本発明のゴルフボール実施態様のカバー208において有用な樹状TPUの実施態様は、下記のように調製されてもよい。生再生可能なポリエーテルポリオール(Dupont
Cerenol H-200, OH-Value: After 56.11 mgKOH/g)18.8kg量、1,4-ブチレングリコール(BASF, 1,4-ブタンジオール)3.3 kg量、及び、多分岐ポリオール(HBP)(Perstorp, BOLTORN H-2003)0.4 kg量を60℃で3分攪拌した。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI) 12 kg量をこの混合物に注入し、次いで、800 rpmの速度で攪拌してポリマーを得た。(この多分岐ポリオール(Perstorp, BOLTORN H-2003)は、12-ヒドロキシ価基を持つ、Mw 2,300 g/mol(ヒドロキシル価:40.0 mg KOH/g)を有する材料で、デンドリマー(重合開始剤としてBis-MPA(2,2-ジメチオールプロピオン酸)を用いる樹状ポリマー)を含む。得られたポリマーを80℃で8時間保持し、次いで磨砕し、チップ(薄片形)状に調製し、次いで、230℃で押出し、磨砕形状においてペレットに成形した。この磨砕ペレットは、45のショアD硬度、320 kgf/cm2の引っ張り強度、110 kgf/cmの破断強度、400%の伸長度、及び、40%の反撥弾性率を有する。
【0064】
本発明のゴルフボール実施態様のカバー208において有用な樹状TPUの別の実施態様は、下記のように調製されてもよい。生再生可能なポリエーテルポリオール(BASFPoly THF-2000, OH-Value; After 56.11 mg KOH/g) 18.8 kg量、1,4-ブチレングリコール(BASF 1,4-ブタンジオール) 3.3 kg量、及び多分岐ポリオール(HBP)(Perstorp, BOLTORN H-2003)0.4 kg量を60℃で3分攪拌した。ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI) 12 kg量をこの混合物に注入し、次いで、800 rpmの速度で攪拌してポリマーを得た。(この多分岐ポリオール(Perstorp, BOLTORN H-2003)は、12-ヒドロキシ価基を持つ、Mw 2,300 g/mol(ヒドロキシル価:40.0 mg KOH/g)を有する材料で、デンドリマー(重合開始剤としてBis-MPA(2,2-ジメチオールプロピオン酸)を用いる樹状ポリマー)を含む。得られたポリマーを80℃で8時間保持し、次いで磨砕し、チップ(薄片形)状に調製し、次いで、230℃で押出し、磨砕形状においてペレットに成形した。この磨砕ペレットは、45のショアD硬度、300 kgf/cm2の引っ張り強度、100 kgf/cmの破断強度、400%の伸長度、及び、40%の反撥弾性率を有する。
【0065】
ゴルフボールのカバーに樹状TPUを使用することの一利点は、擦過傷耐性の向上である。言い換えると、樹状TPUカバーは、カバーに従来材料を持つ、同様に構築されるボールよりも、クラブフェイスの衝撃による傷害を受けにくい。擦過傷耐性は、いずれの技術を用いて測定又は評価してよい。ゴルフクラブによる指定の数の打撃後の、ボール表面の外観に関する目視検査に基づく例示の試験プロトコールを下記に示す。本出願に論じられる実施態様のカバーのTPU材料の擦過傷耐性が、従来型のゴルフボールの擦過傷耐性よりも大きいことを示すためには、いずれのタイプの擦過傷耐性試験及び測定スキームを使用してもよい。試験プロトコールに関するこの議論は、カバーTPU材料の擦過傷耐性の上昇を示すことが可能な一つの方法に関する具体例として意図されるものである。これは、擦過傷耐性評価法又はスケールに関する網羅的議論であることを意図するものではない。どのような擦過傷耐性試験及び試験法であっても使用することが可能である。
【0066】
<例示の擦過傷耐性試験プロトコール>
この例示の試験は、試験されるボールのカバーの外観を目視で比較することによってボールカバーの擦過傷耐性を測定するように設計される。各サンプルボールは、ゴルフ実験ロボットを用い、強衝撃的に溝を切られたウェッジによって、三つの異なる地点において打たれる(Nike Victory Redフォージドウェッジ、56度(±2度)、ボールの初速約47-50
mph)。擦過特性は、審査員によって評価され、審査員は、ボールの表面について損傷の有無を目視で調べ、擦過傷スケールに基づいてそのサンプル又は試験ボールに評点を与える。スケールは、所望の等級分けスケールであればいずれのタイプのものであってよく、このスケールはあらかじめ指定の等級に分けられているので、審査員は、ボールのカバーに対する損傷の量を簡単に等級分類することができるようになっている。単に例示のために挙げるのであるが、1-5のスケールを使用してもよく、その際、「1」なる擦過傷耐性スコアは、最高の擦過傷耐性を有するボール、すなわち、簡単には擦り傷を受けないボールを表す。図4及び5を参照されたい。これらの図において、ゴルフボール400は、404-1、404-2、504-1、及び504-2として表示されるインパクト箇所において、仮にあるとしても極小の変形しか受けていないカバー404を有する。「5」という擦過傷耐性スコアは、最低の擦過傷耐性を有するボール、すなわち、比較的簡単に擦り傷を受けるボールを表す。第6及び7図を参照されたい。これらの図は、ゴルフボール600について、二つの異なる角度から、604-1、604-2、及び704-1として表示されるインパクト箇所で著明量の擦り傷及び剥離傷のある場所を示す。これらの二つの極小極大値の間に納まるボールに対しては、2-4のスコアが与えられる。表1において、本実施例に使用される種々の擦過傷耐性レベルの一般的説明を与える。
【0067】
【表1】

【0068】
審査員には、これらの記述的用語の他に、サンプル写真か、若しくは、ある特定レベルであると評価されるか、又は選ばれた擦過傷マークを有するサンプルボールを与えられてもよい。
【0069】
試験の実行中、ウェッジ擦過条件が、ロボットインターフェイスに負荷される。次に、このウェッジはロボットに登載される。各サンプルゴルフボールは、各サンプルボールについて三つの別々の部位において3回打たれる。
【0070】
次に、各サンプルボールは、表3に示す5ポイントの擦過傷耐性スケールに基づいて評価される。他の試験スキームでは、種々の擦過傷耐性レベルの間の違いを区別するために、異なるスケールが用いられる場合がある。しかしながら、どの擦過傷耐性スケールであっても、何らかのやり方で、どのボールが全体としてより容易に擦り傷を受けやすいか、すなわち、低い擦過傷耐性を有するかを示すことになる。同様に、どの擦過傷耐性スケールであっても、何らかのやり方で、どのボールが全体としてより擦り傷を受けにくいか、すなわち、高い擦過傷耐性を有するかを示すことになる。一方、他の試験処方では、複数のボールを試験し、スケール又は絶対的等級区分スキームを使用することなく、単純に互いを比較して、どのボールの方が、他の試験ボールよりも高い擦過傷耐性を有するかということが決定されてもよい。
【0071】
本開示の目的のために、ボールは、コントロールボール、すなわち、同様の硬度を持つ標準的カバー材料によって製造される同様構築のボールのそれよりも、その擦過傷耐性が高くなった場合、「擦過傷耐性が向上した」と見なされる。同様に、ボールは、コントロールボールのそれよりも、その擦過傷耐性が低くなった場合、「擦過傷耐性が低下した」と見なされる。
【0072】
本例示試験プロトコールによる試験は、樹状TPUカバーを持つボール、及び、従来の材料カバーを持つ、同様構築のボールについて行われた。樹状TPUカバーを有するボールは、従来材料のカバーを持つボールよりも高い擦過傷耐性を示した。これは、ボールが、比較的軟らかいカバーを持ちながら、ゴルファーの該ボールに対するスピン賦与能力を高めること、一方同時に、該ボールの耐久性を増すことを可能とする。
【0073】
ゴルフボール100などの樹状TPUを含むカバーを含むゴルフボールは、他の特色を含む可能性がある。例えば、ゴルフボール100の表面108には任意の数のディンプル102を設けてもよい。ある実施態様では、ディンプル102の数は、約250から約500の範囲にあってもよい。他の実施態様では、ディンプル102の数は、約300から約400の範囲にあってもよい。図1に示すように、ディンプル102は、ゴルフボール100の表面108において、三角形球状パターン112の他、当業者に公知の、他のいずれのディンプルパターンとして配置されてもよい。
【0074】
事実上半球状として図示されているけれども、ディンプル102は、従来技術で公知の任意の形状、例えば、半球形、楕円形、六角形などの多角形の形状を取ってもよい。ある実施態様では、ディンプル102は、ゴルフボール100の表面108から外方に延びる突起であってもよいが、ディンプル102は、通常、ゴルフボール100の表面108の中に沈む陥凹を含む。各ディンプル102の各陥凹は、ディンプル体積を定める。例えば、ディンプル112が、表面108の中に沈む半球状陥凹である場合、ディンプル112によって削り取られ、ディンプル102が無かった場合にゴルフボール100の表面108が存在したであろう場所を表す仮想線によって区切られる空間は、半球のディンプル体積、すなわち、2/3πr3を取る、ここに、rは該半球の半径である。ある実施態様では、全てのディンプル102は、同じか、又は同様の直径又は半径を有してもよい。別の実施態様では、ディンプル102には、異なる直径又は半径が設けられてもよい。ある実施態様では、各ディンプル102は、あらかじめ選ばれた一群の直径/半径の中から選ばれる直径又は半径を有してもよい。別の実施態様では、あらかじめ選ばれた一群の直径/半径の中の、異なる直径/半径の数は、三(3)から六(6)の範囲であってもよい。ある実施態様では、最大直径/半径を有するディンプル102の数が、他のいずれの直径/半径を有するディンプルの数よりも多くあってもよい。言い換えると、このような実施態様では、他の任意のサイズのディンプルよりも、最大ディンプルの数の方が多い。ディンプル102はさらに、認識される幾何学形状(例えば、5角形)を持つ、ディンプル102の反復的サブパターンとして配置されてもよいし、比較的小さい・大きい直径/半径を有するディンプルの組み合わせを含んでもよい。
【0075】
ゴルフボール100の表面108における全てのディンプル102の体積の集合を、「ディンプル総体積」と呼んでもよい。一実施態様では、ディンプル総体積は、約550から約800 mm3の範囲にあってもよい。ある実施態様では、ディンプル総体積は、約600から約800 mm3の範囲にあってもよい。
【0076】
これらのゴルフボール実施態様は、必要に応じて、カバー208と、単数又は複数のコア層との間に位置づけられるマントル層を含んでもよい。ある実施態様では、マントルは、約0.3 mmから、ある実施態様では約3 mmの厚みと、比較的低いスピン率を有していてもよい。マントル層は、少なくとも部分的に中和される熱可塑性アイオノマー樹脂、カバー208に関連して本明細書に記載されるTPU及び/又は樹状TPUなどのウレタン樹脂、及び/又はゴムを含んでもよい。
【0077】
ある実施態様では、マントル層は、外方コアのものよりも大きな比重(SG)を持ってもよい。マントル層208にゴムが使用される場合、材料のSGを増すために、適切な充填剤をゴム組成物に加えてもよい。充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。さらに、充填剤として、比較的大きい密度を有する金属粉末、例えば、タングステンを使用してもよい。充填剤の添加量を調節することによって、マントル層208の比重を思い通りに調節することが可能である。
【0078】
内方コア204は、任意の数の材料を含んでもよい。ある実施態様では、内方コア204は、熱可塑性材料か、又は熱硬化性材料を含んでもよい。内方コア204の熱可塑性材料は、アイオノマー樹脂、二峰性アイオノマー樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂など、及びそれらの組み合わせであってもよい。一実施態様では、内方コア204は、アイオノマー樹脂から形成されてもよい。例えば、内方コア204は、高度に中和されるアイオノマー樹脂、例えば、HPF又はSURLYN、いずれもE.I. Dupont de Nemours and Companyから市販される、及び、IOTEK(登録商標)、Exxon Corporationから市販される、から製造されてもよい。CORを増すために、内方コア204の一組成物は、主要アイオノマー樹脂組成物としてHPFを、必要に応じて選ばれる副組成物であるSURLYN及び/又はIOTEKと共に、含んでもよい。内方コア204の副組成物は、いずれのものであれ、内方コア204の主要アイオノマー樹脂組成物の100重量部に対し、0から約10重量部の量として存在してもよい。
【0079】
内方コア204の比重を増すために、ゴム組成物に、適切な充填剤、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを加えてもよい。さらに、充填剤として、比較的大きい密度を有する金属粉末、例えば、タングステンを使用してもよい。充填剤の添加量を調節することによって、内方コア204の比重を思い通りに調節することが可能である。
【0080】
内方コア204は、当該技術分野における任意の公知の方法、例えば、ホットプレス成形、又は射出成形などを用いて製造してよい。内方コア204は、単一又は複数層構造を含んでもよく、前述の材料以外に、さらに、他の材料も必要に応じて内方コア204に含めてもよい。ある実施態様では、内方コア204の材料は、約0.750よりも大きいCORを有する内方コア204を供給するように選ばれる。ある実施態様では、内方コア204は、40メートル/秒において、約0.79から約0.89の範囲のCORを有していてもよい。ある実施態様では、内方コア204は、ゴルフボール100全体のそれよりも高いCORを持ってもよい。
【0081】
ある実施態様では、内方コア204は、図2において破線の双頭矢印220によって示されるように、約19 mmから約37 mmの範囲の直径を有してもよい。ある実施態様では、内方コア204の直径220は、約19 mmから約32 mmの範囲にあってもよい。ある実施態様では、内方コア204の直径220は、約21 mmから約35 mmの範囲にあってもよい。ある実施態様では、内方コア204の直径220は、約23 mmから32 mmの範囲にあってもよい。
【0082】
図2に示す実施態様では、外方コア206は、内方コア204を、包囲、被覆、包含、事実上封入などする。外方コア206は、内方コア204の外面228に直面する内面224を有する。図2に示す実施態様では、外方コア206の外面232は、カバー208の内面236に直面する。外方コア206は任意の厚みを持ってよい。一実施態様では、外方コア206の厚みは、約3から約11 mmの範囲にあってもよい。一実施態様では、外方コア206の厚みは、約4から約10 mmの範囲にあってもよい。
【0083】
外方コア206は、熱硬化性材料を含んでもよい。ある実施態様では、熱硬化材料は、ゴム組成物であってもよい。ある実施態様では、このゴム組成物の基質ゴムは、1,4-シス-ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンコポリマー、天然ゴム、及びそれらの組み合わせの他、少なくとも部分的に架橋結合される(例えば、加硫によって)ゴム組成物を含んでもよい。コアの単一又は複数層の反撥弾性を増すために、本ゴム組成物の基質ゴムとして1,4-シス-ポリブタジエンを用いてもよい。それとは別に、1,4-シス-ポリブタジエンは、外方コア206の基質材料として用い、この基質材料に添加材料を加えてもよい。ある実施態様では、1,4-シス-ポリブタジエンの量は、ゴム組成物の100重量部に対し少なくとも50重量部であってもよい。
【0084】
このゴム組成物には、添加物、例えば、架橋結合剤、より比重の大きい充填剤、可塑剤、抗酸化剤などを加えてもよい。適切な架橋結合剤としては、過酸化物、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウムなどの他、それらの組み合わせが挙げられる。ゴム組成物の反撥弾性を増すために、アクリル酸亜鉛を使用してもよい。しかしながら、比較的高い周囲温度に対する長期の暴露に対する耐性を高めるために、過酸化物を架橋結合剤として使用してもよい。特に、内方コア204が、反撥弾性の高い熱可塑性材料から形成される場合、外方コア206が、過酸化物によって架橋結合されたポリブタジエン材料から形成されていると、比較的高い周囲温度に長期間暴露されてもゴルフボール100の性能は維持される。
【0085】
外方コア206の比重を増すために、ゴム組成物に、適切な充填剤を、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどを加えてもよい。さらに、比較的大きい比重を持つ金属粉、例えば、タングステンを充填剤として用いてもよい。外方コア206の比重は、充填剤の添加量を調節することによって所望に応じて調節してよい。
【0086】
図3に示す実施態様では、ゴルフボール300は、内方コア304、外方コア306、及びカバー308を有し、これらは同じ材料を含んでもよく、同じ特性を有してもよく、それぞれ、図2に示す実施態様の内方コア204、外方コア206、及びカバー208と同じ直径/厚みを有していてもよい。図3のゴルフボール300にはさらに、さらに別の内方層又はマントル層310が設けられてもよい。このような実施態様では、カバー308は、外方カバー層と見なしてもよい。マントル層310は、外方コア306を事実上封入などする。マントル層310は、カバー308のそれと同じ材料を含んでもよく、若しくは異なる材料を含んでもよい。
【0087】
図3に示す実施態様では、外方コア306は、内方コア304を、包囲、被覆、事実上封入などする。外方コア306は、内方コア204の外面328に直面する内面324を有する。図3に示す実施態様では、外方コア306の外面332は、マントル層310の内面336に直面する。マントル層310は、外方コア306の内面344に直面する外面340を有する。
【0088】
マントル層310の厚みは、約1 mmから11 mmの範囲にあってもよい。ある実施態様では、マントル層310の厚みは、約1.2 mmから約8.5
mmの範囲にあってもよい。ある実施態様では、マントル層310の厚みは、約1.5 mmから約3 mmの範囲にあってもよい。
【0089】
ある実施態様では、マントル層310の外面は、カバー308の外面よりも高い硬度を有する。ある実施態様では、マントル層310の外面は、約45から約65のショアD硬度を有してもよく、一方、外方カバー層108の外面は、約40から約60のショアD硬度を有していてもよい。ある実施態様では、マントル層310の全体は、カバー308の全体よりも高い硬度を有する。
【0090】
表2に、種々のゴルフボールの成分(内方コア、外方コア、任意のマントル層、及びカバー)の組成及び特性が示される。例示のボール1及び2は、それぞれ、図3及び2に示す本発明の二つの実施態様にしたがって製造される。実施例1及び2において、各内方コア204/304は、DuPontアイオノマー樹脂であるHPF2000から製造され、該樹脂において、メチルメタクリレート(MAA)酸性基は、マグネシウムイオンによって完全に中和される;実施例1では、内方コア204はさらに硫酸バリウム充填剤を含んでもよい。各外方コア206/306は、BR化合物、過酸化物架橋結合ポリブタジエン材料から製造されてもよい。実施例1及び2の各ゴルフボールのカバー208/308は、前述のように、擦過傷耐性熱可塑性ポリウレタン(TPU)材料(表2では、Neothane TEI4511D及びNeothane TEI6025Dと表示)から製造されてもよい。実施例2のゴルフボールでは、マントル層310は、内方コア306と同様、HPF2000と硫酸バリウムの組み合わせを含む。比較例1は、実施例1と同様の構築を有する4-ピースボールであるが、従来型のTPU材料から製造されるカバーが設けられる。同様に、比較例2は、実施例2と同様の構築を有する3-ピースボールであるが、従来型のTPU材料から製造されるカバーが設けられる。
【0091】
【表2】

【0092】
表2の性能特徴を精査することによって、本発明の実施態様にしたがって製造される実施例1及び2が、擦過傷耐性に関して、従来型TPU材料のカバーを含んで製造される類似のボールである比較例1及び2よりも優れた耐性を示すことが了解されるであろう。さらに、実施例1及び2は、比較例1及び2に優るスピン特徴の向上を示す。
【0093】
さらに、これらの実施例及び比較例のそれぞれによるサンプルに対し、射出・押出成形試験を実施し、その結果を表3に表示する。各試験の値は、5回の平均値であり、射出・押出成型によって得られた標本が、比較対象とされた。
【0094】
注入温度:射出・押出成形実行時の射出機内部の温度(成形産物に基づく非成形、空虚などに関連する問題を起こさないプロセスを実行することが可能な最低温度)。
【0095】
ノズル温度:射出・押出成形の実行時、射出機によって成形産物が出現する直前の温度。
【0096】
シリンダー1、2、3:熱可塑性エラストマーを成形するために該エラストマーを融解するのに必要な各ゾーンの温度。
【0097】
サイクル時間:標本1EAを成形するための射出合計時間。
【0098】
表3に示すように、本発明による、多分岐ポリオール(HBP)を含む、バイオフレンドリー(環境に優しい)熱可塑性ポリウレタンエラストマー組成物(実施例1及び2)は、比較例と比べ、優れた射出・押出成形機能を有することが了解される。
【0099】
【表3】

【0100】
これまで本発明の各種実施態様が説明されてきたわけであるが、この説明は、限定的であるよりはむしろ例示的であることを意図するものであり、本発明の範囲内において、さらに多くの実施態様及び実行例が可能であることは当業者には明白であろう。したがって、本発明は、添付の特許請求項及びその等価物に徴することを除き、限定されてはならない。さらに、種々の改変及び変更が、添付の特許請求項の範囲内において実行することが可能である。
【符号の説明】
【0101】
200 ゴルフボール
204 内方コア
206 外方コア
208 カバー
220 双頭矢印
228 内方コアの外面
224 外方コアの内面
232 外方コアの外面
236 カバーの内面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア;
該コアを包囲するカバーを含むゴルフボールにおいて;
該カバーが、イソシアネートモノマー、ポリオール、鎖伸長剤、及び、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する多分岐ポリオールから形成される熱可塑性ポリウレタンを含む、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。

【請求項2】
生再生可能なポリオールをさらに含む、請求項1に記載のゴルフボール。

【請求項3】
前記生再生可能なポリオールがポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする、請求項2に記載のゴルフボール。

【請求項4】
前記熱可塑性ポリウレタンが:(A)生再生可能なポリエーテルポリオール約30部から約70部(全体反応混合物の重量に対して);(B)ポリイソシアネート約15から約60部(全体反応混合物の重量に対して);(C)約2.1から約36のヒドロキシ価を持つ多分岐ポリオール約0.1から約10部(全体反応混合物の重量に対して);及び、(D)鎖伸長剤約10から約40部(全体反応混合物の重量に対して)、から形成されることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。

【請求項5】
前記熱可塑性ポリウレタンが、下記のポリイソシアネート類:ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプレンジイソシアネートの内の少なくとも一つから形成されることを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。

【請求項6】
前記多分岐ポリオールが、下記:ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、又はポリカーボネートジオール類の内の少なくとも一つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のゴルフボール。

【請求項7】
前記ポリエステルポリオールが、一つ以上のヒドロキシアルキル鎖を有するジオールから誘導される中心的ポリオール成分を含み、且つ、一つ以上のポリヒドロキシカルボン酸又はその誘導体から形成されるポリオールエステル分枝を有することを特徴とする、請求項6に記載のゴルフボール。

【請求項8】
前記中心的ポリオール成分が、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオールから誘導され、前記一つ以上のポリヒドロキシカルボン酸又はその誘導体が、ビス−2−ヒドロキシメチル−プロパノイン酸を含むことを特徴とする、請求項7に記載のゴルフボール。

【請求項9】
コントロールボールに比較されるように構成されるゴルフボールにおいて、該コントロールボールは、全体として構造的に該ゴルフボールに近似し、該コントロールボールは、該ゴルフボールとは異なるカバー材料を使用し、コントロールボールのカバー材料は、該コントロールボールがゴルフクラブによって指定の回数打たれた後評価される、コントロール擦過傷耐性を有し、該ゴルフボールは:
コア;
該コアを包囲するカバーを含み;
ここで、該カバーは、一つ以上のイソシアネートモノマーから形成される熱可塑性ポリウレタン、一つ以上の鎖伸長剤、一つ以上のポリオール、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する、一つ以上の多分岐ポリオール、必要に応じて一つ以上の他のポリオール、及び、必要に応じて一つ以上の鎖伸長剤を含み;
該ゴルフボールは、事実上擦過傷を受けていないニューボールである第1状態を有し;
該ゴルフボールは、あるレベルの擦過傷を受けている打たれたボールである第2状態を有し、該第2状態は、該ゴルフボールをゴルフクラブによって指定の回数打つことによって実現され;
該カバー材料は、該第2状態の評価に基づく第1擦過傷耐性を有し;且つ、
該第1擦過傷耐性は、外見上、該コントロール擦過傷耐性よりも大きく見えることを特徴とする、前記ゴルフボール。

【請求項10】
前記熱可塑性ポリウレタンが、下記のポリイソシアネート類:ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソプレンジイソシアネートから、単独か、又は相互に組み合わせて形成されることを特徴とする、請求項9に記載の物品。

【請求項11】
前記一つ以上の多分岐ポリオールが、下記:ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、又はポリカーボネートジオール類の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項9に記載の物品。

【請求項12】
前記ポリエステルポリオールが、一つ以上のヒドロキシアルキル鎖を有するジオールから誘導される中心的ポリオール成分を含み、且つ、一つ以上のポリヒドロキシカルボン酸又はその誘導体から形成されるポリオールエステル分枝を有することを特徴とする、請求項11に記載の物品。

【請求項13】
前記中心的ポリオール成分が、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオールから誘導され、前記一つ以上のポリヒドロキシカルボン酸又はその誘導体が、ビス−2−ヒドロキシメチル−プロパノイン酸を含むことを特徴とする、請求項12に記載の物品。

【請求項14】
前記第1擦過傷耐性は、前記ゴルフボールが指定の回数打たれた後、該ゴルフボールを肉眼観察することによって決定されることを特徴とする、請求項9に記載の物品。

【請求項15】
内方コア及び外方コアを含むコア;
該コアを包囲し、ディンプルパターンを含む外表面を有するカバー;及び、
該カバーと外方コアとの間に位置づけられるマントル層、
を含むゴルフボールにおいて:
該内方コアは曲面を有し、少なくとも部分的に中和される熱可塑性アイオノマー樹脂を含み、該内方コアの曲面で測定した場合約65以下のショアD硬度を有し、約10から約130 kgの負荷の下で約2.5から約4.5
mmの偏向量、及び、40 m/secの落下において、約0.75と約0.89の間の反撥係数で、単一又は複数のコア層又はゴルフボールのそれよりも大きな反撥係数を有し;
内方コアを包囲し、曲面を有する該外方コアは、弾性材料を含み、該外方コアの曲面で測定した場合約45から約65のショアD硬度を有し;
該カバーは、一つ以上のイソシアネートモノマーから形成される熱可塑性ポリウレタン、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する、一つ以上の多分岐ポリオール、及び、必要に応じて一つ以上の他のポリオール、及び、必要に応じて一つ以上の鎖伸長剤を含み、単一又は複数のコア層のそれよりも大きな比重、約0.5から約2 mmの厚みを有し、外表曲面で測定した場合約40から約65のショアD硬度を有する、
ことを特徴とする、前記ゴルフボール。

【請求項16】
前記カバーが、下記のポリイソシアネート類:ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、及びイソプレンジイソシアネートの内の一つ以上から形成される熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項15に記載の物品。

【請求項17】
前記カバーが、約12から約36のヒドロキシ価を有する、一つ以上の多分岐ポリオールから形成される熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項15に記載の物品。

【請求項18】
前記一つ以上の多分岐ポリオールが、下記:ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、又はポリカーボネートジオール類の一つ以上を含むことを特徴とする、請求項17に記載の物品。

【請求項19】
前記ポリエステルポリオールが、一つ以上のヒドロキシアルキル鎖を有するジオールから誘導される中心的ポリオール成分を含み、且つ、一つ以上のポリヒドロキシカルボン酸又はその誘導体から形成されるポリオールエステル分枝を有することを特徴とする、請求項18に記載の物品。

【請求項20】
前記中心的ポリオール成分が、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−1,3−プロパンジオールから誘導され、前記一つ以上のポリヒドロキシカルボン酸又はその誘導体が、ビス−2−ヒドロキシメチル−プロパノイン酸を含むことを特徴とする、請求項19に記載の物品。

【請求項21】
前記マントル層が熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項15に記載の物品。

【請求項22】
前記マントル層が、イソシアネートモノマー、ポリオール、鎖伸長剤、及び、約2.1から約36のヒドロキシ価を有する多分岐ポリオールから形成される熱可塑性ポリウレタンを含むことを特徴とする、請求項21に記載の物品。

【請求項23】
前記マントル層が、少なくとも部分的に中和される熱可塑性アイオノマー樹脂を含み、前記外方コアのそれよりも大きな比重を有し、約0.3から約3 mmの厚みを有することを特徴とする、請求項15に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11202(P2012−11202A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−146986(P2011−146986)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(505424859)ナイキ インターナショナル リミテッド (249)