説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】複屈折、吸水率が小さく、防湿性などが優れている環状オレフィン系重合体において、温度、湿度変化の際に光線透過率の低下や、微小なクラックの発生を、本来該樹脂が持っている良好な光学物性を損なわず防止すること。
【解決手段】特定構造のポリマーより選ばれる1種、または2種以上のポリマー100重量部に対し、[B]ペンタエリスルトールと炭素数9以上27以下の脂肪酸からなるエステルより選ばれる1種または2種以上の化合物を0.3乃至5.0重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高精度が要求される光学部品には、軽量で成形性に優れるプラスチックの中でも、環状オレフィン系重合体が用いられてきた(例えば特許第2619856号広報)。該樹脂は複屈折・吸水率が小さく、近年レンズ等の高精度光学部品材料として注目されている。しかしこれらの樹脂では、吸水率・透湿係数が小さいことから、温度・湿度変化の際に水分の偏在が発生しがちであり、これが光線透過率の低下、微小なクラックの発生を誘発することがあった。
【0003】
これを避けるために例えば特開平9−241484号公報、特開2001−26718号公報などに例示されるように、親水性化合物を樹脂中に分散させる技術が知られている。しかしながら、その効果が充分でなかったり、該親水性化合物を分散させることで本来該樹脂が持っている良好な光学物性を損なったりすることがあった。
【0004】
また、医療容器にも、環状オレフィン系重合体は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのα−オレフィン(共)重合体に比べて、防湿性をはじめ、透明性、耐熱性、剛性などが優れていることから、高防湿を必要とする薬剤の包装材料として注目されている。しかし、同様に吸水率・透湿係数が小さいことから、スチーム滅菌後に水分の偏在が発生しがちであり、これが透明性の低下を誘発することがあった。
【0005】
これを避けるため、例えば特開平9−19494号公報に例示されるように、親水性化合物を樹脂中に分散させる技術が知られている。しかしながら、その効果が充分でなかったり、該親水性化合物を分散させることで本来該樹脂が持っている良好な透明性を損なったりすることがあった。
【特許文献1】特開平9−241484号公報
【特許文献2】特開平9−19494号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複屈折・吸水率が小さく、防湿性をはじめ、透明性、耐熱性、剛性などが優れている環状オレフィン系重合体において、温度・湿度変化の際に光線透過率の低下や、微小なクラックの発生を、本来該樹脂が持っている良好な光学物性を損なわず防止することが困難である点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、[A]より選ばれる1種、または2種以上のポリマー100重量部に対し、[B]より選ばれる1種、または2種以上の化合物を0.3乃至5.0重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物であることを最も主要な特徴とする。
【0008】
[A] 一般化学式(1)で表される共重合体;
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種ないし2種以上の二価の基、Rは、水素又は炭素数1〜5の炭化水素基からなる群から選ばれる1種ないし2種以上の一価の基、xおよびyは共重合比を示し、x/yが5/95以上、95/5以下となる実数である。)
[B] ペンタエリスルトールと炭素数9以上27以下の脂肪酸からなるエステル
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物は、複屈折・吸水率が小さく、防湿性をはじめ、透明性、耐熱性、剛性などが優れている環状オレフィン系重合体の良好な物性を損なうことなく、温度・湿度変化の際の光線透過率の低下や、微小なクラックの発生の防止を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(原料ポリマー)
本発明の光学部品の原料として用いられる樹脂は特に限定されるものではないが、好ましくは前記一般化学式(1)で表現される環状オレフィン系共重合体からなる。
【0013】
また、前記一般化学式(1)において、Rは、好ましくは、炭素数2〜12の炭化水素基群から選ばれる1種ないし2種以上の二価の基であり、さらに好ましくは、一般化学式(2);
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、pは、0乃至2の整数である。)
で表される二価の基であり、最も好ましくは、前記一般化学式(2)においてpが0または1である二価の基である。R1の構造は1種のみ用いても、2種以上併用しても構わない。
【0016】
また、前記一般化学式(1)において、R2の例としては水素、メチル基、エチル基、n-プロピル基、I-プロビル基、n-ブチル基、2-メチルプロビル基等が挙げられるが、好ましくは、水素及び/または−CHであり、最も好ましくは水素である。
【0017】
また、共重合のタイプは本発明において全く制限されるものではなく、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互共重合等、公知の様々な共重合タイプを適用することができるが、好ましくはランダムコポリマーである。
【0018】
主たる成分として用いられる樹脂の構造が上記のものでない場合、透明性・屈折率・複屈折率等の光学物性が劣るため、光学部品の性能が劣る場合がある。
【0019】
(主鎖の一部として用いることのできるその他の構造)
また本発明で用いられるポリマーは、本発明の成形方法によって得られる製品の良好な物性を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能なモノマーから誘導される繰り返し構造単位を有していてもよい。その共重合比は限定されないが、好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下であり、それ以上共重合させた場合、光学物性を損ない、高精度の光学部品が得られない恐れがある。また、共重合の種類は限定されないが、ランダムコポリマーが好ましい。
【0020】
(ポリマーの分子量)
本発明の光学部品に用いられるポリマーの分子量は限定されるものではないが、好ましくは135℃のデカリン中で測定される極限粘度[η]が、0.03〜10dl/g、さらに好ましくは0.05〜5dl/gであり、最も好ましくは0.10〜2dl/gである。
【0021】
この範囲より分子量が高い場合、成形性が悪くなり、また、この範囲より分子量が低い場合、成形物は脆くなる。
【0022】
(ポリマーのガラス転移温度)
なお、ポリマーのガラス転移温度(以下Tgと記載)は70℃以上であることが好ましく、さらに好ましくは70〜250℃であり、最も好ましくは100〜200℃である。
【0023】
この範囲よりTgが高くなる共重合比を選択した場合、成形性が悪くなり、また、この範囲よりTgが低くなる共重合比を選択した場合、成形物は熱に弱くなる。
なお、TgはDSC, 粘弾性測定等、通常公知の方法で測定することができる。
【0024】
(ポリマーの変性)
このポリマーは本発明の光学部品の良好な諸物性を損なわない範囲内で、グラフト変性など、公知の様々な方法により変性して用いることができる。
【0025】
原料ポリマーからグラフト変性物を得るには、従来公知のポリマー変性方法を広く適用することができる。たとえば溶融状態にある原料樹脂に変性剤を添加してグラフト重合(反応)させる方法、あるいは原料樹脂の溶媒溶液に変性剤を添加してグラフト反応させる方法などである。このようなグラフト反応は、通常60〜350℃の温度で行われる。またグラフト反応は、有機過酸化物およびアゾ化合物などのラジカル開始剤の共存下に行うことができる。
【0026】
ここで用いられる変性剤としては、通常不飽和カルボン酸類があげられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸TM)などの不飽和カルボン酸、さらにこれら不飽和カルボン酸の誘導体たとえば不飽和カルボン酸無水物、不飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミド、不飽和カルボン酸のエステル化合物などが例示される。
【0027】
不飽和カルボン酸の誘導体としては、より具体的に、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレイル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートなどが挙げられる。
【0028】
これらのなかでは、α,β-不飽和ジカルボン酸およびα,β-不飽和ジカルボン酸無水物たとえばマレイン酸、ナジック酸およびこれら酸の無水物が好ましく用いられる。これらの変性剤は、1種単独または、2種以上組合わせて用いることができる。
【0029】
これらの方法により得られたグラフト変成物はそのままで用いることもできるが、予め高変性率の変性物を調製し、次いでこの変性物と未変性の原料樹脂とを所望の変性率になるように混合することにより効率よく製造することもできる。
【0030】
(脂肪酸の構造)
炭素数9以上27以下の脂肪酸は、この範囲を超えて炭素数が少ない場合は、樹脂との親和性が不足するため均一に混ぜることが難しくなり、炭素数が多い場合は、温度・湿度変化の際の光線透過率の低下や、微小なクラックの発生の防止効果が少なくなる。
【0031】
脂肪酸の炭化水素基には分岐、環構造があっても構わない。[B]エステルの好ましい構造は、以下の一般化学式(2)で示される。
RCOOCH2C(CH2OH)3 (2)
式中、Rは炭素数9以上27以下、さらに好ましくは11以上23以下、最も好ましくは14以上20以下の飽和炭化水素基である。
【0032】
脂肪酸としては、本発明の範囲内に置いて公知のものが用いられる。例えば、ベヘニン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、等である。
【0033】
添加量はポリマー100重量部に対し、[B]より選ばれる1種、または2種以上の化合物を0.3乃至5.0重量部、好ましくは0.5乃至4.0重量部、 最も好ましくは1.0乃至3.0重量部である。
【0034】
この範囲を超えて添加量が多い場合は、樹脂との親和性が不足するため均一に混ぜることが難しくなり、添加量が少ない場合は、温度・湿度変化の際の光線透過率の低下や、微小なクラックの発生の防止効果が少なくなる。
【0035】
(樹脂組成物)
本発明においては、必要に応じて、さらに他の樹脂を配合してなる樹脂組成物を用いることもできる。他の樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で添加される。
【0036】
例えば、次に示す(1)〜(17)である。
(1)1個または2個の不飽和結合を有する炭化水素から誘導される重合体。具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルブテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリブテン-1およびポリスチレンなどのポリオレフィンが挙げられる。なおこれらのポリオレフィンは架橋構造を有していてもよい。
【0037】
(2)ハロゲン含有ビニル重合体。具体的にはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリクロロプレン、塩素化ゴムなどが挙げられる。
【0038】
(3)α,β-不飽和酸とその誘導体から誘導された重合体。具体的にはポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、または前記の重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体などが挙げられる。
【0039】
(4)不飽和アルコールおよびアミン、または不飽和アルコールのアシル誘導体またはアセタールから誘導される重合体。具体的にはポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリスレアリン酸ビニル、ポリ安息香酸ビニル、ポリマレイン酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアリルフタレート、ポリアリルメラミン、または前記重合体を構成するモノマーとの共重合体、たとえばエチレン・酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0040】
(5)エポキシドから誘導される重合体。具体的にはポリエチレンオキシドまたはビスグリシジルエーテルから誘導された重合体などが挙げられる。
【0041】
(6)ポリアセタール。具体的にはポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、コモノマーとしてエチレンオキシドを含むようなポリオキシメチレンなどが挙げられる。
【0042】
(7)ポリフェニレンオキシド。
【0043】
(8)ポリカーボネート。
【0044】
(9)ポリスルフォン。
【0045】
(10)ポリウレタンおよび尿素樹脂。
【0046】
(11)ジアミンおよびジカルボン酸および/またはアミノカルボン酸、または相応するラクタムから誘導されたポリアミドおよびコポリアミド。具体的にはナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などが挙げられる。
【0047】
(12)ジカルボン酸およびジアルコールおよび/またはオキシカルボン酸、または相応するラクトンから誘導されたポリエステル。具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ1,4-ジメチロール・シクロヘキサンテレフタレートなどが挙げられる。
【0048】
(13)アルデヒドとフェノール、尿素またはメラミンから誘導された架橋構造を有した重合体。具体的には、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
【0049】
(14)アルキッド樹脂。具体的にはグリセリン・フタル酸樹脂などが挙げられる。
【0050】
(15)飽和および不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとのコポリエステルから誘導され、架橋剤としてビニル化合物を使用して得られる不飽和ポリエステル樹脂ならびにハロゲン含有改質樹脂。
【0051】
(16)天然重合体。具体的にはセルロース、ゴム、蛋白質、あるいはそれらの誘導体たとえば酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテルなどが挙げられる。
【0052】
(17)軟質重合体。例えば、環状オレフィン成分を含む軟質重合体、α-オレフィン系共重合体、α-オレフィン・ジエン系共重合体、芳香族ビニル系炭化水素・共役ジエン系軟質共重合体、イソブチレンまたはイソブチレン・共役ジエンからなる軟質重合体または共重合体等が挙げられる。
【0053】
(添加剤)
本発明で用いる樹脂組成物には、上述の成分に加えてさらに、本発明の樹脂組成物の良好な特性を損なわない範囲で、公知の耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤などが配合されていてもよい。
【0054】
たとえば、任意成分として配合される耐候安定剤の紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ニッケル系化合物、ヒンダードアミン系化合物があり、具体的には、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾールや2-(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾイルフォスフォリックアシッドエチルエステルのニッケル塩、ビス(2,2',6,6'-テトラメチル-4-ピペリジン)セバケイトなどが挙げられる。
【0055】
また、任意成分として配合される耐熱安定剤としては、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2'-オキザミドビス[エチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系酸化防止剤、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、1,2-ヒドロキシステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレートなどの多価アルコール脂肪酸エステルなどを挙げることができ、また、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニル-4,4'-イソプロピリデンジフェノール-ペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系安定剤を使用してもよい。これらは単独で配合してもよいが、組み合わせて配合してもよい。たとえばテトラキス[メチレン-3-(3.5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンとステアリン酸亜鉛とグリセリンモノステアレートとの組み合わせなどを例示できる。これらの安定剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
本発明で使用される環状オレフィン系重合体と他の樹脂成分や添加剤との混合方法は限定されるものではなく、公知の方法が適用できる。たとえば各成分を同時に混合する方法などである。
【実施例】
【0057】
測定方法
溶融流れ指数(MFR)
ASTM D1238に準じ260℃、荷重2.16kgで測定。
軟化温度(TMA)
デュポン社製 Thermo Mechanical Analyzerを用いて、厚さ1mmのシートの熱変形挙動により測定した。シート上に石英製針を乗せ、荷重49gをかけ、5℃/分の速度で昇温し、針がシート中に0.635mm侵入した温度をTMAとした。
ガラス転移温度(Tg)
SEIKO電子工業(株)製DSC−20を用いて昇温速度10℃/分で測定した。
ヘイズ(HAZE)
3mm厚の角板を射出成形により成形し、ASTMD1003に基づいて測定した。
400nm分光光線透過率(T400)
3mm厚の角板を射出成形により成形し、光線透過率分光光線度計を用いて、400nmにおける光線透過率を測定した。
【0058】
合成例1〜5
チーグラー触媒を用いて、エチレン−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデセン−3共重合体を重合した。物性値は次の通り。
合成例番号 MFR TMA Tg
( 単 位 ) (g/10分) ( ℃ ) ( ℃ )

合成例1 2 167 155
合成例2 36 147 137
合成例3 15 135 124
【0059】
合成例6〜12
ペンタエリスルトールと各種脂肪酸から得られるエステル化合物として、次のものを用いた。
合成例番号 原料脂肪酸 得られた化合物

合成例4 ラウリン酸 ペンタエリスリトールモノラウレート
合成例5 ステアリン酸 ペンタエリスリトールモノステアレート
合成例6 ステアリン酸 ペンタエリスリトールジステアレート
合成例8 オレイン酸 ペンタエリスリトールモノオレエート
合成例8 カプロン酸 ペンタエリスリトールモノカプレート
【0060】
また、ペンタエリスリトール以外のアルコールと脂肪酸から得られるエステル化合物としては、次のものを用いた。
合成例番号 アルコール 原料脂肪酸 得られた化合物

合成例9 ソルビタン ステアリン酸 ソルビタンモノステアレート
合成例10 グリセリン ラウリン酸 グリセリンモノラウレート
【0061】
実施例1〜10、比較例1〜5
合成例1〜5の樹脂に対して、表に示す重量比の合成例6〜10の化合物とを混合して、樹脂の酸化を防ぐため窒素気流下で30mmφの単軸押出機を用いて溶融混合しペレットとした。
それぞれのペレットを120℃窒素下で16時間乾燥させた後、これを原料として、窒素気流下での射出成形により3mm厚の平板を得た。その光学物性を次の表にまとめて示す。
【0062】
【表1−1】

【0063】
【表1−2】

【0064】
上記の各成形品を、80℃95%の条件で340時間アニールを行い、終了後すぐに光学物性測定および外観観察を行った。
その結果を次に示す。
【0065】
【表2−1】

【0066】
【表2−2】

【0067】
以上の結果から明らかなように、本発明の実施例によれば、良好な光学性能を持ち、かつ環境変化によっても光学性能の変化が少ない成形物が提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
射出成形、押し出し成形など公知の方法により、光学部品、医療包装材などに用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]より選ばれる1種、または2種以上のポリマー100重量部に対し、[B]より選ばれる1種、または2種以上の化合物を0.3乃至5.0重量部を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。
[A] 一般化学式(1)で表される共重合体;
【化1】

(式中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素基群から選ばれる1種ないし2種以上の二価の基、Rは、水素又は炭素数1〜5の炭化水素基からなる群から選ばれる1種ないし2種以上の一価の基、xおよびyは共重合比を示し、x/yが5/95以上、95/5以下となる実数である。)
[B] ペンタエリスルトールと炭素数9以上27以下の脂肪酸からなるエステル
【請求項2】
請求項1記載の[B]の化学構造が、一般化学式(2)で表されることを特徴とする、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
RCOOCH2C(CH2OH)3 (2)
(式中、Rは炭素数8以上26以下の飽和炭化水素基である)
【請求項3】
請求項1記載の[A]および[B]を配合し、請求項1乃至2記載の熱可塑性樹脂組成物を製造する際に、[A]、[B]をそれぞれ別々に溶融状態として、押出機に装入することを特徴とする請求項1乃至2記載の熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法により得られる請求項1乃至2記載の熱可塑性樹脂組成物。