説明

熱構造複合材料部品の製造方法

本発明は、母材によって緻密化される繊維強化材を含む複合材料部品の製造方法に関し、前記方法は、
・ヤーンから構成される繊維テクスチャーを凝固材料のための前駆体を含む液体凝固組成物で含浸する(S4)こと、および形を保つ凝固材料を得るように前記前駆体を熱分解により凝固材料に変換する(S7)ことによって凝固繊維プリフォームを製作する工程;および
・前記凝固繊維プリフォームを化学蒸発浸透によって緻密化する(S8)工程
を含み、
前記方法は前記凝固液体組成物での前記繊維テクスチャーの含浸(S4)前に、前記繊維テクスチャーの前記ヤーン孔をフィラー組成物によって充填する(S2)工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、母材で緻密化される繊維強化材を含む複合材料部品の製造方法に関する。
【0002】
本発明の適用分野は、特に、熱構造複合材料、すなわち良好な機械特性および高温度でこれらの特性を保全する能力を持つ複合材料に関する。一般的な熱構造複合材料は、炭素母材で緻密化される炭素繊維強化材で構成される炭素/炭素(C/C)複合材料、および少なくとも部分的にセラミックで作られる母材によって緻密化される耐熱繊維強化材(炭素繊維またはセラミック繊維)で構成されるセラミック母材複合(CMC)材料である。CMCsの例は、C/SiC複合材料(炭素繊維強化材と炭化珪素母材)、C/C−SiC複合材料(炭素繊維強化材と一般的に繊維に類似した炭素相および炭化珪素相を両方含む母材)、およびSiC/SiC複合材料(強化繊維と炭化珪素から作られる母材)である。相関層は材料の機械的挙動を改善するために強化繊維と前記母材の間に配置し得る。
【0003】
熱構造複合材料部品の製造は、一般的に製造すべき部品の形状に近似する形状の繊維プリフォームを作ること、およびそれから前記プリフォームを前記母材で緻密化することを含む。
【0004】
前記繊維プリフォームは、部品の強化材を構成し、かつその機能は良好な機械的特性を得るために不可欠である。前記プリフォームは、繊維テクスチャー:糸、トウ、平紐、織布、フェルトから得られる。造形は、捲回すること、織ること、重ねること、および場合によって織布の二次元パイルまたはトウのシートと共に針で縫うことによって一般的になされる。
【0005】
前記繊維プリフォームの緻密化は、前記プリフォーム内の孔に前記母材を構成する材料で充填することからなり、前記材料は全てまたは僅かのプリフォーム体積を占める。
【0006】
熱構造複合材料の前記母材は、種々の既知の技術を使用すること、特に液体またはガスを使用することで得てもよい。
【0007】
前記液体技術は、前記プリフォームを前記母材材料の有機前駆体を含む液体組成物で含浸することからなる。前記有機前駆体は、通常、樹脂のような高分子の形態であり、かつそれは溶媒で任意に希釈される。前記前駆体は、任意の溶剤を除去し、高分子をキュアーした後、熱処理によって耐熱相に変換される。前記熱処理は、使用される前駆体および熱分解の条件に依存して前記有機母材を炭素またはセラミック母材に変換するために、前記有機前駆体を熱分解することからなる。例として、炭素用液体前駆体はフェノール樹脂のような相対的に高コークス量を含む樹脂ででもよく、一方、セラミック、特に炭化珪素に対する液体前駆体はポリカーボシラン(PCS)またはポリチタノカーボシラン(PTCS)またはポリシラザン(PSZ)型の樹脂であってもよい。含浸から熱処理に進行する複数の連続サイクルは緻密化の望ましい度合いを達成するためになされる。
【0008】
ガス技術は、化学蒸着浸透からなる。前記繊維プリフォームは、反応ガスが進入する炉に置かれる。前記炉内に存在する圧力および温度、およびガスの組成は前記繊維に接触される固体材料を堆積することによって孔内に前記母材を形成するために前記ガスを前記プリフォームの孔内に拡散できるように全て選択され、材料は前記ガス分解の成分または複数の成分間の反応の結果からもたらされる。例として、炭素のガス状前駆体はメタンのような熱分解で炭素を生成する炭化水素であってもよく、かつセラミック、特にSiC、のガス状前駆体はメチルトリクロロシラン(MTS)であってもよく、それはMTS(任意に水素の存在)の分解でSiCを与える。
【0009】
テクスチャーが所望の形状および繊維部分(fiber fraction)を既に呈示する場合を除いて、ガス技術を用いる緻密化で熱構造複合材料の準備は“凝固(consolidation)”と呼ばれる段階で開始し、この段階は前記繊維プリフォームの形態と前記材料の繊維部分(すなわち実際に前記繊維で占められる材料の総見かけ体積のパーセント)の両方を固めるために貢献する。
【0010】
凝固のためのガス技術の使用は、幾つかの欠点を表す。凝固工程のための化学蒸発浸透の間に前記プリフォームを所望の形状に保持するために、黒鉛で作られる金型を用いて前記プリフォームを保持することが必要である。黒鉛金型は、製作ために煩雑で高価である。また、既に形状を保持する前記プリフォームと同時に緻密化されるので、黒鉛金型は急速に老化する。最後に、そのような金型は前記CVI炉内に加工体積の有効部分を占め、かつ金型は大量の熱慣性を生じる。
【0011】
これらの理由で、前記繊維プリフォームは液体技術を用いて凝固されることが好ましい。前記プリフォームを構成する繊維テクスチャーは母材のための有機前駆体で含浸され、かつそれはそれから金属または複合材料で作られる金型(モールドまたはシェイパー)によって造型され、金型は再使用可能で、かつ黒鉛で作られる金型のコストより小さい実施コストを提示する。したがって、前駆体、場合によって乾燥および高分子化の後の、は熱処理によって変換し、それゆえ、熱分解後、前記プリフォームを凝固するために貢献する固体残渣を残留し、したがってガス技術を用いる緻密化を続行するように前記プリフォームをCVI炉にそのまま(金型によって保持せずに)置くことを可能にする。
【0012】
しかしながら、ガス技術で凝固され、かつ緻密化された熱構造複合材料の熱機械的特性は、最初に液体技術で凝固され、それからガス技術で緻密化される既知の複合材料のそれより良好である。性能面のこの相違は、液体技術による凝固の間、液体技術で得られる前記母材が前記複合材料のヤーンに濃縮し、それによって次の緻密化工程の間に前記ガス技術を用いるときに、前記ヤーン自身が得られた前記母材によって緻密化されるのを妨げる事実によって特に説明できる。また、液体技術を用いる凝固は有機前駆体の熱分解率が常に100%未満であることからして、液体前駆体の変換の不可避的に不完全な性質の理由で、前記ヤーンの残留孔をいつも残す。これらの孔は、一般的に前記ヤーンの表面からの侵入を困難にし、かつその結果としてそれらは前記ガス技術による次の緻密化の間に充填されることができない。残念なことに、良好な機械的特性を得るために、前記複合材料中の任意の不均一性気孔を可能な限り最小にすることが重要である。
【0013】
さらに、液体技術で得られた前記母材の熱機械的特性はガス技術で堆積された母材のそれらほど一般的に良好ではなく、ヤーンが前記液体技術で得られた大多数のみの前記母材を含む複合材料はそれほど良好でない熱機械的特性を表す。
【0014】
CMC材料を凝固するために炭素−前駆体樹脂(例えばフェノール樹脂)を用いる場合、前記樹脂が熱分解された後に得られるコークスは酸化中で非常に速い反応動力学を表すので、酸化雰囲気中で長い時間の利用での材料の強度は温度が400℃を超える時はいつも劣化させる。
【0015】
幾つかの選択は、前記炭素−前駆体樹脂を用いる液体技術によって凝固されるCMC材料の熱機械的特性を改善するために存在する。1番目の選択は、前記樹脂中に存在されるコークス量を減少することからなる。2番目の選択は、酸化に対する保護を供するガラスを形成できるフィラーを用いることからなる。
【0016】
しかしながら、コークスのある量以下において凝固効果はもはや保証されないので、凝固樹脂が前記コークス量を減少させるために減少できる範囲は制限される。さらに、ヒーリングフィラー、すなわち酸化に対する保護を供するためにガラスを形成できるフィラー、は保護ガラスが前記フィラーを酸化することによって形成される温度からのみ有効になる。一般的に用いられる前記フィラーはボロンを含むフィラー(B4C,SiB6,TiB2,その他)であり、というのは、それらはボロン酸化物(B23)を得ることができるからであり、ボロン酸化物は低軟化点を有する保護ガラスである。しかしながら、そのようなフィラーは500℃以上の温度でのみ保護効果をもたらすことができる。
【0017】
要約すると、液体技術はガス技術に比較して繊維テクスチャーの凝固を非常に簡素化するが、にも拘らず前記ガス技術で得られる母材を次の緻密化の間にヤーンのコアに対して全ての手段で堆積することを妨げる。また、炭素−前駆体樹脂を用いる場合、前記樹脂の熱分解は前記ヤーン内の残留コークスを放置し、それによって高温での材料の機械的強度を低減し、かつ酸化に耐えるその能力を劣化する。
【0018】
したがって、改善された熱機械的特性を表す複合材料を得ることが必要であり、同時に液体技術による凝固の有益さを保存する。
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、前記繊維プリフォームが液体技術によって最初に凝固される複合材料部品の熱機械的特性を改良するために、前記プリフォームの凝固の間に前記液体技術によって得られる母材を前記ヤーンの外側に濃縮できる複合材料部品の製造方法を提示する。
【0020】
この目的のために、本発明は複合材料部品の製造方法を提供し、前記方法はヤーンで構成される繊維テクスチャーに凝固材料のための前駆体を含む液体凝固組成物で含浸すること、および形状が保持される凝固プリフォームを得るように前記前駆体を熱分解で凝固材料に変換すること、によって凝固繊維プリフォームを作る工程、および前記凝固繊維プリフォームを化学蒸気浸透によって緻密化する工程を含み、
前記方法において、前記凝固液体組成物での前記繊維テクスチャーの含浸前に、工程はフィラー組成物によって前記繊維テクスチャーの前記ヤーン孔を充填することを遂行される。
【0021】
前記凝固組成物での前記テクスチャー含浸前に遂行される、前記ヤーン孔充填工程は、前記組成物を前記ヤーン外側に“移動する”ために貢献し、それによって前記液体技術で得られる前記母材を前記ヤーン内側に形成することを妨げる。
【0022】
前記ヤーン充填工程は、液体組成物の手段で織物のヤーンを含浸することを含んでもよい。
【0023】
前記フィラー組成物での前記ヤーンの含浸は、前記テクスチャーが前記繊維プリフォームを得るために造型される前、または造型された後に前記繊維テクスチャー上で遂行し得る。前記ヤーン充填工程は、液体組成物の手段で織物のヤーンを含浸することを含んでもよい。最初の場合、前記凝固組成物での含浸もまた前記繊維テクスチャーが造型される前、または前記造型後に遂行され得る。
【0024】
前記繊維テクスチャーを形成する前に含浸、すなわち各ヤーンを前記フィラー組成物で別々に含浸し、それから前記テクスチャーを前記含浸ヤーンと織ること、をまた遂行できる。
【0025】
前記フィラー液体組成物は、前記ガス技術で得られる母材を前記プリフォームのヤーンコアに堆積できるようにガス技術による緻密化の工程前に除去してもよいし、またはさもなければその組成物は前記製造方法を通して保存してもよく、この場合前記フィラー組成物の種類はそれが劣化しない材料を形成するように選択すべきである。
【0026】
除去できるのであれば、前記フィラー組成物は犠牲樹脂を含んでもよく、犠牲樹脂はガス技術による緻密化を遂行する前に前記ヤーン内側を横切って再開口するように前記凝固材料の前駆体に変換するための熱処理の間、前記ヤーン内の孔から除去される。
【0027】
前記凝固液体組成物の前記テクスチャーのヤーン外側への良好な移動を保証するために、前記犠牲樹脂は前記凝固液体組成物と混和性でないことが好ましい。前記犠牲樹脂は、シリコーンオイル、ポリビニルアセテイトおよび熱可塑性樹脂から特に選択される。
【0028】
択一的に、前記繊維テクスチャーの前記ヤーンはCまたはSiCヤーンの混合物を熱可塑性樹脂ヤーンと共に織ることによって充填されてもよく、前記熱可塑性ヤーンは前記前駆体に変換するための熱処理の間に除去される。
【0029】
前記プリフォームは、炭素のセラミック繊維で作られる繊維テクスチャーから製作してもよく、かつ前記凝固液体組成物中の凝固材料のための前駆体は炭素の前駆体である樹脂およびセラミックの前駆体である樹脂から選択される樹脂であってもよい。
【0030】
前記繊維プリフォームがセラミック−前駆体樹脂を用いる液体技術によって凝固されるセラミック繊維の繊維テクスチャーから作られる場合、前記フィラー組成物は炭素−前駆体樹脂、熱分解が前記プリフォームの制御された酸化で除去された後にヤーンに結果として生じる樹脂コークス、を含んでもよい。この場合、前記セラミック−前駆体凝固樹脂での前記テクスチャーの含浸の間、前記テクスチャーのヤーン内の孔は前記母材を前記ガス技術によって内側ヤーンに形成できるように緻密化される前に、一時的に満たされ、かつ制御された酸化によって再開口される。
【0031】
前記炭素−前駆体樹脂は前記繊維テクスチャーを前記セラミック−前駆体凝固樹脂で含浸する前に高分子化されてもよい。前記炭素−前駆体樹脂をその後、すなわち前記凝固樹脂が高分子化されるときと同時に高分子化することもできる。
【0032】
前記フィラー組成物が前記プリフォームを緻密化する前に除去されない場合、前記フィラー組成物はセラミック−前駆体樹脂を含んでもよく、前記凝固液体組成物はそれとき前記炭素−前駆体樹脂を含む。したがって、セラミック−前駆体樹脂の熱分解の間に、前記ヤーンの孔に現れる前記セラミック−前駆体樹脂もまたセラミックを形成するために変換する。それゆえ、最終部品の繊維強化材のヤーンは炭素よりも酸化に非常に影響されないセラミックで緻密化される。前記部品は、それとき改良された熱機械的特性が現われる。
【0033】
前記セラミック−前駆体樹脂は、前記繊維テクスチャーを前記炭素−前駆体凝固樹脂で含浸する前に高分子化されてもよい。前記セラミック−前駆体樹脂もまたその後、すなわち凝固樹脂を高分子化するときと同時に高分子化されてもよい。
【0034】
本発明の他の特性および有益さは、限定されない例および添付される図面に関して与えられる以下の本発明の特有な実施の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に従って方法の実施の連続ステップを示すフロー図である。
【図2】本発明の方法に従って得られる複合材料を示す顕微鏡写真である。
【図3】本発明の方法によって得られる複合材料を示す顕微鏡写真である。
【図4】従来法で得られる材料を示す顕微鏡写真である。
【図5】従来法で得られる材料を示す顕微鏡写真である。
【図6】本発明に従って方法の他の実施の連続ステップを示すフロー図である。
【図7】本発明に従って方法の他の実施の連続ステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、熱構造複合材料から作られる部品の製造方法に関し、その部品はガス技術による緻密化の工程前に液体技術で得られた凝固母材がその孔(ヤーン内空間)にフィラー組成物で前もって充填することによって前記プリフォームの繊維テクスチャーの外側ヤーンに“移転される”ところのものである。
【0037】
すなわち、使用される前記繊維テクスチャーは複数のヤーン(ある状況において共に集合されたトウを形成し得る)を含む。各ヤーンは、複数の繊維および/または“ヤーン内空間”と呼ばれるそれらの間に存在する空間を持つフィラメントによって構成される。前記ヤーン内空間はヤーン内に孔を形成する。さらに、より大きなスケールにおいて空間もまたヤーン自身の間の繊維構造内に存在し、空間は“ヤーン間空間”と呼ばれる。本発明において、前記フィラー組成物は凝固母材を液体技術で単独にヤーン間空間に堆積できるようにヤーン内空間に予備充填するために用いられる。
【0038】
フィラー組成物の量はヤーン内空間(ヤーン内の孔)のみを充填できるように選択されることが必要である。必ず全てのヤーン内空間が充填されるのに十分でなければならない。特に、この充填を遂行するために用いられる組成物の量はそれが単独で繊維と共に結合することが望ましいときの量より多くしなければならず、理由は前記組成物がバインダーとして用いられる場合、それが繊維間の接触であるそれらの箇所でのみ存在させる必要があるかである。また、フィラー組成物の量はテクスチャーのヤーン間に存在されるヤーン間空間に占めるヤーン外側への流出を回避するために調節しなければならない。
【0039】
本発明に従って、フィラー組成物、液体または固体であってもよい、は繊維テクスチャーのヤーン内側に導入され、その前にテクスチャーは凝固母材に相当する凝固材料のための前駆体を含む凝固液体組成物で含浸される。
【0040】
第1の取り組みにおいて、フィラー組成物または前記組成物がもたらされる材料はヤーン内の孔を再開口し、かつプリフォームを緻密化する間に、ガス技術で堆積される母材をヤーン内側に浸透できるように繊維プリフォームをガス技術を用いて緻密化する工程の前に除去される。したがって、凝固のために液体技術を用いる場合でさえ、ガス技術によって凝固される材料のそれに近似する改良された熱機械的特性を表す複合材料は得られ、その理由は繊維プリフォームが液体技術で凝固され、それからガス技術で緻密化されるときに通常起こるのと同様に、緻密化の間にガス技術で堆積される母材もまたプリフォームのヤーン内側およびそれらの外側のみでなく、に存在されるからである。
【0041】
第2の取り組みにおいて、繊維テクスチャーを炭素前駆体を含む凝固液体組成物で含浸する前に、テクスチャーのヤーン孔は樹脂を含む液体組成物で充填され、樹脂は、熱分解後、炭素の特性に比べて改良される特性を表す材料(熱分解生成物)を誘発する。特に、熱分解生成物は非酸化性であるべきである。この第2の取り組みはヤーンのコアに非酸化性材料を所有することができ、したがって炭素−前駆体樹脂を用いる液体技術によって凝固するときに通常起こるのと同様な炭素(樹脂コークス)を含むコアを有するヤーンに比べて改良される特性を表すことを保証する。そのような状況下で、熱分解後に炭素を発生する樹脂がヤーン外側に保持されるので、改良される熱機械的特性を表す複合材料もまた得られる。テクスチャーを凝固組成物で含浸する前に、この方法で繊維テクスチャーのヤーンに充填することによって、樹脂のコークス量を低減すること、または酸化に対する保護に供するためにガラスを形成できる添加物を用いるための特別の方法を実行することはもはや必要がない。したがって、そこからもたらすことができるコークス量に対して規制せずに、液体技術による凝固のためのいずれの種類の有機樹脂を用いることができる。
【0042】
フィラー組成物でのヤーンの含浸は、繊維テクスチャーに直接、または以前に、すなわち各ヤーンをフィラー組成物で別々に含浸し、それからテクスチャーをそれらのヤーンと織ることよって遂行してもよい。
【0043】
フィラー組成物または前記組成物がもたらされる材料は、ガス技術によって繊維プリフォームを緻密化する前に除去する場合、フィラー組成物は犠牲樹脂、またはCもしくはSiCのヤーンと混合される熱可塑性ヤーンの形態の固体組成物のような液体組成物であり、前記熱可塑性ヤーンは前駆体を変換させるための熱処理の間にひきつづき除去される。
【0044】
繊維テクスチャーのヤーン孔を充填する工程に加えて、本発明に従って複合材料の部品の製造方法は十分既知の強化繊維テクスチャーを用意すること、凝固プリフォームを得るように液体技術によってテクスチャーを造型し、凝固すること、およびプリフォームをガス技術で凝固することを含む。
【0045】
当初の繊維テクスチャーは種々の繊維、特に炭素繊維またはセラミック繊維(例えば炭化珪素繊維)から作ってもよい。液体技術によって造型する目的のために、テクスチャーは二次元パイル、例えば編むか織られた織物の層、ヤーンのシートまたはトウ、その他の形態であることが有益で、二次元パイルはニードリングまたはステッチ溶着によって一緒に結合してもよく、またはフェルと合せて組み立てしてもよい。テクスチャーは、三次元織物、ブレーディング、編みヤーンまたは幾つかの他の知られた技術のよって作られてもよい。織られた層は、連続または不連続であるフィラメントから作られたヤーンから形成してもよい。
【0046】
十分に既知の手法において、液体技術による凝固は材料の有機前駆体で繊維テクスチャーを含浸することによって遂行され、その材料は凝固に供する母材の第1相のために望ましい。これは、炭素前駆体(フェノール樹脂、フラン樹脂、ピッチ、その他)、または炭化珪素の前駆体であるポリシランもしくはポリシラザン、ポリカルボシラザンのようなセラミック前駆体、ゾル/ゲル技術、溶解塩によって得られる前駆体のような他の前駆体を含んでもよい。
【0047】
繊維テクスチャーは、繊維テクスチャーが凝固組成物で含浸される前または後に成形によって一般的に造型される。
【0048】
含浸繊維テクスチャーは200℃未満の温度で一般的に高分子化される。この段階で、造型テクスチャーは熱分解によって前駆体に変換するために熱処理に委ねられる。この処理は、前駆体の種類に依存する、500℃から2800℃の範囲にある温度で一般的になされ、テクスチャーは必要に応じてその変形を避けるために金型に健全な状態で保持される。
【0049】
ガス技術による緻密化は、炭素またはセラミック、特に炭化珪素(SiC)のガス状前駆体を一般的に含むガスが進入される浸透炉内で支持器具を用いずに化学蒸気浸透により遂行される。母材を形成するガス技術は、よく知られている。
【0050】
ガス技術による緻密化は、必要に応じてUSP No.4752503および5486379に述べられているのと同様に、相関層を堆積する工程で開始され得る。
【0051】
図1を参照して本発明に従って熱構造複合材料部品の製造方法の実施は、テクスチャーのヤーン孔が犠牲樹脂、すなわち熱分解後に消滅され、10重量%以下、好ましくは5重量%未満の僅かな炭素残留物(樹脂コークス)を残す樹脂で当初に充填されることを述べる。
【0052】
第1ステップ(ステップS1)は、繊維テクスチャーを炭素繊維またはセラミック繊維(例えばSiC繊維)から形成することからなる。
【0053】
テクスチャーを犠牲樹脂で含浸することによって繊維テクスチャーのヤーン孔を充填する工程がひきつづいて起こる。現在述べられる例において、テクスチャーは溶媒で希釈されるシリコーンオイルで含浸される(ステップS2)。
【0054】
この実施において、目標は繊維テクスチャーのヤーン孔を熱分解後に残留物を残さないかまたは実質的に残さない樹脂で充填する。この充填操作に用いられる樹脂は、凝固樹脂の高分子化の終了までヤーン内に残留することが必要である。この目的のために、フィラー樹脂は凝固樹脂と混和性でなく、かつ繊維テクスチャーを凝固樹脂で含浸する間に用いられ得る幾つかの溶媒と混和性でないことが必要である。
【0055】
充填に用いられる犠牲樹脂量は、ヤーン内空間(ヤーン内孔)のみに充填できるように選択する必要がある、すなわちヤーン外側に流出せず、かつテクスチャーのヤーン間に存在されるヤーン間空間に占めないことが必要である。これらのヤーン内空間は凝固樹脂で充填されるべきである。
【0056】
繊維テクスチャーのヤーンがシリコーンオイルで含浸された後、溶媒は気化され(ステップS3)、それによってヤーン内のシリコーンオイルを濃縮。この段階において、繊維テクスチャーは柔軟性を残し、かつ液体凝固組成物で含浸され、ここでフェノール樹脂が場合によって溶媒、例えばエチルアルコールで希釈される(ステップS4)。溶媒の気化および予備高分子化(予備ライニング)の任意のステップの後、含浸繊維テクスチャーは成形によって造型され(ステップS5)、かつフェノール樹脂が高分子化される(ステップS6)。テクスチャーはそれから熱処理に委ねられて熱分解によってフェノール樹脂を固体炭素残留物(樹脂コークス)に変換し、それによってテクスチャーを凝固しかつ共に保持する繊維プリフォーム(自己支持プリフォーム)を得る(ステップS7)。
【0057】
繊維テクスチャーは、テクスチャーがフィラー液体組成物で含浸される(ステップS2)前後、フィラー組成物の溶媒を気化する(ステップS3)前後、または凝固液体組成物で含浸する(ステップS4)前、に等しく適確に造型されてもよい(ステップ5)。
【0058】
熱分解の間に、ヤーン内に存在されるシリコーンオイルは蒸発成分に変換し、その成分はフェノール樹脂コークスと共にテクスチャーから排出される。
【0059】
前記方法のこの段階において、プリフォームは十分に硬質であり、使用されるべき道具仕上げを必要とせずに、化学蒸気浸透(CVI)による緻密化のための炉に設置できる(ステップS8)。炉に導入されるガスの種類に依存して炭素またはセラミック母材は繊維テクスチャー内に形成される。ヤーン内側の孔は熱処理の間にシリコーンオイルが除去されて再開口され、それゆえガスはヤーン間空間およびヤーン内の孔の両方に浸透し、それによって母材をガスによってプリフォームのヤーン外側およびそれらの内側の両方に履行させることが可能になる。
【0060】
この方法で作られる複合材料部品の熱機械的特性は、同様な方法であるが、犠牲樹脂によってヤーン内の孔に前もって充填せずに作られる部品のそれより良好である。本発明の方法に従って製造される部品のヤーンは非常に低いコークス量を表すこと、およびそれらは実質的にCVIで得られる母材によって実質的に緻密化されることを示すことができる。
【0061】
ヤーン外側への液体技術で形成される母材の移し替えもまたシリコーンオイルをポリビニルアセテート(PVA)または例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)型の熱可塑性樹脂で置き換えることによって得てもよい。そのような状況下において、シリコーンオイルで含浸されるテクスチャーと異なって、繊維テクスチャーはフェノール樹脂で含浸されるより前に硬質になり、それゆえ実際にPVAまたは熱可塑性樹脂で含浸されると同時にテクスチャーを造型することが必要である。
【0062】
他の凝固樹脂はフェノール樹脂の代わりに等しく適切に用いられてもよい。セラミック樹脂もしくはピッチのような炭素−前駆体樹脂、またはポリカーボシラザン、ポリカーボシラン、もしくはポリシロキサン樹脂のようなセラミック−前駆体もまた得るのに望ましい材料の特性に依存して用いることができる。
【0063】
図2および図3は繊維テクスチャーのヤーン内孔が前述したように犠牲樹脂で最初に充填されたときのヤーン間空間およびヤーン内空間で得られる結果をそれぞれ示す一方で、図4および図5はヤーン内孔が予め充填されていないときのヤーン間空間およびヤーン内空間で得られる結果をそれぞれ示す。
【0064】
図2〜図5の複合材料は以下の条件:
三次元炭素繊維織り(例えばGuipex[登録商標]織物)の多層構造を作ることによって繊維テクスチャーを形成すること;
フェノール樹脂およびエチルアルコール(60%:40%)の浴でテクスチャーを含浸することによる液体凝固(“浸漬”それから濡れたまま乾かす)、溶剤を気化しかつ90℃でストーブにて予備高分子化(予備ライニング)、24%の吸い上げ重量で所望の厚さに圧力で成形すること、および約800℃の温度で炭化してフェノール樹脂を樹脂コークスに変換すること;および
2以上の相対密度を得るために自己ヒーリング母材(SiC)でCVI緻密化
で作られるC/C材料である。
【0065】
図2および図3の材料の場合、繊維テクスチャーもまた以下の条件:
水でポリビニルアセテート溶液(15%:85%)を調製すること;
三次元炭素繊維織りの層を“浸漬”によってPVA/水溶液で含浸し、それから濡れたまま乾かすこと;
ストーブで30℃、5時間水を気化すること;および
22%吸い上げ重量で所望の厚さに圧力で成形すること
で犠牲樹脂で予め含浸される。
【0066】
PVA樹脂は、炭化の間に除去される。
【0067】
図2(犠牲樹脂で繊維テクスチャーの予備含浸で得られる顕微鏡写真)において、ヤーン間空間に樹脂コークスの領域の存在を観察でき、一方図4(犠牲樹脂で繊維テクスチャーの予備含浸せずに得られる材料の顕微鏡写真)において、ヤーン間にコークスがないことを観察できる。ヤーン間空間での樹脂コークスのこの欠乏は、繊維テクスチャーのヤーンの予備充填なしでフェノール樹脂がテクスチャーのヤーンの大部分に浸透し、それによって図5で観察できるように、炭化後にヤーンに大量のフェノール樹脂コークスの存在を導くことの事実によるものである。
【0068】
これに対し、テクスチャーのヤーンがPVA樹脂で予め充填された場合、図3に示すようにヤーン内に非常に僅かなフェノール樹脂コークスがあることを観察できる。フェノール樹脂コークスはテクスチャーのヤーンに浸透するのを妨げ、かつそれはヤーン間の結合を促進する樹脂コークスの領域を形成するヤーン間空間に濃縮する(図2)。
【0069】
また、図3および図5の材料の比較において、CVIで堆積される自己ヒーリング母材は充填されないヤーン(図5)に比べてPVA樹脂で予め充填されたヤーン(図3)内により均一に分布されることを観察できる。ヤーンが犠牲樹脂で予め含浸される場合、その中の孔は炭化の間に化学蒸気浸透より前に再開口し、一方そのような予備含浸なしで、ヤーン内の大部分の孔体積は炭化の間に形成される樹脂コークスによって差し込まれる。
【0070】
PVA樹脂と共にヤーンの予備含浸で得られる材料に雰囲気温度でなされる機械牽引試験の結果は下記表Iに上げられる。
【表1】

【0071】
得られた結果は、犠牲樹脂で繊維テクスチャーのヤーンの予備充填は材料の機械的特性を改善するために貢献することを示す。
【0072】
図6は、図1を参照して述べられる実施と異なる本発明に従う方法の別の実施を示し、使用はテクスチャーヤーンの孔を充填する犠牲樹脂の代わりに炭素−前駆体で最初に作られ、かつ次に液体技術によって凝固するために炭素−前駆体の代わりにセラミック−前駆体樹脂で作られる。
【0073】
第1ステップ(ステップS11)は、繊維テクスチューをセラミック繊維(例えばSiC)から形成することからなる。
【0074】
その後、繊維テクスチャーのヤーン孔を炭素前駆体を含む液体組成物、ここで溶剤(例えばエチルアルコール)にて希釈されるフェノール樹脂、でそれらを含浸することによって充填するステップが続く(ステップ12)。充填に用いられるフェノール樹脂の量はテクスチャーのヤーン間に存在されるヤーン間空間に占有することなく、ヤーン内空間(ヤーン内の孔)のみに充填することを可能にするように選択することが必要である。
【0075】
繊維テクスチャーのヤーンがフィラー組成物で含浸された後、溶剤は気化され(ステップS13)、それによってヤーン内のフェノール樹脂を濃縮する。繊維テクスチャーは成形によって造型され(ステップS14)、かつフェノール樹脂が高分子化される(ステップS15)。繊維テクスチャーはフェノール樹脂で含浸される(ステップS12)より前、またはフィラー組成物の溶剤を気化する(ステップS13)より前に等しく適確に造型されてもよい。
【0076】
テクスチャーはセラミック前駆体、ここで場合によって溶剤で希釈されるポリカーボシラザン樹脂、を含む凝固液体組成物でそれから含浸される(ステップ16)。溶剤を気化することおよび予備高分子化(予備ライニング)の任意のステップ後、含浸繊維テクスチャーは成形によって再度造型され(ステップS17)、かつポリカーボシラザン樹脂が高分子化される(ステップS18)。テクスチャーはそれから熱処理に委ねられ、フェノール樹脂を熱分解で固体炭素残渣(フェノール樹脂コークス)に変換し、かつポリカーボシラザン樹脂をSiCセラミックに変換し(ステップS19)、したがって凝固繊維プリフォームを得ることが可能になる。
【0077】
この熱分解ステップの後、プリフォームはプリフォームのヤーンまたは凝固セラミックを劣化しないで炭素(フェノール樹脂コークス)を除去するために約450℃でなされる酸化に委ねられる(ステップS20)。
【0078】
この段階において、プリフォームは十分に硬質であり、化学蒸気浸透による緻密化のために炉で道具仕上げしないで、セラミック(SiC)に対して前駆体であるガスが進入する炉に設置でき(ステップS21)、進入は任意に相関層のCVI堆積より前に起こり、USP No.4752503および5486379に述べられるように露出した繊維を保護してもよい。ヤーン孔は樹脂コークスを酸化することによって再開口されていたので、ガスはヤーン間空間およびヤーン内の孔の両方に浸透し、それによって母材をプリフォームの外側および内側の両方にCVIで形成することが可能になり、したがってガス技術を用いて凝固された部品のそれに近似する熱機械的特性を有する複合材料部品を得る。本発明の方法に従って製造される部品のヤーンは、コークスを含まず、かつCVIで得られる母材で緻密化されることを示すことができる。ポリカーボンシラザン樹脂を熱分解することからもたらされるSiCセラミックはヤーン間空間に濃縮される。
【0079】
種々の実施において、凝固の間に既に柔軟である繊維テクスチャーを有するように、および成形による造型の唯1つのステップをなすように繊維テクスチャーはフェノール樹脂で含浸された後(予備ライニング後)、直ちにポリカーボシラザン樹脂で含浸されてもよい。
【0080】
ヤーン内の孔を充填するのに用いられるフェノール樹脂は、例えばセラミック樹脂またはピッチで置き換えてもよく、それと同時に凝固のために用いられるポリカーボシラザン樹脂は例えばポリカーボシラザンまたはポリシロキサン樹脂で置き換えてもよい。
【0081】
本発明に従う複合材料部品の製造方法の実施は、テクスチャーのヤーン中の孔が樹脂コークスに比べて改良される特性、特に酸化しえない特性、を表す熱分解生成物を含む液体組成物で充填される、図7を参照して以下に述べられる。以下に述べられる例において、フィラー液体組成物はSiCに対して例えばポリカーボシラザン樹脂のような前駆体樹脂である。
【0082】
第1ステップ(ステップS31)は炭素繊維(またはこ場合によってセラミック繊維)から繊維テクスチャーを形成することからなる。
【0083】
その後、ステップは溶剤に希釈されるポリカーボシラザン樹脂でテクスチャーを含浸することによって繊維テクスチャーのヤーン内の孔を充填することをなす(ステップS32)。充填に用いられるポリカーボシラザン樹脂の量は、ヤーン内空間(ヤーン内の孔)のみに充填することが可能になるように、すなわちテクスチャーのヤーン間に存在するヤーン間空間に占有することを回避するためにヤーン外側に流出しないで、選択する必要がある。これらのヤーン間空間は次に凝固樹脂で充填される。
【0084】
繊維テクスチャーをポリカーボシラザン樹脂で含浸した後、溶媒は気化され(ステップS33)、それによってヤーン内のポリカーボシラザン樹脂の濃縮効果を有する。繊維テクスチャーは、成形によって造型され(ステップS34)、かつポリカーボシラザン樹脂は高分子化される(ステップS35)。テクスチャーをフィラー液体組成物で含浸する(ステップS32)より前またはフィラー組成物の溶剤を気化する(ステップS33)より前に繊維テクスチャーを造型することもまたできる。
【0085】
テクスチャーはそれから凝固液体組成物、ここで場合によって溶媒で希釈されるフェノール樹脂、で含浸される(ステップS36)。溶媒の気化および予備高分子化(予備ライニング)の任意のステップ後、含浸繊維テクスチャーは再度成形により造型され(ステップS37)、かつフェノール樹脂は高分子化される(ステップS38)。テクスチャーはそれから熱処理に委ねられ、熱分解でポリカーボシラザン樹脂をSiCNセラミックに、およびフェノール樹脂を固体炭素残渣(樹脂コークス)に転移し(ステップS39)、それによって凝固繊維プリフォームを得ることができる。ポリカーボシラザン樹脂を熱分解することによるSiCNセラミクの形成は材料収縮を随伴し、それによってヤーンの孔を部分的に再開口し、それゆえ次のガス技術によって緻密化できる。
【0086】
前記方法のこの段階において、プリフォームは十分に硬質であり、化学蒸発浸透(CVI)による緻密化のために炉で道具仕上げすることなく、セラミック(SiC)または炭素(ピロカーボン)に対して前駆体であるガスが入った状態(ステップS40)、場合によってはUSP No.4752503および5486379に述べられるような前もって相関層のCVI堆積状態、で炉に設置できる。ヤーン内側孔はSiCセラミックで充填されているので、ヤーン内側に非常に僅かな樹脂コークスがあり、ヤーンはSiCNセラミック母材およびCVIで得られる母材によって緻密化され、したがってプリフォームのヤーンがセラミック−前駆体樹脂で予め充填されない部品のそれらより良好である熱機械特性を有する複合材料部品を得ることができる。
【0087】
種々の実施において、繊維テクスチャーは凝固の間に繊維テクスチャーが既に柔軟であるようにポリカーボシラザン樹脂で含浸される直後にフェノール樹脂で含浸されてもよく、したがって成形による造形の唯1つのステップを遂行できる。
【0088】
ヤーンの孔に充填するために用いられるポリカーボシラザン樹脂は例えばポリカーボシランまたはポリシロキサン樹脂で置き換えてもよく、同時に凝固のために用いられるフェノール樹脂は例えばフラン樹脂またはピッチで置き換えてもよい。
【0089】
以下の例において、2つのC/C複合材料は以下の条件:
・三次元織り炭素繊維(例えばGuipex[登録商標]織物)で多層構造に加工することによって繊維テクスチャーを形成すること;
・80℃に加熱されるフェノール樹脂の浴でテクスチャーを含浸することによる液体技術でテクスチャーを凝固する(“浸漬”ひきつづく濡れたまま乾かす)こと、21%の吸い上げ重量の状態で真空パウチ下にて成形すること、および約800℃で炭化してフェノール樹脂を樹脂コークスに変換すること;および
・ガス技術を用いて相対密度が2以上に得られるまで自己ヒーリング母材(SiC)でテクスチャーを緻密化すること
で作製した試験片Aおよび試験片Bを作った。
【0090】
さらに、試験片Aの繊維テクスチャーもまた以下の条件:
・“浸漬”およびそれから濡れたまま乾かすことを経由して三次元織り炭素繊維のパイルをポリシラザン予備セラミック樹脂(KION VL 20[登録商標]樹脂)で含浸すること;および
・30%の吸い上げ重量の状態で真空パウチ下にて成形すること
でセラミック−前駆体樹脂で予め含浸された。
【0091】
試験片AおよびBに対する雰囲気温度での機械牽引試験の結果は下記表IIに上げられる。
【表2】

【0092】
得られた結果は、繊維テクスチャーの繊維をセラミック−前駆体樹脂で前もって充填することがそのような充填しないで得られるそれらと比較して多少改善される機械特性を達成できることを明確に示す。
【0093】
試験片AおよびBに対する牽引(0.25Hzでの牽引)で寿命疲労試験の結果は下記表IIIに上げられる。
【表3】

【0094】
得られた結果は、繊維テクスチャーのヤーンがセラミック−前駆体樹脂で予め充填されるときに寿命の明らかな改善を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材によって緻密化される繊維強化材を含む複合材料部品の製造方法で、前記方法は、
・ヤーンから構成される繊維テクスチャーを凝固材料のための前駆体を含む液体凝固組成物で含浸すること、および形を保つ凝固材料を得るように前記前駆体を熱分解により凝固材料に変換することによって凝固繊維プリフォームを製作する工程;および
・前記凝固繊維プリフォームを化学蒸発浸透によって緻密化する工程
を含み、
前記方法は前記凝固液体組成物での前記繊維テクスチャーの含浸前に、前記繊維テクスチャーの前記ヤーン孔をフィラー組成物によって充填する工程を含むことを特徴とする。
【請求項2】
充填工程において、前記テクスチャーの前記ヤーン孔はフィラー液体組成物によって充填されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記充填工程において、フィラー液体組成物の量は前記繊維テクスチャーのヤーン間の空間に占有しないで前記ヤーン内の内部空間に充填するよう選択されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記フィラー液体組成物は、犠牲樹脂を含むことを特徴とする請求項2または3記載の方法。
【請求項5】
前記犠牲樹脂は、前記フィラー液体組成物と混和性がないことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記犠牲樹脂は、シリコーンオイル、ポリビニルアセテート、および熱可塑性樹脂から選択されることを特徴とする請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記充填工程において、前記テクスチャーの前記ヤーン孔は前記テクスチャーのヤーンと混合される熱可塑性ヤーンによって充填されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記プリフォームは炭素またはセラミック繊維から作られ、かつ前記凝固液体組成物の凝固材料前駆体は炭素−前駆体樹脂およびセラミック−前駆体樹脂から選択される樹脂であることを特徴とする請求項2〜6いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記繊維プリフォームはセラミック繊維テクスチャーから作られ、かつ前記フィラー液体組成物は炭素−前駆体樹脂を含み、前記プリフォームは前記炭素−前駆体樹脂のコークスを除去するための熱分解後に酸化されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項10】
前記凝固液体組成物の前記凝固材料前駆体はセラミック−前駆体樹脂であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記凝固液体組成物の前記セラミック−前駆体樹脂は、ポリカーボシラザン樹脂、ポリカーボシラン樹脂およびポリシロキサン樹脂から選択される樹脂であることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記繊維テクスチャーを前記凝固液体組成物で含浸する前に、前記炭素−前駆体樹脂を高分子化する工程を含むことを特徴とする請求項9から11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記フィラー液体組成物はセラミック−前駆体樹脂を含み、前記凝固液体組成物は炭素−前駆体樹脂を含むことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項14】
前記フィラー液体組成物の前記セラミック−前駆体樹脂はポリカーボシラザン樹脂、ポリカーボシラン樹脂およびポリシロキサン樹脂から選択される樹脂であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記繊維テクスチャーの前記ヤーンを前記凝固液体組成物で含浸する前に、前記セラミック−前駆体樹脂を高分子化する工程を含むことを特徴とする請求項13または14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−507556(P2010−507556A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533916(P2009−533916)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052240
【国際公開番号】WO2008/050068
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【出願人】(509120447)サントル・ナショナル・デテュッド・スパティアレ (2)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL D’ETUDES SPATIALES
【住所又は居所原語表記】2 place Maurice Quentin − 75001 PARIS, France