説明

熱転写インキリボンおよびその製造方法

【課題】静電気の発生を防止し、サーマルプリンターなどに装填して使用してもその印字に支障がないようにするとともに、熱転写インキリボンの製造装置の設置工場内における湿度管理や、サーマルプリンターや小卷き装置などに帯電防止ブラシやイオナイザーを備える必要がないようにした熱転写インキリボンおよびその製造方法を提供すること。
【解決手段】静電防止剤32を熱転写インキリボンの製造工程において添加あるいは噴霧することに着目したもので、リボンフィルム4と、リボンフィルム4に塗布した熱転写インキ5と、を有する熱転写インキリボンであって、リボンフィルム4および熱転写インキ5の少なくともいずれか一方に静電防止剤32を添加していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写インキリボンおよびその製造方法にかかるもので、とくにサーマルプリンターなどに装填して使用する際に静電気を発生することがない熱転写インキリボンおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、サーマルプリンターなどに装填して使用する熱転写インキリボンは、ロール状に巻き取った形態であり、これを帯状に巻き戻して移送路に移送する際に発生する静電気がプリンターにおける印字に障害を与える原因となっていた。
【0003】
図3および図4にもとづき概説する。
図3は、従来からの熱転写インキリボン1の製造装置2の概略側面図、図4は、熱転写インキリボン1を装填する従来からのプリンター(サーマルプリンター3)の概略側面図である。
図3に一部を拡大して示すように、熱転写インキリボン1は、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材などによる厚さたとえば4.5〜6μm程度のリボンフィルム4と、このリボンフィルム4に塗布した熱転写インキ5と、を有する。
【0004】
熱転写インキリボン1の製造装置2は、インキ容器6に熱転写インキ5を準備し、グラビア印刷ロール7およびバックアップロール8の間においてリボンフィルム4に熱転写インキ5(インキ層、アンカー層、コート層)を所定の厚さ(たとえば合計で3〜4μm)で塗布し、大巻きロール9とし、小卷き装置10を通して、最終製品として、より小径で取扱い可能な形態としたロール状の熱転写インキリボン1を得る。
【0005】
図4に示すように、上記サーマルプリンター3は、ラベル供給部11と、ラベル印字部12と、台紙転向部13と、台紙巻取り部14と、を有する。
【0006】
ラベル供給部11は、印字用紙(たとえばラベル連続体15)をロール状に保持するとともに、ラベル連続体15を帯状にラベル印字部12方向に繰り出し可能とする。
ラベル連続体15は、帯状の台紙16と、帯状の台紙16上に仮着する複数枚のラベル片17と、を有する。
ラベル片17は、ラベル基材18およびその裏面側の粘着剤層19を有し、粘着剤層19部分が帯状の台紙16に仮着している。
【0007】
ラベル印字部12は、サーマルヘッド20およびプラテンローラー21と、熱転写インキリボン1のリボン供給部22およびリボン巻取り部23と、を有する。
サーマルヘッド20およびプラテンローラー21の間に熱転写インキリボン1およびラベル連続体15を挟持して移送し、サーマルヘッド20からの熱で所定の情報をラベル連続体15(ラベル片17)上に熱転写して印字する。
【0008】
しかしながら、大巻きロール9(図3)の状態から小卷き装置10に通して小卷きを行う際に、熱転写インキリボン1の移送巻き出しの工程において熱転写インキリボン1に静電気が発生し、熱転写インキリボン1の製造工程における障害となっているという問題がある。
【0009】
さらに、サーマルプリンター3(図4)においてリボン供給部22から熱転写インキリボン1がそのロール形態から帯状形態に巻き出される際に、熱転写インキリボン1に静電気が発生し、ラベル印字部12における移送および印字にも障害が生ずるという問題がある。
【0010】
このような静電気の発生を防止するために、熱転写インキリボン1の製造装置2の設置工場内において加湿制御ないしは湿度管理を行ったり、サーマルプリンター3や小卷き装置10に帯電防止ブラシやイオナイザー(ともに図示せず)などの設置が必要であり、装置の複雑化およびコストアップの原因となっているという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−297738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は以上のような諸問題にかんがみなされたもので、静電気の発生を防止することができるようにした熱転写インキリボンおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0013】
また本発明は、サーマルプリンターなどに装填して使用してもその印字に支障がないようにした熱転写インキリボンおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0014】
また本発明は、熱転写インキリボンの製造装置の設置工場内における湿度管理や、サーマルプリンターや小卷き装置などに帯電防止ブラシやイオナイザーを備える必要がないようにした熱転写インキリボンおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明は、静電防止剤を熱転写インキ自体に添加するか、熱転写インキリボンの大巻きロールからの小卷き加工時に静電防止剤を噴霧することに着目したもので、第一の発明は、リボンフィルムと、このリボンフィルムに塗布した熱転写インキと、を有する熱転写インキリボンであって、上記リボンフィルムおよび上記熱転写インキの少なくともいずれか一方に静電防止剤を添加していることを特徴とする熱転写インキリボンである。
【0016】
第二の発明は、リボンフィルムと、このリボンフィルムに塗布した熱転写インキと、を有する熱転写インキリボン製造方法であって、上記リボンフィルムに上記熱転写インキを塗布して上記熱転写インキリボンとする工程と、上記熱転写インキリボンの大巻きロールを小卷きする際に、上記熱転写インキリボンに静電防止剤を噴霧する工程と、を有することを特徴とする熱転写インキリボンの製造方法である。
【0017】
上記静電防止剤は、これを微粒子化していることができる。
【0018】
上記静電防止剤は、これをナノメートル(nm)のレベルにまで微粒子化していることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による熱転写インキリボンおよびその製造方法においては、静電防止剤を熱転写インキリボンの製造工程において添加あるいは噴霧するようにしたので、熱転写インキリボンの製造加工工程およびサーマルプリンターにおける移送印字工程において静電気の発生を防止し、静電気による各種の障害を回避するとともに、製造工場内の湿度管理や帯電防止ブラシあるいはイオナイザーなどを不要とし、設備および装置の簡略化およびコストダウンを図ることができる。
【0020】
とくに第一の発明の熱転写インキリボンによれば、静電防止剤をリボンフィルムおよび熱転写インキの少なくともいずれか一方に添加したので、サーマルプリンターにおける移送印字工程において静電気の発生を防止し、静電気による各種の障害を回避することができる。
【0021】
とくに第二の発明の熱転写インキリボンの製造方法によれば、熱転写インキリボンの大巻きロールからの小卷き加工時に静電防止剤を噴霧するようにしたので、小卷き装置はもちろん、サーマルプリンターにおける移送印字工程において静電気の発生を防止し、静電気による各種の障害を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例による熱転写インキリボン30の製造装置31の概略図である。
【図2】本発明による熱転写インキリボンの製造方法を説明するための熱転写インキリボン1の小卷き装置40の概略斜視図である。
【図3】従来からの熱転写インキリボン1の製造装置2の概略側面図である。
【図4】熱転写インキリボン1を装填する従来からのプリンター(サーマルプリンター3)の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、静電防止剤をリボンフィルムおよび熱転写インキの少なくともいずれか一方に添加するか、熱転写インキリボンの大巻きロールからの小卷き加工時に静電防止剤を噴霧するようにしたので、熱転写インキリボンの製造加工工程およびサーマルプリンターにおける移送印字工程において静電気の発生を防止可能な熱転写インキリボンおよびその製造方法を実現した。
【実施例】
【0024】
つぎに本発明の実施例による熱転写インキリボン30およびその製造方法を図1および図2にもとづき説明する。ただし、図3および図4と同様の部分には同一符号を付し、その詳述はこれを省略する。
図1は、熱転写インキリボン30の製造装置31の概略図であって、製造装置31は、前記インキ容器6に前記熱転写インキ5を準備するとともに、熱転写インキ5自体に微粒子化した静電防止剤32を添加している。
静電防止剤32は、熱転写インキリボン30上での荷電をリークさせ静電気の帯電を防止するもので、静電防止剤32としては、界面活性剤、シロキサン系防止剤、ポリマー系防止剤、あるいは導電塗料系防止剤など任意のタイプのものを採用可能であるが、熱転写インキリボン30としての機能を阻害しないものを選択することが望ましい。
微粒子化の程度としては、ナノメートル(nm=10−9m)のレベル、少なくとも1μm未満たとえば10〜100nm程度が望ましい。
【0025】
前記グラビア印刷ロール7および前記バックアップロール8の間において、静電防止剤32入りの熱転写インキ5をリボンフィルム4に所定の厚さで塗布して、大巻きロール33とし、前記小卷き装置10を通して、最終製品としてのロール状の熱転写インキリボン30を得る。
【0026】
こうした構成の熱転写インキリボン30は、とくに図1に部分的に断面を拡大して示すように、とくに微粒子化(ナノ粒子化)した静電防止剤32がリボンフィルム4および熱転写インキ5の表面に透過移行可能であり(図中矢印参照)、熱転写インキリボン30の表裏面における荷電をリークして静電気の帯電を防止可能である。
したがって、小卷き装置10における静電気を防止するとともに、前記サーマルプリンター3(図4)などに装填しても、移送および印字を行う際の静電気が防止され、移送および印字における静電気による障害を確実に回避することができる。
【0027】
なお、本発明においては、静電防止剤32をリボンフィルム4にあらかじめ添加しておくこともできる。
【0028】
つぎに、図2は、本発明による熱転写インキリボンの製造方法を説明するための熱転写インキリボン1の小卷き装置40の概略斜視図であって、熱転写リボン1の小卷き装置40においては、前記大巻きロール9(図3)をガイドローラー41、静電防止剤噴霧機構42およびリボン切断機構43を経由して小卷きすることにより、静電防止を施した熱転写インキリボン44を得る。
【0029】
すなわち、静電防止剤噴霧機構42は、静電防止剤タンク45から噴霧パイプ46により熱転写インキリボン1の表面(リボンフィルム4側)に静電防止剤32を噴霧する。
さらに、リボン切断機構43により所定の幅に切断して静電防止を施した熱転写インキリボン44とする。
【0030】
こうした加工工程により製造された静電防止を施した熱転写インキリボン44においては、図2中、熱転写インキリボン44の一部を拡大して示すように、リボンフィルム4の表面側の静電防止剤32がロール状の熱転写インキリボン44の表裏面において荷電をリークさせることができ、静電気の発生を確実に防止可能である。
したがって、小卷き装置40における静電気を防止するとともに、サーマルプリンター3(図4)などに装填しても、移送および印字を行う際の静電気の発生が防止され、移送および印字における静電気による障害を確実に回避することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 熱転写インキリボン
2 熱転写インキリボン1の製造装置(従来、図3)
3 サーマルプリンター(従来、図4)
4 リボンフィルム
5 熱転写インキ
6 インキ容器
7 グラビア印刷ロール
8 バックアップロール
9 大巻きロール
10 小卷き装置
11 ラベル供給部
12 ラベル印字部
13 台紙転向部
14 台紙巻取り部
15 ラベル連続体
16 帯状の台紙
17 ラベル片
18 ラベル片17のラベル基材
19 ラベル片17の粘着剤層
20 サーマルヘッド
21 プラテンローラー
22 リボン供給部
23 リボン巻取り部
30 熱転写インキリボン(実施例、図1)
31 熱転写インキリボン30の製造装置(図1)
32 静電防止剤
33 大巻きロール
40 熱転写リボン1の小卷き装置(図2)
41 ガイドローラー
42 静電防止剤噴霧機構
43 リボン切断機構
44 静電防止を施した熱転写インキリボン
45 静電防止剤タンク
46 噴霧パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リボンフィルムと、
このリボンフィルムに塗布した熱転写インキと、を有する熱転写インキリボンであって、
前記リボンフィルムおよび前記熱転写インキの少なくともいずれか一方に静電防止剤を添加していることを特徴とする熱転写インキリボン。
【請求項2】
前記静電防止剤は、これを微粒子化していることを特徴とする請求項1記載の熱転写インキリボン。
【請求項3】
前記静電防止剤は、これをナノメートルのレベルにまで微粒子化していることを特徴とする請求項1または2記載の熱転写インキリボン。
【請求項4】
リボンフィルムと、
このリボンフィルムに塗布した熱転写インキと、を有する熱転写インキリボンの製造方法であって、
前記リボンフィルムに前記熱転写インキを塗布して前記熱転写インキリボンとする工程と、
前記熱転写インキリボンに静電防止剤を噴霧する工程と、
を有することを特徴とする熱転写インキリボンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−139833(P2012−139833A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292191(P2010−292191)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】