説明

熱転写シート

【課題】三次元構造に追従して印画可能で、印画物が優れた金属光沢を有する熱転写シートを提供する。
【解決手段】フィルム基材の一方の面に、剥離層、鏡面層、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属層、および接着層を順次少なくとも設けてなり、前記鏡面層は前記金属層側表面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下で、且つ熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有する、熱転写シートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写記録方式によって、被転写材に金属光沢等の金属感を有する文字や図柄等をプリントするための熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
金属光沢を有する印画物等を得る方法として、サーマルヘッドと熱転写シートを用いた熱転写記録方式を用いる方法が知られている。例えば、特許文献1には、金属光沢を有する印画物を得る熱転写シートとして、基材フィルムの一方の面に、剥離層、金属蒸着層 、及び接着層を順次積層したものが開示されている。このような熱転写シートは、接着層側を被転写体と対向させ、基材フィルム側からサーマルヘッド等の加熱装置を持つ熱転写プリンタで加熱することにより、金属蒸着層を含み金属光沢を有する印画物等を被転写体に転写させる。
【0003】
近年、高級感のある意匠性のために、電化製品、自動車部品、家具や屋内装飾品等に、金属光沢のある文字や図柄や外観を有する需要が高まっている。しかしながら、従来の金属光沢を付与する熱転写シートでは、金属光沢感が不十分であったり、印画物が鏡面を保持できなかったり、更には、平面ではなく立体構造に転写されると、三次元構造に追従できずに金属光沢を有する印画物等が割れてしまうという問題が生じていた。
【0004】
【特許文献1】特開平8−142530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記の課題を解決すべく、本発明は、三次元構造に追従して印画可能で、印画物が優れた金属光沢を有する熱転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、フィルム基材の一方の面に、剥離層、鏡面層、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属層、および接着層を順次少なくとも設けてなり、前記鏡面層は前記金属層側表面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下で、且つ熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有する熱転写シートを提供する。
【0007】
本発明によれば、金属光沢を付与する金属層として、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属層を用い、且つ、当該金属層の下引き層として、金属層側表面の表面粗さ(Ra)を0.1μm以下とし、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有する鏡面層が設けられていることにより、三次元構造に追従して印画可能で、印画物が優れた金属光沢を有する熱転写シートを得ることができる。
【0008】
本発明の熱転写シートにおいては、前記鏡面層の軟化点が130℃以上であることが、光反射面の構造を生成している層の鏡面度合が破壊され難く、その結果熱転写シートの印画時や印画物の再転写時に金属層の鏡面が破壊され難くなり、印画物の金属光沢感が優れたまま保持される点から好ましい。
【0009】
本発明の熱転写シートにおいては、前記鏡面層の金属層側表面は、表面粗さ(Ra)0.1μm以下の面で圧して形成されたものであることが、鏡面層の金属層側表面の表面を鏡面にしやすく、中でも高い金属光沢感が得られる点から好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱転写シートは、三次元構造に追従して印画可能で、印画物が優れた金属光沢を有するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る熱転写シートは、フィルム基材の一方の面に、剥離層、鏡面層、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属層、および接着層を順次少なくとも設けてなり、前記鏡面層は前記金属層側表面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下で、且つ熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有する。
【0012】
本発明の熱転写シートにおいては、印画物に金属光沢感を付与する金属層として、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属層を用い、且つ、当該金属層の下引き層として、金属層側表面の表面粗さ(Ra)を0.1μm以下とし、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有する鏡面層が設けられている。
本発明においては、金属光沢を付与する金属層の材料として、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属を選択して用いることにより、立体構造に転写しても、割れを生じることなく、三次元構造に追従する金属光沢を有する印画物を得ることが可能となった。さらに、本発明者は、従来の金属光沢を付与する熱転写シートでは金属光沢感が不十分であったのは、金属層の下地になる層の表面が荒れており、その上に例えば蒸着で設けられた金属蒸着層は下地の表面の凹凸に影響を受けて光の白色散乱を生じていることを突き止めた。本発明の熱転写シートは、金属層の下引き層となる鏡面層の金属層側表面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であることにより、金属層が設けられる表面は鏡面のように表面平滑性に優れる。そのため、鏡面層上に接して設けられる金属層の表面も平滑性に優れるようになり、印画物の金属層における反射率が向上し、中でも金属光沢感が高い印画物を得ることができる。更に、本発明における鏡面層が熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有することにより、熱転写シートの印画時や印画物の再転写時に金属層の鏡面が破壊され難くなり、印画物の金属光沢感が優れたまま保持される。このようにして、本発明の熱転写シートは、三次元構造に追従して印画可能でありながら、印画物が優れた金属光沢を有するという効果を奏する。
【0013】
図1は、本発明の熱転写シートの他の実施形態であり、フィルム基材1の一方の面に、剥離機能を有する剥離層10、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有し上記表面粗さを有する鏡面層20、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属層30、および接着層40を形成し、フィルム基材1の他方の面にサーマルヘッドの滑り性を良くし、かつスティッキングを防止する耐熱滑性層50を設けた構成である。
また、本発明の熱転写シートの使用形状は、通常は連続帯状の熱転写シートとして使用されるが、一枚単位のシート状としても使用され得るものである。
【0014】
以下、本発明の熱転写シートを構成する各層毎に詳述する。
(フィルム基材)
熱転写シートのフィルム基材1としては、熱転写記録時のサーマルヘッドの加熱に耐え、かつ所望の伝熱性、機械的強度等を有する材料であれば、特に限定されず、従来の一般的な熱転写シート等に使用される公知の材料等を使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト、ポリエチレンテレフタレート−イソフタレート共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート−ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル系樹脂の他、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、セルロース系フィルムなどが適用できる。更に、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド等のプラスチックのフィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等であっても良い。耐熱性、機械的強度がよいポリエチレンテレフタレートが最適である。
該フィルム基材は、上記のような樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(ポリマーアロイを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該フィルム基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。
【0015】
また、フィルム基材1は、剥離層側に易接着処理を施していることが望ましい。フィルム基材の厚さは、その機械的強度及び熱伝導性等の点から適宜調整するが、通常、0.5〜50μm程度、好ましくは2〜25μm程度である。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合は、通常2〜12μm、より好ましくは4.5〜6μmである。基材フィルムの厚みが厚すぎると、サーマルヘッドの熱の伝達が悪く、厚みが薄すぎると、機械的強度が不足する。
【0016】
(剥離層)
剥離層10は、剥離層或いは剥離層隣接面において、熱転写シートが剥離し、後述する金属層30を含む積層体とフィルム基材との分離を可能にする層である。剥離層は、全く転写移行しない層であっても良い。剥離層は、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等のような離型性に優れた材料、又はサーマルヘッドの熱によって溶融しない比較的高軟化点の樹脂、あるいはこれらの樹脂にワックス等の熱離型剤を含有させた樹脂から形成する。
比較的高軟化点の樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロース誘導体、その他のセルロース系樹脂等があり、また塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ノルボルネン系水添樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)やポリエーテルケトン樹脂(PEK)等のポリエーテルケトン類、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂等が挙げられ、これらは単独、或いは混合物として用いてもよい。ここに転写後の被転写体との密着性を良好にする成分としてポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等を添加しても良い。
【0017】
中でも、アクリル系樹脂を用いる場合には、過酷な環境下でも印画崩れが発生しない耐久性の高い印画物を形成できる点から好ましい。
特に、剥離層10とフィルム基材1との密着力も優れる点から、アクリル系樹脂に、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体のようなビニル系樹脂を混合して用いることが好ましい。
【0018】
剥離層の厚みは、乾燥時の塗工量で一般に0.1〜10g/m2の範囲である。0.1g/m2未満であると、剥離層としての機能をなさず、10g/m2を超えると、印字時の箔切れが低下し、特にハーフトーン記録が良好に出来ず、また箔持ちの低下をもたらし使用できなくなることもある。
【0019】
(鏡面層)
本発明において、鏡面層20は、金属層側表面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下で、且つ熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有するものである。なお本発明における表面粗さ(Ra)は、JIS B0601に準拠して測定されるものであって、表面粗さ形状測定機(例えば、東京精密製、サーフコム1400)により求めることができる。
【0020】
本発明における鏡面層20は、通常、転写後は後述する金属層と共に被転写体に移行し、金属層の上層に位置して金属層に密着して印画物の一構成要素となるものである。従って、本発明における鏡面層は、第一にその上に接触して設けられる金属層の金属光沢感を高める機能を有するが、更に、印画時及び/又は印画後再転写時の熱により、高い金属光沢を有する金属層の表面が破壊されないように保護する機能を有する。本発明の鏡面層は、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有するので、熱転写シートの印画時や印画物の再転写時に金属層の鏡面が破壊され難くなり、印画物の金属光沢感が優れたまま保持される。また、鏡面層が上記のような熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有するので、印画物が耐薬品性、耐光性及び耐候性等の耐久性にも優れる。
本発明における鏡面層は、金属層の上層に位置して印画物の一構成要素となるものであることから、少なくとも金属層の金属光沢を透視可能な透明性を有する必要がある。
【0021】
鏡面層20を構成する材料のうち、熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。なお、常温で硬化反応が進行するものも熱硬化性樹脂に含まれる。また、光硬化性樹脂としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート、エポキシ変性(メタ)アクリレート、ウレタン変性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル変性ポリエステル等の不飽和エチレン系オリゴマーや不飽和エチレン系モノマーとを適宜混合したものに重合開始剤や増感剤を添加した組成物等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂にポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(例、ポリメチル(メタ)アクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂を混合しても良い。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは「アクリル及び/又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0022】
本発明の鏡面層においては、熱硬化性樹脂としては、中でもウレタン樹脂が好ましく、アクリルポリオールと硬化剤の組み合わせが好ましい。また、鏡面層には、光硬化性樹脂が用いられることが好ましく、中でも、ウレタン変性(メタ)アクリレートと硬化剤の組み合わせが好ましい。
【0023】
本発明の熱転写シートにおいては、前記鏡面層の軟化点が130℃以上であることが、熱転写シートの印画時や印画物の再転写時に金属層の鏡面が破壊され難くなり、印画物の金属光沢感が優れたまま保持される点から好ましい。
【0024】
鏡面層の厚みは、金属層の下地表面を平滑にする機能以外に、金属層の保護機能を有する点から、通常は塗工量で、乾燥時で0.1〜20g/m2の範囲で設けることが好ましい。厚みが0.1g/m2未満では鏡面層として機能し難く、20g/m2を超えると、印字時の箔切れが悪くなり、ハーフトーン調の記録には適し難い。また、鏡面層には、例えば、金属層の着色を目的として、公知の染料や顔料等によるシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック及びその他の色の着色剤を適宜混合することができる。鏡面層には、その他に、必要に応じて添加剤を配合することができる。添加剤の例として、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、防曇剤、防霧剤、可塑剤、近赤外吸収剤、帯電防止剤などが挙げられる。
【0025】
(鏡面層の形成方法)
本発明に用いられる鏡面層は、鏡面層を形成する材料を有機溶媒へ溶解又は分散させて得られる、鏡面層形成用組成物を用いて形成する。鏡面層形成用組成物は、例えば、ウレタン変性アクリル系樹脂の光硬化性樹脂に、必要に応じて、多官能のモノマーやオリゴマー、離型剤、有機金属カップリング剤、光開始剤などの各種添加剤を加えて、有機溶媒へ溶解又は分散させて得られる。
鏡面層を、金属層側表面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下となるような、表面平滑性に優れた層とするには、例えば以下の方法を好適に用いることができる。
1)鏡面層形成用組成物を平滑に塗工する方法
2)鏡面層形成用組成物を塗工後、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面で圧して形成する方法
【0026】
(1)鏡面層形成用組成物を平滑に塗工する方法
鏡面層形成用組成物を、鏡面層形成用組成物を平滑に塗工するコーティング法又は印刷法で上記剥離層又は基材フィルム上に塗布し乾燥する。鏡面層形成用組成物を表面粗さ(Ra)が0.1μm以下となるように平滑に塗工するコーティング法又は印刷法としては、例えば、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコートなどが適用できる。
平滑に塗工後、必要に応じて、光硬化又は熱硬化を行う。光としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、光としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が好適であり、波長300〜400nmの紫外線が最適である。光で硬化する光硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。
【0027】
(2)鏡面層形成用組成物を塗工後、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面で圧して形成する方法
本発明において、鏡面層の金属層側表面は、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面で圧して形成されたものであることが、下引き層の金属層側表面について、容易に平滑性を高くすることができ、中でも高い金属光沢感が得られるようになる点から好ましい。
この方法の場合の鏡面層形成用組成物を塗工する方法は、必ずしも平滑性が高くなる必要がなく、公知のコーティング法又は印刷法を適宜用いることができる。コーティング法としては、例えば、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコートなどが適用できる。鏡面層形成用組成物の塗工後は、適宜乾燥して塗膜を得る。
【0028】
表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面で圧する方法としては、通常、鏡面層形成用組成物の塗膜表面に、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面が表面に形成されているスタンパ(金属版、又は樹脂版)を圧着して、該表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面を鏡面層形成用組成物の塗膜表面へ形成(複製)した後に、スタンパを剥離することで行う。商業的複製の方法は、金型又は樹脂型のスタンパを用いて、鏡面層形成用組成物の塗膜表面へ圧着して表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面を複製した後に、光照射するか、又は、スタンパを圧着中に光照射してからスタンパを剥離することで表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面を複製する。この商業的な複製は、長尺状の鏡面層形成用組成物の塗膜上に行うことで連続な複製作業ができる。
【0029】
鏡面層の形成材料として光硬化性樹脂を用いた場合には、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面が表面に形成されているスタンパで圧着中、又は圧着後に、光を照射して、光硬化性樹脂を硬化させる。スタンパで圧着中に光照射を行う場合には、スタンパを鏡面層形成用組成物の塗膜表面に圧接している状態で鏡面層形成用組成物の塗膜の背面から光照射を行い、光硬化を行ってもよい。
【0030】
表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面で圧することにより鏡面を鏡面層形成用組成物の塗膜表面に複製する方法として、中でも好ましい具体例としては、セミドライ複製法(SD複製法)と呼ばれている方法である。セミドライ複製法において、複製装置はベッドに固定された一対の本体フレームに給紙装置、転写装置、照射装置、巻取装置が順次配設され、給紙装置及び巻取装置は巻取りを供給又は巻き取る装置からなる。転写装置は、図2に示されるように、本体フレームの中央部に固定された軸受に軸が回転自在に支持された版胴60(ローラー表面に表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の鏡面版(スタンパ)61を有する)と、一対のアームに回転自在に支持された圧胴62と、加圧機構とからなる。給紙装置から、耐熱滑性層(必要に応じて)/基材/剥離層/鏡面形成層からなる鏡面形成用シート100を長尺帯状で繰り出し、版胴60と圧胴62とで加圧される。版胴60の周表面には表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面を有する鏡面版61(金属版、又は樹脂版)が載置され、該鏡面版61が加熱されている圧胴62に一定圧で押付けられる。鏡面版61の鏡面、すなわち表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面が、鏡面層形成用組成物の塗膜の表面に複製され、鏡面版61から剥離され、直ちにUV照射装置などの光照射装置63により紫外線などの光が照射され、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面を有する鏡面層20が硬化する。この後、巻取装置へ巻取られる。詳細については、特公平6−85103号公報、特公平6−85104号公報、特公平7−104600号公報などに開示されている。
【0031】
(金属層)
本発明において金属層30は、印画物に金属光沢感を付与する層であり、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなるものである。金属層は、通常、前記鏡面層上に接触して設けられる。インジウム合金としては、インジウム(In)と、錫(Sn)、ガリウム(Ga)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)から選択される1種以上の元素との合金が好ましく例示される。錫合金としては、錫(Sn)と、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、アンチモン(Sb)、及びビスマス(Bi)から選択される1種以上の元素との合金が好ましく例示される。中でも、インジウムは耐湿性が高いことから好ましい。金属層は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の真空薄膜形成法、熱CVD、プラズマCVD、光CVD、MOCVD等の気相成長法、LB(ラングミュア−ブロジェット)法、無電解めっき、ゾル・ゲル法等により形成される。本発明においては、中でも、真空蒸着法、スパッタリング法、イオン−プレーティング法などの真空薄膜形成法を用いることが、金属光沢感、三次元構造の追従性の点から好ましい。
【0032】
金属層の厚みは、通常、100〜1000Å、好ましくは200〜600Åの範囲とすれば、金属光沢を得るには充分である。薄すぎると光沢感が得られる程に可視光線を反射せず、厚すぎると印字時の箔切れが悪くなりハーフトーン調の記録に向かず、三次元構造にも追従し難くなり、また不経済である。
【0033】
(接着層)
本発明の熱転写シートの最表面に位置する接着層40は、熱で溶融又は軟化して接着する熱接着型接着剤が適用でき、例えばアイオノマー樹脂、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩ビ系樹脂、酢ビ系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル酸エステル系樹脂を含むアクリル系・メタクリル系などの(メタ)アクリル系樹脂、マレイン酸樹脂、ブチラール系樹脂、アルキッド樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、フェノール系樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、メラミン−アルキッド樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニールエーテル樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂などが適用でき、これらの樹脂を単独または複数を組み合せて使用する。これらの接着層の樹脂は、被転写材との親和性を考慮して選択される。一般的には、接着力などの点で、(メタ)アクリル系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が好適である。
【0034】
また、ワックスや、ワックスと熱可塑性樹脂の混合物を用いても良い。ワックスとしては、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、エステルワックス、フッシャートロプシュワックス、各種の低分子量ポリエチレン、木ロウ、みつロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミドなどの従来公知の各種ワックス類が使用できる。前記の特にエチレン系共重合体の熱可塑性樹脂及び前記ワックスは、それぞれ微粒子状態で接着層に含有させる事で、熱転写時の凝集力を低く抑えることができ、プリント時の箔切れ性を一般に向上させ、高解像度、高感度の記録ができる。接着層に微粒子状態で含有させるためには、これら微粒子の分散液またはエマルジョン液を接着層として塗工し、微粒子の融点もしくは軟化点以下で乾燥させれば良い。なお、微粒子状とは球形だけを意味するのではなく、エマルジョンにおける略球形の独立した微粒子同士が適度な熱により形状を変形しながら、外力により元の微粒子単位に分離できる程度に緩く結合した状態での微粒子をどちらかというと意味する。また、ワックス及び熱可塑性樹脂を微粒子として含有させる場合は、ワックス微粒子及び熱可塑性樹脂微粒子の粒径を両者ともに、各々平均粒径で10μm以下とすることが好ましい。平均粒径が10μmを越えるものを使用すると、印字感度の低下をもたらすのみでなく、接着層の箔持ちを著しく低下させる。
【0035】
接着層40の形成は、前述の熱接着性の樹脂を溶媒へ分散または溶解した組成物(インキ)を、公知のコーティング法又は印刷法で塗布し乾燥する。コーティング法又は印刷法としては、上記鏡面層に記載した方法と同様な方法が適用できる。乾燥は必要に応じて、転写適性をよくするために、ブラッシングさせてもよい。接着層の厚さは、通常は0.05〜10μm程度、好ましくは0.1〜5μmである。乾燥時塗工量では、通常は0.05〜10g/m程度、好ましくは0.1〜5g/mである。接着層の厚さは、この範囲未満では、被転写体との接着力が不足して脱落し、また、この範囲を超えると、接着効果は十分であるが、その効果は変わらないのでコスト的に無駄であり、さらには、サーマルヘッドの熱を無駄に消費してしまう。さらにまた、接着層へは、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を、適宜加えてもよい。充填剤としては、シリカ、炭酸カルシウムなどの体質顔料が適用できる。特に体質顔料の添加は、箔切れを良化させる。帯電防止剤としては、非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤などや、ポリアミドやアクリル酸誘導体などが適用できる。
【0036】
(耐熱滑性層)
本発明の熱転写シートは、図1に例示した断面図のように、フィルム基材1の他方の面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングや印字しわ等の悪影響を防止するため、耐熱滑性層50を設けても良い。上記の耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0037】
これらの樹脂からなる耐熱滑性層に添加あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、リン酸エステル、金属石鹸、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及びリン酸エステル系化合物からなる層であり、さらに充填剤を添加することがより好ましい。
【0038】
耐熱滑性層は、基材シートの上に、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、耐熱滑性層塗工液を調整し、これを、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗工し、乾燥して形成することができる。耐熱滑性層の塗工量は、融着防止や滑性等が果たせられる程度であれば充分で、通常、固形分で0.1g/m〜3.0g/mが好ましい。
【0039】
本発明の熱転写シートには、その他、検知マークやなど熱転写シートに設けられる他の構成が更に設けられていても良い。
【0040】
上記のように構成された本発明の金属光沢を有する熱転写シートは、平滑性に優れた金属層が被転写体に印画され、その印画物の金属層の平滑性が保持されるので、高い金属光沢感を得ることができ、高級感のある意匠性を付与することができる。本発明の金属光沢を有する熱転写シートによれば、三次元構造に追従して、高い金属光沢感を有する印画物を得ることが可能である。
本発明の金属光沢を有する熱転写シートは、サーマルヘッドを用いるサーマルプリンターに最適であるが、ロール式熱転写、ホットスタンピング法の転写箔、インモールド成形などの成形等にも使用できる。また、解像性にも優れるために、文字や図柄等の画像を微小なパターンの集合体としてプリントする用途にも適し、これら画像に金属光沢を付与できる。したがって、濃度階調表現方法として、網点の大小等による転写部分の面積の大小で濃度階調を表現する、すなわち面積階調を利用すれば、中間的な濃度も再現できる。なお、面積階調の方法としては網点以外にも、砂目、レンガ模様等による印刷分野で公知のスクリーンパターン等も利用できる。特に、接着層に用いるワックスや熱可塑性樹脂成分を微粒子として含有させると、高解像度が要求される面積階調の記録にも最適である。
【0041】
本発明の熱転写シートの被転写体としては、特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布等いずれのものでもよい。被転写体の形状についても、カード類、カートンなどの容器やケース類、タグ、しおり、ポスターなどの枚葉類やPOP用品、化粧品、腕時計、ライター等の装身具、封筒、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、バッグ類、携帯電話、テレビ、OA機器等の電化製品類など、種類を問うものではない。該被転写体の媒体は、その少なくとも1部が着色、印刷やその他の加飾、及び/又は必要に応じてプライマ層、接着層、保護層などの他の層を、層間や表面へ設けてもよい。
【実施例】
【0042】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳述する。尚、文中、部又は%とあるのは、特に断りのない限り重量基準である。
[評価方法]
(1)鏡面層の金属層側表面の表面粗さ(Ra)
平均表面粗さ(Ra)をJIS B0601に準拠して下記の測定器で測定した。
測定器:東京精密製、表面粗さ形状測定機サーフコム1400
【0043】
(2)印画物の金属光沢感(反射率測定)
実施例及び比較例の熱転写シートを使用し、被転写体としてポリカーボネートシートを用い、また、サーマルヘッドとしては京セラ(株)製の600dpiのラインタイプヘッドを用いて、下記条件で、ベタ印字を行なった。
<印画条件>
サーマルヘッド抵抗値:3000Ω
印加電圧:18V
ライン速度:1msec/line
得られた印画物について、トプコン製色彩色度計BM−7を使用し、HOYA SHOTT製キセノンライトソースを光源として用いた場合に返ってくる光の強度を計測した。
【0044】
(実施例1)
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、下記組成の剥離層用塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が0.25g/mになるように塗布、乾燥して剥離層を形成した。その後、下記組成の鏡面層用塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥後の塗布量が0.5g/mになるように塗布、乾燥し、50℃24時間で硬化させて鏡面層を形成した。得られた鏡面層の表面粗さ(Ra)は、0.02μmであった。尚、上記PETフィルムの他方の面に、予め下記耐熱滑性層用塗工液を乾燥時0.3g/m2になるように塗布、乾燥させた後、60℃で5日間加熱処理を行ない、耐熱滑性層を形成しておいた。
【0045】
<剥離層用塗工液>
アクリル樹脂(BR−87、三菱レイヨン(株)製) 29部
ポリエステル樹脂(バイロン200、東洋紡績(株)製) 1部
トルエン/メチルエチルケトン(重量比1/1) 70部
【0046】
<鏡面層用塗工液>
アクリルポリオール 3部
硬化剤(イソシアネート) 1部
トルエン/メチルエチルケトン(重量比1/1) 9部
【0047】
<耐熱滑性層用塗工液>
スチレンアクリロニトリル共重合体樹脂 11部
線状飽和ポリエステル樹脂 0.3部
ジンクステアリルホスフェート 6部
メラミン樹脂粉末 3部
メチルエチルケトン 80部
【0048】
次いで、鏡面層上にさらに厚さ200〜300Åのインジウムの金属層を真空蒸着法により形成し、更に金属層の上に、厚さ0.5g/m2の接着層を下記塗工液で塗工形成して、本発明の実施例1の熱転写シートを得た。
【0049】
<接着層用塗工液>
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製 商品名:BR87) 25部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)製 商品名:Solbin−C) 5部
トルエン/メチルエチルケトン(重量比1/1):70部
【0050】
得られた熱転写シートについて、印画物の金属光沢感(反射率測定)の結果を図3に示す。図4は、図3の一部拡大図である。実施例1の熱転写シートの印画物は、正反射方向(−20°)に鋭いピークが得られ、印画物表面が鏡面に近づき高い金属光沢感が得られていることが示された。
また、得られた熱転写シートを用いて三次元構造上に印画物を形成したところ、三次元構造の追従性は良好であった。
【0051】
(実施例2)
基材として、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ(株)製、商品名ルミラー)を用い、該基材の裏面に実施例1と同様にして耐熱滑性層を形成した。当該耐熱滑性層が設けられた基材の耐熱滑性層の設けられていない面に、実施例1と同様にして剥離層を形成した。
【0052】
上記の剥離層の上に、下記のように調製された鏡面層用塗工液を、フィルム速度50m/分で、乾燥後の厚みが0.5〜1.0g/mになるように、グラビアリバースコーターで塗工し、100℃で乾燥させて、鏡面形成層を形成した。
【0053】
<鏡面層用塗工液の調製>
(1)ウレタン変性アクリレート系樹脂溶液の調製
冷却器、滴下ロートおよび温度計付きの2リットルの四つ口フラスコに、トルエン40gおよびメチルエチルケトン(MEK)40gをアゾ系の開始剤とともに仕込み、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)22.4g、メチルメタクリレート(MMA)70.0g、トルエン20g、およびMEK20gの混合液を滴下ロートを経て、約2時間かけて滴下させながら100〜110℃の温度下で8時間反応させた後、室温まで冷却した。これに、2−イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工製、カレンズMOI)27.8g、トルエン20gおよびMEK20gの混合液を加えて、ラウリン酸ジブチル錫を触媒として付加反応させた。反応生成物をIR分析によりイソシアネート基の2200cm−1の吸収ピークの消失を確認し反応を終了した。上記で得られたウレタン変性アクリレート系樹脂の溶液は、不揮発分41.0%、粘度130mPa(30℃)であり、該樹脂のGPC(溶剤:THF)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量は3.5万、ポリマー1分子中の二重結合の平均個数は13.8モル%、酸価は0(mgKOH/g)であった。
【0054】
(2)光硬化性樹脂組成物の調製
上記で得た樹脂溶液を用いて、下記の光硬化性樹脂組成物を調製した。
上記ウレタン変性アクリレート系樹脂溶液(固形分基準) 100部
アミノ変性反応性シリコーンオイル(信越化学工業社製 KF−860) 1部
多官能モノマー(新中村化学工業社製 NKオリゴU−15HA) 10部
ウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製 紫光UV−3200B) 10部
光増感剤(チバ・ジャパン社製 イルガキュア907) 5部
以上をメチルエチルケトンで稀釈して固形分50%の組成物を調製した。
【0055】
次に、図2に示すような装置を用いて上記鏡面形成層の表面へ鏡面版(スタンパ)を加圧して鏡面を複製する工程を行った。鏡面度の高いガラスを元版とし、紫外線硬化性樹脂を用いて2P法で複製した鏡面版(表面粗さは0.001μm以下)を複製装置の版胴(エンボスローラー)に貼着して、該版胴と相対する圧胴の間で鏡面形成層を加熱プレスして、鏡面を鏡面形成層に複製した。複製後、鏡面形成層に直ちに紫外線を照射して硬化させて鏡面層を得た。得られた鏡面層の表面粗さ(Ra)は、0.01μmであった。鏡面層上にさらに厚さ200〜300Åのインジウムの金属層を真空蒸着法により形成し、更に金属層の上に、厚さ0.5g/m2の接着層を実施例1と同じ接着層用塗工液で塗工形成して、本発明の実施例2の熱転写シートを得た。
【0056】
得られた熱転写シートについて、印画物の金属光沢感(反射率測定)の結果を図3に示す。図4は、図3の一部拡大図である。実施例2の熱転写シートの印画物は、実施例1の熱転写シートよりも更に、正反射方向(−20°)に鋭いピークが得られ、印画物表面が鏡面に近づき高い金属光沢感が得られていることが示された。
また、得られた熱転写シートを用いて三次元構造上に印画物を形成したところ、三次元構造の追従性は良好であった。
【0057】
(比較例1)
実施例1で作製した熱転写シートにおいて、金属層の下地層として、鏡面層を設けず剥離層を下記のように形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを得た。
剥離層は、実施例1と同じ剥離層用塗工液を用いて、グラビアコーティングにより乾燥塗布量が0.21g/mになるように、実施例1と同じフィルム基材上に塗布、乾燥して、形成した。得られた剥離層の表面粗さ(Ra)は、0.5μmであった。
【0058】
得られた熱転写シートについて、印画物の金属光沢感(反射率測定)の結果を図3に示す。図4は、図3の一部拡大図である。図3と図4から、比較例1の熱転写シートの印画物は、実施例1及び実施例2の熱転写シートの印画物に比べて、正反射方向(−20°)のピークが低く、−30°〜−45°など正反射方向以外に散乱されている光が多いことが明らかになった。比較例1の熱転写シートの印画物の表面は目視でも金属光沢感が低かった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の熱転写シートである一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の熱転写シートの鏡面層を形成する方法を示す概略断面図である。
【図3】実施例1、2及び比較例1の熱転写シートの印画物の反射率を示す図である。
【図4】実施例1、2及び比較例1の熱転写シートの印画物の反射率を示す一部拡大図である。
【符号の説明】
【0060】
1 基材
10 剥離層
20 鏡面層
30 金属層
40 接着層
50 耐熱滑性層
60 版胴
61 鏡面版
62 圧胴
63 光照射装置
100 鏡面形成用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材の一方の面に、剥離層、鏡面層、インジウム、インジウム合金、錫、及び錫合金より選択される1種以上からなる金属層、および接着層を順次少なくとも設けてなり、前記鏡面層は前記金属層側表面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下で、且つ熱硬化性樹脂及び/又は光硬化性樹脂を含有する、熱転写シート。
【請求項2】
前記鏡面層の軟化点が130℃以上である、請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記鏡面層の前記金属層側表面は、表面粗さ(Ra)が0.1μm以下の面で圧して形成されたものである、請求項1又は2に記載の熱転写シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214336(P2009−214336A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58199(P2008−58199)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】