説明

熱転写シート

【課題】検知層との重なりの有無によって染料層の発色特性が異なる虞がない熱転写シートを提供する。
【解決手段】基材41と、前記基材上の一方の面に背面層42が形成され、前記基材の他方の面に少なくとも1色の染料層43が形成されてなる、熱転写シート40において、前記基材と前記背面層の間、及び/又は、前記基材と前記染料層の間に、前記染料層と重ねて検知層44が形成されており、前記検知層は蛍光色素を含んでなる熱転写シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写シートに関し、詳しくは、検知層との重なりの有無によって染料層の発色特性が異なる虞がない熱転写シート関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、それらの中でも昇華転写方式が注目されている。これは、色材として染料を使用することから鮮明で透明性に優れており、中間色の再現性や階調性に優れた高品質なフルカラー画像が形成できることが、その一因と考えられる。
【0003】
昇華転写方式では、昇華性染料を適当なバインダーに担持させた染料層を、ポリエステルフィルム等の基材上に形成した熱転写シート(昇華熱転写シート)を使用する。ここから、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成した熱転写受像シート上に昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する。加熱にはサーマルヘッドなどの部材を使用し、加熱量が制御された多数の色ドットをする。このように形成された画像は、オフセット印刷やグラビア印刷に匹敵する高品質なものである。
【0004】
このような昇華熱転写シートとして、例えば特許文献1に示すように、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層の3色、またはブラック染料層を加えた4色の染料層を面順次に繰り返し塗布したものが提案されている。3色または4色の各染料層の間には、検知マークが形成されている。検知マークは、カーボンブラック、アルミニウム等の顔料を用いたインキにより印刷形成されたものである。このような昇華熱転写シート使用して、受像シートに、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像、必要に応じてブラック画像を重ねて転写し、カラー画像を形成する。その際に、昇華熱転写シートの検知マークを読み取り、これに基づいて昇華熱転写シートの印字開始位置を決定する。
【0005】
しかし、上記従来の熱転写シートでは、染料層間に検知マークを形成する領域を余分に設ける必要があった。これは、検知マークが形成された領域をサーマルヘッドで加熱すると、検知マーク自体が熱転写するなど、本来形成するべき画像が形成出来ない虞がある為である。
【0006】
上記の課題を解決した熱転写シートとして、例えば特許文献2には、熱転写可能な染料領域を含む基材を備えたものが提案されている。染料領域は、第一の光学密度を有する印画可能領域と、第二の光学密度を有する印画可能領域を有しており、これらの光学密度が異なる。光学密度差は光学センサなどで検出可能なものである。
【0007】
しかしながら特許文献2では、光学密度が異なった領域は、染料層の塗布量に差を設けることによって形成するものである。したがって、第一の光学密度を有する印画可能領域と、第二の光学密度を有する印画可能領域とは、発色特性が異なる虞があった。すなわち、特許文献2の熱転写シートでは、第一の光学密度有する印画可能領域と第二の光学密度有する印画可能領域とを、同等の発色特性を有する領域をして使用することは困難であった。以上の通り、検知層との重なりの有無によって染料層の発色特性が異なる虞がない熱転写シートに関しては、これまでに十分な研究がなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−83161号公報
【特許文献2】特表2009−541101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、検知層が染料層と重なって形成されており、検知層との重なりの有無によって染料層の発色特性が異なる虞がない熱転写シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明の一態様によれば、基材と、前記基材上の一方の面に背面層が形成され、前記基材の他方の面に少なくとも1色の色材層が形成されてなる熱転写シートにおいて、前記基材と前記背面層の間、及び/又は前記基材と前記色材層の間に前記色材層と重ねて検知層が形成されており、前記検知層は蛍光色素を含んでなることを特徴とする熱転写シートが提供される。
【0011】
前記蛍光色素は、下記式(1)により表される化合物を配位子とする希土類錯体であっても良い。
【0012】
【化1】

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検知層との重なりの有無によって染料層の発色特性が異なる虞がない熱転写シートを提供することができる。これによって、検知層が形成された領域を印画に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による熱転写シートの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明による熱転写シートの一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明による熱転写シートの一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明による熱転写シートの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
熱転写シート
本発明の熱転写シートは、基材と、前記基材の一方の面に背面層が形成され、前記基材の他方の面に染料層が形成され、前記基材と前記背面層の間、及び/又は前記基材と前記染料層との間に、染料層と重ねて検知層が形成されてなるものである。
【0016】
本発明の一態様によれば、基材と、前記基材の一方の面に背面層が形成され、前記基材の他方の面に染料層が形成され、前記基材と前記染料層との間に検知層が形成されてなるものである。具体的に、本発明による熱転写シートの一例の模式断面図を図1に示す。図1に示される熱転写両面受像シート10は、基材11と、該基材11上の一方の面に背面層12、前記基材の他方の面に染料層13と検知層14が形成されてなるものである。
【0017】
本発明の他の態様によれば、基材と、前記基材の一方の面に背面層が形成され、前記基材の他方の面に染料層が形成され、前記基材と前記染料層との間に検知層が形成されてなるものである。具体的に、本発明による熱転写シートの一例の模式断面図を図2に示す。図2に示される熱転写両面受像シート20は、基材21と、該基材21上の一方の面に背面層22、前記基材の他方の面に染料層23と検知層24が形成されてなるものである。図1とは複数の染料層が形成されている点が異なる。
【0018】
本発明の他の態様によれば、基材と、前記基材の一方の面に背面層が形成され、前記基材の他方の面に染料層が形成され、前記基材と前記背面層との間に検知層が形成されてなるものである。具体的に、本発明による熱転写シートの一例の模式断面図を図3に示す。図3に示される熱転写両面受像シート30は、基材31と、該基材31上の一方の面に背面層32、前記基材の他方の面に染料層33と検知層34が形成されてなるものである。図1、2とは、基材シートの背面層が形成された面に検知層が形成されている点が異なる。
【0019】
本発明の他の態様によれば、基材と、前記基材の一方の面に背面層が形成され、前記基材の他方の面に染料層が形成され、前記基材と前記背面層の間、及び前記基材と前記染料層との間に検知層が形成されてなるものである。具体的に、本発明による熱転写シートの一例の模式断面図を図4に示す。図4に示される熱転写両面受像シート40は、基材41と、該基材41上の一方の面に背面層42、前記基材の他方の面に染料層43と検知層44が形成されてなるものである。図1〜3とは、基材シートの両面に検知層が形成されている点が異なる。
【0020】
基材
本発明における基材は、染料層などを保持する機能を有するものである。また、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。この様な基材としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれも用いることができる。基材の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルムを用いることができる。基材の厚みは、0.5〜50μm程度、好ましくは3〜10μm程度のものを用いることができる。
【0021】
背面層
耐熱滑性層は、印画時のサーマルヘッドの走行性、耐熱性等を向上する機能を有するものである。このような背面層は、樹脂と滑材を含むことが好ましく、さらに硬化剤やその他の添加剤を含むものであっても良い。
(樹脂)
背面層に含まれる樹脂は、耐熱性を有するものであり、滑材やその他の添加剤を保持する機能を有するものである。この様な樹脂として、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂などを用いることができる。
(滑材)
背面層に含まれる滑材は、サーマルヘッドとの滑性を高める機能を有するものである。この様な材料として、例えば、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド、燐酸エステル、アルキルリン酸エステルの多価金属塩、アルキルカルボン酸の金属塩、などを使用することができる。アルキルリン酸エステルの多価金属塩やアルキルカルボン酸の金属塩としては、ステアリル燐酸亜鉛やステアリン酸亜鉛を好適に使用できる。ポリエチレンワックスとしては、高密度および低密度ポリエチレンワックスがあり、低密度ポリエチレンは構造上、エチレン重合体で分岐が存在しているのが多く含まれ、これに対し、高密度ポリエチレンは比較的、ポリエチレンの直鎖状構造を主体に構成されているものである。例えば、密度が0.94〜0.97のポリエチレンワックス粒子(ポリエチレンワックスを粒状に微粉末化したもの)を好適に使用できる。
(硬化剤)
背面層に含まれる硬化剤は、樹脂や滑材と反応するものであり、これによって背面層の耐熱性をさらに高める機能を有するものである。この様な硬化剤としては、特に制限なく従来公知のものを使用できるが、例えば、ポリイソシアネート樹脂を好適に使用することができる。それらの中でも、芳香族系イソシアネートのアダクト体を使用することが望ましい。このような芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、trans−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートがあげられ、特に2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物が好ましい。
【0022】
本発明の背面層には、上記した成分以外にも、滑性の補助的な調整のために、無機または有機の微粒子が添加されていてもよい。無機微粒子としては、例えば、タルク、カオリン等の粘土鉱物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、硫酸カルシウム等の硫酸塩、シリカ等の酸化物、グラファイト、硝石、窒化ホウ素等の無機微粒子が挙げられる。有機微粒子としては、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、シリコーン樹脂、ラウロイル樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂等からなる有機樹脂微粒子、またはこれらを架橋剤と反応させた架橋樹脂微粒子等が挙げられる。上記した無機または有機の微粒子のなかでもタルクを好適に使用することができる。また、市販されているものを使用してもよく、例えば、ミクロエースP−3(日本タルク工業株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0023】
背面層は、上記の成分を、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の適当な溶媒に溶解して、背面層形成用インキとして、これをグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等の慣用の適切な印刷方法で上述した基材上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
【0024】
背面層の厚さは0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmであることが好まし
い。この膜厚が0.05μmよりも薄い場合は、背面層としての効果が十分ではなく、また1μmよりも厚いと熱転写性色材層へのサーマルヘッドからの熱伝達が悪くなり、印字濃度が低くなるという欠点を生じる。
【0025】
色材層
色材層は、サーマルヘッドからの加熱量に応じて、受容層に染料を転写する機能を有するものである。本発明では、基材上に1色のみの色材層を形成したものであっても良く、2色以上の染料層を面順次に繰り返し形成したものであっても良い。また、本発明の色材層は、樹脂と染料を含むものであり、その他の添加剤をさらに含むものであっても良い。
(樹脂)
色材層に含まれる樹脂は、染料やその他の添加剤を保持する機能を有するものであり、一般に、耐熱性を有し、染料と適度の親和性があるものを使用することができる。このような樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂;ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;等が挙げられる。上記した樹脂のなかでも、耐熱性、染料の移行性等が優れる観点から、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が好ましく、ビニル系樹脂がより好ましく、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等が特に好ましい。
【0026】
(染料)
色材層に用いられる昇華型の染料としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。このようなものとして、例えば、ジアリールメタン系染料;トリアリールメタン系染料;チアゾール系染料;メロシアニン染料;ピラゾロン染料;メチン系染料;インドアニリン系染料;アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料;キサンテン系染料;オキサジン系染料;ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料;チアジン系染料;アジン系染料;アクリジン系染料;ベンゼンアゾ系染料;ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料;スピロピラン系染料;インドリノスピロピラン系染料;フルオラン系染料;ローダミンラクタム系染料;ナフトキノン系染料;アントラキノン系染料;キノフタロン系染料;等が挙げられ、更に具体的には、特開平7−149062号公報に例示列挙された化合物等が挙げられる。
【0027】
上記色材層は、所望により、離型剤、無機微粒子、有機微粒子等の添加剤を使用しても
よい。上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル等が挙げられる。無機微粒子としては、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。また、有機微粒子としては、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0028】
上記した色材層は、上述の染料とバインダー樹脂とを、必要に応じて添加する添加剤とともに、適当な有機溶剤や水に溶解又は分散して塗工液を調製し、更に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、上述した基材の一方の面に上記塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0029】
上記有機溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕等が挙げられる。上記染料層の塗工量は、乾燥固形基準で0.2〜6.0g/m2、好ましくは0.2〜3.0g/m2程度である。
【0030】
(検知層)
検知層は、光学センサなどの検知手段によって識別できる機能を有するものである。本発明の検知層は、基材と色材層、及び/又は基材と背面層の間に、染料層と重ねて形成されるものである。また、本発明の検知層は、バインダ樹脂と蛍光色素を有するものであり、その他の添加剤をさらに含むものであっても良い。これによって、検知層との重なりの有無によって染料層の発色特性が異なる虞がない熱転写シートを提供することができる。これによって、検知層が形成された領域も熱転写に使用できるので、印画に使用できない領域を少なくすることができる。
【0031】
(樹脂)
検知層に含まれるバインダ樹脂は、蛍光染料やその他の添加剤を保持する機能を有するものであり、一般に、蛍光染料と適度の親和性があるものを使用することができる。このようなものとして、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂;ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;フッ素系樹脂、等が挙げられる。
【0032】
(蛍光色素)
検知層に含まれる蛍光色素は、光学センサによって検知できる機能を有するものである。このような機能を有するものであれば、従来公知の蛍光染料を特に制限無く用いることができるが、可視光に対して実質的に透明であることが好ましく、発光強度が強いものが好ましい。可視光に対して実質的に透明であることによって、検知層は形成された部分が目視で判別できないものとなる。これによって、検知層と染料層が重なった領域が目視で識別できないものとなる。ユーザーが熱転写シートを目視した場合に、もし検知層に起因する濃度ムラがあれば、発色特性差が生じる事に対して不安を抱く可能性がある。可視光に対して実質的に透明な蛍光染料を使用した検知層であれば、この様な不安が生ずることがない。
【0033】
このような蛍光染料としては、例えば下記式(1)で表される化合物を配位子とする希土類錯体を使用することができる。また、特開2006−77191に記載された化合物を好適に使用することができる。
【0034】
【化1】

一般的に色材層に含まれる染料の中には、蛍光を発するものもある。したがって、検知層に含まれる蛍光染料の発光強度が弱い場合は、染料が発する蛍光と識別できない虞がある。上述した発光強度が強い蛍光染料を使用した検知層であれば、染料が蛍光を発する場合であっても、これと識別できる強い蛍光を発することができる。これによって、検知層を確実に光学センサで検知することができる。
【0035】
上記した検知層は、所望により、界面活性剤、分散剤、消泡剤等の添加剤を使用してもよい。
【0036】
上記した検知層は、上述の蛍光染料とバインダー樹脂とを、必要に応じて添加する添加剤とともに、適当な有機溶剤や水に溶解又は分散して塗工液を調製し、更に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、上述した基材の一方の面に上記塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
【0037】
上記有機溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕等が挙げられる。上記検知層の塗工量は、乾燥固形基準で0.2〜3.0g/m2、好ましくは0.5〜2.0g/m2程度である。
【実施例】
【0038】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
(実施例1)
基材の一方の面に、グラビアコーターを用い、下記の背面層塗工液1を、1.0g/m2(固形分換算)塗工し、乾燥することによって、背面層を形成した。基材としては、厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと使用した。
<背面層用塗工液1>
・ポリビニルブチラール樹脂 4.55部(エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)
・ポリイソシアネート 21.0部(バーノックD750−45、固形分45質量%、大日本インキ化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 3.0部(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・タルク(ミクロエースP−3、日本タルク工業(株)製) 0.7部
・メチルエチルケトン 100.0部
・トルエン 100.0部
背面層を形成した基材の他方の面の一部に、下記のようにして調製した検知層用塗工液1を、0.5g/m2(固形分換算)になる様にグラビアコーターにて塗布、乾燥し、検知層を形成した。
<検知層用塗工液1の調整>
まず、下記式に示す反応式に従って、希土類錯体を合成した。即ち、希土類金属化合物に、配位子としてトリフェニルホスフィンオキシドとトリオクチルホスフィンオキシドの2種類のホスフィンオキシドを作用させて、希土類錯体を得た。この希土類錯体をフッ素系溶媒であるバートレルXF(商品名:デュポン社製)に溶解し、そこに更に、フッ素系ポリマー(商品名:ダイニオンTHV、住友3M株式会社製)のペレットを2重量%溶解し、検知層用塗工液1とした。
【0039】
【化2】

検知層を形成した基材上に、下記の色材層塗工液1を、1.0g/m2(固形分換算)塗工し、乾燥することによって色材層を形成した。これによって、図1に記載の層構成を有する熱転写シートを得た。
<色材層用塗工液1>
・分散染料(ホロンブリリアントイエロー−S−6GL) 5.5部
・ポリビニルアセトアセタール樹脂(エスレックKS−5、積水化学工業(株)製)
4.5部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
(実施例2)
検知層を、基材と背面層の間に形成した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを得た。得られた熱転写シートは、図3の層構成を有するものであった。
(実施例3)
検知層を、基材と色材層の間、及び基材と背面層の間に形成した以外は、実施例1と同様にして熱転写シートを得た。得られた熱転写シートは、図4の層構成を有するものであった。
<<検知適正評価>>
実施例1〜3の熱転写シートに、ブラックライト及び中心波長410nmのLEDを照射し、以下の基準で検知層に相当する蛍光を確認した。評価結果を表1に併せて示す。
【0040】
<評価基準>
○・・・検知層の蛍光発光が目視で確認できた。
×・・・検知層の蛍光発光が目視で確認できなかった。
<<視認性評価>>
実施例1〜3の熱転写シートを目視にて確認し、以下の基準で評価した。評価結果を表1に併せて示す。
【0041】
<評価基準>
○・・・検知層が視認できない。
×・・・検知層が視認できる。
<<発色特性評価>>
昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS社製、型式:MEGAPIXELIII
)にて、実施例1〜3の熱転写シートを使用して、RGB値が128階調の画像を印画した。熱転写受像シートは、MEGAPIXELIIIの専用の熱転写受像シートを使用した。得られた画像を、目視にて以下の基準で評価した。評価結果を表1に併せて示す。
【0042】
<評価基準>
○・・・検知層に相当する濃度ムラがない。
×・・・検知層に相当する濃度ムラがある。
【0043】
【表1】

表1からも明らかな通り、本発明によって、検知層との重なりの有無によって色材層の発色特性が異なる虞がない熱転写シートを提供することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 本発明の熱転写シート
11 基材
12 背面層
13 染料層
14 検知層
20 本発明の熱転写シート
21 基材
22 背面層
23 染料層
24 検知層
30 本発明の熱転写シート
31 基材
32 背面層
33 染料層
34 検知層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上の一方の面に背面層が形成され、前記基材の他方の面に少なくとも1色の色材層が形成されてなる熱転写シートにおいて、
前記基材と前記背面層の間、及び/又は前記基材と前記色材層の間に、前記色材層と重ねて検知層が形成されており、
前記検知層は、蛍光色素を含んでなる、
ことを特徴とする、熱転写シート
【請求項2】
前記蛍光色素は、下記式(1)により表される化合物を配位子とする希土類錯体であることを特徴とする、請求項1に記載された熱転写シート
【化1】


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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