説明

熱転写プリンタ

【課題】外周面に微少突起を設けた搬送駆動ローラによって用紙に対する有効なグリップ力を発揮し、用紙を適切に搬送することができるとともに、微少突起痕が生じている面に対しても良好な熱転写プリント処理を施すことが可能なプリンタを提供する。
【解決手段】サーマルヘッド21,31とプラテンローラ22,32との間に挟んだ用紙Sに熱転写プリント処理を行う印刷部2,3によって用紙Sの両面に熱転写プリント処理可能なプリンタPにおいて、外周面に微少突起41aを有する搬送駆動ローラ41と、搬送駆動ローラ41の外周面に用紙Sを挟んで圧接し得るピンチローラ42,43とを用いて用紙搬送機構4を構成し、印刷部2,3に、用紙Sをプラテンローラ22,32に対して巻き付ける方向へ押圧する押圧部25,35を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写プリンタ、特に両面プリントが可能な熱転写プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱転写プリンタにおいては、用紙を給紙部と排出部との間で搬送する搬送機構として、搬送駆動ローラと、搬送駆動ローラとの間で用紙を挟み得るピンチローラとを備えたものが知られている。この種の搬送機構では、用紙に対する有効なグリップ力が得られるようにすべく、搬送駆動ローラの外周面に微少突起を多数設け、搬送駆動ローラとピンチローラとの間に用紙を挟んだ状態で搬送駆動ローラを回転駆動させて微少突起を用紙に食い込ませるように構成した態様が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような構成であれば、外周面に微少突起を設けていない搬送駆動ローラとピンチローラとによって用紙を挟んで搬送する構成と比較して、用紙に対するグリップ力が向上するため、グリップ力の低下に伴う不具合、つまり用紙を適切に搬送することができず、印刷品質が低下し易いという不具合が考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−113399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、外周面に微少突起を設けた搬送駆動ローラを備えた搬送機構によって用紙を搬送した場合、用紙のうち搬送駆動ローラに密着した面には微少突起による食い込み痕(以下、「微少突起痕」と称する)が生じる。特に、熱転写プリント処理を用紙のうち搬送駆動ローラに密着しない側の面のみならず、搬送駆動ローラに密着した面にも行う両面プリンタでは、微少突起痕に起因する印刷品質の低下が生じ易い。特に、搬送駆動ローラに密着し得る面に生じた各微少突起痕が深くて小さいものであればあるほど、各微少突起痕内部にインクリボンのインクを十分に転写する(乗せる)ことは困難(インクの乗り量が不足する)であり、印刷品質が低下し易いと考えられる。
【0005】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、外周面に微少突起を設けた搬送駆動ローラによって用紙に対する有効なグリップ力を発揮し、用紙を適切に搬送することができるとともに、微少突起痕が生じている面に対しても良好な熱転写プリント処理を施すことが可能なプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、サーマルヘッドとプラテンローラとの間に挟んだ用紙に熱転写プリント処理を行う印刷部と、少なくとも印刷部と給紙部との間で用紙を搬送する用紙搬送機構とを備え、一又は複数の印刷部によって用紙の両面に熱転写プリント処理可能なプリンタに関するものである。そして、本発明に係るプリンタは、外周面に微少突起を有する搬送駆動ローラと、搬送駆動ローラの外周面に用紙を挟んで圧接し得るピンチローラとを有する用紙搬送機構を備え、印刷部に、用紙をプラテンローラに対して巻き付ける方向へ押圧する押圧部を設けていることを特徴としている。ここで、本発明における「用紙」は、狭義の「紙」に限定されるものではなく、印刷部のプリント方式に応じた各種印刷媒体を包含するものである。
【0007】
このようなものであれば、外周面に微少突起を有する搬送駆動ローラと、搬送駆動ローラの外周面に圧接し得るピンチローラとの間を通過する用紙に対して微少突起が食い込むように作用するため、用紙に対するグリップ力を有効に向上させることができ、適切な用紙搬送を実現することができる。また、このような搬送駆動ローラとピンチローラとの間を通過した用紙のうち搬送駆動ローラに接触する面には微少突起痕が生じ、この面に対して印刷部によってプリント処理を施した場合に、微少突起痕に起因してプリント品質の低下を招来し得るが、本発明のプリンタでは、印刷部に設けた押圧部によって用紙をプラテンローラに対して巻き付ける方向へ押圧するため、湾曲させた用紙にサーマルヘッドを接触させることができ、湾曲状態にある用紙のうちプラテンローラに接触しない側の面(「対プラテンローラ非接触面」と称することができ、これらからまさに印刷しようとする面である)に生じている各微少突起痕による窪みを用紙の湾曲程度に応じて広げる(拡開させる)ことができ、このような微少突起痕内にもインクを十分に転写(乗せる)ことが可能となり、プリント品質の向上を図ることができる。
【0008】
特に、プリント処理時の用紙搬送方向であるプリント方向において、押圧部をサーマルヘッドよりも上流側に配置し、押圧部を通過する押圧部通過点からサーマルヘッドに向かってプリント方向に搬送する用紙の全部または一部をプラテンローラに対して巻き付けるように構成したプリンタであれば、サーマルヘッドと接触する面に微少突起痕が生じている用紙であっても、その用紙をプラテンローラに対して巻き付けた状態でプリント方向に搬送することによって、サーマルヘッドとプラテンローラとの接触部分に到達した時点では既に各微少突起痕を拡開させた状態とすることができ、これら各微少突起痕内への十分なインクの転写量(乗り量)を確保することができる。
【0009】
押圧部を簡単な構成で実現する好適な一例としては、外周面が平滑な押圧ローラを用いて押圧部を構成した態様を挙げることができる。
【0010】
また、本発明のプリンタにおいて、搬送駆動ローラ及びピンチローラとして、用紙を挟んだ状態で相互に相反する方向へ撓み得るものを適用すれば、搬送駆動ローラ及びピンチローラが撓むことなく回転しながら用紙を挟み込んで搬送する態様と比較して、用紙のうち搬送駆動ローラに接触する面に生じる微少突起痕を浅くすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適切な用紙搬送機能を発揮するとともに、微少突起痕に起因する大幅なプリント品質の低下を効果的に防止・抑制することができ、実用性に優れたプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱転写プリンタの内部構成を示す概略図。
【図2】同実施形態におけるメイン搬送部の模式図。
【図3】同実施形態におけるウラ面側通常プリント処理時の作用説明図。
【図4】図3の比較対応図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係るプリンタPは、用紙Sの両面に対してそれぞれ昇華プリント処理を行うことが可能な昇華型の両面プリンタである。この昇華型プリンタPは、内部機構の概略構成模式図である図1に示すように、給紙部1と、給紙部1から供給された用紙Sに対して第1インクリボン23のインクを熱転写によって昇華プリント処理を施す第1印刷部2と、用紙Sに対して第2インクリボン33のインクを熱転写によって昇華プリント処理を施す第2印刷部3と、排出口を有する排出部(図示省略)と、少なくとも各印刷部2,3と給紙部1との間で用紙Sを用紙搬送路Lに沿って搬送する用紙搬送機構4とを備えたものである。なお、このようなサーマルプリンタPは、図示しない共通の筐体内に、少なくとも給紙部1、第1印刷部2,第2印刷部3、及び用紙搬送機構4を設けている。また、本実施形態の熱転写プリンタPは、用紙Sの搬送制御や第1印刷部2及び第2印刷部3の印刷制御を制御部(図示省略)によって行っている。
【0015】
給紙部1は、水平軸11(水平方向に延びる軸)を中心にロール状に巻回した用紙Sを回転可能に保持するものである。また、この給紙部11は、用紙Sにテンションを付与しつつ用紙Sを印刷部2,3側に向かって搬送したり、用紙Sを給紙部1側に向かって巻き戻すための給紙ローラ12と給紙用ピンチローラ13との組を備えている。ここで、給紙ローラ12及び給紙用ピンチローラ13は用紙搬送機構4の機能の一部を担っている。
【0016】
第1印刷部2及び第2印刷部3は、同一ないし略同一の構成を有するものであり、それぞれ各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)と、この各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)と対向する位置に配置された第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32と、第1インクリボン23,第2インクリボン33と、第1インクリボン23,第2インクリボン33を各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)と第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32との間に搬送する第1インクリボン搬送機構24,第2インクリボン搬送機構34とを備えたものである。本実施形態では、第1印刷部2の第1インクリボン23と、第2印刷部3の第2インクリボン33とを後述するように互いに異なる種類の消耗品を用いて構成している。
【0017】
第1印刷部2は、第1搬送路L1に沿って配置され、顔料や染料等のインクを塗布した第1インクリボン23を第1サーマルヘッド21によって加熱することでインクを用紙Sに転写させて印刷するものである。この第1インクリボン23は、長尺なベースフィルムに例えば熱によって昇華する染料を用いて形成されたイエロー・マゼンタ・シアンの各色のインクを塗布したものである。以下の説明では、このような第1インクリボン23を備えた第1印刷部2によるプリント処理を「通常プリント処理」とする。
【0018】
第2印刷部3は、第2搬送路L2に沿って配置され、保護層や光沢層、或いは白色、金色等の特色を印刷するための第2インクリボン33を第2サーマルヘッド31によって加熱することで保護層形成用インク又は光沢層形成用インク、或いは白色・金色等の特色インクを用紙Sに転写させて印刷するものである。この第2インクリボン33は、長尺なベースフィルムに例えば熱によって昇華する材料や染料を用いて形成された保護層形成用インク、又は光沢層形成用インク、或いは特色インクを塗布したものである。第2インクリボン33は、第1印刷部2の第1インクリボン23とは異なる種類であり、以下の説明では、第2インクリボン33を備えた第2印刷部3によるプリント処理を「特別プリント処理」と称し、上述の「通常プリント処理」と区別する。なお、特別プリント処理は、総じてプリント品質向上に寄与するものである。
【0019】
ここで、各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)は、発熱素子を発熱させて用紙Sに印刷を行う周知のものである。本実施形態では、各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)を、ヘッド駆動モータ(図示省略)により、各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)との間で用紙Sを挟み得る位置と挟み得ない位置との間で移動可能に設定している。
【0020】
各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)は、各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)との間で用紙Sを挟み得るものであり、回転しながら用紙Sを順次搬送する機能を有する。したがって、各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)は用紙搬送機構4の機能の一部を担っている。各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)は、後述する搬送駆動ローラ41に同期して正逆方向に回転可能である。また、各インクリボンン搬送機構(第1インクリボン搬送機構24,第2インクリボン搬送機構34)は、周知のものを適用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0021】
用紙搬送機構4は、給紙部1にロール状に収容された用紙Sを、給紙部1と排出部との間に形成される用紙搬送路L(搬送パス)に沿って搬送するものであり、本実施形態では、外周面に微少突起41aを設けた搬送駆動ローラ41と、この搬送駆動ローラ41の外周面との間に用紙Sを挟んで圧接し得る第1ピンチローラ42と、搬送駆動ローラ41の外周面のうち第1ピンチローラ42が接触し得る部分から周方向に所定角度離間させた位置において用紙Sを挟んで圧接し得る第2ピンチローラ43との組み合わせであるメイン搬送部4Aを主体としてなる。
【0022】
また、本実施形態の用紙搬送路Lは、第1印刷部2に対応付けて設定した第1搬送路L1と、第2印刷部3に対応付けて設定した第2搬送路L2とを有する。第1搬送路L1は、メイン搬送部4Aを経由して第1印刷部2と給紙部1との間で用紙Sを案内するものであり、第2搬送路L2は、メイン搬送部4Aを経由して第2印刷部3と給紙部1との間で用紙Sを案内するものである。
【0023】
搬送駆動ローラ41は、図2に示すように、外周面に微少突起41aを形成した円筒形状又は円柱形状をなすものである。本実施形態では、搬送駆動ローラ41の外周面うち軸方向両端部分に微少突起41aをそれぞれ多数設け、搬送駆動ローラ41の外周面うち軸方向中央部分は平滑な面に設定している。なお、微少突起41aの形成領域は適宜変更することができる。この搬送駆動ローラ41は、若干の撓み変形な金属部材(例えばステンレス鋼等)であることが好ましく、全体又は少なくとも表面部分が例えばエラストマー等の樹脂材料を併用したものであってもよい。そして、搬送駆動ローラ41は、用紙Sを給紙部1側から第1印刷部2側に向かって搬送可能な第1送り出し方向Aと、第1印刷部2によってプリント処理を行う際に用紙Sを給紙部1側に向かって搬送可能な第1巻き戻し方向Bに正逆回転可能とされている。
【0024】
ここで、メイン搬送部4Aを境に第1搬送路L1と第2搬送路L2を並列な関係に配置した本実施形態においては、搬送駆動ローラ41の第1送り出し方向Aが、第2印刷部3によってプリント処理を行う際に用紙Sを給紙部1側に向かって搬送可能な第2巻き戻し方向Dと一致し、搬送駆動ローラ41の第1巻き戻し方向Bが、用紙Sを給紙部1側から第2印刷部3側に向かって搬送する第2送り出し方向Cと一致する。
【0025】
第1ピンチローラ42及び第2ピンチローラ43は、微少突起等が形成されていない平滑な外周面を有する円筒形状又は円柱形状をなし、若干の撓み変形な金属部材(例えばステンレス鋼等)であることが好ましく、全体又は少なくとも表面部分が例えばエラストマー等の樹脂材料を併用したものであってもよい。これら第1ピンチローラ42及び第2ピンチローラ43は、搬送駆動ローラ41に用紙Sを介して圧接した状態において搬送駆動ローラ41の回転駆動に従動して回転する。第1ピンチローラ42は第1搬送路L1に沿って配置され、第2ピンチローラ43は、第2搬送路L2に沿って配置される。
【0026】
このような搬送駆動ローラ41、第1ピンチローラ42及び第2ピンチローラ43を備えたメイン搬送部4Aを、各印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)よりも給紙部1側に配置している。なお、用紙搬送機構4は、メイン搬送部4Aの他に、図示しないピンチローラや搬送ベルト等を用いて構成することができる。
【0027】
制御部は、周知のサーマルプリンタPと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に搬送制御ルーチンや印刷制御ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、所期の搬送動作や印刷動作が実現される。
【0028】
また、本実施形態のプリンタPは、ロール状の用紙Sを保持している状態で給紙部1全体を鉛直軸51(鉛直方向に延びる軸)を中心に回転させることにより、第1搬送路L1を通じて第1印刷部2に臨む用紙Sの表裏を反転させたり、第2搬送路L2を通じて第2印刷部3に臨む用紙Sの表裏を反転させる反転機構5を備えている。この反転機構5による給紙部1の回転も制御部で制御するように構成している。
【0029】
反転機構5の一例としては、ロール状に巻回された用紙Sを回転可能に支持する水平軸11の軸方向両端部を、回転台上に固定した軸保持部で保持し、鉛直軸51を中心に回転台を回転させることによって給紙部1全体を鉛直軸51回りに回動可能に構成した態様(図示省略)を挙げることができる。
【0030】
また、本実施形態のプリンタPは、給紙部1の給紙ローラ12に挟持されて先端が自由端S1(図1で想像線で示す)となっている用紙Sをメイン搬送部4Aへガイドして、用紙Sの進路を第1搬送路L1と第2搬送路L2との間で切替可能な搬送路切替機構6をさらに備えている。
【0031】
そして、本実施形態に係るプリンタPは、各印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)に、用紙Sをプラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)に対して巻き付ける方向へ押圧する押圧部(以下、第1印刷部2に設けたものを第1押圧部25とし、第2印刷部3に設けたものを第2押圧部35とする)を設けている。
【0032】
本実施形態では、各押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を、それぞれ外周面が平滑な単一の押圧ローラを用いて構成している。そして、本実施形態のプリンタPは、第1押圧部25を第1サーマルヘッド21よりも(具体的には第1サーマルヘッド21と第1プラテンローラ22との接触部分2Pよりも)プリント処理時の用紙搬送方向であるプリント方向Eの上流側に配置するとともに、第2押圧部35を第2サーマルヘッド31よりも(具体的には第2サーマルヘッド31と第2プラテンローラ32との接触部分3Pよりも)プリント処理時の用紙搬送方向であるプリント方向Eの上流側に配置している。このようなレイアウトを採用した場合、各押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)は、各印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)においてプリント方向Eにおいて最も上流側に配置していることになる。
【0033】
そして、本実施形態のプリンタPは、各押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を通過する押圧部通過点(第1押圧部通過点25P,第2押圧部通過点35P)から各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)と各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)との接触部分(第1接点2P,第2接点3P)に向かってプリント方向Eに搬送する用紙Sの全部または一部を、各押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)の押圧力により各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)の外周面に巻き付けた状態(添接させた状態、あるいは密着させた状態)で搬送することができる。各押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を、各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)の外周面に用紙Sを介して接触し得る位置に配置することも可能であるが、本実施形態では、各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)から所定距離離間させた位置に各押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を配置している。また、各押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)の位置を調整可能に設定することもできる。そして、各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)に対する押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)の位置を調整することにより、用紙Sを各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)に巻き付ける角度(対プラテンローラ巻付角度)を変更したり、用紙Sを各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)に巻き付けないようにすることが可能になる。
【0034】
次に、本実施形態に係る熱転写プリンタPの動作及び作用、特に各印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)のプリント処理時の動作及び作用について説明する。
【0035】
先ず、ユーザの操作などによって入力された印刷データに基づいて、制御部によって印刷サイズを特定し、給紙部1でロール状に巻回されている用紙Sを給紙ローラ12と給紙用ピンチローラ13との間を通過させてメイン搬送部4Aまで搬送し、引き続いてメイン搬送部4Aを経由して第1搬送路L1に沿って第1印刷部2へ搬送する(第1次送り出し処理)。用紙Sがメイン搬送部4Aを通過する際、搬送駆動ローラ41の外周面に設けた微少突起41aの作用により用紙Sを滑らせることなく第1搬送路L1に沿って適切に搬送することができる。また、メイン搬送部4Aを通過する用紙Sのうち搬送駆動ローラ41と第1ピンチローラ42とによって挟まれる部分には負荷(ニップ圧)が作用し、用紙Sのうち搬送駆動ローラ41に接触する面(例えばウラ面Sb)に微少突起痕Saが出現し得る。ここで、第1ピンチローラ42が搬送駆動ローラ41に圧接すると、第1ピンチローラ42及び搬送駆動ローラ41は用紙Sを適切に搬送可能な範囲(グリップ力が大幅に低下しない範囲)で共に相互に離間する方向に撓み変形し得る(撓み変形した状態の図は省略)。その結果、用紙Sのうち微少突起41aに接触し得る部分であっても微少突起痕Saが顕著に生じ難くなったり、微少突起痕Sa自体が小さくなる場合がある。なお、本実施形態では、用紙Sを送り出し方向(第1送り出し方向A、第2送り出し方向C)に搬送する際には、印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)の各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)を対向する各プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)との間で用紙Sを挟み得ない位置に待機させ、用紙Sのスムーズな搬送を実現している。
【0036】
そして、本実施形態のプリンタPは、用紙Sのオモテ面Stにおける印刷設定領域のうち給紙部1側のエンド部分が第1プラテンローラ22を通過する時点ないし通過した時点で、第1印刷部2の第1サーマルヘッド21を第1プラテンローラ22との間で用紙Sを挟み得る位置に移動させて、搬送駆動ローラ41を第1巻き戻し方向Bへ回転させることによって用紙Sをプリント方向E(第1印刷部2から給紙部1側に向かう方向)へ搬送しながら、第1印刷部2の第1サーマルヘッド21を用紙Sのオモテ面Stに接触させて昇華プリント処理(オモテ面側通常プリント処理)を行う。
【0037】
引き続いて、本実施形態のプリンタPは、用紙Sの自由端S1がメイン搬送部4Aよりも給紙部1側に位置付けられるまで用紙Sを給紙部1側に巻き戻し、その状態(図1に想像線で示す状態)で反転機構5によって鉛直軸51を中心に給紙部1全体を所定角度回転させる。その結果、用紙Sを第1印刷部2側に向かって再び送り出した場合に、用紙Sの表裏がオモテ面側通常プリント処理時とは逆転する(表裏が反転した状態となる)。
【0038】
次いで、本実施形態のプリンタPは、反転機構5によって表裏を反転させた用紙Sをメイン搬送部4Aまで搬送し、第1送り出し方向Aに回転する搬送駆動ローラ41によって再び第1搬送路L1に沿って第1印刷部2側に搬送する(第2次送り出し処理)。この際、搬送駆動ローラ41の外周面に設けた微少突起41aの作用により用紙Sを滑らせることなく適切に搬送することができる一方で、用紙Sのうち搬送駆動ローラ41に接触する面(オモテ面側通常プリント処理時とは用紙Sが反転しているため、搬送駆動ローラ41に接触する面はオモテ面Stである)に微少突起痕Saが出現し得る。
【0039】
そして、本実施形態のプリンタPは、用紙Sのウラ面Sbにおける印刷設定領域のうち給紙部1側のエンド部分が第1プラテンローラ22を通過する時点ないし通過した時点で、第1印刷部2の第1サーマルヘッド21を第1プラテンローラ22との間で用紙Sを挟み得る位置に移動させて、搬送駆動ローラ41を第1巻き戻し方向Bへ回転させることによって用紙Sをプリント方向Eへ搬送しながら、第1印刷部2により用紙Sのウラ面Sbに昇華プリント処理(ウラ面側通常プリント処理)を行う。
【0040】
ここで、用紙Sのウラ面Sbには、第1次送り出し処理及びオモテ面側通常プリント処理に伴って微少突起痕Saが生じる。各微少突起痕Saは、極めて小さい穴であり、また用紙Sの厚み方向に比較的深く刻まれたものであるため、このような各微少突起痕Sa内にインクを十分に転写する(乗せる)ことは困難であり、ウラ面Sbのプリント品質は低下し易い。
【0041】
そこで、本実施形態に係るプリンタPは、ウラ面側通常プリント処理時に用紙Sのうち第1押圧部25に接触する位置(第1押圧部通過点25P)を超えてから第1サーマルヘッド21と第1プラテンローラ22との接触部分2Pに到達するまでの所定領域を第1プラテンローラ22の外周面に巻き付けながら給紙部1側へ搬送する(巻き戻す)。その結果、図3に模式的に示すように、第1プラテンローラ22の外周面に沿って部分円弧状をなして搬送される用紙Sのうち、第1プラテンローラ22に面していない側の面(ウラ面側通常プリント処理時であればウラ面Sb)が、用紙Sのうち第1プラテンローラ22に面している側の面(ウラ面側通常プリント処理時であればオモテ面St)よりも相対的に長い距離を移動することになり、用紙Sを第1プラテンローラ22の外周面に巻き付けずに搬送した場合(図4参照)と比較して、用紙Sのウラ面Sbに出現している各微少突起痕Saの開口面積を広げることができる。したがって、このような拡開した各微少突起痕Sa内部にもインクを十分に転写することができ、良好なプリント品質を確保することができる。
【0042】
以上の手順によって、本実施形態のプリンタPは、オモテ面側通常プリント処理及びウラ面側通常プリント処理を行い、用紙Sの両面に対する通常プリント処理を完了する。
【0043】
引き続いて、本実施形態のプリンタPは、特別プリント処理を行うべく、搬送路切替機構6によって進路を第1搬送路L1から第2搬送路L2に切り替えた用紙Sを、メイン搬送部4Aを経由して第2搬送路L2に沿って第2印刷部3側へ搬送する(第3次送り出し処理)。通常プリント処理と特別プリント処理との間で反転機構5によって給紙部1を反転させなければ、第2搬送路L2に沿って第2印刷部3側へ搬送された用紙Sは、ウラ面Sbが搬送駆動ローラ41及び第2プラテンローラ32に接触し得る。そして、本実施形態のプリンタPは、第3次送り出し処理時に、搬送駆動ローラ41の外周面に設けた微少突起41aの作用により用紙Sを滑らせることなく適切に搬送することができる一方で、用紙Sのうち搬送駆動ローラ41に接触する面(ウラ面Sb)に微少突起痕Saが生じ得る。
【0044】
そして、本実施形態のプリンタPは、用紙Sのオモテ面Stにおける印刷設定領域のうち給紙部1側のエンド部分が第2プラテンローラ32を通過する時点ないし通過した時点で、第2印刷部3の第2サーマルヘッド31を第2プラテンローラ32との間で用紙Sを挟み得る位置に移動させて、搬送駆動ローラ41を第2巻き戻し方向Dへ回転させることによって用紙Sをプリント方向E(第2印刷部3から給紙部1側への方向)へ搬送しながら、第2印刷部3により用紙Sのオモテ面Stに昇華プリント処理(オモテ面側特別プリント処理)を行う。
【0045】
ここで、用紙Sのオモテ面Stには、第2次送り出し処理及びウラ面側通常プリント処理に伴って微少突起痕Saが出現するが、オモテ面側特別プリント処理時に、用紙Sのうち第2押圧部35に接触する位置(第2押圧部通過点35P)を超えてから第2サーマルヘッド31と第2プラテンローラ32との接触部分3Pに到達するまでの所定領域を第2プラテンローラ32の外周面に巻き付けながら給紙部1側へ搬送する(巻き戻す)。その結果、用紙Sを第2プラテンローラ32の外周面に巻き付けずに搬送した場合と比較して、用紙Sのオモテ面Stに出現している各微少突起痕Saである極小の穴(窪み)を広げることができ、このような拡開した各微少突起痕Saにも十分にインクを乗せることができ、オモテ面Stに対する特別プリントを適切に行うことができる。
【0046】
引き続いて、本実施形態のプリンタPは、用紙Sの自由端S1がメイン搬送部4Aよりも給紙部1側に位置付けられるまで用紙Sを給紙部1側に巻き戻し、その状態で反転機構5によって鉛直軸51を中心に給紙部1全体を所定角度回転させる。その結果、用紙Sを第2印刷部3側に向かって再び送り出した場合に、用紙Sの表裏がオモテ面側特別プリント処理時とは逆転する。
【0047】
次いで、本実施形態のプリンタPは、反転機構5によって表裏を反転させた用紙Sをメイン搬送部4Aまで搬送し、第2送り出し方向Cに回転する搬送駆動ローラ41によって再び第2搬送路L2に沿って第2印刷部3側に搬送する(第4次送り出し処理)。第4次送り出し処理時に、搬送駆動ローラ41の外周面に設けた微少突起41aの作用により用紙Sを滑らせることなく適切に搬送することができる一方で、用紙Sのうち搬送駆動ローラ41に接触する面(オモテ面St)に微少突起痕Saが出現し得る。
【0048】
そして、本実施形態のプリンタPは、用紙Sのウラ面Sbにおける印刷設定領域のうち給紙部1側のエンド部分が第2プラテンローラ32を通過する時点ないし通過した時点で、第2印刷部3の第2サーマルヘッド31を第2プラテンローラ32との間で用紙Sを挟み得る位置に移動させて、搬送駆動ローラ41を第2巻き戻し方向Dへ回転させることによって用紙Sをプリント方向Eへ搬送しながら、第2印刷部3により用紙Sのウラ面Sbに昇華プリント処理(ウラ面側特別プリント処理)を行う。
【0049】
ここで、用紙Sのウラ面Sbには、第1次送り出し処理、オモテ面側通常プリント処理、第2次送り出し処理、及びオモテ面側特別プリント処理に伴って微少突起痕Saが出現するが、ウラ面側特別プリント処理時に、用紙Sのうち第2押圧部35に接触する位置(第2押圧部通過点35P)を超えてから第2サーマルヘッド31と第2プラテンローラ32との接触部分3Pに到達するまでの所定領域を第2プラテンローラ32の外周面に巻き付けながら給紙部1側へ搬送する(巻き戻す)ことにより、用紙Sを第2プラテンローラ32の外周面に巻き付けずに搬送した場合と比較して、用紙Sのウラ面Sbに出現している各微少突起痕Saの間口を広げることができ、このような拡開した各微少突起痕Saに十分にインクを転写することができ、ウラ面Sbに対する特別プリントも適切に行うことができる。
【0050】
以上の手順によって本実施形態のプリンタPは、オモテ面側特別プリント処理及びウラ面側特別プリント処理を行い、用紙Sの両面に対する特別プリント処理を完了する。そして、本実施形態の熱転写プリンタPは、用紙Sの両面に対する特別プリント処理を終えた後に、用紙Sを排出部に向かって搬送し、その過程で図示しないカッター部で少なくとも用紙幅方向に(場合によっては用紙搬送方向にも)切断して排出部(排出口)から排出する。
【0051】
以上のように本実施形態に係るプリンタPは、外周面に微少突起41aを有する搬送駆動ローラ41と、搬送駆動ローラ41の外周面に用紙Sを挟んで圧接し得るピンチローラ(第1ピンチローラ42、第2ピンチローラ43)との組み合わせによって用紙搬送機構4のメイン搬送部4Aを構成しているため、このメイン搬送部4Aを通過する用紙Sに対して適度なグリップ力を発揮して適切な用紙搬送を実現することができる。このようなメイン搬送部4Aにより用紙Sを所定方向に搬送する際、用紙Sのうち搬送駆動ローラ41に接触する面には微少突起痕Saが生じるものの、本実施形態のプリンタPにおいては、用紙Sをプラテンローラ(第1プラテンローラ22,32)に対して巻き付ける方向へ押圧する押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)に設けているため、用紙Sのうちプラテンローラに接触しない側の面(対プラテンローラ非接触面)に生じている各微少突起痕Saを拡開させることができ、このような微少突起痕Sa内にもインクを十分に転写(乗せる)ことが可能である。
【0052】
したがって、本実施形態に係るプリンタPは、適切な用紙搬送機能を発揮するとともに、微少突起痕Saに起因する大幅なプリント品質の低下を効果的に防止・抑制することができ、実用性に優れたものになる。
【0053】
また、本実施形態に係るプリンタPでは、プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)に対する押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)の配置を適宜調整することによって、プラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)に対する用紙Sの巻き付け角度(対プラテン巻付角度)を任意の値に設定することができ、用紙Sの印刷面(オモテ面St、ウラ面Sbの何れであってもよい)に生じ得る各微少突起痕Saの大きさや微少突起痕Saが生じ得る領域などに応じて適宜の対プラテン巻付角度を設定することによって、各微少突起痕Sa内への良好な転写を実現することができる。
【0054】
さらに、本実施形態に係るプリンタPは、押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を、サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)とプラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)との接触部分よりもプリント処理時の用紙搬送方向であるプリント方向Eの上流側に配置し、押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を通過する押圧部通過点(第1押圧部通過点25P,第2押圧部通過点35P)からサーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)とプラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)との接触部分に向かってプリント方向Eに搬送する用紙Sの全部または一部をプラテンローラに対して巻き付けている。その結果、サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)と接触する面に微少突起痕Saが生じている用紙Sであっても、プリント方向Eに搬送されてサーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)とプラテンローラ(第1プラテンローラ22,第2プラテンローラ32)との接触部分に到達した時点では既に各微少突起痕Saが拡開した状態となっているため、これら各微少突起痕Sa内へのインクの乗り性をより一層向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態では、押圧部(第1押圧部25,第2押圧部35)を単一の押圧ローラを用いて構成しているため、構造の複雑化及び大幅なコストアップを招来することなく、良好な両面プリント機能を発揮するプリンタPを実現できる。
【0056】
また、本実施形態のプリンタPは、複数の印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)を備え、各印刷部(第1印刷部2,第2印刷部3)のサーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)に臨ませる用紙Sの表裏を反転させて各サーマルヘッド(第1サーマルヘッド21,第2サーマルヘッド31)に対して用紙Sのオモテ面St及びウラ面Sbの両面を供給可能な反転機構5と備えていることによって、例えば用紙Sの両面にそれぞれ通常プリント及び特別プリント可能なプリンタPを実現するためにオモテ面側通常プリント用の印刷部、ウラ面側通常プリント用の印刷部、オモテ面St特別プリント用の印刷部、及びウラ面側特別プリント用の印刷部というように3以上のサーマルヘッドを複数設ける必要がなく、部品点数の削減や装置の小型化を図ることができ、製造コストの低減にも資する。
【0057】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。給紙部から供給された用紙の一方の面(オモテ面)に対して昇華プリント処理を施す印刷部と、用紙の他方の面(ウラ面)に対して昇華プリント処理を施す印刷部とをそれぞれ別々に設けたプリンタや、或いは、1つの印刷部と、用紙搬送路上における用紙の表裏を反転させる機構とを備えることによって用紙の両面にそれぞれプリント処理可能なプリンタを構成することもできる。
【0058】
また、印刷部を複数備えたプリンタを構成した場合、押圧部を全ての印刷部に設ける必要が無い場合がある。すなわち、複数の印刷部のうち、ある印刷部によって印刷面(オモテ面かウラ面であるかを問わず)にプリント処理を行う時点で、その印刷面に微少突起痕が生じていないケース(具体例としては、オモテ面用印刷部と、ウラ面用印刷部とを別々に備え、最初にオモテ面用印刷部によってオモテ面にプリント処理を行う時点では、オモテ面に微少突起痕は生じていないケース)では、その印刷部に押圧部を設ける必要はなく、また、印刷品質に影響を及ぼさない程度に微少突起痕が浅い場合にも押圧部を積極的に設けないという選択が可能である。
【0059】
さらに、押圧部を、押圧ローラに代えて、または加えて例えばプレート状の押圧部材や、ベルト状の押圧部材などを用いて構成することもできる。
【0060】
また、押圧部を、プラテンローラの外周面との間に用紙を挟んで圧接し得る位置に設けてもよい。1つのプラテンローラに対して2つ以上の押圧部を設けてもよい。この場合の一例としては、プラテンローラとサーマルヘッドとの接触部分よりも給紙部側に1又は複数の押圧部を配置するとともに、プラテンローラとサーマルヘッドとの接触部分よりも反給紙部側(給紙部から離間する方向)に1又は複数の押圧部を配置した構成を挙げることができる。さらには、押圧部を、プラテンローラに用紙を巻付可能な位置と、プラテンローラを用紙に巻付不能な位置との間で移動可能に構成することも可能である。
【0061】
また、上述した実施形態では、メイン搬送部を境にして複数の印刷部(第1印刷部、第2印刷部)を並列な関係で配置した態様を例示したが、複数の印刷部(3以上の印刷部であってもよい)を直列的に配置したプリンタであってもよい。複数の印刷部を直列的に配置した場合には、用紙の進路を第1搬送路と第2搬送路との間で切り替えるための機構(上述の搬送路切替機構)は不要である。
【0062】
また、プリント処理時の用紙搬送方向を、用紙を給紙部から印刷部に送り出す方向(送り出し方向)と一致させてもよい。この場合、給紙部から印刷部側に送り出した用紙を給紙部側に巻き戻す処理をゼロ又は必要最小限に留めることができ、印刷速度を向上させることが可能となる。
【0063】
また、用紙の両面に「通常プリント処理」のみを行うプリンタ、又は用紙の両面に「特別プリント処理」のみを行うプリンタ、或いは用紙の一方の面には「通常プリント処理」のみを行い、他方の面には「特別プリント処理」のみを行うプリンタであっても構わない。
【0064】
前述した実施形態では、昇華式の熱転写プリンタを例示したが、溶融式など他の熱転写プリンタであってもよい。
【0065】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…給紙部
2,3…印刷部(第1印刷部,第2印刷部)
21,31…サーマルヘッド(第1サーマルヘッド,第2サーマルヘッド)
22,32…プラテンローラ(第1プラテンローラ,第2サーマルヘッド)
25,35…押圧部(第1押圧部,第2押圧部)
2P,3P…接触部分(第1接点,第2接点)
25P,35P…押圧部通過点(第1押圧部通過点,第2押圧部通過点)
4…用紙搬送機構
41…搬送駆動ローラ
41a…微少突起
42,43…ピンチローラ(第1ピンチローラ,第2ピンチローラ)
P…プリンタ
S…用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドとプラテンローラとの間に挟んだ用紙に熱転写プリント処理を行う印刷部と、少なくとも前記印刷部と給紙部との間で用紙を搬送する用紙搬送機構とを備え、前記一又は複数の印刷部によって用紙の両面に熱転写プリント処理可能なプリンタであって、
前記用紙搬送機構が、外周面に微少突起を有する搬送駆動ローラと、前記搬送駆動ローラの外周面に用紙を挟んで圧接し得るピンチローラとを備えたものであり、
前記印刷部に、用紙を前記プラテンローラに対して巻き付ける方向へ押圧する押圧部を設けていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記押圧部を、前記サーマルヘッドよりもプリント処理時の用紙搬送方向であるプリント方向の上流側に配置し、
前記押圧部を通過する押圧部通過点から前記サーマルヘッドに向かって前記プリント方向に搬送する用紙の全部または一部を前記プラテンローラに対して巻き付けている請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記押圧部は、外周面が平滑な押圧ローラである請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記搬送駆動ローラ及び前記ピンチローラは、用紙を挟んだ状態で相互に相反する方向へ撓み得るものである請求項1乃至3の何れかに記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−18169(P2013−18169A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152260(P2011−152260)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】