説明

熱転写印刷装置

【課題】 熱転写印刷装置において、熱補正における補正係数の調整を複雑化させることなく、サーマルヘッドへの画像データの転送時間の短縮を図ることを目的とする。
【解決手段】 画像データを熱転写により印画する熱転写印刷装置であって、階調数に応じた回数のSTROBE信号を送信するとともに、該画像データの濃度を表すデータ(1〜256)を該信号に同期して転送する制御手段と、前記制御手段より送信されたSTROBE信号及び転送されたデータ(1〜256)に基づいて熱転写により印画する印画手段と、を備え、STROBE信号は、パルス幅が等しく、データ(1〜256)を転送する際の周期T内のパルス数が異なる2種類のパルス信号502、503から構成され、データ(1〜256)は、STROBE信号が備えるパルス数が、前記画像データの濃度値に等しくなるようにデータ列が構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融式記録や熱昇華式記録を行う熱転写方式の印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱溶融式記録や熱昇華式記録を行う熱転写方式の印刷装置(熱転写印刷装置)は、ロール紙等の記録媒体にインクリボンを重畳させた状態で、サーマルヘッドを用いて当該インクリボンのインクを昇華または溶融させることで当該記録媒体への印画を行う。ここで、印画される画像データは、サーマルヘッド制御部を介してサーマルヘッドに提供され、サーマルヘッドは当該画像データに基づいて動作する。
【0003】
図7は、従来の熱転写印刷装置において印画時にサーマルヘッドに提供される画像データの流れを示す図である。同図において、701は画像データ保持部であり、印画される画像データを保持している。704は画像データ保持部701に保持されている画像データの一例であり、ここでは説明の便宜上、紙面縦方向の画素数が256画素からなり、濃度0〜255までの各濃度が紙面縦方向の各画素に均等に配されたモノクロ画像が保持されているものとする。
【0004】
702はサーマルヘッド制御部であり、画像データ保持部より1ラインずつ画像データを受信する。705は画像データ704の1ライン分の範囲を示しており、706は画像データ704より抽出された1ライン分の画像データを示している。
【0005】
サーマルヘッド制御部702では、受信した画像データ706に基づいて、サーマルヘッド703に対して各種信号(707)及びデータを送信する。708は各種信号(707)及びデータの一例である。709はSTROBE(ストロボ)信号であり、一定周期のパルス信号からなる。なお、ここでは印画される画像データ704が256階調で表されているため、1ライン分の画像データをサーマルヘッド703に転送するのに、256パルス送信されることとなる。
【0006】
データ1〜256は、1ライン分の画像データ706の各画素の濃度に対応する画像データであり、STROBE信号709と同期してサーマルヘッド703に転送される。例えば、データ1の場合、画像データの濃度は0(白色)であるため、256回転送されるデータはすべて0である。これに対して、データ2は、画像データの濃度が1であるため、256回転送されるデータの中には1が1つ含まれ、残りの255個のデータは0となる。同様に、データ256の場合、画像データの濃度は255(黒色)であるため、256回転送されるデータはすべて1である。
【0007】
このように、サーマルヘッド703に転送される画像データの各画素の濃度は、階調数に応じたパルス数のSTROBE信号と、当該STROBE信号に同期した階調数分のデータとにより表現される。
【0008】
このため、1ライン分の画像データ706をサーマルヘッドに転送するのに要する時間(転送時間TT)は、サーマルヘッド703のハードウェア構成が同じ場合、STROBE信号の周波数と画像データの階調数及び1つのデータ転送ラインの抵抗体数(ヘッドラインをN分割)とによって決まってくる。例えば、STROBE信号の周波数をf、画像データの階調数をK及び1つのデータ入力の抵抗体数nとした場合、転送時間TTは、TT=K×n/fとなる。一般には転送時間は速くても1msec程度である。
【0009】
ここで、転送時間TTを短縮するためには、例えばSTROBE信号の周波数を大きくすることが考えられるが、STROBE信号の周波数を大きくすると、それに同期させて転送するデータ(データ1〜256)も短い間隔で転送しなければならず、当該データを受信するサーマルヘッド703側の仕様を向上させることとなり、コスト増につながる。また、画像データの階調数を落とすことも考えられるが、この場合、画質の劣化が避けられず望ましくない。また、1つのデータ入力の抵抗体数を少なくすることも考えられるが、ヘッドと制御基板間のハンネス数が増えることになり構成も複雑になるとともにコスト増になる。
【0010】
このような状況のもと、転送時間TTを短縮するための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1では、サーマルヘッド制御部から出力されるSTROBE信号を、階調の上位ビットを表現する複数の大パルスと、下位ビットを表現する各種の小パルスとで構成することで、階調数が同じであっても転送に必要なパルス数の低減が実現でき、その結果、転送時間の短縮を可能にしている。
【0011】
また、同様に、特許文献2では、サーマルヘッド制御部から出力されるSTROBE信号を階調数の上位ビットと下位ビットとに分割し、階調数に対応して重みが異なるパルス幅を持たせることで、転送に必要なパルス数を低減し、転送時間の短縮を図っている。
【特許文献1】特開2002−154234号公報
【特許文献2】特開2001−54958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1、2に示す方式は、いずれも送信されるSTROBE信号のパルス幅をかえることで転送時間の短縮を図るものである。一方、熱転写印刷装置では、サーマルヘッドにおいて蓄熱補正等の熱補正を行う必要があり、一般には送信されるSTROBE信号のパルス幅に応じて補正係数を調整している。このため、上記特許文献1、2に示すように、階調の上位ビットと下位ビットとでSTROBE信号のパルス幅を変えることとすると、熱補正における補正係数の調整が複雑になるという問題がある。
【0013】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、熱転写印刷装置において、熱補正における補正係数の調整を複雑化させることなく、サーマルヘッドへの画像データの転送時間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本発明に係る熱転写印刷装置は以下のような構成を備える。即ち、
画像データを熱転写により記録媒体に印画する熱転写印刷装置であって、
画像データの階調数に応じた回数の信号を送信するとともに、該画像データの濃度を表すデータを該信号に同期して転送制御する制御手段と、
前記制御手段より送信された前記信号及び転送された前記データに基づいて濃度を制御し、前記画像データを熱転写により印画する印画手段と、を備え、
前記信号は、パルス幅が等しく、前記データを転送する際の転送周期内のパルス数及びパルス位置が異なる2種類のパルス信号から構成され、
前記データは、前記信号が備えるパルス数が、前記画像データの濃度値に等しくなるようにデータ列が構成されていることを特徴とする。
【0015】
また、前記信号は、
前記データを転送する際の転送周期内に2つのパルスを含む第1のパルス信号と、
前記データを転送する際の転送周期内に1つのパルスを含み、第1のパルス信号の2番目のパルスと同じ位置にパルスを持つ第2のパルス信号と、を備え、
前記第2のパルス信号を1つ配した後に、複数の前記第1のパルス信号を配して構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに前記信号は、画像データの階調数が256階調であった場合、1個の前記第2のパルス信号の後に、127個の前記第1のパルス信号を配して構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、熱転写印刷装置において、熱補正における補正係数の調整を複雑化させることなく、サーマルヘッドへの画像データの転送時間の短縮を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
<昇華型プリンタの印画部の構成>
本発明の第1の実施形態にかかる熱転写印刷装置(昇華型プリンタ)の印画部の構成について説明する。図1は、昇華型プリンタの印画部の構成を示す図である。同図において101はサーマルヘッドで、インクリボン105を重畳させたロール紙RPをプラテンローラ102との間で熱押圧することにより、インクリボン105のインクを昇華させ、ロール紙RPへの印画を行う。
【0020】
107は搬送ローラであり、ロール紙RPを搬送する。103、104はインクリボン供給ローラ及びインクリボン巻取ローラであり、それぞれインクリボン105が巻き回され、インクリボン供給ローラ103とインクリボン巻取ローラ104との間に張架されたインクリボン105は、インクリボン巻取ローラ104が巻き取ることにより、ガイドローラ106に沿って搬送される。
【0021】
<昇華型プリンタの動作説明>
搬送ローラ107の回転によりロール紙RPが搬送され、サーマルヘッド101とプラテンローラ102との間に挿入される。サーマルヘッド101とプラテンローラ102との間には、予めインクリボン105が挿通されており、サーマルヘッド101が熱押圧しインクリボン105のインクを昇華させることによりロール紙RPへの印画が行われる。
【0022】
カラー印刷の場合、インクリボン105には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色のインク層と、保護層となるオーバーコート層とが長手方向に所定単位で繰り返し施されており、搬送ローラ107の正転、逆転を繰り返してロール紙RPを往復動させることにより、各色の印画およびオーバーコートが行われる。使用済みのインクリボン105は、インクリボン巻取ローラ104によって順次巻き取られる。
【0023】
印画されたロール紙RPは、不図示の切断機へと向かい、所定サイズ毎に切断された後、排出される。以上の手順が繰り返し行われて、順次写真等が生成されることとなる。
【0024】
<印画時の画像データの流れ>
図2は、本実施形態にかかる昇華型プリンタにおける印画時の画像データの流れを示す図である。同図において、201は画像データ保持部であり、印画される画像データを保持している。
【0025】
202はサーマルヘッド制御部であり、画像データ保持部201より1ラインずつ転送された画像データを受信する。サーマルヘッド制御部202では、受信した画像データ206に基づいて、サーマルヘッド101に対して各種信号(204)及びデータを送信する。サーマルヘッド101では、サーマルヘッド制御部202より送信された各種信号(204)及びデータに基づいて、該サーマルヘッド101が備える抵抗体Rを発熱させる。
【0026】
なお、データ入力1〜Nは、サーマルヘッド101のドット数(=抵抗体の数、詳細は後述)にそれぞれ対応している。本実施形態では、サーマルヘッド101はn×Nドットで構成され、画像データはモノクロ画像であるものとする。また、各データ(データ1〜256)は画像データの各画素の濃度に対応した値が記載されており、本実施形態では、画像データの濃度は0〜255の256階調で表現されているものとする。なお、階調数と濃度との関係は図4に示すとおりで、階調=0の場合に濃度が最小であり(=白色)、階調=255のとき、濃度が最大となる(=黒色)。
【0027】
<サーマルヘッドの構成>
図3は、サーマルヘッド101の詳細を示す図である。同図に示すように、サーマルヘッド101は、内部にドライブICを備え、サーマルヘッド制御部202より送信される各種信号204(CLOCK、LATCH、STROBE)及びデータは当該ドライブICが受信する。ドライブICには抵抗体Rが接続され(本実施形態では、1つのドライブICにn個の抵抗体Rを接続した場合について説明するが、特にこれに限定されるものではない。受信した信号に応じて抵抗体Rを流れる電流が変化し、抵抗体Rの発熱量が制御される。
【0028】
<STROBE信号の特徴>
図5は、本実施形態にかかる昇華型プリンタにおいて、サーマルヘッド制御部202より送信されるSTROBE信号を示す図である。なお、比較のため、501に従来の熱転写印刷装置におけるSTROBE信号を示す(周波数=f、周期T=1/fとする)。502、503に示すように、本実施形態の場合、STROBE信号は2種類で構成されている。信号502と信号503とは、パルス幅PWが同じであり、1周期T内のパルス数が異なっている(信号502のパルス数=1、信号503のパルス数=2)。また、信号502の1つのパルスは信号503の2番目のパルスの位置に相当する。
【0029】
このように2種類の信号によりSTROBE信号を構成し、信号502を最下位ビットに、信号503をその後に続くビットに割り当てるようにする。このとき、各信号(502、503)は、パルス幅PWが同じであり、502の1つのパルスのON/OFFの周期が次の503のパルスと同じで、連続してして配置されるため、上記特許文献1及び2とは異なり、パルス幅PWに応じて熱補正する場合であっても、補正係数の調整が複雑化することはない。
【0030】
<各種信号204の内容>
図6は、上記2種類の信号から構成されるSTROBE信号(502、503)と同期させてサーマルヘッド101に転送するデータ1〜256を示した図である(つまり、データ1〜256は、それぞれ周期Tでデータを転送する)。
【0031】
601は画像データ保持部201に保持されている画像データの一例であり、濃度0〜255までの各濃度が紙面縦方向の各画素に均等に配されたモノクロ画像であるとする。
【0032】
602は画像データ601の1ライン分の範囲を示しており、603は画像データ601より抽出された1ライン分の画像データを示している。
【0033】
一方、STROBE信号は、1周期T内に1つのパルスを有する信号502と、2つのパルスを有する信号503とから構成されている。前に配された信号502の後ろには、信号503が複数個存在する。信号503は1周期T内に2つのパルスを有することから、信号503が1つ(1周期分)送信されることにより、当該データが表す濃度が2階調増えることとなる。
【0034】
このため、従来のように256階調の画像データを転送するのに256個のデータを転送する必要はなく、128回(128周期分)転送するだけで、0〜255の256階調分のデータ全てを表すことが可能となる。
【0035】
データ1〜256は、1ライン分の画像データ206の各画素の濃度に対応するデータであり、STROBE信号と同期してサーマルヘッド101に転送される。例えば、データ1の場合、画像データの濃度は0(白色)であるため、128回転送されるデータはすべて0である。これに対して、データ2は、画像データの濃度が1であるため、128回転送されるデータの中には1が1つ含まれ(信号502に対応するデータが1となる)、残りの127個のデータは0となる。また、データ3は、画像データの濃度が2であるため、信号502に対応するデータが0となり、最初の信号503に対応するデータが1となり、残りの126個のデータは0となる。同様に、データ256の場合、画像データの濃度は255(黒色)であるため、128回転送されるデータはすべて1である。つまり、データ1〜256は1周期T内に含まれるパルス数が1の信号と2の信号とを組み合わせて、0〜255までの256階調分のデータを生成するように構成されている。
【0036】
この結果、1ライン分の画像データ603をサーマルヘッド101に転送するのに要する時間(転送時間TT)は、データの転送周波数をf、画像データの階調数をKとした場合、転送時間TTは、TT=((K−1)/2+1))×n/fとなる。つまり、信号503の送信回数を半減させデータの転送回数を減らすことで、転送時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本実施形態にかかる昇華型プリンタによれば、パルス幅が等しく、かつデータの転送周期T内のパルス数及びパルス位置が異なる2種類の信号によりSTROBE信号を構成することにより、熱補正係数の調整を複雑化させることなく、サーマルヘッドへの画像データの転送回数を大幅に低減し、転送時間を短縮させることが可能となる。
【0038】
なお、上記の実施形態では熱転写印刷装置として昇華型プリンタを一例に挙げて説明したが、特にこれに限られるものではなく溶融型プリンタであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態にかかる昇華型プリンタの印画部の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる昇華型プリンタにおける印画時の画像データの流れを示す図である。
【図3】サーマルヘッド101の詳細を示す図である。
【図4】階調と濃度との関係を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる昇華型プリンタにおいて、サーマルヘッド制御部202より送信されるSTROBE信号を示す図である。
【図6】2種類のSTROBE信号(502、503)と同期させてサーマルヘッド101に転送するデータ1〜256を示した図である。
【図7】従来の熱転写印刷装置における印画時の画像データの流れを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
RP ロール紙
101 サーマルヘッド(印画手段)
102 プラテンローラ
103 インクリボン供給ローラ
104 インクリボン巻取ローラ
105 インクリボン
106 ガイドローラ
107 搬送ローラ
202 サーマルヘッド制御部(制御手段)
204 信号
206 画像データ
502、503 パルス信号
T 周期
PW パルス幅
N データ入力数
n 1つのデータ転送ラインの抵抗体数
K 画像データの階調数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを熱転写により記録媒体に印画する熱転写印刷装置であって、
画像データの階調数に応じた回数の信号を送信するとともに、該画像データの濃度を表すデータを該信号に同期して転送制御する制御手段と、
前記制御手段より送信された前記信号及び転送された前記データに基づいて濃度を制御し、前記画像データを熱転写により印画する印画手段と、を備え、
前記信号は、パルス幅が等しく、前記データを転送する際の転送周期内のパルス数が異なる2種類のパルス信号から構成され、
前記データは、前記信号が備えるパルス数が、前記画像データの濃度値に等しくなるようにデータ列が構成されていることを特徴とする熱転写印刷装置。
【請求項2】
前記信号は、
前記データを転送する際の転送周期内に2つのパルスを含む第1のパルス信号と、
前記データを転送する際の転送周期内に1つのパルスを含み、第1のパルス信号の2番目のパルスと同じ位置にパルスを持つ第2のパルス信号と、を備え、
前記第2のパルス信号を1つ配した後に、複数の前記第1のパルス信号を配して構成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱転写印刷装置。
【請求項3】
前記信号は、画像データの階調数が256階調であった場合、1個の前記第2のパルス信号の後に、127個の前記第1のパルス信号を配して構成されていることを特徴とする請求項2に記載の熱転写印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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