説明

熱転写受像シート、および、熱転写印画物

【課題】本発明は、熱拡散転写方式による高速印画が可能であり、かつ耐久性に優れた画像を形成することができる熱転写受像シート、および耐久性に優れた熱転写印画物を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、金属イオン化合物およびバインダー樹脂を含む受像層とを有する熱転写受像シートであって、上記受像層に、溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする熱転写受像シートを提供することにより上記目的を達成するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱拡散転写方式による画像形成方法に用いられる熱転写受像シート、および熱拡散転写方式によって画像形成された熱転写印画物に関するものであり、より詳しくは高速印画性を備え、耐久性に優れた画像を形成することできる熱拡散転写方式用の熱転写受像シートおよび画像の耐久性に優れた熱転写印画物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラーまたはモノクロ画像形成技術の一つとして、感熱転写方式による画像形成方法が知られており、簡易的に高画質な画像を得ることができる手段として広く用いられるに至っている。感熱転写方式とは、特定の熱物性を示す染料を有する熱転写シートをサーマルヘッドやレーザー等の加熱印字手段を用いて、上記染料を熱転写シートから熱転写受像シートへ転写することにより画像形成する方法である。このような感熱転写方式は、装置の小型化が可能で低コストであるという利点を有している。
【0003】
上記感熱転写方式は、熱転写シートから熱転写受像シートへの染料の転写機構により熱溶融転写方式と、熱拡散転写方式(昇華転写方式)との2種類に大別される。熱溶融転写方式とは、熱溶融性染料を有する熱転写シートを用い、加熱処理により当該熱溶融性染料を溶融転写機構により熱転写受像シートへ転写することによって画像形成する方式である。一方、熱拡散転写方式(昇華転写方式)とは、熱拡散性染料(昇華性染料)を有する熱転写シートを用い、加熱処理により当該熱拡散性染料(昇華性染料)を熱拡散転写機構(昇華転写機構)により、熱転写受像シートへ転写することによって画像形成する方式である。後者の熱拡散転写方式(昇華転写方式)は、熱転写シートの加熱の程度を制御することにより、熱転写受像シートへの熱拡散性染料の転写量を任意に調整することができることから、中間色の再現性に優れた高階調の画像を形成することが可能であり、フルカラーの画像形成に有利であるといった特徴を有している。このような利点から、熱拡散転写方式の感熱転写技術は、営業写真、パーソナルコンピューター用プリンター、および、ビデオプリンター等に広く用いられている。
【0004】
このような熱拡散転写方式では、熱転写シートから転写された熱拡散性染料を、熱転写受像シートが有する受像層が受容することにより画像形成される。しかし、熱拡散性染料は受像層において単純に固体分散している状態であるため、定着性が悪く、受像層中で熱拡散性染料が拡散移行することにより、例えば画像がにじむ等により、画質の低下が生じる問題があった。このような問題に対し、特許文献1〜3には、受像層中に金属イオン化合物を含有させ、かつ、熱拡散性染料として上記金属イオン化合物とキレート化可能な化合物を用いることにより、受像層においてキレート型発色体を形成させるポストキレート法が開示されている。このようなポストキレート法は、キレート型発色体を形成させることにより熱拡散性染料の見かけ上の分子量を増大させ、受像層における熱拡散性を低下させることができるため、定着性の改善手段として非常に有用である。また、ポストキレート法では、キレート型発色体を形成することにより熱拡散性染料の分光特性が向上するため、より鮮明な画像を得ることができる点においても有用である。
【0005】
このようにポストキレート法は、熱拡散性染料と、金属イオン化合物とがキレート型発色体を形成することによって上記の有利な効果を発現するものである。したがって、キレート化反応が不十分であったり、受像層においてキレート型発色体が偏在していると、高速印画に対応できる十分な転写感度が得られなかったり、得られた画像の耐光性や耐熱性等が悪いといった問題がある。このため、ポストキレート法により高感度で耐久性に優れた画像を形成するには、熱拡散性染料と、金属イオン化合物とのキレート化反応を促進することにより、キレート型発色体を迅速に形成し、かつ、受像層において当該キレート型発色体を均一に分布させることが必要である。
【0006】
特許文献4には、上記キレート化反応を促進するために受像層を構成するバインダー樹脂の材料を変更することにより、熱拡散性染料の拡散性を向上させる方法が開示されている。このような方法は、キレート型発色体を迅速に形成することができる点においては有効である。しかしながら、受像層においてキレート型発色体が表面近傍に偏在してしまい、形成された画像の耐久性が不十分であるという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭59−78893号公報
【特許文献2】特開昭59−109394号公報
【特許文献3】特開昭60−2398号公報
【特許文献4】特許第3082785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、熱拡散転写方式による高速印画が可能であり、かつ、耐久性に優れた画像を形成することができる熱転写受像シート、および画像の耐久性に優れた熱転写印画物を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、金属イオン化合物およびバインダー樹脂を含む受像層と、を有する熱転写受像シートであって、上記受像層に、溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする熱転写受像シートを提供する。
【0010】
本発明によれば、上記溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、上記バインダー樹脂との相溶性に優れ、上記受像層を均質化することが可能となるため、受像層における金属イオン化合物の偏在化を防止することができる。したがって、本発明によれば、耐久性に優れた熱転写印画物を形成することができる熱転写受像シートを得ることができる。
【0011】
また、上記溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、加熱することにより融解する性質を有するため、受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことにより、加熱処理によって熱転写シートから熱転写受像シートへ熱拡散性染料を転写する際に受像層が融解し、受像層を軟化させることができる。熱拡散性染料の転写時に受像層が軟化すると、受像層における熱拡散性染料の拡散性が向上するため、上記金属イオン化合物とのキレート化反応を促進することができる。したがって、本発明によれば、熱拡散転写方式による高速印画特性も備える熱転写受像シートを得ることができる。
【0012】
本発明においては、上記溶剤溶解性の熱溶融性化合物が脂環族系イソシアネート化合物の重合物であることが好ましい。脂環族系イソシアネート化合物は特に上記バインダー樹脂との相溶性に優れるため、受像層における金属イオン化合物の偏在化をより効果的に防止することができるからである。
【0013】
また本発明においては、上記受像層に非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。上記受像層に非イオン性界面活性剤を含むことにより、溶剤溶解性の熱溶融性化合物と、バインダー樹脂との相溶性をより一層高めることができるため、受像層における金属イオン化合物の偏在化をさらに防止することができるからである。
【0014】
また本発明においては、上記金属イオン化合物が下記式で表される化合物であることが好ましい。
【0015】
[M(Q(Q(QP+(L
(上記式中、Mは金属イオン、Q、QおよびQは金属イオン(M)と配位結合可能な配位化合物、Lは有機アニオン基を表す。またl、mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、Pは1または2を表す。)
【0016】
このような金属イオン化合物は、配位化合物および有機アニオン基として、上記バインダー樹脂や溶剤溶解性の熱溶融性化合物と相溶性の高いものを選択することにより、受像層において偏在化することを防止することできるからである。また、このような金属イオン化合物は熱拡散転写方式に用いられる熱転写受像シートに広く用いられているため、材料選択の幅が広がるといった利点を有するからである。
【0017】
また本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、金属イオン化合物と熱拡散性染料とが結合してなるキレート型発色体、および、バインダー樹脂を含む受像層と、を有する熱転写印画物であって、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする熱転写印画物を提供する。
【0018】
本発明によれば、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことにより、キレート型発色体を、受像層において均一に分散させることができるため、耐久性に優れた熱転写印画物を得ることができる。
【0019】
また本発明は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、金属イオン化合物と熱拡散性染料とが結合してなるキレート型発色体およびバインダー樹脂を含む受像層とを有する熱転写印画物であって、飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる上記受像層の内部に含まれる上記キレート型発色体および上記受像層の表面に付着した上記キレート型発色体のトータルのピーク強度をD(all)、受像層表面から受像層内部へ0.5μm入ったところよりも表面側に存在する上記キレート型発色体のピーク強度をD(s)としたとき、D(s)/D(all)×100(%)が60(%)以下であることを特徴とする熱転写印画物を提供する。
【0020】
本発明によれば、上記キレート型発色体が上記のように受像層中に存在することにより、耐熱性や耐光性等の耐久性に優れた熱転写印画物を得ることができる。
【0021】
また本発明においては、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことが好ましい。上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことにより、耐久性が高く、転写感度に優れた熱転写印画物を得ることができるからである。
【0022】
さらに上記発明においては、上記受像層上に保護層が形成されていることが好ましい。上記受像層上に保護層を形成することにより、本発明の熱転写印画物に形成された画像を物理的損傷から保護することができるため、画像安定性を向上することができるからである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、熱拡散転写方式による高速印画が可能であり、かつ耐久性に優れた画像を形成することができる熱転写受像シート、および、画像の耐久性に優れた熱転写印画物を得ることができるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の熱転写受像シート、および、熱転写印画物について詳細に説明する。
【0025】
A.熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、基材シートと、上記基材シート上に形成され、金属イオン化合物およびバインダー樹脂を含む受像層と、を有するものである。
【0026】
次に本発明の熱転写受像シートについて図を参照しながら説明する。図1は本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の熱転写受像シート11は、基材シート1と、基材シート1上に形成され、金属イオン化合物およびバインダー樹脂を含む受像層2とを有するものである。
【0027】
本発明の熱転写受像シートは、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする。上記溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、上記バインダー樹脂との相溶性に優れるため、上記受像層を均質化することが可能であり、受像層における金属イオン化合物の偏在化を防止することができる。したがって、本発明の熱転写受像シートを用いることにより、耐熱性や耐光性等の耐久性に優れた熱転写印画物を得ることができる。
【0028】
また、溶剤溶解性の熱溶融性化合物は加熱により融解する性質を有するため、受像層にこのような溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことにより、加熱処理によって熱転写シートから熱転写受像シートへ熱拡散性染料を転写する際に、受像層が融解し、受像層を軟化させることができる。このように受像層が軟化すると受像層における熱拡散性染料の拡散性を向上するため、キレート化反応を促進することができる。したがって、本発明によれば、熱拡散転写方式により画像の耐熱性や耐光性等の耐久性に優れ、かつ高速印画特性を備える熱転写受像シートを得ることができる。
【0029】
ポストキレート法を用いた熱拡散転写方式では、熱転写シートから転写される熱拡散性染料と、熱転写受像シートの受像層中に含まれる金属イオン化合物とが、キレート型発色体を形成することより、耐久性に優れた画像を得ることができる。しかしながら、このようなポストキレート法では、キレート化反応が不十分であったり、受像層においてキレート型発色体が偏在していると、高速印画に対応できる十分な感度が得られなかったり、得られた画像の耐久性が悪くなるといった問題があった。このため、ポストキレート法により高感度で耐久性に優れた画像を形成するには、上記キレート型発色体を迅速に形成し、かつ受像層において当該キレート型発色体が偏在することを抑制することが必要であった。
【0030】
この点、本発明の熱転写受像シートによれば、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことより、キレート型発色体の前駆体となる金属イオン化合物を、予め受像層において均一に分布させることができるため、必然的にキレート型発色体を受像層において均一に分布させることができる。
【0031】
したがって、本発明によれば熱拡散転写方式により、高感度で耐久性に優れた画像を形成することができる熱転写受像シートを容易に得ることができる。
【0032】
本発明の熱転写受像シートは、基材シートと、受像層とを有するものである。以下、このような本発明の熱転写受像シートの各構成について詳細に説明する。
【0033】
1.受像層
まず、本発明における受像層について説明する。本発明おける受像層は、金属イオン化合物と、バインダー樹脂とを含むものであり、かつ溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とするものである。
【0034】
(1)溶剤溶解性の熱溶融性化合物
本発明に用いられる溶剤溶解性の熱溶融性化合物としては、上記バインダー樹脂と相溶性を示す化合物であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、トルエンおよびメチルエチルケトンに対して、25℃で10質量%以上の溶解性を有する溶剤溶解性の熱溶融性化合物を用いることが好ましい。このような溶解性を有する溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、上記バインダー樹脂と良好な相溶性を示すため、受像層をより均質化することができ、金属イオン化合物の偏在を防止することが容易になるからである。
【0035】
本発明に用いられる溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、特に25℃におけるトルエンおよびメチルエチルケトンに対する溶解量が10質量%以上であることが好ましく、なかでも10質量%〜50質量%の範囲内であることがより好ましい。トルエンおよびメチルエチルケトンに対する溶解性が上記範囲より低いと、バインダー樹脂の種類によっては金属イオン化合物の偏在化を防止できなかったり、また、染料の拡散性を向上できない場合があるからである。また、上記溶解性が上記範囲より高いと受像層の自己支持性が低下してしまう場合があるからである。
【0036】
本発明に用いられる溶剤溶解性の熱溶融性化合物の融点は、熱転写シートから熱拡散性染料が転写される際に受像層を軟化でき、熱拡散性染料と金属イオン化合物とのキレート化反応を促進できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては60℃〜100℃の範囲内であることが好ましく、特に70℃〜100℃の範囲内であることが好ましい。融点が上記範囲よりも高いと、受像層における熱拡散性染料の拡散性低下に伴って金属イオン化合物とのキレート化反応が不十分となり、転写感度が低くなってしまう可能性があるからである。また、融点が上記範囲よりも低いと、得られる画像の品質が低下してしまう可能性があるからである。
【0037】
上記溶剤溶解性の熱溶融性化合物としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ウレタン型ワックス、脂肪酸アミド、脂環族系イソシアネート化合物の重合物等を挙げることができる。なかでも本発明においては、脂環族系イソシアネート化合物の重合物を用いることが好ましい。脂環族系イソシアネート化合物の重合物は特に上記バインダー樹脂との相溶性に優れるため、受像層における金属イオン化合物の偏在化をより効果的に防止することができるからである。また、脂環族系イソシアネート化合物の重合物は高硬度であり耐久性にも優れているからである。
【0038】
ここで、本発明における脂環族系イソシアネート化合物の重合物とは、脂環族系イソシアネート化合物と他の化合物との重合物をいう。
【0039】
上記脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(水添TDI)、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4′−ジイソシアネート等を挙げることができる。なかでも本発明においては、IPDIを用いることが好ましい。このような脂環族系イソシアネート化合物を用いることにより、本発明の熱転写受像シートを用いた熱転写印画物を耐光性に優れたものにできるからである。
【0040】
また、本発明においては、上記脂環族系イソシアネート化合物を1種類のみ用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
上記脂環族系イソシアネート化合物と重合する他の化合物としては、重合物に所望の熱溶融性と溶媒溶解性を付与できるものであれば特に限定されず、従来ポリウレタン樹脂の製造に使用されていたものであれば、いずれも支障なく使用することができる。このような他の化合物の具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、へキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの飽和或いは不飽和の低分子グリコール類;ペンチルアルコール(5)、オクチルアルコール(8)、デシルアルコール(10)、ラウリルアルコール(12)、ミリスチルアルコール(14)、セチルアルコール(16)、ステアリルアルコール(18)、ベヒニルアルコール(22)等の炭素数が1〜50のアルキルアルコール類(かっこ内の数値は炭素数を表す。);n−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類;パーサチィック酸グリシジルエステル等のモノカルボン酸グリシジルエステル類と、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸等の二塩基酸もしくはこれらの無水物を脱水縮合して得られるポリエステルポリオール類;環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール類等を例示することができる。なかでも本発明においては、炭素数が1〜50の範囲内であるアルキルアルコール類を用いることが好ましい。
【0042】
また、本発明においては上記他の化合物として1種類のみを用いてもよく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
本発明における受像層中の溶剤溶解性の熱溶融性化合物の含有量としては、熱転写シートから熱拡散性染料が転写される際に受像層を所望の程度に軟化でき、熱拡散性染料と金属イオン化合物とのキレート化反応を促進できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、受像層に含まれるバインダー樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜100重量部の範囲内であることが好ましく、特に1重量部〜50重量部の範囲内であることが好ましく、さらには1重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましい。溶剤溶解性の熱溶融性化合物の含有量が上記範囲よりも高いと、受像層における熱拡散性染料の熱拡散性の低下に伴って、金属イオン化合物とのキレート化反応が不十分となり、転写感度が低くなってしまう可能性があり、また、含有量が上記範囲よりも低いと、得られる画像の品質が低下してしまう可能性があるからである。
【0044】
(2)金属イオン化合物
次に、本発明における受像層に含まれる金属イオン化合物について説明する。本発明に用いられる金属イオン化合物は、熱拡散性染料とキレート化反応をすることにより、キレート型発色体を形成できるものであれば特に限定されない。このような金属イオン化合物としては、無機酸の塩、有機酸の塩および金属錯体を挙げることができるが、なかでも本発明においては金属錯体が好ましい。金属錯体は、金属イオンと配位子が配位結合により結合しているため、配位子交換により熱拡散性染料とキレート化反応を生じやすいからである。
【0045】
上記金属錯体を構成する金属種は、配位結合を形成することが可能な金属種であれば特に限定されない。このような金属種としては、通常、周期表において3〜12族に属する遷移金属が用いられる。本発明においては、上記遷移金属の中でも6〜12族に属する遷移金属を用いることが好ましく、さらには8〜12族に遷移金属を用いることが好ましい。このような遷移金属は多様な配位子と配位結合して金属錯体を形成することから、金属イオン化合物の選択の幅が広くなる利点を有するからである。
【0046】
上記8〜12族の遷移金属は、いずれも本発明における金属イオン化合物を構成する金属種として好適に用いることができるが、なかでも周期表において第4周期に属する金属種を用いることが好ましい。第4周期に属する金属種は比較的低コストで入手することができるからである。このような金属種としては、Ni、Cu、Fe、Co、および、Znが該当するが、本発明においては、特にNiを用いることが最も好ましい。
【0047】
本発明においては、上記金属錯体として下記式で表される構造を有する化合物を用いることが好ましい。下記式で表される化合物は有機アニオン基を有するため、当該有機アニオン基として、後述するバインダー樹脂や溶剤溶解性の熱溶融性化合物と相溶性の高いものを選択することにより、受像層における金属イオン化合物の偏在化防止が容易になるからである。
【0048】
[M(Q(Q(QP+(L
【0049】
(上記式中、Mは金属イオン、Q、QおよびQは金属イオン(M)と配位結合可能な配位化合物、Lは有機アニオン基を表す。またl、mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、Pは1または2を表す。)
【0050】
上記式中、本発明に用いられるQ、QおよびQは、受像層を構成するバインダー樹脂や熱拡散性染料の種類等に応じて、キレート化反応が可能なものを適宜選択して用いることができる。Q、QおよびQに用いられる配位化合物の具体例としては、例えば、「キレート科学(5)」(上野景平著 南江堂 1975年)に記載されている配位化合物を挙げることができる。また、本発明におけるQ、QおよびQの金属イオンへの配位形態は、4座配位でも6座配位でもよい。
【0051】
上記式で表される金属イオン化合物のQ、QおよびQはすべて同一でもよく、またすべて異なっていてもよいが、本発明においてはすべて同一であることが好ましい。Q、QおよびQがすべて同一であることによって、金属イオン化合物の合成が容易となる利点を有するからである。
【0052】
本発明においては、上記式で表される金属イオン化合物の中でも、l、m、およびnがすべて0である化合物を用いることが好ましい。l、m、およびnがすべて0であることにより、熱拡散性染料とのキレート化反応を生じやすくなるからである。なお、上記式において、l、m、およびnがすべて0である場合、金属イオン化合物は、M2+(Lにより表される。
【0053】
金属イオン化合物として、上記M2+(Lにより表される化合物を用いる場合、Lは同一でもよく、互いに異なってもよいが、本発明においてはLが同一である化合物を用いることが好ましい。Lが同一であることにより、金属イオン化合物の合成が容易となる利点を有するからである。
【0054】
上記式中、Lで表される有機アニオン基は、上記金属イオン化合物と熱拡散性染料とがキレート化反応を生じることにより、キレート型発色体を形成できるものであれば特に限定されない。本発明においては、このような有機アニオン基として、下記式で表されるものを用いることが好ましい。
【0055】
【化1】

【0056】
上記一般式において、Zは、アルキル基、アリール基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子または水素原子を表すが、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等のように、電子吸引性基が金属イオンを含有する化合物を安定化させるものが好ましく、この内アリールオキシカルボニル基およびアルコキシカルボニル基が溶解性の点で更に好ましい。上記アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基等が挙げられ、上記アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルコキシカルボニル基を挙げることができ、また、これらのアルコキシカルボニル基には、ハロゲン原子、アリール基およびアルコキシ基等が置換していてもよい。RおよびR´は、アルキル基またはアリール基を表し、それぞれ同じでも異なっていてもよく、RとZ或いはR´とZが結合して環を形成してもよいが、Zが水素原子の時、RおよびR´が共にメチル基となることはない。また、Z、RおよびR´で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基および2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基を挙げることができ、またこれらのアルキル基にはハロゲン原子、アリール基やアルコキシ基等が置換していてもよい。また、Z、RおよびR´で表されるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、それらは上記の置換基を有していてもよい。また、Zで表されるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基およびブトキシ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルコキシ基を挙げることができ、またハロゲン原子として好ましくは塩素原子を挙げることができる。
【0057】
また、上述したように、本発明に用いられる金属イオン含有化合物の金属は、Niであることが最も好ましい。そこで、Niを含有する金属イオン含有化合物を、下記(a)〜(p)に例示する。本発明においては、特に、金属イオン含有化合物(l)が好ましい。
【0058】
【化2】

【0059】
【化3】

【0060】
【化4】

【0061】
【化5】

【0062】
上記式で表される金属イオン化合物の具体例としては、例えば、米国特許第4987049号明細書や、特開平9−39423号公報に例示される化合物を挙げることができる。また、本発明においては、金属イオン化合物は一種類でもよく、必要に応じて二種類以上を混合して用いてもよい。
【0063】
本発明における受像層に含まれる金属イオン化合物の含有量は、熱拡散転写方式により所望の印画速度で画像を形成できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、単位面積あたりの受像層を構成する固形分中、0.3g/m〜20g/mの範囲内であることが好ましく、特に0.5g/m〜5g/mの範囲内であることが好ましい。金属イオン化合物の含有量が上記範囲よりも多いと、熱拡散転写方式により得られる画質に金属イオン化合物の色味が現れることにより、画像品質が損なわれる場合があり、また含有量が上記範囲よりも少ないと、熱拡散転写方式において所望の印画速度が得られなくなってしまう可能性があるからである。
【0064】
ここで、上記受像層中に含まれる金属イオン化合物の含有量は、例えば、一定面積の層を溶剤等で抽出し、液体クロマトグラフ・質量分析法による分析によって測定することができる。また、金属イオンの含有量であれば誘導結合プラズマ・発光分光法により測定することが可能である。
【0065】
(3)バインダー樹脂
次に、本発明における受像層に含まれるバインダー樹脂について説明する。本発明に用いられるバインダー樹脂は、熱転写シートから熱拡散性染料が転写される際の加熱温度に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に限定されない。なかでも本発明においては、Tgが30℃〜200℃の範囲内、特に50℃〜150℃の範囲内であるバインダー樹脂を用いることが最も好ましい。バインダー樹脂のTgが上記範囲よりも低いと、熱拡散性染料の転写時に、本発明の熱転写受像シートと熱転写シートが融着してしまう場合があり、またTgが上記範囲よりも高いと熱拡散性染料の転写感度が低下し、所望の高速印特性を得ることができない可能性があるからである。
【0066】
本発明に用いられるバインダー樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、エチレンやプロピレンなどのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アイオノマー、セルロース誘導体等を挙げることができる。本発明においては、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体、または、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のビニル系樹脂を用いることが好ましい。
【0067】
上記塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体の重合度は、300〜800の範囲内であることが好ましく、なかでも400〜500の範囲内であることが好ましい。また、上記塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体のTgは、60℃〜85℃の範囲内であることが好ましく、なかでも70℃〜80℃の範囲内であることが好ましい。
【0068】
上記ポリビニルアセタール樹脂および上記ポリビニルブチラール樹脂の分子量は、20000〜150000の範囲内であることが好ましく、なかでも60000〜130000の範囲内であることが好ましい。また、上記ポリビニルアセタール樹脂および上記ポリビニルブチラール樹脂のTgは、60℃〜110℃の範囲内であることが好ましく、なかでも60℃〜90℃の範囲内であることが好ましい。
【0069】
なお、本発明においてはこれらのバインダー樹脂を、1種類のみ用いてもよく、または2種類以上を混合物して用いてもよい。
【0070】
(4)非イオン性界面活性剤
本発明においては、受像層に非イオン性界面活性剤が含まれることが好ましい。上記受像層に非イオン性界面活性剤を含むことにより、上記溶剤溶解性の熱溶融性化合物と、上記バインダー樹脂との相溶性をより一層高めることができるため、受像層における金属イオン化合物の偏在化をさらに防止することができるからである。
【0071】
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤は、受像層を構成するバインダー樹脂と相溶性を示し、受像層の均質化に寄与できるものであれば特に限定されない。このような非イオン性界面活性剤として、例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンステロール及びその誘導体、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン及びその誘導体、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルカノールアミド、シュガーエステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油ピログルタミン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルピログルタミン酸エステル等を挙げることができる。なかでも本発明においては、脂肪酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。脂肪酸エステル系界面活性剤は、上記バインダー樹脂と相溶性を示すのみならず、上記溶剤溶解性の熱溶融性化合物とも相溶性を示す場合が多いため、受像層の均質化効果を向上できるからである。
【0072】
このような脂肪酸エステル系界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油ピログルタミン酸エステルおよびポリオキシエチレングリセリルピログルタミン酸エステルを挙げることができる。なかでも本発明においては、ソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましく、さらには、ポリオキシレンエチレン基を有するソルビタン脂肪酸エステルを用いることが好ましい。
【0073】
上記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等を挙げることができる。
【0074】
また、本発明に用いられる上記ソルビタン脂肪酸エステルは、市販品を用いることも可能である。このような市販品としては、例えば、レオドールSP−L10,同SP−P10,同SP−S10,同SP−S30,同SP−O10,同SP−O30,同AS−10,同AO−10,同AO−15,レオドールスーパーSP−L20,同SP−S10,エマゾールL−10(F),同P−10(F),同S−10(F),同O−10(F),同O−30,同O−15R,同S−20,エマゾールスーパーL−10(F),同S−10(F)(以上、花王社製)等を挙げることができる。
【0075】
上記ポリオキシレンエチレン基を有するソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等を挙げることができる。
【0076】
また、本発明に用いられるポリオキシレンエチレン基を有するソルビタン脂肪酸エステルは、市販品を用いることも可能である。このような市販品としては、例えば、レオドールTW−L120,同TW−L106,同TW−P120,同TW−S120,同TW−S106,同TW−S320,同TW−O120,同TW−O106,同TW−O320,レオドールスーパーTW−L120,同TW−S120,同TW−O120,アマゾールO−105R(以上、花王社製)等を挙げることができる。
【0077】
上記受像層に非イオン性界面活性剤を含有させる場合、その含有量としては、非イオン性界面活性剤の種類等に応じて任意に決定することができるが、通常、受像層に含まれるバインダー樹脂100重量部に対して、10重量部〜100重量部の範囲内であることが好ましく、特に10重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましい。非イオン性界面活性剤の含有量が上記範囲よりも少ないと、熱拡散性染料と金属イオン化合物とのキレート化反応が不十分となり、転写感度が低くなってしまう場合があり、また、含有量が上記範囲よりも多いと、得られる画像の品質が低下してしまう可能性があるからである。
【0078】
(5)その他の化合物
本発明における受像層には、本発明の目的を損なわない範囲で上記以外の他の化合物を含有することができる。他の化合物としては、離型剤、UV吸収剤、光安定化剤、フィラー(無機微粒子、有機樹脂粒子)、顔料、および、可塑剤を挙げることができる。
【0079】
(離型剤)
本発明に用いることができる離型剤としては、熱拡散性染料の転写時に、熱転写シートと熱転写受像シートとが融着することを防止できるものであれば特に限定されない。このような離型剤としては、例えば、シリコーンオイル(シリコーン樹脂と称されるものも含む。);ポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固型ワックス類;弗素系、燐酸エステル系の界面活性剤等を挙げることができるが、なかでもシリコーンオイルが好ましい。このシリコーンオイルは、単に添加するタイプ(単純添加型)と、硬化もしくは反応させるタイプ(硬化反応型)とがある。
【0080】
上記単純添加型の場合には、バインダー樹脂との相溶性を向上させるために、変性シリコーンオイル(例えばポリエステル変性シリコン樹脂、ウレタン変性シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂等)を使用するのが好ましい。これらの単純添加型のシリコーンオイルの添加量は、その種類に応じて様々に変化することがあるから一律に決定することができないが、受像層用バインダー樹脂100重量部に対して0.1重量部〜50重量部の範囲内が好ましく、特に0.5重量部〜20重量部の範囲内が好ましい。添加量が上記範囲よりも多いと、得られる画像の品質が低下してしまう場合があり、また上記範囲よりも少ないと、熱転写シートと熱転写受像シートとが密着することによって、印画不良が生じる可能性があるからである。
【0081】
上記硬化反応型のシリコーンオイルとしては、反応硬化型(アミノ変性シリコーンオイルとエポキシ変性シリコーンオイルとを反応硬化させたもの)、光硬化型、触媒硬化型等が挙げられる。これら硬化型シリコーンオイルの添加量は、通常、受像層を構成するバインダー樹脂100重量部に対して、0.1重量部〜50重量部の範囲内が好ましく、特に0.5重量部〜30重量部の範囲内が好ましい。添加量が上記範囲よりも多いと、得られる画像の品質が低下してしまう場合があり、また上記範囲よりも少ないと、熱転写シートと熱転写受像シートとが密着することによって、印画不良が生じる可能性があるからである。
【0082】
(UV吸収剤および光安定剤)
本発明に用いることができるUV吸収剤および光安定剤としては、本発明の熱転写受像シートを用いて形成される熱転写印画物の耐光性を向上する機能を有するものであれば特に限定されない。このようなUV吸収剤および光安定剤としては、例えば、特開昭59−158287号、同63−74686号、同63−145089号、同59−196292号、同62−229594号、同63−122596号、同61−283595号、特開平1−204788号などの公報に記載の化合物、および、写真その他の画像記録材料における画像耐久性を改善するものとして公知の化合物を挙げることができる。
【0083】
(フィラー)
本発明に用いることができるフィラーとしては、受像層に含有することにより、熱転写受像シートに対する熱転写シートの滑り性を向上する機能を有し、本発明の熱転写受像シートに所望の高速印画特性を付与できるものであれば特に限定されず、一般的な無機微粒子や有機樹脂粒子を用いることができる。
【0084】
上記無機微粒子としては、例えば、シリカゲル、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸性白土、活性白土、アルミナ等を挙げることができる。
【0085】
また、上記有機微粒子としては、例えば、フッ素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子等の樹脂粒子を挙げることができる。
【0086】
これらのフィラー含有量は、フィラーの比重等に応じて、任意に決定することができる。
【0087】
(顔料)
本発明に用いることができる顔料としては、上記受像層に含有することにより、本発明の熱転写受像シートによって形成される画像品質を向上する機能を有するものであれば特に限定されない。このような顔料としては、例えば、チタンホワイト、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、シリカ、タルク、クレー、カオリン、活性白土、酸性白土などを挙げることができる。このような顔料の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲で任意に決定して用いることができる。
【0088】
(可塑剤)
本発明に用いることができる可塑剤としては、受像層に含むことにより、受像層における熱拡散性染料の拡散性を向上する機能を有するものであれば特に限定されない。このような可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル類、トリメリット酸エステル類、アジピン酸エステル類、その他飽和あるいは不飽和カルボン酸エステル類、クエン酸エステル類、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸エポキシ類、正リン酸エステル類、亜燐酸エステル類、グリコールエステル類などが挙げられる。これらの可塑剤の含有量は、可塑剤の種類等に応じて本発明の目的を損なわない範囲で任意に決定することができる。
【0089】
(6)受像層
本発明における受像層の構成は、単層としてもよく、必要に応じて2層以上の複数層としてもよい。複数層とする場合には、組成等が同一の層を積層してもよく、また、組成が互いに異なる層を積層してもよい。
【0090】
本発明における受像層の厚みは、本発明の熱転写受像シートの用途等に応じて任意に決定することができるが、通常、0.5μm〜50μmの範囲内であることが好ましく、特に1μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。受像層の厚みが上記範囲より薄いと、受像層の機械強度が低下することによって「割れ」や「裂け」等が発生する可能性が有り、また厚みが上記範囲よりも厚いと平面性に優れた受像層を形成するのが困難となる場合があるからである。
【0091】
2.基材シート
次に、本発明に用いられる基材シートについて説明する。本発明に用いられる基材シートは、基材シート上に形成される受像層を支持し、本発明の熱転写受像シートの自己支持性を発現する機能を有するものである。
【0092】
本発明に用いられる基材シートとしては、熱拡散転写方式による印画時の加熱処理に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に限定されない。このような基材シートとしては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフイルムが挙げることができる。また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シートも使用できる。さらに、上記材料から構成される基材シートを本発明の目的を損なわない範囲で、任意に組み合わせて使用してもよい。
【0093】
また、本発明においては、基材シートの表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。このような処理を実施することにより基材シート表面物性を改質することができ、例えば、基材シートと上記受像層の密着力を向上することができる等の効果を得ることができるからである。
【0094】
本発明に用いられる基材シートの厚みは、本発明の熱転写受像シートに所望の自己支持性を付与することができる範囲であれば特に限定されないが、通常、0.5μm〜30μmの範囲内であることが好ましく、特に2μm〜10μmの範囲内であることが好ましい。基材シートとの厚みが上記範囲よりも厚いと、ハンドリング性が悪化する場合があり、また上記範囲よりも薄いと熱拡散転写方式による印画の際にカール等の変形が生じる可能性あるからである。
【0095】
本発明に用いられる基材シートの形態は、熱拡散転写装置の種類等に応じて任意に決定することができる。本発明に用いられる基材シートの形態としては、例えば、一定の長さを巻き取ったロール形態や、一定サイズのカード形態を挙げることができる。
【0096】
3.熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、必要に応じて受像層以外の他の層を有してもよい。このような他の層としては、例えば、受像層と基材シートとの間に形成され、耐熱性、バリアー性、クッション性および接着性等を付与する中間層、受像層上に形成され、熱拡散性染料の転写時に熱転写シートと熱転写受像シートとの融着防止等の機能を有するオーバーコート層、受像層とは反対側の基材シート上に形成され、帯電防止、カール防止、複数枚給紙防止性および筆記特性付与等の機能を有するバッキング層を挙げることができる。
【0097】
4.熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートの製造方法としては、基材シート上に膜厚が均質で、平面性に優れた受像層を形成できる方法であれば特に限定されない。基材シート上に受像層を形成する方法としては、基材シート上に受像層形成用組成物を塗布する方法と、溶融押し出し法等の他の方法により予め形成したフイルムを基材シート上にラミネートする方法等を挙げることができる。なかでも本発明においては、基材シート上に受像層形成用組成物を塗布する方法が好ましい。このような方法によれば、容易に平面性に優れた受像層を形成することができるからである。以下のこのような熱転写受像シートの製造方法について説明する。
【0098】
(1)受像層形成用組成物
上記受像層形成用組成物は、通常、金属イオン化合物と、バインダー樹脂と、溶剤溶解性の熱溶融性化合物と、溶媒とからなり、必要に応じて他の化合物を含んでもよい。以下、本発明に用いられる受像層形成用組成物について説明する。
【0099】
(金属イオン化合物)
受像層形成用組成物に用いられる金属イオン化合物としては、上記「1.受像層」の(2)金属イオン化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0100】
上記受像層形成用組成物中における金属イオン化合物の含有量としては、本発明の熱転写受像シートを用いて形成される画像の品質を損なわず、かつ所望の転写感度を達成できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、受像層形成用組成物に含まれるバインダー樹脂100重量部に対して5重量部〜80重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも10重量部〜70重量部の範囲内であることが好ましい。金属イオン化合物の含有量が上記範囲よりも多いと、金属イオン化合物の色味が本発明の熱転写受像シートに現れてしまい、本発明の熱転写受像シートを用いて形成される熱転写印画物の画質が損なわれてしまう場合があるからである。また含有量が上記範囲よりも少ないと、所望の転写感度を得ることができない可能性があるからである。
【0101】
(バインダー樹脂)
上記受像層形成用組成物に用いられるバインダー樹脂としては、上記「1.受像層」の(3)バインダー樹脂の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0102】
上記受像層形成用組成物中におけるバインダー樹脂の含有量は、受像層形成用組成物を基材シート上へ塗布する方式等に応じて任意に決定することができるが、通常、受像層形成用組成物の固形分に対して、2質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、特に5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。バインダー樹脂の含有量が、上記範囲よりも少ないと、形成される受像層の機械強度が損なわれる場合があり、また含有量が上記範囲よりも多いと、熱拡散性染料の拡散性が低下し、所望の転写感度を得ることができない場合があるからである。
【0103】
(溶剤溶解性の熱溶融性化合物)
上記受像層形成用組成物に用いられる溶剤溶解性の熱溶融性化合物としては、上記「1.受像層」の(1)溶剤溶解性の熱溶融性化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0104】
上記受像層形成用組成物中における溶剤溶解性の熱溶融性化合物の含有量としては、受像層を均質化し、受像層形成用組成物において金属イオン化合物の偏在化防止に寄与できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては、溶剤溶解性の熱溶融性化合物の含有量は、受像層形成用組成物に含まれるバインダー樹脂100重量部に対して0.1重量部〜100重量部の範囲内であることが好ましく、特に1重量部〜50重量部の範囲内であることが好ましく、なかでも1重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましい。溶剤溶解性の熱溶融性化合物の含有量が上記範囲よりも多いと、本発明の熱転写受像シートを用いた熱転写印画物の画質が損なわれる場合があり、また含有量が上記範囲よりも少ないと、受像層において金属イオン化合物が偏在化し、本発明の熱転写受像シートを用いた熱転写印画物の画像の耐光性や耐熱性が低下してしまう可能性があるからである。
【0105】
(溶媒)
上記受像層形成用組成物に用いられる溶媒としては、上記金属イオン化合物、バインダー樹脂、溶剤溶解性の熱溶融性化合物および後述する他の化合物を所望の濃度に溶解できるものであれば特に限定されない。このような溶媒としては、例えば、水、エタノールやプロパノール等のアルコール類、メチルセロソルブやエチルセロソルブ等のセロソルブ類、トルエン、キシレンおよびクロロベンゼン等の芳香族類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフランやジオキサン等のエーテル類、クロロホルムやトリクロロエチレン等の塩素系溶媒等を挙げることができる。これらの溶媒は単体として用いてもよく、また必要に応じて2種類以上の混合溶媒として用いてもよい。なかでも本発明においては、上記溶媒のうち、芳香族類、ケトン類またはこれらの混合溶媒を用いることが好ましく、特にトルエンとメチルエチルケトンとの混合溶媒を用いることが最も好ましい。
【0106】
(他の化合物)
上記受像層形成用組成物には、必要に応じて他の化合物を含有させてもよい。他の化合物を含有することにより、受像層に本発明の熱転写受像シートの用途等に応じた付加機能を付与できるからである。なかでも本発明においては、他の化合物として非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。非イオン性界面活性剤を含むことにより、受像層形成用組成物中において上記金属イオン化合物をより均質に溶解することができるからである。
【0107】
上記受像層形成用組成物に用いられる非イオン性界面活性剤としては、上記「1.受像層」の(4)非イオン性界面活性剤の項において記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0108】
上記受像層形成用組成物中の非イオン界面活性剤の含有量としては、受像層形成用組成物中における金属イオン化合物の均一化に寄与できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、受像層形成用組成物中に含まれるバインダー樹脂100重量部に対して、10重量部〜100重量部の範囲内であることが好ましく、特に10重量部〜30重量部の範囲内であることが好ましい。
【0109】
上記他の化合物としては、上記非イオン性界面活性剤以外に、離型剤、UV吸収剤、光安定化剤、フィラー(無機微粒子、有機樹脂粒子)、顔料、および可塑剤等を用いることができる。このような他の化合物については、上記「1.受像層」の(5)その他の化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0110】
(2)受像層の形成方法
本発明における受像層は、通常、上記受像層形成用組成物を、上記基材シート上に塗布し、塗膜を乾燥することにより形成する。
【0111】
上記受像層形成用組成物を基材シートへ塗布する方式としては、厚みが均一で、かつ所望の平面性を達成できる方法であれば特に限定されるものではない。本発明に用いることができる塗布方式としては、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。
【0112】
上記受像層形成用組成物の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本発明における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
【0113】
B.熱転写印画物
次に本発明の熱転写印画物について説明する。本発明の熱転写印画物は、基材シートと、上記基材シート上に形成され、金属イオン化合物と熱拡散性染料とが結合してなるキレート型発色体およびバインダー樹脂を含む受像層と、を有するものである。
【0114】
次に、本発明の熱転写印画物について図を参照しながら説明する。図2は本発明の熱転写印画物の一例を示す概略断面図である。図2に示すように本発明の熱転写印画物21は、基材シート1と、基材シート1上に形成され、金属イオン化合物と熱拡散性染料とが結合してなるキレート型発色体とバインダー樹脂を含む受像層2’とを有するものである。また、図2に例示するように本発明の熱転写印画物は、上記受像層2’上に保護層3が形成されたものであってもよい。
【0115】
本発明の熱転写印画物は、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする、第一態様の熱転写印画物と、上記受像層において、飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる上記受像層の内部に含まれる上記キレート型発色体および上記受像層の表面に付着した上記キレート型発色体のトータルのピーク強度をD(all)、受像層表面から受像層内部へ0.5μm入ったところよりも表面側に存在する上記キレート型発色体のピーク強度をD(s)としたとき、D(s)/D(all)×100(%)(以下、単に「色素表面偏在比率」と称する場合がある。)が60%以下であることを特徴とする第二態様の熱転写印画物と、に分けることができる。
【0116】
本発明の第一態様の熱転写印画物は、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする。本態様によれば上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことにより、キレート型発色体が受像層において偏在することを防止できるため、耐久性に優れた熱転写印画物を得ることができる。
【0117】
一方、本発明の第二態様の熱転写印画物は、上記色素表面偏在比率が60%以下であることにより、耐久性に優れた熱転写印画物を得ることができる。
【0118】
ポストキレート法を採用することにより、熱拡散転写方式により得られる画像の耐光性や耐熱性などの耐久性を向上できる。しかし、このようなポストキレート法による画像耐久性の向上効果を得るには、熱転写シートから転写される熱拡散性染料と、受像層に存在する金属イオン化合物とがキレート化反応を生ずることにより生成するキレート型発色体が、受像層においてある程度均一に分布している必要がある。例えば上記キレート型発色体が受像層の表面近傍に偏在している場合には、画像の耐光性が低下してしまい、また逆にキレート型発色体が上記基材シート近接領域に偏在している場合には、鮮明な画像を得ることができない。従来、ポストキレート法による熱拡散転写方式で得られる画像は、キレート型発色体が受像層の表面近傍に偏在している場合が多く、ポストキレート法による耐光性向上効果を十分に得ることができないといった問題があった。
【0119】
しかしながら、本発明の第一態様の熱転写印画物によれば、受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことにより上記キレート型発色体が受像層の表面近傍に偏在することを防止できるため、耐光性に優れた熱転写印画物を容易に得ることができる。
【0120】
また、本発明の第二態様の熱転写印画物によれば、上記色素表面偏在比率が60%以下であることにより、耐光性に優れ、かつ鮮明度等に優れた高画質の熱転写印画物を得ることができる。
【0121】
以下の本発明の熱転写印画物の各構成について、第一態様の熱転写印画物と、第二態様の熱転写印画物とに分けて説明する。
【0122】
B−1:第一態様の熱転写印画物
まず、本発明における第一態様の熱転写印画物について説明する。本発明における第一態様の熱転写印画物は、上記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とするものである。
【0123】
1.受像層
まず、第一態様の熱転写印画物における受像層について説明する。本態様に用いられる受像層は、金属イオン化合物と熱拡散性染料とが結合してなるキレート型発色体およびバインダー樹脂を含み、かつ、溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とするものである。
【0124】
(1)溶剤溶解性の熱溶融性化合物
本態様の熱転写印画物に用いられる溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、上記「A−1:熱転写受像シート」の1.受像層、(1)溶剤溶解性の熱溶融性化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0125】
(2)熱拡散性染料
本態様に用いられる熱拡散性染料は、上記金属イオン含有化合物とキレート化反応を生ずることにより、キレート型発色体を形成することが可能なものであれば、特に限定されるものではなく、一般的なシアン染料、マゼンダ染料、イエロー染料等を使用することができる。なかでも、本態様においては、下記一般式(I)〜(V)で表される熱拡散性染料であることが好ましい。
【0126】
a.一般式(I)で表される熱拡散性染料
【0127】
【化6】

【0128】
式中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、及びアルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。R12はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を表す。R12が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基は、上記R11おけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0129】
12が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基は、上記R11で表される置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。R12としては、アルキル基が好ましい。
【0130】
13及びR14は水素原子または置換基を表す。R13及びR14が表す置換基としては、上記R11で表される置換基と同様の基を挙げることができ、これらの置換基は、さらに同様の置換基によって置換されていてもよい。R13及びR14としては、水素原子、アルキル基及びアリール基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0131】
15、R16、R17及びR18が表すアルキル基及びアリール基は、上記R11おけるアルキル基及びアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0132】
15、R16、R17及びR18が表すアルキル基及びアリール基は、上記R11で表される置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。R15、R16、R17及びR18としては、水素原子が好ましい。
【0133】
11は5又は6員の含窒素複素環を形成するために必要な非金属原子群を表す。
【0134】
このような複素環の具体例として、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、チアゾール環、オキサゾール環、キノリン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等の各環を挙げることができる。好ましくは、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環であり、特に好ましくは、ピリジン環である。これらの環は置換基を有していてもよく、置換基としては、上記R11で表される置換基と同様の基を挙げることができる。
【0135】
b.一般式(II)で表される熱拡散性染料
【0136】
【化7】

【0137】
式中、R21は、トリフルオロメチル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基を表し、R22は、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基を表し、R23は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。但し、R21とR22の炭素数の総和は3以上である。X21は、−CR2425−、−S−、−O−、−NR26−を表し、R24、R25は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、置換基としては、上述した一般式(I)における置換基と同様であるので、ここでの説明は省略する。R26は、水素原子、置換基を表し、置換基としては上記R24、R25の例として挙げたものと同様の置換基が挙げられる。Y21は、5〜6員環を形成するのに必要な原子群を表す。好ましくは、6員環を形成するのに必要な原子群である。例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ピリジン環、ナフタレン環などが挙げられるが、好ましくは、ベンゼン環である。
【0138】
c.一般式(III)で表される熱拡散性染料
【0139】
【化8】

【0140】
式中、Y31は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、シアノ基、パーフルオロアルキル基を示し、Z31、Z32は−CR32=または−N=を表し、L31は下記一般式(III-a)で表される基を表し、複素環を形成するのに必要な非金属原子群B31を含む。一般式(III-a)で表される基としては、2−ピロリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、3−ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、2−ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、3H−インドドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノザリニル基、キナゾリニル基等を表す。これら複素環は更に置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えば、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)が挙げられる。
【0141】
31は、無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、置換基としては、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基が挙げられる。R31は置換または無置換のアルキル基を表し、nは0以上の整数を表す。R32は水素原子または置換基を表す。置換基としてはアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0142】
【化9】

【0143】
式中、B31は複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0144】
d.一般式(IV)で表される熱拡散性染料
【0145】
【化10】

【0146】
式中、Y41は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、シアノ基、パーフルオロアルキル基を表し、Z41、Z42は−CR43=または−N=を表し、L41は一般式(IV-a)、(IV-b)で表される基を表し、X41は、無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、置換基としては、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基が挙げられる。R41は置換または無置換のアルキル基を表し、R43は水素原子または置換基を表し、nは0以上の整数を表す。置換基としてはアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0147】
【化11】

【0148】
式中、R42は水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、Rbは置換基を表し、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えばピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)等が挙げられる。pは0〜4の整数を表し、Bは−CR42=と共に複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0149】
e.一般式(V)で表される熱拡散性染料
【0150】
【化12】

【0151】
式中、R51及びR52はそれぞれ、置換又は無置換の脂肪族基を表し、R53は置換基を表す。脂肪族基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。これらのアルキル基を置換しうる基としては、直鎖あるいは分岐のアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、複素環基等が挙げられる。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の時、複数のR53は同じでも異なってもよい。R55、R56はアルキル基を表す。但し、R55、R56の少なくとも1つは2級アルキル基を表す。
【0152】
(3)金属イオン化合物
本態様の熱転写印画物に用いられる金属イオン化合物は、上記「A.熱転写受像シート」の1.受像層、(2)金属イオン化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0153】
(4)キレート型発色体
本態様の熱転写印画物に用いられるキレート型発色体は、上記熱拡散性染料と上記金属イオン化合物とが結合してなり、熱拡散性染料の種類に応じて所望の発色性を有するものであれば特に限定されない。
【0154】
本態様においては、キレート型発色体の上記色素表面偏在比率が60%以下であることが好ましい。上記色素表面偏在比率が上記範囲であることにより、耐光性に優れた熱転写印画物を得ることができるからである。なかでも本態様においては、上記色素表面偏在比率が10%〜50%の範囲内であることが好ましく、特に15%〜40%の範囲内であることが好ましい。色素表面偏在比率が上記範囲よりも多いと、キレート型発色体が受像層の表面近傍に偏在することによって、熱転写印画物の用途によっては十分な耐光性が得られない場合があるからである。また上記範囲よりも少ないと、熱転写印画物の鮮明度等が損なわれ、品質低下が生じる可能性があるからである。
【0155】
ここで、上記色素表面偏在比率は、飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる上記受像層の内部に含まれる上記キレート型発色体および上記受像層の表面に付着した上記キレート型発色体のトータルのピーク強度をD(all)と、受像層表面から受像層内部へ0.5μm入ったところよりも表面側に存在する上記キレート型発色体のピーク強度をD(s)とを用いて、D(s)/D(all)×100(%)で表されるものであるが、上記D(s)および上記D(all)を、飛行時間型二次イオン質量分析法によって求める際の測定条件としては、精度よく上記D(s)および上記D(all)を求めることができる条件であれば特に限定されない。このような測定条件としては、例えば、以下の条件を挙げることができる。
【0156】
・測定装置 : Physical Electronics社製2100TRIFT2
・一次イオン : In
・一次イオン加速電圧 : 25kV
・一次イオン電流 : 1nA(メカニカルバリアブルアパーチャー#2を使用)
・パルス幅:10ns
・測定質量範囲:0.5−2000Da
なお、測定および解析はPhysical Electronics社製Win−Cadence Ver4.0.0.14にて行った。
【0157】
ここで、本発明における「上記キレート型発色体のピーク強度」とは、上記飛行時間型二次イオン質量分析法によって測定される上記キレート型発色体に由来する質量数のピークの積分強度を指すものである。
【0158】
なお、試料によっては一次イオン照射および二次イオン放出により試料表面の電荷バランスが崩れて試料表面が帯電し、二次イオン放出が正常に行われないことがあるが、そのような場合には電子銃(フラットガン)や測定装置に付属の帯電補正用メッシュを用いてチャージアップを低減することが好ましい。
【0159】
また、測定面積については飛行時間型二次イオン質量分析法の空間分解能は約0.1〜0.2μmであるので、受像層が薄いために十分な空間分解能が得られない場合には測定面の作成方法を適宜選択し、十分な空間分解能を得ることができる測定面積を確保することが好ましい。
【0160】
その他の測定条件については、得られる質量スペクトルの質量、空間分解能を勘案し、適宜最適化すればよい。
【0161】
上記飛行時間型二次イオン質量分析法のデータの解析には測定装置に付属のソフトウエアを用いることができる。上記条件で測定したデータ解析には、Physical Electronics社製Win−Cadence Ver4.0.0.14を好適に用いることができる。具体的な解析手法としては、まず、上記条件によって受像層内の全2次イオンのマッピングデータをRaw Data形式で取得する。このとき、測定時間は適宜選択できるが目的のキレート型発色体のピークが十分な強度で得られる時間を選択することが望ましい。上記条件においては45分が好ましく用いられる。
【0162】
Raw Data取得後は、受像層の各深さに由来する分子イオンやフラグメントイオンのイメージを再構成する。この再構成作業により目的とする深さの位置が明確になる。次いで上記ソフトウエアのRigon of Interest(ROI)機能を用いて、ピーク強度を比較する領域を指定し、この領域の二次イオンスペクトルを再構成する。この作業を目的の領域について行うことによりピーク強度を求めることができる。
【0163】
(5)その他の化合物
本態様の熱転写印画物を構成する受像層には、上記の化合物以外に非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。本態様に用いられる非イオン性界面活性剤としては、上記「A.熱転写受像シート」の1.受像層、(4)非イオン性界面活性剤の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0164】
また、本態様における受像層には、本発明の目的を損なわない範囲で上記以外の他の化合物を含有することができる。他の化合物としては、離型剤、UV吸収剤、光安定化剤、フィラー(無機微粒子、有機樹脂粒子)、顔料、および可塑剤を挙げることができる。これらの化合物は、上記「A.熱転写受像シート」の1.受像層、(5)その他の化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0165】
(6)受像層
本態様における受像層の層構成および厚みは、上記「A.熱転写受像シート」の、1.受像層、(6)受像層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0166】
2.基材シート
本態様の熱転写印画物に用いられる基材シートは、上記「A.熱転写受像シート」の、2.基材シートの項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0167】
3.熱転写印画物
本態様の熱転写印画物は、必要に応じて受像層以外の他の層を有してもよい。本態様の熱転写印画物に用いることができる他の層としては保護層を挙げることができる。このような保護層を形成することにより、画像形成された受像層を例えば、磨耗や引っかき傷等の物理的損傷から保護できる点において、保護層を用いることが特に好ましい。
【0168】
本態様の熱転写印画物に保護層を用いる場合の一例を図2に示す。図2に示すように、本態様の熱転写印画物に保護層を用いる場合には、受像層2’上に、保護層3を形成することが好ましい。
【0169】
上記保護層を形成する材料は、本態様の熱転写印画物を物理的損傷から保護できる機械強度を備え、かつ本態様の熱転写印画物の画質を損なわないものであれば特に限定されない。本態様における保護層を形成する材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、これらの各樹脂のエポキシ変性樹脂、これらの樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等を例示することができる。本態様においては、中でも保護層を形成する材料として、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ変性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、および紫外線遮断性樹脂を用いることが好ましい。
【0170】
(ポリエステル樹脂)
上記ポリエステル樹脂としては、ジオール成分および酸成分が1種類以上の脂環族化合物を有する脂環族ポリエステル樹脂が好ましい。ポリカーボネート樹脂としては、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましく、特開平11−151867号に記載された芳香族ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。
【0171】
(エポキシ樹脂)
上記エポキシ変性樹脂としてはエポキシ変性ウレタン、エポキシ変性ポリエチレン、エポキシ変性ポリエチレンテレフタレート、エポキシ変性ポリフェニルサルファイト、エポキシ変性セルロース、エポキシ変性ポリプロピレン、エポキシ変性ポリ塩化ビニル、エポキシ変性ポリカーボネート、エポキシ変性アクリル、エポキシ変性ポリスチレン、エポキシ変性ポリメチルメタクリレート、エポキシ変性シリコーン、エポキシ変性ポリスチレンとエポキシ変性ポリメチルメタクリレートの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性ポリスチレンの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性シリコーンの共重合体が挙げられ、好ましくはエポキシ変性アクリル、エポキシ変性ポリスチレン、エポキシ変性ポリメチルメタクリレート、エポキシ変性シリコーンであり、更に好ましくはエポキシ変性ポリスチレンとエポキシ変性ポリメチルメタクリレートの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性ポリスチレンの共重合体、エポキシ変性アクリルとエポキシ変性シリコーンの共重合体である。
【0172】
(放射線硬化性樹脂)
上記放射線硬化性樹脂としては公知のものを特別の制限なく使用することができ、例えば、ラジカル重合性のポリマー又はオリゴマーを電離放射線照射により架橋、硬化させ、必要に応じて光重合開始剤を添加し、電子線や紫外線によって重合架橋させたものを使用することができる。
【0173】
(紫外線吸収性樹脂)
本態様における保護層には、紫外線吸収性樹脂を含むことが好ましい。紫外線吸収性樹脂を含むことにより、画像形成された印画物の物理的損傷を防止できるだけでなく、印画物に耐光性を付与することができるからである。本態様に用いられる紫外線吸収性樹脂としては、例えば、反応性紫外線吸収剤を熱可塑性樹脂又は上記の放射線硬化性樹脂に反応、結合させて得た樹脂を使用することができる。具体的には、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系のような従来公知の非反応性の有機系紫外線吸収剤に、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基のような反応性基を導入したものを例示することができる。
【0174】
本態様においては、上記の樹脂の中でもアクリル樹脂、ポリエステル樹脂を用いることが最も好ましい。
【0175】
上記保護層の厚みは、保護層を構成する材料の種類や、本態様の熱転写印画物の使用方法等に応じて所望の機械強度を得ることができる範囲内であれば特に限定されないが、通常、1μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.5μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。保護層の厚みが上記範囲よりも薄いと、所望の機械強度を得ることができない場合があり、また、上記範囲よりも厚いと本態様の熱転写印画物の画像品質を損なう可能性があるからである。
【0176】
上記保護層の構成は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。保護層が複層構造である場合、その層構成としては、2層以上であれば特に限定されるものではなく、任意の層構成をとることができる。また、保護層は、表面に接着層を有していてもよい。この場合、保護層および接着層を含めて、本発明における保護層とみなすことができる。従って、保護層が表面に接着層を有する場合、上記の紫外線吸収性共重合体は、保護層および接着層の少なくとも一方に含まれていればよい。
【0177】
上記保護層以外に、本態様の熱転写印画物に用いることができる他の層としては、受像層と基材シートとの間に形成され、耐熱性、バリアー性、クッション性および接着性等を付与する中間層、受像層上に形成され、熱拡散性染料の転写時に熱転写シートと熱転写受像シートとの融着防止等の機能を有するオーバーコート層、受像層と反対側の基材シート上に形成され、帯電防止、カール防止、複数枚給紙防止性および筆記特性付与等の機能を有するバッキング層を挙げることができる。
【0178】
本態様の熱転写印画物の厚みは、熱転写印画物の用途等に応じて所望の強度を得ることができる範囲内であれば特に限定されないが、100μm〜400μmの範囲内であることが好ましく、特に200μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、コスト的に不利となってしまう場合があり、また厚みが上記範囲よりも薄いと、経時で変形等が生じる可能性があるからである。
【0179】
4.熱転写印画物の形成方法
本態様の熱転写印画物は、上記「A.熱転写受像シート」の項において記載した、本発明の熱転写受像シートを用いることにより容易に形成することができる。すなわち、上記本発明の熱転写受像シートの受像層に、上記の熱拡散性染料を含有する熱転写シートから熱拡散性染料を転写した後、必要に応じて保護層を形成することにより、本態様の熱転写印画物を得ることができる。上記熱拡散性染料を熱転写シートから熱転写受像シートへ転写する方法および保護層の形成方法は特に限定されず、一般的な方法を用いることができる。
【0180】
B−2:第二態様の熱転写印画物
次に、本発明の第二態様の熱転写印画物について説明する。本発明の第二態様の熱転写印画物は、上記色素表面偏在比率が60%以下であることを特徴とするものである。
【0181】
1.受像層
第二態様の熱転写印画物における受像層は、上記キレート型発色体とバインダー樹脂とからなり、上記色素表面偏在比率が60%以下であることを特徴とするものである。以下、第二態様の熱転写印画物における受像層の各構成について説明する。
【0182】
(1)キレート型発色体
本態様における受像層に用いられるキレート型発色体は、上記色素表面偏在比率が60%以下であることを特徴とするものである。上記色素表面偏在比率が60%以下であることにより、耐光性に優れた熱転写印画物を得ることができる。なかでも本態様においては、上記色素表面偏在比率が10%〜50%の範囲内であることが好ましく、特に15%〜40%の範囲内であることが好ましい。色素表面偏在比率が上記範囲よりも多いと、キレート型発色体が受像層の表面近傍に偏在することによって、熱転写印画物の用途によっては十分な耐光性が得られない場合があるからである。また上記範囲よりも少ないと、熱転写印画物の鮮明度等が損なわれ、品質低下が生じる可能性があるからである。
【0183】
なお、上記色素表面偏在比率を求める際の、飛行時間型二次イオン質量分析法による信号強度の求め方としては、上記「B−1:第一態様の熱転写印画物」の項において説明した方法と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0184】
本態様に用いられるキレート型発色体は、熱拡散性染料と金属イオン化合物とが結合してなり、熱拡散性染料の種類に応じて所望の発色性を有するものであれば特に限定されない。
【0185】
(2)熱拡散性染料
本態様の熱転写印画物に用いられる熱拡散性染料は、上記「B−1:第一態様の熱転写印画物」の、1.受像層、(2)熱拡散性染料の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0186】
(3)金属イオン化合物
本態様の熱転写印画物に用いられる金属イオン化合物は、上記「A.熱転写受像シート」の、1.受像層、(2)金属イオン化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0187】
(4)熱溶融性化合物
本態様においては、上記受像層に熱溶融性化合物を含むことが好ましい。受像層に熱溶融性化合物を含むことにより、熱拡散性染料の転写時に、受像層を軟化することができるため、受像層における熱拡散性染料の拡散性を向上できるため、本態様の熱転写受像シートを転写感度に優れたものにできるからである。本態様に用いられる熱溶融性化合物は、熱拡散性染料の転写時に受像層を軟化できるものであれば特に限定されない。このような熱溶融性化合物としては、例えば、テルピネオール、メントール、1,4−シクロヘキサンジオール、フェノール等のアルコール類、アセトアミド、ベンズアミド等のアミド類、クマリン、ケイ皮酸ベンジル等のエステル類、ジフェニルエーテル、クラウンエーテル等のエーテル類、カンファー、p−メチルアセトフェノン等のケトン類、バニリン、ジメトキシベンズアルデヒド等のアルデヒド類、ノルボルネン、スチルベン等の炭化水素類、マルガリン酸等の高級脂肪酸、エイコサノール等の高級アルコール、パルミチン酸セチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸アミド等の高級脂肪酸アミド、ベヘニルアミン等の高級アミンなどに代表される単分子化合物、カルナバロウ、蜜ロウ、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンロウ、アミドワックスなどのワックス類、エステルガム、ロジンマレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂等のロジン誘導体、フェノール樹脂、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、テルペン樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、シクロペンタジエン樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリオレフィンオキサイドなどに代表される高分子化合物などを挙げることができる。
【0188】
本態様においては、上記熱溶融性化合物の中でも、溶剤溶解性の熱溶融性化合物を用いることが好ましい。溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、上記バインダー樹脂との相溶性に優れるため、上記受像層を均質化することが可能であり、受像層の均質化することによって受像層における金属イオン化合物の偏在化を防止することができるからである。本態様に用いることができる溶剤溶解性の熱溶融性化合物は、上記「A.熱転写受像シート」の、1.受像層、(1)溶剤溶解性の熱溶融性化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0189】
本態様においては、これらの熱溶融性化合物を1種類のみ単体で用いてもよく、2以上の化合物を混合して用いてもよい。
【0190】
(5)その他の化合物
本態様の熱転写印画物に用いられるその他の化合物は、上記「B−1:第一態様の熱転写印画物」の1.受像層、(5)その他の化合物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0191】
(6)受像層
本態様における受像層の層構成および厚みは、上記「A.熱転写受像シート」の、1.受像層、(6)受像層の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0192】
2.基材シート
本態様に用いられる基材シートは、上記「A.熱転写受像シート」の、2.基材シートの項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0193】
3.熱転写印画物
本態様の熱転写印画物には、必要に応じて受像層以外の他の層を有してもよい。本態様の熱転写印画物に用いることができる他の層としては保護層を挙げることができる。本態様に用いられる保護層としては、上記「B−1:第一態様の熱転写印画物」の、3.熱転写印画物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0194】
上記保護層以外に、本態様の熱転写印画物に用いることができる他の層としては、上記「B−1:第一態様の熱転写印画物」の3.熱転写印画物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0195】
本態様の熱転写印画物の厚みは、上記「B−1:第一態様の熱転写印画物」の3.熱転写印画物の項に記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0196】
4.熱転写印画物の製造方法
本態様の熱転写印画物は、上記「A.熱転写受像シート」の項において記載した、本発明の熱転写受像シートを用いることにより容易に形成することができる。すなわち、上記本発明の第二の態様の熱転写受像シートの受像層に、上記の熱拡散性染料を含有する熱転写シートから熱拡散性染料を転写した後、必要に応じて保護層を形成することにより、本態様の熱転写印画物を得ることができる。上記熱拡散性染料を熱転写シートから熱転写受像シートへ転写する方法および保護層の形成方法は特に限定されず、一般的な方法を用いることができる。
【0197】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0198】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0199】
(1)熱転写受像シートの作成
本実施例においては熱転写受像シート作成に際し、金属イオン化合物として下記式で表される化合物Aを用い、非イオン性界面活性剤としてポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(レオドールTW−L106 花王株式会社製(以下、化合物Bと称する。))およびポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(エマルゲンA−90 花王株式会社製(以下、化合物Cと称する。))を用いた。
【0200】
【化13】

【0201】
[実施例1]
基材として、コート紙(王子製紙(株)製OKトップコート;127.9g/m)の表裏に厚さ50μmの白色PET(東レ(株)製ルミラーE63S)をウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製タケラックA−969V/タケネートA−5=3/1、塗布量:4g/m(乾燥後))で貼合した基材を用いた。該基材の一方の面に、下記組成を有する受像層形成用組成物をバーコーターにより、塗布量2.5g/m(乾燥後)となるように塗布、乾燥(130℃、2分)して熱転写受像シートを作製した。
【0202】
<受像層形成用組成物の組成(実施例1)>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂
(商品名 #1000GK : 電気化学工業社製) 45重量部
・ウレタン系ワックス
(商品名 クロバックス200−2S : 日本化成社製) 5重量部
・金属イオン化合物
(上記式 化合物A) 20重量部
・エポキシ変性シリコーン
(商品名 KF−393 : 信越化学工業社製) 2重量部
・アミノ変性シリコーン
(商品名 KS−343 : 信越化学工業社製) 2重量部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル
(商品名 FZ−2101 : 日本ユニカー社製) 5重量部
・メチルエチルケトン 112.5重量部
・トルエン 112.5重量部
【0203】
[実施例2]
上記受像層形成用組成物の組成(実施例1)のうち、ウレタン系ワックス(商品名 クロバックス200−2S:日本化成社製)の量を15重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、熱転写受像シートを作成した。
【0204】
[実施例3]
上記受像層形成用組成物の組成(実施例1)のうち、ウレタン系ワックスを、商品名:クロバックス200−1S(日本化成社製)とした以外は、実施例1と同様の方法により、熱転写受像シートを作成した。
【0205】
[実施例4]
上記受像層形成用組成物の組成(実施例1)のうち、ウレタン系ワックスを、商品名クロバックス200−1S(日本化成社製)とし、当該ウレタン系ワックスの量を15重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により、熱転写受像シートを作成した。
【0206】
[実施例5]
下記組成の受像層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シートを作成した。
【0207】
<受像層形成用組成物の組成(実施例5)>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂
(商品名 #1000GK : 電気化学工業社製) 45重量部
・非イオン性界面活性剤
(上記式 化合物B) 5重量部
・金属イオン化合物
(上記式 化合物A) 20重量部
・エポキシ変性シリコーン
(商品名 KF−393 : 信越化学工業社製) 2重量部
・アミノ変性シリコーン
(商品名 KS−343 : 信越化学工業社製) 2重量部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル
(商品名 FZ−2101 : 日本ユニカー社製) 5重量部
・メチルエチルケトン 112.5重量部
・トルエン 112.5重量部
【0208】
[実施例6]
上記受像層形成用組成物の組成(実施例5)のうち、非イオン性界面活性剤(上記式化合物B)の量を15重量部としたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シートを作成した。
【0209】
[比較例1]
下記組成の受像層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シートを作成した。
【0210】
<受像層形成用組成物の組成(比較例1)>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂
(商品名 #1000GK : 電気化学工業社製) 45重量部
・金属イオン化合物
(上記式 化合物A) 20重量部
・エポキシ変性シリコーン
(商品名 KF−393 : 信越化学工業社製) 2重量部
・アミノ変性シリコーン
(商品名 KS−343 : 信越化学工業社製) 2重量部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル
(商品名 FZ−2101 : 日本ユニカー社製) 5重量部
・メチルエチルケトン 112.5重量部
・トルエン 112.5重量部
【0211】
[比較例2]
下記組成の受像層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シートを作成した。
【0212】
<受像層形成用組成物の組成(比較例2)>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂
(商品名 ソルバイン C : 日信化学工業社製) 45重量部
・エポキシ変性シリコーン
(商品名 KF−393 : 信越化学工業社製) 2重量部
・アミノ変性シリコーン
(商品名 KS−343 : 信越化学工業社製) 2重量部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル
(商品名 FZ−2101 : 日本ユニカー社製) 5重量部
・メチルエチルケトン 112.5重量部
・トルエン 112.5重量部
【0213】
[比較例3]
下記組成の受像層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シートを作成した。
【0214】
<受像層形成用組成物の組成(比較例3)>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂
(商品名 ソルバイン C : 日信化学工業社製) 45重量部
・ウレタン系ワックス
(商品名 クロバックス200−1S : 日本化成社製) 15重量部
・エポキシ変性シリコーン
(商品名 KF−393 : 信越化学工業社製) 2重量部
・アミノ変性シリコーン
(商品名 KS−343 : 信越化学工業社製) 2重量部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル
(商品名 FZ−2101 : 日本ユニカー社製) 5重量部
・メチルエチルケトン 112.5重量部
・トルエン 112.5重量部
【0215】
[比較例4]
下記組成の受像層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により熱転写受像シートを作成した。
【0216】
<受像層形成用組成物の組成(比較例4)>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂
(商品名 ソルバイン C : 日信化学工業社製) 45重量部
・非イオン性界面活性剤
(上記式 化合物C) 15重量部
・エポキシ変性シリコーン
(商品名 KF−393 : 信越化学工業社製) 2重量部
・アミノ変性シリコーン
(商品名 KS−343 : 信越化学工業社製) 2重量部
・ポリエーテル変性シリコーンオイル
(商品名 FZ−2101 : 日本ユニカー社製) 5重量部
・メチルエチルケトン 112.5重量部
・トルエン 112.5重量部
【0217】
(2)熱転写シートの作成
(熱転写シート)
基材シートの一方の面に、予め下記組成の耐熱滑性層塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥塗布量が1.0g/mになるように塗布、乾燥(100℃、5分)して、耐熱滑性層を形成しておいた。
【0218】
(耐熱滑性層塗工液)
ポリビニルブチラール樹脂 13.6部
(エスレックBX−1 積水化学工業社製)
ポリイソシアネート硬化剤 0.6部
(タケネートD218 武田薬品工業社製)
リン酸エステル 0.8部
(プライサーフA208S 第一工業製薬社製)
メチルエチルケトン 42.5部
トルエン 42.5部
【0219】
その後、耐熱性背面層の反対面に下記組成の染料層形成用組成物を用い、イエロー(以下、Yと称する。)発色用、マゼンタ(以下、Mと称する。)発色用、およびシアン(以下、Cと称する)発色用の熱転写シートを作成した。熱転写シートの作成は、Y、M、C発色用の染料層形成用組成物を上記基材シート上に、イエロー染料層塗工液、マゼンタ染料層塗工液、シアン染料層塗工液を40℃に加温し、バーコーターにより、各塗布量1.0g/m(乾燥後)となるように塗布、乾燥(80℃、5分)して熱転写シートIを作製した。
【0220】
<染料層形成用組成物(熱転写シート)>
[イエロー染料層塗工液]
・熱拡散性染料(下記式化合物i) 4重量部
・ポリビニルアセタール樹脂
(商品名 エスレックKS−5 :積水化学社製) 4重量部
・メチルエチルケトン 46重量部
・トルエン 46重量部
【0221】
[マゼンタ染料層塗工液]
・熱拡散性染料(下記式化合物ii) 2重量部
・ポリビニルアセタール樹脂
(商品名 エスレックKS−5 :積水化学社製) 4重量部
・メチルエチルケトン 47重量部
・トルエン 47重量部
【0222】
[シアン染料層塗工液]
・熱拡散性染料(下記式化合物iii) 3重量部
・ポリビニルアセタール樹脂
(商品名 エスレックKS−5 :積水化学社製) 4重量部
・メチルエチルケトン 46.5重量部
・トルエン 46.5重量部
【0223】
【化14】

【0224】
(3)評価
(印画条件)
熱転写シートから熱転写受像シートへの印画は、サーマルヘッド(商品名 KGT−217−12MPL20:京セラ社製)を用い、以下の条件にて行った。
【0225】
・発熱体平均抵抗値 : 3139Ω
・主走査方向印字密度 : 300dpi
・副走査方向印字密度 : 300dpi
・印加電力 : 0.10W/dot
・1ライン周期 : 5msec
・印字開始温度 : 40℃
・印加パルス(階調制御方法) ; 1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割のDuty比を65%に固定し、ライン周期当たりのパルス数を0から255を15分割した。これにより、15段階の異なるエネルギーを与え、各段ごとの印字状態を評価可能にした。
【0226】
(保護層印画)
上記印画条件よって印画したのち、受像層上に保護層を形成した。保護層はコニカミノルタフォトイメージング社製のフォトキレートプリンターRC602に用いられるインクリボンの保護層を用い、保護層と受像層とを対向させて重ね合わせた後、下記印字条件でサーマルヘッドにより印画面全面に形成した。
【0227】
・発熱体平均抵抗値 : 3139Ω
・主走査方向印字密度 : 300dpi
・副走査方向印字密度 : 300dpi
・印加電力 : 0.10W/dot
・1ライン周期 : 5msec
・印字開始温度 : 40℃
・印加パルス ; 1ライン周期中に、1ライン周期を256に等分割したパルス長をもつ分割パルスの数を0から255個まで可変できるマルチパルス方式のテストプリンターを用い、各分割のDuty比を70%に固定し、ライン周期当たりのパルス数を200個固定とし、ベタ印画を行った。
(4)評価
(転写感度評価)
上記実施例および比較例の熱転写印画物について、Y、M、およびCを重ね印画したブラック(BK)画像の12段目(高濃度領域)および7段目(低濃度領域)の反射濃度を測定することにより評価した。
【0228】
(耐熱性評価)
上記実施例および比較例の熱転写印画物を77℃の環境下に120時間保存し、続いて室温にて24時間放置した後、画像を目視観察することにより評価した。目視観察により画像形成部に「にじみ」が観察される場合は「×」、目視でにじみが観察されない場合は「○」と評価した。
【0229】
(耐光性評価)
耐光性評価は以下の条件により行った。
【0230】
・照射試験器 : アトラス社製Ci35
・光源 : キセノンランプ
・フィルター : 内側=IRフィルター、外側=ソーダライムガラス
・ブラックパネル温度 : 45℃
・照射強度 : 1.2(W/m)−420nmでの測定値
・照射エネルギー : 400(kJ/m)−420nmでの積算値
上記耐光条件の照射前後の画像の色相変化を色彩色差計(CR321、コニカミノルタ社製)により測定し、照射前の光学反射濃度が1.0近傍のステップについて、下記式により色差を算出し、これを基に下記評価基準で耐光性を評価した。
【0231】
色差ΔE*ab=((Δa*)2+(Δb*)2)1/2
CIE1976 La*b*表色系(JIS Z8729 (1980))参照
Δa*=a*(照射後)−a*(照射前)
Δb*=b*(照射後)−b*(照射前)
また、耐光性評価の基準は次の通りとした。
【0232】
○ : 色差ΔE*ab<10
△ : 10≦色差ΔE*ab<15
× : 色差ΔE*ab≧15
【0233】
(色素表面偏在率)
飛行時間型二次イオン質量分析法による分析を以下の条件行った際に得られた信号強度に基づいて色素表面偏在率を求めた。
【0234】
・測定装置 : Physical Electronics社製2100TRIFT2
・一次イオン : In
・一次イオン加速電圧 : 25kV
・一次イオン電流 : 1nA(メカニカルバリアブルアパーチャー#2を使用)
・パルス幅:10ns
・測定質量範囲:0.5−2000Da
なお、測定および解析はPhysical Electronics社製Win−Cadence Ver4.0.0.14にて行った。
【0235】
上記実施例および比較例の熱転写印画物についての評価結果を表1に示す。本発明の熱転写受像シートから作成した熱転写印画物および本発明の熱転写印画物によれば、転写感度および耐熱性に優れた熱転写印画物を得ることができる。
【0236】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0237】
【図1】本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の熱転写印画物の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0238】
1 … 基材シート
2 … 受像層
3 … 保護層
11 … 熱転写受像シート
21 … 熱転写印画物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、前記基材シート上に形成され、金属イオン化合物およびバインダー樹脂を含む受像層を有する熱転写受像シートであって、前記受像層に、溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする、熱転写受像シート。
【請求項2】
前記溶剤溶解性の熱溶融性化合物が、脂環族系イソシアネート化合物の重合物であることを特徴とする、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記受像層に非イオン性界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記金属イオン化合物が、下記式で表される化合物であることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の熱転写受像シート。
[M(Q(Q(QP+(L
(上記式中、Mは金属イオン、Q、QおよびQは前記金属イオン(M)と配位結合可能な配位化合物、Lは有機アニオン基を表す。またl、mおよびnはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、Pは1または2を表す。)
【請求項5】
基材シートと、前記基材シート上に形成され、金属イオン化合物と熱拡散性染料とが結合してなるキレート型発色体およびバインダー樹脂を含む受像層と、を有する熱転写印画物であって、前記受像層に溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする、熱転写印画物。
【請求項6】
基材シートと、前記基材シート上に形成され、金属イオン化合物と熱拡散性染料とが結合してなるキレート型発色体およびバインダー樹脂を含む受像層と、を有する熱転写印画物であって、
飛行時間型二次イオン質量分析法によって得られる前記受像層の内部に含まれる前記キレート型発色体および前記受像層の表面に付着した前記キレート型発色体のトータルのピーク強度をD(all)、受像層表面から受像層内部へ0.5μm入ったところよりも表面側に存在する前記キレート型発色体のピーク強度をD(s)としたとき、D(s)/D(all)×100(%)が60(%)以下であることを特徴とする、熱転写印画物。
【請求項7】
前記受像層が、溶剤溶解性の熱溶融性化合物を含むことを特徴とする請求項6に記載の熱転写印画物。
【請求項8】
前記受像層上に保護層が形成されていることを有することを特徴とする、請求項5から請求項7までのいずれかの請求項に記載の熱転写印画物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−36945(P2008−36945A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213501(P2006−213501)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】