説明

熱転写受像シート及びその製造方法

【課題】 表面平滑性及び光沢性が高い熱転写受像シート、並びに、溶剤を含有する接着剤を使用することなく基材シートと多孔質フィルムとを積層して該熱転写受像シートを製造する方法を提供する。
【解決手段】
基材シートの少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層、多孔質フィルム、中間層及び受容層をこの順に積層してなる熱転写受像シートにおいて、前記ポリオレフィン樹脂層は、メルトフローレートが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂からなり厚みが10〜40μmであることを特徴とする熱転写受像シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写を利用した画像の形成方法として、記録材としての熱拡散型染料(昇華型染料)をプラスチックフィルム等の基材シート上に担持させた熱転写シートと、紙やプラスチックフィルム等の別の基材シート上に該染料の受容層を設けた熱転写受像シートとを互いに重ね合わせて後者の受容層に画像を形成する熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)が知られている。
【0003】
この方法は熱拡散型染料を色材としているためドット単位で濃度、階調を自由に調節でき、原稿通りのフルカラー画像を受像シート上に鮮明に表現することができるので、デジタルカメラ、ビデオ、コンピューター等のデジタルフォト分野におけるカラー画像形成に活用されている。熱転写受像シートは、画像形成上の感度を高めるため、断熱性及びクッション性を付与するべく多孔質フィルムを積層したものが好ましい。
【0004】
昇華型熱転写方式を利用して得た画像は銀塩写真に匹敵するほど高品質であるが、デジタルフォト分野における活用において、更に銀塩写真に近い風合いが求められている。このため、熱転写受像シートは、表面の光沢性及び平滑性が高いことが望ましい。
【0005】
熱転写受像シートは、従来、受容層の基材シート側に積層する多孔質フィルムを基材シートの一方の面に接着剤により貼着するドライラミネーション法を用いて得られ(例えば特許文献1参照)、積層する多孔質フィルムも上述の背景より、光沢性に優れるスキン層/コア層/スキン層の3層構成で形成された多孔質フィルムを用いたものも使用されるようになってきた(例えば特許文献2参照)。このように形成された熱転写受像シートは光沢性が高く、非光沢時には目立たなかった基材シートに起因する凹凸が目立つようになり、より平滑な受像シートを求められるようになった。このため、特許文献2では基材シートにプラスチックフィルムを使用している。しかしながら、これではコスト高となる問題がある。また、多孔質フィルムの積層にドライラミネート法を用いており、環境上好ましくなく、ラミネート後も反応を完了させるために熟成の工程が必要となり生産性上も好ましくない。
特許文献3では特定の転写方式を利用して熱転写受像シートに光沢性、平滑性を付与する方法が記載されているが、剥離加工が困難であり、コスト的にも有利ではない。
【0006】
溶融した樹脂を押し出してラミネートするものに関し、基材シートと、発泡剤又は熱膨張性マイクロカプセルを含有する樹脂層とをECラミネートする際に、該樹脂層が押し出し樹脂と接触することで発泡又は膨張して断熱層を形成し、該押し出し樹脂が接着剤層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。該押し出し樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、その他が例示されているが、メルトフローレート〔MFR〕等の記載はない。
【0007】
溶融押出する樹脂として、特許文献5には、メルトインデックス〔MI〕4.0g/10分のポリプロピレンが実施例で用いられているが、該ポリプロピレンは共押出に供するものであり、得られるシートは、ポリプロピレン延伸シートと積層する等して、熱転写受像シートにおける支持体となる合成紙を構成するものである。
【特許文献1】 特開平8−25812号公報
【特許文献2】 特開平8−187965号公報(〔請求項1〕〔0024〕)
【特許文献3】 特開2002−219874号公報(〔実施例〕)
【特許文献4】 特開2004−345267号公報(〔0017〕〔0020〕)
【特許文献5】 特開昭62−87390号公報(実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、表面平滑性及び光沢性が高い熱転写受像シート、並びに、溶剤を含有する接着剤を使用することなく基材シートと多孔質フィルムとを積層して該熱転写受像シートを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材シートの少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層、多孔質フィルム、中間層及び受容層をこの順に積層してなる熱転写受像シートにおいて、前記ポリオレフィン樹脂層は、メルトフローレートが2〜25g/10分であるポリオレフィン樹脂からなり厚みが10〜40μmであることを特徴とする熱転写受像シートである。
【0010】
本発明は、基材シートの少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層、多孔質フィルム、中間層及び受容層をこの順に積層してなる熱転写受像シートの製造方法において、前記製造方法は、(1)多孔質フィルムと中間層とを積層する工程、(2)中間層と受容層とを積層する工程、並びに、(3)基材シートの少なくとも一方の面と多孔質フィルムとの間にメルトフローレートが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂を用いて厚みが10〜40μmであるポリオレフィン樹脂層を形成する工程を有することを特徴とする熱転写受像シートの製造方法である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
(基材シート)
本発明における基材シートは、紙芯材からなるものである。
上記基材シートは、受容層を保持する役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも、取り扱い上、支障がない程度の機械的強度を有することが好ましい。
【0012】
上記紙芯材としては、特に限定されず、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙、セルロース繊維紙等が好ましい。
上記紙芯材は、必要に応じて従来公知の処理を施したものであってもよく、例えば、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、熱カレンダー等のカレンダー処理を行うことにより、得られる熱転写受像シートの平滑性を高めることができる。また、基材シートは,その表面に各種プライマー処理、コロナ放電処理等を施したものであってもよく、これらの処理はポリオレフィン樹脂層との密着性を向上することもできる。
上記基材シートの厚みは、特に限定されないが、通常50〜250μm程度、好ましくは100〜200μmである。
【0013】
(ポリオレフィン樹脂層)
本発明におけるポリオレフィン樹脂層は、メルトフローレート〔MFR〕が2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂からなるものである。
本発明の熱転写受像シートは、上記範囲内のMFRを有するポリオレフィン樹脂からなるポリオレフィン樹脂層を有するので、特に平滑性に優れている。
上記ポリオレフィン樹脂のMFRは、好ましい上限が21(g/10分)である。
本発明において、上記MFRはJIS K 7210に準拠して230℃の温度下で測定したものである。MFRが25(g/10分)を超えると押出しラミネーション時に紙芯材の凹凸への追従性がよくなり、熱転写受像シートの表面平滑性が損なわれる。また、MFRが2(g/10分)より低くなると加工性が悪くなる。
【0014】
上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体等が挙げられ、中でも、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0015】
上記ポリオレフィン樹脂層は、例えば、基材シート及び多孔質フィルムとの押出ラミネーションを行うことにより、即ち、MFRが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂を上述の基材シートの少なくとも一方の面と後述の多孔質フィルムとの間に溶融押出して該基材シートの少なくとも一方の面と該多孔質フィルムとを貼着することよりなる押出ラミネーションにより形成することができる。
上記ポリオレフィン樹脂層の厚さは、通常10〜40μm、好ましくは15〜30μmである。
【0016】
(多孔質フィルム層)
本発明における多孔質フィルム層は、表面光沢度が高い多孔質フィルムであれば特に限定はされないが、その柔軟性のためにサーマルヘッドとの密着性に優れ、生産性も良好である、ベースとなる樹脂としてポリオレフィン、特にポリプロピレンを用いた、内部に微細空隙を有する多孔質フィルムが好ましい。
【0017】
フィルム中に微細空隙を生じさせる方法としては、フィルムのベースとなる樹脂に対して非相溶な有機微粒子又は無機微粒子(一種類でも複数でもよい)を混練したコンパウンドを作成する。このコンパウンドは微視的にみるとベースとなる樹脂とベースとなる樹脂に対して非相溶な微粒子とが微細な海島構造を形成しており、このコンパウンドをフィルム化し、延伸することにより海島界面の剥離、又は、島を形成する領域の大きな変形によって上記のような微細空隙を発生させるものである。
【0018】
微細空隙を形成する方法として、例えば、ポリプロピレンを主体とし、それにポリプロピレンより高い融点を有するポリエステルやアクリル樹脂を加えたものが公知である。この場合、ポリエステルやアクリル樹脂が微細空隙を形成する核剤の役割をする。該ポリエステル、アクリル樹脂の含有量は、いずれの場合もポリプロピレン100質量部に対して2〜10質量部であることが好ましい。上記含有量が2質量部未満の場合には、微細空隙の発生が不十分となるため十分な印字感度を得ることができない。また、含有量が10質量部を超える場合には、多孔質フィルムの耐熱性などが低下するため好ましくない。
【0019】
また、ベースとする樹脂をポリプロピレンとする多孔質フィルムを作成する場合、更に微細で緻密な空隙を発生させるためには、更にポリイソプレンを加えることが好ましい。これにより、より高い印字感度を得ることができる。例えば、ポリプロピレンを主体とし、これにアクリル樹脂又はポリエステル、そしてポリイソプレンを配合したコンパウンドを作成し、フィルム化し、延伸することにより高い印字感度を有する多孔質フィルムを得ることができる。
【0020】
上記多孔質フィルムの見かけ比重としては、0.50〜0.75g/cmが好ましい。そして、微細空隙の形状としては、実際は偏平形状のものが多いが、できるだけ球形に近いものが好ましく、また、その分布は、大きさのそろった微細空隙が均一に分布していることが優れた印字性能を付与できる点で好ましい。
上記多孔質フィルムのヤング率は、25℃において1×10Pa(パスカル)以上、1×1010Pa以下が好ましい。1×10Pa未満の場合は柔らかすぎで、耐熱性、機械的耐久性にも劣り、また、1×1010Paを越える場合は柔軟性が不足し、プリンターでの搬送適性やサーマルヘッドとの密着性に劣るため好ましくない。
上記多孔質フィルムには、必要に応じて若干の無機顔料や蛍光増白剤等の添加剤を加えてもよい。
以上は本発明の熱転写受像シートに用いる多孔質フィルム層が多層構成である場合、多孔質フィルム層を全体として見た場合の知見若しくは実施態様である。
以下に、多孔質フィルム層が多層構成である場合に該フィルム層を構成する中心層及びスキン層の各層について詳しく説明する。
【0021】
中心層とスキン層について
本発明における多孔質フィルム層が微細空隙を有する多孔層の単層で形成される場合には、高い印字感度を得ることはできるが、銀塩写真のような表面光沢度及び高級感を得られない場合がある。また、微細空隙に由来する表面の凹凸のために、色抜け及び濃度むらが生じる場合もある。従って、このような欠点を解消し、高い表面光沢度を付与するためには、上記多孔質フィルム層は、上述の多孔層を中心層として、その少なくとも受容層を形成する側の表面に中心層よりも少ない微細空隙を有するスキン層を設けた構成であることが好ましい。
尚、多孔層で形成される中心層の厚さは、多孔質フィルム層全体の厚さの50%以上、96%以下が好ましい。また、中心層が含有する微細空隙の中心層全体に対する体積分率は、10%以上、25%以下が好ましく、また、中心層の見かけ比重は、0.45〜0.75g/cmが好ましい。
そして、スキン層に用いる材料としては、加工性及び中心層或いは後述する隠蔽層との接着性を考慮して、ポリオレフィン系樹脂、例えば中心層にポリプロピレンを用いる場合には、同じポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0022】
中心層の表面にスキン層を設けることにより、高い表面光沢度を有する熱転写受像シートを得ることはできる。しかし、特開昭62−87390号公報、特開昭62−278087号公報、そして特開平5−246153号公報のように、表面に無機微細粉末や微細空隙を実質的に含有しない熱可塑性表面層(スキン層)を設けた場合には、高い光沢を得ることはできるものの、表面光沢度が極めて高いために、熱転写受像シート製造時に不可避的に生じる微細な傷が目視でも目立ってしまい、外観上の欠点となることがある。尚、熱転写受像シート製造時に不可避的に生じる微細な傷とは、次のようなものである。熱転写受像シートを製造する際には、後述するように、多孔質フィルムに受容層などを塗布したり、所望の幅や大きさにスリット及びシートカットしたり、或いは包装及び梱包したりする。その際には、さまざまな設備のガイドロールなどに接触したり、或いは熱転写受像シート自体の表裏に摩擦が生じることは避けられない。従って、表面には必ず、微細な傷が生じてしまう。
そこで、本発明では、表面のスキン層に、中心層よりも少ない微細空隙を存在させることにより、高い光沢度、平滑性を維持すると同時に、極めて微細な傷は、目立たないようにする程度の凹凸を付与することが好ましい。スキン層に存在する微細空隙がスキン層全体中に占める体積分率は1.0%以上、15.0%以下であることが好ましい。1.0%未満では、表面の極めて微細な傷を目立たないようにする程度の凹凸を付与することができないため好ましくない。また、15.0%を越える場合には、熱転写受像シートの光沢度が低下してしまうため好ましくない。
尚、中心層及びスキン層中の微細空隙の体積分率の測定法は、下記の手法によるものである。各試料多孔質フィルムの断面を電子顕微鏡で観察、写真撮影し、微細空隙がそれぞれの断面中に占める面積率Srを測定する。ここでSrは各測定において試料数n=5とし、その平均値とした。そして、該面積率Srを3/2乗したSr3/2を体積分率とした。
【0023】
上記スキン層の厚さは1.5μm以上、10μm以下が好ましい。厚さが1.5μm未満では光沢度が不十分であり、10μmを越えると印字感度に悪影響を及ぼすため好ましくない。
【0024】
隠蔽層について
以上のような多孔質フィルムに、特に高い隠蔽性を付与する必要があるときには、中心層とスキン層との間に隠蔽層を設けることができる。
隠蔽層としては、中心層と同じポリオレフィンを主体としたポリマーをバインダーとしてこれに白色顔料を分散させたものが望ましい。白色顔料としては、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、酸化チタン、酸化亜鉛、その他公知の無機顔料を使用することができるが、隠蔽性及び白色性等を総合的に考慮すると、二酸化チタンを用いることが好ましい。
隠蔽層の厚さは、1μm以上、10μm以下が好ましい。厚さが1μm未満では隠蔽性の向上効果がほとんどなく、10μmを越えると印字感度に悪影響を与えるため好ましくない。
【0025】
このようにして得られた多孔質フィルムは、表面のスキン層がポリオレフィンであるために、多孔質フィルムの上に形成する受容層等との接着性が不十分な場合があり、このような場合には、プリント中に異常転写等のトラブルが生じる。上記多孔質フィルムと種々の他材料との接着性を向上させる公知の手段としてコロナ放電処理を施す方法がある。しかし、この方法は、単独では接着性の経時安定性に欠ける問題がある。また、上述の多孔質フィルムが中心層の両面にスキン層を対称に設けた構成である場合、その両面にコロナ処理を施して巻き取るとブロッキングを生じることがある。従って、本発明においては、表面スキン層の上に更に易接着層をコーティングなどにより設けたり、プラズマ処理を施すことが好ましい。
【0026】
好ましい易接着層としては、その上に塗布する受容層等の特性に合わせて、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリビニルアルコール系樹脂、そしてポリ塩化ビニリデン等の公知のポリマーを用いることが可能である。易接着層の厚さは、多孔質フィルムが有する上述の各種の機能を阻害することがないように薄いことが好ましく、具体的には2μm以下が好ましい。
尚、上記多孔質フィルムの厚さは全体として、25μm以上、80μm以下が好ましい。25μm未満であると、実質的に空隙を有する発泡層が薄くなるため印字感度が低くなると共に、上述の基材シートの微小な凹凸の影響による濃度ムラを生じることがあり好ましくない。また、80μmを越える場合には、上述の基材シートを含めた熱転写受像シート全体の厚さが大きくなり、プリンターの搬送性等に悪影響を及ぼすため好ましくない。
尚、基材シートを含めた熱転写受像シート全体の厚さは、85μm以上、370μm以下が好ましく、150μm以上、270μm以下が特に好ましい。
【0027】
多孔質フィルムの作成及び積層
上記多孔質フィルムの製造方法としては、例えば、中心層とスキン層の各コンパウンドを共押し出し装置により、2層又は3層などで押し出してフィルム化し、更に二軸延伸してそれぞれの微細空隙を形成する方法;中心層のコンパウンドのみを先に押し出し装置で押し出してフィルム化した後、このフィルムの片面又は両面にスキン層のコンパウンドを押し出して積層し、これを2軸延伸して微細空隙を形成する方法;また、中心層のコンパウンドを先に押し出し装置で押し出してフィルム化し縦一軸延伸した後、その片面又は両面にスキン層のコンパウンドを逐次押し出して積層し、これを横延伸して微細空隙を形成する方法;等があり、いずれの方法も利用できる。更に、中心層とスキン層の他に上述の隠蔽層が必要な場合には、スキン層等と同時に共押し出しにより設けることができる。
【0028】
上記多孔質フィルムは、一般に、基材シート及び上述のポリオレフィン樹脂との押出ラミネーションにて積層することができる。上記押出ラミネーションは、ポリオレフィン樹脂を前記基材シートの少なくとも一方の面と前記多孔質フィルムとの間に溶融押出して前記基材シートの少なくとも一方の面と前記多孔質フィルムとを貼着することよりなるものである。
【0029】
(中間層)
本発明の熱転写受像シートにおいて、受容層と多孔質フィルムとの間に、必要に応じて、受容層と多孔質フィルムの接着性を確保、地色の調整、導電性の付与の目的で中間層を設けることができる。
上記中間層は、多孔質フィルム及び受容層を保持する役割を有するので、熱転写における加熱時であっても取扱い上支障のない程度の機械的強度を有することが好ましい。
上記中間層を構成する材料としては、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等の合成樹脂が挙げられる。また、これらの合成樹脂に白色顔料、充填剤、導電材等を加えて使用することができる。
【0030】
上記中間層は、特に限定されないが、例えば、多孔質フィルムの受容層形成側の面上に中間層用塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
上記中間層用塗工液は、上記合成樹脂を溶剤若しくは水に分散又は溶解させてなるものである。
上記中間層用塗工液における溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類及び水が挙げられ、これらを適宜混合して使用してもよい。
【0031】
上記中間層の厚みは、特に限定されないが、乾燥後0.5〜5g/m程度となるよう塗布する。上記中間層の積層における塗布、乾燥等は、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、リバースロールコーティング法等、公知の方法にて行うことができる。
【0032】
(受容層)
本発明の熱転写受像シートにおいて、受容層は上記中間層の基材シートと反対側の面上に積層してなるものである。
上記受容層は、一般に染料を染着しやすい樹脂と、所望に応じて添加する離型剤等の各種添加剤とからなるものである。
上記染着しやすい樹脂としては、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、及び、それらの共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、アイオノマー、セルロース誘導体の単体、又は混合物を用いることができ、中でも、ポリエステル系樹脂及びビニル系樹脂が好ましく、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0033】
上記受容層には、画像形成時における熱転写シートとの熱融着を防ぐために離型剤を配合することもできる。
上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系化合物、フッ素系化合物等、公知のものが挙げられるが、特にシリコーンオイルが好ましい。
上記シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、ビニル変性シリコーンオイル、ハイドロジェン変性シリコーンオイル等、変性シリコーンオイルが好ましい。
上記離型剤は、上記樹脂100質量部に対して約0.2〜30質量部となるよう添加することが好ましい。
【0034】
上記受容層は、更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、フィラー、顔料、帯電防止剤、可塑剤、熱溶融性物質等、公知の添加剤を適宜配合してなるものであってもよい。
【0035】
上記受容層は、例えば、上述の染料を染色しやすい樹脂、並びに、必要に応じ配合する離型剤及び/又は添加剤を溶媒に分散させてなる受容層用塗工液を調製し、該受容層用塗工液を中間層上に塗工することにより形成することができる。
【0036】
上記受容層用塗工液を調製するための溶媒としては、例えば、上述の中間層用塗工液に関して例示したもの等が挙げられる。
【0037】
上記受容層用塗工液の塗布は、上述の一般的な方法にて行うことができる。
上記受容層用塗工液は、受容層が乾燥後0.5〜10g/mの量となるよう塗布することが好ましい。
上記受容層の塗工において、乾燥は、使用する塗工液の組成に応じて異なるが、一般に50〜150℃の温度下で行うことが好ましい。
【0038】
(裏面層)
本発明の熱転写受像シートは、シートの機械搬送性向上、筆記性や帯電防止性の付与等を目的として、基材シートの受容層と反対側の面上に裏面層を有するものであってもよい。
【0039】
上記裏面層としては、例えば、ポリビニルアルコール〔PVA〕樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等からなるものが挙げられる。
【0040】
上記裏面層を形成する際に、例えば、(1)上記例示の樹脂等に加え、有機フィラー若しくは無機フィラーを適量添加する、又は、(2)ポリオレフィン樹脂、セルロース樹脂等、滑性が高い樹脂を使用すると、シートの機械搬送性が向上した熱転写受像シートを得ることができる。
上記裏面層を形成する際に、公知のフィラー、顔料等を配合した場合、得られる熱転写受像シートに筆記性を付与することができる。
【0041】
上記裏面層は、帯電防止機能を得るために、アクリル樹脂等の導電性樹脂、及び/又は、脂肪酸エステル、硫酸エステル、リン酸エステル、エチレンオキサイド付加物等の各種帯電防止剤を添加したものであってもよい。
上記帯電防止剤の使用量は、使用する帯電防止剤等の種類、量等によって異なるが、給紙トラブルを防止する点で、熱転写受像シートの表面電気抵抗値が1013Ω/cm以下となるよう配合することが好ましい。
【0042】
本発明において、上記裏面層を設ける場合、基材シートの受容層と反対側の面に、公知の加工方法にてカール防止層を設けることが好ましい。
上記カール防止層は、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、あるいはポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂等の溶融押出しコーティング法による積層により形成でき、適宜材質、厚み等を選定できる。
【0043】
上記裏面層は、例えば、基材シート又はカール防止層の受容層と反対側の面上にプライマー層を設け、該プライマー層上に裏面層用塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。
上記プライマー層は、公知の方法にて形成することができる。
上記裏面層用塗工液は、上述の樹脂を溶剤若しくは水に溶解又は分散させることにより調製することができる。上記裏面層用塗工液を調製するための溶媒としては、例えば、上述の中間層用塗工液に関して例示したもの等が挙げられる。
上記裏面層用塗工液は、公知の手法にて塗布及び乾燥することができ、乾燥後0.5〜5g/mの量となるよう塗布することが好ましい。
【0044】
(熱転写受像シートの性質)
本発明の熱転写受像シートは、JIS Z 8741に準拠して測定した表面光沢度を60%以上とすることができる。
上記表面光沢度は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であり、上記範囲内であれば100%とすることもできる。
本発明の熱転写受像シートは上記範囲内の表面光沢度を有するので、銀塩写真に似た風合いを有する画像を形成することができる。
【0045】
(製造方法)
本発明の熱転写受像シートの製造方法は、基材シートの少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層、多孔質フィルム、中間層及び受容層をこの順に積層してなる熱転写受像シートを製造する方法であって、(1)多孔質フィルムと中間層とを積層する工程、(2)中間層と受容層とを積層する工程、並びに、(3)基材シートの少なくとも一方の面と多孔質フィルムとの間にメルトフローレートが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂を用いて厚みが10〜40μmであるポリオレフィン樹脂層を形成する工程を有することを特徴とするものである。
本発明の熱転写受像シートの製造方法は、更に、(4)基材シートの受容層と反対側の面上に裏面層等を別途形成するものであってもよい。
【0046】
本発明の製造方法における各層の組成、特徴及び塗工量は、本発明の熱転写受像シートを構成するものと同様である。例えば、多孔質フィルムは、ポリプロピレン樹脂からなるものであることが好ましい。
上記工程(1)及び上記工程(2)における積層は、特に限定されず、従来公知の方法にて行うことができる。
上記工程(1)は、例えば、予め作製した多孔質フィルムの基材シートと反対側の面に中間層用塗工液を塗布し、乾燥することにより行うことができる。
上記工程(2)は、例えば、中間層の基材シートと反対側の面に受容層用塗工液を塗布し、乾燥することにより行うことができる。
上記工程(3)において、上記ポリオレフィン樹脂層の形成は、メルトフローレートが2〜25g/10分であるポリオレフィン樹脂を基材シートの少なくとも一方の面と多孔質フィルムとの間に溶融押出して上記基材シートの少なくとも一方の面と上記多孔質フィルムとを貼着することよりなる押出ラミネーションにより行うことが好ましい。
上記工程(3)における押出ラミネーションの条件は、ポリオレフィン樹脂層に使用するポリオレフィン樹脂の種類、量等に応じて適宜設定することができるが、樹脂温度が270〜330℃であることが好ましい。
【0047】
本発明において、上記工程(1)、工程(2)及び工程(3)は何れを先に行ってもよい。
上記工程(1)〜(3)について、工程(1)及び工程(2)は工程(3)より前に行うことが好ましい。
上記工程(4)は、上記工程(1)〜工程(3)の工程の前に行うことが好ましい。
【0048】
本発明の製造方法を実施することにより、例えば本発明の熱転写受像シート等、層間接着性が良く光沢性及び平滑性に優れた熱転写受像シートを作製することができる。
更に、本製造方法は、溶剤を含有する接着剤を使用することなく基材シートと多孔質フィルムとを積層することができるので、環境上好ましいことに加え、低コストで簡便に熱転写受像シートを作製することができる。
【0049】
(画像形成)
本発明の熱転写受像シートにおける受像面に画像形成を行う方法としては、特に限定されず、公知の熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)にて行うことができる。
上記画像形成の際に使用する熱転写シートとしては、特に限定されず、例えば、基材シート上に、熱拡散型染料(昇華型染料)を含む染料層を設けた従来の熱転写シートを使用することができる。
上記熱転写シートとしては、特に、ポリアセタール系樹脂からなる染料層とポリエステル樹脂からなる基材シートとからなるものが好ましい。
【0050】
本発明の熱転写受像シートは、該熱転写受像シートの受像面に画像形成後、画像形成面に保護層を転写してなるものであってもよい。上記保護層を転写することにより、得られるシートの耐光性を向上させることができ、また耐皮脂性等の耐久性をも向上させることができる。
【0051】
上記保護層は、熱可塑性樹脂、熱架橋性樹脂、電離放射線架橋樹脂等、公知の保護層形成用樹脂から形成することができる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ樹脂、これらの各樹脂をシリコーン変性させた樹脂等が挙げられる。
上記保護層は、熱可塑性樹脂、熱架橋性樹脂及び電離放射線架橋樹脂を1種又は2種以上配合してなるものであってもよい。
上記保護層は、上記樹脂に加え、必要に応じ、紫外線遮断樹脂、紫外線吸収剤、導電性樹脂、フィラー等、上述の受容層に関して説明した添加剤を適宜配合してなるものであってもよい。
【0052】
上記保護層は、1層のみから構成されるものであってもよいし、組成等が異なる2層以上の層を積層して構成されるものであってもよい。
上記保護層は、熱転写受像シート(印画物)への転写性、接着性等を良好にするために、接着層を有するものであってもよい。
上記接着層は、従来公知のものから形成することができるが、ガラス転移温度(Tg)が50〜80℃の熱可塑性樹脂から形成することがより好ましい。
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等から上記範囲内のガラス転移温度を有するものを選択することが好ましい。また、接着性の点で、上記熱可塑性樹脂は、平均分子量の小さい方が好ましい。
上記保護層は、層全体で、通常0.1〜30μm、好ましくは0.5〜5μmの厚みとすることができる。
【発明の効果】
【0053】
本発明の熱転写受像シートは、上記構成よりなるので、層間接着性が良く、また、光沢性及び平滑性に優れているので銀塩写真に匹敵する画像を得ることが可能である。本発明の熱転写受像シートの製造方法は、上記構成よりなるので、層間接着性が良く、光沢性及び平滑性に優れた熱転写受像シートを低コストで容易に作成することができる。更に、本製造方法は、溶剤を含有する接着剤を使用することなく基材シートと多孔質フィルムとを積層することができるので、環境上好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、文中、部又は%とあるのは特に断りのない限り、質量基準である。
本実施例及び本比較例に特に記載がない限り、各特性の測定は、明細書本文と同様の条件にて行った。
【0055】
実施例1
1.多孔質フィルムの作成
微細空隙を有する多孔質フィルムの中心層用に下記〔コンパウンド1〕を用い、その両側にスキン層用として下記〔コンパウンド2〕を用いて3層共押出しによりフィルム化し、更に二軸延伸して、厚さ36μmのフィルムを得た。
次いで作成した多孔質フィルムの受容層を形成する側の表面に、窒素雰囲気下でコロナ放電処理を行った。
〔コンパウンド1〕
・ポリプロピレン 100部
・イソプレン重合物 1部
・ポリメチルメタクリレート〔PMMA〕 7部
〔コンパウンド2〕
・ポリプロピレン 100部
・イソプレン重合物 1部
・PMMA 2部
上記で得たフィルムの中心層の厚さは30.0μmで、両側のスキン層の厚さは各々3.0μmであった。また、中心層中の微細空隙の体積分率は18.2%であり、スキン層中の微細空隙の体積分率は5.5%であった。
【0056】
2.中間層及び受容層の形成
多孔質フィルムの窒素雰囲気下でコロナ放電処理を行った面上に下記配合の中間層用塗工液を乾燥後2g/mとなるようにワイヤーバーで塗工し、110℃で1分乾燥した後、その上に下記配合の受容層用塗工液を乾燥後4g/mとなるようにワイヤーバーで塗工し、110℃で1分乾燥した。
【0057】
(中間層用塗工液組成)
ポリエステル樹脂(WR−905、日本合成化学社製) 13.1部
酸化チタン(TCA−888、トーケムプロダクツ社製) 26.2部
蛍光増白剤(ベンゾイミダゾール誘導体、製品名;ユビテックスBAC、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
0.39部
水/イソプロピルアルコール〔IPA〕(質量比2/1) 60部
【0058】
(受容層用塗工液組成)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ソルバインC、日信化学社製) 60部
エポキシ変性シリコーン(X−22−3000T、信越化学工業社製)1.2部
メチルスチル変性シリコーン(24−510、信越化学工業社製) 0.6部
メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 5部
【0059】
3.ポリオレフィン樹脂層の形成
次に、上記多孔質フィルムの受容層を塗工していない側の面と、基材シートである150μmのノンコート紙とが接着するようにMFR=2(g/10分)のポリプロピレン樹脂(製品名F122G、三井化学社製)を溶融押出してラミネート(押出ラミネーション)を樹脂温度300℃にて行い、厚み15μmのポリオレフィン樹脂層を形成させて、熱転写受像シートを得た。
【0060】
実施例2
溶融押出する樹脂をMFR=25(g/10分)のポリプロピレン樹脂(製品名F329RA、三井化学社製)に変更する以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0061】
実施例3
溶融押出する樹脂をMFR=21(g/10分)のポリプロピレン樹脂(製品名PH943B、サンアロマー社製)に変更する以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0062】
実施例4
溶融押出する樹脂の厚みを10μmに変更する以外は、実施例3と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0063】
実施例5
溶融押出する樹脂の厚みを40μmに変更する以外は、実施例3と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0064】
比較例1
溶融押出する樹脂をMFR=42(g/10分)のポリプロピレン樹脂(製品名PH03A、サンアロマー社製)に変更する以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0065】
比較例2
溶融押出する樹脂をMFR=30(g/10分)のポリプロピレン樹脂(製品名F109V、三井化学社製)に変更する以外は、実施例1と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0066】
比較例3
溶融押出する樹脂の厚みを5μmに変更する以外は、実施例3と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0067】
比較例4
溶融押出する樹脂の厚みを50μmに変更する以外は、実施例3と同様に熱転写受像シートを作製した。
【0068】
試験例
各実施例及び各比較例から得られた熱転写受像シートについて、目視にて表面平滑性を評価し、更に、王研式透気度平滑度試験機EB1 65(旭精工社製)用いて平滑度を測定し、GLOSS METER VG200(NIPPON DENSHOKU社製)にて表面光沢度(45°反射)を測定した。
結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
MFRが25(g/10分)以下の樹脂を用いた実施例1〜5の熱転写受像シートは、いずれも平滑性に優れているが、MFRが25(g/10分)を越えるポリオレフィン樹脂を用いた比較例1〜2の熱転写受像シートはやや表面平滑性に劣っていた。
MFRが25(g/10分)以下の樹脂であっても比較例3のようにポリオレフィン樹脂層の厚みが10μm未満である熱転写受像シートは、表面の平滑性が劣るとともに、基材シートであるセルロース紙と多孔質への接着性が低下した。また、比較例4のようにポリオレフィン樹脂層の厚みが40μmを超えた熱転写受像シートは、表面平滑性は優れるものの偏肉等の不具合が発生しやすく、生産性が低下し、コスト高となってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の熱転写受像シートは、上記構成よりなるので、層間接着性が良く、低コストであり、また、光沢性及び平滑性に優れているので銀塩写真に匹敵する画像を得ることが可能である。本発明の熱転写受像シートの製造方法は、上記構成よりなるので、層間接着性が良く、光沢性及び平滑性に優れた熱転写受像シートを容易に作成することができる。更に、本製造方法は、溶剤を含有する接着剤を使用することなく基材シートと多孔質フィルムとを積層することができるので、環境上好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層、多孔質フィルム、中間層及び受容層をこの順に積層してなる熱転写受像シートにおいて、
前記ポリオレフィン樹脂層は、メルトフローレートが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂からなり厚みが10〜40μmである
ことを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項2】
多孔質フィルムは、ポリプロピレン樹脂からなるものである請求項1記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
JIS Z 8741に準拠して測定した表面光沢度が60%以上である請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
ポリオレフィン樹脂層は、メルトフローレートが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂を基材シートの少なくとも一方の面と多孔質フィルムとの間に溶融押出して前記基材シートの少なくとも一方の面と前記多孔質フィルムとを貼着することよりなる押出ラミネーションにより形成したものである請求項1〜3のいずれか1つに記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
基材シートの少なくとも一方の面にポリオレフィン樹脂層、多孔質フィルム、中間層及び受容層をこの順に積層してなる熱転写受像シートの製造方法において、
前記製造方法は、
(1)多孔質フィルムと中間層とを積層する工程、
(2)中間層と受容層とを積層する工程、並びに、
(3)基材シートの少なくとも一方の面と多孔質フィルムとの間にメルトフローレートが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂を用いて厚みが10〜40μmであるポリオレフィン樹脂層を形成する工程
を有する
ことを特徴とする熱転写受像シートの製造方法。
【請求項6】
前記工程(3)において、メルトフローレートが2〜25(g/10分)であるポリオレフィン樹脂を基材シートの少なくとも一方の面と多孔質フィルムとの間に溶融押出して前記基材シートの少なくとも一方の面と前記多孔質フィルムとを貼着することよりなる押出ラミネーションにより厚みが10〜40μmであるポリオレフィン樹脂層を形成する請求項5に記載の熱転写受像シートの製造方法。
【請求項7】
多孔質フィルムは、ポリプロピレン樹脂からなるものである請求項6又は7に記載の熱転写受像シートの製造方法。