説明

熱転写受像シート及びフォトブック

【課題】 基材シート両面に染料受容層を設け、その両面の染料受容層に熱転写による画像が形成可能な熱転写受像シートにおいて、その熱転写受像シートに熱転写画像を形成した印画物を多数枚重ねて、該印画物の一端を接着剤により接着して綴じたフォトブックの形態で、印画物が脱落することなく、またその印画物を作製する上で、切り欠き作製の専用装置が必要なくなるなどの問題がない熱転写受像シート及びフォトブックを提供する。
【解決手段】 芯材2の両面に接着剤層3、4を介して多孔質フィルム5、6を貼り合わせた基材シート10の両面に、少なくとも染料受容層7、8を設けた矩形状の第一の領域Aと、前記芯材2の少なくとも片面上に、接着剤層3、剥離シート9を積層した矩形状の第二の領域Bからなり、前記第一の領域Aと前記第二の領域Bとが隣接していることを特徴とする熱転写受像シート1とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シート及びその熱転写受像シートに熱転写による画像を形成した印画物を使用したフォトブックに関し、更に詳しくは、基材シートの両面に染料受容層を設け、その両面の染料受容層に熱転写による画像が形成可能な熱転写受像シートと、その熱転写受像シートによる印画物を、多数枚重ねて、一端を綴じたフォトブックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、それらの中でも、昇華転写用染料を記録材とし、これをポリエステルフィルム等の基材上に適当なバインダーで担持させた染料層を有する熱転写シートから、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成した熱転写受像シート上に昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。この場合には、加熱手段として、プリンターのサーマルヘッドによる加熱によって、3色または4色の多数の加熱量が調整された色ドットを熱転写受像シートの受容層に転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明で、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0003】
また、マルチメディアに関連した様々なハードおよびソフトの発達により、上記の熱転写方法は、コンピューターグラフィックス、衛星通信による静止画像そしてCD−ROMその他に代表されるデジタル画像及びビデオ等のアナログ画像のフルカラーハードコピーシステムとして、その市場を拡大している。
【0004】
この熱転写方法による熱転写受像シートの具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとしては、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途など多岐になってきている。
【0005】
そのような用途の一つとして、両面にプリント可能な熱転写受像シートが挙げられる。両面にプリント可能な熱転写受像シートは、シート枚数を減少させて省資源化を図るだけでなく、写真アルバム等の小冊子状にする新しい形態のカラープリントを作製することや、ハガキや各種のカード類等の作製に使用することにも適している。したがって、両面にプリント可能な熱転写受像シートとして、いくつかの提案がある。
【0006】
例えば、特許文献1には、印画物の折り目の部分にハーフカットが施され、その印画物を多数枚重ねて、表紙をコの字状にくるみ、印画物積層体(印画物束)の背部と表紙を、製本用糊で接着したフォトブックが記載されている。このような印画物積層体の背部を製本用糊で接着する方法は、糸綴じ製本やファイル穴によるクリップ製本などと比べ、簡単に製本できる利点を有するが、糊が印画物積層体の背部のみに塗布されるため、接着する面積が少なく、接着強度が不足し、フォトブックの一部の印画物が脱落してしまう可能性がある。
【0007】
これに対して、特許文献2にあるように、製本される用紙の端辺に切り欠きを形成して、接着面積を増加させることが行われている。しかし、その切り欠きを形成するには、ダイとパンチなどの専用装置が必要となり、製造するスペースが広く必要であり、また製造コストが高くなるなどの問題がある。
【0008】
上記のフォトブックの一部の印画物が脱落することは、貴重な記念物の一部として、決めた順番に綴じられたものが欠落するものとなり、重大な欠陥である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−228410号公報
【特許文献2】特許第4618055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、上記の問題を解決するために本発明の目的は、基材シートの両面に染料受容層を設け、その両面の染料受容層に熱転写による画像が形成可能な熱転写受像シートにおいて、その熱転写受像シートに熱転写画像を形成した印画物を多数枚重ねて、該印画物の一端を接着剤により接着して綴じたフォトブックの形態で、印画物が脱落することなく、またその印画物を作製する上で、切り欠き作製の専用装置が必要なく、製造スペースが広くなる、製造コストが高くなるなどの問題がない熱転写受像シート及びフォトブックを提供することである。
【0011】
本発明におけるフォトブックとは、主として写真(アナログ・デジタル)を入力素材として、熱転写受像シートに出力されている印画物であり、表紙と中面(印画物)が一体となって綴じられているもので、フォトブックを構成する印画物が脱落しないものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、請求項1として、芯材の両面に接着剤層を介して多孔質フィルムを貼り合わせた基材シートの両面に、少なくとも染料受容層を設けた矩形状の第一の領域と、前記芯材の少なくとも片面上に、接着剤層、剥離シートを積層した矩形状の第二の領域からなり、前記第一の領域と前記第二の領域とが隣接していることを特徴とする熱転写受像シートである。この熱転写受像シートによる印画物は、フォトブックとして綴じる際に、従来必要であった切り欠き作製の専用装置を用意することがなくなるので、製造スペースが広くなる、製造コストが高くなる等の問題が生じない。
【0013】
また請求項2として、請求項1に記載する熱転写受像シートに熱転写画像を形成した印画物を多数枚重ねて、該印画物の一端を、前記剥離シートを剥がして、露出した接着剤層により接着して綴じたことを特徴とするフォトブックである。このフォトブックは、本発明の熱転写受像シートを用いて、染料受容層に熱転写による画像を形成した後に、第二の領域の剥離シートを剥がすだけで、接着剤層を露出させて、重なっている印画物を簡単に、かつ十分な強度で接着させることができ、印画物が脱落することを防止できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、熱転写受像シートに熱転写による画像を形成した印画物を多数枚重ねて、該印画物の一端を、剥離シートを剥がすだけで、印画物を構成している接着剤層により、接着させて綴じたフォトブックを簡単に作製できる。そのフォトブックの形態で、印画物同士が強固に接着し、貴重な記念物の一部である印画物が脱落することがない。また、その印画物は、フォトブックとして綴じる際に、従来必要であった切り欠き作製の専用装置を用いないので、製造スペースが広くなる、製造コストが高くなる等の問題がない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の熱転写受像シートである一つの実施例を示す概略図である。
【図2】本発明の熱転写受像シートである他の実施例を示す概略図である。
【図3】本発明のフォトブックである一つの実施例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1に本発明の熱転写受像シートである一つの実施例を示す。図1の1)が熱転写受像シートの概略平面図であり、図1の2)がp−p´における概略断面図である。図示した熱転写受像シート1では、基材シート10が芯材2の両面に接着剤層3、4を介して多孔質フィルム5、6を貼り合わせた構成であり、該基材シート10の両面に、染料受容層7、8を設け、該染料受容層に熱転写による画像が形成可能なものである。その熱転写受像シート1の表面が、熱転写受像シートの一辺11を含んだ矩形状の第一の領域Aと、該第一の領域を除いた第二の領域Bからなり、該第一の領域Aの両面には、染料受容層7、8を有している。上記の第二の領域Bは、矩形状であり、また第一の領域Aと隣接したものである。
【0017】
第一の領域Aの片面には、前記熱転写受像シートの一辺11と平行な方向に、所定の間隔Lで染料受容層7を有している。また、第二の領域Bの片面には、前記熱転写受像シートの一辺11と平行な方向に、芯材2の表面に接着剤層3を露出可能にして、剥離シート9を積層した構成である。なお、第二の領域Bの他方の面は、芯材2と多孔質フィルム6とが接着剤層4で接着して貼り合せられている。この例では、第二の領域Bで、熱転写受像シートの一辺11と平行な方向に、芯材2の表面に接着剤層を露出可能にして、剥離シートを積層した条件を満足するのは、芯材の一方の面のみである。
【0018】
図2に、本発明の熱転写受像シートである他の実施例を示す。図2の1)が熱転写受像シートの概略平面図であり、図2の2)がq−q´における概略断面図である。図示した熱転写受像シート1は、基材シート10が芯材2の両面に接着剤層3、4を介して多孔質フィルム5、6を貼り合わせた構成であり、該基材シート10の両面に、プライマー層12、13を介して染料受容層7、8を設け、該染料受容層に熱転写による画像が形成可能なものである。その熱転写受像シート1の表面が、熱転写受像シートの一辺11を含んだ矩形状の第一の領域Aと、該第一の領域を除いた第二の領域Bからなり、該第一の領域Aの両面には、染料受容層7、8を有している。上記の第二の領域Bは、矩形状であり、また第一の領域Aと隣接したものである。
【0019】
第一の領域Aの両面には、前記熱転写受像シートの一辺11と平行な方向に、所定の間隔Lで染料受容層7、8を有している。また、第二の領域Bの両面には、前記熱転写受像シートの一辺11と平行な方向に、芯材2の表面に接着剤層3、4を露出可能にして、剥離シート9、14を積層した構成である。この例では、第二の領域Bで、熱転写受像シートの一辺11と平行な方向に、芯材2の表面に接着剤層を露出可能にして、剥離シートを積層した条件を満足するのは、芯材の両面の場合である。
【0020】
図1、2で示した第二の領域Bにおける幅をmで示したが、mは3.0mm〜10.0mmの大きさが好ましい。mが3.0mm未満であると、接着強度が不足してしまう、あるいは、その幅mが狭すぎて、幅mの剥離シートを接着剤層に貼り合せる際に、安定して貼り合せることが難しく、またmが10.0mmを超えると、フォトブックの見開きが困難になり、好ましくない。
【0021】
図1に示した熱転写受像シートの場合は、芯材2の片面に接着剤層を露出可能にしているので、印画物として、多数枚重ねて、剥離シートを剥がして、露出した接着剤層により接着して綴じた状態のフォトブックを形成する際に、印画物の片面にしか、接着剤層が露出しないので、多数枚の印画物を重ねる際に、その露出する接着剤層が印画物の上面であれば、重ねる印画物の全てを上面が露出する接着剤層になるように設定する必要がある。印画物の片面に、露出した接着剤層が「のりしろ」となって、露出した接着剤層と接する印画物を強固に接着させ、印画物が脱落することを、防止できる。
【0022】
それに対し、図2に示した熱転写受像シートの場合は、芯材2の両面に接着剤層を露出可能にしているので、印画物として、多数枚重ねて、剥離シートを剥がして、露出した接着剤層により接着して綴じた状態のフォトブックを形成する際に、印画物の表裏の両面に、露出した接着剤層が「のりしろ」となって、隣り合った印画物をより強固に接着させ、印画物が脱落することを、防止できる。図2の場合は、熱転写受像シートの表裏がもし逆になっても、フォトブックとしての接着性に問題は生じない。
【0023】
上記のmの大きさは、染料受容層等と基材シートを含んだ印画物全体の厚さと材質に応じて、多数枚の印画物の一端を接着剤により接着して綴じるフォトブックにおける印画物同士の接着性、フォトブックの見開きしやすさ、さらに印画物表面の外観などを考慮して、決められる。
【0024】
図1、2では、示さなかったが、剥離シートを剥がして、接着剤層を露出させるが、その露出した接着剤層3(4)は、ベタ状に限らず、接着性を低下させるための印刷層を、接着剤層の上に部分的に形成させて、接着強度を低めて使用することが可能である。
【0025】
以下、上記の実施例で使用される熱転写受像シートを構成する各層について、詳細に説明する。
(芯材)
芯材2としては、紙やプラスチックフィルム等から構成できるが、フルカラーの銀塩写真を再現する印画紙と同等の平滑性及び質感等をもたせるために、例えば、原紙、上質紙等の通常使用されるパルプを主体とした非コート紙の両面に、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂層を溶融押出し法により形成したものを使用することが好ましい。上記の非コート紙の厚さは、通常10〜300μm程度である。上記のポリオレフィン樹脂層は、実用上、両者の材質は同じものを使用して、基材のカールバランス等調整することが好ましい。ポリオレフィン樹脂層の厚さは、5〜40μm程度である。
【0026】
(多孔質フィルム)
本発明の熱転写受像シートで使用する多孔質フィルム5、6としては、表面光沢度が高い多孔質フィルムであれば特に限定はされないが、その柔軟性のためにサーマルヘッドとの密着性に優れ、生産性も良好である、ベースとなる樹脂としてポリオレフィン、特にポリプロピレンを用いた、内部に微細空隙を有する多孔質フィルムが好ましい。また、多孔質フィルムは、その表面に形成する層との密着力が乏しい場合には、その表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。
【0027】
フィルム中に微細空隙を生じさせる方法としては、フィルムのベースとなる樹脂に対して、非相溶な有機微粒子又は無機微粒子(一種類でも複数でもよい)を混練したコンパウンドを作成する。このコンパウンドは微視的にみるとベースとなる樹脂と、ベースとなる樹脂に対して非相溶な微粒子とが微細な海島構造を形成しており、このコンパウンドをフィルム化し、延伸することにより海島界面の剥離、又は、島を形成する領域の大きな変形によって、上記のような微細空隙を発生させるものである。
【0028】
微細空隙を形成する方法として、例えば、ポリプロピレンを主体とし、それにポリプロピレンより高い融点を有するポリエステルやアクリル樹脂を加えた方法が挙げられる。この場合、ポリエステルやアクリル樹脂が微細空隙を形成する核剤の役割をする。また、ベースとする樹脂をポリプロピレンとする多孔質フィルムを作成する場合、更に微細で緻密な空隙を発生させるためには、更にポリイソプレンを加えることが好ましい。これにより、より高い印字感度を得ることができる。
【0029】
例えば、ポリプロピレンを主体とし、これにアクリル樹脂又はポリエステル、そしてポリイソプレンを配合したコンパウンドを作成し、フィルム化し、延伸することにより高い印字感度を有する多孔質フィルムを得ることができる。多孔質フィルムの厚さは30μm以上が好ましく、30〜60μmが特に好ましい。多孔質フィルムの厚さが30μm未満では、画像を印字した時に多孔質フィルムが潰れてしまい、画像品質が損なわれてしまう。また厚さが60μmを越えると、画像は良好になるが、熱転写受像シートが必要以上に厚くなり、コスト的に好ましくない。また、多孔質フィルム5と多孔質フィルム6は、材質及び厚さを合わせて、熱転写受像シートのカールバランス等調整することが好ましい。
【0030】
(接着剤層)
芯材と多孔質フィルム、あるいは芯材と剥離シートとを貼り合わせるための接着剤層3、4は、ドライラミイネーション、ウェットラミネーション、貼着後電子線照射により接着させる方法等の貼合方法に応じて、選択することができる。但し、本発明の接着剤層は、芯材の両面に多孔質フィルムを貼り合わせるための接着剤として機能させるだけでなく、芯材と剥離シートの間で、剥離シートを剥がすだけで、接着剤層を露出させて、重なっている印画物を接着させるための接着剤としても機能させるものである。
【0031】
本発明の接着剤層は、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、ポリウレタン樹脂や、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどから形成することができる。接着剤層の塗工量は、約8〜30g/m2(固形分)が一般的であり、従来公知の方法、すなわち、グラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート等の方法で、塗布し、乾燥して接着剤層を形成する。本発明では、芯材の表面に、上記接着剤層を塗工し、多孔質フィルムと剥離シートを貼合することが好ましい。
【0032】
(剥離シート)
上記の剥離シート9、14は、下記に挙げる基材表面に、離型層を形成して用意することができる。その基材としては、従来公知のプラスチックフィルムでよく、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、基材内部にミクロボイドを有するポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。また、グラシン紙または顔料コート紙にポリエチレン等をラミネートしたポリラミ原紙や、ポリプロピレン等を主成分とした合成紙を使用することもできる。離型層は、上記の基材の上に、シリコーン系剥離剤やワックス系剥離剤を0.03g/m2〜0.20g/m2塗布して形成することができる。但し、上記の剥離シートの厚さは、図1の2)、図2の2)に示すように、多孔質フィルムと染料受容層、さらにプライマー層があればそれを合わせた厚さに合わせて、熱転写受像シートの全体の厚さが、均一になるようにすることが好ましい。これにより、熱転写受像シートの製造上、巻取る際の作業性が良くなり、また熱転写記録の際に、搬送性が安定する。
【0033】
(染料受容層)
本発明における熱転写受像シートの染料受容層7、8は、熱転写シートから移行してくる昇華染料を受容し、形成された画像を維持する為のものである。受容層を形成する為の樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0034】
また、熱転写シートとの離型性を向上させるために、受容層中に離型剤を含有することができる。離型剤としてはポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系またはリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、各種シリコーン樹脂などが挙げられるが、シリコーンオイルが好ましい。上記シリコーンオイルとしては油状のものも用いることができるが、硬化型のものを用いても良い。硬化型シリコーンオイルとしては反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等が挙げられるが、反応硬化型、触媒硬化型のシリコーンオイルが特に好ましい。
【0035】
これらシリコーンオイルの添加量は受容層を構成する樹脂の0.5〜30質量%が好ましい。また、受容層の表面の一部に上記離型剤を適当な溶媒に溶解あるいは分散させて塗布した後、乾燥させることにより離型剤層を設けることもできる。離型剤層の厚さは、0.01〜5.0μm、特に0.05〜2.0μmが好ましい。なお、受容層を形成する際にシリコーンオイルを添加して形成すると、塗布後に表面にシリコーンオイルがブリードアウトするが、これを硬化させても離型剤層を形成することができる。なお、上記受容層の形成に際しては、受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を更に高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を添加することができる。また、フタル酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物等の可塑剤を添加するのもよい。
【0036】
上記の如き熱可塑性樹脂及び他の必要な添加剤、例えば、離型剤、可塑剤、充填剤、架橋剤、硬化剤、触媒、熱離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等を加えたものを、適当な有機溶剤に溶解し、あるいは有機溶剤や水に分散した分散体を、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥して、染料受容層を形成することができる。後述するプライマー層等の塗布も、上記の染料受容層の形成手段と同様の方法で行われる。このように形成される染料受容層の塗布量は、通常、乾燥状態で0.5〜50g/m2程度、好ましくは2〜10g/m2である。また、このような染料受容層は連続被覆であることが好ましいが、不連続の被覆として形成してもよい。
【0037】
(プライマー層)
本発明の熱転写受像シートで、上記の多孔質フィルム/接着剤層/芯材/接着剤層/多孔質フィルムも積層体から構成される基材シート10と、染料受容層7、8との間に、プライマー層12、13を形成したものであってもよい。このようなプライマー層は基材シートと染料受容層との接着性を良好にするためのものであり、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エポキシ樹脂等により形成することができ、その厚さは、塗工量で、乾燥時0.1〜20g/m2程度が好ましい
【0038】
(中間層)
染料受容層と基材シートの間には、上記のプライマー層の他に、白色度、クッション性、隠蔽性、帯電防止性、カール防止性等の付与を目的とし、従来公知のあらゆる中間層を必要に応じて設けることができる。中間層に用いるバインダー樹脂としてはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂のうちの活性水酸基を有するものについてはさらにそれらのイソシアネート硬化物をバインダーとすることもできる。
【0039】
また、白色性、隠蔽性を付与する為に酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加することが好ましい。さらに、白色性を高める為にスチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物等を蛍光増白剤として添加したり、印画物の耐光性を高める為にヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤として添加したり、あるいは帯電防止性を付与する為にカチオン系アクリル樹脂、ポリアニリン樹脂、各種導電性フィラー等を添加することができる。中間層の塗工量は、乾燥状態で0.5〜30g/m2程度が好ましい。
【0040】
(接着性を低下させるための印刷層)
熱転写受像シートの剥離シートを剥がして、芯材の表面に接着剤層を露出させた際に、その接着剤層の接着性を低下させる印刷層としては、例えば、シリコーン等の剥離性成分を含むものや、剥離性成分の有無を問わないUV硬化性成分で形成した層を用いることが好ましい。
【0041】
(フォトブック)
図3は、本発明のフォトブックである実施例を示すものである。図3の1)には、上記に説明した熱転写受像シートの熱転写による画像形成後の印画物15を、剥離シートを剥がして露出した接着剤層により、重なった印画物同士を接着し、多数枚の印画物の重ねった状態のもの16と、表・表紙17、裏・表紙18、背表紙19を組み合わせる前の状態を説明する概略図である。図3の2)は、図3の1)で示した各部材を組み合わせて、多数枚の印画物の一端を綴じたフォトブック20を示す概略図である。
【0042】
すなわち、多数枚の印画物の重ねった状態のもの16の表面に、剥離シートを剥がして露出した接着剤層があれば、その接着剤層を用い、その露出した接着剤層がない場合は、適宜、接着剤を手塗りするなどして、多数枚の印画物の重ねった状態のもの16と、表・表紙17、裏・表紙18を、それらの一端21で、接着する。また、上記の一端21の位置に、背表紙19に、適当な接着剤を手塗りなどして、表・表紙17、多数枚の印画物の重ねった状態のもの16の端面、裏・表紙18、及び背表紙19を接着して、一体化させ、フォトブック20が作製される。図3の1)に示すように、両面に画像形成された印画物15が、多数枚で外形が全て揃った状態で、重なったものが用意される。この多数枚重なったものに対して、表・表紙17を最上部にセットし、また裏・表紙18を最下部にセットする。
【0043】
表・表紙17と裏・表紙18の間に、多数枚の印画物が重なったもの16を挟み込む形態である。このようにして、高画質の熱転写画像を両面に有する印画物を、フォトブックの形態で、めくるだけで、印画物が脱落することなく、簡単に多数枚の印画物を観賞することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1 熱転写受像シート
2 芯材
3、4 接着剤層
5、6 多孔質フィルム
7、8 染料受容層
9、14 剥離シート
10 基材シート
11 熱転写受像シートの一辺
12、13 プライマー層
15 印画物
16 多数枚の印画物の重ねった状態のもの
17 表・表紙
18 裏・表紙
19 背表紙
20 フォトブック
21 一端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材の両面に接着剤層を介して多孔質フィルムを貼り合わせた基材シートの両面に、少なくとも染料受容層を設けた矩形状の第一の領域と、
前記芯材の少なくとも片面上に、接着剤層、剥離シートを積層した矩形状の第二の領域からなり、
前記第一の領域と前記第二の領域とが隣接している、
ことを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項2】
請求項1に記載する熱転写受像シートに熱転写画像を形成した印画物を多数枚重ねて、該印画物の一端を、前記剥離シートを剥がして、露出した接着剤層により接着して綴じたことを特徴とするフォトブック。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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