説明

熱転写受像シート用ポリエステル

【課題】熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の全ての特性を同時に満たすことができる。
【解決手段】2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を総量で80モル%以上含有する酸成分とから得られるポリエステルA、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分と、3価以上の芳香族多価カルボン酸を10〜35モル%含有する酸成分とから得られるポリエステルBを含む熱転写受像シート用ポリエステル、該ポリエステルを含有する樹脂分散液、その製造方法及び上記ポリエステルを用いた熱転写受像シート、その製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シート用ポリエステル、該ポリエステルを含有する樹脂分散液、及び上記ポリエステルを用いた熱転写受像シート、それらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華性染料を記録材とし、これを基材に担持させた熱転写シートを用いて、昇華性染料で染着可能な熱転写受像シート上にカラー画像を形成する方法が提案されている。これは加熱手段としてプリンターのサーマルヘッドなどを使用し、加熱によって染料を受像シートに転写させてカラー画像を得るものである。このようにして形成された画像は、染料を用いることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、中間色の再現性や階調性に優れ、高品質の画像が期待できる。このような熱転写受像シートとして、近年、特に、染料の染着性、耐光性と離型性のいずれの特性においても優れた熱転写受像シートが望まれている。
上記熱転写受像シートの染料受容層としては、染料の染着性に優れる点から、ポリエステルが使用されることがある。このようなポリエステルを用いた熱転写受像シートとしては、例えば、特許文献1〜5があり、その各々は特定のアルコール成分などに着目した例を開示している。
【0003】
【特許文献1】特開平5−238167号公報
【特許文献2】特開2006−347148号公報
【特許文献3】特開2004−255880号公報
【特許文献4】特開2004−256813号公報
【特許文献5】特開2007−175916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1〜5の各々に記載の技術では、熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の全ての特性を同時に満たすことは困難であった。すなわち、熱転写受像シートの染料受容層に用いるポリエステルにおいては、芳香族アルコールであるビスフェノールA由来の構成成分は染料の染着性が高いが光により分解しやすく、また、芳香族カルボン酸由来の構成成分はより構造分解しやすい。一方、構造分解しにくい脂環族アルコールや脂肪族アルコール由来の構成成分は染料の染着性が十分でなく、脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸由来の構成成分は構造分解しにくく耐光性に優れるものであるが、離型性に劣るものである。このように、いずれの原料成分の組合せにおいても染料の染着性、耐光性及び離型性の全てを満足する熱転写受像シート用のポリエステルは未だ見出されていなかった。
【0005】
本発明は、得られる熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の全ての特性を同時に満たすことができる、熱転写受像シート用ポリエステル、該ポリエステルを含有する樹脂分散液、その製造方法及び上記ポリエステルを用いた熱転写受像シート、その製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
[1]式(I)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、ROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、かつxとyの和の平均値が2〜7である。)
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を総量で80モル%以上含有する酸成分とから得られるポリエステルA、及び上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分と、3価以上の芳香族多価カルボン酸を10〜35モル%含有する酸成分とから得られるポリエステルBを含む熱転写受像シート用ポリエステル、
【0009】
[2]水性媒体中に、上記[1]記載の熱転写受像シート用ポリエステルを含む樹脂を分散してなる熱転写受像シート用樹脂分散液、
[3]水性媒体中に、上記[1]記載の熱転写受像シート用ポリエステルを含む樹脂粒子を分散する工程を有する熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法、
[4](1)上記[3]記載の製造方法で樹脂分散液を製造する工程、及び(2)基材の少なくとも一方の面に、工程(1)で得られた樹脂分散液を塗布して染料受容層を形成する工程、を含む熱転写受像シートの製造方法、及び
[5]基材、及び該基材の少なくとも一方の面に染料受容層を有する熱転写受像シートであって、上記染料受容層が、上記[2]記載の樹脂分散液を塗布して得られる、熱転写受像シート、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、得られる熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の全ての特性を同時に満たすことができる、熱転写受像シート用ポリエステル、該ポリエステルを含有する樹脂分散液、その製造方法及び上記ポリエステルを用いた熱転写受像シート、その製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[熱転写受像シート用ポリエステル]
本発明の熱転写受像シート用ポリエステルは、上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を総量で80モル%以上含有する酸成分とから得られるポリエステルA、及び上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分と、3価以上の芳香族多価カルボン酸を10〜35モル%含有する酸成分とから得られるポリエステルBを含むものである。
【0012】
本発明においては、単に原料成分として、染料染着性の高いビスフェノールA、耐光性の高い脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を含有したモノマー成分を用いて得られるポリエステルを使用するのではなく、原料モノマーとしてのビスフェノールAと脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸から得られるポリエステルと、ビスフェノールAと3価以上の多価カルボン酸から得られるポリエステルを併用するものである。すなわち、各要求性能に注目して選択したモノマーを用いて合成されたポリエステルでは、物性のバランスがとれず要求性能を満たすことができないが、一方のポリエステルに脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を、他方のポリエステルに3価以上の芳香族多価カルボン酸をそれぞれ特定量使用することで機能分離が可能となり、両者の相互作用により得られる熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の全てを同時に満足することができる。
【0013】
ポリエステルA
本発明において、ポリエステルAは、上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を総量で80モル%以上含有する酸成分とから得られるものである。
【0014】
ポリエステルAの原料モノマーとして、上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分を用いる。一般式(I)において、Rはエチレン基又はプロピレン基を表わす。x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を表わし、各々正の数である。各Rは同一でも異なっていてもよい。xとyの和の平均値は、カルボン酸との反応性の観点から、2〜7であり、好ましくは2〜5、より好ましくは2以上4未満である。
【0015】
上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物としては、具体的には、上記付加モル数を有するポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、そのエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物の重量比率(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)がモル比で50/50〜0/100であることが好ましく、上記比率が、上記範囲内であれば熱転写受像シートの離型性に優れることから好ましい。上記観点から、上記含有比率は、40/60〜0/100であることがより好ましく、更に好ましくは30/70〜0/100であり、より更に好ましくは0/100である。
【0016】
上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、原料アルコール成分中に50モル%以上含有されるが、好ましくは70モル%以上含有され、より好ましくは80モル%以上含有され、更に好ましくは実質的に100モル%である。
なお、本発明の効果を損しない範囲で、エチレンオキサイド付加物及び/叉はプロピレンオキサイド付加物の一部が他のアルキレンオキサイド付加物で置換されていてもかまわない。
【0017】
ポリエステルAの原料成分であるアルコール成分として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とともにこれ以外の公知のアルコール成分を使用することができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。熱転写受像シートの離型性の観点からは、上記アルコール成分として、3価以上のアルコールを用いることが好ましく、具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトールを用いることがより好ましい。上記アルコール成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ポリエステルAの原料モノマーとしてのカルボン酸成分は、脂肪族及び/又は脂環族のカルボン酸を総量で80モル%以上含有する。
脂肪族カルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸、ステアリン酸などのカルボン酸;それらの酸の酸無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、脂肪族カルボン酸として、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸を用いることが好ましく、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基で置換されたコハク酸を用いることがより好ましく、炭素数8〜22の、より好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又は炭素数8〜22の、より好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐状又は環状のアルケニル基がより好ましい。
具体的には、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸において、アルキル基としては、例えば各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種イコシル基などを挙げることができる。
【0020】
また、アルケニル基としては、例えば各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、各種イコセニル基などを挙げることができる。
アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸は、カルボン酸成分中に5〜50モル%含有されることが好ましく、これにより、熱転写受像シートへの染料の染着性が向上する。これは、上記のコハク酸の側鎖にあるアルキル基及び又はアルケニル基の存在により、ポリエステル間の相互作用が弱まり、染料がポリエステル内部に染み込むためと推察され、染料の浸透性、すなわち、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、上記コハク酸は、カルボン酸成分中に10〜40モル%含有されることがより好ましく、20〜40モル%含有されることが更に好ましい。
【0021】
脂環族カルボン酸としては脂環族ジカルボン酸あるいはこれらの酸の酸無水物やアルキルエステルが好ましく、ポリエステル合成時のアルコールとの反応性および該ポリエステルの耐熱性の観点から、より好ましくはシクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類、あるいはこれら酸の無水物である。
【0022】
具体的には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジエチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジプロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸等、あるいはこれらの酸の酸無水物が挙げられる。これらの中でも、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸及びその酸無水物であるヘキサヒドロ無水フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、熱転写受像シートの離型性の観点から1,4−シクロヘキサンジカルボン酸がより好ましい。
【0023】
本発明においては、熱転写受像シートの離型性及び耐湿性の観点から、ポリエステルAの原料酸成分として、脂環族カルボン酸が好ましく用いられる。
上記脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸は、熱転写受像シートの耐光性等の観点から、原料カルボン酸成分中に総量で80モル%以上含有されるが、上記脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を含む2価カルボン酸は、カルボン酸成分中、90モル%以上が好ましく、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは実質100モル%である。すなわち、上記脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸は、カルボン酸成分中、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは実質100モル%である。
【0024】
本発明においては、ポリエステルAの原料であるカルボン酸成分として、脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸とともにこれ以外の公知のカルボン酸成分を使用することができる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸等の2価のカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の酸無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。上記カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本発明においては、熱転写受像シートの離型性の観点から、上記脂肪族及び/又は脂環族のカルボン酸以外のカルボン酸成分として、3価以上のカルボン酸及び/又はそれら酸の無水物を用いることも有効な方法であり、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸及び/又はそれら酸の無水物を用いることがより好ましく、更に好ましくはトリメリット酸及び/又はその酸無水物である。
3価以上のカルボン酸の含有量は、カルボン酸成分中、10モル%未満が好ましく、5%未満がより好ましい、
ポリエステルAは、例えば、上記アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。染料の染着性及び熱転写受像シートの離型性の観点から、原料のポリエステルはブロードな分子量分布を有するものであることが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、錫触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、2酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。
【0026】
染料の染着性、熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルAの軟化点は75〜130℃であることが好ましく、80〜125℃がより好ましく、95〜120℃がさらに好ましい。また、ガラス転移点は35〜65℃が好ましい。酸価は、ポリエステルAの水性媒体中での分散性、すなわち乳化性の観点から、1〜35mgKOH/gが好ましく、5〜25mgKOH/gがより好ましい。ガラス転移点、軟化点及び酸価は、いずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、ポリエステルAの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましく、2,000〜7,000が更に好ましい。
【0027】
ポリエステルB
本発明において、ポリエステルBは、上記式(1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分と、3価以上の芳香族多価カルボン酸を10〜35モル%含有する酸成分とから得られるものである。
上記ポリエステルBを形成する原料モノマーであるアルコール成分としては、熱転写受像シートの離型性及び染料の染着性の観点から、上記ポリエステルAの製造に用いられる。式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物と同様のものが用いられる。
上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、原料アルコール成分中に80モル%以上含有されるが、好ましくは90モル%以上含有され、より好ましくは100モル%含有される。
【0028】
ポリエステルBの原料成分であるアルコール成分として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とともにこれ以外の公知のアルコール成分を使用することができる。具体的には、ポリエステルAの製造において、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物とともに用いられる公知のアルコール成分と同様のものが用いられる。
本発明においては、熱転写受像シートの離型性の観点から、上記アルコール成分として、3価以上のアルコールを用いることが好ましく、具体的には、グリセリン、ペンタエリスリトールを用いることがより好ましい。
【0029】
また、ポリエステルBの原料成分である酸成分は、3価以上の芳香族多価カルボン酸を含有する。本発明において、3価以上の多価カルボン酸には、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルを含む。熱転写受像シートの離型性の観点から、3価以上の芳香族多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸及びそれら酸の無水物を用いることが好ましく、更に好ましくはトリメリット酸及び/又はその無水物である。
3価以上の芳香族多価カルボン酸は、原料酸成分中、10〜35モル%含有され、熱転写受像シートの離型性の観点から、好ましくは10〜30モル%含有され、より好ましくは10〜20モル%含有される。
【0030】
本発明においては、原料成分である酸成分として、3価以上の芳香族多価カルボン酸とともにこれ以外の公知の酸成分を使用することができる。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸;ポリエステルAにおいて述べた炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基で置換されたコハク酸;それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。カルボン酸成分中には、熱転写受像シートの離型性及び染料の染着性の観点から、芳香族ジカルボン酸及びそれらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等を含むことが好ましく、具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びそれらの酸の酸無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステル等が好ましい。上記カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記芳香族ジカルボン酸及びそれらの酸の酸無水物及びアルキル(炭素数1〜3)エステル等はカルボン酸成分における2価カルボン酸成分中、80モル%以上が好ましく、90モル%以上が好ましく、実質100モル%であることが好ましい。
ポリエステルBも、ポリエステルAと同様にして製造することができる。
【0031】
染料の染着性、熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルBの軟化点は120〜160℃であることが好ましく、130〜155℃がより好ましい。また、ガラス転移点は60〜80℃が好ましい。酸価は、ポリエステルBの水性媒体中での分散性、すなわち乳化性の観点から、10〜40mgKOH/gが好ましく、10〜35mgKOH/gがより好ましい。ガラス転移点、軟化点及び酸価は、いずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、ポリエステルBの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましく、2,000〜7,000が更に好ましい。
【0032】
熱転写受像シート用ポリエステル
本発明の熱転写受像シート用ポリエステル(以下「本発明のポリエステル」ということがある)は、上記ポリエステルA及びポリエステルBを、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、重量比率(ポリエステルA/ポリエステルB)で、20/80〜80/20の割合で含むことが好ましい。この比率は上記観点から、40/60〜80/20であることがより好ましく、50/50〜80/20であることが更に好ましい。本発明のポリエステルは、上記ポリエステルA及びポリエステルBのみからなることが好ましい。
【0033】
また、熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の両立の観点から、ポリエステルAとポリエステルBの軟化点差は、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることが更に好ましい。また、その上限値は100℃であることが好ましく、90℃であることがより好ましい。
なお、本発明のポリエステルの軟化点、ガラス転移点、酸価及び数平均分子量は、本発明のポリエステルを構成する樹脂の混合物としての軟化点、ガラス転移点、酸価及び数平均分子量を意味する。
【0034】
染料の染着性、熱転写受像シートの離型性の観点から、本発明のポリエステルの軟化点は75〜160℃であることが好ましく、80〜155℃がより好ましい。また、ガラス転移点は35〜80℃が好ましく、より好ましくは50〜80℃である。酸価は、ポリエステルを含む樹脂の水性媒体中での分散性、すなわち乳化性の観点から、1〜40mgKOH/gが好ましく、5〜36mgKOH/gがより好ましい。ガラス転移点、軟化点及び酸価は、いずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、本発明のポリエステルの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましく、2,000〜7,000が更に好ましい。
【0035】
尚、本発明において、ポリエステルA及びポリエステルBの各々には、上記範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルも含まれる。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルや、ポリエステルユニットを含む2種以上の樹脂ユニットを有する複合樹脂が挙げられる。
本発明のポリエステルはポリエステルAとポリエステルBとを含むが、その形態としては、ポリエステルAとポリエステルBの少なくともが一部が混合した形態、ポリエステルAとポリエステルBを別個に包含する態様等がいずれも包含される。
【0036】
[熱転写受像シート用樹脂分散液]
本発明の熱転写受像シート用樹脂分散液(以下、「本発明の樹脂分散液」ということがある)は、水性媒体中に、上記[1]記載の熱転写受像シート用ポリエステルを含む樹脂粒子を含有するものである。
本発明の樹脂分散液
本発明の樹脂分散液における樹脂には、上記ポリエステルとともに他の樹脂を用いることができる。用いることができる樹脂としては、熱転写受像シートの受容層として用いられる公知の樹脂、例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル、ポリビニルアセタール等のビニルポリマー、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等を挙げることができ、染料の染着性及び熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートが好ましい。
【0037】
本発明の樹脂分散液を構成する樹脂には、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、上記ポリエステルが好ましくは70重量%以上含有され、より好ましくは80重量%以上含有され、さらに好ましくは100重量%である。
したがって、本発明のポリエステルを含む樹脂の、軟化点、ガラス転移点、酸価及び数平均分子量は、本発明のポリエステルと同様の値であることが好ましい。
【0038】
本発明においては、ポリエステルは、環境性の観点から、これを含む樹脂を水性媒体中に分散させてなる本発明の樹脂分散液中の樹脂粒子として含有されることが好ましい。
上記ポリエステルを分散させる水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水が50%以上のものである。環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、実質100重量%がさらに好ましい。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0039】
樹脂分散液中の本発明のポリエステルを含有する樹脂粒子は、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、その体積中位粒径(D50)が1μm以下であることが好ましく、20nm〜1μmであることがより好ましく、更に好ましくは50〜800nmである。ここで「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。その測定方法は後述の通りである。
ポリエステル又はこれを含む樹脂は、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、上記樹脂分散液の固形分中に、80〜100重量%含有されることが好ましく、より好ましくは85〜100重量%含有され、更に好ましくは90〜100重量%含有される。
【0040】
上記樹脂分散液は、本発明の前記ポリエステル又はこれを含む樹脂を、例えばケトン系溶剤等の有機溶剤に溶解させ、中和剤を加えて該ポリエステル又はこれを含む樹脂のカルボキシル基をイオン化し、次いで水を加えた後、有機溶剤を留去して水系に転相する方法により得ることができる。
前記ポリエステルは、ポリエステルAとポリエステルBを混合した後に有機溶剤に添加して溶解させてもよいし、ポリエステルAとポリエステルBを混合しながら有機溶剤に添加して、あるいは独立に有機溶剤に添加して溶解させてもよい。
具体的には、例えば、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管のついた反応器を準備し、有機溶剤に溶解したポリエステル又はこれを含む樹脂に、中和剤等を加え、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、次いで水を加えた後、有機溶剤を留去して水系に転相する。有機溶剤への溶解、中和剤の添加は、通常ケトン系溶剤の沸点以下の温度で行い、また、ここで用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
有機溶剤のなかでも、樹脂粒子分散液の分散性の観点からケトン系溶剤が好ましい。
ここで用いられるケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられ、樹脂の溶解性及び溶剤の留去の容易性の観点から、好ましくは、メチルエチルケトンである。
【0041】
また、有機溶剤に溶解させた前記ポリエステル又はこれを含む樹脂を中和する中和剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ジイソブチルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、n−プロパノールアミン、ブタノールアミン、2−アミノ−4−ペンタノール、2−アミノ−3−ヘキサノール、5−アミノ−4−オクタノール、3−アミノ−3−メチル−2−ブタノール、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、ジグリコールアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,6−ジアミノヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,12−ジアミノドデカン、二量体脂肪酸ジアミン、2,2,4,−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4,−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、N−アミノプロピルピペラジン、N−アミノプロピルジピペリジプロパン、ピペラジン等のアミン類等を挙げることができる。これらの中和剤の使用量は、少なくともポリエステルを含む樹脂の酸価を中和できる量であればよい。
【0042】
上記樹脂分散液は、その保存安定性及び、本発明の樹脂分散液を用いて得られた熱転写受像シートの保存安定性、離型性の観点から、その固形分のガラス転移点が35〜80℃であることが好ましく、より好ましくは50〜75℃である。また軟化点は70〜250℃であることが好ましく、より好ましくは75〜220℃である。数平均分子量は、前記ポリエステルの分子量と同様である。
上記樹脂分散液中の固形分濃度は、樹脂分散液中の生産性の観点から、20〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜45重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。また、樹脂分散液の25℃におけるpHは樹脂分散液の保存安定性の観点から、5〜10であることが好ましく、より好ましくは6〜9.5、更に好ましくは7〜9.5である。
本発明の樹脂分散液は、本発明のポリエステルを含む樹脂を分散してなるものであり、樹脂分散液中の樹脂粒子は、ポリエステルA及びポリエステルBをいずれも含有するものであることが好ましいが、樹脂分散液は、ポリエステルAのみを含む樹脂粒子、ポリエステルBのみを含む樹脂粒子を含有していてもよい。
【0043】
本発明の樹脂分散液の製造方法
本発明の熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法は、水性媒体中に、前記熱転写受像シート用ポリエステルを含む樹脂を分散する工程を有するものである。水性媒体、及び熱転写受像シート用ポリエステルについては、前述の通りである。
水性媒体中に、前記熱転写受像シート用ポリエステルを含む樹脂を分散する方法としては、特に制限はないが、例えば、強制乳化法、転相乳化法等の方法が好ましく挙げられる。
【0044】
本発発明の樹脂分散液の製造においては、更に、オキサゾリン基を有する化合物を添加する工程を有することが好ましく、オキサゾリン基を有する化合物と樹脂粒子を構成する樹脂との反応性の観点から、樹脂分散液製造後に添加することが好ましい。
本発明に使用されるオキサゾリン基を有する化合物(以下、「オキサゾリン化合物」ということがある)としては、分子内にオキサゾリン基を複数含有するものが使用可能である。分子内にオキサゾリン基を複数含有する化合物としては、2,2−(1,3−フェニレン)−ビス2−オキサゾリン、2,2−(1,4−フェニレン)−ビス2−オキサゾリンなどの2官能タイプ;オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合した多官能タイプ(重合体)が挙げられる。
【0045】
オキサゾリン化合物としては、ポリエステルを含有する樹脂との架橋反応による架橋効果が効果的に発現しうる観点から、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましく用いられる。架橋反応が促進されることにより、染料受容層組成物を構成する樹脂の分子量が高くなり、受像シートと熱転写シートとの離型性が改善されるものと考えられる。オキサゾリン基を含有する重合体は、例えば、オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合することによって得られる。必要に応じて、オキサゾリン基を有する重合性単量体と共重合可能な、オキサゾリン基を有しない重合性単量体との共重合によって得られる。
【0046】
オキサゾリン基を含有する重合体は、その重量平均分子量は、樹脂粒子との架橋反応性および生産性の観点から、500〜2,000,000であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましい。
【0047】
尚、オキサゾリン基を含有する重合体の一般的な市販品としては、日本触媒社製のエポクロスWSシリーズ(水溶性タイプ)、Kシリーズ(エマルションタイプ)などが使用可能である。
上記オキサゾリン化合物の含有量あるいは添加量は、本発明のポリエステルを含有する樹脂との架橋反応性及び本発明の樹脂分散液の生産性の観点から、本発明の樹脂分散液中、本発明のポリエステルを含有する樹脂100重量部に対して、固形分として0.1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
【0048】
本発明の樹脂分散液の製造方法においては、上記本発明のポリエステルを含有する樹脂分散液と前記オキサゾリン化合物とを、各々前記配合量となるように混合し架橋反応させて、転写シートからの熱転写の際の該転写シートと受像シートとの剥離性を向上させることができる。特に、水性媒体中で、ポリエステルを含有する樹脂とオキサゾリン化合物とを混合し架橋反応させることが好ましい。この時の架橋反応温度は、60〜100℃であることが好ましく、より好ましくは70〜98℃である。上記温度に加熱して混合することで、ポリエステルの少なくとも一部がオキサゾリン化合物により適度に架橋される。すなわち、本発明においては、樹脂分散液にオキサゾリン化合物が適量添加され、かつ上記温度で混合することにより、樹脂分散液に分散している樹脂粒子の一部が架橋され、分子量が上がるため、離型性が向上し、また、樹脂粒子内部の架橋されていないポリエステルの存在により造膜性が損なわれず、分子量を高めた場合でも画像維持できると考えられる。
【0049】
上記水系媒体中で、ポリエステルを含有する樹脂及びオキサゾリン化合物を含むポリエステル・架橋剤分散液(以下、「樹脂粒子分散液」ということがある)は、その保存安定性及び、熱転写受像シートの保存安定性、染料の染着性の観点から、その固形分のガラス転移点が40〜80℃であることが好ましく、より好ましくは50〜75℃である。また軟化点は染料の染着性、熱転写受像シートの離型性及び耐光性の観点から、80〜250℃であることが好ましく、より好ましくは120〜240℃であり、さらに好ましくは、120〜230℃であり、さらにより好ましくは120〜220℃である。
【0050】
上記樹脂粒子分散液中の固形分濃度とpHは、前述の本発明の樹脂分散液について述べたと同様の値である。
本発明においては、オキサゾリン化合物によるポリエステルを含む樹脂の架橋は、本発明の樹脂分散液の調製時に行ってもよいが、該分散液をシートに塗工する際に行ってもよい。
なお、上記本発明の樹脂分散液には、得られるポリエステルが自己分散性を有すること、及び熱転写受像シートの疎水性を向上させる観点から、界面活性剤を含有しないことが好ましい。
【0051】
[熱転写受像シート及びその製造方法]
本発明の熱転写受像シートは、基材、及び該基材の少なくとも一方の面に染料受容層を有する熱転写受像シートであって、染料受容層は本発明のポリエステルを含むものであり、前記本発明の樹脂分散液を塗布して得られるものであることが好ましい。
【0052】
染料受容層
染料受容層は、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、水分散性あるいは水溶性の変性シリコーンオイル及び/又は無水珪酸の微粒子のコロイド溶液(例えば、コロイダルシリカ)等を使用することが好ましい。上記無水珪酸の微粒子のコロイド溶液中における平均粒径は熱転写受像シート中の分散性の観点から、100nm以下が好ましく、20nm以下のコロイダルシリカを使用することがより好ましい。染料受容層には、上記離型剤以外に、ポリエチレン、ポリプロピレン等の離型剤を含有することができる。これらの離型剤は、熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、染料受容層中に、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部含有することが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量部含有することができる。
【0053】
染料受容層は、上記本発明のポリエステル及び必要に応じて用いられる前記離型剤を含有する塗工液を用いて、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布及び乾燥して形成することができる。
染料受容層には、転写時に熱転写シートとの離型性を更に向上させる観点から、離型剤を含む離型層を形成することができる。好ましい離型層としては、ヒドロキシ変性、アミノ変性、カルボキシ変性、メルカプト変性等の各反応性シリコーンを用いることが好ましく、この反応性シリコーンは、必要に応じて架橋剤を用いて架橋させてもよい。
【0054】
また、本発明の染料受容層には、その白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、熱転写受像シートの白色度の観点から、染料受容層中に、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。
染料受容層には、更に必要に応じて、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどの造膜剤、架橋剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
以上の如く形成される染料受容層の厚さは、一般には1〜50μmの厚さであり、画質及び生産性の観点から、3〜15μmであることが好ましい。また、乾燥後の固形分量としては、受容層1m2当たり3〜15gであることが好ましい。
【0055】
上記染料受容層は、本発明のポリエステルを有機溶剤に溶解して得られた塗工液、あるいは、本発明のポリエステルを有機溶剤や水に分散させて得られた樹脂分散液を含む塗工液を用いて製造されるが、環境性等の観点から、水に分散させて製造される本発明の樹脂分散液を用いることが好ましい。ポリエステルを有機溶剤や水に分散させて得られた樹脂分散液については前述の通りである。
【0056】
本発明のポリエステルを有機溶剤に溶解して得られた塗工液を用いる場合、上記ポリエステルを溶解する有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶剤が挙げられる。この中でも樹脂の溶解性、乾燥時の揮発性の観点からメチルエチルケトン(MEK)、トルエンが好ましく、より好ましくはメチルエチルケトン/トルエンの混合溶剤である。
ポリエステルを有機溶剤に溶解して樹脂溶解液を製造する方法としては、ポリエステルと有機溶剤を混合して、常温又は加温状態、すなわち、20〜50℃の温度下で攪拌することで溶解させる方法が挙げられる。得られる塗工液中の固形分濃度は操作性と生産性の観点から、10〜45重量%が好ましく、20〜40重量%がより好ましい。
【0057】
熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、基材、及び該基材の少なくとも一方の面に前記染料受容層を有するものである。
上記基材としては、例えば合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、上記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度が一般的である。上記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
【0058】
上記の如き本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シートは、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層を設けたものであり、従来公知の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに好適に使用できる昇華性染料としては、例えばイエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
また、熱転写時の熱エネルギーの付与手段としては、従来公知の付与手段がいずれも使用でき、例えば、サーマルプリンター等の記録装置によって、記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって行うことが出来る。
【0059】
熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートの製造方法の1つは、(1)前述の方法で熱転写受像シート用樹脂分散液を製造する工程、及び(2)基材の少なくとも一方の面に、工程(1)で得られた樹脂分散液を塗布して染料受容層を形成する工程を含む製造方法である。本発明の熱転写受像シートの製造方法の別の方法としては、(1’)本発明のポリエステルを有機溶媒に溶解させて樹脂溶解液を製造する工程、及び(2’)基材の少なくとも一方の面に、工程(1’)で得られた樹脂溶解液を塗布して染料受容層を形成する工程、を含む製造方法である。
工程(1)における樹脂分散液、工程(1’)における樹脂溶解液、及び工程(2)、工程(2’)における基材、染料受容層の詳細については、前述の通りである。
【実施例】
【0060】
以下に実施例等により、本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例等においては、各性状値は次の方法により測定、評価した。
[樹脂の酸価]
JIS K0070に従って測定する。但し、測定溶媒は、エタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0061】
[樹脂の軟化点及びガラス転移点]
(1)フローテスター(島津製作所、「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)ガラス転移点
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、Pyris6DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0062】
[樹脂の数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出する。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター[住友電気工業(株)製、「FP−200」]を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量分布測定
下記装置を用いて、THFを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー(株)製の2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス社製の2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:CO−8010(東ソー社製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー社製)
【0063】
[樹脂粒子の粒径]
レーザー回折型粒径測定機(HORIBA製、「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定する。
【0064】
[樹脂分散液の固形分濃度]
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製:FD−230)を用いて、分散液5gを乾燥温度150℃,測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、ウェットベースの水分%を測定する。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(%)=100−M
M:ウェットベース水分(%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0065】
製造例1(ポリエステルaの製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 4480g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 1040g、イソフタル酸1992g及びジオクチル酸錫(II)塩25gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で5時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で反応した。210℃で無水トリメリット酸461gを加え、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が150℃に達するまで反応させて、ポリエステルaを得た。得られたポリエステルaの軟化点は151℃、ガラス転移点は71℃であり、酸価は17mgKOH/g、数平均分子量は5318であった。
【0066】
製造例2(ポリエステルbの製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 4480g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン 1040g、イソフタル酸1594g及びジオクチル酸錫(II)塩25gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で5時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で反応した。210℃で無水トリメリット酸922gを加え、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達するまで反応させて、ポリエステルbを得た。得られたポリエステルbの軟化点は124℃、ガラス転移点は72℃であり、酸価は36mgKOH/g、数平均分子量は3314であった。
【0067】
製造例3(ポリエステルcの製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2859g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸1462g、ジオクチル酸錫(II)塩22gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、常圧下200℃で8時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で反応をした。ASTM D36−86に従って測定した軟化点が90℃に達するまで反応させて、ポリエステルcを得た。得られたポリエステルcの軟化点は88℃、ガラス転移点は51℃、酸価は6mgKOH/g、数平均分子量は3559であった。
【0068】
製造例4(ポリエステルdの製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1768g、グリセリン66g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸1169g、ジオクチル酸錫(II)塩15gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、常圧下200℃で8時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で反応をした。ASTM D36−86に従って測定した軟化点が120℃に達するまで反応させて、ポリエステルdを得た。得られたポリエステルdの軟化点は123℃、ガラス転移点は61℃、酸価は32mgKOH/g、数平均分子量は4568であった。
【0069】
製造例5(ポリエステルeの製造)
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3700g、コハク酸1298g、ジオクチル酸錫(II)塩15gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、常圧下200℃で8時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で反応をした。ASTM D36−86に従って測定した軟化点が80℃に達するまで反応させて、ポリエステルeを得た。得られたポリエステルeの軟化点は77℃、ガラス転移点は38℃、酸価は15mgKOH/g、数平均分子量は5016であった。

上記ポリエステルa〜eの各々の組成及び各性状について、表1にまとめて示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜6及び比較例1、2(樹脂分散液A〜H)
窒素導入管、還流冷却管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに表2に示す配合で、ポリエステルa〜eを入れ、25℃でメチルエチルケトンに溶解させた。次いで、25%アンモニア水を添加して、攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下50℃でメチルエチルケトンを留去し、樹脂分散液A〜Hを得た。得られた樹脂分散液A〜Hの各々の組成及びポリエステル粒子の体積中位粒径、固形分、pHを表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例7〜12及び比較例3、4(樹脂粒子分散液I〜P)
表3に示す配合で、それぞれ樹脂分散液A〜H、水溶性のオキサゾリン含有重合体(日本触媒社製 エポクロスWS−500;重量平均分子量70,000、数平均分子量20,000)を窒素導入管、還流冷却管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、攪拌下95℃で4時間反応させ、樹脂粒子分散液I〜Pを得た。得られた樹脂粒子分散液I〜Pの各々の組成及び分散粒子の体積中位粒径、固形分、pHを表3に示す。
【0074】
【表3】

【0075】
実施例13〜20及び比較例5〜8
熱転写受像シートの製造
表4に示す組成、配合で25℃で混合し塗工液Q〜Z、AA及びABを作製した。この塗工液の各々を合成紙YUPO FGS−250(厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、50℃2分で乾燥させて熱転写受容シートを得た。(ただし、実施例19、20、比較例7,8は乾燥条件を50℃15時間とした。)この熱転写受容シートに市販の昇華型プリンタ(キヤノン社製、SELPHY)を用いて各色(黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B))の階調パターンを印画し、下記の方法で染着性(印字感度、最高濃度)、耐光性を評価した。また、5×5cmの黒ベタを印画し、印画時のインクリボンとの離型性(熱融着性)を評価した。それぞれ下記のように測定し評価した。結果を表4に示す。
【0076】
評価方法
(染着性-印字感度)
黒の低濃度印画(9階調目)での転写色濃度をグレタグで測定した。
(染着性-最高濃度)
黒の高濃度印画(18階調目)での転写色濃度をグレタグで測定した。
【0077】
(離型性―熱融着性)
黒べた印画時のインクリボンと熱転写受像シートの剥離音から熱融着性の有無を判断した。
A:異音はなく、剥離できる。
B:若干の異音があるが、剥離できる。
C:熱融着しており、剥離が困難である。
【0078】
(耐光性)
下記条件のキセノンウェザーメーターにより耐光性試験を行なった。
・照射試験機:スガ試験機社製SX75
・光源:キセノンランプ
・フィルター:内側=石英フィルター、外側=#275
・パネル温度:50℃
・槽内湿度:35〜50%RH
・照射強度:50(W/m2 )、300〜400(nm)での測定値
・積算照度:10000(kJ/m2 )、300〜400(nm)での積算値
【0079】
・色相変化量:光学濃度計(グレタグで測定)を用い、階調パターン印画物の黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の光学反射濃度を測定し、照射前の光学反射濃度が1.0近傍のステップについて、照射前後におけるL* a* b* を色彩色差計(グレタグで測定)を用い測定し、下記式により、色相変化量を算出して、黒(K)及び有彩色の各印画物の耐光性を評価した。なお、黒+有彩色の耐光性とは、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の各色の色相変化を、合計した値である。
・色相変化量=√((a* 1 −a* 22+(b* 1−b* 22
照射前L*** 値:L* 1 、a* 1 、b* 1
照射後L* ** 値:L* 2 、a* 2 、b*2
【0080】
(画質(印画紙表面の平滑性))
塗工後の印画紙の面質を目視で印画紙表面の凹凸から判断した。
A:非常に滑らかな表面状態である。
B:少しの凹凸は確認されるものの、写真として実使用上問題はない。
C:凝集物が確認され、写真として使用上問題がある。
【0081】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のポリエステルを用いた熱転写受像シートは、染料の染着性、耐光性及び離型性の全ての特性を同時に満たすことができることから、画像性能に優れた熱転写受像シートに好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、ROはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン基又はプロピレン基を表し、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、かつxとyの和の平均値が2〜7である。)
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分と、脂肪族カルボン酸及び/又は脂環族カルボン酸を総量で80モル%以上含有する酸成分とから得られるポリエステルA、及び上記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を80モル%以上含有するアルコール成分と、3価以上の芳香族多価カルボン酸を10〜35モル%含有する酸成分とから得られるポリエステルBを含む熱転写受像シート用ポリエステル。
【請求項2】
ポリエステルAとポリエステルBとの重量比率(ポリエステルA/ポリエステルB)が20/80〜80/20である、請求項1記載の熱転写受像シート用ポリエステル。
【請求項3】
ポリエステルAの軟化点とポリエステルBの軟化点の差が10℃以上である、請求項1又は2記載の熱転写受像シート用ポリエステル。
【請求項4】
前記式(1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物の,アルキレンオキサイド付加物中におけるエチレンオキサイド付加物とプロピレンオキサイド付加物の含有比率(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)がモル比で50/50〜0/100である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート用ポリエステル。
【請求項5】
水性媒体中に、請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受像シート用ポリエステルを含む樹脂を分散してなる熱転写受像シート用樹脂分散液。
【請求項6】
水性媒体中に、請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受像シート用ポリエステルを含む樹脂粒子を分散する工程を有する熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法。
【請求項7】
更に、オキサゾリン基を有する化合物を添加する工程を有する、請求項6記載の熱転写受像シート用樹脂分散液の製造方法。
【請求項8】
(1)請求項6又は7に記載の製造方法で樹脂分散液を製造する工程、及び(2)基材の少なくとも一方の面に、工程(1)で得られた樹脂分散液を塗布して染料受容層を形成する工程、を含む熱転写受像シートの製造方法。
【請求項9】
基材、及び該基材の少なくとも一方の面に染料受容層を有する熱転写受像シートであって、上記染料受容層が、請求項5記載の樹脂分散液を塗布して得られる、熱転写受像シート。