説明

熱転写受像シート用樹脂組成物

【課題】染着性、離型性及び耐光性に優れた熱転写受像シートを提供し得る、熱転写受像シート用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を含む染料受容層を有する熱転写受像シート、並びに前記熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】[1]2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)と付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)を含有するグラフトポリマー(A)、及びグラフトポリマー(A)よりガラス転移温度が10〜80℃低い樹脂(B)を含有する、熱転写受像シート用樹脂組成物、及び[2]基材上に、前記[1]の熱転写受像シート用樹脂組成物を含む染料受容層を有する熱転写受像シート、並びに[3]前記熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シート用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を含む染料受容層を有する熱転写受像シート、並びに前記熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華性染料を記録剤とし、これを基材に担持させた熱転写シートを用いて、昇華性染料で染着可能な熱転写受像シート上にカラー画像を形成する方法が提案されている。これは加熱手段としてプリンターのサーマルヘッドなどを使用し、加熱によって染料を受像シートに転写させてカラー画像を得るものである。このようにして形成された画像は、染料を用いることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、中間色の再現性や階調性に優れ、高品質の画像が期待できる。そのため、これらの性能を発揮するための熱転写受像シートが開発されている。
【0003】
特許文献1には、濃度及び画像欠陥の改善を目的として、支持体上に、ポリマーラテックスを含む少なくとも1層の受容層と中空ポリマーを含有する少なくとも1層の断熱層を有し、かつ該受容層に含まれるポリマーラテックスがガラス転移温度の異なる2種以上の染着性ポリマーからなる感熱転写受像シートが開示されている。
特許文献2には、色濃度及び画像の安定性等の改善を目的として、幹として不飽和コポリエステルまた枝としてビニル共重合体よりなるグラフトポリマーを含む色素受容層と支持体よりなる熱昇華印刷用の色素受容材料が開示されている。
特許文献3には、染着感度、画像の耐久性及び保存安定性の改善を目的として、主鎖が不飽和結合を有するポリエステル、側鎖がラジカル重合性不飽和単量体の重合体であって、tanδのピーク温度が40℃以上且つガラス転移温度が15℃以上で、且つ分子量が還元粘度で0.15〜1.5であるグラフト生成物を主成分とするポリエステル系樹脂及び該ポリエステル系樹脂を含有する染着性樹脂を主体とする染着層を有する昇華転写受像体が開示されている。
また、特許文献4には、染着性及び離型性の向上を目的として、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有するアルコール成分と、脂環族カルボン酸を50モル%超含有するカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルを含む樹脂と、オキシエチレン基及び/又はオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーンとを含有する熱転写受像シートの受容層用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−229987号公報
【特許文献2】特開平4−319489号公報
【特許文献3】特開平10−60063号公報
【特許文献4】特開2009−262337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷は、サーマルヘッドからの加熱による、インクシートから熱転写受像シートへの染料の染着により着色することによって行われることから、目的とする色を発現するために高い染料の染着性が必要とされる。そのため、着色時に、インクシートと熱転写受像シート間に融着が生じるという問題があった。また、経時変化による印刷物の退色が生じるという問題もあった。ゆえに、高い染料の染着性、インクシートとの融着を抑制する離型性、及び印刷物の退色を抑制する耐光性の優れた熱転写受像シートが望まれている。前記染着性、離型性及び耐光性の両立という観点では、特許文献1〜4に記載された熱転写受像シートには未だ改良の余地がある。
本発明は、染着性、離型性及び耐光性に優れた熱転写受像シートを提供し得る、熱転写受像シート用樹脂組成物及び該樹脂組成物を含む染料受容層を有する熱転写受像シート、並びに前記熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、染着性、離型性及び耐光性に影響する要因は、サーマルヘッドによる加熱時の染料受容層の状態にあると考えて検討を行った。その結果、特定のポリエステル樹脂からなる主鎖セグメントと付加重合系樹脂からなる側鎖セグメントを含有するグラフトポリマー、及び該グラフトポリマーよりガラス転移温度が一定範囲で低い樹脂を含有する樹脂組成物を染料受容層に用いることにより、染着性、離型性及び耐光性が向上することを見出した。
すなわち、本発明は、下記[1]〜[3]を提供する。
[1]2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)を含有し、ガラス転移温度が50℃以上であるグラフトポリマー(A)、及びグラフトポリマー(A)よりガラス転移温度が10〜80℃低い樹脂(B)を含有する、熱転写受像シート用樹脂組成物。
[2]基材上に、上記[1]の熱転写受像シート用樹脂組成物を含む染料受容層を有する、熱転写受像シート。
[3]下記工程(1)〜(3)を有する、上記[1]に記載の熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法。
工程(1):2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂(a1)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、グラフトポリマー(A)の水性分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られたグラフトポリマー(A)の水性分散液に樹脂(B)の水性分散液を混合し、熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液を得る工程
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、染着性、離型性及び耐光性に優れた熱転写受像シートを提供し得る熱転写受像シート用樹脂組成物、及び該樹脂組成物を含む染料受容層を有する熱転写受像シート、並びに前記熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[熱転写受像シート用樹脂組成物]
本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)「以下、単にセグメント(A1)ともいう」及び付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)「以下、単にセグメント(A2)ともいう」を含有し、ガラス転移温度が50℃以上であるグラフトポリマー(A)「以下、単にグラフトポリマー(A)ともいう」、及びグラフトポリマー(A)よりガラス転移温度が10〜80℃低い樹脂(B)「以下、単に樹脂(B)ともいう」を含有する。
本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物を染料受容層に有する熱転写受像シートが、染着性、離型性及び耐光性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
まず、染料は、ガラス転移温度が低くて分子運動性の高い樹脂(B)中を浸透しやすく、これにより熱転写受像シートの染着性及び耐光性が向上しているものと考えられる。更に、熱転写受像シート用樹脂組成物中のグラフトポリマー(A)中のセグメント(A1)の原料モノマーは、アルコール成分として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含む。この化合物は、分子内に2つの芳香族環、すなわち染料に似た構造を有するため、染料との親和性が高く、熱転写受像シートの染着性と耐光性が向上し、また、剛直構造をしているため、樹脂が硬くなり熱転写受像シートの離型性の向上に寄与していると考えられる。
また、グラフトポリマー(A)中のセグメント(A2)は、前記構造のポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)及び樹脂(B)のいずれとも相溶しにくいため、微細な相分離構造を形成し、その界面からの染料の浸透性が高まり、染料受容層の表面にインクシートとの親和性に乏しい部分が配向する。これにより、熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性が大きく向上するものと考えられる。
【0009】
熱転写受像シート用樹脂組成物中のグラフトポリマー(A)と樹脂(B)の重量比[グラフトポリマー(A)/樹脂(B)]は、熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の観点から、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは65/35〜95/5、より好ましくは67/33〜90/10、より好ましくは67/33〜85/15、更に好ましくは67/33〜75/25である。
熱転写受像シートの染着性、耐光性及び離型性の観点から、グラフトポリマー(A)及び樹脂(B)は、熱転写受像シート用樹脂組成物中、合計で80重量%以上含有されることが好ましく、90重量%以上含有されることがより好ましく、実質100重量%を占めることがさらに好ましい。
【0010】
(グラフトポリマー(A))
グラフトポリマー(A)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分を含有するポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)と付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)を含有し、ガラス転移温度が50℃以上のものである。
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーを構成するセグメント(A1)とセグメント(A2)の重量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]は、熱転写受像シートの染着性向上の観点から、好ましくは55/45〜95/5、より好ましくは65/35〜95/5、より好ましくは75/25〜95/5、更に好ましくは85/15〜95/5である。
セグメント(A1)がセグメント(A2)より多く存在することで、微細な相分離構造を形成しながらも、セグメント(A1)の分子構造に由来する染着性を十分に発揮させることができるものと考えられる。
【0011】
また、グラフトポリマー(A)のガラス転移温度は、熱転写受像シートの離型性の観点から、50℃以上であり、好ましくは50〜100℃、より好ましくは50〜80℃、更に好ましくは60〜80℃である。グラフトポリマー(A)の酸価は、好ましくは1〜35mgKOH/g、より好ましくは5〜35mgKOH/g、更に好ましくは10〜35mgKOH/gである。
【0012】
(ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1))
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーを構成するセグメント(A1)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂からなるセグメントである。セグメント(A1)は、本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーにおける主鎖である。
【0013】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、具体的には下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(I)において、R1O、R2Oはいずれもオキシアルキレン基であり、好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜4のオキシアルキレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基である。
x及びyは、アルキレンオキサイドの付加モル数に相当し、それぞれ正の数である。さらに、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は2〜7が好ましく、2〜5がより好ましく、2〜3がさらに好ましい。
また、x個のR1O又はy個のR2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、熱転写受像シートの染着性及び熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層との密着性の観点から、同一であることが好ましい。
【0016】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物としては、前記観点から、具体的には、R1O及びR2Oが同一であることが好ましく、オキシプロピレン基であることがより好ましい。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物においては、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、前記プロピレンオキサイド付加物の含有量が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物中、好ましくは50〜100モル%、より好ましくは60〜100モル%、より好ましくは70〜100モル%、更に好ましくは実質的に100モル%である。他のオキシアルキレン基としては、熱転写受像シートの染料の染着性の観点から、オキシエチレン基、オキシトリメチレン基が好ましく、熱転写受像シートの染着性の観点から、オキシエチレン基がより好ましい。
【0018】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、アルコール成分中に50モル%以上含有されるが、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは実質100モル%含有される。なお、本発明において、アルキレンオキサイド付加物とは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンにオキシアルキレン基を付加した構造全体を意味するものである。
【0019】
セグメント(A1)の原料モノマーであるアルコール成分には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物とともに、これ以外のアルコール成分を含有することができる。
具体的には、セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマー「以下、単にセグメント(A1)の原料モノマーともいう」としては、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール、すなわち不飽和脂肪族アルコールを含むアルコール成分を用いることができる。不飽和脂肪族アルコール中の炭素−炭素不飽和結合の部分は、熱転写シート用樹脂組成物中では、セグメント(A2)との結合部分となることができ、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコール(不飽和脂肪族アルコール)としては、アリルアルコール等の不飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。
その他のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
セグメント(A1)はポリエステル樹脂であるため、原料モノマーとして、アルコール成分以外にカルボン酸成分が用いられる。
セグメント(A1)の原料モノマーであるカルボン酸成分には、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸、すなわち不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことが好ましい。該炭素−炭素不飽和結合の部分は、本発明の熱転写シート用樹脂中では、セグメント(A2)との結合部分となることが好ましく、その場合、該不飽和結合は、飽和結合となる。
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸(不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸)としては、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和脂肪族カルボン酸;テトラヒドロフタル酸等の不飽和脂環式カルボン酸等が挙げられる。反応性の観点から、フマル酸、マレイン酸及びテトラヒドロフタル酸が好ましく、フマル酸がより好ましい。
カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量は、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは7〜25モル%、更に好ましくは8〜15モル%である。
その他のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、コハク酸、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等の脂環族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。熱転写受像シートの染着性の観点から、好ましくは芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、より好ましくは芳香族ジカルボン酸、より好ましくはイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、更に好ましくはイソフタル酸である。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーのうち、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有する原料モノマーとしては、不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族アルコールから選ばれる1種以上を含めばよいが、反応性の観点から、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸を含むことが好ましく、不飽和脂肪族カルボン酸及び/又は不飽和脂環式カルボン酸のみであることがより好ましい。
【0021】
セグメント(A1)は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、アルコール成分の水酸基とカルボン酸成分のカルボキシ基とのモル比(水酸基/カルボキシ基)は、好ましくは100/100〜100/120であり、より好ましくは100/100〜100/110、より好ましくは100/102〜100/107、更に好ましくは100/102〜100/104である。
【0022】
熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点から、セグメント(A1)の酸価は、好ましくは5〜40mgKOH/g、より好ましくは5〜35mgKOH/g、更に好ましくは5〜30mgKOH/gであり、更に好ましくは10〜20mgKOH/gである。
また、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、セグメント(A1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。
【0023】
なお、本発明において、セグメント(A1)は、前記範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されていてもよい。変性されたセグメント(A1)としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステル樹脂からなるセグメントが挙げられる。
本発明において、セグメント(A1)中におけるポリエステル部分の含有量は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、更に好ましくは実質的に100重量%である。
【0024】
(付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2))
本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーを構成するセグメント(A2)は、付加重合性モノマー(a2)(以下、モノマー(a2)ともいう)に由来する構成単位からなる付加重合系樹脂からなるセグメントである。セグメント(A2)は、本発明の熱転写受像シート用樹脂に含有されるグラフトポリマーにおける側鎖である。
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)としては、スチレン、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等のスチレン類;(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜18)、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のハロゲン化ビニリデン;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。
これらのなかでは、スチレン類及び(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、なかでも、芳香族基を有する付加重合性モノマーがより好ましく、スチレン、メチルスチレン、ベンジルメタクリレート、ベンジルアクリレートが更に好ましい。これらのなかでも、モノマーの原料価格、熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点からは、スチレンが特に好ましい。
芳香族基を有する付加重合性モノマーに由来する構成単位の含有量は、熱転写受像シートの離型性及び樹脂の保存安定性の観点から、セグメント(A2)中、好ましくは55重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは実質的に100重量%である。
【0025】
セグメント(A2)と、セグメント(A1)の原料モノマーのうち不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸及び不飽和脂肪族アルコールの合計量の重量比[セグメント(A2)/セグメント(A1)の不飽和基を有する前記成分の合計]は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、好ましくは1/1〜15/1、より好ましくは1/1〜10/1、更に好ましくは2/1〜5/1である。
【0026】
(グラフトポリマー(A)の製造方法)
グラフトポリマー(A)の製造方法としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂(a1)(以下、樹脂(a1)ともいう)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を付加重合する方法が好ましい。
【0027】
−ポリエステル樹脂(a1)−
樹脂(a1)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られる、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂であり、前記ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)を構成するのに好ましいものである。なお、「非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合」は、前記した、不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸及び不飽和脂肪族アルコールから選ばれる1種以上に由来するものである。
【0028】
樹脂(a1)は、原料成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分を用いて得られる。
ここで、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じである。
【0029】
樹脂(a1)の原料成分であるアルコール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物とともに、これ以外のアルコール成分を使用することができる。樹脂(a1)は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するものであり、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコールを用いることができる。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するアルコールとしては、アリルアルコール等の不飽和脂肪族アルコール等が挙げられる。
その他のアルコールとしては、前記セグメント(A1)の場合と同様である。アルコールは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
樹脂(a1)は、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するものであり、ポリエステルの原料成分としてのカルボン酸成分として、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を好ましく用いることができる。
非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、フマル酸がより好ましい。
カルボン酸成分中、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸の含有量は、好ましくは5〜30モル%、より好ましくは7〜25モル%、更に好ましくは8〜15モル%である。
その他のカルボン酸としては、前記セグメント(A1)の場合と同様であり、好適な構造及び好適な含有量も同じであり、シクロヘキサンジカルボン酸、イソフタル酸が好ましく、イソフタル酸がより好ましい。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
ポリエステル樹脂(a1)は、例えば、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができる。
熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、二酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられる。ポリエステルの合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、スズ触媒が好ましい。スズ触媒としては、酸化ジブチルスズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等が好ましく用いられる。
また、本発明においては、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するカルボン酸を用いるため、ラジカル重合禁止剤を用いることが好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、t−ブチルカテコール等が好ましい。
【0032】
熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点から、樹脂(a1)の軟化点は好ましくは80〜165℃であり、ガラス転移温度は好ましくは50〜85℃である。熱転写受像シートの離型性及び保存安定性の観点から、樹脂(a1)の酸価は、5〜40mgKOH/gであり、好ましくは5〜35mgKOH/g、より好ましくは5〜30mgKOH/gであり、更に好ましくは10〜20mgKOH/gである。
ガラス転移温度、軟化点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層に用いた場合の造膜性の観点から、樹脂(a1)の数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。
【0033】
なお、本発明において、樹脂(a1)は、前記範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されていてもよい。変性された樹脂(a1)としては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルが挙げられる。
本発明において、樹脂(a1)におけるポリエステル部分の含有量は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは60〜100重量%、更に好ましくは実質的に100重量%である。
【0034】
(付加重合性モノマー(a2))
本発明に用いられる付加重合性モノマー(a2)は、前記の通りである。
【0035】
(樹脂(B))
樹脂(B)は、熱転写受像シートの染着性及び離型性の観点から、グラフトポリマー(A)よりガラス転移温度が10〜80℃低い樹脂である。
樹脂(B)とグラフトポリマー(A)のガラス転移温度の差は、同様の観点から、10〜80℃であり、好ましくは20〜55℃、より好ましくは30〜45℃、更に好ましくは30〜40℃である。
樹脂(B)は、グラフトポリマー(A)と前記の通りにガラス転移温度が異なれば、樹脂の種類に制限はないが、例えば、ポリエステル、塩化ビニル重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルアクリル共重合体、ポリウレタンが挙げられる。
熱転写受像シートの染着性、離型性及び耐光性の観点から、塩化ビニルアクリル共重合体、又はグラフトポリマー(A)と同様の構造を有する樹脂、すなわち2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分を含有するポリエステル樹脂からなるセグメントと付加重合系樹脂からなるセグメントを含有する樹脂が好ましく、塩化ビニルアクリル共重合体がより好ましい。
塩化ビニルアクリル共重合体の市販品としては、「ビニブラン(登録商標)278」、「ビニブラン(登録商標)271」(日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
これらの樹脂は、有機溶媒に溶解して使用することもできるが、環境性等の観点から、水性分散液として使用することが好ましい。
【0036】
樹脂(B)のガラス転移温度は、熱転写受像シートの染着性、離型性及び耐光性の観点から、好ましくは60℃以下、より好ましくは45℃以下、より好ましくは−20〜45℃、より好ましくは0〜45℃、さらに好ましくは25〜45℃である。
【0037】
[熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物は、樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を重合する方法によって得られたグラフトポリマー(A)と樹脂(B)を混合することによって得ることができる。グラフトポリマー(A)の重合方法に制限はなく、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを直接混合して重合する方法、樹脂(a1)とモノマー(a2)とを有機溶媒に溶解して重合する方法等が挙げられる。また、グラフトポリマー(A)と樹脂(B)を混合する方法に制限はなく、グラフトポリマー(A)の水性分散液に樹脂(B)の水性分散液を混合する方法やその逆の方法等が挙げられる。
本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物は、下記工程(1)〜(3)を有する方法によって得ることが好ましい。
工程(1):前記ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた水性分散液に付加重合性モノマー(a2)を添加して重合し、グラフトポリマー(A)の水性分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られたグラフトポリマー(A)の水性分散液に樹脂(B)の水性分散液を混合し、熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液を得る工程
【0038】
(工程(1))
工程(1)は、ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程である。
前記ポリエステル樹脂(a1)を分散させる水性媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水の含有量が50重量%以上の媒体である。環境安全性の観点から、水性媒体中の水の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは100重量%である。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の、水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0039】
水性媒体中にポリエステル樹脂(a1)を分散させる方法としては、ポリエステル樹脂(a1)をケトン系溶媒に溶解させ、後述する中和剤を加えてポリエステル樹脂(a1)のカルボキシル基をイオン化し、次いで水を加えて水系に転相する方法、好ましくは、水を加えた後にケトン系溶媒を留去して水系に転相する方法が挙げられる。
より具体的には、例えば、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた反応器を準備し、ケトン系溶媒に溶解したポリエステル樹脂(a1)に、中和剤等を添加し、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、次いで水を加えて水系に転相する、好ましくは、水を加えた後にケトン系溶媒を留去して水系に転相する。
ポリエステル樹脂(a1)のケトン系溶媒への溶解操作、及びその後の中和剤の添加は、通常、ケトン系溶媒の沸点以下の温度で行う。用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられる。ポリエステル樹脂(a1)の溶解性及び溶媒の留去容易性の観点から、好ましくはメチルエチルケトンである。
【0040】
また、中和剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、n−プロパノールアミン、ブタノールアミン、5−アミノ−4−オクタノール、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、ジグリコールアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等のアミン類等が挙げられる。中和剤の使用量は、少なくともポリエステル樹脂(a1)の酸価を中和できる量であればよい。
【0041】
(工程(2))
工程(2)は、工程(1)で得られた水性分散液に前記付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、グラフトポリマー(A)の水性分散液(以下、水性分散液(A)ともいう)を得る工程である。
まず、付加重合性モノマー(a2)をポリエステル樹脂(a1)の水性分散液に添加する。添加量は、ポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)の重量比[ポリエステル樹脂(a1)/付加重合性モノマー(a2)]で、好ましくは55/45〜95/5、より好ましくは65/35〜95/5、より好ましくは75/25〜95/5、更に好ましくは85/15〜95/5である。
また、攪拌効率の観点から、更に水等を加えてもよい。
【0042】
次に、ポリエステル樹脂(a1)の存在下、付加重合性モノマー(a2)を重合する。
重合には、公知のラジカル重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて添加する。ラジカル重合開始剤としては、水溶性のラジカル重合開始剤を用いることが好ましく、過硫酸塩を用いることがより好ましい。
前記のポリエステル樹脂(a1)と付加重合性モノマー(a2)とを含有する混合液を加熱することで重合反応を進行させる。重合温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、過硫酸ナトリウムを用いる場合には、重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃である。
【0043】
以上のようにして得られた水性分散液(A)中のグラフトポリマー(A)のガラス転移温度は、その保存安定性、並びに熱転写受像シートの染着性及び耐光性の観点から、好ましくは40〜80℃、より好ましくは50〜80℃、更に好ましくは60〜80℃である。また、該グラフトポリマー(A)の軟化点は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは120〜220℃である。
前記水性分散液(A)の固形分濃度は、樹脂粒子の分散性及び生産性の観点から、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜40重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。また、前記水性分散液(A)の25℃におけるpHは、水性分散液(A)の保存安定性の観点から、好ましくは5〜10、より好ましくは6〜9、更に好ましくは7〜9である。
【0044】
水性分散液(A)中の樹脂粒子の体積中位粒径(D50)は、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、好ましくは20〜1000nm、より好ましくは50〜800nm、更に好ましくは80〜500nmである。ここで「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が、粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。その測定方法は、実施例に記載の通りである。
【0045】
(工程(3))
工程(3)は、工程(2)で得られた水性分散液(A)に樹脂(B)の水性分散液(以下、水性分散液(B)ともいう)を混合し、熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液を得る工程である。
工程(2)で得られた水性分散液(A)はグラフトポリマー(A)を含有するものであり、これに樹脂(B)を含有する水性分散液(B)を混合することによって、本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液を得ることが好ましい。両者を混合する際のそれぞれの固形分濃度は、均一な樹脂組成物の水性分散液を得る観点から、水性分散液(A)については、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%、更に好ましくは25〜35重量%であり、水性分散液(B)については、好ましくは10〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%、更に好ましくは25〜35重量%である。なお、固形分濃度は、脱イオン水等で希釈して調整することが好ましい。
なお、樹脂(B)を含有する水性分散液(B)の製造方法に制限はないが、次のような方法によって得ることができる。例えば、乳化重合や懸濁重合等の、水性媒体中で樹脂(B)の原料モノマーを重合して水性分散液(B)を得る方法、溶液重合によって得られた樹脂溶液を水性媒体中に分散し、必要に応じて溶媒を除去して水性分散液(B)を得る方法、塊状重合や重縮合によって得られた樹脂(B)をそのまま、あるいは溶媒に溶解させた上で水性媒体中に分散し、必要に応じて溶媒を除去して水性分散液(B)を得る方法等が挙げられる。
工程(3)において得られる熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液のpHは、好ましくは7〜10、より好ましくは8〜9に調整する。pHは、アンモニア水溶液等で調整することが好ましい。
工程(3)における水性分散液(A)と(B)の混合方法は、水性分散液同士が十分に混合されればよく、特に制限はない。各水性分散液が少量であれば、ガラス製の容器に両者を入れ、振り混ぜることでも十分に混合することができる。
【0046】
[熱転写受像シート]
本発明の熱転写受像シートは、基材上に、前記熱転写受像シート用樹脂組成物を含む染料受容層を有するものである。
(基材)
基材としては、例えば合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、前記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度が一般的である。前記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
(染料受容層)
染料受容層は、本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物を含有する。
【0047】
染料受容層は、樹脂を有機溶媒に溶解して得られた塗工液形態、又は樹脂の各々を有機溶媒や水に分散させて得られた樹脂分散液を含む塗工液形態で用いて製造することができ、環境安全性等の観点から、後者が好ましく、下記の工程(4)〜(5)を行うことによって製造することがより好ましい。
工程(4):工程(3)で得られた熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液を含有する染料受容層用塗工液を調製する工程
工程(5):工程(4)で得られた染料受容層用塗工液を用いて、染料受容層を設ける工程
【0048】
(工程(4))
工程(4)は、工程(3)で得られた熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液を含有する染料受容層用塗工液を調製する工程である。
染料受容層用塗工液は、熱転写時における熱転写受像シートの離型性を更に良好にする観点から、離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、分散性あるいは水溶性の変性シリコーンオイル等を適宜使用することができる。これらの離型剤は、染料受容層用塗工液中に、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部含有することができる。離型剤の市販品としては、信越化学工業株式会社製のKF−615A等を好ましく用いることができる。
離型剤を均一に分散又は溶解するために、ボールミル等の攪拌機を用いることが好ましく、分散又は溶解する温度は20〜40℃が好ましい。
【0049】
また、染料受容層用塗工液は、造膜剤を含有することが好ましい。造膜剤としては、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、ゼラチン等が挙げられる。染料受容層の強度及び離型性の観点から、ゼラチンが好ましい。
造膜剤を均一に溶解させる観点から、予め造膜剤を水に溶解しておくことが好ましく、前記熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液と造膜剤の水溶液とを混合し、攪拌することが好ましい。好適に用いられる攪拌機としては、ボールミル等が挙げられる。造膜剤を溶解状態で均一に混合するために、攪拌温度は30〜60℃が好ましく、40〜50℃がより好ましい。
染料受容層用塗工液には、更に、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、本発明の熱転写受像シートの白色度の観点から、染料受容層用塗工液中、樹脂組成物100重量部に対して0.1〜20重量部含有することができる。なお、本発明の染料受容層用塗工液には、更に必要に応じて、例えば、触媒、硬化剤等の他の添加剤を含有することもできる。
また、染料受容層用塗工液には、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物以外の他の樹脂を含むことができる。前記他の樹脂の具体例としては、塩化ビニル重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルアクリル共重合体、ポリウレタン等が挙げられ、熱転写受像シートの染着性及び耐光性の観点から、塩化ビニルアクリル共重合体が好ましい。
これら他の樹脂は、樹脂の製造過程で、本発明の熱転写受像シート用樹脂組成物とともに有機溶媒に溶解させることにより染料受容層用塗工液に含有させることもできるし、樹脂分散液としてから、熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液へ添加して混合することにより染料受容層用塗工液に含有させることもできる。
【0050】
(工程(5))
工程(5)は、工程(4)で得られた染料受容層用塗工液を用いて染料受容層を設ける工程である。
本発明の熱転写受像シートが有する染料受容層は、基材の一方の面に塗工液を塗布及び乾燥して形成することによって得られ、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布することが好ましい。また、後述するように基材と染料受容層との間に中間層を有する場合は、基材の一方の面に中間層用塗工液及び染料受容層用塗工液を重層塗布及び乾燥して中間層及び染料受容層をそれぞれ設けることもできる。
以上の如く形成される染料受容層の厚さは、一般には1〜50μmであり、画質及び生産性の観点から、好ましくは3〜15μmである。また、乾燥後の固形分量としては、染料受容層1m2当たり、好ましくは3〜15gである。
【0051】
(中間層)
本発明の熱転写受像シートは、基材と染料受容層の間に中間層を有することが好ましく、水溶性高分子及び中空粒子を含有する中間層を有することがより好ましい。
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、中空粒子を固定するバインダーとして用いられるもので、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらの中でも、10〜30℃の室温付近に水溶液のゲル化温度を有するという熱特性の観点から、ゼラチンが好ましい。その粘度は、熱転写受像シートの離型性及び造膜性の観点から、JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)が2.5〜6.0mPa・sであることが好ましく、3.0〜5.5mPa・sであることがより好ましい。
中間層における水溶性高分子の含有量は、当該中間層全体の1〜75重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。
また、中間層に含まれる水溶性高分子は、アルデヒド類、エポキシ類、ビニルスルホン類、トリアジン類、カルボジイミド類等の架橋剤により架橋されていることが好ましい。
【0052】
(中空粒子)
中間層に含有される中空粒子としては、少なくとも一部に空孔を有するポリマー粒子であれば、特に制限はない。例えば、1)樹脂により形成された粒子隔壁内部に存在する水が、塗布乾燥後、粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空粒子、2)ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を樹脂で被覆した粒子を加熱することにより、粒子内部の低沸点液体が膨張して内部が中空となる中空粒子、3)前記2)をあらかじめ加熱発泡させた中空ポリマー粒子、4)樹脂粒子を形成する重合体に含まれる酸性基の少なくとも一部が中和されることによって形成される中空粒子、等が挙げられる。本発明においては、熱転写受像シートの染着性及び耐光性、並びに熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層の密着性の観点から、前記1)又は3)の方法により得られるものが好ましく使用できる。
【0053】
前記中空粒子を構成する材料については特に制限はなく、前記方法1)〜3)に使用される種々の公知の材料、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル共重合体、それらの混合物等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体等がいずれも使用できるが、本発明においては、熱転写受像シートの染着性及び耐光性、並びに熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層の密着性の観点から、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体等が好ましく用いられる。
【0054】
前記中空粒子の形状は特に限定されず、球状はもちろん球状以外のいかなる形状のものであってもよいが、本発明においては、熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層の密着性の観点から、実質球状のものであることが好ましい。
また、中空粒子の体積中位粒径(D50)は、熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層の密着性の観点からは、好ましくは0.1〜5μm、より好ましくは0.3〜3μm、更に好ましくは0.3〜1μmである。この値は、電界放射型走査電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名:S−4800型)により測定することができる。
【0055】
本発明においては、中空粒子としては、固形分濃度が好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%のものを用いる。
また、前記中空粒子は、熱転写受像シートの染着性及び耐光性、並びに熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層の密着性の観点から、そのメチルエチルケトン(MEK)不溶分が好ましくは70重量%以下、より好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは30〜70重量%である。本発明において、「MEK不溶分」とは、25℃のMEK95重量部に対して、中空粒子2,000重量部を溶解させた場合の、中空粒子が有する不溶な中空粒子成分の重量割合で定義されるものである。
前記中空粒子のMEK不溶分は、例えば、これを構成する樹脂の架橋度を制御すること等により調整することができる。
【0056】
本発明において、中空粒子は、水性媒体中の分散液として使用することが好ましく、好ましく使用できる市販の中空粒子として、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン株式会社製の「ローペイクHP−1055」、日本ゼオン株式会社製の「Nipol MH8101」、JSR株式会社製の「SX8782(D)」等が挙げられる。
中間層においては、染料の染着性及び熱転写受像シートにおける中間層と染料受容層の密着性の観点から、上記中空粒子と水溶性高分子との重量比(中空粒子/水溶性高分子)は、好ましくは30/70〜90/10、より好ましくは40/60〜80/20、更に好ましくは50/50〜80/20である。
【0057】
なお、中間層には、その白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、熱転写受像シートの白色度の観点から、中間層中に、水溶性高分子100重量部に対して好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。
中間層には、更に必要に応じて、グリコールエーテル類等の造膜助剤、離型剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
【0058】
中間層は、熱転写受像シートの基材の少なくとも一方の面に、水溶性高分子及び必要に応じて用いられる各種添加剤を有機溶媒や水に分散あるいは溶解して、塗布し乾燥して形成することができる。
中間層の厚みは、クッション性、断熱性の観点から、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。また、乾燥後の固形分量としては、中間層1m2当り7〜70g/m2であることが好ましい。
中間層は、例えば、熱転写受像シートの基材の少なくとも一方の面に、ゼラチンを含む水溶性高分子、中空粒子及び必要に応じて用いられる添加剤等を水に溶解して、あるいは水に分散して得られた塗工液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布し乾燥して形成することができる。
【0059】
[転写シート]
前記の如き本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シート(インクリボン)は、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層、及び染料を受像して得られた画像上に転写される保護層等からなるラミネート層を設けたものであり、従来公知の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに対して好適に使用できる昇華性染料としては、例えばイエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
【0060】
熱転写時の熱エネルギーの付与手段としては、従来公知の付与手段がいずれも使用でき、例えば、サーマルプリンター等の記録装置によって、記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって行うことが出来る。
【実施例】
【0061】
以下に実施例等により、本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例等においては、各物性は次の方法により測定した。
【0062】
[樹脂の酸価]
JIS K0070に従って測定する。但し、測定溶媒は、エタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
[樹脂の軟化点]
フローテスター(株式会社島津製作所製、「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
[樹脂のガラス転移温度]
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、Pyris6DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
【0063】
[樹脂の数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出した。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、結着樹脂をクロロホルムに溶解させた。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター[住友電気工業株式会社製、「FP−200」]を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とした。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させた。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行った。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出した。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン;2.63×103、2.06×104、1.02×105(重量平均分子量)、ジーエルサイエンス株式会社製の単分散ポリスチレン;2.10×103、7.00×103、5.04×104(重量平均分子量))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:CO−8010(東ソー株式会社製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー株式会社製)
【0064】
[樹脂粒子の体積中位粒径(D50)]
レーザー回折型粒径測定機(株式会社堀場製作所製、「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定した。
【0065】
[樹脂分散液の固形分濃度]
赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製:FD−230)を用いて、分散液5gを乾燥温度150℃及び測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて、ウェットベースの水分(重量%)を測定し、下記の式に従って固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=100−M
M:ウェットベース水分(重量%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
W0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0066】
[樹脂分散液のpH]
東亜ディーケーケー株式会社製のpHメーター「HM−20P」により、25℃で測定した。
【0067】
製造例1及び2(ポリエステル樹脂(a1)-a及びbの製造)
表1に示すフマル酸を除く原料モノマー及びジオクチル酸錫(II)塩を、温度計、攪拌装置、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積5Lの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、235℃で5時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で1時間反応した。次いで、210℃でフマル酸及び4−t−ブチルカテコールを加え、5時間反応させた後、減圧(20kPa)下にて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、ポリエステル(a1)-a及びbを得た。得られたポリエステル(a1)-a及びbの物性等を表1に示す。
【0068】
製造例3(ポリエステル樹脂(a1)-cの製造)
表1に示すフマル酸を除く原料モノマー及びジオクチル酸錫(II)塩を、温度計、攪拌装置、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積5Lの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、210℃で5時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で1時間反応した。次いで、210℃でフマル酸及び4−t−ブチルカテコールを加え、5時間反応させた後、減圧(20kPa)下にて、ASTM D36−86に従って測定した軟化点が表1に示す温度に達するまで反応させて、ポリエステル(a1)-cを得た。得られたポリエステル(a1)-cの物性等を表1に示す。
【0069】
製造例4(ポリエステル樹脂(a1)-dの製造)
表1に示すフマル酸を除く原料モノマー及びジオクチル酸錫(II)塩を、温度計、攪拌装置、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した内容積5Lの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気下、230℃で9時間反応させ、更に減圧(8.3kPa)下で1時間反応した。次いで、210℃でフマル酸及び4−t−ブチルカテコールを加え、5時間反応させた後、減圧(8.3kPa)下にて、1時間反応させて、ポリエステル(a1)-dを得た。得られたポリエステル(a1)-dの物性等を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
製造例5〜8(ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)〜(iv)の製造:工程(1))
窒素導入管、還流冷却管、攪拌装置及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコに表2に示す配合で、ポリエステル樹脂(a1)-a〜dを入れ、25℃でメチルエチルケトンに溶解させた。次いで、25%アンモニア水を添加して、攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下60℃でメチルエチルケトンを留去した。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液(i)〜(iv)をそれぞれ得た。得られた水性分散液(i)〜(iv)の各々の組成、固形分濃度、pH及び分散粒子の体積中位粒径を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
製造例9〜12(グラフトポリマー(A)又は樹脂(B)の水性分散液(I)〜(IV)の製造:工程(2))
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、攪拌装置及び熱電対を装備した内容積2Lの四つ口フラスコに、表3に示す配合でポリエステル分散液、脱イオン水、付加重合性モノマー(a2)であるスチレンを仕込み、30分間撹拌を行った。窒素気流下、過硫酸ナトリウムを加え、80℃で6時間反応させた。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、グラフトポリマー(A)又は樹脂(B)の水性分散液(I)〜(IV)を得た。得られた水性分散液(I)〜(IV)の各々の組成、固形分濃度、pH及び分散粒子の体積中位粒径を表3に示す。
なお、後述するように、主に、水性分散液(I)及び(II)については、グラフトポリマー(A)の水性分散液(A)として利用し、水性分散液(III)及び(IV)については、樹脂(B)の水性分散液(B)として利用した。但し、比較例5のみ、水性分散液(I)を樹脂(B)の水性分散液(B)として利用し、水性分散液(II)をグラフトポリマー(A)の水性分散液(A)として利用した。
【0074】
【表3】

【0075】
実施例1〜9及び比較例1〜5(熱転写受像シートの製造)
まず、表4−1又は表4−2に示す組成及び配合量で、45℃で混合して中間層用塗工液を作製した。この塗工液を合成紙YUPO FGS−250(厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に20.0g/m2になるように塗布し、25℃にて5分で乾燥させて中間層塗工シートを得た。
次に、表4−1又は表4−2に示す水性分散液(A)、水性分散液(B)をそれぞれ脱イオン水で固形分濃度が30重量%となるよう希釈した後、表4−1又は表4−2に示す配合でスクリュー管に入れ、25%アンモニウム水溶液(和光純薬工業株式会社製)でpHを9.0に調整した(工程(3))。
なお、水性分散液(B)として、前記水性分散液(III)及び(IV)以外に、市販の樹脂分散液である、「ビニブラン278」(日信化学工業株式会社製、塩化ビニルアクリル共重合体、Tg=39℃)、「ビニブラン271」(日信化学工業株式会社製、塩化ビニルアクリル共重合体、Tg=−5℃)を用いた。
続いて、離型剤(信越化学工業株式会社製、「KF−615A」)を加えて、ボールミルで25℃にて1時間撹拌した。その後、45℃で造膜剤(固形分濃度8重量%のゼラチン水溶液(表4−1及び表4−2には有効分の使用量を示す))を加えてボールミルで3時間撹拌して、染料受容層用塗工液A1〜N1を作製した(工程(4))。
得られた染料受容層用塗工液の各々を、前述の中間層塗工シートにワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、50℃にて2分で乾燥させて熱転写受像シートを得た(工程(5))。
得られた熱転写受像シートについて、下記方法により、染着性、離型性及び耐光性を測定及び評価した。結果を表4−1及び表4−2に示す。
【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
[評価方法]
(染着性−最高濃度)
得られた熱転写受像シートに、市販の昇華型プリンター(アルテック株式会社製、「MEGAPIXEL III」)を用いて黒(K)の階調パターンを印画し、高濃度印画(18階調目(L=0))での転写色濃度をグレタグ濃度計(グレタグマクベス社製)で測定した。最高濃度が高いほど、染着性に優れる。
【0079】
(離型性−熱融着性)
得られた熱転写受像シートに5×5cmの黒ベタを印画し、黒ベタ連続印画時のインクリボンと熱転写受像シートとの剥離音から、下記基準で離型性を評価した。
A:異音はなく、剥離できる。
B:若干の異音があるが、剥離できる。
C:熱融着しており、剥離が困難である。
【0080】
(耐光性)
下記条件のキセノンウェザーメーターを用いて、耐光性試験を行ない、色相変化量によって、耐光性を評価した。
・照射試験機:スガ試験機株式会社製「SX75」
・光源:キセノンランプ
・フィルター:内側=石英フィルター、外側=#320
・パネル温度:50℃
・槽内湿度:35〜50%RH
・照射強度:50(W/m2)、300〜400(nm)での測定値
・積算照度:10,000(kJ/m2)、300〜400(nm)での積算値
【0081】
・色相変化量:光学濃度計(グレタグで測定)を用い、階調パターン印画物の黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の光学反射濃度を測定し、照射前の光学反射濃度が1.0近傍のステップについて、照射前後におけるL***を色彩色差計(グレタグマクベス社製)で測定し、下記式により、色相変化量を算出して、黒(K)+有彩色の各印画物の耐光性を評価した。色相変化量が小さい値ほど、耐光性が良好である。
なお、黒+有彩色の(各印画物の)耐光性とは、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の各色の色相変化を、合計した値である。
・色相変化量=[(a*1−a*22+(b*1−b*221/2
(照射前のL***値:L*1、a*1、b*1
(照射後のL***値:L*2、a*2、b*2
【0082】
実施例で得られた熱転写受像シートは、比較例で得られた熱転写受像シートに比べて、染着性、離型性及び耐光性のいずれにも優れたものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の熱転写受像シートは、染着性、離型性及び耐光性のいずれにも優れたものであることから、熱転写受像シートとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)と付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)を含有し、ガラス転移温度が50℃以上であるグラフトポリマー(A)、及びグラフトポリマー(A)よりガラス転移温度が10〜80℃低い樹脂(B)を含有する、熱転写受像シート用樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂(B)が塩化ビニルアクリル共重合体である、請求項1に記載の熱転写受像シート用樹脂組成物。
【請求項3】
付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)が、芳香族基を有する付加重合性モノマーを由来とする構成単位を55重量%以上含有するものである、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート用樹脂組成物。
【請求項4】
グラフトポリマー(A)と樹脂(B)の重量比[グラフトポリマー(A)/樹脂(B)]が50/50〜95/5である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)と付加重合系樹脂からなる側鎖セグメント(A2)の重量比[セグメント(A1)/セグメント(A2)]が55/45〜95/5である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂組成物。
【請求項6】
ポリエステル樹脂からなる主鎖セグメント(A1)の構成単位の由来する原料モノマーが、不飽和脂肪族カルボン酸、不飽和脂環式カルボン酸、不飽和脂肪族アルコールから選ばれる1種以上を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂組成物。
【請求項7】
基材上に、請求項1〜6のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂組成物を含む染料受容層を有する、熱転写受像シート。
【請求項8】
下記工程(1)〜(3)を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の熱転写受像シート用樹脂組成物の製造方法。
工程(1):2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して、非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合を有するポリエステル樹脂(a1)を調製し、該ポリエステル樹脂(a1)を水性媒体と混合して、前記ポリエステル樹脂(a1)の水性分散液を得る工程
工程(2):工程(1)で得られた水性分散液に、付加重合性モノマー(a2)を添加し重合して、グラフトポリマー(A)の水性分散液を得る工程
工程(3):工程(2)で得られたグラフトポリマー(A)の水性分散液に樹脂(B)の水性分散液を混合し、熱転写受像シート用樹脂組成物の水性分散液を得る工程