説明

熱転写受像シート

【課題】本発明は、ポストキレート方式による印画等に用いられ、離型性および耐熱性等に優れた受容層を有する熱転写受像シートを提供することを主目的とするものである。
【解決手段】本発明は、基材と、上記基材上に形成された受容層と、を有する熱転写受像シートであって、上記受容層が、水酸基を含有する水酸基含有樹脂をブロックイソシアネートで硬化させてなるバインダー樹脂と、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物と、を含有することを特徴とする熱転写受像シートを提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポストキレート方式による印画等に用いられる熱転写受像シートに関するものであり、特に、離型性および耐熱性等に優れた受容層を有する熱転写受像シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像を形成する種々プリント方式の一つとして、感熱により色材層中の染料が昇華拡散して受像シートに移行する感熱昇華転写がある。このような感熱昇華転写においては、加熱手段として、通常プリンタのサーマルヘッドが使用され、極めて短時間の加熱によって3色または4色の多数の加熱量が調整された色ドットを熱転写受像シートの受容層に転移させ、多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。この様に形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明であり、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0003】
しかしながら、上記の感熱昇華転写方式は、印加するエネルギー量によってドット単位で染料の移行量を制御できるため、階調性画像の形成に優れているが、形成された画像は通常の印刷インキによるものとは異なり、色材が顔料でなく比較的低分子量の染料であり、且つビヒクルが存在しないため耐光性、耐候性、耐摩耗性等の耐久性に劣るという欠点がある。
【0004】
上記の欠点を改善する手段として、熱転写により色材層中の化合物と受容層中の化合物とを反応させることにより画像を形成する反応型の染料を用いた方法が提案されている。例えば、特許文献1〜4には、色材層側に含有させる化合物として熱拡散性染料を用い、受容層に含有させる化合物として金属イオン含有化合物を用い、熱転写後それらを反応させて熱拡散性染料−金属イオン含有化合物複合体を形成させることにより、画像を形成する方法(以下ポストキレート方式と呼ぶこともある。)が開示されている。
【0005】
上記ポストキレート方式により形成された画像は、高温及び高湿下に長時間放置しても、染料の褪色及び滲みが起こりにくく、耐光性についても従来の方法より得られる画像に比べて優れているという利点を有する。
【0006】
また、近年、プリンタの高速化が必要とされている。上記ポストキレート方式を用いて印画を行う場合、熱拡散性染料と金属イオン含有化合物との反応(キレート化反応)が進行しないと、上記の利点を充分に得ることができないため、キレート化反応を促進させるために高い熱エネルギーを与える必要となる。そのため、熱転写受像シートの受容層には耐熱性が必要となる。また、熱転写受像シートの受容層に金属イオン含有化合物を添加すると、受容層の見かけ上の軟化点が低下するため、受容層の離型性向上が必要となる。このように、耐熱性および離型性に優れた受容層を有する熱転写受像シートが求められている。
【0007】
なお、上記受容層の主成分としては、一般的に樹脂が使用されている。このような受容層においては、熱転写シートのバインダー樹脂に対して、印画時の熱融着を防止する目的で離型剤を添加することが公知となっている。また、樹脂に含まれる水酸基等と、イソシアネート化合物等の架橋剤とを反応させ、受容層の離型性、耐熱性耐光性等を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1においては、水酸基等を有する樹脂と、多官能イソシアネートとを含む組成物を熱硬化させた熱転写受像シートが開示されている。
【0008】
また、通常、上記受容層は、受容層形成用塗工液を基材等に塗布し、乾燥させることによって得られるのであるが、受容層の離型性、耐熱性、耐光性等を向上させるという観点からは、塗工液に含まれる樹脂が、架橋剤と反応する水酸基等の官能基を豊富に有していることが好ましい。しかしながら、このような樹脂を塗工液に使用すると、常温で樹脂が
架橋剤と反応することによりゲル化し、塗工液の保存性(ポットライフ)を悪化させるという問題があった。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−78893号公報
【特許文献2】特開昭59−109394号公報
【特許文献3】特開昭60−2398号公報
【特許文献4】特開2000−263828公報
【特許文献5】特開平08−99470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ポストキレート方式による印画等に用いられ、離型性および耐熱性等に優れた受容層を有する熱転写受像シートを提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明においては、基材と、上記基材上に形成された受容層と、を有する熱転写受像シートであって、上記受容層が、水酸基を含有する水酸基含有樹脂をブロックイソシアネートで硬化させてなるバインダー樹脂と、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物と、を含有することを特徴とする熱転写受像シートを提供する。
【0012】
本発明によれば、水酸基を豊富に含有する水酸基含有樹脂と、ブロックイソシアネートとを硬化させることにより、従来よりも多くの架橋点を有するバインダー樹脂を得ることができ、離型性および耐熱性等に優れた受容層を得ることができる。また、受容層が、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物を含有することから、ポストキレート方式による印画等に用いることができる熱転写受像シートを得ることができる。
【0013】
また、本発明においては、上記水酸基含有樹脂がポリビニルアセタール系樹脂であることが好ましい。上記水酸基含有樹脂としてポリビニルアセタール系樹脂を用いることにより、ブロックイソシアネートとの架橋密度を高めることができ、離型性および耐熱性等に優れた受容層を容易に形成することができるからである。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、ポストキレート方式による印画等に用いられ、離型性および耐熱性等に優れた受容層を有する熱転写受像シートを得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の熱転写受像シートについて説明する。
【0016】
本発明の熱転写受像シートは、基材と、上記基材上に形成された受容層と、を有する熱転写受像シートであって、上記受容層が、水酸基を含有する水酸基含有樹脂をブロックイソシアネートで硬化させてなるバインダー樹脂と、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物と、を含有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明によれば、水酸基を豊富に含有する水酸基含有樹脂と、ブロックイソシアネートとを硬化させることにより、従来よりも多くの架橋点を有するバインダー樹脂を得ることができ、離型性および耐熱性等に優れた受容層を得ることができる。また、受容層が、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物を含有することから、ポストキレート方式による印画等に用いることができる熱転写受像シートを得ることができる。なお、従来は、水酸基を豊富に含有する水酸基含有樹脂を受容層形成用塗工液に使用すると、塗工液が常温でゲル化し、塗工液の保存性を悪化させる場合があったが、本発明においては、所定の温度以上になって反応性を発揮するブロックイソシアネートを用いることにより、塗工液の保存性の向上を図ることができ、受容層を作製する際の作業性が向上する。また、従来、イソシアネートの種類によっては、金属イオン含有化合物と相互作用を起こし、塗工液の保存性および印画時のキレート化反応に悪影響を及ぼす場合があったが、本発明においては、ブロックイソシアネートを用いることで、そのような悪影響を抑制することができる。
【0018】
次に、本発明の熱転写受像シートについて、図面を用いて説明する。図1は、本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の熱転写受像シートは、基材1と、基材1上に形成された受容層2と有し、受容層2が、水酸基を含有する水酸基含有樹脂をブロックイソシアネートで硬化させてなるバインダー樹脂と、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物と、を含有するものである。
以下、本発明の熱転写受像シートについて、各構成ごとに説明する。
【0019】
1.受容層
まず、本発明に用いられる受容層について説明する。本発明に用いられる受容層は、水酸基を含有する水酸基含有樹脂をブロックイソシアネートで硬化させてなるバインダー樹脂と、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物と、を含有するものである。そこで、まず金属イオン含有化合物について説明し、次いでバインダー樹脂について説明する。
【0020】
(1)金属イオン含有化合物
本発明に用いられる金属イオン含有化合物は、後述する熱拡散性染料と反応し、受容層中で熱拡散性染料−金属イオン含有化合物複合体を形成する。
上記金属イオン含有化合物の受容層における含有量としては、特に限定されるものではないが、後述する水酸基含有樹脂に対して5〜80重量%が好ましく、10〜70重量%がより好ましい。
【0021】
上記金属イオン含有化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属イオンの無機または有機の塩、および金属錯体が挙げられ、中でも有機酸の塩および錯体が好ましい。金属としては、周期律表の第I〜VIII族に属する1価及び多価の金属が挙げられるが、中でもAl、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Sn、Ti及びZnが好ましく、Ni、Cu、Cr、Co及びZnがより好ましく、特にNiが好ましい。このような金属イオン含有化合物の具体例としては、Ni2+、Cu2+、Cr2+、Co2+およびZn2+と酢酸やステアリン酸等の脂肪族との塩、あるいは安息香酸、サルチル酸等の芳香族カルボン酸の塩等が挙げられる。また、下記一般式(1)で表される錯体は特に好ましく用いることができる。
【0022】
一般式(1) [M(Q)1(Q)m(Q)n]p+(Y)p
【0023】
但し、上記式中、Mは金属イオン、好ましくはNi2+、Cu2+、Cr2+、Co2+、Zn2+を表す。Q、Q、Qは各々Mで表される金属イオンと配位結合可能な配位化合物を表し、互いに同じであっても異なっていても良い。これらの配位化合物としては、例えばキレート科学5(上野景平著、南江堂、1975年)に記載されている配位化合物から選択することができる。Yは有機アニオン基を表し、具体的にはテトラフェニルホウ素アニオンやアルキルベンゼンスルホン酸アニオン等を挙げることができる。lは1、2又は3の整数を表し、mは1、2又は0を表し、nは1又は0を表すが、これらは上記一般式で表される錯体が2座配位、4座配位、6座配位かによって決定されるか、あるいはQ、Q、Qの配位子の数によって決定される。Pは0、1又は2を表す。P=0は、Qで表される配位化合物がアニオン性化合物であり、Qで表されるアニオン性化合物とMで表される金属カチオンとが電気的に中和された状態であることを意味する。
【0024】
アニオン性化合物としては下記一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0025】
【化1】

【0026】
上記一般式(2)で表される化合物において、Zは、アルキル基、アリール基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子または水素原子を表すが、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子等のように、電子吸引性基が金属イオンを含有する化合物を安定化させるものが好ましく、この内アリールオキシカルボニル基およびアルコキシカルボニル基が溶解性の点で更に好ましい。上記アリールオキシカルボニル基としては、例えばフェノキシカルボニル基等が挙げられ、上記アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルコキシカルボニル基を挙げることができ、また、これらのアルコキシカルボニル基には、ハロゲン原子、アリール基およびアルコキシ基等が置換していても良い。RおよびR´は、アルキル基またはアリール基を表し、それぞれ同じでも異なっていても良く、RとZ或いはR´とZが結合して環を形成しても良いが、Zが水素原子の時、RおよびR´が共にメチル基となることはない。また、Z、RおよびR´で表されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基および2−エチルヘキシル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルキル基を挙げることができ、またこれらのアルキル基にはハロゲン原子、アリール基やアルコキシ基等が置換していても良い。また、Z、RおよびR´で表されるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、それらは上記の置換基を有していても良い。また、Zで表されるアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基およびブトキシ基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖を有するアルコキシ基を挙げることができ、またハロゲン原子として好ましくは塩素原子を挙げることができる。
【0027】
また、上述したように、本発明に用いられる金属イオン含有化合物の金属は、Niであることが最も好ましい。そこで、Niを含有する金属イオン含有化合物を、下記(a)〜(p)に例示する。本発明においては、特に、金属イオン含有化合物(l)が好ましい。
【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
次に、上記金属イオン含有化合物と反応する熱拡散性染料について説明する。上記熱拡散性染料は通常、熱転写シートの染料層の中に含まれ、印画の際に、上記染料層と上記受容層とを対向するように重ね合わせ、サーマルヘッド等で加熱することによって、上記熱拡散性染料を上記熱転写受像シートの受容層に転写する。
上記染料層のバインダー樹脂としては、色素が熱拡散しやすく、かつ、保存時色素がブリードする、熱転写受像シートと熱融着する、等の不具合が発生するものでなければ、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、アクリル系樹脂及びその誘導体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース及びその誘導体が挙げられる。
【0033】
上記熱拡散性染料としては、上述した金属イオン含有化合物とキレート反応可能なものであれば、特に限定されるものではなく、一般的なシアン染料、マゼンダ染料、イエロー染料等を使用することができる。中でも、本発明においては、下記一般式(I)〜(V)で表される熱拡散性染料であることが好ましい。
【0034】
(a)一般式(I)で表される熱拡散性染料
【0035】
【化6】

【0036】
式中、R11は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、アルコキシ基、アミノ基、及びアルコキシカルボニル基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。R12はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基を表す。R12が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基は、上記R11おけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0037】
12が表すアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはシクロアルキル基は、上記R11で表される置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。R12としては、アルキル基が好ましい。
【0038】
13及びR14は水素原子または置換基を表す。R13及びR14が表す置換基としては、上記R11で表される置換基と同様の基を挙げることができ、これらの置換基は、さらに同様の置換基によって置換されていてもよい。R13及びR14としては、水素原子、アルキル基及びアリール基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0039】
15、R16、R17及びR18が表すアルキル基及びアリール基は、上記R11おけるアルキル基及びアリール基と同様の基を挙げることができる。
15、R16、R17及びR18が表すアルキル基及びアリール基は、上記R11で表される置換基と同様の置換基によって置換されていてもよい。R15、R16、R17及びR18としては、水素原子が好ましい。
【0040】
11は5又は6員の含窒素複素環を形成するために必要な非金属原子群を表す。
このような複素環の具体例として、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、チアゾール環、オキサゾール環、キノリン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等の各環を挙げることができる。好ましくは、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環であり、特に好ましくは、ピリジン環である。これらの環は置換基を有していてもよく、置換基としては、上記R11で表される置換基と同様の基を挙げることができる。
【0041】
(b)一般式(II)で表される熱拡散性染料
【0042】
【化7】

【0043】
式中、R21は、トリフルオロメチル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルバモイル基、アミノ基、シアノ基を表し、R22は、アルキル基、アシル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基を表し、R23は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。但し、R21とR22の炭素数の総和は3以上である。X21は、−CR2425−、−S−、−O−、−NR26−を表し、R24、R25は、水素原子、ハロゲン原子、置換基を表し、置換基としては、上述した一般式(I)における置換基と同様であるので、ここでの説明は省略する。R26は、水素原子、置換基を表し、置換基としては上記R24、R25の例として挙げたものと同様の置換基が挙げられる。Y21は、5〜6員環を形成するのに必要な原子群を表す。好ましくは、6員環を形成するのに必要な原子群である。例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環、ピリジン環、ナフタレン環などが挙げられるが、好ましくは、ベンゼン環である。
【0044】
(c)一般式(III)で表される熱拡散性染料
【0045】
【化8】

【0046】
式中、Y31は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、シアノ基、パーフルオロアルキル基を示し、Z31、Z32は−CR32=または−N=を表し、L31は下記一般式(III-a)で表される基を表し、複素環を形成するのに必要な非金属原子群B31を含む。一般式(III-a)で表される基としては、2−ピロリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、3−ピラゾリル基、ピラジニル基、トリアゾリル基、2−ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、3H−インドドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノザリニル基、キナゾリニル基等を表す。これら複素環は更に置換基を有してもよく、該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えば、ピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)が挙げられる。
【0047】
31は、無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、置換基としては、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基が挙げられる。R31は置換または無置換のアルキル基を表し、nは0以上の整数を表す。R32は水素原子または置換基を表す。置換基としてはアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0048】
【化9】

【0049】
式中、B31は複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0050】
(d)一般式(IV)で表される熱拡散性染料
【0051】
【化10】

【0052】
式中、Y41は水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、シアノ基、パーフルオロアルキル基を表し、Z41、Z42は−CR43=または−N=を表し、L41は一般式(IV-a)、(IV-b)で表される基を表し、X41は、無置換または置換されたアルキルアミノ基を表し、置換基としては、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホン酸基、スルホンアミド基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルファモイル基が挙げられる。R41は置換または無置換のアルキル基を表し、R43は水素原子または置換基を表し、nは0以上の整数を表す。置換基としてはアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0053】
【化11】

【0054】
式中、R42は水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表し、Rbは置換基を表し、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、複素環基(例えばピリジル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、チエニル等)等が挙げられる。pは0〜4の整数を表し、Bは−CR42=と共に複素環を形成するのに必要な非金属原子群を表す。
【0055】
(e)一般式(V)で表される熱拡散性染料
【0056】
【化12】

【0057】
式中、R51及びR52はそれぞれ、置換又は無置換の脂肪族基を表し、R53は置換基を表す。脂肪族基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基等が挙げられる。これらのアルキル基を置換しうる基としては、直鎖あるいは分岐のアルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、複素環基等が挙げられる。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の時、複数のR53は同じでも異なってもよい。R55、R56はアルキル基を表す。但し、R55、R56の少なくとも1つは2級アルキル基を表す。
【0058】
(2)バインダー樹脂
次に、本発明に用いられるバインダー樹脂について説明する。本発明に用いられるバインダー樹脂は、水酸基を含有する水酸基含有樹脂をブロックイソシアネートで硬化させてなるものである。以下、水酸基含有樹脂およびブロックイソシアネートについて説明する。
【0059】
(a)水酸基含有樹脂
本発明に用いられる水酸基含有樹脂は、水酸基を有するものであれば特に限定されるものではない。また、水酸基含有樹脂は、良好な保存性を有する受容層形成用塗工液を得ることができるものであることが好ましい。このような水酸基含有樹脂としては、ポリビニルアセタール系樹脂、水酸基を有するポリ塩化ビニル系樹脂等を挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリビニルアセタール系樹脂を使用することが好ましい。
ここで、上記ポリビニルアセタール系樹脂とは、ポリビニルアルコールの水酸基部分に各種アルデヒドを反応させて得られる樹脂の総称である。
【0060】
上記ポリビニルアセタール系樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリビニルホルマール系樹脂、ポリビニルアセトアセタール系樹脂、ポリビニルベンザール系樹脂、ポリビニルフェニルアセタール系樹脂、およびこれらの共重合体等を挙げることができる。なかでも本発明においては、ポリビニルブチラール系樹脂およびポリビニルアセトアセタール系樹脂がより好ましい。このような樹脂を用いることにより、離型性、耐熱性等に優れた受容層を容易に形成できるからである。
【0061】
(b)ブロックイソシアネート
次に、本発明に用いられるブロックイソシアネートについて説明する。本発明に用いられるブロックイソシアネートは、加熱により所定の温度以上になった時点で反応性を発揮するものである。このようなブロックイソシアネートは通常、常温付近で反応性を発揮しないため、ブロックイソシアネートを用いることにより、受容層形成用塗工液のゲル化等を抑制することができる。
【0062】
本発明に用いられるブロックイソシアネートとしては、所定の温度以上になった時点で反応性を発揮するものであれば特に限定されるものではないが、中でも、活性メチレンブロックイソシアネートが好ましい。活性メチレン系ブロックイソシアネートは、反応性を発揮する加熱温度が比較的低く、受容層形成用塗工液を用いて基材上に受容層を形成する際に、基材への熱的ダメージを軽減することができるからである。
【0063】
本発明に用いられる活性メチレン系ブロックイソシアネートは、加熱することによってブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールとの反応性を発現するものであれば特に限定されない。本発明に用いられる上記ブロック剤としては、フェノール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、オキシム系等を挙げることができる。
【0064】
本発明に用いられる活性メチレン系ブロックイソシアネートは、塗工する基材への熱的ダメージを抑制する点からも、低温反応型の活性メチレン系ブロックイソシアネートを用いることが好ましい。
このような、低温反応型の活性メチレン系ブロックイソシアネートとしては、特開昭52−116420、特開昭57−121065、特開平8−225630等に記載されているアセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル等の活性メチレン化合物を用いたブロックポリイソシアネート等が挙げることができる。
【0065】
本発明に用いられるブロックイソシアネートが上記反応性を発揮する温度は、80℃以上が好ましく、中でも80〜140℃の範囲内が好ましく、特に90〜120℃の範囲内が好ましい。常温近辺で受容層形成用塗工液がゲル化することを抑制することができ、受容層形成用塗工液の保存性を向上させることができるからである。また、反応性を発揮する温度が140℃よりも高い場合、本発明の受容層形成用塗工液を基材に塗工して受容層を形成する際に、基材が熱的ダメージを受けやすくなるため不適である。
【0066】
また、受容層形成用塗工液におけるブロックイソシアネートの含有量は、上記水酸基含有樹脂の水酸基に対して、0.5〜10化学当量の範囲内が好ましく、特に、1〜3化学当量の範囲内が好ましい。このような範囲内であれば、上記水酸基含有樹脂を充分に架橋することができ、所望の離型性、耐熱性を有する受容層を形成することができるからである。
【0067】
(3)離型剤
本発明に用いられる受容層は、離型性を向上させるために、離型剤を含有していることが好ましい。このような離型剤としては、ポリシロキサン、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、弗素系界面活性剤、シリコーン系ブロック・コポリマー等を挙げることができる。なかでも本発明においては、シリコーンオイル、または、シリコーン系ブロック・コポリマーを好適に用いることができる。
【0068】
上記シリコーンオイルとしては、エポキシ変性、アルキル変性、アミノ変性、カルボキシル変性、アルコール変性、フッ素変性、アルキルアラルキルポリエーテル変性、エポキシ・ポリエーテル変性、ポリエーテル変性等の変性シリコーンオイルが挙げることができる。上記シリコーン系ブロック・コポリマーとしては、特に、シリコーン系樹脂とアクリル樹脂とからなるブロック・コポリマーが好ましい。本発明においては、離型剤として、1種若しくは2種以上の混合物を用いることができる。
【0069】
受容層形成用塗工液における上記離型剤の含有量は、上記水酸基含有樹脂100重量部に対して、0.5〜30重量部の範囲内が好ましい。
【0070】
(4)その他
また、本発明に用いられる受容層は、必要に応じて、滑剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等を含有していても良い。本発明に用いられる滑剤は、熱転写を行う際に、熱転写リボン等の走行性を良好に保つために用いられるものである。上記滑剤としては、受容層の色材受容性を阻害せず、熱転写リボン等の走行性を良好に保つことができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には炭酸カルシウム、シリカ、および硫酸バリウム等の無機系滑剤、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ワックス類(脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪族アマイド等)、および高級脂肪酸の金属塩(ステアリン酸亜鉛)等の有機系滑剤、が挙げられる。中でもシリカおよび脂肪酸アマイドを使用することが好ましい。
【0071】
また、上記滑剤の含有量は、上記水酸基含有樹脂に対して7〜20重量%の範囲内が好ましく、中でも7〜15重量%の範囲内であることが好ましい。滑剤の含有量が上記範囲内にあれば、熱転写リボン等の走行性を良好に維持できるからである。また、本発明においては、上述した滑剤1種類のみを使用しても良く、2種類以上を混合して使用しても良い。なお、走行性の観点から、上述した有機系滑剤および無機系滑材を併用して使用することが好ましい。
【0072】
(5)受容層
本発明に用いられる受容層は、上述したバインダー樹脂と、金属イオン含有化合物と、を少なくとも有するものである。本発明に用いられる受容層は、通常、上記バインダー樹脂を構成する水酸基含有樹脂およびブロックイソシアネートと、金属イオン含有化合物とを少なくとも含有する受容層形成用塗工液を、基材等に塗布し、その後硬化させることによって得ることができる。
【0073】
上記受容層形成用塗工液は、溶媒を有しない組成物であっても良いが、例えば粘性が高い場合には、上記バインダー樹脂等を溶媒に溶解または分散させることが好ましい。上記溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、あるいはこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
【0074】
また、上記受容層形成用塗工液を塗布する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、グラビアロール法、コンマコート法、バーコート法等を挙げることができる。
【0075】
また、上記受容層形成用塗工液を硬化させる方法としては、特に限定されるものではないが、具体的には、上記受容層形成用塗工液を加熱する方法が挙げられる。また、加熱温度としては、受容層形成用塗工液に含まれる上記ブロックイソシアネートが上記反応性を発現する温度以上であれば、特に限定されるものではなく、上記ブロックイソシアネートの特性、基材等への熱的ダメージ等を考慮して適宜選択することができる。
【0076】
上記受容層形成用塗工液の塗工量としては、特に限定されるものではないが、例えば0.5〜6.0g/cmの範囲内が好ましく、特に1.0〜4.0g/cmの範囲内が好ましい。このような範囲内であれば、良好な色材受容性を発揮することができる受容層を得ることができるからである。
【0077】
また、本発明の受容層は、色材に対する受容性を向上させるために、表面にコロナ放電処理、オゾン処理等が施されていても良い。
【0078】
2.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明の熱転写受像シートに用いられる基材については、一般的な熱転写受像シートに使用するものであれば、特に限定されるものではないが、具体的には、上質紙(酸性紙、中性紙)、合成紙、コート紙、含浸紙、紙間強化紙等の紙、透明、半透明、または着色フィルム、およびプラスチック等を挙げることができる。
【0079】
3.熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、上記受容層以外に、易接着プライマー層を有していても良い。易接着プライマー層は、基材と受容層との間に設けられて、これらの密着性を向上させる役割を果たすものである。このような易接着プライマー層の原料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、ポリエチレンイミン、アルキルチタネート等を使用することができる。また、必要に応じて着色剤、白色顔料、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、ラジカル補足剤等を含有させることもできる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0082】
[熱転写シートの作成]
基材シートとして厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、一方の面に耐熱性背面層を設け、他方の面に下記組成の染料層塗工液1〜3を乾燥時の塗布量が0.5g/mとなるようにワイヤーバーにより塗布および乾燥(80℃、5分)させて、3種類の熱転写シート1〜3を得た。
【0083】
(染料層塗工液1の組成)
セルロースアセテートブチレート樹脂
(CAB381−0.1、イーストマンケミカル(株)製) 3.0重量部
下記構造式(i)で表される染料化合物 3.0重量部
ポリエーテル変性シリコーン(FZ2101、日本ユニカー(株)製) 0.1重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0084】
【化13】

【0085】
(染料層塗工液2の組成)
セルロースアセテートブチレート樹脂
(CAB381−0.1、イーストマンケミカル(株)製) 3.0重量部
下記構造式(ii)で表される染料化合物 3.0重量部
ポリエーテル変性シリコーン(FZ2101、日本ユニカー(株)製) 0.1重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0086】
【化14】

【0087】
(染料層塗工液3の組成)
セルロースアセテートブチレート樹脂
(CAB381−0.1、イーストマンケミカル(株)製) 3.0重量部
下記構造式(iii)で表される染料化合物 4.5重量部
ポリエーテル変性シリコーン(FZ2101、日本ユニカー(株)製) 0.1重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0088】
【化15】

【0089】
[実施例1]
基材として、コート紙(王子製紙(株)製OKトップコート;127.9g/m)の表裏に厚さ50μmの白色PET(東レ(株)製ルミラーE63S)をウレタン系接着剤(三井武田ケミカル(株)製タケラックA−969V/タケネートA−5=3/1、塗布量:4g/m(乾燥後))で貼合した基材を用いた。該基材の一方の面に下記組成の受容層塗工液を乾燥時4.0g/mとなるようにワイヤーバーにより塗布および乾燥(120℃、3分)させて本発明の熱転写受像シートを得た。なお、本実施例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0090】
(受容層塗工液(実施例1)の組成)
ポリビニルブチラール樹脂
(BM−1、水酸基量34mol%、積水化学工業(株)製) 10重量部
活性メチレン系ブロックイソシアネート
(デュラネートMF−K60X、旭化成工業(株)製) 1.0重量部
アクリル変性シリコーン(FS730、日本油脂(株)製) 0.1重量部
金属イオン含有化合物(l) 7重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0091】
【化16】

【0092】
[実施例2]
実施例1に記載の上記受容層塗工液(実施例1)の代わりに、下記組成の受容層塗工液(実施例2)を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の熱転写受像シートを得た。なお、本実施例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0093】
(受容層塗工液(実施例2)の組成)
ポリビニルブチラール樹脂
(BM−1、水酸基量34mol%、積水化学工業(株)製) 10重量部
活性メチレン系ブロックイソシアネート
(デュラネートMF−K60X、旭化成工業(株)製) 1.5重量部
アクリル変性シリコーン(FS730、日本油脂(株)製) 0.1重量部
金属イオン含有化合物(l) 7重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0094】
[実施例3]
実施例1に記載の受容層塗工液(実施例1)のポリビニルブチラール樹脂の代わりに、ポリビニルブチラール樹脂(BH−A、水酸基量31mol%、積水化学工業(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の熱転写受像シートを得た。なお、本実施例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0095】
[実施例4]
実施例1に記載の受容層塗工液(実施例1)のポリビニルブチラール樹脂の代わりに、ポリビニルアセタール樹脂(BX−1、水酸基量33mol%、積水化学工業(株)製)を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の熱転写受像シートを得た。なお、本実施例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0096】
[実施例5]
実施例1に記載の受容層塗工液(実施例1)の代わりに、下記組成の受容層塗工液(実施例5)を使用した以外は実施例1と同様にして本発明の熱転写受像シートを得た。なお、本実施例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0097】
(受容層塗工液(実施例5)の組成)
ポリビニルブチラール樹脂
(BM−1、水酸基量34mol%、積水化学工業(株)製) 10重量部
活性メチレン系ブロックイソシアネート
(デュラネートMF−K60X、旭化成工業(株)製) 1.0重量部
ポリエーテル変性シリコーン
(KF−615A、信越化学工業(株)製) 0.2重量部
金属イオン含有化合物(l) 7重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0098】
[実施例6]
実施例1と同様にして本発明の熱転写受像シートを得た。本実施例においては、上記の熱転写シート2を用いて離型性評価等を行った。
【0099】
[実施例7]
実施例1と同様にして本発明の熱転写受像シートを得た。本実施例においては、上記の熱転写シート3を用いて離型性評価等を行った。
【0100】
[比較例1]
実施例1に記載の受容層塗工液(実施例1)の代わりに、下記組成の受容層塗工液(比較例1)を使用した以外は実施例4と同様にして比較の熱転写受像シートを得た。なお、本比較例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0101】
(受容層塗工液(比較例1)の組成)
ポリビニルブチラール樹脂
(BM−1、水酸基量34mol%、積水化学工業(株)製) 10重量部
アクリル変性シリコーン(FS730、日本油脂(株)製) 0.1重量部
金属イオン含有化合物(l) 7重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0102】
[比較例2]
実施例1に記載の受容層塗工液(実施例1)の代わりに、下記組成の受容層塗工液(比較例2)を使用した以外は実施例1と同様にして比較の熱転写受像シートを得た。なお、本比較例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0103】
(受容層塗工液(比較例2)の組成)
ポリビニルブチラール樹脂
(BM−1、水酸基量34mol%、積水化学工業(株)製) 10重量部
ヘキサメチレンジイソシアネート(A−65、三井武田ケミカル(株)製) 1重量部
硬化触媒(SCAT−52A、三井武田ケミカル(株)製) 0.01重量部
アクリル変性シリコーン(FS730、日本油脂(株)製) 0.1重量部
金属イオン含有化合物(l) 7重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0104】
[参考例1]
実施例1において、乾燥温度を80℃3分とした以外は実施例1と同様にして比較の熱転写受像シートを得た。なお、本参考例においては、上記の熱転写シート1を用いて離型性評価等を行った。
【0105】
[参考例2]
実施例1記載の受容層塗工液(実施例1)の代わりに、下記組成の受容層塗工液(参考例2)を使用した以外は実施例1と同様にして比較の熱転写受像シートを得た。
【0106】
(受容層塗工液(参考例2)の組成)
ポリビニルブチラール樹脂
(BM−1、水酸基量34mol%、積水化学工業(株)製) 10重量部
活性メチレン系ブロックイソシアネート
(デュラネートMF−K60X、旭化成工業(株)製) 0.1重量部
アクリル変性シリコーン(FS730、日本油脂(株)製) 0.1重量部
金属イオン含有化合物(l) 7重量部
メチルエチルケトン 45重量部
トルエン 45重量部
【0107】
[保存性評価]
実施例、比較例および参考例に用いられている受容層塗工液について、塗工液作成後3時間、24時間経過したときの塗工液の状態を評価した。
(評価基準)
○:塗工液作成時から変化なし
△:塗工液作成時より増粘
×:塗工液が硬化(ゲル化)
【0108】
[離型性評価]
実施例、比較例および参考例に記載した、熱転写シートと熱転写受像シートとを組み合わせて、下記に示す評価を行った。
まず、熱転写シートおよび熱転写受像シートについて、熱転写受像シートの受容層と熱転写シートの染料層とを重ね合わせ、解像度300dot/inch、平均抵抗値5300Ωのサーマルヘッドとプラテンロールで圧接し、0.09W/dotの印加エネルギーでベタパターンを、送り速度2.0ms/lineで染料部の背面から該サーマルヘッドで加熱して受容層上に画像を形成し、印画物を得た。
次に、上記の手順で印画後、熱転写シートおよび熱転写受像シートを手で剥がす際、受容層と染料層間で熱融着が無いか下記評価基準にて評価した。
(評価基準)
○:剥がす際にほとんど抵抗が感じられない。
△:剥がす際に抵抗が感じられる。
×:熱融着しており、剥がしづらい。
【0109】
[濃度特性評価]
上記印画条件にて得られた印画物について、Gretag Macbeth社製 Spectrolino(D65光源、ANSI StatusA フィルター使用)を用い濃度特性を評価した。その結果、実施例は、いずれもOD>2.0であり十分な濃度特性を示した。
【0110】
[総合評価]
上記評価より、受容層塗工液の状態および印画物の濃度特性及び離型性について、総合的に示した。
○:性能が良好である。
△:性能が若干劣る。
×:性能が著しく劣る。
【0111】
【表1】

【0112】
上記に示した表1において、比較例1はブロックイソシアネートを含有しない受容層塗工液を用いた場合の結果であり、離型性が劣っており、性能的に十分ではない。比較例2は通常のヘキサメチレンジイソシアネートを含有した受容層塗工液を用いた場合の結果であり、塗工液のポットライフが著しく短く、受容層塗工液としての性能として十分でない。参考例1はブロックイソシアネートを含有した受容層塗工液を80℃で乾燥させた場合の結果であり、乾燥温度が低い場合にはブロックイソシアネートと水酸基含有樹脂との反応が十分に進行しておらず、離型性が若干劣ることが示されている。参考例2はブロックイソシアネートの含有量が少ない受容層塗工液を用いた場合の結果であるが、含有量が少ないために離型性向上の効果が最大限には得られないことが示されている。
【0113】
以上の結果から、本発明により、離型性および耐熱性等に優れた受容層を形成することができることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の熱転写受像シートの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0115】
1 … 基材
2 … 受容層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成された受容層と、を有する熱転写受像シートであって、
前記受容層が、水酸基を含有する水酸基含有樹脂をブロックイソシアネートで硬化させてなるバインダー樹脂と、キレート化可能な熱拡散性染料と反応し得る金属イオン含有化合物と、を含有することを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項2】
前記水酸基含有樹脂がポリビニルアセタール系樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−36950(P2008−36950A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213719(P2006−213719)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】