説明

熱転写受像シート

【課題】染着性、離型性及び耐光性のいずれにも優れた熱転写受像シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材上に、水溶性高分子及び中空粒子を含有する中間層と、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有する染料受容層とをこの順に有する熱転写受像シートであって、前記2種の樹脂のうち、少なくとも1種が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、熱転写受像シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇華性染料を記録剤とし、これを基材に担持させた熱転写シートを用いて、昇華性染料で染着可能な熱転写受像シート上にカラー画像を形成する方法が提案されている。これは加熱手段としてプリンターのサーマルヘッドなどを使用し、加熱によって染料を受像シートに転写させてカラー画像を得るものである。このようにして形成された画像は、染料を用いることから非常に鮮明であり、且つ透明性に優れているため、中間色の再現性や階調性に優れ、高品質の画像が期待できる。上記熱転写受像シートとして、近年、特に、染料の染着性、離型性及び耐光性において優れた熱転写受像シートが望まれている。
このような状況下で、熱転写受像シートについて、画像濃度(染着性)の観点から、ガラス転移点の異なる樹脂を使用する技術が開示されている(特許文献1参照)。しかし、この技術では、前記観点から、近年の市場要求に対しては不十分である。即ち、一般に染着性が高まると、離型性や耐光性が劣る傾向にあるため、染着性、離型性や耐光性のすべてを満たすものは未だ見出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−229987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術によれば、離型性についてはガラス転移点の高い樹脂を用いることで達成できるが、一方で、染着性、耐光性が犠牲になるという問題がある。逆に染着性、耐光性はガラス転移点の低い樹脂を用いることで達成できるが、今度は離型性に問題が生じる。
本発明は、染着性、離型性及び耐光性のいずれにも優れた熱転写受像シート及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
[1]基材上に、水溶性高分子及び中空粒子を含有する中間層と、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有する染料受容層とをこの順に有する熱転写受像シートであって、前記2種の樹脂のうち、少なくとも1種が、式(I)
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、R1O及びR2Oは各々オキシアルキレン基を表し、x及びyはそれぞれR1O及びR2Oの付加モル数を示す正の数であり、かつxとyの和の平均値は2〜7である。但し、x個のR1Oは各々同一でも異なっていてもよく、またy個のR2Oは各々同一でも異なっていてもよい。)
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、熱転写受像シート、
【0008】
[2](1)基材上に、水溶性高分子及び中空粒子を含有する塗工液を用いて中間層を設ける工程、及び
(2)該中間層の上に、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有する塗工液を用いて染料受容層を設ける工程、を有する熱転写受像シートの製造方法であって、前記工程(2)の2種の樹脂のうち、少なくとも1種が、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、熱転写受像シートの製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、染着性、離型性及び耐光性のいずれにも優れた熱転写受像シート及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の熱転写受像シートは、基材上に、水溶性高分子及び中空粒子を含有する中間層と、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有する染料受容層とをこの順に有するものである。
【0011】
[染料受容層]
本発明の熱転写受像シートを構成する染料受容層は、ガラス転移点が互いに10〜80℃以上異なる2種の樹脂を含有するもの、あるいは該2種の樹脂を含む樹脂から得られるものであり、前記2種の樹脂のうち、少なくとも1種が、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である。
染料受容層は、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有するもの、あるいは該2種の樹脂を含む樹脂から得られるものであるが、熱転写受像シートの離型性及び染料拡散性に優れる観点から、前記2種の樹脂のガラス転移点の差は、15〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜35℃である。同様の観点から、前記ガラス転移点の差を有する2種の樹脂は、染料受容層を構成する樹脂中に、合計で80重量%以上含有することが好ましく、90重量%以上含有することがより好ましく、実質100重量%であることがさらに好ましい。すなわち、本発明では、染料受容層を構成する樹脂中に、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂と、他の樹脂を複数含有する場合においても、
前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂と複数の樹脂のうちいずれかがガラス転移点が互いに10〜80℃異なるものであれば本発明に包含される。
【0012】
本発明においては、前記ガラス転移点の差を有する限りにおいて、2種の樹脂のうち、ガラス転移点の低い樹脂のガラス転移点は、染料の染着性及び熱転写受像シートの耐光性の観点から、45℃以下であることが好ましく、−20〜45℃であることがより好ましく、さらに好ましくは0〜45℃、よりさらに好ましくは25〜45℃である。また、ガラス転移点の高い樹脂のガラス転移点は、熱転写受像シートの離型性の観点から、50℃以上であることが好ましく、50〜100℃がより好ましく、さらに好ましくは50〜80℃、よりさらに好ましくは50〜70℃である。
【0013】
(ポリエステルユニットを有する樹脂)
本発明においては、前記2種の樹脂のうち少なくとも1種が、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である。
前記ポリエステルユニットを有する樹脂としては、ポリエステルであってもよいが、熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルユニットと、前記ポリエステルユニット以外の他の樹脂ユニットからなる複合樹脂であることが好ましい。
【0014】
ポリエステルユニット
本発明においてポリエステルユニットを有する樹脂とは、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルそのもの、又は前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルと他の樹脂とが化学結合した樹脂を意味するものである。
【0015】
ポリエステルユニットを構成するポリエステルは、原料成分として、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分を用いて得られる。
一般式(I)において、R1O、R2Oはいずれもオキシアルキレン基であり、好ましくは、それぞれ独立に炭素数1〜4のオキシアルキレン基であり、より好ましくは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基である。また、x個のR1O又はy個のR2Oは、各々同一であっても異なっていてもよいが、熱転写受像シートの染料の染着性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、同一であることが好ましい。
x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数に相当し、それぞれ正の数である。さらに、カルボン酸成分との反応性の観点から、xとyの和の平均値は2〜7が好ましく、2〜5がより好ましく、2〜3がさらに好ましい。
【0016】
前記式(1)で表される2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物としては、前記観点から、具体的には、x及びyが前記定義の範囲内であり、かつR1O及びR2Oが共にオキシエチレン基であるポリオキシエチレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、エチレンオキサイド付加物と称する)、かつR1O及びR2Oが共にプロピレンオキシ基であるポリオキシプロピレン−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、プロピレンオキサイド付加物と称する)が好ましく挙げられる。2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物においては、熱転写受像シートの離型性に優れる点から、前記プロピレンオキサイド付加物の含有量が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物中、50〜100モル%であることが好ましく、60〜100モル%であることがより好ましく、さらに好ましくは70〜100モル%であり、更により好ましくは実質的に100モル%である。プロピレンオキサイド付加物を含有する場合は、本発明の効果を損しない範囲で、プロピレンオキサイド付加物の一部が他のオキシアルキレン基で置換されていてもよい。他のオキシアルキレン基としては、熱転写受像シートの染料の染着性の観点から、オキシエチレン基、オキシトリメチレン基が好ましく、熱転写受像シートの染料の染着性の観点から、オキシエチレン基がより好ましい。
【0018】
前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物は、熱転写受像シートの離型性、染料の染着性の観点から、原料アルコール成分中に好ましくは50モル%以上含有されるが、より好ましくは70モル%以上含有され、さらに好ましくは80モル%以上、よりさらに好ましくは実質100モル%含有される。なお、本発明において、アルキレンオキサイド付加物とは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンにオキシアルキレン基を付加したアルコール全体を意味するものである。
【0019】
ポリエステルユニットの原料成分であるアルコール成分として、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物とともにこれ以外の公知のアルコール成分を使用することができる。例えば、式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物以外の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド付加物(平均付加モル数1〜16)等が挙げられる。前記アルコール成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
また、ポリエステルユニットの原料成分としてのカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸類、デカリンジカルボン酸類等の脂環族カルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらのアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられるが、熱転写受像シートの耐光性の観点から、カルボン酸成分としては脂環族カルボン酸及び/又は脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。前記カルボン酸成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
また、カルボン酸成分として、熱転写受像シートへの染料の染着性の観点から、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸を用いることができ、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜22のアルキル基又は炭素数2〜22のアルケニル基で置換されたコハク酸を用いることも好ましい態様であり、具体的には、炭素数8〜22、好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、又は炭素数8〜22、好ましくは炭素数10〜20の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルケニル基が用いられる。
【0022】
具体的には、アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸において、アルキル基としては、例えば各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基、各種テトラデシル基、各種ヘキサデシル基、各種オクタデシル基、各種イコシル基などを挙げることができる。
また、アルケニル基としては、例えば各種オクテニル基、各種デセニル基、各種ドデセニル基、各種テトラデセニル基、各種ヘキサデセニル基、各種オクタデセニル基、各種イコセニル基などを挙げることができる。
アルキル基及び/又はアルケニル基を有するコハク酸は、カルボン酸成分中に5〜50モル%含有されることが好ましい。
【0023】
ポリエステルユニットは、例えば、前記アルコール成分とカルボン酸成分とを不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じエステル化触媒を用いて、180〜250℃の温度で縮重合することにより製造することができるが、本発明の熱転写受像シートの離型性の観点から、ポリエステルユニットはシャープな分子量分布を有することが好ましく、エステル化触媒を用いて縮重合をすることが好ましい。エステル化触媒としては、錫触媒、チタン触媒、三酸化アンチモン、酢酸亜鉛、2酸化ゲルマニウム等の金属化合物等が挙げられるが、ポリエステルユニットの合成におけるエステル化反応の反応効率の観点から、錫触媒が好ましい。錫触媒としては、酸化ジブチル錫、ジオクチル酸錫、これらの塩等が好ましく用いられる。
【0024】
熱転写受像シートの離型性、保存安定性の観点から、ポリエステルユニットの軟化点は80〜165℃が好ましく、ガラス転移点は50〜85℃が好ましい。酸価は1〜35mgKOH/gが好ましく、5〜35mgKOH/gがより好ましく、10〜35mgKOH/gが更に好ましい。ガラス転移点、軟化点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層用分散液の造膜性の観点から、ポリエステルユニットの数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましい。
【0025】
尚、本発明において、ポリエステルユニットには、前記範囲内において、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルも含まれる。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルユニットが挙げられる。
本発明において、ポリエステルユニットを有する樹脂中におけるポリエステルユニットの含有量は、熱転写受像シートの離型性と染料の染着性の観点から、50〜100重量%であることが好ましく、より好ましくは60〜100重量%であり、さらに好ましくは60〜90重量%である。
【0026】
ポリエステルユニットを有する樹脂
本発明において、ポリエステルユニットを有する樹脂とは前述の通りであるが、前記ポリエステルユニットと、前記ポリエステルユニット以外の他の樹脂ユニットを有する複合樹脂が好ましく用いられる。
ポリエステルユニットと他の樹脂ユニットを有する複合樹脂としては、ポリエステルユニットを含有するものであれば特に制限はないが、染料の染着性及び離型性の観点から、ポリエステルユニットと付加重合系樹脂ユニットの複合樹脂が好ましい。具体的には、(a)ポリエステルユニットの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物(両反応性モノマー)、を付加重合及び縮重合させることにより得られる樹脂が好ましく挙げられる。
【0027】
(a)ポリエステルユニットの原料モノマーとしては、前述のポリエステルユニットについて述べた通りである。また、(b)付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーは、スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有することが好ましい。
付加重合系樹脂ユニットとしては、付加重合反応の反応性の観点から、好ましくはラジカル重合反応により得られるビニル系樹脂等が挙げられる。付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーは、スチレン又はスチレン誘導体の少なくとも一種を含有することが好ましい。スチレン誘導体としては、メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩等が挙げられる。
【0028】
これらの中では、熱転写受像シートの離型性の観点から、スチレン誘導体が好ましく、モノマーの原料価格、熱転写受像シート用樹脂の保存安定性の観点からは、スチレンが好ましい。スチレンあるいはスチレン誘導体の含有量は、熱転写受像シートの離型性及び樹脂の保存安定性の観点から、付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー中、55重量%以上が好ましく、65重量%以上がより好ましく、75重量%以上がさらに好ましい。
【0029】
スチレン又はスチレン誘導体以外の付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン等のエチレン性不飽和モノオレフィン類;ブタジエン等のジオレフィン類;塩化ビニル等のハロビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;(メタ)アクリル酸のアルキル(炭素数1〜18)エステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等のエチレン性モノカルボン酸のエステル;ビニルメチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニリデンクロリド等のビニリデンハロゲン化物;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類等が挙げられる。
なお、付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーの付加重合には、公知の重合開始剤、架橋剤等を必要に応じて使用してもよい。前記付加重合の際の温度は、用いられる重合開始剤の種類にもよるが、例えば、ジブチルパーオキサイド等の開始剤を用いる場合には、反応系内の粘度を下げ付加重合反応を効率的に行う観点から、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃である。
【0030】
(c)両反応性モノマーとは、分子内に、カルボキシル基とエチレン性不飽和結合とを有する化合物であり、アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる。アクリル酸、メタアクリル酸の誘導体としては、クロトン酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−メチル2−ペンテン酸、4−メチル2−ペンテン酸、2−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸などが挙げられる。このような両反応性モノマーを用いることにより、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性に優れた樹脂が得られる。これにより、前記複合樹脂は、ポリエステルユニットと付加重合系樹脂ユニットとが、その少なくとも一部で両反応性モノマーを介して結合したものである。
(c)両反応性モノマーの使用量は、ポリエステルユニットへの付加重合系樹脂ユニットの分散性と、付加重合反応及び縮重合反応の反応制御の観点から、(a)ポリエステルユニットの原料モノマーであるカルボン酸成分に対し、1〜40モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましい。
【0031】
原料モノマーの重合は、縮重合反応と付加重合反応を同一反応容器中で順次又は並行して行うことにより行われる。樹脂は、(c)両反応性モノマーを(b)付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーと反応させ、該反応により得られた付加重合系樹脂ユニットに取り込まれた両反応性モノマー由来の官能基と、ポリエステルユニットの原料のアルコールの末端ヒドロキシ基が反応することにより得られるものであることが好ましく、このような方法により得られるものであれば、付加重合反応と縮重合反応の開始、進行及び完結は、時間的に制限はなく、それぞれの反応に応じて反応温度及び時間を適当に選択し、反応を進行、完結させればよい。縮重合反応及び付加重合反応は、それぞれ前述の条件により行うことができる。
【0032】
前記複合樹脂は、(1)(a)ポリエステルユニットの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる両反応性モノマー、を混合する工程、(2)主として付加重合反応により、両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂ユニットを得る工程、及び(3)主として縮重合反応により、ポリエステルユニットの原料モノマー及び前記両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂ユニットとを反応させる工程、を有する方法により得ることが好ましい。なお、前記付加重合反応、縮重合反応はそれぞれ独立して行われる必要はなく、並行して行われてもよいが、工程(2)では主として付加重合反応が、工程(3)では主として縮重合反応が行われることが好ましい。
【0033】
好ましくは、前記複合樹脂は、主として付加重合反応により両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂ユニットを得た後、主として縮重合反応によりポリエステルユニットを形成させ、両反応性モノマー由来の官能基とポリエステルユニットとを反応させる方法により得られる。なお、ここで「主として」とは、本発明の効果を阻害しない範囲において、同時にあるいは並行して他の反応が起こっていてもよい趣旨である。また、前記「両反応性モノマー由来の官能基」とは、前記両反応性モノマーに由来し、ポリエステルユニットが有するカルボキシル基やヒドロキシ基などの官能基と縮重合反応しうる官能基を指す。
【0034】
前記方法は、具体的には、まず、(b)付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー、と(c)両反応性モノマーとを混合し、好ましくは100〜180℃、より好ましくは140〜170℃で主として付加重合反応させて両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂ユニットを得た後、(a)ポリエステルユニットの原料モノマーを、好ましくは触媒を添加して、混合し、反応温度を、好ましくは150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、さらに好ましくは175〜240℃に上昇させた後、主として縮重合反応によりポリエステルユニットを形成させ、前記付加重合系樹脂ユニットの両反応性モノマー由来の官能基とポリエステルユニットを反応させて行うことができる。(a)ポリエステルユニットの原料モノマー、(b)付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー、及び(c)両反応性モノマーは最初に混合しておいてもよい。
【0035】
また、ポリエステルユニットを有する樹脂は、主として縮重合反応によりポリエステルユニットを得た後、主として付加重合反応により両反応性モノマー由来の官能基を有する付加重合系樹脂ユニットを形成させ、前記ポリエステルユニットと付加重合系樹脂ユニットの両反応性モノマー由来の官能基とを反応させて得ることもできる。
本発明においては、(a)ポリエステルユニットの原料モノマーの(b)付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー及び(c)両反応性モノマーの両モノマーに対する重量比[(a)/(b)+(c)]は、染料の染着性と熱転写受像シートの離型性を両立させる観点から、20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜80/20がより好ましく、40/60〜75/25がさらに好ましく、50/50〜70/30がよりさらに好ましい。ポリエステルユニットが付加重合系樹脂ユニットに対して多く存在する場合、ポリエステルユニット中に付加重合系樹脂ユニットがより微細に、かつ均一に分散することができ好ましい。上記比は、ポリエステルユニットの付加重合系樹脂ユニットに対する重量比を示すものと考えられる。
【0036】
また、(b)付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーの(c)両反応性モノマーに対する重量比[(b)/(c)]はポリエステルユニット中の付加重合系樹脂ユニットの分散性と、反応の制御の観点から、80/20〜99/1であることが好ましく、89/11〜98/2がより好ましく、93/7〜97/3がさらに好ましく、95/5〜97/3がよりさらに好ましい。
【0037】
なお、前記ポリエステルユニットと付加重合系樹脂ユニットを有する複合樹脂には、本発明の効果を損しない範囲で他の樹脂ユニットを有していてもよい。他の樹脂ユニットとしては、原料モノマーにテレフタル酸や前記式(I)で表されるもの以外の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物等を使用したポリエステルユニット;ポリカーボネートユニット;ポリメトキシスチレンユニット、ポリエトキシスチレンユニット、ポリt-ブトキシスチレンユニットなどのアルコキシスチレン誘導体ユニット;フェノキシエチルアクリレートユニット、フェノキシエトキシエチルアクリレートユニットなどのフェノキシポリエチレングリコールアクリレート誘導体ユニット;フェノキシエチルメタクリレートユニット、フェノキシエトキシエチルメタクリレートユニットなどのフェノキシポリエチレングリコールメタクリレート誘導体ユニット;ポリヒドロキシスチレンユニットなどが挙げられる。これらは単独重合体ユニットでも、他のモノマーとの共重合体ユニットであってもよい。これらのなかでは、染料の染着性の観点から、ポリエステルユニット、フェノキシポリエチレングリコールアクリレートユニット、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレートユニットが好ましく用いられる。
【0038】
熱転写受像シートの離型性、保存安定性の観点から、ポリエステルユニットを有する樹脂の軟化点は80〜165℃が好ましい。ポリエステルユニットを有する樹脂のガラス転移点は、染料受容層を構成した場合、他方の樹脂のガラス転移点と10〜80℃の差があれば特に制限はなく、ガラス転移点が高い樹脂及びガラス転移点が低い樹脂のいずれとして使用するかによって適宜選択できる。具体的には、好ましくは―20〜100℃、より好ましくは0〜80℃、更に好ましくは25〜70℃である。ガラス転移点の低い樹脂として用いる場合は、そのガラス転移点は45℃以下であることが好ましく、−20〜45℃であることがより好ましく、さらに好ましくは0〜45℃、よりさらに好ましくは25〜45℃である。また、ガラス転移点の高い樹脂として使用する場合は、そのガラス転移点は、50℃以上であることが好ましく、50〜100℃がより好ましく、さらに好ましくは50〜80℃、よりさらに好ましくは50〜70℃である。
【0039】
ポリエステルユニットを有する樹脂の酸価は1〜35mgKOH/gが好ましく、5〜35mgKOH/gがより好ましく、10〜35mgKOH/gがさらに好ましい。ガラス転移点、軟化点及び酸価はいずれも用いるモノマーの種類、配合比率、縮重合の温度、反応時間を適宜調節することにより所望のものを得ることができる。
また、染料受容層用分散液の造膜性の観点から、ポリエステルユニットを有する樹脂の数平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、2,000〜8,000がより好ましい。
【0040】
このようなポリエステルユニットを有する樹脂は、剛直な骨格を有するため、ガラス転移点が高い樹脂として用いる場合は離型性が良好であり、加えて、高いガラス転移点を有しながら、前記骨格由来と考えられる高い染着性を発現することができる。また、ガラス転移点が低い樹脂として用いる場合も、染着性、耐光性が良好であるという利点を有する。
本発明においては、ポリエステルユニットを有する樹脂は、熱転写受像シートの染着性と離型性の両立の観点から、前記ガラス転移点が異なる2種の樹脂のうち、ガラス転移点の高い方の樹脂に使用することが好ましい。
【0041】
前記ポリエステルユニットを有する樹脂は、有機溶剤に溶解して用いることもできるが、本発明においては、上記樹脂を有機溶剤や水に分散させて得られた樹脂分散液として用いることが好ましい。
ポリエステルユニットを有する樹脂の分散液は、環境性の観点から、前記樹脂を水系媒体中に分散して得ることが好ましい。
前記樹脂を分散させる水系媒体とは、水を主成分とするもの、すなわち、水が50%以上のものである。環境性の観点から、水性媒体中の水の含有量は80重量%以上が好ましく、90重量%以上がより好ましく、100重量%がさらに好ましい。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
【0042】
樹脂分散液中の樹脂粒子は、熱転写受像シートを得る際の造膜性の観点から、その体積中位粒径(D50)が20〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは、50〜800nmであり、更に好ましくは80〜500nmである。ここで「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。その測定方法は後述の通りである。
【0043】
前記樹脂分散液は、熱転写の際の転写シートと熱転写受像シートの離型性を向上させる観点から、さらにオキサゾリン基を有する化合物(以下、「オキサゾリン化合物」ということがある)を添加してなるものであることが好ましく、また、該オキサゾリン化合物の少なくとも一部が、前記ポリエステルユニットを有する樹脂の少なくとも一部を架橋してなる架橋ポリエステルユニットを含有することが好ましい。オキサゾリン化合物により架橋された架橋樹脂は、水系媒体中で、前記ポリエステルユニットを有する樹脂と前記オキサゾリン化合物とを混合し架橋反応させて得られるものであることが好ましい。
【0044】
オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を複数含有するものが使用可能である。分子内にオキサゾリン基を複数含有する化合物としては、2,2−(1,3−フェニレン)−ビス2−オキサゾリン、2,2−(1,4−フェニレン)−ビス2−オキサゾリンなどの2官能タイプ;オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合した多官能タイプ(重合体)が挙げられる。
オキサゾリン化合物としては、ポリエステルユニットを有する樹脂との架橋反応による架橋効果が効果的に発現しうる観点から、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましく用いられる。オキサゾリン基を含有する重合体は、例えば、オキサゾリン基を含有する重合性単量体を重合することによって得られる。必要に応じて、オキサゾリン基を有する重合性単量体と共重合可能な、オキサゾリン基を有しない重合性単量体との共重合によって得られる。
【0045】
オキサゾリン基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5− メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2− オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2− オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2− オキサゾリン等が挙げられる。これらは1種類のみを用いても、2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが、工業的に入手しやすいため好ましい。
【0046】
オキサゾリン基を有しない重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとのモノエステル化物、(メタ)アクリル酸−2−アミノエチルおよびその塩、(メタ)アクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸塩;アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等のハロゲン含有α,β−不飽和脂肪族炭化水素;スチレン、ジビニルベンゼン等のα,β−不飽和芳香族炭化水素;等を挙げることができる。これらは1種類のみで用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
オキサゾリン基を含有する重合体は、その重量平均分子量は、ポリエステルユニットを有する樹脂との架橋反応性および生産性の観点から、500〜2,000,000であることが好ましく、1,000〜1,000,000であることがより好ましい。
樹脂分散液において、オキサゾリン化合物は、ポリエステルユニットを有する樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、水性媒体中に分散若しくは溶解されたものとして含有されることが好ましい。
【0048】
尚、オキサゾリン基を含有する重合体の一般的な市販品としては、日本触媒社製のエポクロスWSシリーズ(水溶性タイプ)、Kシリーズ(エマルションタイプ)などが使用可能である。
前記オキサゾリン化合物の含有量あるいは添加量は、ポリエステルユニットを有する樹脂との架橋反応性及び生産性の観点から、樹脂分散液中、ポリエステルユニットを有する樹脂100重量部に対して、固形分として0.1〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20重量部である。
【0049】
ポリエステルユニットを有する樹脂にオキサゾリン化合物が適量添加され、かつ所定温度で混合することにより、樹脂分散液に分散しているポリエステルユニットを有する樹脂粒子の一部が架橋される。この時の温度は、60〜100℃であることが好ましく、より好ましくは70〜98℃である。前記温度に加熱して混合することで、ポリエステルユニットを有する樹脂の少なくとも一部がオキサゾリン化合物により適度に架橋される。オキサゾリン化合物によるポリエステルユニットを有する樹脂の架橋の存在は、架橋によって生成するアミド基の分析により同定することができる。
【0050】
水系媒体中にポリエステルユニットを有する樹脂を分散させる方法としては、前記ポリエステルユニットを有する樹脂をケトン系溶剤に溶解させ、中和剤を加えて該ポリエステルユニットを有する樹脂のカルボキシル基をイオン化し、次いで水を加えた後、ケトン系溶剤を留去して水系に転相する方法が好ましく挙げられる。より具体的には、例えば、攪拌機、還流冷却管、温度計、滴下ロート、窒素ガス導入管のついた反応器を準備し、ケトン系溶剤に溶解したポリエステルを含む樹脂に、中和剤等を加え、カルボキシル基をイオン化し(すでにイオン化されている場合は不要)、次いで水を加えた後、ケトン系溶剤を留去して水系に転相する。ケトン系溶剤への溶解、中和剤の添加は、通常ケトン系溶剤の沸点以下の温度で行い、また、ここで用いられる水としては、例えば脱イオン水等が挙げられる。
【0051】
用いられるケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン等が挙げられ、樹脂の溶解性及び溶剤の留去の容易性の観点から、好ましくは、メチルエチルケトンである。
【0052】
また中和剤としては、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液、アリルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、n−プロパノールアミン、ブタノールアミン、5−アミノ−4−オクタノール、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ネオペンタノールアミン、ジグリコールアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等のアミン類等を挙げることができる。これらの中和剤の使用量は、少なくともポリエステルユニットを有する樹脂の酸価を中和できる量であればよい。
【0053】
前記水系媒体中に樹脂を分散してなる樹脂分散液は、その保存安定性及び、熱転写受像シートの保存安定性、染料の染着性の観点から、該樹脂分散液の固形分中の樹脂のガラス転移点は、染料受容層を構成した場合、ガラス転移点の異なる他方の樹脂のガラス転移点と10〜80℃の差があれば特に制限はなく、該固形分を構成する樹脂が、ガラス転移点が高い樹脂及びガラス転移点が低い樹脂のいずれであるかによって適宜選択できる。具体的には、ガラス転移点は、好ましくは―20〜100℃、より好ましくは0〜80℃、更に好ましくは25〜70℃である。ガラス転移点の低い樹脂の場合は、そのガラス転移点は45℃以下であることが好ましく、−20〜45℃であることがより好ましく、さらに好ましくは0〜45℃、よりさらに好ましくは25〜45℃である。また、ガラス転移点の高い樹脂の場合は、そのガラス転移点は、50℃以上であることが好ましく、50〜100℃がより好ましく、さらに好ましくは50〜80℃、よりさらに好ましくは50〜75℃である。
【0054】
また樹脂分散液の固形分の樹脂の軟化点は80〜250℃であることが好ましく、より好ましくは120〜220℃である。
前記樹脂分散液中の固形分濃度は、樹脂粒子の分散性及び生産性の観点から、20〜40重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜40重量%、更に好ましくは30〜40重量%である。また、前記分散液の25℃におけるpHは、樹脂分散液の保存安定性の観点から、5〜10であることが好ましく、より好ましくは6〜9、更に好ましくは7〜9である。
【0055】
(ポリエステルユニットを有する樹脂以外の樹脂)
前記ガラス転移点が異なる2種の樹脂は、その少なくとも一方が前記ポリエステルユニットを有する樹脂であるが、両方がそのような樹脂であってもよい。他方が前記ポリエステルユニットを有する樹脂以外の樹脂である場合、該樹脂としては、ポリエステルユニットを有する樹脂と前記ガラス転移点の差を有する樹脂であれば特に制限はないが、熱転写受像シートの離型性、染着性及び耐光性の観点から、ガラス転移点が高い樹脂、又は低い樹脂のいずれの場合であっても、それぞれ前述のガラス転移点の値を有するものであることが好ましい。すなわち、ガラス転移点の低い樹脂のガラス転移点は、染料の染着性及び熱転写受像シートの耐光性の観点から、45℃以下であることが好ましく、−20〜45℃であることがより好ましく、さらに好ましくは0〜45℃、よりさらに好ましくは25〜45℃である。また、ガラス転移点の高い樹脂のガラス転移点は、熱転写受像シートの離型性の観点から、50℃以上であることが好ましく、50〜100℃がより好ましく、さらに好ましくは50〜80℃、よりさらに好ましくは50〜70℃である。
【0056】
前記ポリエステルユニットを有する樹脂以外の樹脂の具体例としては、塩化ビニル重合体、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、塩化ビニルアクリル共重合体、ポリウレタンが使用でき、熱転写受像シートの染着性、耐光性、樹脂分散液の観点から塩化ビニルアクリル共重合体が好ましい。
これらの樹脂は、ポリエステルユニットを有する樹脂と同様、有機溶剤に溶解して使用することもできるが、環境性等の観点から、樹脂分散液として使用することが好ましい。
【0057】
[染料受容層]
前記ガラス転移点が異なる2種の樹脂の染料受容層中の含有割合としては、熱転写受像シートの離型性、染着性及び耐光性の観点から、ガラス転移点の高い樹脂とガラス転移点が低い樹脂の重量比(ガラス転移点の高い樹脂/ガラス転移点が低い樹脂)で90/10〜50/50であることが好ましく、90/10〜60/40であることがより好ましく、90/10〜70/30であることがさらに好ましい。
【0058】
本発明における染料受容層には前述の通り、互いにガラス転移点が10〜80℃異なる2種類の樹脂を使用する。高いガラス転移点を有する樹脂により、優れた離型性を達成でき、一方で低いガラス転移点を有する樹脂により、優れた染着性、耐光性を達成できる。すなわち、低いガラス転移点を有する樹脂を用いることで、受容層内部に染料が均一に拡散するため、熱転写受像シートの染着性及び耐光性が向上し、造膜性が良好となり離型性が向上する。さらにポリエステルユニットを有する樹脂は、剛直な骨格を有するため、ガラス転移点が高い樹脂として用いる場合は離型性が良好であり、加えて、高いガラス転移点を有しながら、前記骨格由来と考えられる高い染着性を発現することができる。また、これをガラス転移点が低い樹脂として用いる場合も、染着性、耐光性が良好であるという利点を有する。
更に、この染料受容層と、後述する特定の中間層を用いることで、熱伝導率が適正化されるためか、熱転写時に染料の染着性が向上すると考えられる。
【0059】
本発明の熱転写受像シートの染料受容層は、前記2種の樹脂の各々を有機溶剤に溶解して得られた塗工液形態で、あるいは、前述の通り、前記樹脂の各々を有機溶剤や水に分散させて得られた樹脂分散液を含む塗工液形態で用いて製造することができるが、環境性などの観点から、後者が好ましい。
樹脂を溶解するための溶剤としては、樹脂の溶解性及び乾燥時の溶剤の揮発性の観点から、メチルエチルケトン、トルエンが好ましく、トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤がより好ましい。
樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂溶解液を製造する方法としては、樹脂と有機溶剤とを混合して、常温又は加温状態で攪拌して溶解させる方法が挙げられる。
【0060】
染料受容層用塗工液には、前述の2種の樹脂の各々とともに、熱転写時における熱転写受像シートの離型性を更に良好にする観点から、さらに離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、例えば、分散性あるいは水溶性の変性シリコーンオイル等を適宜使用することができる。これらの離型剤は、染料受容層用塗工液中に、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部含有することができる。
【0061】
また、前記染料受容層用塗工液には造膜剤を含有することが好ましく、得られる染料受容層も造膜剤を含有することが好ましい。造膜剤の中でも、得られる熱転写受像シートの強度の観点から、ブチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、水溶性高分子が好ましく、前記樹脂を水に分散させて得られた樹脂分散液として使用する場合においては、水溶性高分子がより好ましい。水溶性高分子としては、具体的には、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらの中では、熱特性の観点からゼラチンが好ましい。その粘度としては、熱転写受像シートの離型性及び造膜性の観点から、JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)が1.5〜6.0mPa・sであることが好ましく、より好ましくは2.4〜5.5であり、さらに好ましくは3.0〜5.5mPa・sである。
【0062】
また、染料受容層にゼラチンを用いる場合、染料受容層用塗工液の安定性および得られる熱転写受像シートの強度の観点から、ゼラチンの等イオン点は前記ゼラチンを添加する前の樹脂分散液のpH値(25℃)よりも低いことが好ましい。ゼラチンの等イオン点が前記樹脂分散液のpH値より低いと、樹脂分散液中での樹脂の分散性が優れたものとなり、製膜性が良好に維持されるため、熱転写シートの強度が優れたものとなると考えられる。前記観点から、ゼラチンの等イオン点は、好ましくは3〜7であり、より好ましくは3.5〜7であり、さらに好ましくは3.5〜6であり、よりさらに好ましくは3.5〜5.5である。ゼラチンの等イオン点は、後述の方法で測定することができる。
【0063】
また、印画時に発生するワレや剥がれの観点から、ゼラチンのゼリー強度は150〜300であることが好ましい。ゼリー強度が150以上であれば、サーマルヘッドの熱や圧力による印画物表面のワレや剥がれの発生が少なく、300以下であれば、受容層用塗工液の粘度が適度な値となり塗工性が良好となる。したがって、ゼラチンのゼリー強度はより好ましくは160〜300であり、更に好ましくは190〜300であり、より更に好ましくは200〜300である。ゼラチンのゼリー強度は、JIS K6503に従って測定することができる。
染料受容層における水溶性高分子等の造膜剤の含有量は、造膜性、熱転写受像シートの強度、染料受容層塗工液の塗工性などの観点から、当該染料受容層全体の1〜75重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。
【0064】
更に、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、本発明の熱転写受像シートの白色度の観点から、染料受容層用塗工液中に、樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部含有することができる。なお、本発明の染料受容層用塗工液には、更に必要に応じて、例えば、触媒、硬化剤等他の添加剤を含有することもできる。
【0065】
以上の如く形成される染料受容層の厚さは、一般には1〜50μmであり、画質及び生産性の観点から、3〜15μmであることが好ましい。また、乾燥後の固形分量としては、染料受容層1m2当たり3〜15gであることが好ましい。
【0066】
[中間層]
本発明の熱転写受像シートは、水溶性高分子及び中空粒子を含有する中間層を有する。
(水溶性高分子)
水溶性高分子は、中空粒子を固定するバインダーとして用いられるもので、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられるが、このなかでも、熱特性の観点からゼラチンが好ましい。その粘度は、熱転写受像シートの離型性及び造膜性の観点から、JIS K6503−2001で測定した粘度(60℃)が2.5〜6.0mPa・sであることが好ましく、3.0〜5.5mPa・sであることがより好ましい。
【0067】
また、印画時に発生するワレや剥がれの観点から、ゼラチンのゼリー強度は150〜300であることが好ましい。ゼリー強度が150以上であれば、サーマルヘッドの熱や圧力による印画物表面のワレや剥がれの発生が少なく、300以下であれば、受中間層塗工液の粘度が適度な値となり塗工性が良好となる。したがって、ゼラチンのゼリー強度はより好ましくは160〜300であり、更に好ましくは190〜300であり、より更に好ましくは200〜300である。ゼラチンのゼリー強度は、JIS K6503に従って測定することができる。
【0068】
中間層における水溶性高分子の含有量は、当該中間層全体の1〜75重量%であることが好ましく、1〜50重量%であることがより好ましい。
また、中間層に含まれる水溶性高分子は、アルデヒド類、エポキシ類、ビニルスルホン類、トリアジン類、カルボジイミド類等の架橋剤により架橋されていることが好ましい。中間層に含まれる水溶性高分子は、前記染料受容層に含有される水溶性高分子と同一であっても異なるものであってもよいが、中間層と染料受容層の密着性の観点から、中間層と染料受容層の少なくとも一方に含有される水溶性高分子がゼラチンであることが好ましく、その両方に含有される水溶性高分子がゼラチンであることがより好ましい。
【0069】
(中空粒子)
中間層に含有される中空粒子としては、少なくとも一部に空孔を有するポリマー粒子であれば、特に制限はない。例えば、1)樹脂により形成された粒子隔壁内部に存在する水が、塗布乾燥後、粒子外に蒸発して粒子内部が中空となる非発泡型の中空粒子、2)ブタン、ペンタンなどの低沸点液体を樹脂で被覆した粒子を加熱することにより、粒子内部の低沸点液体が膨張して内部が中空となる中空粒子、3)前記2)をあらかじめ加熱発泡させた中空ポリマー粒子、4)樹脂粒子を形成する重合体に含まれる酸性基の少なくとも一部が中和されることによって形成される中空粒子、等が挙げられる。本発明においては、染料の染着性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、前記1)又は3)の方法により得られるものが好ましく使用できる。
【0070】
前記中空粒子を構成する材料については特に制限はなく、前記方法に使用される種々の公知の材料、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル共重合体、それらの混合物等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体等がいずれも使用できるが、本発明においては、染料の染着性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、スチレン−アクリル共重合体、塩化ビニリデン−アクリルニトリル共重合体等が好ましく用いられる。
【0071】
前記中空粒子の形状は特に限定されず、球状はもちろん球状以外のいかなる形状のものであってもよいが、本発明においては、中間層と染料受容層の密着性の観点から、実質球状のものであることが好ましい。また、中空粒子の体積中位粒径(D50)は、0.1〜5μmであり、中間層と染料受容層の密着性の観点からは、0.3〜3μmのものが好ましく、0.3〜1μmのものがより好ましい。この値は、電界放射型走査電子顕微鏡(日立製作所社製、S-4800型)により測定することができる。
【0072】
本発明においては、前記中空粒子としては、そのメチルエチルケトン(MEK)不溶分が70重量%以下であるものを使用することが好ましいが、染料の染着性及び中間層と染料受容層の密着性の観点からは、MEK不溶分が10〜70重量%であるものがより好ましく、30〜70重量%であるものがさらに好ましい。本発明において、「MEK不溶分」とは、25℃のMEK95重量部に対して、中空粒子を2.000重量部を溶解させた場合の、中空粒子が有する不溶な中空粒子成分の重量割合で定義されるものである。
前記中空粒子のMEK不溶分は、例えば、これを構成する樹脂の架橋度を制御すること等により調整することができる。
【0073】
本発明において、中空粒子は、水性媒体中の分散液として使用することが好ましく、好ましく使用できる市販の中空粒子として、例えば、日本ゼオン社製の「Nipol MH8101」、JSR社製の「SX8782(D)」等が挙げられる。
本発明における中間層には、染料の染着性及び中間層と染料受容層の密着性の観点から、上記中空粒子を、中間層に含有された水溶性高分子に対し、重量比(中空粒子/中間層の水溶性高分子)で、30/70〜70/30含有することが好ましく、より好ましくは40/60〜70/30、さらに好ましくは50/50〜70/30含有する。
【0074】
(中間層)
中間層には、その白色度を向上させて転写画像の鮮明度を高める観点から、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリンクレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を含有することができる。これらの顔料や充填剤は、熱転写受像シートの白色度の観点から、中間層中に、中間層の水溶性高分子100重量部に対して好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.1〜10重量部含有することができる。
中間層には、更に必要に応じて、グリコールエーテル類等の造膜助剤、離型剤、硬化剤、触媒等の添加剤を含有することもできる。
【0075】
本発明の熱転写受像シートにおける中間層は、熱転写受像シートの基材の少なくとも一方の面に、水溶性高分子及び必要に応じて用いられる各種添加剤を有機溶剤や水に分散あるいは溶解して、塗布し乾燥して形成することができる。
中間層の厚みは、クッション性、断熱性の観点から、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは20〜50μmである。また、乾燥後の固形分量としては、中間層1m2当り7〜70g/m2であることが好ましい。中間層は、例えば、熱転写受像シートの基材の少なくとも一方の面に、ゼラチンを含む水溶性高分子、中空粒子及び必要に応じて用いられる添加剤等を水に溶解して、あるいは水に分散して得られた塗工液を、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により塗布し乾燥して形成することができる。
【0076】
[熱転写受像シートの製造方法]
本発明の熱転写受像シートは、(1)基材上に、水溶性高分子及び中空粒子を含有する塗工液を用いて中間層を設ける工程、及び(2)該中間層の上に、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有する塗工液を用いて染料受容層を設ける工程、を有する熱転写受像シートの製造方法であって、工程(2)の2種の樹脂のうち、少なくとも1種が、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、熱転写受像シートの製造方法により製造することができる。
工程(1)における中間層及び工程(2)における染料受容層等の詳細については、前述の通りである。また、工程(2)における塗工液については、前記式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂と、該樹脂とガラス転移点が10〜80℃異なる樹脂を配合してなる分散液を含有する塗工液を用いることが好ましく、前記分散液にさらに水溶性高分子を配合してなる塗工液を用いることがより好ましい。
【0077】
[熱転写受像シート]
本発明の熱転写受像シートは、基材と、基材の少なくとも一方の面に上記中間層と、前記染料受容層とをこの順に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等により重層塗布及び乾燥して形成することによって得ることが好ましい。
【0078】
前記基材としては、例えば合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の各種の樹脂のフイルム又はシート等が使用でき、また、これらの樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フイルムあるいは発泡させた発泡シート等も使用できる。また、前記基材を組み合わせた積層体も使用できる。
これらの基材の厚みは、例えば、10〜300μm程度が一般的である。前記の如き基材には、染料受容層との密着力を向上する観点から、その表面にプライマー処理やコロナ放電処理を施すことが好ましい。
【0079】
[転写シート]
前記の如き本発明の熱転写受像シートを使用して熱転写を行う際に使用する転写シートは、通常、紙やポリエステルフイルム上に昇華性染料を含む染料層、及び染料を受像して得られた画像上に転写される保護層等からなるラミネート層を設けたものであり、従来公知の転写シートをいずれも使用することができる。
本発明の熱転写受像シートに好適に使用できる昇華性染料としては、例えばイエロー染料では、ピリドンアゾ系、ジシアノスチリル系、キノフタロン系、メロシアニン系;マゼンタ染料では、ベンゼンアゾ系、ピラゾロンアゾメチン系、イソチアゾール系、ピラゾロトリアゾール系;シアン染料では、アントラキノン系、シアノメチレン系、インドフェノール系、インドナフトール系が挙げられる。
【0080】
熱転写時の熱エネルギーの付与手段としては、従来公知の付与手段がいずれも使用でき、例えば、サーマルプリンター等の記録装置によって、記録時間をコントロールすることにより、5〜100mJ/mm2程度の熱エネルギーを付与することによって行うことが出来る。
【実施例】
【0081】
以下に実施例等により、本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例等においては、各性状値は次の方法により測定、評価した。
[樹脂の酸価]
JIS K0070に従って測定する。但し、測定溶媒は、エタノールとエーテルの混合溶媒を、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))とした。
【0082】
[樹脂の軟化点及びガラス転移点]
(1)フローテスター(島津製作所社製、「CFT−500D」)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのブランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
(2)ガラス転移点
示差走査熱量計(Perkin Elmer社製、Pyris6DSC)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0083】
[樹脂分散液中の樹脂のガラス転移点]
樹脂分散液中の樹脂粒子についてガラス転移点を測定する場合は、樹脂分散液から凍結乾燥により溶媒を除去し、得られた固形物について測定を行った。
樹脂分散液の凍結乾燥は、凍結乾燥機(東京理化器械社製:FDU−2100およびDRC−1000)を用いて、樹脂分散液30gを−25℃にて1時間、−10℃にて10時間、25℃にて4時間真空乾燥を行い、水分量1重量%以下となるまで乾燥させた。水分量は、赤外線水分計(ケツト科学研究所社製:FD−230)を用いて、乾燥後の試料5gを、乾燥温度150℃及び測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて測定した。
【0084】
[樹脂の数平均分子量]
以下の方法により、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより分子量分布を測定し、数平均分子量を算出する。
(1)試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、結着樹脂をクロロホルムに溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ2μmのフッ素樹脂フィルター[住友電気工業社製、FP−200」]を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2)分子量測定
溶解液としてテトラヒドロフランを毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作製した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製の2.63×103、2.06×104、1.02×105、ジーエルサイエンス社製の2.10×103、7.00×103、5.04×104)を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:CO−8010(東ソー社製)
分析カラム:GMHLX+G3000HXL(東ソー社製)
【0085】
[樹脂粒子の粒径]
レーザー回折型粒径測定機(HORIBA製、「LA−920」)を用いて、測定用セルに蒸留水を加え、吸光度が適正範囲になる濃度で、体積中位粒径(D50)を測定する。
【0086】
[樹脂分散液の固形分濃度]
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製:FD−230)を用いて、分散液5gを乾燥温度150℃,測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)にて、ウェットベースの水分%を測定する。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(%)=100−M
M:ウェットベース水分(%)=[(W−W0)/W]×100
W:測定前の試料重量(初期試料重量)
0:測定後の試料重量(絶対乾燥重量)
【0087】
[ゼラチンのゼリー強度]
JIS K6503に従って測定する。
【0088】
[ゼラチンの等イオン点]
pH計を用い、イオン交換樹脂により脱塩した検液の水素イオン濃度を測定する。具体的には、以下の通りに行う。
・試薬:(1)強酸性陽イオン交換樹脂(H型)(アンバーライトIR−120B、ロームアンドハース社製)
(2)強塩基性陰イオン交換樹脂(I型)(アンバーライトIRA−401、ロームアンドハース社製)
・装置:pH計(HM−20P、東亜ディーケーケー社製)
・検疫:試料ゼラチンの1%溶液
・測定:(1)強酸性陽イオン交換樹脂5mlと強塩基性陰イオン交換樹脂10mlとを混合する。
(2)混合した樹脂を純水で2回洗浄した後純水を入れ、35℃に保温する。
(3)保温した樹脂の水を切り、検液100mlを加え、35℃で20分以上攪拌する。
(4)デカンテーション法により、検液からイオン交換樹脂を除去する。
(5)検液の液温を35℃にし迅速にpHを測定する。得られたpH値を等イオン点とする。
【0089】
[水溶性高分子の粘度]
JIS K6503−2001に従って60℃で測定した。
【0090】
製造例1(ポリエステルユニットを有する樹脂aの製造)
表1に示す無水トリメリット酸を除くポリエステルユニットの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより72ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、ビニル系樹脂単量体の除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、230℃にて常圧(101.3kPa)で6時間反応後、8.0kPaにて1時間、反応を行った。200℃まで冷却後、表1に示す無水トリメリット酸を投入し、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで反応を行い、ポリエステルユニットを有する樹脂aを得た。
【0091】
製造例2(ポリエステルユニットを有する樹脂bの製造)
表1に示すポリエステルユニットの原料モノマーを、温度計、ステンレス製攪拌棒、流下式コンデンサー及び窒素導入管を装備した10リットルの四つ口フラスコに入れ、マントルヒーター中で、窒素雰囲気にて160℃の温度で攪拌しつつ、表1に示す付加重合系樹脂の原料モノマー、両反応性モノマー及び重合開始剤の混合物を滴下ロートより68ml/minの滴下速度にて1時間かけて滴下した。160℃に保持したまま1時間熟成させた後、200℃まで昇温して、8.0kPaにて1時間、付加重合系樹脂ユニットの原料モノマーの除去を行った。その後、表1に示すエステル化触媒を加え、180℃にて常圧(101.3kPa)で6時間反応後、200℃にて常圧(101.3kPa)で2時間反応させ、ASTM D36−86に従って軟化点を追跡しながら、所定の軟化点になるまで8.0kPaにて反応を行い、ポリエステルユニットを有する樹脂bを得た。
【0092】
製造例3(ポリエステルユニットを有する樹脂cの製造)
表1に示すポリエステルユニットの原料モノマー及び触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、190℃で10時間反応させ、さらに減圧(20kPa)下にて、1時間反応させて、樹脂cを得た。

得られた樹脂a〜cの各々について、酸価、軟化点、ガラス転移点、数平均分子量を測定した結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
製造例4〜6(樹脂分散液A、B及びCの製造)
窒素導入管、還流冷却管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに表2に示す配合で、ポリエステルユニットを有する樹脂を入れ、25℃でメチルエチルケトンに溶解させた。次いで、25%アンモニア水を添加して、攪拌下で脱イオン水を加えた後、減圧下50℃でメチルエチルケトンを留去し、樹脂分散液A、B及びCをそれぞれ得た。得られた樹脂分散液A、B及びCの各々の組成及び樹脂粒子の体積中位粒径、固形分、pHを表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
製造例7及び8(樹脂分散液D、Eの製造)
表3に示す配合で、それぞれ樹脂分散液A、B、水溶性のオキサゾリン含有重合体(日本触媒社製 エポクロスWS−700、オキサゾリン基含有重合体中のオキサゾリン基含有量:4.55mmol/g、数平均分子量:20,000、25%水溶液)を窒素導入管、還流冷却管、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、攪拌下95℃で4時間反応させ、樹脂分散液D及びEをそれぞれ得た。得られた樹脂分散液D及びEの各々の組成及び分散粒子の体積中位粒径、固形分、pHを表3に示す。
【0097】
製造例9(樹脂分散液Fの製造)
窒素導入管、還流冷却管、滴下ロート、攪拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに、水100g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.3g、過硫酸ナトリウム0.09を仕込み、窒素気流下、撹拌を行い、80℃に昇温した。一方、ガラス製ビーカーに、フェノキシエチルアクリレート189g、スチレン11g、水86g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12.0g、過硫酸ナトリウム0.35を仕込み、攪拌、溶解させ、ホモミキサーで10分処理し、乳化物を調整した。この乳化物を滴下ロートに仕込み、四つ口フラスコに3時間かけて一定速度で滴下し、滴下終了後、さらに2時間かけて熟成を行った。室温まで冷却後、200メッシュの金網で濾過し、樹脂分散液Fを得た。得られた樹脂分散液F中の樹脂粒子の体積中位粒径は108nm、固形分25.3%、pH2.3、ガラス転移点は−15℃であった。
【0098】
【表3】

【0099】
実施例1〜19及び比較例1〜5(熱転写受像シートの製造)
表4に示す組成、配合で45℃で混合し中間層塗工液を作製した。この塗工液を合成紙YUPO FGS−250(厚さ250μm、坪量200g/m2)にワイヤーバーにより乾燥後に20.0g/m2になるように塗布し、25℃5分で乾燥させて中間層塗工シートを得た。
また、表4に示す組成、配合で25℃で混合し染料受容層塗工液A1〜R1をそれぞれ作製した。この塗工液の各々を前述の中間層塗工シートにワイヤーバーにより乾燥後に5.0g/m2になるように塗布し、50℃2分で乾燥させて熱転写受像シートを得た。この熱転写受像シートに市販の昇華型プリンタ(キヤノン社製、SELPHY ES−2)を用いて各色(黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B))の階調パターンを印画し、下記の方法で染着性(印字感度、最高濃度)、耐光性を評価した。また、5×5cmの黒ベタを印画し、印画時のインクリボンとの離型性(熱融着性)と印画物表面のワレを下記の方法で評価した。結果を表4に示す。なお、中間層塗工液及び染料受容層塗工液の各々に使用したゼラチンは、いずれも新田ゼラチン社製であり、その粘度、ゼリー強度、等イオン点の値を表5に示す。
【0100】
評価方法
(染着性-最高濃度)
高濃度印画(18階調目(L=0))での転写色濃度をグレタグ濃度計(GRETAG-MACBETH製)で測定した。
【0101】
(離型性―熱融着性)
黒ベタ連続印画時のインクリボンと染料受像シートの剥離音から、下記基準で離型性を判断した。
A:異音はなく、剥離できる。
B:若干の異音があるが、剥離できる。
C:熱融着しており、剥離が困難である。
【0102】
(印画物表面のワレ)
黒ベタ印画後の印画物表面を目視で観察し、印字画像を縦横とも10分割し、100個の区画(1個の区画は0.5×0.5cm)に分け、ワレが見られる区画の個数を、印画物表面のワレの評価とした。
A:印画部分の全面(全区画)にワレが見られない。
B:印画部分の1区画又は2区画にワレが見られる。
C:印画部分の3区画以上にワレが見られる。
【0103】
(耐光性)
下記条件のキセノンウェザーメーターにより耐光性試験を行なった。
・照射試験機:スガ試験機社製SX75
・光源:キセノンランプ
・フィルター:内側=石英フィルター、外側=#275
・パネル温度:50℃
・槽内湿度:35〜50%RH
・照射強度:50(W/m2 )、300〜400(nm)での測定値
・積算照度:10000(kJ/m2 )、300〜400(nm)での積算値
【0104】
・色相変化量:光学濃度計(グレタグで測定)を用い、階調パターン印画物の黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の光学反射濃度を測定し、照射前の光学反射濃度が1.0近傍のステップについて、照射前後におけるL* a* b* を色彩色差計(グレタグで測定)を用い測定し、下記式により、色相変化量を算出して、黒(K)及び有彩色の各印画物の耐光性を評価した。なお、黒+有彩色の耐光性とは、黒(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、グリーン(G)、レッド(R)、ブルー(B)の各色の色相変化を、合計した値である。
・色相変化量=[(a* 1 −a* 22+(b* 1−b* 221/2
照射前L*** 値:L* 1 、a* 1 、b* 1
照射後L* ** 値:L* 2 、a* 2 、b*2
【0105】
【表4】

【0106】
【表5】

【0107】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の熱転写受像シートは、染着性、離型性及び耐光性のいずれにも優れたものであることから、熱転写受像シートとして好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、水溶性高分子及び中空粒子を含有する中間層と、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有する染料受容層とをこの順に有する熱転写受像シートであって、前記2種の樹脂のうち、少なくとも1種が、式(I)
【化1】

(式中、R1O及びR2Oは各々オキシアルキレン基を表し、x及びyはそれぞれR1O及びR2Oの付加モル数を示す正の数であり、かつxとyの和の平均値は2〜7である。但し、x個のR1Oは各々同一でも異なっていてもよく、またy個のR2Oは各々同一でも異なっていてもよい。)
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、熱転写受像シート。
【請求項2】
前記アルコール成分が、式(I)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を50モル%以上含有する、請求項1記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイド付加物中における、プロピレンオキサイド付加物の含有量が50〜100モル%である、請求項1又は2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記2種の樹脂が、45℃以下のガラス転移点を有する樹脂、及び50℃以上のガラス転移点を有する樹脂である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記ポリエステルユニットを有する樹脂が、(a)ポリエステルユニットの原料モノマー、(b)スチレン及びスチレン誘導体の少なくとも1種を含有する付加重合系樹脂ユニットの原料モノマー、及び(c)アクリル酸、メタアクリル酸及びこれら酸の誘導体の少なくとも1種からなる化合物、を付加重合及び縮重合させることにより得られる樹脂である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受像シート。
【請求項6】
染料受容層が水溶性高分子を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の熱転写受像シート。
【請求項7】
染料受容層が、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有しかつオキサゾリン基を有する化合物を添加してなる樹脂分散液を用いて得られるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の熱転写受像シート。
【請求項8】
(1)基材上に、水溶性高分子及び中空粒子を含有する塗工液を用いて中間層を設ける工程、及び
(2)該中間層の上に、ガラス転移点が互いに10〜80℃異なる2種の樹脂を含有する塗工液を用いて染料受容層を設ける工程、
を有する熱転写受像シートの製造方法であって、
工程(2)の2種の樹脂のうち、少なくとも1種が、式(I)
【化2】

(式中、R1O及びR2Oは各々オキシアルキレン基を表し、x及びyはそれぞれR1O及びR2Oの付加モル数を示す正の数であり、かつxとyの和の平均値は2〜7である。但し、x個のR1Oは各々同一でも異なっていてもよく、またy個のR2Oは各々同一でも異なっていてもよい。)
で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物を含むアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合して得られるポリエステルユニットを有する樹脂である、熱転写受像シートの製造方法。

【公開番号】特開2010−260333(P2010−260333A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148840(P2009−148840)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】