説明

熱転写受像シート

【課題】 熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、接着させた後に、その印画物を剥がした場合、履歴書側に、その剥がしたことを明確に示すことができる、また熱転写受像シートにおける裏面層に対し、切手等を貼付した後に、その切手等を熱転写受像シートから剥がした場合、熱転写受像シートに、その剥がしたことを明確に示すことができ、セキュリティーの高い熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】 基材シート2の一方の面に染料受容層3を設け、該基材シート2の他方の面にフィラーを含有する裏面層5を設けた熱転写受像シート1において、該基材シート2と裏面層5との間に裏面中間層4を設け、該裏面中間層4がポリウレタンからなり、イソシアネート化合物が添加されていなく、かつ前記裏面層5が、ポリビニルブチラールとポリビニルピロリドンを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受像シートに関し、特に熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、接着させた後に、その印画物を剥がした場合、履歴書側に、その剥がしたことを明確に示すことができ、また剥がした印画物側にも剥がしたことが示される熱転写受像シートに関するものである。また熱転写受像シートにおける裏面層に対し、切手等を貼付した後に、その切手等を熱転写受像シートから剥がした場合、熱転写受像シートに、その剥がしたことを明確に示すことができ、また剥がした切手の再使用を防止できるセキュリティーの高い熱転写受像シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱転写受像シートにおいては、表面に染料等色材の受容性、保持性等を良くするための色材受容層を設けると同時に、その裏面には、プリンターにおける自動給排紙等の搬送性を良くするため、また、受像シートの表裏を誤ってプリンターに挿入した場合に生じる熱転写シートと受像シートの融着を防止するため、更には、印画後の受像シートを重ね合わせて保存した際に、染料等が裏面に移行し、表面の画像濃度が低下したり、裏面が汚染されたりするのを防止する等の目的で、裏面に適度の滑り性、離型性、耐汚染性を付与するための裏面層を設けることが行われてきた。
【0003】
また近年、熱転写受像シートを絵ハガキ等のポストカードとして利用するニーズが高まり、受像シートの表面には、例えば写真等のカラー画像などを熱転写すると共に、裏面には、前記の性能に加えて、宛て名や送信文を書いたり、切手を貼るため、筆記適性及び切手の接着性を付加する必要性が生じてきた。また、熱転写受像シートの表面に、顔写真等の画像を熱転写により形成し、その画像を含ませて所定のサイズにカットした印画物を、履歴書、申込書等に、印画物の裏面に糊を付与して、接着させる必要性が生じてきた。
【0004】
このようなニーズに応える方法として、例えば、特許文献1では、熱転写受像シートの基材と裏面層の間にイソシアネート化合物を含む反応硬化型樹脂からなる中間層を有する熱転写受像シートが提案されている。また、特許文献2では、基材シートとアミノ酸系粉体を含有する裏面層との間に、接着性を高めるために、ウレタン樹脂にイソシアネートを添加したプライマー層を形成することが示されている。
【0005】
しかし、上記に挙げたような熱転写受像シートでは、裏面層に切手等を、切手の裏面に設けてある糊で切手を貼り付けた後に、その切手を剥がして、悪事を行なうことに対して、有効な防止策がとられていない。また、上記に挙げた従来の熱転写受像シートでは、所定サイズにカットした印画物を、履歴書などに印画物の裏面に糊を付与して、接着させた後に、その印画物を剥がして、悪事を行なうことに対して、有効な防止策がとられていない。すなわち、履歴書などに印画物の裏面に糊を付与して、接着させた後に、その印画物を剥がした場合、印画物が履歴書からきれいに剥がれて、履歴書の表面には剥がされたことが明確に分からない。また、熱転写受像シートの裏面層に切手をいったん貼付した後に、その切手を熱転写受像シートから剥がした場合、切手が裏面層からきれいに剥がれて、熱転写受像シートの裏面層には剥がされたことが分からないという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3341218号公報
【特許文献2】特開2005−313595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、
熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、接着させた後に、その印画物を剥がした場合、履歴書側に、その剥がしたことを明確に示すことができ、また剥がした印画物側にも剥がしたことが示される熱転写受像シートに関するものである。また熱転写受像シートにおける裏面層に対し、切手等を貼付した後に、その切手等を熱転写受像シートから剥がした場合、熱転写受像シートに、その剥がしたことを明確に示すことができ、また剥がした切手の再使用を防止できるセキュリティーの高い熱転写受像シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱転写受像シートは、請求項1として、基材シートの一方の面に染料受容層を設け、該基材シートの他方の面にフィラーを含有する裏面層を設けた熱転写受像シートにおいて、該基材シートと裏面層との間に裏面中間層を設け、該裏面中間層がポリウレタンからなり、イソシアネート化合物が添加されていなく、かつ前記裏面層が、ポリビニルブチラールとポリビニルピロリドンを含有することを特徴とするものであり、切手等を裏面層の上に貼付した後に、その貼付物を熱転写受像シートから剥がした際に、熱転写受像シートの裏面層が裏面中間層ごと剥がれて、基材シートの裏面側が露出して、裏面層の剥がれた部分(基材シートの露出面)と隣接した部分(裏面層)との光沢の違いにより、その剥がされたことが明確に示されるものである。したがって、貼付物を剥がして悪事を行なうことに対して、有効な防止策がとられた、セキュリティーの高い熱転写受像シートである。
【0009】
また、上記構成の熱転写受像シートは、その熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、接着させた後に、その印画物を剥がした場合、履歴書側に、その剥がしたことを明確に示すことができるものである。したがって、貼付物を剥がして悪事を行なうことに対して、有効な防止策がとられた、セキュリティーの高い熱転写受像シートである。
【0010】
また、請求項2として、前記の裏面層は、さらにシリコーン変性樹脂を含有していることを特徴とするものである。これにより、熱転写受像シートを重ねた場合の耐ブロッキング性及びプリンターでの搬送性等の滑り性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の熱転写受像シートは、その熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、接着させた後に、その印画物を剥がした場合、履歴書側に、その剥がしたことを明確に示すことができ、また剥がした印画物側にも剥がしたことが示される。また印画物が剥がされた履歴書と、その剥がされた印画物の双方において、再使用して悪用することを防止できる。また熱転写受像シートの裏面層に対し、切手等を貼付した後に、その切手等を熱転写受像シートから剥がした場合、熱転写受像シートに、その剥がしたことを明確に示すことができ、また剥がした切手の再使用を防止できる。さらに、切手が剥がされた熱転写受像シートと、その剥がされた切手の双方において、再使用し悪用することを防止できる。いずれにおいてもセキュリティーの高いもので、非常に有用なものであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の熱転写受像シート1の一つの実施形態を示す概略断面図であり、基材シート2の一方の面に、染料受容層3を設け、基材シート2の他方の面に、裏面中間層4を介して、フィラーを含有する裏面層5が設けられた構成である。
図2は、本発明の熱転写受像シートの裏面層に対し、切手を貼付した後と、その切手を熱転写受像シートから剥がした際の状態を説明する概略図である。図2の上に示すように、染料受容層3の設けられた基材シート2の反対面に裏面中間層4、裏面層5が設けられた構成の熱転写受像シートの裏面層5に、切手6を裏面に設けてある糊に水を塗って、粘着性をもたせた後に、切手6を貼付した。その後に、図2の下に示すように、その切手6を熱転写受像シートから剥がすと、切手6は、裏面中間層4及び裏面層5が積層された状態で、基材シート2から剥がれて、基材シート2の裏面側が露出して、裏面層の剥がれた部分(基材シートの露出面)と隣接した部分(裏面層)との光沢の違いにより、その剥がされたことが明確に示される。
【0013】
それに対して、図3は、従来の熱転写受像シートの裏面層に対し、切手を貼付した後と、その切手を熱転写受像シートから剥がした際の状態を説明する概略図である。図3の上に示すように、染料受容層3の設けられた基材シート2の反対面に裏面中間層4、裏面層5が設けられた構成の熱転写受像シートの裏面層5に、切手6を裏面に設けてある糊に水を塗って、粘着性をもたせた後に、切手6を貼付した。その後に、図3の下に示すように、その切手6を熱転写受像シートから剥がすと、切手6は、裏面層5からきれいに剥がれて、熱転写受像シートの裏面層には切手が剥がされたことが分からない。
【0014】
図4は、本発明の熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書7に糊を付与して、接着させた後と、その印画物を剥がした際の状態を説明する概略図である。図4の上に示すように、履歴書の被貼付物7に、熱転写受像シートの裏面層5が接するように、糊を介して、接着させた。その後に、図4の下に示すように、その印画物を履歴書7から剥がすと、裏面中間層4と裏面層5が履歴書7側に残存し、染料受容層3が設けられた基材シート2が履歴書7から分離される。これにより、印画物が履歴書7から剥がれた部分には、裏面中間層4と裏面層5が履歴書7側に積層され、その剥がれた部分の隣接した部分は履歴書表面であり、剥がれた部分と、その隣接した部分との両者の光沢の差や、平滑性の差により、その剥がされたことが明確に示される。
【0015】
それに対して、図5は、従来の熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書7に糊を付与して、接着させた後と、その印画物を剥がした際の状態を説明する概略図である。図5の上に示すように、履歴書の被貼付物7に、熱転写受像シートの裏面層5が接するように、糊を介して、接着させた。その後に、図5の下に示すように、その印画物を履歴書7から剥がすと、印画物はきれいに履歴書7から剥がれて、履歴書7の表面には貼付されていた印画物が剥がされたことが分からない。
【0016】
以下、本発明の熱転写受像シートを構成する各層について、詳細に説明する。
(基材シート)
本発明で使用する基材シート2としては、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系等)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打ち用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等のセルロース繊維紙、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリレート等の各種のプラスチックフィルムまたはシート等が使用でき、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム、あるいは基材内部に微細空隙(ミクロボイド)を有するフィルム等も使用でき、特に限定されない。また、上記基材シートの任意の組合せによる積層体も使用できる。
【0017】
但し、本発明では、裏面層に切手等を貼付した後、その切手等を熱転写受像シートから剥がした場合、熱転写受像シートに、その剥がしたことを明確に示すために、使用する基材シートは、表面、特に裏面側表面は平滑性が高く、光沢性の高いものが好ましい。なぜならば、裏面層の貼付物の剥がれた部分と隣接した部分との光沢の違いにより、その剥がされたことを明確に示すためである。上記の裏面層の剥がれた部分は、基材シート(裏面側)が露出して光沢性が高く、その剥がれた部分の隣接した部分は、裏面層が存在し、表面が微小な凹凸を有して、光沢性が低いものである。
【0018】
上記の基材シートの厚みは任意でよく、例えば、10〜300μm程度の厚みが一般的である。上記の如き基材シートは、その表面に形成する染料受容層との密着力が乏しい場合には、その表面にプライマー処理、コロナ放電処理あるいはプラズマ処理等の易接着処理を施すのが好ましい。
【0019】
(染料受容層)
本発明における熱転写受像シートにおける染料受容層3は、熱転写シートから移行してくる昇華染料を受容し、形成された画像を維持する為のものである。受容層を形成する為の樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0020】
本発明の熱転写受像シートは、熱転写シートとの離型性を向上させるために受容層中に離型剤を含有することができる。離型剤としてはポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系またはリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、各種シリコーン樹脂などが挙げられるが、シリコーンオイルが好ましい。上記シリコーンオイルとしては油状のものも用いることができるが、硬化型のものが好ましい。硬化型シリコーンオイルとしては反応硬化型、光硬化型、触媒硬化型等が挙げられるが、反応硬化型、触媒硬化型のシリコーンオイルが特に好ましい。
【0021】
これら硬化型シリコーンオイルの添加量は受容層を構成する樹脂の0.5〜30質量%が好ましい。また、受容層の表面の一部に上記離型剤を適当な溶媒に溶解あるいは分散させて塗布した後、乾燥させることにより離型剤層を設けることもできる。離型剤層を構成する離型剤としては前記したアミノ変性シリコーンオイルとエポキシ変性シリコーンオイルとの反応硬化物が特に好ましく、離型剤層の厚さは、0.01〜5.0μm、特に0.05〜2.0μmが好ましい。なお、受容層を形成する際にシリコーンオイルを添加して形成すると、塗布後に表面にブリードアウトしたシリコーンオイルを硬化させても離型剤層を形成することができる。なお、上記受容層の形成に際しては、受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度を更に高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、微粉末シリカ等の顔料や充填剤を添加することができる。また、フタル酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、リン酸エステル化合物等の可塑剤を添加するのもよい。
【0022】
本発明の熱転写受像シートは、前記の基材シートの少なくとも一方の面に上記の如き熱可塑性樹脂及び他の必要な添加剤、例えば、離型剤、可塑剤、充填剤、架橋剤、硬化剤、触媒、熱離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等を加えたものを、適当な有機溶剤に溶解したり或いは有機溶剤や水に分散した分散体を、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布及び乾燥して染料受容層を形成することによって得られる。このように形成される染料受容層の塗布量は、通常、乾燥状態で0.5〜50g/m2程度、好ましくは2〜10g/m2である。また、このような染料受容層は連続被覆であることが好ましいが、不連続の被覆として形成してもよい。
【0023】
(中間層)
染料受容層と基材シートの間には、染料受容層と基材シートとの接着性、白色度、クッション性、隠蔽性、帯電防止性、カール防止性等の付与を目的とし、従来公知のあらゆる中間層を設けることができる。中間層に用いるバインダー樹脂としてはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂のうちの活性水酸基を有するものについてはさらにそれらのイソシアネート硬化物をバインダーとすることもできる。
【0024】
また、白色性、隠蔽性を付与する為に酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のフィラーを添加することが好ましい。さらに、白色性を高める為にスチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、ベンゾオキサゾール系化合物等を蛍光増白剤として添加したり、印画物の耐光性を高める為にヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤として添加したり、あるいは帯電防止性を付与する為にカチオン系アクリル樹脂、ポリアニリン樹脂、各種導電性フィラー等を添加することができる。中間層の塗工量は、乾燥状態で0.5〜30g/m2程度が好ましい。
【0025】
(裏面中間層)
基材シートと裏面層との間に裏面中間層4を設ける。この裏面中間層は、ポリウレタンからなり、イソシアネート化合物が添加されていないものである。ポリウレタンは、熱硬化性樹脂であり、鎖のように細長いポリマ(高分子樹脂)から枝状に出ている側鎖が、別のポリマーの側鎖と結合する「架橋(かきょう)」反応が高温によって進み,ポリマー同士が3次元的に結合し合って動かなくなるものである。
【0026】
裏面中間層は、ポリウレタンからなり、そのウレタン樹脂同士が、加熱されて、架橋する。その裏面中間層において、ウレタン樹脂に対して、架橋硬化させるためのイソシアネート化合物を加えることなく、ウレタン樹脂が架橋する。これにより、ウレタン樹脂にイソシアネート化合物を加えて架橋させる場合と比べ、基材シートとの接着性が適度に低下して、裏面層上に切手等を貼付した後、その貼付物を熱転写受像シートから剥がした際に、熱転写受像シートの裏面層が裏面中間層ごと剥がれて、基材シートの裏面側が露出して、裏面層の剥がれた部分(基材シートの露出面)と隣接した部分(裏面層)との光沢の違いにより、その剥がされたことが明確に示される。また、裏面中間層は基材シートとの接着性が適度に低下して、熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、印画物裏面と接着させた後に、その印画物を剥がした場合、履歴書側に、その剥がしたことを明確に示すことができる。この場合は、履歴書の印画物が剥がれた部分には、熱転写受像シートの裏面中間層と裏面層が残存し、その剥がれた部分に隣接した部分(履歴書の表面)との光沢等の違いにより、その剥がされたことが明確に示される。
【0027】
それに対して、裏面中間層が、熱硬化性樹脂にイソシアネート化合物を添加させると、基材シート及び裏面層との接着性が強くなり、裏面層上に切手等を貼付した後、その貼付物を熱転写受像シートから剥がした際に、貼付物が裏面層から剥がれて、その剥がされたことが判らないものである。また、基材シート及び裏面層との接着性が強くなり、履歴書等に糊を付与して、印画物裏面と接着させた後に、その印画物を剥がした際に、履歴書側に、その剥がしたことが判明しにくいものである。
【0028】
裏面中間層の形成方法は、ポリウレタンと、必要に応じて、白色度向上のため、酸化チタン等を加えたものを有機溶剤に溶解したり、或いは、有機溶剤や水に分散して塗布液を作成し、これをグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ダイコート法等で塗布、乾燥して形成する。形成する裏面中間層の厚さは、乾燥状態で1〜20g/m2程度が一般的である。尚、熱転写受像シートを履歴書等に糊を使用して貼付する場合は、上記の酸化チタンを添加することで、剥がされた箇所に裏面中間層が残存して、表面の平滑性が低く、光沢も無くなり、剥がしたことを明確に示すことができるものとなる。
【0029】
(裏面層)
本発明の熱転写受像シートは、基材シートの一方の面に染料受容層を設け、該基材シートの他方の面に、裏面層5を形成している。この裏面層は、熱転写の際のサーマルヘッドの熱による受像シートのカールを防止し、重ねた場合の耐ブロッキング性及びプリンターでの搬送性等の滑り性を向上させること、更に、印画面と裏面を重ねて保存した時に、印画面の染料の移行による裏面の汚染を防止し、また印画前の受容層面と、裏面とを重ねて保存した後に、受容層の転写感度の低下を防止する等のために設ける。裏面層は、染料染着性の低い樹脂を固着剤とし、これに有機フィラーや無機フィラーを含有させて、形成される。
【0030】
上記の固着剤、即ち、染料染着性の低い樹脂であり、また筆記性、成膜性、水溶性の糊との接着性等の観点から、本発明では、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドンが使用される。また、本発明では、裏面層に適度の滑り性と、熱転写シートとの離型性確保、また染料に対する耐汚染性を高めるため、シリコーン変性樹脂を上記の樹脂に添加して使用することが好ましい。そのシリコーン変性樹脂は、シリコーングラフトポリマー、シリコーンブロックポリマーのいずれでもよい。具体的には、シリコーン変性アクリルポリマー、シリコーン変性ポリビニルアルコール、シリコーングラフトポリビニルブチラール、シリコーングラフトウレタンポリマー、シリコーングラフトアクリルポリマー、シリコーングラフト変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。特に、上記の中でも、シリコーングラフトポリビニルブチラールが、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドンのビニル系樹脂の固着剤との相溶性が良く、好ましく用いられる。
【0031】
裏面層におけるフィラーは、プリンター内での熱転写受像シートの搬送性が向上し、また、ブロッキング防止等の効果がある。上記有機フィラーとしては、アクリル系フィラー、ポリアミド系フィラー、フッ素系フィラー、ポリエチレンワックス等が挙げられる。なかでも、ポリアミド系フィラーが好ましく、耐水性に優れる点で、ナイロン(登録商標、以下同様)12フィラーがより好ましい。それは、ナイロン6やナイロン66と比較してナイロン12フィラーが耐水性に優れ、吸水による特性変化もないためである。また、無機フィラーとしては、二酸化ケイ素、金属酸化物等が挙げられる。上記の有機フィラー及び無機フィラーは、いずれのフィラーにおいても、粒径は、平均粒径で0.01〜30μmである。その粒子径が小さすぎると、フィラーが裏面層中に隠れてしまい、充分な滑り性の機能を果たさず、また、粒子径が大きすぎると、裏面層からの突出が大きくなり、結果的に摩擦係数を高めたり、フィラーの欠落を生じてしまうため好ましくない。但し、上記のフィラーは、粒径の異なるものを混合して使用することもできる。
【0032】
上記の裏面層におけるフィラーの配合比率は、裏面層の固着剤である樹脂成分に対し、0.01〜100質量%であることが好ましい。上記配合比率が0.01質量%未満の場合には、滑り性が不充分となり、プリンターの給紙時等において紙詰まり等の支障をきたす傾向が生じる。また、100質量%を越える場合には、滑りすぎて印画に色ずれなどが生じやすくなることがあるので、好ましくない。 またアミノ酸系粉体を裏面層に含ませることにより熱転写受像シートのプリンター内の重送トラブルを有効に防止できるとともに、切手接着性及びのり接着性、筆記性にも優れたものとすることができる。
【0033】
アミノ酸系粉体は、L−リジンと長鎖アルキル酸より得られる下記化学式(I):
【化1】

を有する粉体である。式中、RはC11〜C17の直鎖アルキル基を表している。好ましいアミノ酸系粉体は、下記化学式(II)を有するNε−ラウロイル−L−リジンからなる平板状粉体である。
【化2】

【0034】
アミノ酸系粉体は、長鎖アルキル酸とL−リジンから得られたリジンのアルキル酸塩を流動パラフィンやキシレンなどの非極性溶媒中で加熱することにより得られる。また、Nε−ラウロイル−L−リジン粉体は、アミホープLL(商標名)として(株)味の素タカラコーポレーションから入手可能である。
【0035】
アミノ酸系粉体は、平均粒径10〜20μmの粉体を使用するようにし、バインダー樹脂中に分散した状態で裏面層中に存在する。アミノ酸系粉体は、バインダー樹脂に対して25〜200質量%、好ましくは50〜150質%の量で使用するようにする。その量が多すぎると成膜性や接着性が不充分となる問題が生じ、少なすぎると所望の摩擦係数を得ることができない、また、裏面離型性が得られない等の問題が生じる。なお裏面離型性とはユーザーがプリンターに熱転写受像シートを表裏間違えて入れ、プリントした時に、熱転写シートと熱転写受像シートの裏面層が融着せずにプリンターから排出されるために必要な性能である。
【0036】
裏面層の形成方法は、通常は、固着剤樹脂にフィラー等を前記の適性範囲で加え、更に必要に応じて、必要な添加剤を加えたものを有機溶剤に溶解したり、或いは、有機溶剤や水に分散して塗布液を作成し、これをグラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ダイコート法等で塗布、乾燥して形成する。形成する裏面層の厚さは、乾燥状態で0.5〜5g/m2とすることが好ましい。塗布量が0.5g/m2未満の場合は、筆記性、接着性が不十分となる。また、5g/m2を超える塗布量は、その必要性がなく、逆に、材料および加工コストも上昇するため好ましくない。
【0037】
(被貼付物)
本発明の熱転写受像シートに画像形成した印画物を、糊を付与して、履歴書等に接着させて使用する場合、その履歴書等の被貼付物7は、上記に説明した熱転写受像シートの基材シートと同様のものが使用できる。但し、本発明では熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、接着させた後と、その印画物を剥がした場合、印画物が履歴書等から剥がしたことを明確に示すために、使用する被貼付物は、その表面は平滑性が高く、光沢性の高いものが好ましい。なぜならば、履歴書等の印画物が剥がれた部分には、裏面中間層と裏面層が履歴書側に残存し、その剥がれた部分の隣接した部分は履歴書表面であり、剥がれた部分と、その隣接した部分との両者の光沢の差や、平滑性の差を大きくするためである。
【実施例】
【0038】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
基材シートである厚さ25μmの透明PET(商品名「25T60」東レ(株)製)の片面に下記の裏面中間層用塗工液を乾燥時1.25g/m2になるようにワイヤーバーにより塗布及び自然乾燥させて裏面中間層を形成し、その表面に下記の裏面層用塗工液を乾燥時1.5g/m2になるように塗工及び自然乾燥させて裏面層を形成した。その後、上記基材シートの裏面層と反対面に、下記組成の中間層塗工液をワイヤーバーコーティングにより、乾燥塗布量が2.0g/m2になるように塗布、乾燥して、中間層を形成した。その中間層の上に、下記組成の染料受容層塗工液をワイヤーバーコーティングにより、乾燥塗布量が4.0g/m2になるように塗布、乾燥して、染料受容層を形成した。その後、100℃で5分間乾燥して本発明の熱転写受像シートを得た。
【0039】
(裏面中間層用塗工液)
ポリウレタン系樹脂(N−5199、日本ポリウレタン工業(株)製) 100部
酸化チタン(TCA−888、トーケムプロダクツ製) 200部
メチルエチルケトン 200部
トルエン 200部
イソプロピルアルコール 100部
【0040】
(裏面層用塗工液)
ブチラール系樹脂(デンカブチラール#3000−1、電気化学工業(株)製)
100部
ポリビニルピロリドン樹脂(K−90、ISPジャパン) 60部
シリコーン変性樹脂(シリコーングラフトポリビニルブチラール、ダイアロマーSP712、大日精化工業(株)製) 40部
アミノ酸粉体(アミホープLL、味の素(株)製) 100部
ナイロンフィラー(MW330、シントーファイン(株)製) 100部
メチルエチルケトン 900部
トルエン 900部
イソプロピルアルコール 450部
【0041】
(中間層用塗工液)
ポリウレタン系樹脂(N−5199、日本ポリウレタン工業(株)製) 25.0部
酸化チタン(TCA−888、トーケムプロダクツ製) 75.0部
メチルエチルケトン 200部
トルエン 200部
【0042】
(染料受容層用塗工液)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(ソルバインC、日信化学工業(株)) 100部
エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、X−22−3000T) 5.0部
メチルエチルケトン 200部
トルエン 200部
【0043】
(実施例2)
上記の実施例1の熱転写受像シートにおいて、裏面層用塗工液を下記のものにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写受像シートを作製した。
(裏面層用塗工液)
ブチラール系樹脂(デンカブチラール#3000−1、電気化学工業(株)製)
130部
ポリビニルピロリドン樹脂(K−90、ISPジャパン) 70部
アミノ酸粉体(アミホープLL、味の素(株)製) 100部
ナイロンフィラー(MW330、シントーファイン(株)製) 100部
メチルエチルケトン 900部
トルエン 900部
イソプロピルアルコール 450部
【0044】
(比較例1)
実施例1と同様の基材シートを用い、その片面に下記の裏面中間層用塗工液を乾燥時1.25g/m2になるようにワイヤーバーにより塗布及び自然乾燥させて裏面中間層を形成し、その表面に実施例1と同様の組成の裏面層、さらに基材シートの裏面層の設けている面と反対側に、実施例1と同様の組成及び厚さで、中間層及び染料受容層を形成し、比較例1の熱転写受像シートを得た。
(裏面中間層用塗工液)
ポリウレタン系樹脂(N−5199、日本ポリウレタン工業(株)製) 100部
酸化チタン(TCA−888、トーケムプロダクツ製) 200部
イソシアネート化合物(タケネートA−14、武田薬品工業(株)製) 5部
メチルエチルケトン 200部
トルエン 200部
イソプロピルアルコール 100部
【0045】
以上得られた本発明及び比較例の熱転写受像シートに対し、下記評価1〜2を行い、その結果を表1に示した。
【0046】
(評価1)
下記糊を用いて、各熱転写受像シートの裏面に糊を塗り、普通紙に貼り付け、25℃の室内に24時間放置した後、各熱転写受像シートを普通紙から剥がして、下記の基準で評価を行った。
使用糊は、不易糊工業(株)製フエキ糊及びヤマト(株)製アラビックヤマトである。
評価基準
○:普通紙の表面で、糊により熱転写受像シートが貼り付けられた後に、その貼付物が剥がされたことが明確に判別できる。つまり普通紙の表面において、貼付物が剥がされた部分には、熱転写受像シートの裏面層が裏面中間層ごと、普通紙側に残存している。
×:普通紙の表面で、糊により熱転写受像シートが貼り付けられた後に、その貼付物が剥がされたことが明確には判別できない。つまり普通紙の表面において、貼付物が剥がされた部分には、熱転写受像シートの裏面層が残存していない。(透明な糊が残っているが、非常に目立たない)
【0047】
(評価2)
日本郵便の50円切手の接着面の半分に水道水を塗り、実施例及び比較例で作製した各熱転写受像シートの裏面に、人指し指で、上記の切手を擦り付けて、貼り付け、接着させた。25℃の室内に5時間放置した後に、水道水を塗らなかった部分を親指と人差し指で挟んで持ち、切手を熱転写受像シートから剥離し、以下の基準で評価した。
○;切手が剥がされた箇所には、熱転写受像シートの裏面層が裏面中間層ごと剥がれて、基材シートの裏面側が露出して、裏面層の剥がれた部分(基材シートの露出面)と隣接した部分(裏面層)との光沢の違いにより、その剥がされたことが明確に判別できる。
×;切手が剥がされた箇所には、切手が裏面層からきれいに剥がれて、熱転写受像シートの裏面層には剥がされたことを示す痕跡が残っていない。
【0048】
【表1】

【0049】
上記の評価1において、普通紙である被貼付物に熱転写受像シートを糊により貼り付けた後に、熱転写受像シートを普通紙から剥がした後の普通紙の表面状態を評価したが、さらに、熱転写受像シートが剥がされた普通紙に対し、同じ貼付位置に、剥がした熱転写受像シート、あるいは別の熱転写受像シートを再度、上記と同じ糊で貼り付けたところ、実施例1、2の熱転写受像シートでは接着性が低く、貼り替えたことが明確に分かり、セキュリティー性の高いものであった。また、上記の実施例1、2における普通紙から剥がされた熱転写受像シートの裏面側は、基材シートが露出しているので、その熱転写受像シートを別の普通紙に、上記糊で貼り替えたところ、接着性が低く、貼り替えたことが明確に分かり、セキュリティー性の高いものであった。
【0050】
それに対し、比較例1の熱転写受像シートでは、熱転写受像シートが剥がされた普通紙に対し、同じ貼付位置に、剥がした熱転写受像シート、あるいは別の熱転写受像シートを再度、上記と同じ糊で貼り付けたところ、接着性が高く、貼り替えたことが分からずに、セキュリティー性の低いものであった。また、上記の比較例1における普通紙から剥がされた熱転写受像シートの裏面側は、裏面層が残存しているので、その熱転写受像シートを別の普通紙に上記糊で貼り替えたところ、接着性が高く、貼り替えたことが分からずに、セキュリティー性の低いものであった。
【0051】
上記評価2において、熱転写受像シートに切手を水で塗って貼り付けた後に、切手を熱転写受像シートから剥がした後の熱転写受像シートの表面状態を評価したが、さらに切手が剥がされた熱転写受像シートに対し、同じ貼付位置に、剥がした切手、あるいは別の切手を再度、水を塗って貼り付けたところ、実施例1、2の熱転写受像シートでは接着性が低く、貼り替えたことが明確に分かり、セキュリティー性の高いものであった。また、上記の実施例1、2における熱転写受像シートから剥がされた切手の裏面には、裏面中間層と裏面層が残存しているので、水を塗って再度、別の対象物に貼り替えたところ、接着性が低く、悪用を防止できた。
【0052】
それに対し、比較例1の熱転写受像シートでは、切手が剥がされた熱転写受像シートに対し、同じ貼付位置に、剥がした切手、あるいは別の切手を再度、水を塗って貼り付けたところ、接着性が高く、貼り替えたことが分からずに、セキュリティー性の低いものであった。また、上記の比較例1における熱転写受像シートから剥がされた切手の裏面には、熱転写受像シートから転移しているものがなく、水を塗って再度、別の対象物に貼り替えたところ、接着性が高く、悪用を防止できるものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の熱転写受像シートの一つの実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の熱転写受像シートの裏面層に対し、切手を貼付した後と、その切手を熱転写受像シートから剥がした際の状態を説明する概略図である。概略図である。
【図3】従来の熱転写受像シートの裏面層に対し、切手を貼付した後と、その切手を熱転写受像シートから剥がした際の状態を説明する概略図である。
【図4】本発明の熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等に糊を付与して、接着させた後と、その印画物を剥がした際の状態を説明する概略図である。
【図5】従来の熱転写受像シートに画像を形成した印画物を、履歴書等7に糊を付与して、接着させた後と、その印画物を剥がした際の状態を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1 熱転写受像シート
2 基材シート
3 染料受容層
4 裏面中間層
5 裏面層
6 切手
7 被貼付物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に染料受容層を設け、該基材シートの他方の面にフィラーを含有する裏面層を設けた熱転写受像シートにおいて、該基材シートと裏面層との間に裏面中間層を設け、該裏面中間層がポリウレタンからなり、イソシアネート化合物が添加されていなく、かつ前記裏面層が、ポリビニルブチラールとポリビニルピロリドンを含有することを特徴とする熱転写受像シート。
【請求項2】
前記の裏面層は、さらにシリコーン変性樹脂を含有していることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受像シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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