説明

熱転写受像シート

【課題】バックプリント適性、耐ブロッキング性、および粉落ち等の各種性能を向上させた熱転写受像シートの提供。
【解決手段】本発明による熱転写受像シートは、基材の一方の面に、受容層を有し、前記基材の前記受容層と反対側の面に、バインダー樹脂およびシリカ粒子を含む裏面層を有し、前記バインダー樹脂が、スチレン・ブタジエン系ラテックス、メタクリル酸エステル・ブタジエン系ラテックス、およびアクリレート系ラテックスからなる群から選択される少なくとも1種であり、前記シリカ粒子の含有量が、前記バインダー樹脂の総固形分質量に対して、10〜100質量%であるものである。本発明の組成を満たす熱転写受像シートを用いることで、バックプリント適性、耐ブロッキング性、および粉落ち等の各種性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の一方の面に、受容層を有し、前記基材の前記受容層と反対側の面に、バインダー樹脂およびシリカ粒子を含む裏面層を有する、熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の印字方法が知られているが、その中でも熱拡散型転写方式(昇華型熱転写方式)は、昇華性染料を色材としているため、濃度階調を自由に調節でき、中間色や階調の再現性にも優れ、銀塩写真に匹敵する高品質の画像を形成することができる。
【0003】
この熱拡散型転写方式とは、色素(昇華性染料)を含有する熱転写インクシートと熱転写受像シートとを重ね合わせ、次いで、電気信号によって発熱が制御されるサーマルヘッドによってインクシートを加熱することでインクシート中の色素を受像シートに転写して画像情報の記録を行うものである。このような熱拡散型転写方式が普及するなかで、印画速度の高速化が進んでおり、従来の熱転写インクシートと熱転写受像シートを用いて従来の熱エネルギーを印画しても十分な発色濃度を得られない等の問題が生じている。
【0004】
さらに、熱拡散型転写方式では、その他の種々の問題も存在している。例えば、受像シートの離型性不足に起因して、印画の際にインクシートが受像シートの受容層表面に貼り付き、印画後にインクシートを画像受容層から剥離する際に、剥離音の発生、走行不良、および画像上の剥離線の発生等の問題が生じている。
【0005】
また、紙送りローラを備えた装置を用いた画像形成では、記録用紙と記録装置内部との接触により、該記録用紙に搬送方向と逆方向にバックテンションがかかるため、搬送ムラが生じることがある。このような搬送ムラは、スリップ、重ね送り、給紙不良等を引き起こし、その結果、記録用紙の紙送り量やインクの付着位置にズレが生じ、画像に乱れが生じてしまう。そこで、搬送性等の性能を向上させるために、例えば、ガラス転移温度が50〜90℃であるスチレンブタジエンゴムと、ポリエチレンワックスと、アニオン系ポリスチレン樹脂とを含有する裏面層を有する熱転写受像シートが提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、依然として、バックプリント適性、耐ブロッキング性、および粉落ち等の各種性能を向上させた熱転写受像シートの開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−83298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクジェットプリンターやドットインパクトプリンターによる記録部のにじみおよびインキの速乾性について良好であり、かつ各種筆記具による筆記性を満足するバックプリント適性、巻き取り状態でのブロッキング、またプリンターにおける搬送性、離型性(熱転写受像シートの表裏を誤ってプリンターに挿入した場合の熱転写シートとの離型性)、耐汚染性の機能を有し、さらに熱転写受像シート同士の摩擦により、裏面層と染料受容層との擦れによる粉落ちや受像面への影響(スジ、ムラ等の画質の低下)を防止することができる熱転写受像シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の層構成を有する熱転写受像シートにおいて、裏面層に、バインダー粒子とシリカ粒子を特定の種類および配合量で含有させることで、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
基材の一方の面に、受容層を有し、
前記基材の前記受容層と反対側の面に、バインダー樹脂およびシリカ粒子を含む裏面層を有し、
前記バインダー樹脂が、スチレン・ブタジエン系ラテックス、メタクリル酸エステル・ブタジエン系ラテックス、およびアクリレート系ラテックスからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記シリカ粒子の含有量が、前記バインダー樹脂の総固形分質量に対して、10〜100質量%である、熱転写受像シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱転写受像シートによれば、バックプリント適性、耐ブロッキング性、および粉落ち等の各種性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、基材の一方の面に、受容層を有し、前記基材の前記受容層と反対側の面に、バインダー樹脂およびシリカ粒子を含む裏面層を有するものである。
【0013】
基材
本発明における基材は、一方の面に受容層および他方の面に裏面層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、過熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。
【0014】
このような基材の材料としては、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、レジンコート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、あるいはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられ、また、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルムも使用でき、特に限定されない。また、上記基材の任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース合成紙とプラスチックフィルムとの合成紙が挙げられる。本発明においては、市販の基材を用いることもでき、例えば、RCペーパー(三菱製紙(株)製、商品名:STF−150)等が好ましい。なお、基材厚みは、熱転写受像シートに要求される強度や耐熱性等や、基材として採用した素材の材質に応じて、適宜変更可能であり、具体的に、基材の厚みは、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜300μmの範囲内であることがより好ましい。
【0015】
裏面層
本発明における裏面層は、インクジェット方式やドットインパクト方式、筆記具等で使用するインキの定着性を有しており、記録部のにじみが生じ難く速乾性に優れたバックプリントを可能とする(バックプリント適性を向上させる)ものである。さらに、以下に示す受像紙裏面としての基本特性を有するものでもある。
1.受容層面と重ね合わせた際に、温度や加重をかけて保存しても貼り付き(ブロッキング)を生じない。
2.誤って受像紙の表裏面を逆にしてプリンタに装着し、熱転写シートと重ね合わせて熱転写を行った場合であっても、熱転写シートと貼り付いてプリンタ内で詰まる事が無く、印字物が排出される(裏面離型性を有している)。
3.受容層面と擦れても受容層面を傷付けず、また、裏面層からの粒子成分の脱落(粉落ち)を生じない。
また、裏面層は、バインダー樹脂およびシリカ粒子を含むものであり、その他の添加剤、例えば、消泡剤、帯電防止剤等を裏面層に適宜添加することができる。近年では環境配慮の観点から水系塗布方式が好まれているが、本発明の裏面層は、 水系塗布方式で受容層を形成した受像紙の裏面として特に好適に用いることができる。
【0016】
裏面層に含有されるバインダー樹脂は、スチレン・ブタジエン系ラテックス、メタクリル酸エステル・ブタジエン系ラテックス、およびアクリレート系ラテックスからなる群から選択される少なくとも1種である。また、これらのバインダー樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−50〜50℃であり、より好ましくは−40〜40℃である。このようなバインダー樹脂を用いることで、基材への接着性が良好、かつ、シリカを保持し、粉落ちの防止が可能で、さらに良好なバックプリント適性を持たせることが可能になる。本発明においては、市販のバインダー樹脂を用いることもでき、ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)、ラックスターDS−820(MBR系ラテックス、Tg=−40℃、DIC(株)製)、Nipol SX1707A(アクリレート系ラテックス、Tg=10℃、日本ゼオン(株)製)、Nipol LX844C(アクリレート系ラテックス、Tg=32℃、日本ゼオン(株)製)、およびSR−103(SBR系ラテックス、Tg=0℃、日本エイアンドエル(株)製)等が好ましい。
【0017】
裏面層に含有されるシリカ粒子としては、平均粒子径が1〜20μmのものが好ましい。平均粒子径が上記範囲程度であれば、ブロッキング、粉落ちを防ぎ、良好なバックプリント適性を持たせることが可能になる。また、裏面層におけるシリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂の総固形分質量に対して、10〜100質量%、好ましくは25〜75質量%である。シリカ粒子の含有量が上記範囲程度であれば、バックプリント適性を向上させ、ブロッキングと粉落ちを防止することができる。本発明においては、市販のシリカ粒子を用いることもでき、サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製)、NIPGEL AY−200(シリカ粒子、平均粒子径2.3μm、吸油量280ml/100g、東ソー・シリカ(株)製)、NIPGEL CX−400(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量100ml/100g、東ソー・シリカ(株)製)、NIPGEL AZ−6A0(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量315ml/100g、東ソー・シリカ(株)製)、NIPGEL AY−451(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量260ml/100g、東ソー・シリカ(株)製)、およびNIPGEL BY−601(シリカ粒子、平均粒子径5.0μm、吸油量200ml/100g、東ソー・シリカ(株)製)等が好ましい。
【0018】
本発明において、裏面層の塗布量は特に限定されるものではないが、塗布量は乾燥後0.1g/m〜3.0g/mの範囲内であることが好ましく、0.3g/m〜1.5g/mの範囲内であることがより好ましい。上記塗布量は少なすぎるとバックプリント適性が不十分になる恐れがあり、多すぎると粉落ちが発生する恐れがある。
【0019】
受容層
本発明における受容層は、熱転写による画像形成時に熱転写インクシートから転写される昇華性染料を受容するとともに、受容した昇華性染料を受容層に保持することで、受容層の面に画像を形成かつ維持することができる。受容層は、水系塗布方式により形成されたものであれば、その構成成分は特に制限されない。好ましい態様によれば、受容層は、樹脂、親水性バインダー、および離型剤等を、各種目的に応じて含むことができる。また、受容層は2層以上からなるものであってもよい。受容層の形成に用いる樹脂には、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル等のビニルポリマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレン等のオレフィンと他のビニルモノマーとの共重合体系樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、特に好ましいものは、アクリル系樹脂および/または塩化ビニル系樹脂である。
【0020】
本発明における受容層に含まれる離型剤としては、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)、リン酸エステル系可塑剤、およびフッ素系化合物を挙げることができ、特にシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーン等の各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン、アミド変性シリコーン等を用い、これらを混合したり、各種の反応を用いて重合させて用いることもできる。また、2種以上の離型剤を混合して用いてもよい。このような離型剤を用いることで、印画時に熱転写インクシートと熱転写受像シートの受容層との融着および印画感度低下などの問題を改善することができる。本発明においては、ポリエーテル変性シリコーン型の離型剤を用いることが特に好ましい。ポリエーテル変性シリコーン型の離型剤を2種以上用いてもよく、その他の離型剤と併用しても良い。本発明においては、市販の離型剤を用いることもでき、例えば、KF615AおよびKF352A(信越化学工業(株)製)、ならびにFZ−2101(東レダウコーニング(株)製)等が好ましい。
【0021】
その他の層
本発明の熱転写受像シートは、上記の層以外の他の層をさらに有してもよい。好ましい態様では、熱転写受像シートは、受容層側に、多孔質層、プライマー層、中間層、および離型層等のその他の層をさらに有することができる。
【0022】
多孔質層
本発明における多孔質層は、熱転写による画像形成時に加えられた熱が、基材等への伝熱によって損失されることを防止できる断熱性を有するものである。好ましい態様では、多孔質層は、中空粒子を含むものであり、親水性バインダーやその他の添加剤をさらに含んでもよい。好ましい態様によれば、多孔質層は2層以上からなるものであってもよい。多孔質層は、中空粒子を含むことにより、クッション性を備える。ここで、多孔質層のクッション性の程度は、熱転写受像シートの用途等に応じて適宜調整することができるものである。なお、多孔質層のクッション性の程度についても、例えば、多孔質層の厚みを変更することにより任意の範囲に調整することができる。多孔質層の厚みは、断熱性、クッション性等を所望の程度に調整できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、10μm〜100μmの範囲内であることが好ましく、10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。また、多孔質層の密度は、例えば0.1g/cm〜0.8g/cmの範囲内、なかでも0.2g/cm〜0.7g/cmの範囲内であることが好ましい。
【0023】
本発明で用いる中空粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜10μm、より好ましくは0.3〜5μmである。中空粒子の平均粒子径が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を多孔質層に与えることができる。平均粒子径が小さすぎると、中空粒子の使用量が増えコストが高くなり、平均粒子径が大きすぎると、平滑な多孔質層を形成することが困難になるからである。また、中空粒子の平均中空率は、好ましくは20%以上、より好ましくは30〜80%である。中空粒子の平均中空率が、上記範囲程度であれば、断熱性およびクッション性を多孔質層に与えることができる。さらに、樹脂等から構成される有機系中空粒子であってもよく、ガラス等から構成される無機系中空粒子であってもよい。また、上記中空粒子は、架橋中空粒子であってもよい。本発明においては、市販の中空粒子を用いることもでき、例えば、HP−1055、HP−91、およびローペイクSE(ロームアンドハース(株)製)、ならびにMH−5055(日本ゼオン)等が好ましい。
【0024】
なお、上記の「平均粒子径」は、「体積平均粒子径」であり、例えば、以下のようにして求めることができる。中空粒子を水中に分散させてなる水分散体を調整し、この中空粒子の水分散体のものを乾燥させて乾燥体となし、その後に透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製)にて乾燥体における中空粒子をなす粒子(100個)を観察して、個々の粒子についてその外面側の直径(外径)を計測し、それらの値を平均して平均粒子径とした。また、「平均中空率」は以下のようにして求めることができる。中空粒子を水中に分散させてなる水分散体を調整し、この中空粒子の水分散体のものを乾燥させて乾燥体となし、その後に透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ(株)製)にて乾燥体中における中空粒子をなす粒子(100個)を観察して、個々の粒子についてその内面側の直径(内径)を計測し、それらの値を平均して平均粒子内径とした。そして、平均粒子内径から中空部の体積を定めるとともに、その値を上記平均粒子径から粒子の見掛けの体積で除して100を乗じることで平均中空率を算出した。
【0025】
プライマー層
本発明におけるプライマー層は、多孔層と受容層とを良好に接着する役割を有するとともに、高温高湿度環境下における、染料の多孔質層側への移行を防止して画像保存性を向上させる機能を有するものである。好ましい態様では、プライマー層は、中空粒子、樹脂、および親水性バインダーを含むものであり、樹脂としては、アクリル系樹脂を含むものが好ましい。プライマー層の厚みとしては特に限定されるものではないが、例えば1μm〜40μmであることが好ましく、1μm〜20μmがより好ましく、1μm〜10μmがさらに好ましい。
【0026】
本発明において、アクリル系樹脂とは、アクリル酸またはメタクリル酸のモノマーの重合体もしくはその誘導体、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーの重合体もしくはその誘導体、アクリル酸またはメタクリル酸のモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体、およびアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体を含むものである。
【0027】
本発明の好ましい態様によれば、アクリル系樹脂は、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーと他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体であるのが好ましい。アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのモノマーとしては、例えば、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレート等、好ましくは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、ラウリルアクリレート、およびラウリルメタクリレート等を挙げることができる。他のモノマーとしては、例えば、芳香族炭化水素、アリール基含有化合物、アミド基含有化合物、および塩化ビニル等、好ましくは、スチレン、ベンジルスチレン、フェノキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、およびメタクリルアミド等を挙げることができる。本発明においては、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートと、芳香族炭化水素、アリール基含有化合物、およびアミド基含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の他のモノマーとの共重合体もしくはその誘導体を用いることが特に好ましい。上記のようなモノマーを共重合させることで、濃度および離型性を向上させることができる。なお、2種以上のアクリル系樹脂を混合して用いてもよい。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、上記の多孔質層、プライマー層、および受容層に含まれる親水性バインダーとしては、ゼラチンおよびその誘導体、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオイキサイド、ポリビニルピロリドン、プルラン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、ポリアクリル酸およびその塩、寒天、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、カゼイン、キサンテンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸、ならびにアラビアゴムを挙げることができ、特にゼラチンが好ましい。このような親水性バインダーを用いることで、各層の層間接着性を向上させることができる。特に、水系塗布および同時重層塗布方式により各層を形成する場合には、ゼラチンを用いることで、各塗工液の粘度を所望の範囲に調整し、所望の膜厚を得ることができる。本発明においては、市販のゼラチンを用いることもでき、例えば、RR、R、およびCLV(新田ゼラチン(株)製)等が好ましい。
【0029】
中間層
本発明においては、多孔質層とプライマー層の間やプライマー層と受容層の間に少なくとも1層の中間層を設けてもよい。中間層を設けることで、耐溶剤、高温/高湿下での画像保存時の染料拡散バリア、層間接着、白色付与、基材のギラつき感/ムラの隠蔽、および帯電防止等の機能を付加するこができる。中間層の形成手段としては公知の手段を用いることができ、例えば、中間層に、蛍光増白剤、無機微粒子、中空微粒子、および導電性フィラーやポリアニリンスルホン酸のような有機導電材等を添加する方法が挙げられる。
【0030】
離型層
本発明においては、上記の離型剤を受容層に添加せず、受容層上に別途離型層として設けても良い。
【0031】
熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートの製造には、公知の製造方法を用いることができる。熱転写受像シートの各層の塗布には、ロールコート、バーコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、ダイコート、スライドコート、およびカーテンコート等の公知の方法を用いることができ、受容層を有する面側においてはスライドコートやカーテンコート等の複数の層を同時重層塗布できる方法が好ましい。本発明においては、受容層を有する面側において、多孔質層から受容層間を構成する全ての層を、水系塗布かつ同時重層塗布方式により形成することが好ましい。このような製造方法により、熱転写受像シートの各層の層間接着性の向上やコスト改善等の効果が得られる。
【0032】
熱転写インクシート
本発明の熱転写受像シートと共に用いる熱転写インクシートは、基材上に熱拡散性色素を含むインク層を有するものである。このようなものであれば、公知の熱転写インクシートでよく、特に限定されるものではない。
【0033】
画像形成方法
本発明の熱転写受像シートを用いる画像形成方法においては、熱転写受像シートと、熱拡散性色素を含有する熱転写インクシートとを重ね合わせて、記録信号に応じて加熱することにより、該熱転写インクシートが含有する熱拡散性色素を、該熱転写受像シートに転写することにより画像形成することできる。
【0034】
このような画像形成方法で用いることのできる熱転写記録装置としては、公知のものを用いることができ、特に限定されない。本発明においては、市販の熱転写記録装置を用いることができ、例えば、昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS(株)製、型式:MEGAPIXELIII)が挙げられる。
【実施例】
【0035】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定解釈されるものではない。なお、表記の重量部は固形分で記載し、必要に応じて純水にて希釈した。
【0036】
実施例1
熱転写受像シート1の作製
基材シートとしてRCペーパー(三菱製紙(株)製、商品名:STF−150)を用い、一方の面に、下記組成の裏面層形成用塗工液1をワイヤーバーコーティングを用いて、乾燥後の塗布量が0.5g/mとなるように塗布し、50℃にて2分間乾燥した。
裏面層形成用塗工液1の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0037】
続いて、他方の面に、下記組成の多孔質層A形成用塗工液1、多孔質層B形成用塗工液1、プライマー層形成用塗工液1の組成、受容層A形成用塗工液1、受容層B形成用塗工液1を40℃にそれぞれ加熱し、スライドコーティングを用いて、WET時の厚みがそれぞれ10μm、25μm、15μm、5μm、8μmとなるように塗布し、5℃にて30秒間冷却した後、50℃にて2分間乾燥し、熱転写受像シート1(層構成:裏面層/基材/多孔質層A/多孔質層B/プライマー層/受容層A/受容層B)を得た。なお、塗布速度は、毎分250mであった。
多孔質層A形成用塗工液1の組成
・ローペイクHP−91(中空粒子、平均粒子径1μm、平均中空率50%、ロームアンドハース(株)製) 60重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 20重量部
・ラックスターDM−820(MBR系樹脂、DIC(株)製) 20重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業(株)製) 0.15重量部
水400部を加えて希釈した。
多孔質層B形成用塗工液1の組成
・ローペイクHP−91(中空粒子、平均粒子径1μm、平均中空率50%、ロームアンドハース(株)製) 70重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 25重量部
・ハイドランAP−40(ポリエステル・ウレタン系樹脂、DIC(株)製) 5重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業(株)製) 0.2重量部
水500部を加えて希釈した。
プライマー層形成用塗工液1の組成
・SX−866(架橋中空粒子、平均粒子径0.3μm、平均中空率30%、JSR(株)(株)製) 70重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 25重量部
・NKJ300(アクリル系樹脂、新中村化学工業(株)製) 5重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業(株)製) 0.2重量部
水500部を加えて希釈した。
受容層A形成用塗工液1の組成
・ビニブラン900(塩ビ・アクリル樹脂、日信化学工業(株)製) 90重量部
・RR(ゼラチン、新田ゼラチン(株)製) 10重量部
水250部を加えて希釈した。
受容層B形成用塗工液1の組成
・ビニブラン900(塩ビ・アクリル樹脂、日信化学工業(株)製) 90重量部
・KF−615A(シリコーン系離型剤、日信化学工業(株)製) 10重量部
・サーフィノール440(界面活性剤、日信化学工業(株)製) 0.5重量部
水150部を加えて希釈した。
【0038】
実施例2
熱転写受像シート2の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート2を作製した。
裏面層形成用塗工液2の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL AY−200(シリカ粒子、平均粒子径2.3μm、吸油量280ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 75重量部
【0039】
実施例3
熱転写受像シート3の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート3を作製した。
裏面層形成用塗工液3の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL CX−400(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量100ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 75重量部
【0040】
実施例4
熱転写受像シート4の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート4を作製した。
裏面層形成用塗工液4の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL AZ−6A0(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量315ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 75重量部
【0041】
実施例5
熱転写受像シート5の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート5を作製した。
裏面層形成用塗工液5の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL AY−451(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量260ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 75重量部
【0042】
実施例6
熱転写受像シート6の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート6を作製した。
裏面層形成用塗工液6の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL BY−601(シリカ粒子、平均粒子径5.0μm、吸油量200ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 75重量部
【0043】
実施例7
熱転写受像シート7の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート7を作製した。
裏面層形成用塗工液7の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL CX−400(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量100ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 50重量部
【0044】
実施例8
熱転写受像シート8の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート8を作製した。
裏面層形成用塗工液8の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL CX−400(シリカ粒子、平均粒子径4.0μm、吸油量100ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 25重量部
【0045】
実施例9
熱転写受像シート9の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート9を作製した。
裏面層形成用塗工液9の組成
・Nipol SX1707A(アクリレート系ラテックス、Tg=10℃、日本ゼオン(株)製) 100重量部
・NIPGEL AY−200(シリカ粒子、平均粒子径2.3μm、吸油量280ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 50重量部
【0046】
実施例10
熱転写受像シート10の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート10を作製した。
裏面層形成用塗工液10の組成
・Nipol SX1707A(アクリレート系ラテックス、Tg=10℃、日本ゼオン(株)製) 100重量部
・NIPGEL AY−200(シリカ粒子、平均粒子径2.3μm、吸油量280ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 100重量部
【0047】
実施例11
熱転写受像シート11の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート11を作製した。
裏面層形成用塗工液11の組成
・ラックスターDM−820(MBR系ラテックス、Tg=−40℃、DIC(株)製)
100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0048】
実施例12
熱転写受像シート12の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート12を作製した。
裏面層形成用塗工液12の組成
・Nipol SX1707A(アクリレート系ラテックス、Tg=10℃、日本ゼオン(株)製) 100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0049】
実施例13
熱転写受像シート13の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート13を作製した。
裏面層形成用塗工液13の組成
・Nipol LX844C(アクリレート系ラテックス、Tg=32℃、日本ゼオン(株)製) 100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0050】
実施例14
熱転写受像シート14の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート14を作製した。
裏面層形成用塗工液14の組成
・SR−103(SBR系ラテックス、Tg=0℃、日本エイアンドエル(株)製)
100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0051】
比較例1
熱転写受像シート15の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート15を作製した。
裏面層形成用塗工液15の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
【0052】
比較例2
熱転写受像シート16の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート16を作製した。
裏面層形成用塗工液16の組成
・ラックスターDM−820(MBR系ラテックス、Tg=−40℃、DIC(株)製)
100重量部
【0053】
比較例3
熱転写受像シート17の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート17を作製した。
裏面層形成用塗工液17の組成
・Nipol SX1707A(アクリレート系ラテックス、Tg=10℃、日本ゼオン(株)製) 100重量部
【0054】
比較例4
熱転写受像シート18作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート18を作製した。
裏面層形成用塗工液18の組成
・SR−103(SBR系ラテックス、Tg=0℃、日本エイアンドエル(株)製)
100重量部
【0055】
比較例5
熱転写受像シート19の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート19を作製した。
裏面層形成用塗工液19の組成
・ハイドランAP−40N(ウレタン系樹脂、Tg=55℃、DIC(株)製)
100重量部
【0056】
比較例6
熱転写受像シート20の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート20を作製した。
裏面層形成用塗工液20の組成
・ハイドランAP−70(ウレタン系樹脂、Tg=−4℃、DIC(株)製)
100重量部
【0057】
比較例7
熱転写受像シート21作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート21を作製した。
裏面層形成用塗工液21の組成
・スーパーフレックスSF−130(ウレタン系樹脂、Tg=101℃、第一工業製薬(株)製) 100重量部
【0058】
比較例8
熱転写受像シート22作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート22を作製した。
裏面層形成用塗工液22の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 150重量部
【0059】
比較例9
熱転写受像シート23の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート23を作製した。
裏面層形成用塗工液23の組成
・ラックスターDS−602(SBR系ラテックス、Tg=−15℃、DIC(株)製)
100重量部
・NIPGEL AY−200(シリカ粒子、平均粒子径2.3μm、吸油量280ml/100g、東ソー・シリカ(株)製) 150重量部
【0060】
比較例10
熱転写受像シート24の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート24を作製した。
裏面層形成用塗工液24の組成
・ハイドランAP−40N(ウレタン系樹脂、Tg=55℃、DIC(株)製)
100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0061】
比較例11
熱転写受像シート25の作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート25を作製した。
裏面層形成用塗工液25の組成
・ハイドランAP−70(ウレタン系樹脂、Tg=−4℃、DIC(株)製)
100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0062】
比較例12
熱転写受像シート26作製
裏面層形成用塗工液の組成を下記のとおりにした以外は、実施例1と同様にして熱転写受像シート26を作製した。
裏面層形成用塗工液26の組成
・スーパーフレックスSF−130(ウレタン系樹脂、Tg=101℃、第一工業製薬(株)製、固形分35重量%) 100重量部
・サイシリア380(シリカ粒子、平均粒子径9.0μm、吸油量280ml/100g、富士シリシア化学(株)製) 75重量部
【0063】
熱転写受像シートの評価
上記で作製した熱転写受像シート1〜26について、(1)バックプリント適性評価、(2)耐ブロッキング性評価、および(3)粉落ち評価を行った。
【0064】
(1)バックプリント適性評価
・評価方法
上記で作製した熱転写受像シート1〜26の裏面層を、インパクトドットプリンターiDP3550(シチズン・システムズ(株)製)と専用リボンカセット(黒色)を用いて、テスト印字を行い、所定の時間経過後に、裏面層に対して別途昇華型熱転写プリンター(ALTECH ADS(株)製、型式:MEGAPIXELIII)とMEGAPIXELIII純正リボンでCyベタ(階調値38/255)を印画した受容層面を重ね、それらを125μmPETフィルムで挟み、ラミネーター(ラミパッカーLPD3204 フジプラ(株)製、Coldモード、スピード2.5)で処理し、受容層への転写の有無を確認し、以下の3段階の基準に従って評価した。下記結果を表1に示す。なお、評価が○のものは、実用上問題がないレベルのインクの吸収性、速乾性を有するものである。
・評価基準
○:受容層への裏移りが生じていなかった。
△:受容層への裏移りがわずかに生じた。
×:受容層への裏移りが明らかに生じていた。
【0065】
(2)耐ブロッキング性評価
・評価方法
上記で作製した実施例および比較例の熱転写受像シートについて、同じ実施例および比較例で作製した熱転写受像シート同士を用いて、熱転写受像シートの裏面側と、もう一方の熱転写受像シートの染料受容層側とを対向させて、重ね合わせたものを、厚さ150μmの合成紙(ユポコーポレーション(株)製、ユポFPG#150)にて挟持した状態で、20kg/105mm×148mmの荷重をかけて、60℃のオーブンに150時間放置後、重ね合わせていた受容層面と裏面を剥がして、印画ムラが発生するかどうかを目視にて観察し、下記の評価基準にて、耐ブロッキング性を評価した。但し、上記の荷重後、印画ムラは、三菱電機(株)製熱転写プリンターCP9500Dにより、熱転写プリンターCP9500D専用熱転写シートと組み合わせて、テストパターンを印画して、評価した。
・評価基準
○:印画ムラが生じず、ブロッキングが生じていなかった。
×:印画ムラが生じ、ブロッキングが生じていた。
【0066】
(3)粉落ち評価
・評価方法
10cm角に切ったサンプルの裏面層を、5cm角の黒画用紙で10往復こすり、目視評価を行った。
・評価基準
○:粉落ちが生じていなかった。
△:粉落ちがわずかに生じたが、実用上は問題なかった。
×:粉落ちが生じた。
【0067】
上記の各評価の結果を表1に示す。本発明の組成を満たす実施例1〜14の熱転写受像シートは、比較例1〜12の熱転写受像シートと比較して、バックプリント適性、耐ブロッキング性、および粉落ちに優れていることがわかる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面に、受容層を有し、
前記基材の前記受容層と反対側の面に、バインダー樹脂およびシリカ粒子を含む裏面層を有し、
前記バインダー樹脂が、スチレン・ブタジエン系ラテックス、メタクリル酸エステル・ブタジエン系ラテックス、およびアクリレート系ラテックスからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記シリカ粒子の含有量が、前記バインダー樹脂の総固形分質量に対して、10〜100質量%である、熱転写受像シート。
【請求項2】
前記シリカ粒子の含有量が、前記バインダー樹脂の総固形分質量に対して、25〜75質量%である、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記バインダー樹脂のガラス転移温度が、−50〜50℃である、請求項1または2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記シリカ粒子の平均粒子径が、1〜20μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記受容層が、水系塗布方式により形成されたものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。

【公開番号】特開2011−104967(P2011−104967A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265504(P2009−265504)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】