説明

熱転写受像シート

【課題】受像紙の印画物の湿度変化によるカールの変化量を低下させ、各環境下への保存後における品位を向上できる熱転写受像シートを提供する。
【解決手段】本発明の熱転写受像シート10は、基材シート11と、該基材シート11の一方の面に、多孔質層12と、染料受容層13とをこの順に有してなり、該多孔質層12が、30μm未満の厚さを有しかつポリプロピレン樹脂を含む多孔質フィルムからなるものである。このような熱転写受像シートによれば、受像紙の印画物の湿度変化によるカールの変化量を低下させることで、各環境下への保存後における品位を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材シートと、該基材シートの一方の面に多孔質層と、染料受容層とをこの順に有してなる熱転写受像シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方式の中で、感熱昇華型転写方式と感熱溶融型転写方式が広く用いられている。このうち、感熱昇華型転写方式は、昇華性染料を色材とし、それを画像情報に応じて発熱制御されるサーマルヘッドなどの加熱デバイスを用いて、熱転写シート上に形成された昇華性染料層中の染料を熱転写受像シートに移行させて画像を形成するものである。
【0003】
この感熱昇華型転写方式によれば、極めて短時間の加熱によってドット単位で染料の移行量を制御することができる。また、色材が染料であることから透明性にも優れており、形成された画像は、非常に鮮明であると同時に、中間調の再現性や階調性に優れているため、極めて高精細な画像が得られ、フルカラーの銀塩写真にも匹敵する高品質の画像を得ることができる。
【0004】
このような感熱昇華型転写方式に用いられる昇華転写用の熱転写受像シート(以下、受像シートと言う)としては、一般的に基材シート上に色材受容層を形成したものが用いられている。この受像シートには、濃度ムラやドット抜けがなく、高濃度、高解像度の画像が得られることは言うまでもなく、微小な凹凸由来の濃度ムラがない高度の質感等が要求される。そのため、熱転写受像シートのシート材料として、基材シートが紙の芯材の両面に発泡ポリオレフィン層を積層した構成を有する熱転写受像シートが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。また、基材として支持体に複合材料フィルムを積層させ、画像受容層が基材の複合材料フィルム側にあり、複合材料フィルムがミクロボイドを保有する熱可塑性コア層および少なくとも1層の実質的にボイドを含まない熱可塑性表面層からなる熱転写受像シートが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
しかし、上記の特許文献1の受像シートでは、受像面における微細な凹凸があり、フルカラーの銀塩写真を再現する印画紙と比べると、表面状態の微妙な違い、風合いの違いがあり、写真風合いの質感に不足があり、十分に満足できるものではない。また、上記の文献2においても、フルカラーの銀塩写真を再現する印画紙と比べると、表面状態の微妙な違い、風合いの違いがあり、写真風合いの質感に不足があり、十分に満足できるものではない。また、紙基材の両面にレジンコート層を設け、受像側に、染料受容層をレジンコート層の上に設けた熱転写受像シートも提案されている(例えば、特許文献3を参照)。しかし、この受像シートでは、サーマルヘッドからの加熱時の断熱性、クッション性が十分でなく、熱転写画像の高精細な再現性が十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−268998号公報
【特許文献2】特開平5−246153号公報
【特許文献3】特開平5−92675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上記の背景技術を検討した結果、基材シートと、染料受容層との間に、多孔質層として多孔質フィルムを有することで、熱転写受像シートはサーマルヘッドからの加熱時の断熱性およびクッション性が良く、印画物は高精細な再現性が実現できることを知見した。しかし、このような熱転写受像シートの印画物は、環境変化(特に、湿度変化)によるカールの変化量が大きいという新たな問題を知見した。多孔質フィルムの厚さは、画像品質を保つために一定以上の厚さを有する多孔質フィルムを用いていたが、多孔質フィルムの厚さを薄くすることで、印画物の湿度変化によるカールの変化量を低減できるという驚くべき効果を知見した。さらに、このような熱転写受像シートは、特に高速印画における染料の転写感度を十分に維持する事ができる。
【0008】
本発明は上記の背景技術および新たに知見した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、受像紙の印画物の湿度変化によるカールの変化量を低下させ、各環境下への保存後における品位を向上できる熱転写受像シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、基材シートと、該基材シートの一方の面に、多孔質層と、染料受容層とをこの順に有してなる熱転写受像シートにおいて、多孔質層を、特定の厚さを有しかつポリプロピレン樹脂を含む多孔質フィルムを用いて形成することにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の一態様によれば、
基材シートと、該基材シートの一方の面に、多孔質層と、染料受容層とをこの順に有してなる、熱転写受像シートであって、
該多孔質層が、30μm未満の厚さを有し、かつポリプロピレン樹脂を含む多孔質フィルムからなる、熱転写受像シートが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱転写受像シートによれば、受像紙の印画物の環境変化(特に、湿度変化)によるカールの変化量を低下させることで、各環境下への保存後における品位を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による熱転写受像シートの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
熱転写受像シート
本発明の熱転写受像シートは、基材シートと、該基材シートの一方の面に、多孔質層と、染料受容層とをこの順に有してなるものである。基材シートと多孔質層の間に、接着層をさらに有してもよく、多孔質層と染料受容層の間に中間層をさらに有してもよい。このような熱転写受像シートは、特に高速印画に適しており、高速印画時においても染料の転写感度を十分に維持する事ができる。
【0014】
本発明の一態様によれば、基材シートと、該基材シートの一方の面に、接着層と、多孔質層と、中間層と、染料受容層とをこの順に有してなる熱転写受像シートが提供される。具体的に、本発明による熱転写受像シートの一例の模式断面図を図1に示す。図1に示される熱転写受像シート10は、基材シート11と、基材シート11の一方の面に、接着層14と、多孔質層12と、中間層15と、染料受容層13とをこの順に有してなるものである。また、基材シート11は、非コート紙芯材16の染料受容層側と裏面側の両面に、ポリオレフィン樹脂層17および18を有してなるものである。以下、本発明の熱転写受像シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0015】
基材シート
好ましい態様によれば、本発明における基材シートには、レジンコート紙(以下、RC紙ということがある)が用いられる。基材シートは、染料受容層を保持する役割を有するとともに、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも、取り扱い上、支障がない程度の機械的強度を有することが好ましい。また、基材シートは、好ましくは180μm以上250μm以下、より好ましくは190μm以上230μm以下、さらに好ましくは200μm以上220μm以下の厚さを有するものである。基材シートの厚さが上記範囲内であれば、受像紙の印画物の環境変化(特に、湿度変化)によるカールの変化量を低下させることで、各環境下への保存後における品位を向上できる。
【0016】
好ましい態様によれば、RC紙は、非コート紙からなる芯材の染料受容層側と裏面側の両面にポリオレフィン樹脂層を設けたものである。非コート紙からなる芯材としては、通常使用されるパルプを主体とした非コート紙が用いられる。非コート紙としては、例えば、原紙、写真原紙、および上質紙等が挙げられる。芯材として非コート紙を用いることにより、コート紙を使用したときと比べてコストを抑えることができる。
【0017】
基材シートを構成するポリオレフィン樹脂層は、芯材からみて、染料受容層側のポリオレフィン樹脂層1と、裏面側のポリオレフィン樹脂層2の2種があるが、いずれも材質としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブテン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体等が挙げられ、中でも、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンが好ましく用いられる。尚、染料受容層側のポリオレフィン樹脂層1には、白色度を向上させるために、酸化チタン等の充填材を添加することが好ましく行なわれる。
【0018】
ポリオレフィン樹脂層1を設けることで、染料受容層側の平滑度が高いため、印画物の地合を維持することができる。また、裏面側のポリオレフィン樹脂層2を設けることで、受像紙のカールのバランスを調整することができる。ポリオレフィン樹脂層1の厚さは、5〜25μm程度、ポリオレフィン樹脂層2の厚さは、20〜40μm程度であることが好ましい。
【0019】
ポリオレフィン樹脂層1および2は、上記の樹脂の塗工液を調整して、塗工、乾燥させて形成したり、紙からなる芯材に、溶融押出し法により形成したりすることができる。本発明では特に溶融押出し法により、ポリオレフィン樹脂層を形成することが好ましい。また、押出し法によるポリオレフィン樹脂層の形成では、厚さの制御を正確にできる利点がある。
【0020】
多孔質層
本発明における多孔質層は、多孔質フィルムからなるものである。多孔質フィルムは、30μm未満、好ましくは15μm以上30μm未満、より好ましくは20μm以上25μm以下の厚さを有するものである。また、多孔質フィルムは、ベースとなる樹脂としてポリプロピレン樹脂を含み、内部に微細空隙を有する多孔質フィルムが好ましい。30μm未満の厚さを有し、かつポリプロピレン樹脂を含む多孔質フィルムからなる多孔質層を設けることで、受像紙の印画物の環境変化(特に、湿度変化)によるカールの変化量を低下させることで、各環境下への保存後における品位を向上できる。
【0021】
フィルム中に微細空隙を生じさせる方法としては、フィルムのベースとなる樹脂に対して非相溶な有機微粒子または無機微粒子(一種類でも複数でもよい)を混練したコンパウンドを作成する。このコンパウンドは微視的にみるとベースとなる樹脂とベースとなる樹脂に対して非相溶な微粒子とが微細な海島構造を形成しており、このコンパウンドをフィルム化し、延伸することにより海島界面の剥離、または、島を形成する領域の大きな変形によって上記のような微細空隙を発生させるものである。
【0022】
微細空隙を形成する方法として、例えば、ポリプロピレンを主体とし、それにポリプロピレンより高い融点を有するポリエステルやアクリル樹脂を加えた方法が挙げられる。この場合、ポリエステルやアクリル樹脂が微細空隙を形成する核剤の役割をする。該ポリエステル、アクリル樹脂の含有量は、いずれの場合もポリプロピレン100質量部に対して2〜10質量部であることが好ましい。上記含有量が2質量部以上の場合には、微細空隙を十分に発生させることができ、印字感度をより向上させることができる。また、含有量が10質量部以下の場合には、多孔質フィルムの耐熱性を十分に担保することができる。
【0023】
また、ベースとする樹脂をポリプロピレンとする多孔質フィルムを作成する場合、微細で緻密な空隙をより発生させるためには、さらにポリイソプレンを加えることが好ましい。これにより、より高い印字感度を得ることができる。例えば、ポリプロピレンを主体とし、これにアクリル樹脂またはポリエステル、そしてポリイソプレンを配合したコンパウンドを作成し、フィルム化し、延伸することにより高い印字感度を有する多孔質フィルムを得ることができる。
【0024】
接着層
本発明における接着層は、基材シートと多孔質フィルムとを貼り合わせるための層である。接着層は、ドライラミイネーション、ウェットラミネーション、および貼着後電子線照射により接着させる方法等の貼合方法に応じて、適宜選択することができ、限定されるものではない。接着層で使用する接着剤として、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル共重合体樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、およびポリウレタン樹脂等を成分としたものが挙げられる。
【0025】
染料受容層
本発明における染料受容層は、熱転写シートから移行してくる昇華染料を受容し、形成された画像を維持するためのものである。染料受容層を形成するための樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、およびエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
本発明の熱転写受像シートは、熱転写シートとの離型性を向上させるために染料受容層中に離型剤を有することができる。離型剤としてはポリエチレンワックス、アミドワックス、テフロン(登録商標)パウダー等の固形ワックス類、フッ素系またはリン酸エステル系界面活性剤、シリコーンオイル、反応性シリコーンオイル、硬化型シリコーンオイル等の各種変性シリコーンオイル、および各種シリコーン樹脂などが挙げられるが、シリコーンオイルが好ましい。上記シリコーンオイルとしては油状のものも用いることができるが、硬化型のものが好ましい。硬化型シリコーンオイルとしては反応硬化型、光硬化型、および触媒硬化型等が挙げられるが、反応硬化型および触媒硬化型のシリコーンオイルが特に好ましい。
【0027】
反応型シリコーンオイルとしては、アミノ変性シリコーンオイルとエポキシ変性シリコーンオイルとを反応硬化させたものが好ましく、アミノ変性シリコーンオイルとしては、KF−393、KF−857、KF−858、X−22−3680、およびX−22−3801C(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられ、エポキシ変性シリコーンオイルとしてはKF−100T、KF−101、KF−60−164、およびKF−103(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。触媒硬化型シリコーンオイルとしてはKS−705、FKS−770、およびX−22−1212(以上、信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。これらの硬化型シリコーンオイルの添加量は染料受容層を構成する樹脂の0.5〜30質量%が好ましい。
【0028】
染料受容層の形成に際しては、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度をさらに高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、および微粉末シリカ等の顔料や充填剤を添加することができる。また、フタル酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、およびリン酸エステル化合物等の可塑剤を添加してもよい。
【0029】
離型層
他の態様によれば、染料受容層の表面の少なくとも一部に、上記の離型剤を適当な溶媒に溶解あるいは分散させて塗布した後、乾燥させることにより、離型層をさらに設けることもできる。離型層を構成する離型剤としては前記したアミノ変性シリコーンオイルとエポキシ変性シリコーンオイルとの反応硬化物が特に好ましく、離型剤層の厚さは、0.01〜5.0μm、特に0.05〜2.0μmが好ましい。なお、染料受容層を形成する際にシリコーンオイルを添加して形成すると、塗布後に表面にブリードアウトしたシリコーンオイルを硬化させても離型層を形成することができる。なお、染料受容層の形成に際しては、染料受容層の白色度を向上させて転写画像の鮮明度をさらに高める目的で、酸化チタン、酸化亜鉛、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、および微粉末シリカ等の顔料や充填剤を添加することができる。また、フタル酸エステル化合物、セバシン酸エステル化合物、およびリン酸エステル化合物等の可塑剤を添加するのもよい。
【0030】
中間層
本発明における中間層は、染料受容層と多孔質フィルムの間に設けられるものであり、染料受容層と多孔質フィルムとの接着性、白色度、クッション性、隠蔽性、帯電防止性、およびカール防止性等の付与を目的とするものである。本発明においては、従来公知のあらゆる中間層を設けることができる。中間層に用いるバインダー樹脂としてはポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリスルフォン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エポキシ樹脂、セルロース系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン系樹脂、およびポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、これらの樹脂のうちの活性水酸基を有するものについてはさらにそれらのイソシアネート硬化物をバインダーとすることもできる。
【0031】
また、白色性や隠蔽性を付与するために酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、および炭酸カルシウム等のフィラーを添加することが好ましい。さらに、白色性を高めるためにスチルベン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、およびベンゾオキサゾール系化合物等を蛍光増白剤として添加したり、印画物の耐光性を高めるためにヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびベンゾフェノン系化合物等を紫外線吸収剤あるいは酸化防止剤として添加したり、あるいは帯電防止性を付与するためにカチオン系アクリル樹脂、ポリアニリン樹脂、および各種導電性フィラー等を添加することができる。中間層の塗工量は、乾燥状態で0.5〜5g/m程度が好ましい。
【0032】
熱転写受像シートの製造方法
本発明の熱転写受像シートは、上記の基材シートの少なくとも一方の面に、多孔質層と、染料受容層とを公知の方法により積層することで製造することができる。好ましい態様によれば、染料受容層は、熱可塑性樹脂および他の必要な添加剤、例えば、離型剤、可塑剤、充填剤、架橋剤、硬化剤、触媒、熱離型剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、および光安定剤等を、有機溶剤や水に溶解もしくは分散させた塗工液を、例えばグラビア印刷法、スクリーン印刷法、およびグラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の形成手段により塗布および乾燥して形成することができる。このように形成される染料受容層の塗布量は、通常、乾燥状態で0.5〜50g/m程度、好ましくは2〜10g/mである。また、このような染料受容層は連続被覆であることが好ましいが、不連続の被覆として形成してもよい。また、裏面層や中間層等の塗布も、上記の染料受容層の形成手段と同様の方法で行われる。
【0033】
熱転写インクシート
本発明の熱転写受像シートと共に用いる熱転写インクシートは、基材シートの一方の面に熱転写性色材層が設けられており、基材シートの他方の面に耐熱滑性層が設けられている層構成を有するものがよい。以下、熱転写インクシートを構成する各層について説明する。
【0034】
基材シート
本発明に用いられる熱転写インクシートを構成する基材シートの材料は、従来公知のものを使用することができ、また、それ以外のものであっても、ある程度の耐熱性と強度とを有していれば使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイミド、ナイロン、酢酸セルロース、アイオノマー等の樹脂フィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類、不織布等が挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、これらを任意に組み合わせた積層体を使用してもよい。これらの中でも、薄膜化可能で安価な汎用性プラスチックであるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0035】
基材シートの厚さは、強度、耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は0.5〜50μm程度が好ましく、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜10μmである。
【0036】
基材シートは、隣接する層との接着性を向上させるため、表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、およびグラフト化処理等の、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。上記表面処理は、1種のみ施されてもよいし、2種以上施されてもよい。
【0037】
さらに、上記基材シートの接着処理として、基材シート上に接着層を塗工して形成することも可能である。接着層は、例えば、以下の有機材料および無機材料から形成することができる。上記有機材料としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドンおよびその変性体等のビニル系樹脂、ならびにポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂等が挙げられる。上記無機材料としては、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナあるいはアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物またはその水和物、疑ベークマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、および酸化チタン等のコロイド状無機顔料超微粒子等が挙げられる。
【0038】
また、上記の表面処理として、プラスチックフィルムを延伸処理して製造する場合、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行うこともできる(プライマー処理)。
【0039】
熱転写性色材層
本発明に用いられる熱転写インクシートは、基材シートの一方の面に熱転写性色材層が設けられている。熱転写インクシートが昇華型熱転写インクシートの場合には、熱転写性色材層として昇華性染料を含有する層を形成し、熱溶融型熱転写インクシートの場合には、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層を形成する。なお、昇華性染料を含有する層領域と、着色剤を含む熱溶融組成物からなる熱溶融性のインクを含有する層領域と、を連続した1枚の基材シート上に面順次に設けてもよい。
【0040】
熱転写性色材層の材料は、従来公知の染料を使用することができるが、印画材料として良好な特性を有するもの、例えば、十分な着色濃度を有し、光、熱、温度等により変褪色しないものが好ましい。例えば、赤色染料としては、MS Red G(三井東圧化学社製)、Macrolex Red Violet R(バイエル社製)、CeresRed 7B(バイエル社製)、Samaron Red F3BS(三菱化学社製)等が、黄色染料としては、ホロンブリリアントイエロー6GL(クラリアント社製)、PTY−52(三菱化成社製)、マクロレックスイエロー6G(バイエル社製)等が、青色染料としては、カヤセットブルー714(日本化薬社製)、ワクソリンブルーAP−FW(ICI社製)、ホロンブリリアントブルーS−R(サンド社製)、MSブルー100(三井東圧化学社製)等が挙げられる。
【0041】
上記染料を担持するためのバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース樹脂、ヒドロキシエチルセルロース樹脂、エチルヒドロキシセルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、およびポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、セルロース系、ビニル系、アクリル系、ポリウレタン系、ポリエステル系等の樹脂が耐熱性、染料の移行性等の点から好ましい。
【0042】
熱転写性色材層の形成方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。上記染料およびバインダー樹脂に、必要に応じて離型剤等の添加剤を加え、トルエン、メチルエチルケトン等の適当な有機溶剤に溶解させ、あるいは、水に分散させ、得られた熱転写性色材層用塗工液(溶解液または分散液)を、例えば、グラビア印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、ロールコーター、バーコーター等の形成手段により、基材シートの一方の面に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。熱転写性色材層は、厚みが0.2〜5.0μm程度であり、また、熱転写性色材層中の昇華性染料の含有量は、5〜90重量%、好ましくは5〜70重量%であることが好ましい。
【0043】
保護層
本発明に用いられる熱転写インクシートは、熱転写性色材層と同一面側に面順次で保護層を設けてもよい。熱転写受像シートに色材を転写した後、この保護層を転写して画像を被覆することにより、画像を光、ガス、液体、擦過等から保護することができる。保護層として接着層、剥離層、離型層、または、下引き層等のその他の層を設けてなるものであってもよい。
【0044】
耐熱滑性層
耐熱滑性層は、主に耐熱性樹脂からなるものである。耐熱性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンまたはエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテート−ヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、および塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0045】
耐熱滑性層は、上記耐熱性樹脂に加え、滑り性付与剤、架橋剤、離型剤、有機粉末、無機粉末等の添加剤を配合してなるものであってもよい。
【0046】
耐熱滑性層は、一般に、上述の耐熱性樹脂、並びに、所望により添加する上記滑り性付与剤および添加剤を溶剤中に加えて、各成分を溶解または分散させて耐熱滑性層塗工液を調製した後、該耐熱滑性層塗工液を基材の上に塗工し、乾燥させて形成することができる。上記耐熱滑性層塗工液における溶剤としては、上述の染料インキにおける溶剤と同様のものを使用することができる。
【0047】
耐熱滑性層塗工液の塗工法としては、例えば、ワイヤーバーコーティング、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等が挙げられるが、なかでもグラビアコーティングが好ましい。耐熱滑性層塗工液は、乾燥塗布量が好ましくは0.1〜3g/m、より好ましくは1.5g/m以下となるよう塗布すればよい。
【0048】
画像形成方法
本発明の熱転写受像シートを用いる画像形成方法においては、熱転写受像シートと、熱拡散性色素を含有する熱転写インクシートとを重ね合わせて、記録信号に応じて加熱することにより、該熱転写インクシートが含有する熱拡散性色素を、該熱転写受像シートに転写することにより画像形成することできる。本発明においては、高速印画により画像を形成することが好ましい。ここで、高速印画とは、0.5〜3.0、好ましくは0.5〜2.0、より好ましくは0.5〜1.0msec/lineである。
【0049】
このような画像形成方法で用いることのできる熱転写記録装置としては、公知のものを用いることができ、特に限定されない。本発明においては、市販の熱転写記録装置を用いることができる。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。以下、特に断りのない限り、部または%は質量基準である。
【0051】
実施例1
基材シートとして、RCペーパー(厚さ190μm)を使用した。RCペーパーは、写真用原紙(厚さ150μm)を用意し、一方の面に溶融押し出し法により、ポリエチレン樹脂層を形成し(ポリエチレン樹脂層1、厚さ14μm)、ポリエチレン樹脂層1を形成した面とは反対面に溶融押し出し法により、ポリエチレン樹脂層を形成した(ポリエチレン樹脂層2、厚さ26μm)。また、多孔質層を形成する多孔質フィルムとして、多孔質ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)を用意した。次に、ポリエチレン樹脂層1面上に、下記組成の接着剤を使用して、グラビアコーターにより塗工し、乾燥後塗布量が5g/mになるように、接着層を形成し、ドライラミネート方式で、該多孔質ポリプロピレンフィルムを貼り合わせて、積層させた。
接着層用塗工液の組成
・水酸基含有のオリゴマー(タケラックA−969V、三井化学ポリウレタン(株)製)
45質量部
・イソシアネート基を有するウレタンオリゴマー(タケネートA−51、三井化学ポリウレタン(株)製) 15質量部
・酢酸エチル 45質量部
【0052】
続いて、該多孔質ポリプロピレンフィルムの上に、下記組成の中間層用塗工液を乾燥後2g/mとなるようにグラビアコーターで塗工し、110℃で1分乾燥した後、その上に下記組成の染料受容層用塗工液を乾燥後4g/mとなるようにグラビアコーターで塗工し、110℃で1分乾燥させて、熱転写受像シートを作製した。
【0053】
中間層用塗工液の組成
・ポリエステル樹脂(WR−905、日本合成化学(株)製) 13.1質量部
・酸化チタン(TCA−888、トーケムプロダクツ社製) 26.2質量部
・蛍光増白剤(ベンゾイミダゾール誘導体、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、商品名:ユビテックスBAC) 0.39質量部
・水/イソプロピルアルコール〔IPA〕(質量比2/1) 60質量部
【0054】
染料受容層用塗工液の組成
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学工業(株)製、商品名:ソルバインC)
60質量部
・エポキシ変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:X−22−3000T)
1.2質量部
・メチルスチル変性シリコーン(信越化学工業(株)製、商品名:24−510)
0.6質量部
・メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/1) 5質量部
【0055】
実施例2
多孔質フィルムとして、多孔質ポリプロピレンフィルム(厚さ22μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写受像シートを作製した。
【0056】
実施例3
基材シートとして、写真用原紙(厚さ170μm)を用いたRCペーパー(厚さ210μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱転写受像シートを作製した。
【0057】
実施例4
基材シートとして、写真用原紙(厚さ160μm)を用いたRCペーパー(厚さ200μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱転写受像シートを作製した。
【0058】
実施例5
基材シートとして、写真用原紙(厚さ166μm)を用い、かつ、ポリエチレン樹脂層2の厚さを10μmとしたRCペーパー(厚さ190μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の熱転写受像シートを作製した。
【0059】
実施例6
基材シートとして、写真用原紙(厚さ140μm)を用い、かつ、ポリエチレン樹脂層2の厚さを36μmとしたRCペーパー(厚さ190μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の熱転写受像シートを作製した。
【0060】
比較例1
多孔質フィルムとして、多孔質ポリプロピレンフィルム(厚さ39μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写受像シートを作製した。
【0061】
比較例2
多孔質フィルムとして、多孔質ポリプロピレンフィルム(厚さ30μm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の熱転写受像シートを作製した。
【0062】
熱転写受像シートの評価
上記の実施例1〜6および比較例1〜2で作製した熱転写受像シートについて、カール量を(1)印画直後の変化、(2)保存後の変化の2項目で評価を行った。また、(3)画像濃度評価および(4)印画ムラ評価についても行った。
【0063】
(1)印画直後の変化
熱転写受像シートの染料受容層に、市販の昇華転写プリンターにて黒ベタパターンを印画した。なお、印画速度は、1.0msec/lineであった。印画後に4隅のカール量を測定し、最大値を以下の範囲で5段階評価した。なお、印画面を上にして凸カールとなる場合を「+」、凹カールとなる場合を「−」とした。凸カール方向は数値が小さいほど良い評価、凹カール方向は数値が大きいほど良い評価とした。また、一般に印画物としては凸カール方向となることが望まれることから、以下の評価基準とした。
評価基準
1:0mm〜10mm
2:−10mm〜0mm
3:10mm〜20mm
4:20mm以上
5:−10mm以下
【0064】
(2)保存後の変化(湿度環境による変化)
印画した黒ベタ印画物を40℃90%環境と40℃ドライ環境下に100時間保存し、保存後のカール量を測定した。それぞれの保存後の最大カール量の差をとり、以下の範囲で5段階評価した。数字が小さいほど良い評価である。
評価基準
1:0mm〜20mm
2:20mm〜30mm
3:30mm〜40mm
4:40mm〜50mm
5:50mm以上
【0065】
(3)画像濃度評価
熱転写受像シートの染料受容層に、市販の昇華転写プリンターにて黒ベタパターンを印画した。なお、印画速度は、1.0msec/lineであった。黒ベタ画像を印画した受像紙について、光学濃度計(グレタグマクベス社製spectrolino)(Ansi−A、D65))による光学反射濃度が最大となる値を測定し、OD値(光学的濃度)を以下の基準で評価した。
評価基準
○:2.0以上
△:1.95以上2.0未満
×:1.95未満
【0066】
(4)印画ムラ評価
熱転写受像シートの染料受容層に、市販の昇華転写プリンターにて黒ベタパターンを印画した。なお、印画速度は、1.0msec/lineであった。黒ベタ画像を印画した受像紙について、受像紙表面の微小な凹凸の有無を目視により評価した。
評価基準
○:受像紙表面に濃度ムラが無く、質感的に優れるものであった。
△:受像紙表面に微小な凹凸由来の濃度ムラがやや有り、質感が不十分であった。
×:受像紙表面に凹凸や画像の濃度ムラが大きく有り、質感が悪かった。
【0067】
上記の各評価の結果を表1に示す。本発明の組成を満たす実施例1〜6の熱転写受像シートは、比較例1〜2の熱転写受像シートと比較して、印画直後および保存後のカールの変化量が小さいことがわかる。また、本発明の組成を満たす熱転写受像シートは、高速印画における十分な画像濃度および高度な質感を実現できることがわかる。
【表1】

【符号の説明】
【0068】
10 熱転写受像シート
11 基材シート
12 多孔質層
13 染料受容層
14 接着層
15 中間層
16 非コート紙芯材
17 ポリオレフィン樹脂層
18 ポリオレフィン樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、前記基材シートの一方の面に、多孔質層と、染料受容層とをこの順に有してなる、熱転写受像シートであって、
前記多孔質層が、30μm未満の厚さを有し、かつポリプロピレン樹脂を含む多孔質フィルムからなる、熱転写受像シート。
【請求項2】
前記多孔質フィルムが、15μm以上30μm未満の厚さを有する、請求項1に記載の熱転写受像シート。
【請求項3】
前記基材シートが、180μm以上250μm以下の厚さを有する、請求項1または2に記載の熱転写受像シート。
【請求項4】
前記基材シートが、非コート紙からなる芯材の染料受容層側と裏面側の両面にポリオレフィン樹脂層を設けたものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱転写受像シート。
【請求項5】
前記基材シートの裏面側のポリオレフィン樹脂層が、10μm以上30μm以下の厚さを有する、請求項4に記載の熱転写受像シート。

【図1】
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