説明

熱転写受容シート

【課題】製造時の環境適性に有利な溶融押出法で製造され、高速印画条件でも高濃度な印画特性を有し、熱転写性保護層との接着性に優れ、かつ高温保存下での画像保存性が向上した熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】基材上に、少なくとも1層の溶融押出法により形成された熱拡散性色素の受容層を有する熱転写受容シートにおいて、該受容層が、融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物を、該受容層の全質量の10質量%以上含有していることを特徴とする熱転写受容シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写インクシートと重ね合わせて使用される熱転写受容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、カラーまたはモノクロの画像の形成技術として、加熱により拡散移行する性質を有する熱拡散性色素を含有するインクシートを、受容シートの受容層と対向させて、サーマルヘッドやレーザー等の加熱印字手段を用いて、該受容層に該熱拡散性色素を画像様に転写して、色素熱転写方式で画像を形成する技術が知られている。この様な熱転写方式は、デジタルデータを用いての画像形成を可能とし、現像液等の処理液を使わず、しかも銀塩写真に匹敵する高品位の画質が得られる方法として定評がある。
【0003】
しかしながら、昨今、デジタルデータに基づいた画像プリントに要求される品質は益々厳しくなり、より高速で、より高濃度なプリントを、より高画質な状態で顧客に提供することが重要な課題となっている。その一方で、これら熱転写記録材料の製造過程における環境適性向上やコスト削減も非常に大きな課題である。とりわけ、脱VOC(揮発性有機化合物の削減)は社会的責任の観点からも急務といえる。
【0004】
この様な状況に対し、従来より水系塗工方式により、熱転写受容シートの各層(断熱/クッション機能層、受容層等)を形成する技術が知られている。例えば、水系バインダーと中空粒子を主成分とする水系中間層と、水系バインダーと離型剤を主成分とする水系受像層(以下、受容層ともいう)とを同時重層して製造する熱転写受容シートの製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この技術では高速印画条件で要求される転写速度には到底達してはおらず、また、受容層の耐熱性が低いために高エネルギー印画部(高濃度部)の表面凹凸が顕著で大きく画質を損なってしまうという問題があった。また、水分散型もしくは水溶性樹脂に増粘剤を添加することで液粘度を調整する技術だけでは、乾燥負荷は下がらず、層間物質移動を避ける上で自ずと塗布速度に限界が生じる。
【0005】
また、脱VOCの別の方法として、溶融押出法により熱転写受容シートの各層を形成する技術が知られている。例えば、少なくとも表面層とそれに隣接しているつなぎ層を含んでなる多層フィルムを溶融押出法で作製する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。一般に、溶融押出に使われる樹脂は耐熱性が良く、逆に単にそれだけでは色素受容性が低くなる傾向があるため、前記特許文献2ではこれを補う技術として脂肪族エステル可塑剤を添加する方法が記載されている。しかしながら、記載されている添加量が比較的少量に留まっているため、未添加状態からの転写効率の改良効果が小さく、かつ可塑剤の融点に関する明確な記載がないため、好ましいとされる可塑剤を転写効率向上目的で単純に増量しただけでは、印画後の常温または高温保存下で画像滲みを招き好ましくない。また、可塑剤の使用は、一般的に増量することで熱転写インクシートとの剥離性を高めることができるものの、熱溶融転写性保護シートから転写される保護層との接着性が劣化し、例えば、光沢性やその後の耐光性にムラが生じるという問題が生じる。そしてこの現象はとりわけ高速転写条件で顕著となる傾向にある。
【0006】
従って、溶融押出による熱転写受容シートの作製は、製造時の環境適性及び製造コストの点で溶剤系よりも有利な可能性はあるが、従来技術では高速条件においても非常に高濃度な印画特性を有し、熱転写性保護層との接着性に優れ、かつ日常起こり得る範囲の高温保存下での画像保存性にも優れた熱転写受容シートを得ることはできなかった。
【特許文献1】特開平6−171240号公報
【特許文献2】特開2004−255878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、製造時の環境適性に有利な溶融押出法で製造され、高速印画条件でも高濃度な印画特性を有し、熱転写性保護層との接着性に優れ、かつ高温保存下での画像保存性が向上した熱転写受容シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.基材上に、少なくとも1層の溶融押出法により形成された熱拡散性色素の受容層を有する熱転写受容シートにおいて、該受容層が、融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物を、該受容層の全質量の10質量%以上含有していることを特徴とする熱転写受容シート。
【0010】
2.前記融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物が、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸アマイドを主成分とするワックスであることを特徴とする前記1に記載の熱転写受容シート。
【0011】
3.前記受容層の全質量に対する前記融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物の含有率が、25質量%以上であることを特徴とする前記1または2に記載の熱転写受容シート。
【0012】
4.前記受容層の全質量に対する前記融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物の含有率が、50質量%以上であることを特徴とする前記3に記載の熱転写受容シート。
【0013】
5.前記受容層が、離型剤として質量平均分子量が100,000以上のシロキサン含有ポリマーを含有することを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、製造時の環境適性に有利な溶融押出法で製造され、高速印画条件でも高濃度な印画特性を有し、熱転写性保護層との接着性に優れ、かつ高温保存下での画像保存性が向上した熱転写受容シートを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、基材上に、少なくとも1層の溶融押出法により形成された熱拡散性色素の受容層を有する熱転写受容シートにおいて、該受容層が、融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物を、該受容層の全質量の10質量%以上含有していることを特徴とする熱転写受容シートにより、製造時の環境適性に有利な溶融押出法で製造することができ、高速印画条件でも高濃度な印画特性を有し、熱転写性保護層との接着性に優れ、かつ高温保存下での画像保存性が向上した熱転写受容シートを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0017】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0018】
〔受容層〕
本発明の熱転写受容シートでは、基材上に溶融押出法により形成された熱拡散性色素の受容層を有し、この受容層が融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物を10質量%以上含有していることを特徴とする。
【0019】
(バインダー)
本発明の熱転写受容シートに係る受容層に用いるバインダーは、特に制限はないが、ポリエステル材料であることが好ましく、ポリエステル材料の中でも、以下の構造を有するものがより好ましい。
【0020】
(a)反復する二塩基酸誘導単位及びポリオール誘導単位であって、前記二塩基酸誘導単位の少なくとも50モル%が、4〜10個の環炭素原子を含んでなる脂環式環を含むジカルボン酸誘導単位を含んでなり前期環が対応するジカルボン酸の各カルボキシル基の2つの炭素原子の間にあり、(b)対応するジオールの各ヒドロキシル基に直接隣接していない芳香環または脂環式環を含んでいる25〜75モル%の前記ポリオール誘導単位、(c)25〜75モル%の前記ポリエステルのポリオール誘導単位が、4〜10個の環炭素原子を含んでなる脂環式環を含む。
【0021】
このようなポリエステルポリマーは、脂環式ジカルボン酸(Q)並びに芳香族ジオール(L)及び脂環式ジオール(P)から誘導される反復単位に基づく縮合タイプのポリエステルであり、(Q)は、各カルボキシル基が脂環式環の2つの炭素原子の間に(好ましくはそれらに直接隣接して)ある1つまたは複数の脂環式環含有ジカルボン酸単位を表し、(L)は、各ヒドロキシル基に直接隣接していない(好ましくは炭素原子1〜約4個離れた)少なくとも1つの芳香環またはヒドロキシル基に隣接していてもよい脂環式環をそれぞれ含む1つまたは複数のジオール単位を表す。
【0022】
また、押出可能なポリエステルの場合、官能基を3つ以上持つモノマー、好ましくは分岐を与えることのできる多官能性ポリオール(N)または多酸及びその誘導体(O)を(二酸またはジオールのいずれかの代わりとして)1つまたは複数利用するのが有利である。多官能性ポリオールには、例えば、グリセリン、1,1,1−トリメチロールエタンおよび1,1,1−トリメチロールプロパンまたはその組合せがある。3つ以上のカルボン酸基を有する多酸(エステルまたは無水物誘導体を含む)には、例えば、トリメリト酸、トリメシン酸、1,2,5−、2,3,6−または1,8,4−ナフタレントリカルボン酸無水物、3,4,4′−ジフェニルトリカルボン酸無水物、3,4,4′−ジフェニルメタントリカルボン酸無水物、3,4,4′−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4′−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物およびそれらの誘導体がある。
【0023】
芳香族二酸または無水物の含有により混入する少量の芳香族化合物(S)は、画像化された色素濃度を低下させる傾向のため好ましくない。
【0024】
このようなポリエステルポリマーにおいては、二酸(R)及びジオール(M)の添加量を適宜調整することにより、例えば、ポリマーのTg、溶解度、接着性などを精密に調整することができる。二酸コモノマーは環状構造(Q)を有しても良いが、直鎖脂肪族単位でも、ある程度芳香族性でも良い。追加のジオールモノマーは脂肪族構造でも芳香族構造でも良いが、フェノール性でないことが好ましい。
【0025】
上記説明した脂環式ジカルボン酸(Q)、芳香族ジオール(L)、脂環式ジオール(P)、多官能性ポリオール(N)、多酸及びその誘導体(O)、芳香族化合物(S)、二酸(R)、ジオール(M)の具体的な構造については、特開2004−255878号公報に記載の化合物を参考にすることができる。
【0026】
上記の各モノマーを共重合して得られるポリエステルの具体例を示すが、本発明ではこれら例示するポリエステルにのみ限定されるものではない。
【0027】
【化1】

【0028】
上式において、Pは脂環式ジオール、Oは多酸及びその誘導体、Lは芳香族ジオール、Qは脂環式ジカルボン酸、Mはジオール、Rは二酸、Nは多官能性ポリオール、Sは芳香族化合物をそれぞれ表し、o+q+r+s=100モル%であり、p+m+n+l=100モル%(ポリオール成分に対して)である。二酸に関して、qは少なくとも50モル%であり、rは40モル%未満であり、sは10モル%未満であることが好ましい。ポリオールに関して、pは25〜75モル%であり、lは25〜50モル%であり、mは0〜50モル%であることが好ましい。多官能性モノマー(3つ以上の官能基を有する)に関して、nまたはoの全量は、好ましくは0.1〜10モル%であり、好ましくは1〜5モル%である。
【0029】
本発明に係るポリエステルは、テレフタレートまたはイソフタレートなどの芳香族二酸を含まないことが好ましい。
【0030】
本発明に係るポリエステルは、そのTgが40〜100℃であることが好まし、また、数分子量は5,000〜250,000、より好ましくは10,000〜100,000である。
【0031】
本発明に係る受容層においては、上記ポリエステルバインダーに加えて、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(スチレン−コアクリロニトリル)、ポリカプロラクトンなどの他のポリマーを含んでもよい。ポリエステル−ポリカーボネートの2種のバインダーを用いる場合には、数分子量が少なくとも25,000の非改質ビスフェノール−Aポリカーボネートを用いることができ、それらの化合物の具体例は、例えば、米国特許第4,695,286号明細書に開示されている化合物を挙げることができる。具体例には、MAKROLON 5700(Bayer AG)、LEXAN 141(General Electric Co.)等のポリカーボネートを挙げることができる。
【0032】
バインダーとして、ポリエステルと共にポリカーボネートを用いる場合、ポリカーボネートは100〜200℃のTgを持つことが好ましく、その場合ポリエステルはポリカーボネートよりもTgが低く、ポリカーボネートのためのポリマー性可塑剤として作用することが好ましい。最終的なポリエステル/ポリカーボネートブレンドのTgは40〜100℃であることが好ましい。より高いTgのポリエステルおよびポリカーボネートポリマーも可塑剤を加えれば使用できる。
【0033】
本発明に係る受容層においては、ポリエステルポリマーを非改質ビスフェノール−Aポリカーボネートとある質量比でブレンドし、最終的なブレンドで所望のTgとすることにより、低コスト化を図ることができる。ポリカーボネートとポリエステルポリマーの混合比は、90:10〜10:90、好ましくは80:20〜20:80、より好ましくは75:25〜25:75の質量比である。
【0034】
本発明に係る受容層に適用可能なポリエステルポリマーの具体例として、例えば、下記の例示化合物E1〜E−3を挙げることができる。
【0035】
下記に示す例示化合物E−1〜E−3は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジメタノール、4,4′−ビス(2−ヒドロキシエチル)ビスフェノール−Aおよび2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオールから誘導されるポリエステルポリマーである。
【0036】
【化2】

【0037】
(融点または軟化点80〜140℃の化合物)
本発明に係る受容層では、融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物を10質量%以上含有していることを特徴とする。
【0038】
本発明でいう融点及び軟化点は、各々JIS K0064、JIS K7196に準拠した測定で得られる温度のことを指す。
【0039】
本発明に係る融点または軟化点が80〜140℃の範囲にある化合物とは、該化合物を構成する全ての成分の融点または軟化点を質量平均したときの値が80〜140℃の範囲にあることを指しており、化合物単体、混合物いずれの場合も含まれる。この条件を満たし、かつ受容層を構成する他のバインダー、添加剤、及び熱拡散性色素と相溶し、更に溶融押出適性等他の諸性能を著しく低下させない化合物であれば、特に制限はない。
【0040】
融点が80℃未満では、比較的高温環境で印画前の受容シートを保存した場合、表面がベタついたり、それを使って印画した場合に濃度ムラが生じるなどの問題を起こしやすい他、印画時の地汚れ劣化や、印画後の画像保存時の滲み劣化が問題となり、好ましくない。また、融点が140℃より高い場合は、十分な転写効率が得られない。
【0041】
本発明に係る融点または軟化点80〜140℃の化合物の具体例としては、例えば、以下に示す酸化防止剤、紫外線吸収剤、ワックスとして知られる化合物、またはこれらを主成分とする混合物を挙げることができる。
【0042】
〈酸化防止剤として知られる化合物〉
1)2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等のビスフェノール系、
2)テトラキス−〔メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等の高分子型フェノール系、
3)9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキサイド等のリン酸系等。
【0043】
〈紫外線吸収剤として知られる化合物〉
1)2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、
2)2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2(2′−ヒドロキシ−5′−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、
3)商品名 Sanol LS−770(三共ライフテック社製)、商品名 アデカスタブLA−63、アデカスタブLA−68(以上、旭電化工業社製)等のヒンダードアミン系光安定剤等。
【0044】
〈ワックスとして知られる化合物〉
1)テトラコンタン、ドデトラコンタン、ペンタコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のパラフィン系、
2)商品名 カーディスTM10、ペトロナウバTMC、ペトロライトTME−1040(以上、ベーカー・ペトロライト社性)等の酸化炭化水素系、
3)商品名 ユニリンTM425、ユニリンTM550、ユニリンTM700(以上、ベーカー・ペトロライト社製)等の炭素数28以上の長鎖脂肪族アルコール系、
4)商品名 ユニシッドTM350、ユニシッドTM425、ユニシッドTM550、ユニシッドTM700(以上、ベーカー・ペトロライト社製)等の炭素数22以上の長鎖飽和脂肪酸系、
5)ラウリン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、ヒドロキシステアリン酸アマイド、エルカ酸アマイド、N−パルミチルパルミチン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイド、N−ステアリル12ヒドロキシステアリン酸アマイド、メチロールステアリン酸アマイド、メチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスイソステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、メチレンビスオレイン酸アマイド、N,N′−ジオレイルアジピン酸アマイド等の脂肪酸アマイド系、
6)ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸マグネシウム、リシノール酸バリウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛等の金属石鹸系、
7)セロチン酸ミリシル等の高級脂肪酸と1価高級アルコールとのエステル、高級多塩基酸と1価高級アルコールとのエステル、高級脂肪酸と高級多価アルコールとのエステル及びその誘導体等の脂肪酸エステル系、更にはこれらを主成分とするカルナウバワックスに代表される天然ワックス類。
【0045】
その他の化合物として、下記構造式(1)〜(4)に示すような一部のスルフォン酸アミド系、カルボン酸系、アルコール系、フェノール系等の熱溶剤も用いることができる。
【0046】
【化3】

【0047】
本発明に係る融点が80〜140℃の範囲にある化合物を選択する際、化合物の疎水性の程度を表す指標LogPがある程度目安となる。化合物のLogP値は、その化合物を水と混じりあわない有機溶媒に溶かして水と混ぜ合わせ、に達したときの双方での濃度の比(有機溶媒中の濃度/水中の濃度、すなわち分配係数)をで表示した値である。本発明に係る融点が80〜140℃の化合物のLogP値としては、好ましくは0.0以上、より好ましくは1.0以上である。また、化合物内で適度な極性を有する箇所を含んでいる化合物が、好ましい結果を与えることができる観点から好ましい。
【0048】
上記化合物例の中で、特に転写効率、画像保存性の観点から好ましい化合物としては、脂肪酸アマイド系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、及び脂肪酸エステルを主成分とするカルナウバワックスである。
【0049】
また、本発明においては、軟化点が80〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂も好ましく用いられる。ここで軟化点とは、非結晶性樹脂の場合は二次転移点を指しガラス転移点と同義であり、結晶性の高い樹脂の場合は一次転移点を指すものである。具体的には、商品名 ロープレックスB−85(Rohm & Haas社製)等のポリメタクリル酸メチル系樹脂、あるいは、商品名 バイロン300、バイロンGM9001480(以上、東洋紡績社製)等のポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0050】
本発明に係る軟化点80〜140℃の範囲にある樹脂は、数分子量として8000以上50000以下であることが好ましく、また、転写効率を高める上で結晶性の高いものがより好ましい。また、本発明に係わる軟化点80〜140℃の範囲にある結晶性の高い樹脂は、画像保存性の観点から一次転移点(ガラス転移点)は20℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。
【0051】
本発明に係る受容層は、上記融点または軟化点80〜140℃の範囲にある化合物を、受容層を構成する成分の全固形分に対し、10質量%以上含有することを特徴とし、転写効率を高める観点からは25質量%以上であることが好ましく、更に好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは50質量%以上であり、また90質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは80質量%以下である。
【0052】
含有量が10質量%以上であれば、十分な転写効率を得ることができ、90質量%以下であれば、受容層膜強度やインクシートとの剥離性、あるいは熱溶融転写性保護シートから転写される保護層との接着性として、好ましい特性を維持することができる。
【0053】
本発明に係る受容層では、本発明に係る融点または軟化点80〜140℃の化合物を2種以上併用することもできる。
【0054】
本発明に係る受容層の塗設量は、本発明の目的効果を発揮できる範囲であれば特に制限はないが、概ね0.5〜20g/m2、好ましくは1〜15g/m2、より好ましくは2〜8g/m2である。
【0055】
〔剥離剤〕
本発明の熱転写受容シートにおいては、本発明に係る受容層が、離型剤として質量平均分子量が100,000以上のシロキサン含有ポリマーを含有することが好ましい。
【0056】
本発明に係る受容層は、当業界で公知のシリコーン系またはフッ素系化合物などの剥離剤を含んでもよい。受容層または保護層へそのような剥離剤を添加することにより、感熱印字の際の耐粘着性を向上させることができる。剥離剤としては、例えば、米国特許第4,820,687号明細書および米国特許第4,695,286号明細書に開示されている。
【0057】
本発明で適用する剥離剤、特に、溶融押出法により形成される受容層に好まし区適用される剥離剤は、超高分子量シリコーン系化合物である。好ましくは、化合物またはポリマーの質量平均分子量が少なくとも100,000、より好ましくは少なくとも500,000、最も好ましくは5,000,000以上、1,000,000以下である。シリコーン系の剥離剤は、受容層に使用されるポリマーと可能な限り相溶性でなければならない。受容層がポリカーボネートを含んでいる場合、剥離剤がヒドロキシ末端基を持ちポリカーボネート含有ブレンド中のシリコーン化合物の相溶性を向上することが好ましい。
【0058】
本発明に係る高分子量または超高分子量シリコーン剥離剤としては、例えば、MB50−315およびMB−010などDow Corning社から市販されているものを挙げることができる。MB50−315はヒドロキシ末端ジメチルシロキサンポリマーである。しかし、受容層の組成によってはメチルおよびフェニルなどの有機末端基を使用できる。MB50−315シリコーン離型剤は、ポリカーボネートポリマー中に分散したペレット化固体ポリジメチルシロキサンの50質量%混合物として市販されている。受容層の組成によっては、他の分散体が好ましい場合もあり、例えば、ポリエステル中の分散体であるDow Corning社から市販されているMB50−010を挙げることができる。剥離剤は、受容層の固形分質量で、好適には0.5〜10%、好ましくは2〜10%、最も好ましくは3〜8%の量で使用される。
【0059】
〔受容層の形成〕
本発明に係る受容層は、溶融押出法で形成することを特徴の一つとする。
【0060】
本発明に係る溶融押出法による受容層の形成方法としては、まず受容層の形成に使用する各構成材料を十分に乾燥し、次いでこれらを配合操作で溶融混合する方法である。押出を困難にする可能性のある網目構造の形成を防止または最小限にし、熱転写インクシートと熱転写受容シートの粘着傾向を最小限にするため、前記ポリカーボネートとポリエステルは別々に加えるのが好ましい。この際、これらの材料と一緒に亜リン酸またはビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト等の有機亜リン酸など、リン含有安定剤を受容層全固形分に対し0.01〜1質量%程度添加することが好ましい。また、常温で液体、具体的には融点が79℃以下の可塑剤(例えば、ジオクチルセバケート等の脂肪族エステル系可塑剤)も添加できるが、その添加量は受容層全固形分に対し5質量%以下、更には2.5質量%以下に抑えることが、熱転写インクシートへの逆転写耐性並びに熱転写性保護層との接着性、更には画像保存性の観点で好ましい。また、本発明に係る融点または軟化点80〜140℃の範囲にある化合物もこの配合操作時に添加することができる。
【0061】
本発明に係る溶融押出方法を用いた受容層の形成方法については、例えば、特開2004−255878号公報の段落番号〔0099〕〜同〔0116〕に記載の方法を参照することができる。
【0062】
〔中間層〕
本発明に係る受容層を基材上に直接押出して形成する場合、一般的に基材との接着性が低下するため、基材と受容層との間に中間層を設けることが好ましい。
【0063】
中間層を構成するバインダーとしては、種々のポリオレフィン、LDポリエチレン、エチレンメタクリル酸等を含む樹脂が使用できるが、これらに種々の帯電防止剤あるいは帯電防止ポリマーを加えることで、接着機能のみならず、帯電防止機能も付与させることができる。
【0064】
〔基材〕
本発明の熱転写受容シートにおいては、本発明に係る受容層を保持する基材としては、例えば、Mobil社から市販されている微細空孔複合フィルム等を用いることができるが、ポリマー性、合成紙またはセルロース繊維紙基材またはそれらの積層体でよい。
【0065】
セルロース繊維紙基材を用いる場合、ポリオレフィン樹脂を用いて微細空孔複合フィルムを押出貼合わせすることが好ましい。これらを積層するプロセスにおいては、微細空孔フィルムの最小張力を保つことが望ましい。紙基材の裏面(すなわち、微細空孔複合フィルムおよび受容層とは反対の面)もポリオレフィン樹脂層(例えば、付与量10〜75g/m2)で押出被覆されていてよく、米国特許第5,011,814号明細書および同第5,096,875号明細書に開示されているものなどのバック層を含んでもよい。高湿度用途(相対湿度50%を超える)には、30〜75g/m2の裏面樹脂被覆率とすることが好ましく、更には35〜50g/m2であることが好ましい。
【0066】
また、銀塩写真と近似の触感を備えた熱転写受容シートと得る場合には、比較的厚い紙基材(例えば、120μm以上の厚さ、好ましくは120〜250μmの厚さ)および比較的薄い微細空孔複合フィルム(例えば、50μm未満の厚さ、好ましくは20〜50μmの厚さ、より好ましくは30〜50μmの厚さ)の使用が好ましい。
【0067】
本発明の熱転写受容シートは、熱転写インクシートと密着させて、像様加熱により、熱転写インクシートより熱昇華性色素を受容して、画像を形成する。以下、本発明に適用可能な熱転写インクシートについて説明する。
【0068】
《熱転写インクシート》
本発明において使用可能な熱転写インクシートは、基材上に各インク層を面順次に設けた構成をとる。3色画像、例えば、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像を形成する場合、上記の各色インク層を有する熱転写インクシートは、サーマルプリントヘッドにより熱が加えられる間、3回走査される。
【0069】
本発明において、熱転写インクシートで適用可能な色素としては、熱の作用で熱転写受容シートの受容層に転写可能であれば、どのような色素でも使用可能である。特に、昇華性色素を用いると特に良好な結果が得られている。熱転写インクシートの詳細に関しては、例えば、米国特許第4,916,112号明細書、同第4,927,803号明細書および同第5,023,228号明細書に記載されている方法を参照することができる。
【0070】
本発明に適用可能な熱転写インクシートとしては、シアン、マゼンタおよびイエロー色素を、連続反復領域に面順次で塗布してあるポリエチレンテレフタレート支持体を含んでなる熱転写インクシートが使用でき、各色素の転写工程が各色に対して連続的に実施されて3色からなる色素画像が得られる。
【0071】
熱転写インクシートに適用可能な色素としては、昇華性色素を用いると特に良好な結果が得られている。昇華性色素の例には、アントラキノン色素、例えば、Sumikaron Violet RS(商品名、住友化学工業社製)、Dianix Fast Violet 3R FS(商品名、三菱化学社製)、Kayalon Polyol Brilliant Blue N BGMおよびKST Black 146(商品名、以上、日本化薬社製);アゾ色素、例えば、Kayalon Polyol Brilliant Blue BM、Kayalon Polyol Dark Blue 2BMおよびKST Black KR(商品名、以上、日本化薬社製)、Sumikaron Diazo Black 5G(商品名、住友化学工業社製)およびMiktazol Black 5GH(商品名、三井東圧社製);Direct Dark Green B(商品名、三菱化学社製)およびDirect Brown MおよびDirect Fast Black D(商品名、以上、日本化薬社製)などの直接染料;Kayanol Milling Cyanine 5R(商品名、日本化薬社製)などの酸性染料;Sumiacryl Blue 6G(商品名、住友化学工業社製)およびAizen Malachite Green(商品名、保土ヶ谷化学社製)などの塩基性染料;あるいは米国特許第4,541,830号明細書に開示されている色素を挙げることができる。上記の色素を単独または組み合わせて用いると、単色が得られる。色素は0.05〜1g/m2の付着量で使用でき、好ましくは疎水性である。
【0072】
熱転写インクシートのインク層および保護層は、支持体上に塗布またはグラビア法などの印刷技術により印刷できる。
【0073】
熱転写インクシートの裏面にはスリップ層を設けて、プリントヘッドが熱転写インクシートに粘着するのを防ぐことができる。そのようなスリップ層は、固体または液体の滑剤またはその混合物を含んでいるだろうが、ポリマーバインダーまたは界面活性剤がある場合も無い場合もある。好ましい滑剤は、100℃未満で融解する油または半結晶有機固体であり、ポリビニルステアレート、蜜蝋、パーフルオロアルキルエステルポリエーテル、ポリカプロラクトン、シリコーンオイル、ポリテトラフルオロエチレン、カーボワックス、ポリエチレングリコールまたは米国特許第4,717,711号明細書;第4,717,712号明細書;第4,737,485号明細書および第4,738,950号明細書に開示されている物質がある。スリップ層に好適なポリマーバインダーには、ポリ(ビニルアルコール−コ−ブチラール)、ポリ(ビニルアルコール−コ−アセタール)、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、セルロースアセテートブチラート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートまたはエチルセルロースがある。
【0074】
熱転写インクシートに適用可能な基材としては、寸法安定性を有し、サーマルプリントヘッドの熱に耐えられる材料であれば特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミド;ポリカーボネート;グラシン紙;コンデンサー紙;セルロースアセテートなどのセルロースエステル;ポリビニリデンフルオライドまたはポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)などのフッ素ポリマー;ポリオキシメチレンなどのポリエーテル;ポリアセタール;ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはメチルペンテンポリマーなどのポリオレフィン;ならびにポリイミドアミドおよびポリエーテルイミドなどのポリイミド等を挙げることができ、2〜30μmの厚さをである。
【0075】
《熱転写保護シート》
また、上記熱転写インクシートにより熱転写受容シートに形成した画像上に、光、熱、化学物質等からの影響を防止する目的で、熱転写保護シートを用いて保護層を設けることが好ましい。
【0076】
熱転写保護シートを構成する熱転写可能な保護層としては、例えば、特開2003−266960号公報に記載の保護層を適用することができる。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0078】
《熱転写受容シートの作製》
〔熱転写受容シート1の作製〕
下記の構成からなる受容層を、溶融押出法により、米国特許第5,244,861号明細書に記載の38μmの厚さの微細空孔複合フィルム(OPPalyte 350TW、Mobile Chemical Co.)により積層されたペーパー基材上に形成して、熱転写受容シート1を作製した。なお、用いた溶融押出法は、特開2004−255878号公報の実施例の例1(段落番号〔0152〕〜同〔0162〕に記載の方法で、中間層(つなぎ層)も同時に形成)に記載の方法に準じて行った。
【0079】
〈受容層構成〉
2%の分岐剤を含むポリエステル 70.07%
ビスフェノールAポリカーボネート(LEXAN 151、GE社製) 12.78%
ジオクチルセバケート 5.13%
シリコーン系剥離剤(MB50−315、Dow Corning社製) 12.0%
亜リン酸 0.02%
〔熱転写受容シート2の作製〕
上記熱転写受容シート1の作製において、受容層の添加剤である2%分岐剤を含むポリエステルの添加量を45.2%、ジオクチルセバケートの添加量を30.0%にそれぞれ変更した以外は同様にして、熱転写受容シート2を作製した。
【0080】
〔熱転写受容シート3の作製〕
上記熱転写受容シート1の作製において、受容層の添加剤である2%分岐剤を含むポリエステルの添加量を37.2%に変更し、ジオクチルセバケートに代えて、ジシクロヘキシルフタレート(融点60℃)を50.0%使用し、更にシリコーン系剥離剤(MB50−315、Dow Corning社製)を除いた以外は同様にして、熱転写受容シート3を作製した。
【0081】
〔熱転写受容シート4〜14の作製〕
上記熱転写受容シート3の作製において、ジシクロヘキシルフタレートを、表1に記載の化合物及びその配合比に変更した以外は同様にして、熱転写受容シート4〜14を作製した。なお、熱転写受容シート8、14には、剥離剤として、Dow Corning社製のMB50−315を添加した。
【0082】
表1に、各熱転写受容シートの構成を示す。なお、表1に略称で記載した項目及び化合物の詳細は、以下の通りである。
【0083】
*A:受容層におけるポリエステル(PE)とポリカーボネート(PC)の含有率(質量%)
〈高融点化合物〉
*1:ジオクチルセバケート
*2:ジシクロヘキシルフタレート
*3:ステアリン酸カルシウム
*4:モンタン酸亜鉛
*5:カルナウバワックス
*6:ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド
*7:N−ステアリル12ヒドロキシステアリン酸アマイド
*8:2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)
*9:2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール
*10:ポリブチレンアジペート−ブチレンテレフタレート共重合体
《熱転写インクシートの作製》
特開2004−255878号公報の実施例(段落番号〔0168〕〜同〔0172〕に記載の方法)に記載の方法に従って、熱転写インクシートを作製した。
【0084】
《熱転写保護シートの作製》
特開2003−266960号公報の実施例(段落番号〔0062〕)に記載の保護層供与体要素I−9の作製方法に従って、熱転写保護シートを作製した。
【0085】
《画像形成》
抵抗体形状がスクエア(主走査方向長80μm×副走査方向長120μm)、解像度が300dpi(dpiとは、2.54cm当りのドット数を表す)のラインヘッドのサーマルヘッドを搭載した熱転写記録装置に、上記作製した各熱転写受容シートの受容層部と、同じく上記作製した熱転写インクシートのインク層とを重ね合わせてセットし、サーマルヘッドとプラテンロールで圧接しながら、順次印加エネルギーを増加させ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各ステップパターンパッチを、送り速度1.5msec/line、1ライン当たりの送り長さを85μmで、インク層の背面側から加熱して、熱転写受容シートの受容層上に各色素を転写させて、画像を形成した。その後、上記作製の熱転写保護シートを画像形成されている熱転写受容シートの受容層部と重ね合わせ、同様にして一様な印加エネルギーにて加熱し、画像形成されている熱転写受容シート上に保護層を転写させた。
【0086】
《形成画像の評価》
上記の様にして印画した各画像について、下記の方法に従って各評価を行った。
【0087】
(感度の評価)
上記の画像形成方法において、各熱転写受容シートを用いて、印加エネルギーを変化させながら画像形成を行い、Y、M、Cの各々の反射濃度1.0を得るのに要する印加エネルギーを測定し、その平均印可エネルギー値を求めた。熱転写受容シート1の平均印可エネルギー値を100としたときの相対エネルギー値で各熱転写受容シートの感度を評価した。この値が低い程、感度が高いことを示す。
【0088】
(保護シートの接着性の評価)
各色画像を印画した後の保護シートの転写過程での状態を目視観察し、下記の基準に従って、各熱転写受容シートに対する保護シートの接着性を評価した。
【0089】
◎:保護シートとの接着性が均一であり、色素の逆転写等の異常が全く認められない
○:保護シートとの接着が弱い箇所が僅かに存在するが、実用上全く問題のない品質
△:保護シートとの接着がやや弱い部分が認められ、わずかに剥離後の保護シートに色素の逆転写現象が認められる
×:保護シートとの接着が弱く殆ど転写されておらず、かつ剥離後の保護シートに色素の逆転写現象が顕著に認められる
(画像保存性の評価)
保護シート転写前の画像が形成された各熱転写受容シートを、65℃、50%RHの環境下で2週間保存した後、下記の基準に従って各熱転写受容シートの画像保存性を評価した。
【0090】
◎:保存後の画像形成部及び白地部の輪郭は、保存前の品質と同様に明瞭であり、滲みの発生が全く認められない
○:保存後の画像形成部及び白地部の輪郭は、保存前の品質とほぼ同等に明瞭であり、滲みの発生がほぼ認められない
△:保存後の画像形成部及び白地部の輪郭は、保存前に対しやや不明瞭であり、弱い滲みの発生が認められる
×:保存後の画像形成部及び白地部の輪郭は、保存前に対しかなり不明瞭となり、滲みの発生が顕著に認められる
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明の熱転写受容シートは、高速印画条件において高感度であり、かつ熱溶融転写性保護層との接着性に優れ、画像保存性も良好であることが分かる。また、融点または軟化点が80〜140℃の範囲にある化合物が、脂肪酸エステル系または脂肪酸アマイド系である場合、その効果が大きく、受容層固形分全体に対する含有率が25質量%以上の条件で、他の性能に支障をきたすことなく更に高感度であること、50質量%以上では同様に格段に高感度となることが分かる。また、同一条件においては、シロキサン含有ポリマー剥離剤を添加することにより、より保護層との接着性、画像保存性で有利となることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも1層の溶融押出法により形成された熱拡散性色素の受容層を有する熱転写受容シートにおいて、該受容層が、融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物を、該受容層の全質量の10質量%以上含有していることを特徴とする熱転写受容シート。
【請求項2】
前記融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物が、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸アマイドを主成分とするワックスであることを特徴とする請求項1に記載の熱転写受容シート。
【請求項3】
前記受容層の全質量に対する前記融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物の含有率が、25質量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写受容シート。
【請求項4】
前記受容層の全質量に対する前記融点または軟化点が80℃以上、140℃以下の範囲にある化合物の含有率が、50質量%以上であることを特徴とする請求項3に記載の熱転写受容シート。
【請求項5】
前記受容層が、離型剤として質量平均分子量が100,000以上のシロキサン含有ポリマーを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。