説明

熱転写性シートおよびその印画物

【課題】耐退色性や表面耐性に優れ、層端部からの光劣化反応を防ぎ、子供やペットが直接舐める等した場合でも身体への安全性が高く、さらに紫外線吸収能が充分にあり、かつバインダー樹脂が変色したりすることがない熱転写性シートおよびその印画物を提供する。
【解決手段】熱転写性シートにおいて、基材シートの一方の面の少なくとも一部に2層以上の転写性保護層を具備し、前記転写性保護層の最表層に紫外線吸収剤が含有されている。さらに、前記転写性保護層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量WBおよび前記転写性保護層に含まれる紫外線吸収剤の重量平均分子量wuとの比P(P=WB/wu)が、12≦P≦1300の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の画像記録装置で形成された画像に対し、特には染料を用いた画像に対して、保護するための保護層を具備した熱転写性シートに関する。さらに、種々の方法で加熱して転写する前記熱転写性シートを用いて保護した画像形成物(印画物)に関する。
【背景技術】
【0002】
上記している熱転写性シートは、サーマルリボンとも呼ばれ、例えば、基材シートの一方の面に熱転写性インク層、他方の面に耐熱滑性層(バックコート)を設けた構成のものがある。このような熱転写性シートを用い、サーマルプリンタのサーマルヘッドから所定の加熱を行い、熱転写性インク層の一部を溶融させて被転写媒体側に転写させるか、あるいは熱転写性インク層中の昇華性染料を昇華させて被転写媒体側に移行させることにより、所定の熱転写画像形成、すなわち印画が行われる。
【0003】
現在、熱転写記録方式はサーマルプリンタの高機能化が進み、各種画像が簡便に記録できることから、身分証明書等のカード類やアミューズメント用出力物等への画像情報の記録に広く利用されている。このような状況のもと、熱転写記録方式により得られる転写画像記録媒体の耐久性を求める声が大きくなり、近年では熱転写性シートを利用して記録された転写画像上に覆うように保護層を設け、転写画像記録媒体の耐久性を向上させることが数多く行われている。
【0004】
しかしながら、熱転写性シートを用いて熱転写記録方式により得られた転写画像記録媒体を太陽光や照明光等の下に長時間暴露した場合には、転写画像部が紫外線や大気中のオゾンの影響で退色し、記録が不鮮明となる問題があった。そこで、記録された転写画像に耐退色性を付与するため、紫外線吸収剤が配合された熱転写性の保護層を有する熱転写性シートを用いて、熱転写記録方式で転写画像上に保護層を設ける方法が採られている。
【0005】
下記特許文献1および特許文献2では、紫外線吸収剤を用いた層を具備させ、紫外線による退色や褐色化を回避しようとしている。しかし、この構成では最表層に紫外線吸収剤を混合させているが、表面耐性(硬度、耐スクラッチ性等)の向上については考慮されておらず、大気中のオゾンによる退色や褐色化、さらには異常転写への対策も考慮されていない。また、層端部からの光劣化反応が始まり退色を促進させてしまう懸念がある。
【0006】
また特許文献3では、熱転写後の印画物の最表層に紫外線吸収剤を含有する層が存在することになるため、上記同様、層厚み分の端部から画像部への劣化が生じたり、子供やペットなどが直接シート表面を舐めた場合に紫外線吸収剤成分による身体影響などの問題点がある。
【0007】
特許文献4では、前記保護層に熱転写性樹脂と紫外線吸収剤とを反応結合させている。
【0008】
特許文献5は主としてIDカードに関するものであるが、転写後の印画物においての最表層と転写接着に関する層には紫外線吸収剤は存在させず、紫外線吸収剤をバインダー樹脂に結合させた紫外線吸収層としている。この場合において、印画物の最表層への硬度の影響は出にくいと考えられるが、紫外線吸収能を維持するだけの層厚みや結合量が必要となり、その層分の厚みが厚すぎて、規定枚数分の巻き(ロール)にした際に印画装置に搭載できない可能性がある。または、厚みを適正にした場合に結合量が不足してしまい、紫外線吸収能が低下する恐れがある。
【0009】
特許文献6では、基材上の最表層に紫外線吸収剤を混合しているが、バインダー樹脂がポリエステル樹脂、エポキシ樹脂に限定されている。これらの樹脂では、画像上の色は保護することができるが、バインダー自体が変色をきたすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−315641号公報
【特許文献2】特許2000−71626号公報
【特許文献3】特開平8−324142号公報
【特許文献4】特許第4113899号公報
【特許文献5】特許第3345674号公報
【特許文献6】特許第2762751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の現状を鑑みて、耐退色性や表面耐性に優れ、層端部からの光劣化反応を防ぎ、子供やペットが直接舐める等した場合でも身体への安全性が高く、さらに紫外線吸収能が充分にあり、かつバインダー樹脂が変色したりすることがない熱転写性シートおよびその印画物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明において、上記の課題を解決するために、
請求項1の熱転写性シートは、基材シートの一方の面の少なくとも一部に2層以上の転写性保護層を具備し、前記転写性保護層の最表層に紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2の熱転写性シートは、前記紫外線吸収剤が含有された転写性保護層において、前記転写性保護層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量WBおよび前記転写性保護層に含まれる紫外線吸収剤の重量平均分子量wuとの比P(P=WB/wu)が、12≦P≦1300の範囲にあることを特徴とする。
【0014】
請求項3の印画物は、被転写媒体上に形成された画像と、前記画像の少なくとも一部を覆うように形成された2層以上の被転写保護層とを含み、前記被転写保護層が前記請求項1または前記請求項2に記載の熱転写性シートを用いて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱転写性シートが2層以上の転写性保護層を具備し、最表層に紫外線吸収剤を含有したことによって、これを用いた印画物の退色を防ぎ、かつ画像の光沢等の経時安定性を保ちつつ、子供やペットが直接舐めた場合でも身体に影響がないよう安全性を高めた熱転写性シートおよびその印画物が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の熱転写シートの構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の熱転写性シートを、図面に基づき詳細に説明する。
図1には本発明に係る熱転写性シートの一例として、基材上に3層積層されている場合の概略の断面構成が示してある。この熱転写性シートは、基材シート1の一方の面に、熱転写性インク層(イエロー)3、熱転写性インク層(マゼンタ)4、熱転写性インク層(シ
アン)5と、転写関連層7とが基材シート1の長手方向に順次設けられていて、前記転写関連層7は離型層6と転写性保護層8とからなる2層構成で、離型層6を介して基材シート1の一方の面に設けられている。そして、熱転写時には離型層6を基材シート1側に残したまま離型層6と転写性保護層8との界面で剥離するように設計されている。また前記転写保護層8は、剥離層9と接着層10の2層で構成されている。さらに、基板シート1の他方の面に耐熱滑性層2が設けられている。
【0018】
前記転写関連層7は、図1の例では3層構成で示したが、さらに中間層1、中間層2、・・のようにそれぞれ機能をもたせた中間層をさらに積層して多層構成とすることも可能であり、図1の構成に限らない。中間層にもたせる機能の一例としては、例えば、耐熱性向上層、印画シワ軽減層、あるいは印画紙の凹凸を吸収し平滑化する層、等が挙げられるが、これらに限らず、他の機能を持たせることもできる。
【0019】
前記基材シート1は、熱転写記録時における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度に優れた材料を用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等からなる合成樹脂製フィルム、あるいはコンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類等を単独で、またはこれらを組み合わせて使用することができる。これらの材料の中では、物性面、加工性、コスト面等を考慮するとポリエチレンテレフタレート製フィルムが好ましい。その厚さは、操作性や加工性等を考慮し、2〜50μm程度であればよいが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると2〜15μm程度がより好ましい。また、必要に応じ基材シート1の表面および/または裏面に易接着処理などを施しても構わない。
【0020】
耐熱滑性層2は、熱転写記録時にサーマルヘッドを加熱手段として用いる場合、特に必要とされるものであり、サーマルヘッドが融着しないため、また熱転写性シートをロールで巻き取った時に背面に位置する転写関連層やインキ層に貼り付かないため、あるいは熱転写性インク層の染料や顔料が移行しないために設ける。またさらに、離型性も有する。
【0021】
耐熱滑性層2の構成材料としては、以下に限定するものではないが、特には、離型性やすべり性を付与する機能性添加剤、バインダー、硬化剤、溶剤等を配合して調製した塗液を用いることが望ましい。その厚さは、乾燥膜厚で0.1〜5μm程度が望ましい。
【0022】
耐熱滑性層2の材料として具体的には、アクリルオリゴマーの紫外線硬化塗膜や、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド等の合成樹脂、あるいはこれらの合成樹脂に、硬化剤として、イソシアネート化合物、エポキシ硬化剤、フェノール硬化剤、メラミン硬化剤等を添加した組成物からなる硬化塗膜を挙げることができる。さらに、フッ素系、シリコーン系、アルキル系、アクリル系等の離型剤を添加したもの、あるいはシリコーンを共重合したものからなる硬化塗膜を挙げることもできる。
また、耐熱滑性層中には必要に応じて、フィラーが添加されていてもよい。添加するフィラーの一例としては、シリコーンあるいはフッ素パウダー、シリカおよびレジンパウダー、タルク、炭酸カルシウム、樹脂フィラー、モンモリロナイトのような天然鉱物、燐片状のフィラー等を挙げることができる。
【0023】
耐熱滑性層2を構成する塗液の塗布方法としては、通常の薄膜形成に際して用いられているディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、グラビア印刷法等の従来公知の薄膜形成方法を用いることが可能である。厚さは、塗液の種類や加工機や加工条件によって最適条件が異なり、特に限定されるものではないが、具体的には、乾燥後の厚さが0.1〜5μm程度、好ましくは0.5〜3μmであればよい。厚さが0.1μm未満の場合は、均一な塗膜が形成され難くなり、十分な耐熱性が得られない場合がある。
【0024】
熱転写性インク層3、4、5は、熱転写可能な染料または顔料を任意のバインダー樹脂で担持させてなる層である。前記染料または顔料としては、従来公知の熱転写性シートの昇華型あるいは感熱溶融型の熱転写性インク層中に使用されている染料または顔料のいずれもが使用可能であり、特に限定されるものではない。
【0025】
前記昇華型の熱転写性インク層の構成材料中に含ませる昇華性染料としては、昇華性分散染料が好ましく用いられる。具体的には、イエロー成分としては、ソルベントイエロー56、16、30、93、33、ディスパーイエロー201、231、33等が挙げられる。また、マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19が挙げられる。さらに、シアン成分としてはC.I.ディスパースブルー354、24、C.I.ソルベントブルー63、36等が挙げられる。
【0026】
前記昇華性染料を担持するバインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、エチレンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリビニルブチラール、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂が好適に用いられる。
【0027】
前記昇華型熱転写性インク層の構成材料中に含ませる染料とバインダーとの割合は、染料/バインダー=10/100(重量部比)から300/100程度が好ましい。染料/バインダーの割合が、10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られ難くなる。また、300/100を越えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、熱転写性インク層の保存安定性が悪くなって染料が析出し易くなってしまう。
【0028】
また、前記感熱溶融型の熱転写性インク層の構成材料中に含ませる染料としては、以下に限定するものではないが、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオロラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の一般に使用されている感熱転写性染料を挙げることができる。
【0029】
また、前記感熱溶融型熱転写性インク層の構成用材料中に含ませる顔料としては、以下に限定するものではないが、公知の有機顔料または無機顔料、具体的には、カーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キクナリドン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、イソインドリン系等の顔料を挙げることができる。
【0030】
またこれらの顔料を担持するバインダー樹脂としては、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン
ゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類を挙げることができる。中でも、ポリエステル、エポキシ樹脂は好適に用いられる。
【0031】
前記感熱溶融型熱転写性インク層中に含ませる染料および/または顔料(以下、色材成分とする)とバインダーとの割合は、色材成分/バインダ=1/100(重量部比)から200/100程度が好ましい。これは、色材成分/バインダーの割合が、1/100を下回ると、色材が少な過ぎて良好な熱転写画像が得られ難くなるからであり、また、200/100を越えると、溶融熱型熱転写性インク層の凝集力が極端に低下するため、熱転写性インク層の保存安定性が悪くなってしまうからである。
【0032】
転写関連層7は、前記基材シート1において前記熱転写性インク層3、4、5と同じ側の面に設けられている。この転写関連層7は、少なくとも離型層6と転写性保護層8との複層構成で、離型層6を介して基材シート1の上に設けられていて、感熱転写記録時には離型層6を基材シート1側に残したまま、離型層6と転写性保護層8との界面で剥離して被転写媒体側に転写性保護層8が転写されるようになっている。
そして離型層6は、1種からなる樹脂でも、2種以上の樹脂を含む場合でもよく、基材シート1との密着性が良好であればよく、常態では転写性保護層8と密着しているが、熱転写時において転写性保護層8と転写不良なく剥離する。
【0033】
また、前記離型層6が不要な場合もある。例えば、剥離層9と基材シート1の表面との密着状態が、常態では密着していて密着不良による揉み落ち等が発生せず、転写による加熱時にのみ基材シート1から剥離層9がきれいに剥離して全面転写ができ、必要な光沢が得られる場合である。
【0034】
前記離型層6の構成材料としては、以下に限らないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ゴム、環化ゴム等の天然ゴム誘導体や、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等の繊維素誘導体、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアセタール系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系、オレフィン系等の熱可塑性樹脂、メラミン系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0035】
これらの材料の中から、少なくとも2種以上の樹脂を選択し、そのうちの1種は基材シート1のメインバインダーと同系の樹脂となるようにして離型層6の構成材料を調整し、基材シートとの密着性をコントロールすることも出来る。
より具体的には、基材シートがポリエステル系の樹脂製フィルムである場合は、ポリエステル系樹脂と他の樹脂を共用の溶剤中に混合して調製したものを用いればよく、基材シートがポリスチレン系の樹脂製フィルムである場合は、ポリスチレン系樹脂と他の樹脂を共用の溶剤中に混合して調製したものを用い、薄膜状にして設ければよい。
【0036】
前記離型層6の構成材料において、基材シート1のメインバインダーと同系の樹脂の添加量は、メインバインダーを100重量部とした場合は0.2〜40重量部、好ましくは0.5〜25重量部程度であり、樹脂の相溶性、溶解溶剤、乾燥条件、さらには、剥離層に使用の樹脂との相性等を考慮し、適宜選択すればよい。
この場合、両者は出来る限り相溶している方が好ましいが、必ずしも相溶しなければならないということではなく、共用の良溶剤で混合し、完全に相溶しなくとも、均一に分散していて、透明であれば構わない。
但しその場合、乾燥塗面に分離やはじきが生じて海島状になってしまったり、塗膜の表
面、あるいは裏面等へ偏析してしまったり、経時で偏析するような不具合がないように留意する必要がある。
【0037】
前記転写関連層7の一部を構成する転写性保護層8は、被転写媒体上に記録された転写画像を覆うように転写させ、転写画像を保護するための層であって、転写画像を傷、紫外線やオゾン等から保護する役割や意匠性としての光沢等が要求されると同時に、熱転写法により被転写媒体上に転移させるものであるため、常時は被転写媒体に対する接着性を備えていると共に、熱転写時に基材シート側から容易に剥離する剥離性も兼ね備えている必要がある。
【0038】
このような要求を満たすべく、本発明の熱転写性シートにおいては、この転写性保護層8は、少なくとも剥離層9と接着層10とを具備する複層構成にしている。そして、この転写性保護層8は剥離層9と前記離型層6とが接するようにして、前記離型層6の上に積層して設けてある。前述のように2層以上としても構わなく、機能性を持たせた中間層を加えて具備させてもよい。
【0039】
前記剥離層9は、被転写媒体上に転写されると最表層に位置するようになるが、透明性、耐摩擦性、耐汚染性、耐スクラッチ性、離型性、硬さ、耐熱性、耐オゾン性、光沢等の意匠性等の諸特性が必要とされる場合がある。
【0040】
この剥離層9を構成するバインダーとしては、以下に限らないが、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等を含むアクリル系樹脂やスチレンとの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が用いられる。
また、ポリカーボネート等のエンジニアリングプラスチックやスーパーエンプラ等も溶解溶剤、粘度、硬さ等の観点からも使用することもできる。中でも、アクリル系樹脂、セルロース誘導体を挙げることができる。
【0041】
芳香環を持つ樹脂が好ましく用いられる場合もある。それは、芳香環の持つ、面環構造とその芳香環の絡み合いによる立体障害、樹脂の緻密性による表面の堅さ、芳香族面構造などで、前述した必要物性を持った上で、耐オゾン性を付与できる。但し、芳香環による黄変性が懸念されるので、使用上注意が必要である。
【0042】
芳香環を有する樹脂の例としては、以下に限らないが、例えば、スチレン樹脂、キシレン樹脂、フェノール系樹脂、ABS樹脂、フェノキシ樹脂、ACS樹脂、AES樹脂、アニリン樹脂、イソシアネート樹脂、芳香環ポリイミド樹脂、オキセタン樹脂、フタル酸樹脂、エステル系樹脂、テレフタル酸樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、レゾール樹脂、アセナフチレン、ナフタレンなどの芳香族樹脂、AS樹脂、ABC樹脂、ASA樹脂、SAS樹脂、ACS樹脂、AMA樹脂、MS樹脂、MBS樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、PEEK樹脂、PEKK樹脂、PSU樹脂、PES樹脂、ベンゾフェノン、PBI樹脂、キナゾリン系樹脂、カーボネート樹脂等、さらに、芳香環を持つエンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックを挙げることができる。もちろん、上記の芳香環を持つ樹脂との共重合樹脂や、上記樹脂単体や混合体にしても構わない。
【0043】
接着層10を構成する樹脂と芳香環を有する樹脂を混合あるいは共重合させることにより、相溶性の問題を回避できる。さらには、その混合量を自由に変えることができ、分子量を大きくすることにより、塗膜化した際の層内樹脂比重や自由移動体積を密にコントロールできる。剥離層9および接着層10は、必要に応じて、硬化剤を用いて硬化塗膜とすることもできる。但し、特に接着層10に関しては、耐熱性と同時に転写性も兼ね備えるようにすることができる。
【0044】
剥離層9には紫外線吸収剤を添加せず、紫外線吸収能は接着層10にもたせることにより、各層の耐色性に対する役割を分担させることができる。それは、次の理由による。まず被転写媒体上に熱転写性保護層8が転写された際、被転写画像の直上に接着層10が存在するので、この接着層10に含まれる紫外線吸収剤の作用により、紫外線による層端部からの退色や色分解を避け、印画色を有効に保護できる。さらに、剥離層9は被転写媒体上の最表面に位置しており、紫外線吸収剤が含まれないので、印画物を子供やペットが舐めたりした際の身体安全性をより高めることができる。
【0045】
剥離層9は被転写媒体上の最表面に位置するので、耐オゾン性だけでなく、透明性、耐摩擦性、耐汚染性、耐スクラッチ性、離型性(転写性)、硬さ、意匠性(光沢)、密着性などが必要となる。そのために、オゾン性や光沢、密着性、転写性を損なわない程度に、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、シリコーンパウダー、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、サチンホワイト、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロサイト、水酸化マグネシウム等の無機フィラー、アクリル系プラスチックピグメント、スチレン系プラスチックピグメント、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン樹脂等の有機フィラー、PEやカルナバ、パラフィン等のワックス、シリコーン、フッ素等の離型剤を適宜添加してもよい。これらは、液状であっても固形であってもよく、またその形状も特に限定されるものではなく、燐片状、真球状等の種々の形状のものの中から適宜のものを選択して用いればよい。
【0046】
但し、特に熱転写時の容易な剥離転写性を求めるがあまり、剥離層に離型性のある添加剤を多く添加しすぎてしまうと、経時でのブリード等により、熱転写時以外のときにも、接着層あるいは離型層との間で剥離が生じてしまうことがあるため、適切な添加量を選択する必要がある。剥離層9の厚さは、0.2〜5μm程度(乾燥厚)、より好ましくは、0.3〜2.0μm(乾燥厚)程度であればよい。
【0047】
接着層10に要求される基本的な物性は、熱転写により被転写媒体側に移って保護層を形成すること、転写時の膜切れがよいこと、被転写媒体に対する熱接着性がよいこと、透明性がよく、転写画像記録媒体の転写画像の鮮明さを損なわないこと、さらに、紫外線吸収能を保持すること、そして、耐オゾン性を有すること、等である。
本発明では、印画物を得る際に、紫外線吸収剤の能力を最大限に発揮できるように設計し、そのほかの光沢や転写性、安全性などにも、最大限配慮した構成としている。
【0048】
接着層10の構成材料としては、以下に限るものではないが、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチ
レン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類である。
中でも、アクリル系樹脂、ポリエステル、エポキシ、フェノキシ樹脂等が挙げられる。もちろん、熱転写接着性を持たせることができれば、熱可塑性樹脂に限定することはなく、熱硬化性樹脂や上記熱可塑性樹脂に硬化剤を混合したものでも構わない。しかし、透明性が高く、耐光性の高い点でアクリル樹脂系が好ましい。
【0049】
本発明では、当該層のバインダーの重量平均分子量(WB)と紫外線吸収剤の重量平均分子量(wu)との比P(P=WB/wu)を規定した。比Pが1300より大きい場合、バインダーの分子量WBが大きすぎるか、紫外線吸収剤の分子量wuが小さすぎるかのどちらかである。
すなわち、バインダー分子量が大きすぎる場合には、高粘度で塗布しにくく、あるいは溶剤溶解性に乏しくなったり、熱転写時の粘性が上昇し、目的の界面で転写しにくくなるという不具合がある。また、紫外線吸収剤の熱転写時の拡散を阻害してしまったり、紫外線吸収剤のバインダーへの溶解量にも影響する。
一方、紫外線吸収剤の分子量が小さい場合は、拡散が大きくなりすぎて、隣接する各層への拡散のおそれもある。
逆に比Pが12より小さい場合は、バインダーの分子量が小さいことが考えられ、粘度が低くなるので、塗布に関しては良好な方向に推移し多層との密着性も向上するが、一方で膜が脆くなり、転写性に劣る可能性がある。または、紫外線吸収剤の分子量が大きいことが考えられるが、この場合は紫外線吸収剤がバインダーに対して溶解しにくく、逆に拡散もしにくいため、層中への均一な分布が妨げられ、紫外線吸収剤の効果が有効に発揮されにくくなるおそれがある。
これらのことから、本発明では、紫外線吸収剤の分子量とバインダーの分子量の比Pを、12≦P≦1300とするように規定した。この条件により、効率的に紫外線吸収剤が作用することができる。
また本発明では、印画画像面の直上に紫外線吸収剤を含有する接着層10が存在することで保護効果が促進されること、さらに印画物の最表層において紫外線吸収剤が含まれないため、より安全性も高められていること等の効果を、効率的に複合化することができる。
なお、本発明では反応性でない紫外線吸収剤を用いている。熱転写時には主として基材シート上の最表層が軟化し転写接着するが、その際に紫外線吸収剤は形成画像の表面や端部に至るまで最表層中にくまなく拡散し存在させることができる。
【0050】
接着層10の構成材料中に混入させる機能性添加剤として、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系に代表される光安定剤のほかに、ヒンダードフェノール系に代表される熱酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、等を挙げることができる。これらの添加剤は、必要とされる諸物性に影響のない程度に前述した剥離層10に混合することができる。
本発明では、特に紫外線吸収剤や光安定剤を接着層10に混合することにより、熱転写時にも満遍なく紫外線吸収能がいきわたり、効率的に画像の退色を防ぐことができる。
また、印画物の最表層に紫外線吸収剤や光安定剤を混合していないので、種々の環境下で表面にブリードする可能性が低くなり、出てきたとしても濃度が低く、安全性がより高く、光沢の経時低下も防ぐことができるという効果を奏する。
【0051】
接着層10は、前述のような機能性添加剤、バインダ、溶剤などを配合して塗液を調製し、薄膜状にして設ければよい。剥離層の厚さは、0.2〜5μm程度(乾燥厚)が好ましいが、これに限定されない。
【0052】
接着層10に添加混合する紫外線吸収剤は、具体的には、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、サリチレート系のものや、これらを含む、特開昭59−196292号公報、特開昭59−158287号公報、特開昭63−74686号公報、特開昭59−196292号公報、特開昭62−229495号公報、特開昭63−122596号公報、特開昭61−283595号公報、特開平1−204788号公報等に記載の化合物、および写真その他画像記録材料における画像耐久性を改善する公知の化合物を挙げることができる。
【0053】
その一つのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体を例示でき、これらを単独でまたは複数を混合して使用できる。
【0054】
また、トリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどやこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体が挙げられる。
【0055】
紫外線吸収剤の量は、その紫外線吸収剤の紫外線吸収能や樹脂との相溶性にもよるが、樹脂100重量部に対し、3〜200重量部、好ましくは、5〜100重量部程度で添加させる。
添加量が3重量部未満の場合、熱転写性保護層中において十分な紫外線吸収能を発揮することができない場合がある。また、200重量部を超えると、層中の凝集力にも影響を及ぼし、樹脂層の靭性が低下したり、透明性に欠けたり、ブロッキングしたりする場合もあるからである。
また、紫外線吸収剤は耐オゾン性の付与に寄与するものもあり、接着層自身の保護および画像保護の点から、その添加量を適宜決定することができる。
【0056】
また、紫外線吸収剤の他に、ヒンダードアミン系の光安定剤を添加することもできる。ヒンダードアミン系の光安定剤としては、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシラート等が例示できる。
【0057】
本発明の一例として、前記のように3層構成で説明したが、それ以上でも構わない。 前記剥離層、接着層、および中間層のバインダー樹脂は同一のものである必要はなく、機能に応じ異なる樹脂を組み合わせて用いたり、あるいは一部異なる樹脂を積層することができる。また、剥離層および接着層を形成する際の乾燥後の残留溶剤分に対して適宜配慮することが好ましい。
【0058】
本発明は、基材シート上に2層以上の保護層を具備させた熱転写性シートであり、前述のように、1つは印画面直上に紫外線吸収剤を含む層を具備することにより、端部からの退色、分解が生じないため、印画物をより長期に渡り保護することができる。
色の分解は一度始まると連鎖反応で分解反応が連続化、促進され、停止反応が上回らないとその退色、分解は停止しないので、前記保護層による耐退色性効果は非常に大きい。
また、万が一、乳幼児などの子供やペットなどが直接表面を舐めたりしても、紫外線吸収剤などの有害成分が表面に存在しないので、身体影響は最小限に抑えることができる。
【0059】
なお、熱転写性インキ層、離型層、剥離層および接着層の形成方法としては、いずれも、グラビアコート法、スロットコート法といった公知の塗り分け可能な薄膜形成方法が採用でき、各層は各層形成用の塗液で薄膜を塗布し、乾燥させて形成することができる。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
以下、実施例に基づいて詳述する。
まず基材シート1として、厚さ5μmの易接着処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(ダイヤホイル:三菱化学ポリエステルフィルム製)を用いた。そして、耐熱滑性層2の材料としてポリエステルポリオール樹脂を100重量部、イソシアネート硬化剤を10重量部(タケネート:三井化学ポリウレタン製)、滑剤を1重量部(燐酸エステル:第一工業製薬製)用い、メチルエチルケトン36重量部、トルエン36重量部からなる混合溶剤に溶解させコーティング剤を作製した。作製したコーティング剤を基材シート1の非易接着側の面にグラビアコートにより乾燥膜厚1.0μmになるように形成し、耐熱滑性層2を得た。
【0061】
感熱性インク層3(イエロー)は、C.I.ソルベントイエロー93を3.0重量部、C.I.ソルベントイエロー16を1.0重量部、ポリビニルアセタール樹脂を5.0重量部(デンカブチラール:電気化学工業製)用い、メチルエチルケトン45重量部、トルエン45重量部からなる混合溶剤に溶解させて転写性インク層(イエロー)の塗液を作製した。
【0062】
感熱性インク層4(マゼンタ)は、C.I.ディスパースレッド60を1.5重量部、C.I.ディスパースバイオレット26を1.5重量部、ポリビニルアセタール樹脂を5.0重量部(デンカブチラール:電気化学工業製)用い、メチルエチルケトン46重量部、トルエン46重量部からなる混合溶剤に溶解させて転写性インク層(マゼンタ)の塗液を作製した。
【0063】
感熱性インク層5(シアン)は、C.I.ソルベントブルー63を1.5重量部、C.I.ソルベントブルー36を1.5重量部、ポリビニルアセタール樹脂を5.0重量部(デンカブチラール:電気化学工業性)用い、メチルエチルケトン46重量部、トルエン46重量部からなる混合溶剤に溶解させ転写性インク層(シアン)の離型層用塗液を作製した。
【0064】
離型層6としては、酢酸セルロース樹脂(ダイセル化学製)を5重量部、ポリエステル系樹脂を0.5重量部用い、メチルエチルケトン89.7重量部、シクロヘキサノン5重量
部の混合液に溶解させて、離型層の塗液を作製した。
【0065】
剥離層9は、アクリル系樹脂を100重量部(ダイヤナール:三菱レイヨン製)用い、メチルエチルケトン50重量部、トルエン50重量部からなる混合溶剤に溶解させて、剥離層用の塗液を作製した。
【0066】
接着層10はアクリル系樹脂:重量平均分子量:250000の樹脂100部とベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤:重量平均分子量:510を20重量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1重量部、熱酸化防止剤を1部用い、メチルエチルケトン50重量部、トルエン50重量部からなる混合溶剤に溶解させて接着層用の塗液を作製した。
【0067】
上記のように作製された塗液を、グラビアコート法により基材シート1の易接着側の面に、熱転写性インク層3(イエロー)、熱転写性インク層4(マゼンタ)、熱転写性インク層5(シアン)を乾燥膜厚1.0μmで面順次に形成した後、離型層形成用の塗液を用いて、離型層6を乾燥膜厚0.1μmで面順次に形成した後、この離型層6上に、剥離層用の塗液を用いて、乾燥膜厚0.5μmで剥離層9を形成した後、さらに引き続いて、剥離層9上に接着層用の塗液を用いて、乾燥膜厚3.0μmで接着層10を形成し、本発明の熱転写性シートを作製した。
【0068】
(実施例2)
上記実施例1と同様に剥離層9まで形成し、その上に、接着層10として、アクリル系樹脂:重量平均分子量:350000の樹脂と紫外線吸収剤:重量平均分子量:850を20重量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1重量部、熱酸化防止剤を1部用い、メチルエチルケトン50重量部、トルエン50重量部からなる混合溶剤に溶解させて接着層用の塗液を作製した。
【0069】
(比較例1)
上記実施例1と同様に剥離層9まで形成し、その上に、接着層10として、アクリル系樹脂:重量平均分子量:350000の樹脂と紫外線吸収剤:重量平均分子量:192を20重量部、ヒンダードアミン系光安定剤1重量部、熱酸化防止剤1部を用い、メチルエチルケトン50重量部、トルエン50重量部からなる混合溶剤に溶解させて接着層用の塗液を作製した。
【0070】
(比較例2)
上記実施例1と同様に剥離層9まで形成し、その上に、接着層10として、アクリル系樹脂:重量平均分子量:8000の樹脂と紫外線吸収剤:重量平均分子量:850を20重量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1重量部、熱酸化防止剤を1部用い、メチルエチルケトン50重量部、トルエン50重量部からなる混合溶剤に溶解させて接着層用の塗液を作製した。
【0071】
(性能比較)上記の実施例および比較例で作製した熱転写性シートを、下記の手順で性能比較評価を実施した。
(1)密着性
実施例1、2および比較例1、2で作製した熱転写性シートの転写関連層(3層:離型層、剥離層、接着層)について、温度40℃・湿度65%環境下に14日間保存した。その後、保管前後の当該転写関連層の上にセロテープ(登録商標)(ニチバン製、25mm幅)を常温でゴムローラーで貼り合せ、5分後、それを剥離試験機にて、180度方向上方に剥離(オリエンテック製、剥離速度:30mm/min、25mm幅)し、剥離強度を測定した。
評価判定:
○:保管後の剥離強度が保管前の剥離強度の95%以上の強度である。
×:保管後の剥離強度が保管前の剥離強度の95%未満の強度である。
【0072】
(2)耐光性
実施例1、2および比較例1、2で作製した熱転写性シートを、室温(23℃、50%)に十分におかれた熱転写プリンターで、感熱インキ層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、転写関連層(3層:離型層、剥離層、接着層)の順全画面印画し、黒ベタを印画した。その印画物について、キセノンウエザーメーター(400mJ/cm2)にて、BP63℃で240時間照射し、マクベス反射濃度計で初期値OD=1.0の色について、耐光試験前後での反射濃度の差を測定した。
評価判定:
○:耐光試験後のOD値の低下が0.2未満 ( )内はOD値
×:耐光試験後のOD値の低下が0.2以上 ( )内はOD値
【0073】
(3)光沢
実施例1、2および比較例1、2で作製した熱転写性シートを、室温(23℃、50%)に十分におかれた熱転写プリンターで、感熱インキ層Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、転写関連層(3層:離型層、剥離層、接着層)の順全画面印画し、黒ベタを印画した。その印画物について、表面光沢度計(HORIOBA製)で60度反射光沢を測定し、その後、40℃65%の環境下で7日間保管した後の光沢度も測定した。
評価判定:
○:光沢差(初期光沢値―保存後光沢値)が±1.0未満
×:光沢差(初期光沢値―保存後光沢値)が±1.0以上
【0074】
(4)紫外線吸収剤残存性(表面存在性)
実施例1、2および比較例1、2で作製した熱転写性シートの転写関連層(3層:離型層、剥離層、接着層)を、25μ厚みのPETフィルムに、加熱ロールで転写し、PET、接着層および剥離層の構成の熱転写性シートを形成した。その熱転写性シートにおいて、分光光度計(日立製作所製)で、透過で分光吸収を測定し、354nmの吸収ピークの値を得る。その後、40℃65%の環境下で7日間保管した後、剥離層側表面を乾いたキムワイプで5往復し、表面に浮き出た紫外線吸収剤を拭き取り、再度、分光測定を行った。
評価判定:
○:354nmの吸収ピーク値が保管前の吸収ピーク値の95%より高く保持。
×:354nmの吸収ピーク値が保管前の吸収ピーク値の95%以下。
【0075】
下記表1に、以上の性能比較評価結果を示した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の熱転写性シートは、種々の画像記録装置で形成された画像に対し、特には染料を用いた画像に対して、保護するための層を具備した熱転写性シートにおいて利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 ・・・基材シート
2 ・・・耐熱滑性層
3 ・・・感熱性インキ層(イエロー)
4 ・・・感熱性インキ層(マゼンタ)
5 ・・・感熱性インキ層(シアン)
6 ・・・離型層
7 ・・・転写関連層
8 ・・・転写性保護層
9 ・・・剥離層
10・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面の少なくとも一部に2層以上の転写性保護層を具備し、前記転写性保護層の最表層に紫外線吸収剤が含有されていることを特徴とする熱転写性シート。
【請求項2】
前記紫外線吸収剤が含有された転写性保護層において、前記転写性保護層に含まれるバインダー樹脂の重量平均分子量WBおよび前記転写性保護層に含まれる紫外線吸収剤の重量平均分子量wuとの比P(P=WB/wu)が、12≦P≦1300の範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の熱転写性シート。
【請求項3】
被転写媒体上に形成された画像と、前記画像の少なくとも一部を覆うように形成された2層以上の被転写保護層とを含み、前記被転写保護層が前記請求項1または前記請求項2に記載の熱転写性シートを用いて形成されていることを特徴とする印画物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−274513(P2010−274513A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128866(P2009−128866)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】