説明

熱転写記録媒体および熱転写記録方法

【課題】本発明は、画像耐久性が高く高濃度で鮮鋭性に優れた画像が得られる溶融転写方式の熱転写記録媒体および熱転写記録方法において、低階調域と高階調域の階調性特に高濃度域のドット間のツブレによる階調表現の悪化を緩和し滑らかな階調表現のカラー画像を得ることができる熱転写記録媒体および熱転写記録方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも支持体(2)上に、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂、着色顔料および熱により昇華或いは拡散する染料を含有する熱転写インキ層(3)を設けた熱転写記録媒体(1)において、加熱手段を用いた熱転写記録方式により、前記熱転写記録媒体(1)における熱転写インキ層(3)を転写する際に該熱転写インキ層(3)の染料が前記熱転写媒体(1)の支持体(2)側に昇華或いは拡散するように形成されていることを特徴とする熱転写記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドプリンタ等で着色顔料及び染料を含有する熱転写インキ層を受像シート上に熱転写し、更に詳しくは、少なくとも2色以上の色を重ねてフルカラー画像などを形成するための熱転写記録媒体および熱転写記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーマルヘッドプリンタ等を用いて階調画像を形成する熱転写記録方式としては、昇華転写方式と溶融転写方式が知られている。 前記昇華転写方式は、昇華性(熱移行性)染料とバインダー樹脂とからなる染料インキ層を支持体上に設けた熱転写記録媒体を受像シートと重ね、サーマルヘッド等の熱量に応じて熱転写インキ層中の昇華型染料を受像シート上に移行させ階調画像を形成するものである。
【0003】
しかしながら、このような昇華性染料を用いて画像を形成した場合、形成された該画像は耐久性が劣り、耐熱性や耐光性を要求する分野への利用が制限される。また、感熱記録感度が溶融転写方式と比べ低いため、高濃度域の画像形成には多くの電力を必要とし乾電池などのバッテリー駆動によるプリンターの小型軽量化、将来実用が期待されている高解像力サーマルヘッド等を用いる高速記録材料としては適していない等の欠点を有している。
【0004】
一方、前記溶融転写方式は、支持体上に顔料などの色材とワックスなどの結合剤からなる熱溶融性の熱転写インキ層を設けた転写シートを用いてサーマルヘッド等の加熱デバイスに画像情報に応じたエネルギーを印加し、受像シート上に熱転写インキ層を融着させて画像を形成させる方式である。該溶融転写方式によって形成される画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字、線画等の2値画像の記録に適している。また、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックよりなる熱転写シートを用いて、受像シート上に重ねて画像を形成することにより、カラー画像の形成も可能である。このようなカラー画像形成用熱転写シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載の熱転写シートの場合、低融点の結晶性ワックスをインキ層の結合剤として用いているため、インキの滲みによって解像力の低下が発生しやすい。また転写画像の定着強度が弱く、画像部を手で強く擦ると画像部がとれてしまう。このような現象を解決する方法として種々の提案がなされてきた。
【0006】
例えば、65%以上の非晶質ポリマーと離型性物質と着色剤よりなる感熱インキ層を有する感熱転写シートが提案(例えば、特許文献2参照。)されている。しかしながら、この感熱転写シートも、結晶性ワックスを含むため、各色の重ね印画を行った部分の定着強度は不十分なものとなっている。
【0007】
そこで、ワックスを使用せずエポキシ樹脂と着色顔料と微粒子を主成分とし、インキの滲みによる解像度の低下を防ぎ、画像の耐久性を増し更に熱転写インキ層の箔切れ性が良く、且つ転写画像の光学濃度も高い熱転写記録媒体が提案(例えば、特許文献3参照。)されている。
【0008】
上記特許文献3のような着色顔料と樹脂、微粒子を主成分とした溶融転写方式では画像耐久性が高く、インキの滲みによる解像度の低下が少ない高濃度で鮮鋭性に優れた画像が得られるものの、カラー画像の階調表現はドットの面積階調であり、特に低濃度域のドットの粒状感、ざらつきと高濃度域のドット間のツブレが目立ち滑らかな階調表現が難しく
なっている。
【0009】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】特公昭63−65029号公報
【特許文献2】特開昭61−244592号公報
【特許文献3】特開2001−96922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、画像耐久性が高く高濃度で鮮鋭性に優れた画像が得られる溶融転写方式の熱転写記録媒体および熱転写記録方法において、低階調域と高階調域の階調性、特に高濃度域のドット間のツブレによる階調表現の悪化を緩和し滑らかな階調表現のカラー画像を得ることができる熱転写記録媒体および熱転写記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも支持体(2)上に、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂、着色顔料および熱により昇華或いは拡散する染料を含有する熱転写インキ層(3)を設けた熱転写記録媒体(1)において、加熱手段を用いた熱転写記録方式により、前記熱転写記録媒体(1)における熱転写インキ層(3)を転写する際に該熱転写インキ層(3)の染料が前記熱転写媒体(1)の支持体(2)側に昇華或いは拡散するように形成されていることを特徴とする熱転写記録媒体である。
【0012】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1記載の熱転写記録媒体において、加熱手段のエネルギー量により転写される熱転写インキ層(3)の光学濃度が変わることを特徴とする熱転写記録媒体である。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、少なくとも支持体(2)上に、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂、着色顔料および熱により昇華或いは拡散する染料を含有する熱転写インキ層(3)を設けた熱転写記録媒体(1)を用いた熱転写記録方法であって、加熱手段を用いた熱転写記録方式により、前記熱転写記録媒体(1)における熱転写インキ層(3)を転写する際に任意の温度と時間からなるエネルギーより、高い温度及び/又は長い時間からなる高エネルギーで熱転写インキ層(3)の染料を前記熱転写記録媒体(1)の支持体(2)側に昇華或いは拡散させて転写される熱転写インキ層(3)の光学濃度を下げることを特徴とする熱転写記録方法である。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、請求項3記載の熱転写記録方法において、加熱手段のエネルギーを段階的に変化させて階調画像を形成することを特徴とする熱転写記録方法である。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、請求項3又は4記載の熱転写記録方法において、前記熱転写インキ層(3)が、シアンに着色された層、マゼンタに着色された層およびイエローに着色された層の少なくとも3層を有し、前記3層を順次転写してフルカラー画像を形成することを特徴とする熱転写記録方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の熱転写記録媒体および熱転写記録方法は、少なくとも支持体上に、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂、着色顔料および熱により昇華或いは拡散する染料を含有する熱転写インキ層を設けた熱転写記録媒体において、加熱手段を用いた熱転写記録方
式により、前記熱転写記録媒体における熱転写インキ層を転写する際に熱転写インキ層の染料が前記熱転写媒体の支持体側に昇華或いは拡散するように形成されていることを特徴とする熱転写記録媒体を使用することで、加熱手段のエネルギーによって熱転写インキ層から染料が支持体側に染料が移行し転写される熱転写インキ層の光学濃度が変化する。これにより通常の溶融転写方式では加熱手段のエネルギーが高いほど熱転写インキ層の転写量が多くなり光学濃度も高くなるが、本発明の熱転写記録媒体では、任意の温度と時間からなるエネルギーより高い温度及び/又は長い時間からなる高いエネルギーでは熱転写インキ層の染料が支持体側に移行し転写され、該熱転写インキ層の光学濃度は下がることとなる。すなわち、熱転写時に過度のエネルギーを与えた場合に、該インキ層の染料が支持体側(受像シート側ではなく)に昇華し、光学濃度が低下する。(インキの転移量が減る)。これにより、特に高濃度領域での滑らかで微妙な濃度表現が可能となる。ここで加熱手段のエネルギーを段階的に変化させることで転写される熱転写インキ層の光学濃度を任意に変えることができ階調画像を形成することができるようになる。また、熱転写インキ層が、シアンに着色された層、マゼンタに着色された層およびイエローに着色された層の少なくとも3層を有すれば、前記3層を順次転写してフルカラー画像を形成することができる。ここで転写される熱転写インキ層はドットによる面積階調に加え、染料の支持体側への移行による熱転写インキ層の濃度階調が加えることができ、特に高濃度領域では滑らかで微妙な濃度表現が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明に係る熱転写記録媒体の層構成の1実施例を示す側断面図であり、図2は本発明に係る熱転写記録媒体の層構成のその他の実施例を示す側断面図であり、図3は本発明に係る熱転写記録媒体の層構成のまたその他の実施例を示す側断面図であり、図4は本発明に係る熱転写記録媒体の層構成のさらにまたその他の実施例についての側断面図を用いた説明図(Cはシアン、Mはマゼンタ、Yはイエローの各色を示す)であり、図5は本発明に使用される受像シートの1実施例を示す側断面図であり、図6は本発明に使用される受像シートのその他の実施例を示す側断面図であり、図7は本発明に係る熱転写記録方法の1実施例を説明するための説明図である。
【0019】
本発明に係る1実施例の熱転写記録媒体(1)は、図1に示すように、支持体(2)上に、熱転写インキ層(3)を設けた熱転写記録媒体(1)である。
【0020】
本発明の熱転写記録媒体(1)に用いることのできる支持体(2)としては、従来から昇華転写型や溶融転写型用として一般に用いられるものを使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチックフィルム、コンデンサーペーパー、パラフィン紙等の紙類を挙げることができるが、このなかでも染料の染着性の良好な支持体を使用することができ、特に、好ましいのはポリエステルフィルムである。また、支持体(2)の厚みは2〜50μm、より好ましくは2〜16μmである。
【0021】
次に、前記熱転写インキ層(3)は、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂と着色顔料を主成分とし、熱で昇華或いは拡散する染料を含有する。
【0022】
前記着色顔料としては、種々の公知の顔料が使用でき、例えば、カーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、アンスラキノン系、イソインドリノン系等の顔料が挙げられる。これらは2種類以上組み合わせて使用することも可能である。
【0023】
前記染料としては公知の昇華性、熱溶融移行性染料が使用でき、具体的には、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンチン系、アクリジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の染料が使用できる。
【0024】
該着色顔料と染料は同一色を使用することで各濃度階調において安定した色相の転写画像が得られる。該着色顔料と染料の色相が大きく異なる場合、熱転写インキ層(3)の転移による顔料と染料の発色部分が支持体(2)に染料が移行した部分と移行しない部分の色相差が発生し、良好な階調表現が難しくなる。
【0025】
また、フルカラーの多色印画用としては、イエロー、マゼンタ、シアンの各着色顔料および染料を含有した熱転写インキ層(3)を支持体(2)上に設けた熱転写記録媒体(1)を使用し重ね印画することでフルカラー画像を得る。特に支持体(2)上の長手方向に沿ってシアン、マゼンタ、イエローの3色が面順次に繰り返し塗り分けて設けることで連続して3色の印画が可能となる。また、3色以外にブラックや他の特色を加えた4色以上に塗り分けた熱転写記録媒体(1)を使用することも可能である。
【0026】
該熱転写インキ層(3)に使用される樹脂としては、サーマルヘッド等の熱媒体に対する印画適性と転写記録後の画像の耐久性を考慮した特性を有する熱溶融、熱可塑性の樹脂を選定する必要があるが、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体の1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を主成分として使用することができる。この中で更に保存時に染料を保持し過熱時に染料を支持体に移行できる樹脂を適宜選択できる。
【0027】
また、該熱転写インキ層(3)には、熱転写するときの転写性、詳しくは、転写画像の形成されるドット形状、また階調再現性等を向上さるせる目的で、無色又は淡色の微粒子を添加することができる。無色又は淡色のものを使用するのは、感熱転写で形成された着色画像の発色を極力損なわないようにする為である。このような無色又は淡色の微粒子の例としては、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、澱粉、酸化亜鉛、テフロン(登録商標)パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレート樹脂ビーズ、ポリウレタン樹脂ビーズ、ベンゾグアナミン及びメラミン樹脂ビーズなどを挙げることができる。上記の中では、特に、屈折率が樹脂に近く透明性の優れるシリカの微粒子が好ましい。
【0028】
また、該熱転写インキ層(3)には、前記顔料や染料、樹脂、微粒子の他に、該熱転写インキ層(3)の熱的感度や強度、接着性などを調整させることを目的として適宜、離型剤、軟化剤、界面活性剤といった添加剤を添加できる。
【0029】
前記離型剤、軟化剤として、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ステアリン酸亜鉛の如き脂肪酸金属塩類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、脂肪酸アミド類等の脂肪酸誘導体、高級アルコール類、多価アルコール類のエステル等誘導
体、パラフィンワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ミツロウ、木ロウ、キャンデリラワックス等のワックス類、粘度平均分子量が約1,000から10,000程度の低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフイン類、或いはオレフイン、α−オレフイン類と無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸、酢酸ビニル等との低分子量共重合体、低分子量酸化ポリオレフイン、ハロゲン化ポリオレフイン類、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等長鎖アルキル側鎖を有するメタクリル酸エステル、メタクリル酸エステル類の単独もしくはスチレン類等のビニル系単量体との共重合体、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等の低分子量シリコーンレジン及びシリコーン変性有機物質等が挙げられ、1種あるいは2種以上選択して用いることができる。
【0030】
該熱転写インキ層(3)の平滑性や顔料分散性を向上させる目的で添加する界面活性
剤としては、インク層中の組成物に相溶するものならば特に制限はなく、例えば、脂肪
酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪族アミンもしくは脂肪族アミドの硫酸
塩類、脂肪族アルコール燐酸エステル塩類、二塩基性脂肪酸エステルのスルホン酸塩類
、脂肪族アミドスルホン酸塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類、ホルマリン縮合のナ
フタレンスルホン酸塩類等のアニオン系界面活性剤、脂肪族アミン塩類、第四級アンモ
ニウム塩類、アルキルピリジニウム塩類等のカチオン系界面活性剤、ポリオキシエチレ
ンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル類、ポリオキ
シエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、ポリオキシエチレン
ソルビタンアルキルエステル類等の非イオン系界面活性剤、カルボン酸誘導体、イミダ
ゾリン誘導体等の両性界面活性剤等、パーフルオロアルキルカルボン酸類、フルオロ脂
肪族基含有アクリレートもしくはフルオロ脂肪族基含有メタクリレートとポリオキシア
ルキレンアクリレートもしくはポリオキシアルキレンメタクリレートとの共重合体、パ
ーフルオロアルキルスルホンアミド類等が挙げられる。
【0031】
なお、本発明の熱転写記録媒体(1)の製造方法は、紙またはプラスチック等の支持体(2)上に着色顔料と染料,樹脂を溶剤に、分散または溶解した組成物を、バーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート等のソルベントコート法によって塗布し、乾燥して熱転写インキ層(3)を形成することにより成る。
【0032】
ここで用いられる溶剤としては、一般的なコート剤に用いられる溶剤、例えば、水あるいはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等のその他の炭化水素などの有機溶剤が挙げられる。
【0033】
該熱転写インキ層(3)の膜厚は、0.3〜1.0μmが望ましい。 膜厚が0.3μmを下回ると十分な濃度を出すことが難しく、また1.0μmを上回るとサーマルヘッド等の発熱部分に応じた転写が困難となり、詳しくは、転写画像の形成されるドット形状、また階調再現性等が劣ることになる。
【0034】
また、支持体(2)の熱転写インキ層(3)を設けていない側よりサーマルヘッド等を用いて熱を加え、受像シート(6)上に熱転写インキ層(3)を転写する際に、サーマルヘッド等が支持体(2)に付着して熱転写記録媒体(1)のスムーズな走行性を妨害するのを防ぐために、図2に示すように該支持体(2)の熱転写インキ層(3)が設けられていない側に、バックコート層(4)を設けることが望ましい。
【0035】
このようなバックコート層(4)に用いられる材料としては、例えば、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、アセタール樹脂
、ビニル樹脂等の樹脂にフッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、燐酸エステル等の滑剤を含有させたもの、またはシリコーン変性樹脂等が挙げることができる。またシリカ、炭酸カルシウム、タルク、樹脂ビーズ等のフィラーを含有させたり、また、耐熱性を向上させる目的で、架橋剤を併用しても良い。該バックコート層(4)を設ける際の塗布厚は、0.1〜4μm程度が好ましい。
【0036】
また、該熱転写インキ層(3)の染料を支持体(2)側に移行しやすくする目的で、図3に示すように、熱転写インキ層(3)と支持体(2)との間に中間層(5)を設けてもよい。該中間層(5)は染料の染着性が良好であり、該支持体(2)との接着性に優れ、熱転写インキ層(3)に対しては良好な転写ができるような接着性を有する樹脂を適宜選択できる。例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体等を挙げることができる。また支持体(2)との接着性、耐熱性を向上させる目的でこれら樹脂に架橋剤を併用しても良い。また熱転写インキ層(3)との接着性を制御する目的でフッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンオイル、ポリエチレンワックス、燐酸エステル等の滑剤を含有させたり、炭酸カルシウム、タルク、樹脂ビーズ等のフィラーを含有させたりすることもできる。塗布厚としては、0.1〜3μm程度が好ましい。
【0037】
以上の如き、熱転写記録媒体(1)を用いて、画像を形成するために使用する受像シート(6)の側断面図を図5に示す。本発明に使用する受像シート(6)は上質紙、コート紙等の紙類、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム等のプラスチックフィルム、あるいは紙、プラスチックフィルム等の支持体(7)上に受像層(8)をコーティングしたもの等が挙げられる。
【0038】
ここで使用する受像層(8)は、サーマルヘッドの熱に対応し、少なくとも熱転写記録媒体(1)の熱転写インキ層(3)と良好な接着性を有する樹脂を適宜選択でき、例えば、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレンアクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、ポリアミド樹脂、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体の1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を主成分として使用することができる。
【0039】
また、該受像層(8)の樹脂と熱転写インキ層(3)の樹脂は、熱感度が近いものを使用することが好ましく、これにより熱転写時に熱転写記録媒体(1)の熱転写インキ層(3)が十分に溶融しなくても熱転写時の熱によって熱転写インキ層(3)と受像層(8)とが良好に接着し、十分な箔切れを以て印画が成されるため転写性、詳しくは、転写画像の形成されるドット形状、また、階調再現性等が向上する。更には形成された画像は、耐摩耗性、耐擦過性等の画像耐性に優れたものとなる。
【0040】
また、画像形成を行いたいシート上に直接画像形成を行うことが困難な場合は、図6に
示すように、受像層(8)と支持体(7)との間に剥離層(10)を設けた中間転写シート(9)上に一度画像を形成した後、転写画像を最終の受像体上に再転写させても良い。このような間接転写方式は、受像体の選択性が広がるだけでなく、該受像層(8)と該剥離層(10)とを最終転写画像上に転写することで画像を保護することとなり画像耐性の向上が図れたり、受像シート(6)上にホログラム形成層等のセキュリティ層(図示せず)を設けておくことにより、最終転写画像のセキュリティの向上を図ることが可能となる。
【0041】
また、受像層(8)に前記樹脂の他、熱転写性を制御するため適宜、離型剤、軟化剤、界面活性剤、有機フィラー、無機フィラー等の添加剤やその他、耐光性を向上させるため紫外線吸収剤や酸化防止剤等も適宜添加してもよい。
【0042】
次に、本発明の熱転写記録方法は、少なくとも支持体(2)上に、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂、着色顔料および熱により昇華或いは拡散する染料を含有する熱転写インキ層(3)を設けた熱転写記録媒体(1)を用いた熱転写記録方法であって、加熱手段を用いた熱転写記録方式により、前記熱転写記録媒体(1)における熱転写インキ層(3)を転写する際に任意の温度と時間からなるエネルギーより、高い温度及び/又は長い時間からなる高エネルギーで熱転写インキ層(3)の染料を前記熱転写記録媒体(1)の支持体(2)側に昇華或いは拡散させて転写される熱転写インキ層(3)の光学濃度を下げることを特徴とする熱転写記録方法である。
【0043】
また、加熱手段のエネルギーを段階的に変化させて階調画像を形成することも可能である。さらに、前記熱転写インキ層(3)が、シアンに着色された層、マゼンタに着色された層およびイエローに着色された層の少なくとも3層を有し、前記3層を順次転写してフルカラー画像を形成することを特徴とする熱転写記録方法である。
【0044】
具体的な方法には、例えば、サーマルヘッドを用いた方法や、アルゴンイオン、ヘリウムネオン等のガスレーザーや固体レーザー、半導体レーザー、エキシマレーザー等のレーザーを用いた方法等が挙げられる。
【0045】
図7に示すように、上記の如き、本発明の熱転写記録媒体(1)を使用してサーマルヘッド(11)を用いて熱エネルギーをコントロールすることにより、熱転写インキ層(3)の転写による面積階調と染料が支持体(2)に移行することによる熱転写インキ層(3)の濃度変化によって濃度階調を合せた階調画像を受像シート(6)上に得ることが可能となる。
【実施例】
【0046】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、文中で「部」又は「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0047】
<実施例1>
まず、下記組成の熱転写インキ層用インキ組成物を調製した。
【0048】
(シアンインキ)
顔料:フタロシアニンブルー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.8部
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007)・3.9部

染料:C.I.ソルベントブルー63・・・・・・・・・・・・・・・・3.9部
無色微粒子:シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972)・・・0.4部

溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90部。
【0049】

(マゼンタインキ)
顔料:カーミン6B・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.8部
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007)・3.9部

染料:C.I.ディスパーズレッド60・・・・・・・・・・・・・・・3.9部
無色微粒子:シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972)・・・0.4部

溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90部。
【0050】

(イエローインキ)
顔料:ジスアゾイエロー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.8部
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007)・3.9部

染料:C.I.ディスパーズイエロー201・・・・・・・・・・・・・3.9部
無色微粒子:シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972)・・・0.4部

溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・90部。
【0051】

上記処方の熱転写インキ層用インキを、裏面にバックコート層(4)としてシリコー
ン樹脂による耐熱処理を施した、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフイル
ムからなる支持体(2)に、乾燥膜厚が0.4μmになるように塗布及び乾燥して、図
4に示すように、本発明の熱転写記録媒体(1)を得た。
【0052】
次に、100μmの易接着ポリエステルフィルムからなる支持体(2)の易接着面に
受像層(8)を形成する、下記の受像層インキを用いて、乾燥膜厚が5μmになるよう
に塗布及び乾燥して、図5に示すように、受像シート(6)を得た。
【0053】
(受像層インキ)
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007)・・30部

溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70部。
【0054】

得られたシアンの熱転写記録媒体(1)の熱転写インキ層(3)面と受像シート(6)の受像層(8)面とを重ね、サーマルヘッドを用いて、サーマルヘッドの発熱部に応じた面積階調と濃度階調によるシアン画像を得た。次に、マゼンタの熱転写記録媒体(1)を用いて、シアン画像が形成されている受像シート(6)上にシアンと同様にして面積階調と濃度階調によるマゼンタ画像を形成した。同様にしてイエロー画像を形成し、カラー画像を形成させた。受像シート(6)上には熱転写インキ層(3)の転写により、ドットによる面積階調と濃度階調からなる画像を形成させることができた。
【0055】
<実施例2>
上記実施例1と同様に下記の熱転写インキ層用インキを調製し、裏面に耐熱処理を施した厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフイルムに、乾燥膜厚が0.4μmになるように塗布及び乾燥して本発明の熱転写記録媒体(1)を得た。
【0056】
(シアンインキ)
顔料:フタロシアニンブルー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.6部
樹脂:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学(株)製ソルバインC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.7部
染料:C.I.ソルベントブルー63・・・・・・・・・・・・・・・・・3.7部



溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31部。
【0057】
(マゼンタインキ)
顔料:カーミン6B・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.6部
樹脂:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学(株)製ソルバインC)・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.7部
染料:C.I.ディスパーズレッド60・・・・・・・・・・・・・・・3.7部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31部。
【0058】

(イエローインキ)
顔料:ジスアゾイエロー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1.6部
樹脂:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学(株)製ソルバインC)・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3.7部
染料:C.I.ディスパーズイエロー201・・・・・・・・・・・・・3.7部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31部。
【0059】

次に、実施例1と同様に100μmの易接着ポリエステルフィルムの易接着面に下記の受像層インキを用いて、乾燥膜厚が5μmになるように塗布及び乾燥して、受像シート(6)を得た。
【0060】
(受像層インキ)
樹脂:塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日信化学(株)製ソルバインC)・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40部。
【0061】

得られたシアンの熱転写記録媒体(1)の熱転写インキ層(3)面と受像シート(6)の受像層(8)面とを重ね、サーマルヘッドを用いて、サーマルヘッドの発熱部に応じた面積階調と濃度階調によるシアン画像を得た。次にマゼンタの熱転写記録媒体(1)を用いて、シアン画像が形成されている受像シート(6)上にシアンと同様にして面積階調と濃度階調によるマゼンタ画像を形成した。同様にしてイエロー画像を形成し、カラー画像を形成させた。受像シート(6)上には熱転写インキ層(3)の転写によりドットによる
面積階調と濃度階調からなる画像を形成させることができた。
【0062】
以下に、比較例について説明する。
【0063】
<比較例1>
熱転写インキ層用インキとして以下のインキ組成物を調整した。
【0064】
(シアンインキ)
顔料:フタロシアニンブルー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9部
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007・・20部
無色微粒子:シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972)・・・・4部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67部。
【0065】

(マゼンタインキ)
顔料:カーミン6B・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9部
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007)・・20部

無色微粒子:シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972)・・・・4部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67部。
【0066】

(イエローインキ)
顔料:ジスアゾイエロー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9部
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007)・・20部

無色微粒子:シリカ(日本アエロジル(株)製アエロジルR972)・・・・4部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・67部。
【0067】

上記処方の熱転写インキ層用インキを、裏面に耐熱処理を施した厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフイルムに、乾燥膜厚が0.4μmになるように塗布及び乾燥して比較例1の熱転写記録媒体(1)を得た。
【0068】
次に、100μmの易接着ポリエステルフィルムの易接着面に下記の受像層インキを用いて、乾燥膜厚が5μmになるように塗布及び乾燥して、受像シート(6)を得た。
【0069】
(受像層インキ)
樹脂:エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製JER1007)・・30部

溶剤:メチルエチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・70部。
【0070】

得られたシアンの熱転写記録媒体(1)の熱転写インキ層(3)面と受像シート(6)の受像層(8)面とを重ね、サーマルヘッドを用いて、サーマルヘッドの発熱部に応じた面積階調によるシアン画像を得た。次に、マゼンタの熱転写記録媒体(1)を用いて、シアン画像が形成されている受像シート(6)上にシアンと同様にして面積階調によるマゼンタ画像を形成した。同様にしてイエロー画像を形成し、カラー画像を形成させた。受像シート(6)上には熱転写インキ層(3)の転写により、ドットによる面積階調からなる画像を形成された。
【0071】
<比較例2>
熱転写インキ層用インキとして以下の昇華転写型インキ組成物を調整した。
【0072】
(シアンインキ)
染料:C.I.ソルベントブルー63・・・・・・・・・・・・・・・・・5部
樹脂:ブチラール樹脂(積水化学工業(株)製BX−1)・・・・・・・・ 5部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30部。
【0073】
(マゼンタインキ)
染料:C.I.ディスパーズレッド60・・・・・・・・・・・・・・・・5部
樹脂:ブチラール樹脂(積水化学工業(株)製BX−1)・・・・・・・・・5部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30部。
【0074】
(イエローインキ)
染料:C.I.ディスパーズイエロー201・・・・・・・・・・・・・・ 5部
樹脂:ブチラール樹脂(積水化学工業(株)製BX−1)・・・・・・・・・ 5部

溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60部
トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30部。
【0075】

上記処方の熱転写インキ層用インキを、裏面に耐熱処理を施した厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフイルムに、乾燥膜厚が1.0μmになるように塗布及び乾燥して比較例2の熱転写記録媒体(1)を得た。
【0076】
次に、100μmの易接着ポリエステルフィルムの易接着面に下記の染料受容層用インキを乾燥膜厚が4μmとなるように塗布、乾燥を行い、その後45℃1週間エージング行い、受像シート(6)を得た。
【0077】
(染料受容層用インキ)
樹脂: アセタール樹脂 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体・・・・・・・・・・・・・・・・10部
離型剤:シリコーンオイル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2部
硬化剤:イソシアネート樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3部
溶剤:メチルエチルケトン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50部

トルエン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25部。
【0078】

得られた熱転写記録媒体(1)の熱転写インキ層(3)面と受像シート(6)の染料受容層(8)面とを重ね、サーマルヘッドを用いてイエロー、マゼンタ、シアンの順に画像形成を行い、カラー画像を得た。
【0079】
<評価>
得られたカラー画像について画像階調性、画像濃度、耐光性、定着性の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0080】
・画像階調性・・・○:作製したカラー画像が高濃度域から低濃度域まで滑らかに忠実に再現されている。×:高濃度域から低濃度域までの再現性が不十分である。
【0081】
・画像鮮鋭性・・・○:作製したカラー画像が細線やエッジ部分がシャープに再現されている。×:細線や画像エッジ部分の境界が不鮮明である。
【0082】
・画像濃度・・・○:カラーの反射濃度が1.4以上である。×:カラーの反射濃度が1.4以下である。
【0083】
・耐光性・・・キセノンフェードメーターによりカラー画像面に紫外線を80時間照射し、その退色率を測定。○:退色率5%以内。×:退色率5%以上。
【0084】
【表1】

表1は実施例1〜2、比較例1〜2における画像階調性、画像鮮鋭性、画像濃度、耐光
性の評価結果を記す。
【0085】
<評価結果>
表1に示した通り、本発明による熱転写記録媒体および熱転写記録方法(実施例1〜2)は、階調再現性において作製したカラー画像の階調性に優れ、記録後の画像の耐久性を具備した優れた熱転写記録媒体(1)を得ることができ、そして特に、熱転写の際の熱転写インキ層(3)の箔切れ性が良く、且つ転写画像の光学濃度も高いこと、これらを同時に本発明の目的が達成された。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る熱転写記録媒体の層構成の1実施例を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る熱転写記録媒体の層構成のその他の実施例を示す側断面図である。
【図3】本発明に係る熱転写記録媒体の層構成のまたその他の実施例を示す側断面図である。
【図4】本発明に係る熱転写記録媒体の層構成のさらにまたその他の実施例についての側断面図を用いた説明図(Cはシアン、Mはマゼンタ、Yはイエローの各色を示す)である。
【図5】本発明に使用される受像シートの1実施例を示す側断面図である。
【図6】本発明に使用される受像シートのその他の実施例を示す側断面図である。
【図7】本発明に係る熱転写記録方法の1実施例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0087】
1・・・熱転写記録媒体
2・・・支持体
3・・・熱転写インキ層
4・・・バックコート層
5・・・中間層
6・・・受像シート
7・・・支持体
8・・・受像層
9・・・中間転写シート
10・・・剥離層
11・・・サーマルヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体上に、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂、着色顔料および熱により昇華或いは拡散する染料を含有する熱転写インキ層を設けた熱転写記録媒体において、加熱手段を用いた熱転写記録方式により、前記熱転写記録媒体における熱転写インキ層を転写する際に該熱転写インキ層の染料が前記熱転写媒体の支持体側に昇華或いは拡散するように形成されていることを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項2】
加熱手段のエネルギー量により転写される熱転写インキ層の光学濃度が変わることを特徴とする請求項1記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
少なくとも支持体上に、熱により溶融あるいは軟化して転写する樹脂、着色顔料および熱により昇華或いは拡散する染料を含有する熱転写インキ層を設けた熱転写記録媒体を用いた熱転写記録方法であって、加熱手段を用いた熱転写記録方式により、前記熱転写記録媒体における熱転写インキ層を転写する際に任意の温度と時間からなるエネルギーより、高い温度及び/又は長い時間からなる高エネルギーで熱転写インキ層の染料を前記熱転写記録媒体の支持体側に昇華或いは拡散させて転写される熱転写インキ層の光学濃度を下げることを特徴とする熱転写記録方法。
【請求項4】
加熱手段のエネルギーを段階的に変化させて階調画像を形成することを特徴とする請求項3記載の熱転写記録方法。
【請求項5】
前記熱転写インキ層が、シアンに着色された層、マゼンタに着色された層およびイエローに着色された層の少なくとも3層を有し、前記3層を順次転写してフルカラー画像を形成することを特徴とする請求項3又は4記載の熱転写記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−230115(P2008−230115A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74545(P2007−74545)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】