説明

熱転写記録媒体及びこれを用いた印刷物

【課題】再現性の良い高画質な画像を安定して形成し得、かつ紙またはプラスチック等の基材ヘの接着性が十分である熱転写記録媒体を得る。
【解決手段】熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層中に、適用されるインクのバインダー樹脂との180度剥離試験において剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂と、10N/cmよりも高い剥離力を有する第2の樹脂とを含む熱転写記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱溶融性インク及び昇華性インクを用いた熱転写記録技術に係り、特に、画像を形成し得るインク受像層を備えた熱転写記録媒体、及びインク受像層上にインク画像を記録し、例えば紙あるいはプラスチック等の基材上に熱接着して得られる印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
免許証、従業員証、会員証、クレジットカードなどの個人認証媒体に顔画像を記録する方法としては、例えば昇華型熱転写記録方法及び溶融型熱転写記録方法があげられる。
【0003】
昇華型熱転写記録方法は、支持シート上に昇華性あるいは熱移行性染料を熱転写可能にコーティングしてなる昇華性インクリボンと、昇華性染料を受容できる熱可塑性樹脂からなるインク受容層とを重ね合わせ、サーマルヘッドなどを用いて、所定の画像データに基づき、昇華性インクリボンを選択的に加熱し、被記録媒体に所望の画像を昇華型熱転写記録することができる。この方式によれば、階調性豊かなカラー画像を手軽に記録できることが、広く一般的に知られている。しかし、昇華型熱転写記録方法では、熱可塑性樹脂層の表面近傍に画像が形成されることから画像に傷が付き易く、染料が再昇華して画像濃度が経時的に低下し易く、紫外線により染料が分解され、画像の色調が変化する等、画像の耐久性に関連する問題を種々有していた。
【0004】
一方、溶融型熱転写記録方法は、支持シート上に、顔料あるいは染料を樹脂やワックスなどの熱溶融性バインダーに分散させて得られた熱溶融性インクをコーティングして得られた転写リボンを使用し、これをサーマルヘッドなどを用いて、所定の画像データに基づき、選択的に加熱し、被記録媒体にバインダーごと熱溶融性インクを転写し、所望の画像を記録するものである。この方式によれば、昇華性インクよりも十分に耐光性の良好な無機及び有機顔料を選択できる。またバインダーに用いる樹脂やワックス等を工夫することにより、傷が付きにくく、耐溶剤性に優れた画像を提供することができる。また、蛍光顔料や磁性体等の機能性材料を熱溶融性インク中に混入することが可能であり、これにより、セキュリティ性が高い特殊インクを得ることができる。昇華性熱転写記録法の場合、被記録媒体と昇華性インクに適切なインク受容層とを組み合わせて使用しなければならないが、溶融型熱転写記録方法では、その表面にバインダーに対する接着性を有する被記録媒体であれば、何でも使用することが可能であり、幅広く被記録媒体を選択することができる。しかし、溶融型熱転写記録方法は、基本的にインクの接着を行っており、転写したドットのサイズを変化させて階調記録を行うドット面積階調法を用いているため、転写すべき記録媒体の凹凸に非常に敏感であり、凹凸があると転写不良を起こし、ドットサイズをうまく制御できないことから、階調性が乏しいという欠点があった。
【0005】
このような課題を解決するため、種々の提案がなされている。
【0006】
例えば多孔質受像層を有する被記録媒体を用いる方法が提案されている。これは、被記録媒体の受像層中に微小孔を設け、その微小孔に熱溶融性インクを浸透、転写させるというものである。この方式によれば、階調性豊かな画像を得ることができるが、多孔質受像層は一般的に機械的強度が低く、印刷装置内の各種ローラー、搬送路などとの接触により表面に傷が付いてしまい、画像欠陥の原因となる。
【0007】
また、フィルム基材上に透明な受像層兼接着層を設けた記録媒体を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方式によれば、受像層兼接着層上に画像を形成し、得られた画像と受像層兼接着層を、紙、及びプラスチック等の基材に熱圧着または熱転写して印刷物が得られる。この方式によれば、受容層に微小孔を設けないので、表面の機械的強度が高く、さらに樹脂層表面の平滑度を向上させ、インク層との親和性が良くなるように調整すれば、溶融型熱転写方式においても、階調性豊かな画像を形成することができる。
【0008】
しかしながら、受像層兼接着層として基材ヘの接着性及びインクのバインダー成分との親和性に優れた樹脂のみ用いると、同一記録条件下における記録画像濃度の再現性が安定しないという問題があった。これは、画像を形成する多色のインク画像を構成する画点いわゆるドットが各色完全に重なっていれば問題はないが、わずかでもドットの重なりがずれ、且つ前色のインク上と受像層兼接着層樹脂上に対する印画感度が異なる場合、2色目以降のドット大きさが安定しないことが原因である。
【0009】
このドット大きさの不安定さを防ぐために受像層兼接着層に印画感度が低くなるような軟化温度の高い樹脂を用いると、被着体ヘの接着性が低下するという問題があった。
【0010】
このように従来の受像層兼接着層を用いると、接着性と画質の安定性の両立が困難であった。
【特許文献1】特許第2579061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、再現性の良い高画質な画像を安定して形成し得る熱転写記録媒体を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、再現性の良い高画質な画像を有する印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1に、熱溶融性インクを用いて記録するための熱転写記録媒体であって、支持体と、該支持体上に設けられた熱溶融性インク受像層兼接着層とを含み、該熱溶融性インク受像層兼接着層は、使用される熱溶融性インク中のバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする熱転写記録媒体を提供する。
【0014】
本発明は、第2に、昇華性インクを用いて記録するための熱転写記録媒体であって、支持体と、該支持体上に設けられた昇華性インク受像層兼接着層とを含み、該昇華性インク受像層兼接着層は、使用される昇華性インク中のバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする熱転写記録媒体を提供する。
【0015】
本発明は、第3に、基材と、基材上に設けられた熱溶融性インク画像と、該熱溶融性インク画像を介して該基材上に設けられた熱溶融性インク受像層兼接着層とを具備する印刷物であって、該熱溶融性インク受像層兼接着層は、該熱溶融性インクに使用されるバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする印刷物を提供する。
【0016】
本発明は、第4に、基材と、基材上に設けられた昇華性インク画像と、該基材上に設けられ、該昇華性インク画像が受像された昇華性インク受像層兼接着層とを具備する印刷物であって、該昇華性インク受像層兼接着層は、該昇華性インクに使用されるバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする印刷物を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明を用いると、熱溶融性インクを用いた溶融型熱転写記録の場合、記録した画像の画点の形状が安定し、高画質な画像が得られる。昇華性インクを用いた昇華型熱転写記録の場合、インクリボンと受像層兼接着層との熱融着がなく、階調性豊かな画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の熱転写記録媒体は、支持体と、支持体上に設けられ、2種以上の樹脂を含有する熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層とを有する。
【0019】
本発明の印刷物は、基材と、基材上に設けられた熱溶融性インク画像と、熱溶融性インク画像を介して基材上に設けられた2種以上の樹脂を含有する熱溶融性インク受像層兼接着層とを有する。
【0020】
また、本発明の印刷物は、基材と、基材上に設けられた昇華性インク画像と、基材上に設けられ、昇華性インク画像を受像した2種以上の樹脂を含有する昇華性インク受像層兼接着層とを有する。
【0021】
本発明においては、上記熱溶融性インク受像層兼接着層または上記昇華性インク受像層兼接着層に使用される2種以上の樹脂のうち、第1の樹脂は、適用されるインクのバインダー樹脂との180度剥離試験において剥離力が10N/cm以下である樹脂からなる。
【0022】
また、第2の樹脂は、10N/cmよりも高い剥離力を有する樹脂からなる。
【0023】
熱溶融性インク受像層兼接着層の第1及び第2の樹脂の剥離力が、いずれも10N/cm以下であると、熱溶融性インクに対する接着性が不十分となり、また、例えば1色目のインク画像層と熱溶融性インク受像層兼接着層との接着性の差すなわち印画感度の差が大きくなり、2色目のインク画像層の接着作用が1色目のインク画像層上と熱溶融性インク受像層兼接着層とで異なるため、熱転写後の画点の大きさが安定しない。このため、記録画像の画質及び画像濃度の再現性が低下する。
【0024】
一方、昇華性インク受像層兼接着層の第1及び第2の樹脂の剥離力が、いずれも10N/cm以下であると、基材に対する接着性もまた低下しやすく、印刷物の強度に問題を生じる。
【0025】
また、熱溶融性インク受像層兼接着層の第1及び第2の樹脂の剥離力が、いずれも10N/cm以上であると、熱溶融性インクに対する接着性が高すぎて、例えば1色目のインク画像層と熱溶融性インク受像層兼接着層との接着性の差が大きくなり、2色目のインク画像層の接着作用が1色目のインク画像層上と熱溶融性インク受像層兼接着層とで異なるため、熱転写後の画点の大きさが安定しない。このため、記録画像の画質及び画像濃度の再現性が低下する。
【0026】
一方、昇華性インク受像層兼接着層の第1及び第2の樹脂の剥離力が、いずれも10N/cmより高いと、昇華性インクに対する接着性が高すぎて、昇華性インクと昇華性インク受像層兼接着層との間に不所望な熱融着が発生する。安定した画像形成を行うことができない。
【0027】
好ましくは、第1の樹脂の剥離力は0ないし2N/cmであり、第2の樹脂の剥離力は、30N/cm以上である。第2の樹脂の剥離力は10N/cm未満であると、熱溶融性インクとの接着性が低すぎて、受像層兼接着層上にインク層を形成できなくなる傾向がある。
【0028】
この熱溶融性インクまたは昇華性インク受像層兼接着層に画像を形成し、基材上に転写後、支持体を剥離することにより、基材と、画像と、画像が受像され、かつ画像とともに基材上に接着されたインク受像層兼接着層とを有する印刷物が得られる。
【0029】
また、上記支持体を剥離しない場合には、基材と、画像と、画像が受像され、かつ画像とともに基材上に接着されたインク受像層兼接着層と、支持体とを有する印刷物が得られる。この支持体は、例えば保護層として機能し得る。
【0030】
本発明に使用される熱溶融性インク受像層兼接着層中の第1の樹脂は、熱溶融性インクのバインダー樹脂との接着性が、第2の樹脂と熱溶融性インクのバインダー樹脂との接着性よりも低い。接着性が高い第1の樹脂と、それよりも接着性が低い第2の樹脂とともに使用することにより、熱溶融性インク受像層兼接着層の熱溶融性インクを受容する感度を調整することができる。例えば1色目の熱溶融性インク層が既に熱転写された熱溶融性インク受像層兼接着層上に2色目の熱溶融性インク層を熱転写する場合であっても、1色目の熱溶融性インク層の接着性と熱溶融性インク受像層兼接着層の接着性との差が緩和されているので、いずれの層にも2色目のインク層が良好に熱転写されて、部分的に剥がれるようなことがないので画点の大きさが安定する。続けて3色目、4色目の熱溶融性インク層を熱転写した場合も、各色の熱溶融性インクの接着性及び熱溶融性インク受像層兼接着層の接着性間の差が緩和されているので、画点の大きさが同様に安定し、最終的に得られる熱溶融性インク画像の画質が良好となる。また、第1及び第2の樹脂として、印刷物に使用される基材との接着性が良好な材料が好ましく使用される。これにより、紙等の基材と良好に接着し、耐久性の良い画像を有する印刷物が得られる。
【0031】
本発明に使用される昇華性インク受像層兼接着層中の第1の樹脂は、昇華性インクのバインダー樹脂との接着性が、第2の樹脂と昇華性インクのバインダー樹脂との接着性よりも低い。本発明によれば、昇華性インク受像層兼接着層との接着性が低い第1の樹脂と、その接着性が高い第2の樹脂とを併用することにより、熱転写時に、これらの樹脂を含む昇華性インク層と、これに接触して加熱に供される昇華性インク受像層兼接着層との不所望な熱融着を防止するように、昇華性インク受像層兼接着層の接着性を調整することができる。これにより、記録毎に画像濃度が安定し、階調性が豊かで高画質な画像が形成され得る。また、第1及び第2の樹脂として、印刷物に使用される基材との接着性が良好な材料が好ましく使用される。これにより、紙等の基材と良好に接着し、耐久性の良い画像を有する印刷物が得られる。
【0032】
図1に、本発明にかかる溶融型熱転写記録媒体の構成の一例を表す概略断面図を示す。
【0033】
図示するように、この熱転写記録媒体10は、例えばポリエステルフィルムからなる支持体シート1上に、熱溶融性インクのバインダー樹脂成分と180度剥離試験において剥離力が10N/cmより高い樹脂と、この剥離力が10N/cm以下である樹脂の混合樹脂層2が順に積層された構成を有する。
【0034】
この熱溶融性インク受像層兼接着層2は、例えばこの樹脂と好適な溶剤とを含む樹脂塗布液を調製し、この樹脂塗布液を、グラビアコート、リバースコート、ダイコート、ワイヤーバーコート、及びホットメルトコート等により塗布及び乾燥する方法等を用いて、塗布液を塗布、乾燥することにより形成し得る。
【0035】
この熱転写記録媒体10は、その上に熱溶融性インクにより画像を形成した後、例えば紙、プラスチック等の基材に熱接着し得る。
【0036】
図2に、図1に示す熱転写記録媒体10を用いて得られた印刷物の構成の一例を表す概略断面図を示す。
【0037】
図示するように、この印刷物11は、例えば紙からなる基材4上に、熱溶融性インクにより形成された画像3、及び少なくとも1層からなる樹脂層2が順に積層された構成を有する。
【0038】
画像3は、熱転写記録媒体10の熱溶融性インク受像層兼接着層2表面に、熱溶融性インクリボンを適用し、例えばサーマルヘッド等の加熱記録手段を用いて熱転写記録を行うことにより形成することができる。画像3の形成後、画像3上に紙からなる基材4を配置し、例えば熱と圧力を同時に加えることができるヒートローラ等に通し、熱溶融性インク受像層兼接着層2を全体に加熱することにより、または例えばホットスタンプ機等により所望のパターンで選択的に加熱することにより、基材4上に熱溶融性インク受像層兼接着層2を全体或いは部分的に熱接着することができる。その後、支持体1を剥離すること図2に示す印刷物11が得られる。
【0039】
本発明に係る熱転写記録媒体において、支持体と、熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層との間に、易接着層及び剥離層のうち1つの中間層をさらに設けることができる。
【0040】
上述のように、熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層を基材上に熱接着し、その上に設けられた支持体を剥離して除去する場合には、さらに剥離層を設けることにより、支持体と、熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層との剥離をより良好にすることができる。
【0041】
また、支持体は剥離せずに保護層として使用することができる。支持体を保護層として使用する場合には、さらに易接着層を設けることにより、支持体と、熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層との接着をより良好にすることができる。
【0042】
なお、易接着層とは、例えば熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層形成時に、好ましくは、塗布液の溶剤による溶解あるいは乾燥温度で、支持体を熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層に十分に接着し得る層をいう。
【0043】
図3は、本発明にかかる溶融型熱転写記録媒体の他の例の構成を表す概略断面図である。
【0044】
図示するように、この熱転写記録媒体20は、支持体1と熱溶融性インク受像層兼接着層2との間に、例えばワックス、及びエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等からなる剥離層5が設けられている以外は、図1に示す熱転写記録媒体と同様の構成を有する。
【0045】
剥離層5は、例えばグラビアコート、リバースコート、ダイコート、ワイヤーバーコート、及びホットメルトコート等により形成することができる。
【0046】
図4に、図3に示す熱転写記録媒体20を用いて得られた印刷物の構成の他の一例を表す概略断面図を示す。
【0047】
図示するように、この印刷物21は、熱溶融性インク受像層兼接着層2上に剥離層5が設けられている以外は、図2に示す印刷物11と同様の構成を有する。
【0048】
なお、ここでは、剥離層5が熱溶融性インク受像層兼接着層2上に設けられているが、この剥離層5は、熱溶融性インク受像層兼接着層2上に部分的に残留しても、支持体1と共に剥離除去されても良い。除去される場合には、得られる印刷物は、図2に示す印刷物11と同様の構成を有する。
【0049】
図5は、本発明にかかる溶融型熱転写記録媒体のさらに他の例の構成を表す概略断面図である。
【0050】
図示するように、この熱転写記録媒体30は、支持体1と熱溶融性インク受像層兼接着層2との間に、例えば酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、及びアクリル樹脂等からなる易接着層6が設けられている以外は、図1に示す熱転写記録媒体と同様の構成を有する。
【0051】
易接着層6は、例えばグラビアコート、リバースコート、ダイコート、ワイヤーバーコート、ホットメルトコート等により形成することができる。
【0052】
図6に、図3に示す熱転写記録媒体20を用いて得られた印刷物の構成の他の一例を表す概略断面図を示す。
【0053】
図示するように、この印刷物31は、熱溶融性インク受像層兼接着層2上に、易接着層6及び支持体1が順に設けられている以外は、図2に示す印刷物11と同様の構成を有する。
【0054】
なお、上記図1ないし図6では、熱溶融性インク層受像層兼接着層を用いた熱転写記録媒体及び印刷物を示したが、熱溶融性インク層受像層兼接着層の代わりに昇華性インク層受像層兼接着層を、熱転写記録時に昇華性インクリボンを適用し得る。
【0055】
本発明において、剥離層に用いる樹脂は、支持体との接着力が適度に調節されていることが望ましい。接着力が過度に大きいと、熱接着後に支持体を剥離しにくくなる。また、接着力が過度に小さいと、支持体は容易に剥離できるが、熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層に熱接着されない不所望な樹脂層が残る傾向がある。
【0056】
剥離層に適した適度な接着力を持つ樹脂としては、ワックス、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの各樹脂の混合物等があげられる。
【0057】
剥離層に用いられるワックスとしては、例えばポリエチレンワックスやカルナバワックス等が好ましく使用できる。具体的には、日本精蝋(株)製Hi−Mic−2065、Hi−Mic−1045、Hi−Mic−2045、PALVAX−1230、PALVAX−1330、PALVAX−1335、PALVAX−1430、BONTEX−0011、BONTEX−0100、BONTEX−2266等があげられる。
【0058】
剥離層に用いられる酢酸ビニル樹脂としては、具体的には、電気化学工業(株)製サクノールSN−04、サクノールSN−04S、サクノールSN−04D、サクノールSN−09A、サクノールSN−09T、サクノールSN−10、サクノールSN−10N、サクノールSN−17A、ASR CH−09、ASR CL−13、クラリアントポリマー(株)製モビニールDC、ダイセル化成品(株)製セビアンA530、セビアンA700、セビアンA707、セビアンA710、セビアンA712、セビアンA800等があげられる。
【0059】
剥離層に用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂としては、具体的には、三井デュポン・ポリケミカル(株)製エバフレックス45X、エバフレックス40、エバフレックス150、エバフレックス210、エバフレックス220、エバフレックス250、エバフレックス260、エバフレックス310、エバフレックス360、エバフレックス410、エバフレックス420、エバフレックス450、エバフレックス460、エバフレックス550、エバフレックス560、クラリアントポリマー(株)製モビニール081F、住友化学工業(株)製エバテートD3022、D3012、D4032、CV8030、ヒロダイン工業(株)製ヒロダイン1800−5、ヒロダイン1800−6、ヒロダイン1800−8、ヒロダイン3706、ヒロダイン4309、コニシ(株)製ボンドCZ250、ボンドCV3105等があげられる。
【0060】
剥離層に用いられるアクリル樹脂としては、具体的には、ダイセル化成品(株)製セビアンA45000、セビアンA45610、セビアンA46777、セビアンA4635、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−80、ダイヤナールBR−83、ダイヤナールBR−85、ダイヤナールBR−87、ダイヤナールBR−101、ダイヤナールBR−102、ダイヤナールBR−105、ダイヤナールBR−106等があげられる。
【0061】
剥離層に用いられるシリコーン樹脂としては、具体的には、東芝シリコーン(株)製トスガード510等があげられる。
【0062】
剥離層に用いられるポリエステル樹脂としては、具体的には、東洋紡績(株)製バイロン200、バイロン220、バイロン240、バイロン245、バイロン280、バイロン296、バイロン530、バイロン560、バイロン600、バイロナールMD1100、バイロナールMD1200、バイロナールMD1245、バイロナールMD1400、バイロナールGX−W27、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3300、エリーテルUE−3320、エリーテルUE−3350、エリーテルUE−3370、エリーテルUE−3380等があげられる。
【0063】
易接着層には、基材フィルムと、支持体と樹脂層の双方との十分な接着力が要求される。この要求を満足する樹脂は、支持体と、熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層の材質とに応じて選択され、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの各樹脂の混合物等が挙げられる。
【0064】
易接着層に用いられるエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂としては、三井・デュポン・ポリケミカル(株)製エバフレックス45X、エバフレックス40、エバフレックス150、エバフレックス210、エバフレックス220、エバフレックス250、エバフレックス260、エバフレックス310、エバフレックス360、エバフレックス410、エバフレックス420、エバフレックス450、エバフレックス460、エバフレックス550、エバフレックス560、クラリアントポリマー(株)製モビニール081F、住友化学工業(株)製エバテートD3022、D3012、D4032、CV8030、ヒロダイン工業(株)製ヒロダイン1800−5、ヒロダイン1800−6、ヒロダイン1800−8、ヒロダイン3706、ヒロダイン4309、コニシ(株)製ボンドCZ250、ボンドCV3105等のがあげられる。
【0065】
易接着層に用いられるアクリル樹脂としては、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−53、ダイヤナールBR−64、ダイヤナールBR−77、ダイヤナールBR−79、ダイヤナールBR−90、ダイヤナールBR−93、ダイヤナールBR−101、ダイヤナールBR−102、ダイヤナールBR−105、ダイヤナールBR−106、ダイヤナールBR−107、ダイヤナールBR−112、ダイヤナールBR−115、ダイヤナールBR−116、ダイヤナールBR−117、ダイヤナールBR−118等があげられる。
【0066】
易接着層に用いられるポリエステル樹脂としては、東洋紡績(株)製バイロン103、バイロン220、バイロン240、バイロン245、バイロン270、バイロン280、バイロン300、バイロン500、バイロン530、バイロン550、バイロン560、バイロン600、バイロン630、バイロン650、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3300、エリーテルUE−3320、エリーテルUE−3350、エリーテルUE−3370、エリーテルUE−3380等があげられる。
【0067】
本発明に用いられる熱溶融性インク受像層兼接着層または昇華性インク受像層兼接着層の樹脂成分は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂のうち少なくとも2つの材料からなることが好ましい。
【0068】
溶融型熱転写の場合、より好ましくは、熱溶融性インクのバインダー成分がアクリル樹脂で、熱溶融性インク受像層兼接着層の樹脂成分がポリエステル樹脂と酢酸ビニル樹脂の混合物である。
【0069】
特に好ましくは、ポリエステル樹脂が東洋紡績(株)製バイロン240、酢酸ビニル樹脂が電気化学工業(株)製サクノールSN−04である。
【0070】
熱溶融性インク受像層兼接着層の樹脂成分の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0071】
昇華性熱転写記録の場合、より好ましくは、昇華性インクのバインダー成分がポリビニルアセタール樹脂で、受像層兼接着層の樹脂成分がポリエステル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の混合物である。
【0072】
特に好ましくは、ポリエステル樹脂が東洋紡績(株)製バイロン200、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂がダウケミカル製VMCCである。
【0073】
昇華性インク受像層兼接着層の樹脂成分の材料としては、例えば、ポリエステル樹脂が挙げられる。
【0074】
熱溶融性インク受像層兼接着層及び昇華性インク受像層兼接着層の第1の樹脂に使用される樹脂成分としては、例えば東洋紡績(株)製バイロン220、バイロン240、バイロン296、バイロン600、バイロンGK110、バイロンGK130、バイロンGK140、バイロンGK150、バイロンGK180、バイロンGK190、バイロンGK250、バイロンGK590、バイロンGK680、バイロンGK780、バイロンGK810、バイロンGK890、バイロンGM−415、バイロンGM−440、バイロンGA−1200、バイロンGA−3200、バイロンGA−5200、バイロナールMD−1200、バイロナールMD−1220、バイロナールMD−1250、バイロナールMD−1335、バイロナールMD−1400、バイロナールMD−1480、バイロナールMD−1500、ユニチカ(株)製エリーテルUE−3320、エリーテルUE−3370、エリーテルUE−3380、エリーテルUE−3350、エリーテルUE−3300、エリーテルUE−3200、エリーテルUE−9200、エリーテルUE−3690、エリーテルUE−3215、エリーテルUE−3620等があげられる。
【0075】
熱溶融性インク受像層兼接着層及び昇華性インク受像層兼接着層の第2の樹脂としては、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。
【0076】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂としては、例えばダウケミカル製VYNS−3、VYHH、VYHD、VMCH、VMCC、VMCA、VERR−40、VAGH、VAGD、VAGF、VROH、日信化学工業(株)製ソルバインC、ソルバインCL、ソルバインCH、ソルバインCN、ソルバインC5、ソルバインM、ソルバインML、ソルバインTA5R、ソルバインTAO、ソルバインMK6、ソルバインTA2等があげられる。
【0077】
また用いられる酢酸ビニル樹脂としては、例えば電気化学工業(株)製サクノールSN−04、サクノールSN−04S、サクノールSN−04D、サクノールSN−09A、サクノールSN−09T、サクノールSN−10、サクノールSN−10N、サクノールSN−17A、ASR CH−09、ASR CL−13、クラリアントポリマー(株)製モビニールDC、ダイセル化成品(株)製セビアンA530、セビアンA700、セビアンA707、セビアンA710、セビアンA712、セビアンA800等があげられる。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【0079】
実施例1ないし2、比較例1及び2
易接着層が形成された厚さ25μmの透明ポリエステルフィルム(東レ株式会社製、商品型番:ルミラーQ27)を用意し、そのポリエステルフィルム表面に、下記組成の熱溶融性インク受像層兼接着層塗布液を、グラビアコーターを用いて、乾燥後の塗膜厚みが3μmになるよう塗布し、120℃で2分間、加熱・乾燥して、熱溶融性インク受像層兼接着層を形成し、各熱転写記録媒体を得た。なお、熱溶融性インク受像層兼接着層塗布液中の樹脂成分は、第1の樹脂として、東洋紡績(株)製バイロン240、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−85、三井・デュポン・ポリケミカル(株)製エバフレックス45X、及びダウケミカル製VAGHのいずれか、第2の樹脂として、電気化学工業(株)製サクノールSN−04を、下記表1に示す組み合わせ及び重量比で混合した。
【0080】
熱溶融性インク受像層兼接着層塗布液
メチルエチルケトン 40重量部
トルエン 40重量部
下記表1に示す樹脂の混合物 20重量部
得られた熱転写記録媒体の熱溶融性インク受像層兼接着層上に、バインダー樹脂として、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−87を含有する熱溶融性インクリボンを適用し、600dpiのサーマルヘッドで、カラー画像を記録を行い、画像を得た。
【0081】
その後、この画像上に市販のPPC用紙を適用し、ローラー温度180度、ローラー回転速度1m/分に調整したフジプラ(株)製ラミネーターLPD2306Cityに通して、熱転写記録媒体とPPC用紙とを熱接着し、印刷物を得た。熱接着時の樹脂層の温度を市販のサーモラベルを用いて測定したところ、約100℃であった。
【0082】
熱溶融性インクリボンに使用されるバインダー樹脂と、各々適用される第1及び第2の樹脂との180度剥離試験剥離力については、各樹脂を25μmの厚さを有するPETフィルム上に塗布し、JIS K 6854−2に記載されている方法で試験した。得られた結果を下記表1に併せて示す。
【0083】
また、各第1の樹脂及び各第2の樹脂と、紙との接着性は、各樹脂を25μmの厚さを有する易接着層付きPETフィルム上に塗布し、PPC用紙と熱接着後、強制的に支持体を剥離するピーリング試験により測定し、剥離したフィルムにPPC用紙が付着した場合を○、付着しない場合を×と評価した。
【0084】
得られた印刷物について、画点形状、熱転写記録媒体とPPC用紙との接着強度を試験、評価した。
【0085】
画点形状試験
得られた画像について、その階調性を知るために、画点の形状を実体顕微鏡で観察し、他色ドット上のドット大きさと受像層兼接着層上のドット大きさの違いを調べ、ドットの面積差が10%以下の場合を○、11〜50%の場合を△、51%以上ある場合を×として評価した。
その結果を下記表2に示す。
【0086】
接着強度試験
熱転写記録媒体とPPC用紙との熱接着後、強制的に支持体を剥離するピーリング試験を行うことにより、接着強度を測定した。ピーリング試験では、剥離したフィルムにPPC用紙が剥離部分面積の81%以上付着した場合を○、20〜80%付着した場合を△、0〜19%付着した場合を×と評価した。
【0087】
なお、本実施例では易接着層により支持体を接着して印刷物を得ているけれども、支持体を剥離して印刷物を得る場合には、粘着テープによるテープ剥離試験を代用することができる。テープ剥離試験では、例えば剥離したテープに熱溶融性インク受像層兼接着層が付着している場合を○、付着していない場合を×とすることができる。
得られた結果を下記表2に示す。
【0088】
実施例5および8、比較例3及び4
厚さが25μmの透明ポリエステルフィルム(東レ(株)製、商品型番:ルミラーS10)を用意し、その片面に下記組成の剥離層塗布液をグラビアコーターを用いて乾燥後の塗膜厚みが1μmになるように塗布し、120℃で2分間、加熱・乾燥して、剥離層を形成した。
【0089】
剥離層塗布液組成
メチルエチルケトン 35重量部
トルエン 35重量部
酢酸ビニル樹脂(ダイセル化成品(株)製商品名:セビアンA700)
20重量部
ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製商品名:バイロン220)
10重量部
次に、この剥離層の上に、第1の樹脂として、東洋紡績(株)製バイロン200、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−70、三井・デュポン・ポリケミカル(株)製エバフレックス40、及びダウケミカル製VMCCのいずれか、第2の樹脂として、電気化学工業(株)製サクノールSN−09Tを、下記表2に示す組み合わせ及び重量比で混合する以外は各々実施例1と同様にして熱溶融性インク受像層兼接着層を形成し、各熱転写記録媒体を得た。
【0090】
得られた熱転写記録媒体を用いて、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0091】
熱溶融性インクリボンに使用されるバインダー樹脂と、各々適用される第1及び第2の樹脂との180度剥離試験剥離力についても、実施例1と同様にして測定した。その結果を下記表1に併記した。
【0092】
また、各第1の樹脂及び各第2の樹脂と、紙との接着性について、実施例1と同様に測定、評価した。得られた結果を下記表1に示す。
【0093】
得られた画像について、実施例1と同様にして、画点形状、熱転写記録媒体とPPC用紙との接着強度を試験、評価した。
【0094】
その結果を下記表2に示す。
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
上記表1及び表2から、実施例1ないし8のように、熱溶融性インク受像層兼接着層に用いられる樹脂が基材との接着性及び感熱溶融性インクのバインダー樹脂成分と剥離力が大きな樹脂と、基材との接着性に優れ且つバインダー樹脂成分と剥離力が小さな樹脂の混合物であると、他色ドット上のドット大きさと受像層兼接着層上のドット大きさの違いがあまり無く、画像の再現性が良好となり、階調性及び接着性が実用的に問題なかった。
【0097】
但し、実施例4及び8に示すように、第1の樹脂と基材との接着性が良くないと、接着性と画点形状が多少低下した。
【0098】
また、比較例1及び3に示すように、第1の樹脂及び第2の樹脂は、その剥離力が10N/cmより大きく、第1の樹脂と基材との接着性が良くないと、接着性及び画点形状が低下した。
【0099】
また、比較例2及び4のように、第1の樹脂及び第2の樹脂の剥離力が10N/cmより大きく、基材と第1の樹脂及び第2の樹脂との接着性が良い場合、画点形状が悪化した。
【0100】
実施例9ないし12,比較例5及び6
熱溶融性インク受像層兼接着層塗布液の代わりに、下記組成の昇華性インク受像層兼接着層塗布液を用いる以外は実施例1と同様にして、透明ポリエステルフィルム上に昇華性インク受像層兼接着層を形成し、各熱転写記録媒体を得た。なお、昇華性インク受像層兼接着層塗布液中の樹脂成分は、第1の樹脂として、東洋紡績(株)製バイロン200、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−85、三井・デュポン・ポリケミカル(株)製エバフレックス45X、及びダウケミカル製VAGHのいずれか、第2の樹脂として、ダウケミカル製VMCCを、下記表3に示す組み合わせ及び重量比で混合した。
【0101】
昇華性インク受像層兼接着層塗布液
メチルエチルケトン 40重量部
トルエン 40重量部
下記表3に示す樹脂の混合物 20重量部
得られた熱転写記録媒体の昇華性インク受像層兼接着層上に、バインダー樹脂として、ダウケミカル社製 VMCHを含有する昇華性インクリボンを適用し、400dpiのサーマルヘッドで、カラー画像を記録を行い、画像を得た。
【0102】
その後、実施例1と同様に熱転写記録媒体とPPC用紙とを熱接着し、印刷物を得た。熱接着時の樹脂層の温度を市販のサーモラベルを用いて測定したところ、約100℃であった。
【0103】
昇華性インクリボンに使用されるバインダー樹脂と、各々適用される第1及び第2の樹脂との180度剥離試験剥離力については、実施例1と同様に試験した。得られた結果を下記表3に示す。
【0104】
また、各第1の樹脂及び各第2の樹脂と、紙との接着性を実施例1と同様に測定、評価した。得られた結果を下記表3に併記する。
【0105】
得られた印刷物について、下記のように階調性試験及び評価を行い、さらに、実施例1と同様にして熱転写記録媒体とPPC用紙との接着強度を試験、評価した。
【0106】
階調性試験
得られた画像について、記録画像濃度をグレタグ・マクベス社製反射濃度計RD−19Aを用いて測定し、階調性を評価した。記録画像濃度が他色のインク上と±10%以内であれば○、±11〜30%であれば△、±31%以上の場合を×とした。
【0107】
その結果を下記表4に示す。
【0108】
実施例13ないし16、比較例7及び8
実施例1と同様にして、透明ポリエステルフィルム上に剥離層を形成した。
【0109】
次に、この剥離層の上に、各々実施例5および6,比較例9ないし12と同様にして昇華性インク受像層兼接着層を形成し、熱転写記録媒体を得た。
【0110】
次に、この剥離層の上に、下記表3に示す樹脂の組み合わせを用いる以外は各々実施例1と同様にして熱溶融性インク受像層兼接着層を形成し、各熱転写記録媒体を得た。
【0111】
なお、昇華性インク受像層兼接着層塗布液中の樹脂成分は、第1の樹脂として、東洋紡績(株)製バイロン240、三菱レイヨン(株)製ダイヤナールBR−70、三井・デュポン・ポリケミカル(株)製エバフレックス40、ダウケミカル製VMCAのいずれか、第2の樹脂として、電気化学工業(株)製サクノールSN−04を、下記表3に示す組み合わせ及び重量比で混合した。
【0112】
得られた熱転写記録媒体を用いて、実施例1と同様にして印刷物を得た。
【0113】
得られた画像について、実施例9と同様にして、階調性、接着強度を試験、評価した。 その結果を下記表4に示す。
【表3】

【0114】
【表4】

【0115】
上記表3及び表4から明らかなように、実施例9ないし16のように、昇華性インク受像層兼接着層に用いられる樹脂が基材との接着性及び昇華性インクのバインダー樹脂成分と剥離力が大きい樹脂と、前記基材との接着性に優れ且つバインダー樹脂成分と剥離力が小さい樹脂の混合物であると、1色の画像濃度と多色の画像濃度との違いが無く、画像の再現性が良好となり、階調性及び接着強度は実用的に問題なかった。
【0116】
但し、実施例12及び16に示すように、第1の樹脂と基材との接着性が良くないと、接着性と階調性が多少低下した。
【0117】
さらに、比較例5及び7に示すように、第1の樹脂及び第2の樹脂は、その剥離力が10N/cmより大きく、第1の樹脂と基材との接着性が良くないと、接着性及び階調性が低下した。
【0118】
比較例6及び8のように、第1の樹脂及び第2の樹脂の剥離力が10N/cmより大きく、基材と第1の樹脂及び第2の樹脂との接着性とが良いと、階調性が悪化した。
【産業上の利用可能性】
【0119】
熱転写記録媒体と共に熱接着が可能な基材であれば、例えば紙、プラスチック等のどのような材質でも、カード、冊子等のどのような形状の印刷物にも利用可能である
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の熱転写記録媒体の構成の一例を表す概略断面図
【図2】本発明の印刷物の一例の構成を表す概略断面図
【図3】本発明の熱転写記録媒体の他の例の構成を表す概略断面図
【図4】本発明の印刷物の他の一例の構成を表す概略断面図
【図5】本発明の熱転写記録媒体のさらに他の例の構成を表す概略断面図
【図6】本発明の印刷物のさらに他の一例の構成を表す概略断面図
【符号の説明】
【0121】
1…支持体、2…熱溶融性インク受像層兼接着層、3…画像層、4…被着体、5…剥離層、6…易接着層、10,20,30…熱転写記録媒体、11,21,31…印刷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱溶融性インクを用いて記録するための熱転写記録媒体であって、支持体と、該支持体上に設けられた熱溶融性インク受像層兼接着層とを含み、該熱溶融性インク受像層兼接着層は、該熱溶融性インクに使用されるバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記熱溶融性インク受像層兼接着層は、第1の樹脂を10ないし90重量%含有することを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記熱溶融性インク受像層兼接着層は、第1の樹脂を50ないし80重量%含有することを特徴とする請求項2に記載の熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記熱溶融性インク受像兼接着層は、0.1ないし50μmの厚さを有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記支持体と前記熱溶融性インク受像層兼接着層との間に、易接着層及び剥離層のうち1つの中間層をさらに設けることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記第1の樹脂は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂、及び塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項7】
基材と、基材上に設けられた熱溶融性インク画像と、該熱溶融性インク画像を介して該基材上に設けられた熱溶融性インク受像層兼接着層とを具備する印刷物であって、該熱溶融性インク受像層兼接着層は、該熱溶融性インクに使用されるバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする印刷物。
【請求項8】
前記熱溶融性インク受像層兼接着層上にさらに保護層を有すること特徴とする請求項7に記載の印刷物。
【請求項9】
熱溶融性インク受像層兼接着層と保護層との間に、さらに易接着層を有する請求項8に記載の印刷物。
【請求項10】
昇華性インクを用いて記録するための熱転写記録媒体であって、支持体と、該支持体上に設けられた昇華性インク受像層兼接着層とを含み、該昇華性インク受像層兼接着層は、該昇華性インクに使用されるバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項11】
前記昇華性インク受像層兼接着層は、第1の樹脂を10ないし90重量%含有することを特徴とする請求項10に記載の熱転写記録媒体。
【請求項12】
前記昇華性インク受像層兼接着層は、第1の樹脂を50ないし80重量%含有することを特徴とする請求項11に記載の熱転写記録媒体。
【請求項13】
前記昇華性インク受像兼接着層は、0.1ないし50μmの厚さを有することを特徴とする請求項10ないし12のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項14】
前記支持体と前記昇華性インク受像層兼接着層との間に、易接着層及び剥離層のうち1つの中間層をさらに設けることを特徴とする請求項10ないし13のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項15】
前記第1の樹脂は、ポリエステル樹脂及びアクリル樹脂、及び塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする請求項10ないし14のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項16】
基材と、基材上に設けられた昇華性インク画像と、該基材上に設けられ、該昇華性インク画像が受像された昇華性インク受像層兼接着層とを具備する印刷物であって、該昇華性インク受像層兼接着層は、該昇華性インクに使用されるバインダー樹脂との180度剥離試験における剥離力が10N/cm以下である第1の樹脂、及び該剥離力が10N/cmより高い第2の樹脂を含有することを特徴とする印刷物。
【請求項17】
前記昇華性インク受像層兼接着層上にさらに保護層を有すること特徴とする請求項16に記載の印刷物。
【請求項18】
昇華性インク受像層兼接着層と保護層との間に、さらに易接着層を有する請求項17に記載の印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−1045(P2006−1045A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177215(P2004−177215)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】