説明

熱転写記録用受容体

【課題】画像が有機溶剤に対して優れた耐性を有するのみならず、指紋の跡が目立たない良好な外観を有する熱転写記録用受容体を提供することを課題とする。
【解決手段】銀色に着色された層を有するプラスチックフィルムからなる支持体上に、アンダー層、受容層を順次設けた熱転写記録用受容体において、アンダー層が顔料と樹脂とを含有し、受容層が顔料と樹脂と架橋剤を含有し、アンダー層に含有される樹脂が、紫外線硬化型樹脂を紫外線照射により硬化させた樹脂であり、受容層に含有される樹脂の少なくとも1種がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩であり、受容層表面の75°光沢度(JIS P−8142)が9〜25%で明度L*(JIS Z−8722−1982)が80〜90であることを特徴とする熱転写記録用受容体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱転写記録用受容体に関し、詳しくは受容体に形成される転写画像が耐溶剤性に優れ、かつ受容体を素手で扱っても受容層上についた指紋の跡が目立たない外観に優れる熱転写記録用受容体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写記録媒体をサーマルヘッドで加熱し、インクを受容体に転写させて画像を形成する方法は一般的に知られており、銘板などのラベル作成に用いられている。このようなラベルがメチルエチルケトン(MEK)のような有機溶剤を使用する環境で使用される場合、ラベルに転写された画像がこのような有機溶剤によって消去しないことが要求される。また工業的な用途で用いられる場合、ラベルの表面が強い力で擦られても、画像が破壊しないことが要求される。
【0003】
インク転写性や耐薬品性に優れる受容体としては例えば特許文献1〜4には受容層にエチレン系アイオノマー樹脂を用いる受容体が示されている。また特許文献5には不飽和カルボン酸オレフィン共重合体とポリイミン系重合体のエチレンイミン付加物からなる塗布層が示されている。しかしその受容層や塗布層に形成された画像の耐溶剤性は十分なものとはいえない。
【0004】
更に転写画像の耐溶剤性を得るために、インク及び受容層に耐溶剤性に優れた同一種類の樹脂を添加することが考案されている。例えば、特許文献6にはインク樹脂と受容層に特定なポリオレフィンを用いることが示されている。また、特許文献7及び8にはインク層と受容層にナイロンを添加することが示されている。しかし、これらの方法でも非常に厳しい使用条件に耐える画像の耐溶剤性を得ることはできない。
【0005】
また輸送機器や電子電機機器の銘板では機器の色に合わせた銀色ラベルのニーズが多い。なかでもラベル表面の光沢を抑えたマット調のものがよく使用される。
しかし銀色のマット調ラベルは素手で扱った場合に指紋がつきそれが目立つため、外観を損ねるという問題があった。
【0006】
指紋の跡をつきにくくするために特許文献9では画像記録層に特定の凸凹をつけることが提案されている。また、インクジェット用の受容体では特許文献10にはインク受容層に特定の樹脂と無機化合物を含有させることが提案されている。しかしいずれも画像の高い耐溶剤性とを両立させるには至らない。
【0007】
【特許文献1】特開平4−115995号公報
【特許文献2】特開平5−286227号公報
【特許文献3】特開平8−43994号公報
【特許文献4】特開平8−58250号公報
【特許文献5】特開2002−113959号公報
【特許文献6】特許第2533456号公報
【特許文献7】特開平4−347688号公報
【特許文献8】特開2001−199171号公報
【特許文献9】特開2006−91808号公報
【特許文献10】特開平9−169159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決すべく、画像が有機溶剤に対して優れた耐性を有するのみならず、指紋の跡が目立たない良好な外観を有する熱転写記録用受容体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、上記課題は以下の手段により解決することができることを見出した。
(1)銀色に着色された層を有するプラスチックフィルムからなる支持体上に、アンダー層、受容層を順次設けた熱転写記録用受容体において、アンダー層が顔料と樹脂とを含有し、受容層が顔料と樹脂と架橋剤を含有し、アンダー層に含有される樹脂が、紫外線硬化型樹脂を紫外線照射により硬化させた樹脂であり、受容層に含有される樹脂の少なくとも1種がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩であり、受容層表面の75°光沢度(JIS P−8142)が9〜25%で明度L*(JIS Z−8722−1982)が80〜90%であることを特徴とする熱転写記録用受容体。
(2)前記受容層がポリエチレンイミンを含有することを特徴とする上記(1)に記載の熱転写記録用受容体。
(3)前記アンダー層の顔料が有機顔料であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の熱転写記録用受容体。
(4)前記受容層表面の平滑度(JIS P−8119)が100〜2000秒であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか一に記載の熱転写記録用受容体。
【0010】
(5)前記支持体上にワックスを含有する剥離層、着色剤を含有するインク層を順次積層した熱転写記録媒体を用いて熱転写記録用受容体に印字する記録方法において、
該インク層がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩を含み、熱転写記録用受容体が上記(1)〜(4)のいずれか一に記載の銀色熱転写記録用受容体であることを特徴とする記録方法。
(6)上記(5)の記録方法により受容体上に画像を形成した記録体。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る熱転写記録用受容体はその画像が有機溶剤に対して優れた耐性を有するのみならず、指紋の跡が目立たない良好な外観を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
銀色に着色された層を有するプラスチックフィルムからなる支持体上に、アンダー層、受容層を順次設けた熱転写記録用受容体において、アンダー層が顔料と樹脂とを含有し、受容層が顔料と樹脂と架橋剤を含有し、アンダー層に含有される樹脂が、紫外線硬化型樹脂を紫外線照射により硬化させた樹脂であり、受容層に含有される樹脂の少なくとも1種がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩であり、受容層表面の75°光沢度(JIS P−8142)が9〜25%で明度L*(JIS Z−8722−1982)が80〜90%であることを特徴とする熱転写記録用受容体が提供される。
【0013】
以下に本発明を詳細に説明する。上述のように本発明の受容体は、銀色に着色された層を有するプラスチックフィルムからなる支持体上に、アンダー層、受容層を順次設けた熱転写記録用受容体において、アンダー層が顔料と樹脂とを含有し、受容層が顔料と樹脂と架橋剤を含有し、アンダー層に含有される樹脂が、紫外線硬化型樹脂を紫外線照射により硬化させた樹脂であり、受容層に含有される樹脂の少なくとも1種がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩であり、受容層表面の75°光沢度(JIS P−8142)が9〜25%で明度L*(JIS Z−8722−1982)が80〜90%であることを特徴とする。すなわち、このような熱転写記録用受容体は、熱転写記録用受容体上に転写された画像が、MEKなどの溶剤に対して優れた耐性を有する。かつ受容体表面の光沢と明度L*を特定の範囲とすることで受容体を素手で扱って受容層上についた指紋の跡を目立たなくすることができる。
【0014】
本発明で光沢度及び明度L*をこの範囲内とするためには具体的に、銀色に着色された層表面の光沢性、アンダー層及び受容層に用いる顔料の粒径、樹脂と顔料の比率、アンダー層及び受容層の厚みによって調節することができる。
本発明では明度L*はJIS Z−8722−1982に準拠した正反射光除去(SCE)タイプの色差計にて測定することができる。
【0015】
本発明では熱転写記録用受容体の支持体としてプラスチックフィルムを用いる。素材としては例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ナイロン、ビニロン等のプラスチックフィルムやポリオレフィンやポリエステル等の合成紙等が用いられる。なかでもポリエステルフィルムが強度や価格の面で好ましい。
【0016】
また本発明では銀色に着色された層を支持体上に設ける。銀色に着色された層は例えば支持体上に蒸着による方法により作成することができる。
金属蒸着層はアルミニウム、銀、亜鉛等の金属を真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング等の方法により支持体上に金属層を形成したものである。金属蒸着層の金属としてはアルミニウムを用いるのが好ましい。また金属蒸着層の厚みは0.01〜0.1μmとするのが好ましい。
また本発明では支持体のプラスチックフィルムとして透明又は半透明のものを用い、アンダー層及び受容層を設けるのとは逆側の面に銀色に着色された層を設けるのが好ましい。具体的には金属蒸着層の設けられていない側の面から測定した光沢度が150〜750%(JIS Z−8741(60°/60°))、更には550〜750%(JIS Z−8741(60°/60°))のものを用いるのが好ましい。
【0017】
本発明では受容層と支持体の間に、顔料と樹脂を含有するアンダー層を設ける。
アンダー層に用いられる顔料としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク等の無機顔料が挙げられる。また、例えば架橋ポリメタクリル酸メチルアクリレートなどの架橋アクリル系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、PTFE粒子等の有機顔料が挙げられる。
なかでも有機顔料を用いるのが好ましい。有機顔料はアンダー層中への分散が良好でより均一な塗膜が得られ、熱転転写画像に抜け等の欠陥が発生しにくくなる。これらの顔料は単独もしくは2種類以上の混合で用いられる。アンダー層に好ましく用いられる顔料の粒径は1.0〜5.0μmであり、また顔料はアンダー層中に5〜50重量%、好ましくは10〜20重量%含有させる。
【0018】
本発明ではアンダー層に用いる樹脂として、紫外線硬化型樹脂を紫外線照射により硬化させた樹脂を用いる。なかでもウレタンアクリレートオリゴマー及び/又はエポキシアクリレートオリゴマーを用いるのが好ましい。また必要に応じてこれらのオリゴマーとともにアクリレートモノマーを添加することもできる。更に紫外線による反応性を高めるための増感剤を添加することもできる。これらの紫外線硬化型樹脂としては具体的には大日本インキ化学工業社製のユニディックなどを用いることができる。
アンダー層樹脂はアンダー層中に50〜90重量%含有させるのが好ましい。
本発明ではアンダー層は層の厚みが0.3〜3.0μmとなるように設けるのが好ましい。0.3μm未満だとアンダー層の強度が低下し、3.0μmを超えると画像の耐溶剤性が低下する。
【0019】
本発明に係る熱転写記録用受容体は受容層のバインダーとしてエチレン−メタクリル酸共重合体の塩を用いる。エチレン−メタクリル酸共重合体の塩はメタクリル酸の一部がNa,K,Ca,Zn,NHなどの陽イオンによって分子鎖間で架橋された構造をとる。中でもNa,K,Znの少なくとも1種を含有するものが好ましい。
一般にエチレン−メタクリル酸共重合体の塩は汎用溶剤には非常に溶解しにくいため、本発明ではエチレン−メタクリル酸共重合体の塩は水分散体に加工されたものを用いるのが好ましい。なかでもエチレン−メタクリル酸共重合体の塩が分散剤を用いずに自己乳化した分散体が好ましい。分散剤や水溶性樹脂を用いて強制乳化した分散体は分散剤や水溶性樹脂が画像の耐水性、耐溶剤性に悪影響を与える。
このようなエチレン−メタクリル酸共重合体の塩としては例えば三井化学社製のケミパールS−650、S−659等が挙げられる。
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩は受容層中に30〜90重量%含有させるのが好ましい。
【0020】
本発明では受容層にエチレン−メタクリル酸共重合体の塩以外の熱可塑性樹脂を必要に応じて添加することもできる。
例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基、カルボン酸Na基、スルホン酸Na基、アセトアセチル基、カチオン基などで変性されたポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチンなどの水溶性樹脂。
ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ウレタン変性ポリエチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリエステル等のエマルジョンや水分散体等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は単独もしくは2種類以上の混合で用いられる。
【0021】
受容層の耐溶剤性を向上させるために、受容層に架橋剤を添加する。
架橋剤としてはカルボジイミド、オキサゾリン、イソシアネート、メラミン化合物、エポキシ化合物、多価金属塩等があげられる。なかでもエポキシ化合物が好ましい。架橋剤は樹脂成分に対して3〜20重量%添加するのが好ましい。
【0022】
受容層には顔料を添加する
顔料としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、ケイ酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、硫酸バリウム、クレー、カオリン、焼成カオリン、タルク等の無機顔料、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン樹脂などの有機顔料を添加することもできる。なかでも炭酸カルシウムを用いるのが好ましい。これらの顔料の添加量は受容層中の30〜70重量%とするのが好ましい。また顔料の粒径は電子顕微鏡観察による平均粒径が0.1〜1.0μmであるのが好ましい。
更に受容層には必要に応じて高級脂肪酸金属塩やパラフィンワックス等の滑剤、消泡剤等の添加剤を含有させることができる。
【0023】
本発明では受容層にエチレンイミン誘導体を添加するのが好ましい。エチレンイミン誘導体を添加することにより、特にMEK、トルエン、キシレン等の溶剤に対する画像耐性を向上させることができる。エチレンイミン誘導体としてはポリエチレンイミン、変性ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン変性アクリル系ポリマー等が挙げられる。
エチレンイミン誘導体は受容層中に5〜75重量%添加するのが好ましい。5%未満では耐溶剤性向上効果が低く、75重量%を超えると耐水性が低下する。更には受容層中に20〜60重量%添加するのが特に好ましい。
【0024】
本発明では受容層は受容層の厚みが0.3〜3.0μmとなるように設けるのが好ましい。0.3μm未満だと受容層の強度が低下し、3.0μmを超えると画像の耐溶剤性が低下する。また受容層表面の平滑度(JIS P−8119)が100〜2000秒にするのが好ましい。100秒未満では画像の精細性が低下し、2000秒を超えると画像の耐溶剤性が低下する。また更に指紋の跡を目立たなくするためには、100〜400秒とするのが好ましい。
【0025】
本発明では受容体の受容層を設けたのと反対側の面に粘着剤層、剥離紙を順次積層することにより、受容体を被着体に粘着可能なラベルの形態に加工することもできる。
本発明では支持体と受容層及び必要に応じて設けた粘着剤層の全体の厚みとして40〜250μmであるのが好ましい。40μm未満では受容体の強度が低下して破れやすくなり、また250μmを超えるとラベルとして被着体に貼った場合にひっかかって脱落しやすくなる。
【0026】
本発明の熱転写記録用受容体に熱転写記録媒体から画像を印字する記録方法において、支持体上にワックスを含有する剥離層、着色剤及びエチレン−メタクリル酸共重合体の塩を含有するインク層を順次積層した熱転写記録媒体を用いると、更に耐溶剤性に優れた転写画像を得ることが出来る。
インク層中のエチレン−メタクリル酸共重合体の塩は、熱転写記録用受容体の受容層に用いたエチレン−メタクリル酸共重合体の塩と同様のものを用いることが出来る。
【0027】
熱転写記録媒体のインク層にはエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩のほかに必要に応じて、その他の樹脂を添加することもできる。
例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル基、スルホン酸Na基、アセトアセチル基、カチオン基などで変性されたポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、澱粉及びその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチンなどの水溶性樹脂。
ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、ウレタン変性ポリエチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−エチレン−塩化ビニル共重合体、ポリエステル等のエマルジョンや水分散体等が挙げられる。
【0028】
インク層には、熱転写性や解像度の向上を目的として、必要に応じて各種の添加物質が添加されてよい。例えば、ワックス状の脂肪酸アミド、各種滑剤、パラフィンワックスのような合成ワックス類、キャンデリラワックスやカルナバワックス等の天然ワックス類等の添加によって熱転写性や解像度を向上させることができる。なお、この場合の滑剤にはリン酸エステル等のほか、シリコーン樹脂や四フッ化エチレン樹脂やフロロアルキルエーテル樹脂等の樹脂粒子類も使用可能である。
インク層に用いられる着色剤としては、要求される色調などに応じて、カーボンブラック、有機顔料、無機顔料または各種染料から適当なものを選択して用いることができる。
【0029】
支持体とインク層の間に剥離層を設ける。剥離層は樹脂とワックスを主成分とするのが好ましい。樹脂とワックスを主成分とする剥離層はサーマルヘッドからの熱エネルギー印加時にインクの支持体からの剥離を容易にし、熱感度を良好なものにする。また転写された画像では剥離層はインク層の上に位置し、溶剤からインク層を保護する。
【0030】
剥離層に添加するバインダーとしては、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、セルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム等が用いられる。
【0031】
剥離層に添加するワックスとしては、例えば、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、米ぬかろう、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、酸変性ポリエチレンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸ワックス、オゾケライト、セレシン、エステルワックス、マルガリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロイン酸、べへニン酸、ステアリルアルコール、べへニルアルコール、ソルビタン、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられる。
【0032】
支持体は公知のフィルムや紙をそのまま使用すればよく、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ナイロン、ポリイミド等のように比較的耐熱性のよいプラスチックフィルム;セロハン;硫酸紙等が好ましく使用される。
【0033】
また熱転写記録媒体には必要に応じて支持体の裏面に保護層を設けてもよい。保護層はサーマルヘッドによる熱印加時に支持体を高温から保護するための層であり、耐熱性の高い熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のほか、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂も使用可能である。なお、保護層形成に好適な樹脂はフッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等であり、これらの樹脂を薄膜状で使用すればよい。また、保護層の設置によって支持体の耐熱性を著しく向上させることができるため、該層の設置によって従来は不適とされていた支持体を用いることもできる。
【0034】
以上に詳記した熱転写層は、ホットメルト塗工法、溶媒を用いた塗工法等で支持体上に積層して設けることができる。このような塗工法で設けられる熱転写層は、全体の厚さを0.1〜10μm、好ましくは0.5〜6.0μmにすればよい。また、各層の層厚としてインク層は0.5〜6.0μm、好ましくは0.8〜3μm、剥離層は0.2〜3.0μm、好ましくは1.0〜2.0μmとすれば良い。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、ここでの部は固形分重量基準である。
【0036】
〔実施例1〕
(1)熱転写記録媒体の作成
支持体としては4.5μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、熱転写記録層を塗工する側の反対側にシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製SD7226)を乾燥後塗工量が0.35μmとなるように塗布乾燥して耐熱滑性層を有する支持体を作成した。
<剥離層処方>
カルナバワックスのトルエン分散液(固形分10%) 90部
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(酢酸ビニル量28重量%
MFR15dg/min)のトルエン溶液(固形分10%) 10部
上記処方の剥離液を支持体の熱転写記録層側に厚みが1.0μmとなるように塗布乾燥して剥離層を設けた。
<インク層処方>
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 62部
カーボンブラックの水分散体(固形分38%) 22部
水 16部
上記組成のインク液を前記中間層上に厚みが0.8μmとなるように塗布乾燥し、インク層を設け、熱転写記録媒体を作成した。
【0037】
(2)熱転写記録用受容体の作成
<アンダー層処方>
ウレタンアクリレート(大日本インキ製ユニディックV‐4221) 18部
1、2αヒドロキシアルキルフェノン
(ラジカル型光重合開始剤 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製) 1部
シリカ(水澤化学製 P−527) 6部
酢酸エチル 75部
上記組成のアンダー層液を東レフィルム加工製アルミ蒸着ポリエステルフィルム(メタルミーTS 厚み50μm)のアルミ蒸着層が設けられていない側に乾燥後厚みが1.2μmとなる様に塗布乾燥した。その後高圧水銀灯(80W/cm)で10秒処理し硬化させた。
<受容層処方>
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 18部
炭酸カルシウム(白石工業製Brilliant-15平均粒径0.15μm) 5部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 0.2部
水 76.8部
上記組成の受容層液をアンダー層上に乾燥後厚みが約1.0μmとなる様に塗布乾燥し受容層を設け熱転写記録用受容体を作成した。受容層表面の平滑度は600秒であった。
また表面光沢度は18%、明度L*は86であった。
なお全ての実施例及び比較例において明度L*はミノルタ製分光式色差計SPECTROPHOTOMETER CM−3700d(ISO 7724/1準拠 正反射光除去(SCE))にて測定した。
【0038】
〔実施例2〕
実施例1において受容層処方として下記のものを用いた以外は実施例1と同様に熱転写記録用受容体を作成した。受容層表面の平滑度は600秒であった。また表面光沢度は18%、明度L*は86であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
<受容層処方>
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 18部
炭酸カルシウム(白石工業製Brilliant-15平均粒径0.15μm) 5部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 0.2部
ポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−1000 固形分30%) 3部
水 73.8部
【0039】
〔実施例3〕
実施例2においてアンダー層処方として下記のものを用いた以外は実施例2と同様に熱転写記録媒体を作成した。受容層表面の平滑度は650秒であった。また表面光沢度は22%、明度L*は84であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
<アンダー層処方>
ウレタンアクリレート(大日本インキ製ユニディックV‐4221) 18部
1、2αヒドロキシアルキルフェノン
(ラジカル型光重合開始剤 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製) 1部
架橋アクリル粉体(綜研化学製 MR2HG 平均粒径2μm) 6部
酢酸エチル 75部
【0040】
〔実施例4〕
実施例3においてアンダー層処方として下記のものを用い、乾燥後厚みが2.5μmとした以外は実施例2と同様に熱転写記録媒体を作成した。受容層表面の平滑度は350秒であった。また表面光沢度は9%、明度L*は85であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
<アンダー層処方>
ウレタンアクリレート(大日本インキ製ユニディックV‐4221) 18部
1、2αヒドロキシアルキルフェノン
(ラジカル型光重合開始剤 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製) 1部
架橋アクリル粉体(綜研化学製 MX−500 平均粒径5μm) 6部
酢酸エチル 75部
【0041】
〔比較例1〕
<受容層処方>
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 11部
炭酸カルシウム(白石工業製カルライトSA 平均粒径4.0μm) 7部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 0.2部
水 80部
上記組成の受容層液を東レフィルム加工製アルミ蒸着ポリエステルフィルム(メタルミーTS 厚み50μm)のアルミ蒸着層が設けられている側に乾燥後厚みが2.5μmとなる様に塗布乾燥した。受容層表面の平滑度は750秒であった。また表面光沢度は6%、明度L*は91であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
【0042】
〔比較例2〕
<受容層処方>
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 13部
炭酸カルシウムスラリー
(白石工業製PCX850 平均粒径1.0μm固形分27%) 15部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 1部
ポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−1000 固形分30%) 7部
水 64部
上記組成の受容層液を東レフィルム加工製アルミ蒸着ポリエステルフィルム(メタルミーTS 厚み50μm)のアルミ蒸着層が設けられている側に乾燥後厚みが0.5μmとなる様に塗布乾燥した。受容層表面の平滑度は2100秒であった。また表面光沢度は35%、明度L*は78であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
【0043】
〔比較例3〕
<受容層処方>
ポリエステル樹脂水分散体
(東洋紡績製 バイロナールMD1335固形分30%) 12部
炭酸カルシウムスラリー
(白石工業製PCX850 平均粒径1.0μm 固形分27%) 22部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 1部
水 65部
上記組成の受容層液を東レフィルム加工製アルミ蒸着ポリエステルフィルム(メタルミーTS 厚み50μm)のアルミ蒸着層が設けられている側に乾燥後厚みが2.5μmとなる様に塗布乾燥した。受容層表面の平滑度は1900秒であった。また表面光沢度は27%、明度L*は83であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
【0044】
〔比較例4〕
<アンダー層処方>
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 72部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 1部
水 27部
上記組成のアンダー層液を東レフィルム加工製アルミ蒸着ポリエステルフィルム(メタルミーTS 厚み50μm)のアルミ蒸着層が設けられていない側に乾燥後厚みが1.5μmとなる様に塗布乾燥しアンダー層を形成した。
このアンダー層上に下記の受容層液を乾燥後厚みが1.0μmとなるように塗布乾燥し、受容層を形成した。受容層表面の平滑度は2000秒であった。また表面光沢度は30%、明度L*は79であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
<受容層処方>
炭酸カルシウム(竹原化学製 SL−1000 平均粒径3.0μm) 9部
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650) 31部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 1部
ポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−1000 固形分30%) 9部
水 50部
【0045】
〔比較例5〕
比較例4において受容層の乾燥後厚みが3.0μmとした以外は比較例4と同様に熱転写記録用受容体を作成した。受容層表面の平滑度は950秒であった。また表面光沢度は27%、明度L*は83であった。また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
【0046】
〔比較例6〕
比較例4において受容層処方として下記のものを用い、乾燥後厚みが3.0μmとした以外は比較例4と同様に熱転写記録用受容体を作成した。受容層表面の平滑度は1100秒であった。また表面光沢度は28%、明度L*は85であった。
また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
<受容層処方>
炭酸カルシウム(白石工業製 PC 平均粒径1.5μm) 10部
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 36部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 1部
ポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP−1000 固形分30%) 9部
水 44部
【0047】
〔比較例7〕
<アンダー層処方>
ウレタンアクリレート(大日本インキ製ユニディックV‐4221) 16部
1、2αヒドロキシアルキルフェノン
(ラジカル型光重合開始剤 チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製) 1部
シリカ(水澤化学製 P−603) 4部
MEK 79部
上記組成のアンダー層液を東レフィルム加工製アルミ蒸着ポリエステルフィルム(メタルミーTS 厚み50μm)のアルミ蒸着層が設けられていない側に乾燥後厚みが1.5μmとなる様に塗布乾燥した。その後高圧水銀灯(80W/cm)で10秒処理し硬化させた。
このアンダー層上に下記の受容層処方を乾燥後厚みが2.5μmとなるように塗布乾燥して熱転写記録用受容体を作成した。受容層表面の平滑度は650秒であった。また表面光沢度は16%、明度L*は91であった。
また熱転写記録媒体は実施例1と同じものを用いた。
<受容層処方>
炭酸カルシウム(日東粉化工業製 SS#80 平均粒径2.6μm) 4部
エチレン−メタクリル酸共重合体の塩(三井化学製 ケミパールS−650)
(固形分27%) 15部
エポキシ化合物(エポキシ当量160mg/eq 固形分100%) 1部
ポリエチレンイミン(日本触媒製エポミンP-1000)(固形分30%) 3部
水 77部
【0048】
上記により得られた熱転写記録媒体及び熱転写記録用受容体を用いて、以下の方法による評価テストを行った。下記条件により印字し評価した。
(印字条件)
プリンター :Zebra社製 96XiIII
印字速度 :2インチ/秒
印字エネルギー :トーン26
【0049】
評価した諸特性は以下の通りである。
(1)耐溶剤性
溶剤0.5ccを綿棒に含ませて転写画像に塗布後、このサンプルについて100g/cmの荷重をかけて30回擦り、画像を観察し以下の基準で評価した。溶剤はキシレンを用いた。
6 ラブテストの結果、テスト前と変化なし。
5 ラブテストの結果、画像の判読は可能だがわずかに傷ができる。
4 ラブテストの結果、画像の判読は可能だがやや傷ができる。
3 ラブテストの結果、画像の判読は可能だが傷ができる。
2 ラブテストの結果、画像は残るが判読は不可能になる。
1 ラブテストの結果、画像が完全に消去してしまう。
(2)指紋の跡
受容体の受容層表面に親指で指紋をつけ、その跡が目立つかどうか目視で判定した。
【0050】
以上の評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
表1から実施例の熱転写記録用受容体はその画像がキシレンに対して優れた耐性を有するのみならず、指紋の跡が目立たない良好な外観を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀色に着色された層を有するプラスチックフィルムからなる支持体上に、アンダー層、受容層を順次設けた熱転写記録用受容体において、アンダー層が顔料と樹脂とを含有し、受容層が顔料と樹脂と架橋剤を含有し、アンダー層に含有される樹脂が、紫外線硬化型樹脂を紫外線照射により硬化させた樹脂であり、受容層に含有される樹脂の少なくとも1種がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩であり、受容層表面の75°光沢度(JIS P−8142)が9〜25%で明度L*(JIS Z−8722−1982)が80〜90%であることを特徴とする熱転写記録用受容体。
【請求項2】
前記受容層がポリエチレンイミンを含有することを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録用受容体。
【請求項3】
前記アンダー層の顔料が有機顔料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱転写記録用受容体。
【請求項4】
前記受容層表面の平滑度(JIS P−8119)が100〜2000秒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の熱転写記録用受容体。
【請求項5】
前記支持体上にワックスを含有する剥離層、着色剤を含有するインク層を順次積層した熱転写記録媒体を用いて熱転写記録用受容体に印字する記録方法において、
該インク層がエチレン−メタクリル酸共重合体の金属塩を含み、熱転写記録用受容体が請求項1〜4のいずれか一に記載の銀色熱転写記録用受容体であることを特徴とする記録方法。
【請求項6】
請求項5の記録方法により受容体上に画像を形成した記録体。

【公開番号】特開2008−229955(P2008−229955A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−70576(P2007−70576)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】