説明

熱電コージェネレーションシステム

【課題】太陽エネルギーを電気エネルギーに安定させて変換することができるようにする。
【解決手段】太陽光を集める集光部31と、集光部31によって集められた太陽光を熱に変換し、変換した熱を集める集熱部32と、集熱部32によって集められた熱を受けて吸熱反応を起こし、反応媒体を生成し、反応媒体が供給されて発熱反応を起こし、熱を発生させる反応器33と、反応器33において発生させられた熱を受け、高温部Hpと低温部Lpとの温度差に応じて電流を発生させる熱電変換部13と、反応器33において生成された反応媒体を反応器33から排出し、排出した反応媒体を反応器33に供給するための反応媒体給排装置とを有する。生成された反応媒体が反応器33から排出され、反応媒体が反応器33に供給されるので、反応器33の温度を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電コージェネレーションシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換して利用することができるようにした発電ユニットが提供されている。
【0003】
該発電ユニットにおいては、熱電変換モジュールに隣接させて蓄熱器が配設され、太陽光が熱電変換モジュールを照射している間は、太陽エネルギーが熱電変換モジュールによって電気エネルギーに変換されるとともに、蓄熱器に熱が蓄えられ、太陽光が熱電変換モジュールを照射しないときに、蓄熱器に蓄えられた熱の熱エネルギーが熱電変換モジュールによって電気エネルギーに変換され、電気エネルギーが利用されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−7976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の発電ユニットにおいては、蓄熱器の温度を調整することができないので、太陽エネルギーを電気エネルギーに安定させて変換することができない。
【0006】
本発明は、前記従来の発電ユニットの問題点を解決して、太陽エネルギーを電気エネルギーに安定させて変換することができる熱電コージェネレーションシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の熱電コージェネレーションシステムにおいては、太陽光を集める集光部と、該集光部によって集められた太陽光を熱に変換し、変換した熱を集める集熱部と、該集熱部によって集められた熱を受けて吸熱反応を起こし、反応媒体を生成し、反応媒体が供給されて発熱反応を起こし、熱を発生させる反応器と、該反応器において発生させられた熱を受け、高温部と低温部との温度差に応じて電流を発生させる熱電変換部と、前記反応器において生成された反応媒体を反応器から排出し、排出した反応媒体を反応器に供給するための反応媒体給排装置とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱電コージェネレーションシステムにおいては、太陽光を集める集光部と、該集光部によって集められた太陽光を熱に変換し、変換した熱を集める集熱部と、該集熱部によって集められた熱を受けて吸熱反応を起こし、反応媒体を生成し、反応媒体が供給されて発熱反応を起こし、熱を発生させる反応器と、該反応器において発生させられた熱を受け、高温部と低温部との温度差に応じて電流を発生させる熱電変換部と、前記反応器において生成された反応媒体を反応器から排出し、排出した反応媒体を反応器に供給するための反応媒体給排装置とを有する。
【0009】
この場合、反応器において、集熱部によって集められた熱により吸熱反応が起こり、反応媒体が生成され、反応媒体が供給されて発熱反応が起こり、熱が発生させられるとともに、反応器において生成された反応媒体が反応器から排出され、反応媒体が反応器に供給されるので、反応器の温度を調整することができる。
【0010】
したがって、熱電変換部において太陽エネルギーを電気エネルギーに安定させて変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの制御ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における蓄熱モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における放熱発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における直接発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における蓄熱発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における通常発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における直接放熱発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における反応器温度の推移を表すタイムチャートである。
【図10】本発明の第1の実施の形態における反応器の反応率の推移を表すタイムチャートである。
【図11】本発明の第1の実施の形態における反応器の蓄積エネルギーの推移を表すタイムチャートである。
【図12】本発明の第1の実施の形態における水タンク内の温度の推移を表すタイムチャートである。
【図13】本発明の第1の実施の形態における水タンク内の水の量の推移を表すタイムチャートである。
【図14】本発明の第2の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第2の実施の形態における反応器温度の推移を表す第1のタイムチャートである。
【図16】本発明の第2の実施の形態における反応器温度の推移を表す第2のタイムチャートである。
【図17】本発明の第2の実施の形態における反応器温度の推移を表す第3のタイムチャートである。
【図18】本発明の第3の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの概念図である。
【図19】本発明の第4の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの概念図である。
【図20】蓄熱エネルギーの推移を表すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の第1の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの概念図である。
【0014】
図において、11は熱電コージェネレーションシステムであり、該熱電コージェネレーションシステム11は、太陽エネルギーを吸収し、熱を蓄える太陽エネルギー吸収・蓄熱部12、該太陽エネルギー吸収・蓄熱部12からの熱を受け、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換部13、該熱電変換部13において発生させられた電流が送られ、電力が消費される電力消費部としての電気機器Ld、前記熱電変換部13において熱を回収する熱回収装置14、断熱材料によって形成され、反応媒体としての水を収容し、蓄えるための反応媒体収容部としての水タンク15、該水タンク15において熱を回収する熱回収装置16等を備え、太陽エネルギー吸収・蓄熱部12と熱電変換部13とが第1の配管系21を介して、熱電変換部13と熱回収装置14とが第2の配管系22を介して、太陽エネルギー吸収・蓄熱部12と水タンク15とが第3の配管系23を介して、水タンク15と熱回収装置16とが第4の配管系24を介して接続される。前記水タンク15及び第3の配管系23によって反応媒体給排装置が構成される。
【0015】
前記太陽エネルギー吸収・蓄熱部12は、太陽光を集める集光部31、該集光部31によって集められた太陽光が照射され、太陽光を熱に変換し、変換した熱を集める集熱部32、該集熱部32によって集められた熱を蓄熱し、放熱する蓄熱部としての反応器33等を備える。前記集光部31は透明な材料、本実施の形態においては、ガラスから成る密閉された筐(きょう)体41外に、前記集熱部32は筐体41内に配設され、集熱部32及び筐体41によって包囲された空間に前記反応器33が形成される。前記筐体41は、外壁及び内壁から成り、外壁と内壁との間の空間が真空にされるか、又は希ガスが充填(てん)されて断熱構造を形成する。また、内壁の内周面に長波長の赤外線を反射する膜が被覆される。筐体41にガラス以外の断熱材料を使用することができるが、集光部31と対向する部分には、断熱材料として、透明な材料、例えば、ガラスを使用するのが好ましい。
【0016】
なお、前記筐体41の所定の箇所には、反応器33内の圧力を調整するための圧力調整部としての圧力調整弁43が配設される。該圧力調整弁43を操作することによって、反応器33内の圧力を調整し、一定にすると、反応器33の温度(以下「反応器温度」という。)Tを日射量に対応する250〔℃〕以上、かつ、300〔℃〕以下の所定の温度(以下「蓄熱温度T1」という。)、例えば、250〔℃〕に維持することができる。
【0017】
前記集光部31は複数のレンズ35をマトリックス状に並べることによって形成され、各レンズ35の表面には、太陽光が反射されないように反射防止膜が被覆される。なお、本実施の形態においては、集光部31及び集熱部32を配設するようになっているが、集熱部32だけを配設することができる。
【0018】
また、集熱部32の表面には、太陽光の赤外線成分の吸収効率を高くするとともに、放射による熱の損失を少なくするために、選択吸収膜、例えば、赤外線反射防止層及び吸収・蓄熱層から成る膜が被覆される。前記吸着・蓄熱層は、材料の表面を粗く加工することによって形成したり、ナノチューブ黒体、金属黒体等の膜を被覆することによって形成したりすることができる。
【0019】
そして、前記反応器33は、多孔質構造を有し、無機材料から成る、酸化マグネシウム/水(MgO/H2 O)、塩化カルシウム/メチルアミン(CaCl2 /CH3 NH2 )、酸化カルシウム/水(CaO/H2 O)、酸化カルシウム/酸化鉛/二酸化炭素(CaO/PbO/CO2 )等の蓄熱材(化学蓄熱材)、本実施の形態においては、酸化マグネシウム/水を充填することによって形成される。
【0020】
なお、蓄熱材として酸化マグネシウム/水、酸化カルシウム/水等を使用する場合、水が、塩化カルシウム/メチルアミンを使用する場合、メチルアミンが、酸化カルシウム/酸化鉛/二酸化炭素(CaO/PbO/CO2 )を使用する場合、二酸化炭素がそれぞれ反応媒体とされる。
【0021】
酸化マグネシウム/水は、水酸化マグネシウムと酸化マグネシウムとの可逆反応、
Mg(OH)2 ⇔MgO+H2
によって蓄熱及び放熱を行う。そこで、反応器33において、集熱部32によって集められた熱によって水酸化マグネシウムを加熱すると、
Mg(OH)2 →MgO+H2
の反応、すなわち、吸熱反応が起こり、酸化マグネシウム及び水が生成され、これに伴って蓄熱が行われる。なお、水は水蒸気の状態で生成される。
【0022】
また、酸化マグネシウムに水を加えると、
MgO+H2 O→Mg(OH)2
の反応、すなわち、発熱反応が起こり、水酸化マグネシウムが生成され、熱が発生し、これに伴って放熱が行われる。
【0023】
なお、無機材料のほかに、吸着材、水素吸蔵合金、有機材料等から成る蓄熱材を使用することができる。
【0024】
そして、本実施の形態においては、前記熱電変換部13にビスマス・テルル(Bi2 Te3 )系の熱電モジュールが使用される。該熱電モジュールは、金属板から成る高温部Hp、n型半導体、p型半導体、及び金属板から成る低温部Lpを備え、高温部Hpを加熱し、低温部Lpを冷却することによって、低温部Lpの金属板、n型半導体、高温部Hpの金属板、p型半導体及び低温部Lpの金属板の順に電流が流れる。本実施の形態においては、例えば、高温部Hpを、250〔℃〕に、低温部Lpを30〔℃〕にしたときの発電効率が6〔%〕にされる。
【0025】
また、前記第1の配管系21は、反応器33に埋設させて配設された熱交換器he1、前記高温部Hpに接触させて配設された熱交換器he2、及び前記熱交換器he1、he2間に配設された第1、第2の弁としての開閉弁vb1、vb2を備える。
【0026】
そして、前記第2の配管系22は、前記低温部Lpに配設された熱交換器he3、前記熱回収装置14、及び熱交換器he3と熱回収装置14との間に配設された第3、第4の弁としての開閉弁vb3、vb4を備える。
【0027】
また、前記第3の配管系23は、前記反応器33において吸熱反応によって生成された水蒸気を収集し、水タンク15に排出するための反応媒体排出管としての水蒸気排出管45、水タンク15に収容され、蓄えられた水を反応器33に供給するための反応媒体供給管としての水供給管46、前記水蒸気排出管45における所定の位置に配設され、逆止弁構造を有する第5の弁としての圧力弁vb5、前記水供給管46における所定の位置に配設された第6の弁としての開閉弁vb6等を有する。
【0028】
前記水蒸気排出管45においては、圧力弁vb5より上流側、すなわち、反応器33側の圧力と、圧力弁vb5より下流側、すなわち、水タンク15側の圧力との圧力差によって圧力弁vb5が開かれ、水蒸気が水タンク15に流れるようになっているが、水蒸気排出管45に、圧力弁に代えて開閉弁を配設し、該開閉弁をソレノイド等によって開くことにより水蒸気を流すことができる。また、前記水供給管46においては、水タンク15内の水が自重で反応器33に供給されるようになっているが、ポンプを配設し、該ポンプによって反応器33に供給することができる。本実施の形態においては、筐体41に配設された図示されない圧力開放弁を開くことによって、反応器33内の圧力を低くし、自重による水の反応器33への供給を促進させるようにしている。
【0029】
そして、前記水蒸気排出管45の筐体41内の部分に排出部45aが形成され、該排出部45aに、水蒸気を排出部45a内に収集し、排出するための図示されない複数の穴が形成され、前記水供給管46の筐体41内の部分に供給部46aが形成され、該供給部46aに、水を前記反応器33内に供給し、噴出させるための図示されない複数の穴が形成される。供給部46aの前記各穴に噴霧ノズルが配設され、該噴霧ノズルによって反応器33内に水が噴射される。
【0030】
また、前記第4の配管系24は、水タンク15内に配設され、水タンク15に排出された水蒸気を凝縮させて水にするための熱交換器he4、該熱交換器he4と前記熱回収装置16との間に配設された第7、第8の弁としての開閉弁vb7、vb8を備える。
【0031】
次に、前記構成の熱電コージェネレーションシステム11の制御装置について説明する。
【0032】
図2は本発明の第1の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの制御ブロック図である。
【0033】
図において、50は熱電コージェネレーションシステム11の全体の制御を行う制御部、51は図示されないキー、ボタン等の操作要素を備えた操作部、52は図示されないLED画面等の表示要素を備えた表示部である。
【0034】
なお、前記制御部50は、コンピュータとして機能する図示されない演算部としてのCPU、図示されない記憶装置としてのRAM、ROM等のメモリを備える。また、前記操作部51は、タッチパネルによって形成することもでき、その場合、表示部としても機能する。
【0035】
そして、53は前記集光部31に配設され、日射量を検出する日射量検出部としての日射量センサ、54は集光部31に配設され、集光部31の温度を検出する集光用の温度検出部としての集光部温度センサ、55は前記反応器33に配設され、前記反応器温度Tを検出する蓄熱・放熱用の温度検出部としての反応器温度センサ、56は反応器33に配設され、反応器33内の圧力を検出する蓄熱・放熱用の圧力検出部としての反応器圧力センサ、58は前記高温部Hpに配設され、高温部Hpの温度を検出する第1の熱電用の温度検出部としての高温部温度センサ、59は前記低温部Lpに配設され、低温部Lpの温度を検出する第2の熱電用の温度検出部としての低温部温度センサ、43は圧力調整弁、60は前記電気機器Ldで消費される電力を検出する電力検出部としての電力計、61は前記水蒸気排出管45の所定の箇所に配設され、水蒸気の流量を検出する第1の流量検出部としての水蒸気流量計、62は前記水供給管46の所定の箇所に配設され、水の流量を検出する第2の流量検出部としての水流量計、63は前記水タンク15内に配設され、水タンク15内の温度Twを検出する反応媒体用の温度検出部としてのタンク温度センサ、64は水タンク15内に配設され、水タンク15内の圧力Pwを検出する反応媒体用の圧力検出部としてのタンク圧力センサ、vb1〜vb4、vb6〜vb8は開閉弁であり、vb5は圧力弁である。なお、本実施の形態において、前記日射量センサ53は日射量を検出するようになっているが、日射の有無を検出することができる。
【0036】
本実施の形態においては、操作者が、操作部51を操作することによって、第1のモードとしての蓄熱モード、第2のモードとしての放熱発電モード、第3のモードとしての直接発電モード、第4のモードとしての蓄熱発電モード、第5のモードとしての通常発電モード及び第6のモードとしての直接放熱発電モードの各モードのうちの所定のモードを選択すると、圧力調整弁43、開閉弁vb1〜vb4、vb6が開閉され、熱電コージェネレーションシステム11が選択されたモードで運転される。なお、操作者が、圧力調整弁43、開閉弁vb1〜vb4、vb6を手動で開閉することによって、熱電コージェネレーションシステム11を各モードで運転することもできる。
【0037】
次に、前記熱電コージェネレーションシステム11を運転するモードについて説明する。
【0038】
図3は本発明の第1の実施の形態における蓄熱モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図、図4は本発明の第1の実施の形態における放熱発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図、図5は本発明の第1の実施の形態における直接発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における蓄熱発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図、図7は本発明の第1の実施の形態における通常発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図、図8は本発明の第1の実施の形態における直接放熱発電モードにおける熱電コージェネレーションシステムの動作を示す図である。なお、前記各図は簡素化されている。
【0039】
まず、操作者が、操作部51を操作して蓄熱モードを選択すると、制御部50の図示されないモード設定処理手段としての蓄熱処理手段は、モード設定処理としての蓄熱処理を行い、圧力調整弁43の開度を調整し、開閉弁vb1〜vb4、vb6を閉じ、開閉弁vb7、vb8を開き、熱電コージェネレーションシステム11を蓄熱モードで運転する。該蓄熱モードにおいて、集光部31によって集められた太陽光が集熱部32に照射され(図3における矢印A)、集熱部32に照射された太陽光が熱に変換され、変換された熱が反応器33に伝達され、反応器33が加熱される。その結果、反応器温度Tは前記蓄熱温度T1に維持される。
【0040】
そして、反応器33は蓄熱材として機能させられ、反応器33において、水酸化マグネシウムが加熱され、
Mg(OH)2 →MgO+H2
の吸熱反応が起こり、酸化マグネシウム及び高温の水が水蒸気の状態で生成される。これにより、反応器33において蓄熱が行われる。
【0041】
生成された水蒸気は排出部45aによって収集され、水タンク15に排出される(図3における矢印B)。このとき、水蒸気の圧力で圧力弁vb5が開放される。なお、反応器33は多孔質構造を有するので、水蒸気は反応器33内を循環させられ、円滑に排出部45aに収集される。
【0042】
水タンク15に排出された水蒸気は、熱交換器he4によって熱回収媒体としての水(冷却水)によって冷却されて凝縮し、反応器33の圧力が1気圧である場合に、100〔℃〕の水になる。前記冷却水は、水蒸気の凝縮に伴って加熱され、熱回収装置16に送られ、熱回収装置16において熱が回収される。なお、熱回収装置16において回収された熱を、必要に応じて建物躯体、床等に蓄え、暖房用として利用することができる。また、熱回収装置16において、熱回収媒体として冷媒を使用することができる。
【0043】
この場合、前記蓄熱処理手段は、圧力調整弁43の開度を調整することによって、反応器33内の圧力を一定の値に維持する。これにより、水蒸気の圧力が一定になり、水タンク15における凝縮熱が一定になるので、熱回収装置16において一定の温度で熱を回収することができる。
【0044】
また、操作者が、操作部51を操作して放熱発電モードを選択すると、前記モード設定処理手段としての放熱発電処理手段は、モード設定処理としての放熱発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb4、b6を開き、開閉弁vb7、vb8を閉じ、熱電コージェネレーションシステム11を放熱発電モードで運転する。該放熱発電モードにおいて、水タンク15内の水が水供給管46を介して供給部46aに送られ(図4における矢印C)、供給部46aから反応器33内に供給され、噴出される。
【0045】
該反応器33は蓄熱材として機能させられ、反応器33において、酸化マグネシウムに水が加えられ、
MgO+H2 O→Mg(OH)2
の発熱反応が起こり、水酸化マグネシウムが生成され、熱が発生する。
【0046】
反応器33において発生した熱は、熱交換器he1によって熱伝達媒体としての水に伝達され、熱交換器he2によって高温部Hpに伝達され、高温部Hpを加熱する。また、低温部Lpは、熱交換器he3によって熱回収媒体としての冷却水によって冷却される。そして、該冷却水は、低温部Lpによって加熱され、熱回収装置14に送られ(図4における矢印D)、熱回収装置14において熱が回収される。なお、熱回収装置14において回収された熱を、熱回収装置16と同様に、必要に応じて建物躯体、床等に蓄え、暖房用として利用することができる。また、熱回収装置16において、熱回収媒体として冷媒を使用したり、地熱で所定の温度に加熱された水を使用したりすることができる。
【0047】
そして、高温部Hpが加熱され、低温部Lpが冷却されると、熱電変換部13において発電が行われ、高温部Hpの温度と低温部Lpの温度との温度差に応じた電流が発生させられる。したがって、該電流を前記電気機器Ldに送り、該電気機器Ldにおいて電力を利用することができる。
【0048】
この場合、前記放熱発電処理手段が、開閉弁vb6の開度を調整することによって、反応器33に供給される水の量又は流速を一定にすると、反応器33内の圧力(水蒸気分圧)が一定になる。したがって、反応器温度Tが前記蓄熱温度T1に維持されるので、高温部Hpの温度と低温部Lpの温度との温度差を一定に維持することができる。その結果、効率の高い温度領域で熱電変換部13による発電を行うことができる。なお、放熱発電処理手段は、開閉弁vb6の開度を調整するのに併せて圧力調整弁43の開度を調整することができる。
【0049】
また、操作者が、操作部51を操作して直接発電モードを選択すると、前記モード設定処理手段としての直接発電処理手段は、モード設定処理としての直接発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb4を開き、開閉弁vb6〜vb8を閉じ、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転する。該直接発電モードにおいて、集光部31によって集められた太陽光は集熱部32に照射され、集熱部32に照射された太陽光が熱に変換され、変換された熱が反応器33に伝達されるが、該反応器33は熱伝達部材として機能させられ、吸熱反応及び発熱反応はいずれも起こらず、伝達された熱がそのまま熱交換器he1に伝達される(図5における矢印E)。
【0050】
そして、熱交換器he1に伝達された熱は、熱伝達媒体としての水に伝達され、熱交換器he2によって高温部Hpに伝達され、高温部Hpを加熱する。また、低温部Lpは、熱交換器he3によって熱回収媒体としての冷却水によって冷却される。該冷却水は、低温部Lpによって加熱され、熱回収装置14に送られ、熱回収装置14において熱が回収される。
【0051】
そして、高温部Hpが加熱され、低温部Lpが冷却されると、熱電変換部13において発電が行われ、高温部Hpの温度と低温部Lpの温度との温度差に応じた電流が発生させられる。したがって、該電流を前記電気機器Ldに送り、該電気機器Ldにおいて電力を利用することができる。
【0052】
この場合、反応器33は多孔質構造を有するので、水蒸気は反応器33内を循環させられ、円滑に熱を伝達する。
【0053】
また、操作者が、操作部51を操作して蓄熱発電モードを選択すると、前記モード設定処理手段としての蓄熱発電処理手段は、モード設定処理としての蓄熱発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb4、vb7、vb8を開き、熱電コージェネレーションシステム11を蓄熱発電モードで運転する。該蓄熱発電モードにおいて、集光部31は集めた太陽光を集熱部32に照射し(図6における矢印F)、集熱部32は照射された太陽光を熱に変換し、変換した熱を反応器33に伝達する。
【0054】
該反応器33は蓄熱材及び熱伝達部材として機能させられ、反応器33において、集熱部32から伝達された熱の所定の量、本実施の形態においては、50〔%〕によって水酸化マグネシウムが加熱され、
Mg(OH)2 →MgO+H2
の吸熱反応が起こり、酸化マグネシウム及び高温の水が水蒸気の状態で生成される。これにより、反応器33において蓄熱が行われる。
【0055】
生成された水蒸気は排出部45aに収集され、水タンク15に排出される(図6における矢印G)。このとき、水蒸気の圧力で圧力弁vb5が開放される。
【0056】
そして、水タンク15に排出された水蒸気は、熱交換器he4によって熱回収媒体としての冷却水によって冷却されて凝縮し、100〔℃〕の水になる。前記冷却水は、水蒸気の凝縮に伴って加熱され、熱回収装置16に送られ、熱回収装置16において熱が回収される。
【0057】
また、前記反応器33は、熱伝達部材としても機能させられるので、集熱部32から伝達された熱の残り、すなわち、50〔%〕をそのまま熱交換器he1に伝達する(図6における矢印H)。
【0058】
そして、熱交換器he1に伝達された熱は、熱伝達媒体としての水に伝達され、熱交換器he2によって高温部Hpに伝達され、高温部Hpを加熱する。また、低温部Lpは、熱交換器he3によって熱回収媒体としての冷却水によって冷却される。該冷却水は、低温部Lpによって加熱され、熱回収装置14に送られ、熱回収装置14において熱が回収される。
【0059】
そして、高温部Hpが加熱され、低温部Lpが冷却されると、熱電変換部13において発電が行われ、高温部Hpの温度と低温部Lpの温度との温度差に応じた電流が発生させられる。したがって、該電流を前記電気機器Ldに送り、該電気機器Ldにおいて電力を利用することができる。
【0060】
この場合、前記蓄熱発電処理手段は、開閉弁vb1、vb2の開度を調整し、熱交換器he1、he2を流れる水の量を設定することによって、集熱部32から伝達された熱における、水酸化マグネシウムを加熱する熱の割合を調整する。
【0061】
また、操作者が、操作部51を操作して通常発電モードを選択すると、前記モード設定処理手段としての通常発電処理手段は、モード設定処理としての通常発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb4を開き、開閉弁vb6〜vb8を閉じ、熱電コージェネレーションシステム11を通常発電モードで運転する。該通常発電モードにおいて、集光部31によって集められた太陽光は集熱部32に照射され(図7における矢印I)、集熱部32に照射された太陽光が熱に変換され、変換された熱が反応器33に伝達されるが、該反応器33は蓄熱材及び熱伝達部材として機能させられ、吸熱反応及び発熱反応はいずれも起こらず、反応器33に伝達された熱、及び既に反応器33に蓄えられた熱が熱交換器he1に伝達される(図7における矢印J)。
【0062】
そして、熱交換器he1に伝達された熱は、熱伝達媒体としての水に伝達され、熱交換器he2によって高温部Hpに伝達され、高温部Hpを加熱する。また、低温部Lpは、熱交換器he3によって熱回収媒体としての冷却水によって冷却される。該冷却水は、低温部Lpによって加熱され、熱回収装置14に送られ、熱回収装置14において熱が回収される。
【0063】
そして、高温部Hpが加熱され、低温部Lpが冷却されると、熱電変換部13において発電が行われ、高温部Hpの温度と低温部Lpの温度との温度差に応じた電流が発生させられる。したがって、該電流を前記電気機器Ldに送り、該電気機器Ldにおいて電力を利用することができる。
【0064】
この場合、反応器33は多孔質構造を有するので、水蒸気は反応器33内を循環させられ、円滑に熱を伝達する。
【0065】
また、操作者が、操作部51を操作して直接放熱発電モードを選択すると、前記モード設定処理手段としての直接放熱発電処理手段は、モード設定処理としての直接放熱発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb4、vb6を開き、熱電コージェネレーションシステム11を直接放熱発電モードで運転する。該直接放熱発電モードにおいて、集光部31によって集められた太陽光が集熱部32に照射され(図8における矢印K)、集熱部32に照射された太陽光が熱に変換され、変換された熱が反応器33に伝達されるが、該反応器33は蓄熱材及び熱伝達部材として機能させられ、吸熱反応は起こらず、伝達された熱はそのまま熱交換器he1に伝達される。
【0066】
また、水タンク15内の水が水供給管46を介して供給部46aに送られ(図8における矢印L)、供給部46aから反応器33内に供給され、噴出される。
【0067】
該反応器33は蓄熱材としても機能させられるので、反応器33において、酸化マグネシウムに水が加えられ、
MgO+H2 O→Mg(OH)2
の発熱反応が起こり、水酸化マグネシウムが生成され、熱が発生する。
【0068】
集熱部32から反応器33に伝達された熱及び反応器33において発生した熱は、熱交換器he1によって熱伝達媒体としての水に伝達され、熱交換器he2によって高温部Hpに伝達され、高温部Hpを加熱する。また、低温部Lpは、熱交換器he3によって熱回収媒体としての冷却水によって冷却される。該冷却水は、低温部Lpによって加熱され、熱回収装置14に送られ(図8における矢印M)、熱回収装置14において熱が回収される。
【0069】
そして、高温部Hpが加熱され、低温部Lpが冷却されると、熱電変換部13において発電が行われ、高温部Hpの温度と低温部Lpの温度との温度差に応じた電流が発生させられる。したがって、該電流を前記電気機器Ldに送り、該電気機器Ldにおいて電力を利用することができる。
【0070】
この場合、前記直接放熱発電処理手段が、開閉弁vb6の開度を調整することによって、日射量に応じて、反応器33に供給される水の量又は流速を設定すると、反応器33内の圧力(水蒸気分圧)が一定になる。したがって、反応器温度Tが前記蓄熱温度T1に維持されるので、高温部Hpと低温部Lpとの温度差を維持することができる。その結果、効率の高い温度領域で熱電変換部13による発電を行うことができる。なお、開閉弁vb6の開度を調整するのに併せて圧力調整弁43の開度を調整することができる。
【0071】
また、前記直接放熱発電処理手段は、開閉弁vb6の開度を調整することによって、高温部Hpに伝達される熱の所定の量、本実施の形態においては、50〔%〕を集熱部32からの熱とし、残りの熱を反応器33において発生させた熱とする。
【0072】
次に、操作者が蓄熱発電モードを選択し、続いて、放熱発電モードを選択したときの反応器33及び水タンク15の状態について説明する。
【0073】
図9は本発明の第1の実施の形態における反応器温度の推移を表すタイムチャート、図10は本発明の第1の実施の形態における反応器の反応率の推移を表すタイムチャート、図11は本発明の第1の実施の形態における反応器の蓄積エネルギーの推移を表すタイムチャート、図12は本発明の第1の実施の形態における水タンク内の温度の推移を表すタイムチャート、図13は本発明の第1の実施の形態における水タンク内の水の量の推移を表すタイムチャートである。
【0074】
操作者が蓄熱発電モードを選択し、タイミングt0で、集光部31による太陽光の集光が開始されると、集熱部32は照射された太陽光を熱に変換し、変換した熱を反応器33に伝達し、反応器33を加熱する。その結果、図9に示されるように、タイミングt1で、反応器温度Tは前記蓄熱温度T1、例えば、250〔℃〕になり、その後、250〔℃〕に維持される。
【0075】
この間、反応器33において、水酸化マグネシウムが加熱されて吸熱反応が起こり、酸化マグネシウム及び水が生成される。これにより、反応器33において蓄熱が行われる。したがって、図10に示されるように、水酸化マグネシウムにおける、吸熱反応を起こした部分の割合、すなわち、反応器33の反応率γが時間の経過に伴って大きくなり、図11に示されるように、反応器33に蓄えられるエネルギー、すなわち、蓄熱エネルギーQが時間の経過に伴って大きくなる。
【0076】
また、反応器33において生成された水蒸気は水タンク15に排出され、凝縮し、図12及び13に示されるように、水タンク15内の水の温度Twは100〔℃〕に維持され、水タンク15内の水の量Sは時間の経過に伴って多くなる。
【0077】
前述されたように、タイミングt1で、反応器温度Tが250〔℃〕になると、熱電変換部13による発電が開始され、吸熱反応が継続し、反応率γが時間の経過に伴って大きくなる。この間、発電が行われるのに伴って蓄熱エネルギーQの変化率が小さくなる。
【0078】
そして、タイミングt2で、すべての水酸化マグネシウムの吸熱反応が終了し、図10に示されるように、反応率γが100〔%〕になると、図13に示されるように、水タンク15内の水の量Sは最大になる。これに伴って、蓄熱発電モードは終了する。
【0079】
続いて、操作者が放熱発電モードを選択すると、水タンク15内の水の反応器33への供給が開始され、反応器33において、酸化マグネシウムに水が加えられて発熱反応が起こり、水酸化マグネシウムが生成される。これにより、反応器33において放熱が行われる。
【0080】
したがって、図13に示されるように、水タンク15内の水の量Sは時間の経過に伴って少なくなり、図10に示されるように、反応率γが時間の経過に伴って小さくなる。この間、発電が行われるのに伴って、図11に示されるように、蓄熱エネルギーQが時間の経過に伴って小さくなる。
【0081】
そして、タイミングt3で、水タンク15内の水の量Sが0〔l〕になるとともに、すべての酸化マグネシウムの発熱反応が終了し、図10に示されるように、反応率γが0〔%〕になる。これに伴って、放熱発電モードは終了する。
【0082】
このように、本実施の形態においては、反応器33において、集熱部32によって集められた熱により吸熱反応が起こり、水が生成され、水が供給されて発熱反応が起こり、熱が発生させられるとともに、反応器33において生成された水が反応器33から排出され、水が反応器33に供給されるので、反応器33の温度を調整することができる。
【0083】
したがって、熱電変換部13において太陽エネルギーを電気エネルギーに安定させて変換することができる。
【0084】
ところで、前述されたように、反応器33の熱が熱交換器he1、he2を介して高温部Hpに伝達されると、熱電変換部13において、高温部Hpの温度と低温部Lpの温度との温度差に応じた電流が発生させられ、該電流が前記電気機器Ldに送られ、該電気機器Ldにおいて電力が利用される。
【0085】
したがって、前記電気機器Ldにおいて所定の電力が消費される場合、必要な電力、すなわち、要求電力に応じた熱を反応器33から高温部Hpに伝達する必要がある。
【0086】
そこで、要求電力に応じて熱電コージェネレーションシステム11を通常発電モード、放熱発電モード、直接発電モード及び直接放熱発電モードで運転するようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0087】
図14は本発明の第2の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの動作を示すフローチャート、図15は本発明の第2の実施の形態における反応器温度の推移を表す第1のタイムチャート、図16は本発明の第2の実施の形態における反応器温度の推移を表す第2のタイムチャート、図17は本発明の第2の実施の形態における反応器温度の推移を表す第3のタイムチャートである。
【0088】
まず、熱電コージェネレーションシステム11の作動が開始されると、制御部50の図示されない反応器情報取得処理手段は、反応器情報取得処理を行い、反応器温度T及び日射量を読み込む(取得する。)(ステップS1)。続いて、前記制御部50の図示されない蓄熱温度設定処理手段は、蓄熱温度設定処理を行い、前記ROMに形成された蓄熱温度マップを参照し、日射量に対応する蓄熱温度T1を読み出し、該蓄熱温度T1を設定する(ステップS2)。なお、前記蓄熱温度マップにおいて、日射量と蓄熱温度T1(250〔℃〕以上、かつ、300〔℃〕以下の範囲内)とは、対応させて、日射量が多いほど蓄熱温度T1が高く、日射量が少ないほど蓄熱温度T1が低くなるように記録される。なお、蓄熱温度T1によって第1の基準温度が構成される。
【0089】
そして、蓄熱温度設定処理手段は、圧力調整部としての圧力調整弁43の開度を調整することによって、蓄熱部としての反応器33内の圧力を変更し、反応器温度Tが蓄熱温度T1になるように、蓄熱温度T1が高い場合、反応器33内の圧力を高くし、蓄熱温度T1が低い場合、反応器33内の圧力を低くする。
【0090】
続いて、図15に示されるように、タイミングt11で、反応器温度Tが蓄熱温度T1になると、前記蓄熱処理手段は、蓄熱処理を行い、圧力調整弁43の開度を調整し、第1〜第4、第6の弁としての開閉弁vb1〜vb4、vb6を閉じ、第7、第8の弁としての開閉弁vb7、vb8を開き、前記熱電コージェネレーションシステム11を蓄熱モードで運転する(ステップS3)。該蓄熱モードにおいて、集光部31によって集められた太陽光が集熱部32に照射され、集熱部32に照射された太陽光が熱に変換され、変換された熱が反応器33に伝達され、反応器33が加熱される。
【0091】
このとき、水蒸気の圧力で第5の弁としての圧力弁vb5が開放されるので、前記蓄熱処理手段は、圧力弁vb5の開度を調整しないが、前記開閉弁vb7、vb8の開度を、圧力弁vb5の開度に応じて調整する。そのために、蓄熱処理手段は、第1の流量検出部としての前記水蒸気流量計61によって検出された水蒸気の流量を読み込み、水蒸気の流量に応じて前記開閉弁vb7、vb8の開度を調整する。
【0092】
したがって、反応器33において吸熱反応が起こり、図15に示されるように、反応器温度Tは、蓄熱温度T1に維持される。なお、タイミングt12で、すべての水酸化マグネシウムの吸熱反応が終了した後も、集熱部32は照射された太陽光を熱に変換し続けるので、反応器温度Tは上昇し、蓄熱温度T1より高くなる。
【0093】
そして、タイミングt13で、反応器温度Tが、熱電コージェネレーションシステム11の限界温度、すなわち、システム限界温度Tmaxになると、制御部50の図示されない電力要求判断処理手段は、電力要求判断処理を行い、電力検出部としての前記電力計60によって検出された電力を読み込み、電力消費部としての電気機器Ldによって熱電変換部13に対して電力が要求されるかどうか、すなわち、電力要求があるかどうかを判断する(ステップS4)。
【0094】
電力要求がある場合、制御部50の図示されない直接発電判断処理手段は、直接発電判断処理を行い、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転することができるかどうかを判断する(ステップS5、S6)。
【0095】
そのために、前記直接発電判断処理手段は、前記蓄熱温度T1、反応媒体用の温度検出部としてのタンク温度センサ63によって検出された反応媒体収容部としてのタンク15内の温度Tw、タンク圧力センサ64によって検出されたタンク15内の圧力Pwを読み込み、前記蓄熱温度T1、温度Tw及び圧力Pwに基づいて、反応器33における蓄熱エネルギーQを算出する。そして、前記直接発電判断処理手段は、前記蓄熱エネルギーQ及び日射量に基づいて、反応器33において吸熱反応及び発熱反応がいずれも起こらず、伝達された熱をそのまま熱交換器he1に伝達するだけで、熱電変換部13において電気機器Ldによって必要とされる電力を発生させることができるかどうかによって、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転することができるかどうかを判断する。
【0096】
例えば、蓄熱エネルギーQが、反応器33における水酸化マグネシウムの重量によって決まる、反応器33の定格の蓄熱エネルギー容量の50〔%〕以上であり、かつ、日射量が十分に多い場合に、前記直接発電判断処理手段は、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転することができると判断する。
【0097】
なお、本実施の形態において、直接発電判断処理手段は、前記蓄熱エネルギーQ及び日射量に基づいて、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転することができるかどうかを判断するようになっているが、蓄熱エネルギーQに代えて、電気機器Ldによって要求される電力量(以下「要求電力量」という。)及び日射量に基づいて、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転することができるかどうかを判断することができる。その場合、前記要求電力判断処理手段によって、電力計60によって検出された電力に基づいて前記要求電力量が算出される。
【0098】
そして、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転することができない場合、前記通常発電処理手段は、通常発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb4を開き、開閉弁vb6〜vb8を閉じ、熱電コージェネレーションシステム11を通常発電モードで運転する(ステップS7)。この間、日射量が十分でない場合は、主として、反応器33に蓄えられた熱を利用して発電が行われるので、図16に示されるように、反応器温度Tは低くなる。
【0099】
続いて、前記制御部50の図示されない反応器温度判断処理手段は、反応器温度判断処理を行い、反応器温度Tが蓄熱温度T1より高いかどうかを判断する(ステップS8)。
【0100】
そして、図16に示されるように、タイミングt14で、反応器温度Tが蓄熱温度T1になると、前記放熱発電処理手段は、放熱発電処理を行い、前記蓄熱エネルギーQ及び日射量が十分ではないと判断し、開閉弁vb1〜vb4、vb6を開き、開閉弁vb7、vb8を閉じ、熱電コージェネレーションシステム11を放熱発電モードで運転する(ステップS9)。
【0101】
したがって、反応器33において発熱反応が起こり、反応器温度Tが蓄熱温度T1に維持される。そして、タイミングt15で、すべての酸化マグネシウムの発熱反応が終了すると、前記放熱発電処理手段は、熱電コージェネレーションシステム11の運転を終了する。
【0102】
また、前記直接発電判断処理において、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転することができると判断された場合、前記直接発電処理手段は、直接発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb4を開き、開閉弁vb6〜vb8を閉じ、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転する(ステップS10)。したがって、反応器33において吸熱反応及び発熱反応はいずれも起こらず、集熱部32によって変換された熱が反応器33に伝達され、伝達された熱によって熱電変換部13において電力が発生させられる。この間、図17に示されるように、タイミングt16までの間、反応器温度Tは低くなる。
【0103】
なお、熱電コージェネレーションシステム11を直接発電モードで運転している間に、日射量が十分でなくなると、前記蓄熱発電処理手段は、蓄熱発電処理を行い、開閉弁vb1〜vb8を開き、熱電コージェネレーションシステム11を蓄熱発電モードで運転することができる。
【0104】
続いて、前記反応器温度判断処理手段は、反応器温度Tが、放熱を開始するのが好ましい温度、すなわち、放熱開始温度T2より高いかどうかを判断する(ステップS11)。なお、該放熱開始温度T2は、蓄熱温度T1より低く設定され、放熱開始温度T2によって第2の基準温度が構成される。
【0105】
そして、図17に示されるように、タイミングt16で、反応器温度Tが放熱開始温度T2になると、前記直接放熱発電処理手段は、直接放熱発電処理を行い、前記蓄熱エネルギーQ及び日射量が十分ではないと判断し、開閉弁vb1〜vb4、vb6を開き、熱電コージェネレーションシステム11を直接放熱発電モードで運転する(ステップS12)。
【0106】
したがって、集熱部32によって変換された熱が反応器33に伝達されるとともに、反応器33において発熱反応が起こり、反応器33に伝達された熱、及び発熱反応によって発生させられた熱により、熱電変換部13において電力が発生させられる。
【0107】
この場合、前記直接放熱発電処理が開始されると、反応器温度Tは、放熱開始温度T2以上にすることができ、反応器温度Tが低くなり、放熱開始温度T2以下になると、開閉弁vb6が開かれ、熱電コージェネレーションシステム11は直接放熱発電モードで運転され、反応器温度Tが高くなり、放熱開始温度T2より高くなると、開閉弁vb6が閉じられ、熱電コージェネレーションシステム11は直接発電モードで運転される。なお、反応器温度Tが、蓄熱温度T1と放熱開始温度T2との間の所定の幅で変化させられる場合は、熱電コージェネレーションシステム11を蓄熱発電モードで運転することができる。
【0108】
そして、タイミングt17で、すべての酸化マグネシウムの発熱反応が終了すると、前記直接放熱発電処理手段は、熱電コージェネレーションシステム11の運転を終了する。
【0109】
次に、太陽エネルギー及び廃熱、本実施の形態においては、工場廃熱によって発電を行うとともに、熱を回収するようにした本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0110】
図18は本発明の第3の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの概念図である。
【0111】
図において、13は熱電変換部、15は反応媒体としての水を溜める反応媒体収容部としての水タンク、33は蓄熱部としての反応器、71は工場廃熱を回収する廃熱回収装置、he5は水タンク15内に配設され、廃熱回収装置71と接続された熱交換器である。
【0112】
廃熱回収装置71において回収された工場廃熱は廃熱伝達媒体としての水に伝達され、熱交換器he5によって水タンク15内の水が加熱されて100〔℃〕の水にされる。
【0113】
したがって、放熱発電モード又は直接放熱発電モードにおいて、100〔℃〕の水を反応器33に供給し、熱電変換部13において発電を行うことができる。
【0114】
本実施の形態においては、廃熱回収装置71によって工場廃熱を回収し、回収した工場廃熱によって水タンク15内の水を加熱するようになっているが、廃熱回収装置71に代えて地熱利用装置を配設し、該地熱利用装置によって取得した地熱により、水タンク15内の水を加熱することができる。
【0115】
次に、水タンク15に収容され、蓄えられた水を使用することなく、反応器33において発熱反応を起こさせるようにした本発明の第4の実施の形態について説明する。
【0116】
図19は本発明の第4の実施の形態における熱電コージェネレーションシステムの概念図である。
【0117】
図において、13は熱電変換部、16は熱回収装置、33は蓄熱部としての反応器、72は反応媒体としての水道水を供給する反応媒体供給源としての水道カランである。
【0118】
蓄熱モード及び蓄熱発電モードにおいて、反応器33において吸熱反応によって発生させられた水蒸気は熱回収装置16に直接送られ、該熱回収装置16において熱が回収される。なお、本実施の形態においては、蓄熱発電モードにおいて、熱電変換部13における発電が行われる。
【0119】
また、放熱発電モード及び直接放熱発電モードにおいて、水道カラン72を開くことによって水が反応器33に供給され、反応器33において発熱反応が起こされる。この間、熱電変換部13において発電が行われる。
【0120】
なお、本実施の形態においては、吸熱反応によって発生させられた水蒸気が、熱回収装置16に直接送られ、熱回収装置16において熱が回収されるようになっているが、水蒸気を大気中に放出し、廃棄することができる。
【0121】
次に、反応器33に水タンク15を接続した場合(本発明の第1の実施の形態)、反応器33に廃熱回収装置71を接続した場合(本発明の第3の実施の形態)、及び反応器33に水道カラン72を接続した場合(本発明の第4の実施の形態)の各蓄熱エネルギーの変化について説明する。
【0122】
図20は蓄熱エネルギーの推移を表すタイムチャートである。
【0123】
図において、Qsは太陽エネルギー、Qtは反応器33に水タンク15を接続した場合の蓄熱エネルギー、Qfは反応器33に廃熱回収装置71を接続した場合の蓄熱エネルギー、Qkは反応器33に水道カラン72を接続した場合の蓄熱エネルギーである。
【0124】
通常は、蓄熱エネルギーQt、Qf、Qkのいずれも、太陽エネルギーQsより少ないが、反応器33に廃熱回収装置71を接続した場合、工場廃熱の温度及び量に応じて、太陽エネルギーQsより多い蓄熱エネルギーQf’を蓄えることができる。
【0125】
この場合、日射量が一定であり、放熱量が一定であると仮定する。また、反応器33の蓄熱材の比熱による蓄熱エネルギーは、反応器33の反応による蓄熱エネルギーより極めて小さいので、無視した。
【0126】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0127】
11 熱電コージェネレーションシステム
13 熱電変換部
15 水タンク
23 第3の配管系
31 集光部
32 集熱部
33 反応器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を集める集光部と、
該集光部によって集められた太陽光を熱に変換し、変換した熱を集める集熱部と、
該集熱部によって集められた熱を受けて吸熱反応を起こし、反応媒体を生成し、反応媒体が供給されて発熱反応を起こし、熱を発生させる反応器と、
該反応器において発生させられた熱を受け、高温部と低温部との温度差に応じて電流を発生させる熱電変換部と、
前記反応器において生成された反応媒体を反応器から排出し、排出した反応媒体を反応器に供給するための反応媒体給排装置とを有することを特徴とする熱電コージェネレーションシステム。
【請求項2】
前記反応媒体給排装置は、反応媒体を反応器から排出するための反応媒体排出管、該反応媒体排出管に配設された弁、反応媒体を反応器に供給するための反応媒体供給管、及び該反応媒体供給管に配設された弁を備える請求項1に記載の熱電コージェネレーションシステム。
【請求項3】
前記反応媒体排出管に配設された弁は、弁より上流側における圧力と下流側における圧力との圧力差によって開かれる請求項2に記載の熱電コージェネレーションシステム。
【請求項4】
前記熱電変換部において発生させられた電流が送られる電力消費部を有する請求項1又は2に記載の熱電コージェネレーションシステム。
【請求項5】
前記反応媒体給排装置は、前記反応器から排出された反応媒体を蓄え、蓄えられた反応媒体を反応器に供給するための反応媒体収容部を備える請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電コージェネレーションシステム。
【請求項6】
前記反応媒体給排装置において、反応器から排出された反応媒体は廃棄される請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電コージェネレーションシステム。
【請求項7】
前記反応媒体は、反応媒体収容部において廃熱によって加熱される請求項5に記載の熱電コージェネレーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−211752(P2012−211752A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78715(P2011−78715)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)