説明

熱風炉操業推算装置、熱風炉操業推算方法、及びコンピュータプログラム

【課題】 熱風炉の状態を、減風・減温の状態から、高炉の要求に応じた状態にするまでのサイクル数(時間)及び各サイクルにおける投入熱量を正確に把握する。
【解決手段】 炉別・サイクル別投入熱量決定部502が、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを熱風炉シミュレーション部503に与えると、炉別・サイクル別送風温度BTkin、炉別・サイクル別送風流量BVkin、炉別・サイクル別送風時間BTimekin、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,inが得られる。評価値算出部504は、これらの情報を用いて評価値Yを求める。炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、評価値Yに基づいて、最適であると見なせる炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを決定し、出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風炉操業推算装置、熱風炉操業推算方法、及びコンピュータプログラムに関し、特に、複数の熱風炉の操業の状態を減風・減温状態にした後、当該複数の熱風炉の操業を高炉の要求に応じた状態に変更するために用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
高炉に熱風を供給するために、高炉には熱風炉が付帯されている。熱風炉は、高炉から要求される送風条件に基づいて、燃焼ガスにより蓄熱煉瓦を加熱して蓄熱する燃焼期間と、蓄熱煉瓦に冷風を通して蓄熱煉瓦との熱交換により熱風を生成して高炉に供給する送風期間とを1サイクルとして、燃焼期間と送風期間とを交互に繰り返して高炉に熱風を供給するものである。
【0003】
このような熱風炉における将来の状態を、熱風炉シミュレータを用いて計算し、計算した結果に基づいて熱風炉を操業することにより、熱風炉における熱効率を向上させることが行われている。
特許文献1では、複数の制御パラメータの操業実績値を用いて熱風炉の将来の状態を予測し、続いて制御パラメータのうち1つを微小量変化させた上で熱風炉の将来の状態を予測することを複数のパラメータのそれぞれについて実行し、その結果から、各制御パラメータの制御パラメータの修正量を求めるようにしている。具体的に、特許文献1では、複数の制御パラメータとして、1サイクル中の燃焼期間における混合ガスのガスカロリーと、1サイクル中の燃焼期間の前期・後期におけるドーム温度と、1サイクル中の燃焼期間の前期・後期における混合ガスの流量とを採用している。
【0004】
また、特許文献2では、まず、熱風炉シミュレータにおける熱風炉シミュレーションの結果、珪石煉瓦下部温度が珪石煉瓦下部制約温度条件(珪石煉瓦下部温度が制約温度より高く、且つ、珪石煉瓦下部温度と制約温度との差が所定値よりも小さいという条件)を満たさないと判定した場合には、送風時間の伸縮処理を行う。具体的には、送風設定温度を維持できない場合には送風時間を縮め、送風設定温度まで余裕がある場合には送風時間を伸ばし、珪石煉瓦下部温度が制約温度条件を満たさない場合には送風時間を縮めるようにしている。そして、修正した送風時間の下で熱風炉シミュレータを再度実行し、送風時間を修正する前の出熱量と、送風時間を修正した後の出熱量との差から、熱風炉における余剰又は不足の熱量を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−325446号公報
【特許文献2】特開平10−226809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高炉では、高炉における還元反応が適切に行われなくなり、高炉側の操業が不安定になること等、様々な要因で出銑量を一時的に低下させる場合がある。このような場合には、熱風炉から供給する熱風を減風・減温させる(熱風の減風・減温の少なくとも何れか一方を行う)ことが望まれる(以下の説明では、熱風炉から供給する熱風を減風・減温させている状態を、必要に応じて「減風・減温状態」と称する)。ここで、減風とは、熱風炉から高炉へ供給する熱風の送風流量を低減させることであり、減温とは、熱風炉から高炉へ供給する熱風の温度を低減させることである。
低コストで銑鉄の生産をするために、原料・燃料を低コストのものにすると共に、使用する燃料が出来るだけ少なくなるように高炉の操業を行うことが求められる状況下では、高炉からの出銑量を一時的に低下させる頻度が多くなる。そうすると、熱風炉を減風・減温状態にするメリットが増大する。熱風炉への投入熱量をより小さくすることができるからである。
【0007】
このようにして出銑量を低下させ、熱風炉の状態を減風・減温状態にした後、出銑量を低下させなければならない要因が取り除かれ、出銑量を増加させる場合、熱風炉から供給する熱風を増風・増温させる(熱風の増風・増温の少なくとも何れか一方を行う)必要がある(以下の説明では、熱風炉から供給する熱風を増風・増温させている状態を、必要に応じて「増風・増温状態」と称する)。効率よく銑鉄を製造するためには、増加させる出銑量に応じた流量・温度の熱風をいち早く高炉に供給する必要がある。
【0008】
しかしながら、前述した従来の技術では、熱風炉の状態を、減風・減温状態から、高炉の要求に応じた状態にするまでの時間(サイクル数)を正確に把握することができなかった。このため、従来は、出銑量を一時的に低下させる場合であっても、熱風炉への投入熱量を大きく低下させずに、出銑量の増加を待つようにしていた。よって、減風・減温状態のときの熱風炉への投入熱量を十分に低減させることができず、熱風炉に無駄な熱量を投入することになり、省コスト化を図ることが困難になる。
【0009】
以上のように、従来の技術では、熱風炉の状態を、減風・減温状態から、高炉の要求に応じた状態にするまでの時間を正確に把握することができないという問題点があった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、熱風炉の状態を、減風・減温状態から、高炉の要求に応じた状態にするまでのサイクル数(時間)及び各サイクルにおける投入熱量を正確に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の熱風炉操業推算装置は、燃焼ガスにより蓄熱煉瓦を加熱して蓄熱する燃焼期間と、当該蓄熱煉瓦に冷風を通して当該蓄熱煉瓦との熱交換により熱風を生成して高炉に供給する送風期間とを含む期間を1サイクルとしてそれぞれが稼働する複数の熱風炉の操業の状態を減風・減温状態にした後、当該複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための炉別・サイクル別の投入熱量を推算する熱風炉操業推算装置であって、前記複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための、目標送風温度、目標送風流量、目標送風時間、及び炉別・サイクル別投入熱量を少なくとも入力とし、前記複数の熱風炉におけるガスの熱収支と煉瓦の熱収支の計算を行って、炉別・サイクル別送風温度、炉別・サイクル別送風流量、及び炉別・サイクル別送風時間を少なくとも出力とする計算を行う熱風炉シミュレーション手段と、前記熱風炉シミュレーション手段による計算の結果に基づいて、前記複数の熱風炉を前記減風・減温の状態にすることによる不利益が小さいほど評価が高くなることを示す評価値を算出する評価値算出手段と、前記評価値算出手段により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量を決定する炉別・サイクル別投入熱量決定手段と、を有し、前記炉別・サイクル別の投入熱量決定手段は、前記評価値算出手段により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したか否かを判断し、当該変更終了条件を満足したと判断するまで、前記炉別・サイクル別投入熱量を繰り返し変更して、前記熱風炉シミュレーション手段による計算の入力とし、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したと判断したときの最新の前記炉別・サイクル別投入熱量を出力することを特徴とする。
【0011】
本発明の熱風炉操業推算方法は、燃焼ガスにより蓄熱煉瓦を加熱して蓄熱する燃焼期間と、当該蓄熱煉瓦に冷風を通して当該蓄熱煉瓦との熱交換により熱風を生成して高炉に供給する送風期間とを含む期間を1サイクルとしてそれぞれが稼働する複数の熱風炉の操業の状態を減風・減温状態にした後、当該複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための炉別・サイクル別の投入熱量を推算する熱風炉操業推算方法であって、前記複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための、目標送風温度、目標送風流量、目標送風時間、及び炉別・サイクル別投入熱量を少なくとも入力とし、前記複数の熱風炉におけるガスの熱収支と煉瓦の熱収支の計算を行って、炉別・サイクル別送風温度、炉別・サイクル別送風流量、炉別・サイクル別送風時間、及び炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度を少なくとも出力とする計算を行う熱風炉シミュレーション工程と、前記熱風炉シミュレーション工程による計算の結果に基づいて、前記複数の熱風炉を前記減風・減温の状態にすることによる不利益が小さいほど評価が高くなることを示す評価値を算出する評価値算出工程と、前記評価値算出工程により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量を決定する炉別・サイクル別投入熱量決定工程と、を有し、前記炉別・サイクル別の投入熱量決定工程は、前記評価値算出工程により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したか否かを判断し、当該変更終了条件を満足したと判断するまで、前記炉別・サイクル別投入熱量を繰り返し変更して、前記熱風炉シミュレーション工程による計算の入力とし、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したと判断したときの最新の前記炉別・サイクル別投入熱量を出力することを特徴とする。
【0012】
本発明のコンピュータプログラムは、前記熱風炉操業推算装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の熱風炉におけるガスの熱収支と煉瓦の熱収支の計算を行って、炉別・サイクル別送風温度、炉別・サイクル別送風流量、及び炉別・サイクル別送風時間を少なくとも出力とする計算を行う。次に、その計算の結果に基づいて、複数の熱風炉を前記減風・減温の状態にすることによる不利益が小さいほど評価が高くなることを示す評価値を算出する。次に、その算出した評価値に基づいて、複数の熱風炉の操業を高炉の要求に応じた状態に変更するための炉別・サイクル別投入熱量を決定する。このようにして炉別・サイクル別投入熱量を決定するに際し、炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したか否かを評価値に基づいて判断し、当該変更終了条件を満足したと判断するまで、炉別・サイクル別投入熱量を繰り返し変更して、前述して計算を繰り返し行い、炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したと判断したときの最新の炉別・サイクル別投入熱量を出力する。よって、熱風炉の状態を、減風・減温の状態から、高炉の要求に応じた状態にするまでのサイクル数(時間)及び各サイクルにおける投入熱量を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】熱風炉の概略構成の一例を示す図である。
【図2】熱風炉における燃焼期間と送風期間の動作の概要の一例を示す図である。
【図3】熱風炉の制御システムの概略構成の一例を示す図である。
【図4】スタッガードパラレル方式における操業スケジュールの概略の一例を説明する図である。
【図5】熱風炉制御計算機の機能的な構成の一例を示す図である。
【図6】熱風炉制御計算機が行う処理の一例を概念的に説明する図である。
【図7】熱風炉モデルの一例を概念的に示す図である。
【図8】熱風炉シミュレーション部の詳細な機能構成の一例を示す図である。
【図9】炉別残熱量算出部の詳細な機能構成の一例を示す図である。
【図10】熱風炉制御計算機の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図11】図10のステップS1004の熱風炉シミュレータ実行処理の詳細を説明するフローチャートである。
【図12】図10のステップS1002、S1007における炉別残熱量算出処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態を説明する。
[熱風炉100の構成]
図1は、熱風炉100の概略構成の一例を示す図である。尚、各図では、説明の都合上、必要な部分のみを、必要に応じて簡略化して示す。
図1において、熱風炉100は、不図示の高炉に熱風を供給するための蓄熱式熱交換器であり、高炉への送風に熱を与える蓄熱室101と、蓄熱室101を加熱するための燃焼室102と、熱風の温度調節を行うための混冷室103と、を有している。
【0016】
燃焼室102では、ガス供給ダクト112から吹き込まれるBFGとCOGとLDGとの混合ガス(燃焼ガス)及び燃焼空気供給ダクト113から吹き込まれる燃焼空気とを燃焼バーナ108で燃焼させ、この燃焼ガスを蓄熱室101の内部に積層された蓄熱煉瓦の間を通過させて加熱して熱を蓄える。
【0017】
図1に示す例では、この蓄熱煉瓦として、下側から順に、粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、シリカを主成分とする珪石煉瓦111が積層されており、これらの粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111には、上下方向に延びる複数の通過口が形成されている。
ガス供給ダクト112には、ガス遮断弁130、ガスバタフライ弁131、及び燃焼ガス流量計132が設けられており、ガスバタフライ弁131を開閉することにより、燃焼室102に流入する燃焼ガスの流入量を調節することができる。
【0018】
燃焼空気供給ダクト113は、燃焼空気ファンから送風された空気を熱風炉100に送風する。
燃焼空気供給ダクト113には、空気流量計127、空気バタフライ弁128、及び空気遮断弁129が設けられている。燃焼空気供給ダクト113には、燃焼ガスの流量に応じて、燃焼に必要な量の空気が流入されるようにしている。
蓄熱室101の下端部には、ダクト114が設けられており、このダクト114は、N2、CO2等を含む燃焼ガスを排出するためのガス排出ダクト119と、ダクト114を介して蓄熱室101に冷風を供給するための冷風導入ダクト116と、に分岐される。
ガス排出ダクト119には、煙道弁126が設けられている。
【0019】
冷風導入ダクト116には、送風弁124、及び送風バタフライ弁125が設けられており、送風バタフライ弁125を開閉させることにより、熱風炉100に流入する冷風の流入量を調節することができる。
また、混冷室103には、高炉用の熱風を排出するための熱風排出ダクト117が接続されている。この熱風排出ダクト117には、熱風弁121が設けられている。
また、冷風導入ダクト116の送風バタフライ弁125より上流側には、混冷室103に繋がるダクト118が設けられている。このダクト118には、冷風弁122と、冷風バタフライ弁123とが設けられている。
【0020】
図2は、熱風炉100における燃焼期間と送風期間の動作の概要の一例を示す図である。尚、以下の説明では、BFGガスとCOGガスとLDGガスとを「燃焼ガス」と総称する。
図2(a)に示すように、燃焼期間において、蓄熱室101に熱を蓄える場合には、送風弁124、冷風弁122、及び熱風弁121を完全に閉じて、ガス供給ダクト112及び燃焼空気供給ダクト113を介して燃焼室102内に燃焼ガス及び燃焼空気を流入させる。
これらの燃焼ガス及び燃焼空気はバーナ108によって燃焼され、この燃焼ガスは、蓄熱室101の粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111に形成された開口部を通って、粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111を蓄熱する。粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111を通過した燃焼ガスは、ガス排出ダクト119を介して排ガスとして煙道に排出される。ここで、通常は、珪石煉瓦111の最下部での最低温度は変態点温度以下とならないように管理される。また、粘土煉瓦109の最下部での温度の下限値は(排ガス温度が高くならないようにできるだけ低く)一定値に管理される。本実施形態では、珪石煉瓦111の下端部の最低温度の管理値を基準温度と記す。
【0021】
蓄熱室101への蓄熱が完了すると、図2(b)に示すように、煙道弁126、空気遮断弁129、及びガス遮断弁130を完全に閉じて、冷風導入ダクト116を介して蓄熱室101に冷風を流入させる。蓄熱室101に流入した冷風は、粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111に形成された開口部を通過して900〜1300℃に加熱された後、高炉用の熱風として熱風排出ダクト117から排出される。
【0022】
図3は、熱風炉の制御システムの概略構成の一例を示す図である。図3において、実線は信号の流れを示し、破線は、冷風、熱風、燃焼ガス、燃焼空気の流れを示している。
図3では、1基の高炉に対して4基の熱風炉100a〜100dを付帯させた場合を例に挙げて示している。また、これら4基の熱風炉100a〜100dは、スタッガードパラレル方式で操業するものとする。
図4は、スタッガードパラレル方式における操業スケジュールの概略の一例を説明する図である。
図4に示す例では、左から右へ送風から燃焼への切替と、燃焼と、燃焼から送風への切替と、送風とをこの順番で行い、これらの期間を合わせた期間で1サイクルを構成するようにしている(図4に示す「1サイクル=切り替え時間401+燃焼時間402+切り替え時間401+送風時間403」の部分を参照)。そして、熱風を供給する順番で前後(隣接)する2基(例えば熱風炉1と熱風炉2)の送風時間の一部をラップさせるようにする。更に、図4に示す例では、簡単のために送風時間と燃焼時間とを同じ長さにしているので、熱風を供給する順番で隣接しない2基(例えば熱風炉1と熱風炉3)については、一方の熱風炉が送風期間であるときに他方の熱風炉が燃焼期間となり、一方の熱風炉が燃焼期間であるときに他方の熱風炉が送風期間となるようにする。また、本実施形態では、全てのサイクルにおいて、送風時間が同じ時間である場合を例に挙げて説明する。
【0023】
[制御装置300の構成]
図3の説明に戻り、熱風炉の制御システムは、熱風炉100a〜100dの操業を制御する制御装置300を有している。制御装置300は、熱風炉制御計算機301と、入出力装置302と、流量調節計304と、温度調節計305と、開度調節計313a〜313dと、を有している。
熱風炉制御計算機301は、予め設定される入力データをもとに熱風炉100a〜100dの操業を行うための演算を行う。熱風炉制御計算機301に対するデータの入力は、インターフェース部である入出力装置302を介して行われる。入出力装置302に入力される情報としては、例えば、以下のようなものがある。
まず、熱風炉のオペレータによる入力装置312の操作に基づく情報として、以下の情報がある。
・熱風炉100a〜100dの操業を、減風・減温状態から、高炉からの要求に応じた状態に変更する際の目標値(目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimem(ただし、目標送風時間Btimemは固定値))。
・設備負荷(炉別・サイクル別熱効率ηin、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、炉別・サイクル別蓄熱量Qbf,in、炉別・サイクル別蓄熱分担比率αin)の初期値。
・操業制約・設備制約(後述する制約条件)の上下限値
・熱風炉100を構成する設備(粘土煉瓦109、ハイアルミナ煉瓦110、珪石煉瓦111等)・ガス(燃焼ガス・燃焼空気等)の既知データ(物理定数・設備定数)。
この他にも、後述する計算において予めオペレータが設定する情報も入出力装置302に入力される。
ここで、添字i(添字に「,」が付されているものについては、「,」の後に表示されているi)は、熱風炉100を表す。本実施形態では、熱風炉100a〜100dは4基なので、iは1〜4となる。また、添字nは、サイクルを表し、添字mは、目標値であることを表す。
【0024】
また、操業実績を示す情報としては、例えば、以下のようなものがある。
・熱風炉100a〜100dから高炉に排出される熱風の温度(送風温度)を測定する熱風温度計310により測定された送風温度BT。
・珪石煉瓦111の下端の温度(珪石煉瓦下端温度)を炉毎に測定する珪石煉瓦温度計315a〜315dにより測定された炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,i
・送風機306から送風された冷風の流量(冷風流量)を測定する送風流量計307で測定された冷風流量(=送風流量)。
・送風機306から送風された冷風の温度を測定する冷風温度計308により測定された冷風温度。
また、図示を省略するが、各熱風炉100a〜100dに付帯するその他センサから出力されるその他の操業実績を示す情報も入出力装置302に入力される。
【0025】
本実施形態では、熱風炉制御計算機301は、入力された情報等をもとに、投入熱量計算プログラムを実行して、各熱風炉100a〜100dに投入する投入熱量を熱風炉100a〜100d毎に個別に計算し、その結果を用いて、燃焼ガスの流量を熱風炉100a〜100d毎に個別に計算する。そして、熱風炉制御計算機301は、各熱風炉100a〜100dに対応して設けられている流量調節計304a〜304dに対して、燃焼ガスの流量を指示する。
流量調節計304a〜304dは、熱風炉制御計算機301から指示された流量が指示通りになるように、ガスバタフライ弁131a〜131dの開閉動作を調節する。
【0026】
また、熱風炉制御計算機301は、オペレータによる入力装置312の操作に基づいて得られた温度を、熱風炉100a〜100dから排出される熱風の温度の目標値として、温度調節計305に設定する。温度調節計305は、送風バタフライ弁125a〜125dの開閉動作を調節する開度調節計313a〜313dに対して、目標開度を指示する。例えば、2基の熱風炉100で送風している期間であれば、温度調節計305は、送風温度が高ければ、先行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を開けて、後行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を閉める。逆に、送風温度が低ければ、温度調節計305は、先行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を閉めて、後行して送風する熱風炉100の送風バタフライ弁125の開度を開ける。先行して送風する熱風炉100は、熱交換が進んでいるため、熱風温度が低く、後行して送風する熱風炉100は、十分に蓄熱しているため、熱風温度が高いので、これらの送風バタフライ弁125の開度(風量の配分)を調節することによって送風温度を制御することができる。また、1基の熱風炉100で送風している期間中に送風温度が高い場合は冷風バタフライ弁123を開けて冷風を熱風に混入させて送風温度を調節する。1基の熱風炉100で送風している期間では、送風バタフライ弁の開度は一定にしておく。
送風機306は、送風流量調節計309に設定された風量の冷風を送風する。送風流量調節計309の設定は、送風工場で変更される。
また、熱風炉制御計算機301は、以上のような計算結果に基づく画面の表示を、入出力装置302を介して表示装置303に行わせる。
【0027】
特に、本実施形態では、熱風炉制御計算機301は、熱風炉100a〜100dを減風・減温状態にした後、増風・増温を行って、熱風炉100a〜100dの操炉条件を目標値(目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimem)に変更するために必要な炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを算出し、オペレータに報知するための処理を行うことを特徴としている。したがって、以下では、このような処理の説明に必要な部分のみの構成及び動作を説明し、本実施形態の説明に不要な部分の構成及び動作の詳細な説明を省略する。尚、以下の説明では、前述した目標値を必要に応じて「要求操炉条件」と称する。
熱風炉制御計算機301は、例えば、CPU、ROM、RAM、HDDを備えたコンピュータを用いることにより実現することができる。前述したプログラムは、例えば、HDDに記憶され、CPUにより実行される。
【0028】
[熱風炉制御計算機301の機能構成]
(概要)
図5は、熱風炉制御計算機301の機能的な構成の一例を示す図である。
図5に示すように、熱風炉制御計算機301は、炉別残熱量算出部501と、炉別・サイクル別投入熱量決定部502と、熱風炉シミュレーション部503と、評価値算出部504と、炉別・サイクル別投入熱量表示指示部505と、を有する。
【0029】
図6は、熱風炉制御計算機301が行う処理の一例を概念的に説明する図である。
図6において、Qin,sは、減風・減温状態にする前の各熱風炉100a〜100dへの投入熱量(総量)である(添字sは、減風・減温状態にする前であることを表す)。Qminは、各熱風炉100a〜100dが最低限保っていなければならない最低熱量(総量)を表す。最低熱量Qminは、熱風炉100に備わる煉瓦の特性や、操業条件等によって定まるものである。Qrmは、最低熱量Qminを基準(「0」)としたときの各熱風炉100a〜100dの熱量(残熱量)である。尚、図6では、残熱量Qrmが一定であるように示しているが、残熱量Qrmは、時々刻々と変化するものである。
【0030】
in,13(図6の斜線部)は、それぞれ、増風・増温を開始してから、1サイクル目、2サイクル目、3サイクル目における各熱風炉100a〜100dへの投入熱量から高炉への送風で失われた各熱風炉の熱量を引いたいわゆる各熱風炉蓄熱量増量分である。図6に示す例では、増風・増温を開始してから3サイクルで要求操炉条件に従う状態になっている。
尚、図6に示すサイクル1〜3は、基準となる熱風炉100(例えば熱風炉100a)におけるサイクルを表す。例えば、基準となる熱風炉100を熱風炉100aとした場合、熱風炉100aのサイクル1の期間において、各熱風炉100a〜100dに投入される投入熱量の総量がQin,1となる。
【0031】
本実施形態では、熱風炉制御計算機301は、計算を開始するタイミングにおける各熱風炉100a〜100dの残熱量Qrm,iを計算し、この残熱量Qrm,iを基準(「0」)として、増風・増温を開始してから要求操炉条件に従う状態になるまでの間の、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの最適値を計算する。
【0032】
(熱風炉シミュレーション部503)
熱風炉シミュレーション部503は、熱風炉シミュレータを実行する。熱風炉シミュレータは、熱物理学を活用して、燃焼・送風によって、熱風炉100で行われる熱交換を忠実に再現する熱風炉モデルを用いて構築される。
図7は、熱風炉モデルの一例を概念的に示す図である。ここでは、蓄熱室101における熱風炉モデルの一例を示す。
本実施形態で説明する熱風炉モデルでは、蓄熱室101の形が円筒であるとする。そして、その円筒を軸に沿って切った断面(二次元平面)における熱収支を表すモデル式を構築する。
【0033】
図7に示すように、例えば、珪石煉瓦111は、蓄熱煉瓦(珪石)701と、炉壁煉瓦702とにより表され、この炉壁煉瓦702は、更に、鉄皮702a、耐火煉瓦(A)〜(C)702b〜702d、キャスタブル702e、鉄皮702fにより構成される。珪石煉瓦111のモデル式では、これらについての前述した二次元平面の伝熱が表現される。他の粘土煉瓦109及びハイアルミナ煉瓦110についても、珪石煉瓦111と同様に、前述した二次元平面の伝熱が表現される。
【0034】
本実施形態の熱風炉モデルでは、燃焼時において、燃焼ガスと蓄熱煉瓦(珪石)701との間と、蓄熱煉瓦(珪石)701と炉壁煉瓦702との間の伝熱は、対流熱伝達と輻射熱伝達によるものとする。また、送風時において、冷風と蓄熱煉瓦(珪石)701との間と、蓄熱煉瓦(珪石)701と炉壁702との間と、炉壁702と大気との間の伝熱は、対流熱伝達によるものとする。また、炉壁702内は、熱伝導による伝熱がなされるものとする。また、蓄熱煉瓦(珪石)701は、通過口が存在することによる寸法換算を行う。また、高さ方向の熱伝導は無視するものとする。これらの仮定は、他の粘土煉瓦109及びハイアルミナ煉瓦110についても同じである。
【0035】
まず、ガスの熱収支を表すモデル式は、以下の(1)式で表される。また、蓄熱煉瓦の熱収支を表すモデル式は、以下の(2)式で表される。また、炉壁煉瓦の熱収支を表すモデル式は、以下の(3)式で表される。
【0036】
【数1】

【0037】
(1)式〜(3)式における記号の意味は、以下の通りである。
【0038】
ρ:密度[kg/m3
p:比熱[J/kg・K]
S:断面積[m2](前述した円筒をその軸に沿って切った断面積から通過口の断面積の総和を引いた煉瓦の(正味の)切り口面積)
v:流速[m/s]
T:温度[K]
h:熱伝達率[W/m2・K]
A:接触面積[m2
L:高さ[m](炉底を0とする)
ε:放射率[−]
z:高さ方向の位置[m]
t:時間[s]
G:ガス
CH:蓄熱煉瓦
W:炉壁煉瓦
Wb:炉壁煉瓦の構成煉瓦(珪石煉瓦111であれば、耐火煉瓦(珪石)702a、耐熱煉瓦(A)〜(C)702b〜702d、キャスタブル702e、鉄皮702f)
Wb−1、Wb+1:Wbで特定される煉瓦の隣の煉瓦(耐熱煉瓦(A)がWbであれば、Wb−1は耐火煉瓦(珪石)702aであり、Wb+1は、耐熱煉瓦(B))
δ:ステファンボルツマン定数
【0039】
熱風炉シミュレーション部503は、(1)式〜(3)式のモデル式を使って、以下に示す機能を実現するものである。
図8は、熱風炉シミュレーション部503の詳細な機能構成の一例を示す図である。
熱風炉シミュレーション部503は、燃焼時シミュレーション部801と、送風時シミュレーション部802とに大別される。
((燃焼時シミュレーション部801))
燃焼時シミュレーション部801は、燃焼期間における各熱風炉100a〜100bの状態をシミュレーションするためのものである。
燃焼時シミュレーション部801は、使用ガス容量算出部801aと、モデル式計算部801bとを有する。
【0040】
<使用ガス容量算出部801a>
使用ガス容量算出部801aは、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを入力する。炉別・サイクル別投入熱量Qin,inは、全投入熱量Qinに、炉別・サイクル別蓄熱分担率αin(Σαin=1)を乗じることにより算出することもできる。よって、全投入熱量Qinと、炉別・サイクル別蓄熱分担率αinとを入力することも、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを入力することと等価である。
【0041】
また、使用ガス容量算出部801aは、BFG、COG、及びLDGの各使用ガスの使用比率[−]を入力する。この使用ガスの使用比率は、燃焼期間中に変化するものとし、1つの燃焼期間を分割した複数の期間毎に個別に設定することができる。
さらに、使用ガス容量算出部801aは、BFG、COG、LDG、及び空気の各使用ガスのガスカロリー(ガス組成単位熱量)[J/Nm3]を入力する。
使用ガス容量算出部801aは、以上の入力した情報に基づいて、BFG、COG、LDG、及び空気の各使用ガスの容量[Nm3]を算出してモデル式計算部801bに出力する。
【0042】
<モデル式計算部801b>
モデル式計算部801bは、使用ガス容量算出部801aから、BFG、COG、LDG、及び空気の各ガスの容量を入力する。
モデル式計算部801bは、ガス燃焼温度TG[℃]、密度ρG[kg/m3]、比熱Cp,G[J/kg・K]を入力する。ここで、添字Gは、ガスを表す。
そして、モデル式計算部801bは、入力した情報を用いて、前述したモデル式((1)式〜(3)式)を使用して、燃焼開始から燃焼終了まで(1つの燃焼期間)の、熱風炉100a〜100dにおける熱収支の計算を行い、燃焼終了の時点での以下の値を出力する。
・炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度TCH,in
・炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度TWb,in
・炉別・サイクル別排ガス温度Tex,in
・炉別・サイクル別燃焼効率ηin
【0043】
尚、ガスボリュームVGは、(1)式の左辺の「SG×vG」に反映されるものである。また、炉別・サイクル別排ガス温度Tex,inは、計算対象の燃焼期間において蓄熱されなかった熱量と、ガスボリュームVGと、ガスの成分とを用いて算出されるものである。
【0044】
以上の使用ガス容量算出部801aとモデル式計算部801bの処理は、サイクル毎に繰り返し行われる。尚、サイクル数は、使用ガス容量算出部801aが入力した炉別・サイクル別投入熱量Qin,inで識別される。
【0045】
((送風時シミュレーション部802))
送風時シミュレーション部802は、送風期間における各熱風炉100a〜100bの状態をシミュレーションするためのものである。
送風時シミュレーション部802は、各炉運転内容指示部802aと、モデル式計算部802bと、送風流量・温度決定部802cとを有する。
【0046】
<各炉運転内容指示部802a>
各炉運転内容指示部802aは、モデル式計算部801bから、炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度TCH,inと炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度TWb,inとを入力する度に(燃焼時シミュレーション部801において、燃焼期間における燃焼終了時の計算が終了する度に)計算を開始する。ここでは、1秒毎の計算結果が得られるように繰り返し計算が行われるものとする。
【0047】
各炉運転内容指示部802aは、後述する送風流量・温度決定部802cで決定された「炉別・時間別通過送風流量BHSi(t+1)と、炉別・時間別混冷流量Airi(t+1)」を、計算対象の時間の「炉別・時間別通過送風流量BHSitと、炉別・時間別混冷流量Airit」とする。そして、各炉運転内容指示部802aは、炉別・時間別通過送風流量BHSitをモデル式計算部802bに出力すると共に、炉別・時間別混冷流量Airitを送風流量・温度決定部802cに出力する。ここで、通過送風流量とは、図1に示すダクト114、蓄熱室101、燃焼室102を通って混冷室103に進入した冷風の流量である。また、混冷流量とは、図1に示すダクト118を通って混冷室103に進入した冷風の流量である。これらの通過送風流量と混冷流量との加算値が送風流量BVitになる。また、前記において、添字tは時間を表す。
尚、最初の計算では、後述する送風流量・温度決定部802cで「炉別・時間別通過送風流量BHSi(t+1)と、炉別・時間別混冷流量Airi(t+1)」が決定されていないので、各炉運転内容指示部802aは、炉別・時間別通過送風流量BHSitと、炉別・時間別混冷流量Airitの初期値を採用する。
【0048】
<モデル式計算部802b>
モデル式計算部802bは、モデル式計算部801bから、蓄熱煉瓦の温度TCH,inと炉壁煉瓦の構成煉瓦の温度TWb,inとを入力する。
また、モデル式計算部802bは、密度ρG、及び比熱CP,Gを入力する。
また、モデル式計算部802bは、各炉運転内容指示部802aから、炉別・時間別通過送風流量BHSitを入力する。ここで、炉別・時間別通過送風流量BHSitに時間tを掛けた値がガスボリュームVGとなる。
そして、モデル式計算部802bは、入力した情報を用いて、前述したモデル式((1)式〜(3)式)を使用して、送風期間における計算対象の時間tでの熱収支の計算を繰り返し行い、炉別・時間別ガス温度TG,itを、送風流量・温度決定部802cに出力する。尚、燃焼時と送風時とでは、モデル式((1)式及び(2)式)熱伝達率hG,CHの値が異なる。
【0049】
<送風流量・温度決定部802c>
送風流量・温度決定部802cは、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを入力する。
また、送風流量・温度決定部802cは、各炉運転内容指示部802aから、炉別・時間別混冷流量Airitを入力する。
また、送風流量・温度決定部802cは、モデル式計算部802bから、炉別・時間別のガスの温度TG,itを入力する。
また、送風流量・温度決定部802cは、冷風温度TCWを入力する。
【0050】
そして、送風流量・温度決定部802cは、入力した情報を用いて、以下の(4)式〜(6)式により、目標送風温度BTm及び目標送風流量BVmが得られるように、「炉別・時間別送風流量BVi(t+1)、炉別・時間別通過送風流量BHSi(t+1)、炉別・時間別混冷流量Airi(t+1)」を算出する。そして、算出された「炉別・時間別通過送風流量BHSi(t+1)と、炉別・時間別混冷流量Airi(t+1)」は、前述したように、各炉運転内容指示部802aに出力される。すなわち、「炉別・時間別通過送風流量BHSi(t+1)と、炉別・時間別混冷流量Airi(t+1)」は、次の計算対象の時間における炉別の通過送風流量・混冷流量となる。
【0051】
【数2】

【0052】
送風流量・温度決定部802cは、送風期間の終了時(送風終了時)に得られた「炉別・時間別のガスの温度TGit、炉別・時間別通過送風流量BHSit、炉別・時間別混冷流量Airit」を、(4)式〜(6)式の右辺に与えて、炉別・サイクル別送風温度BTk,in及び炉別・サイクル別送風流量BVk,inを算出する。尚、本実施形態では、炉別・サイクル別送風時間BTimek,inは、固定値である。また、添字kは結果を表す。
また、送風流量・温度決定部802cは、送風期間の終了時(送風終了時)に得られた炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度TCH,inの中から珪石煉瓦下端部の温度を抽出し、抽出した温度を炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inとする。
そして、送風流量・温度決定部802cは、これらの「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」を出力する。
また、送風流量・温度決定部802cは、燃焼効率ηinを算出して出力する。燃焼効率ηinは、燃焼終了時の炉別・サイクル別投入熱量Qin,inと、送風終了時に得られる送風期間中の炉別・サイクル別送風温度BTin、炉別・サイクル別送風流量BVinによって算出される炉別・サイクル別煉瓦畜熱量Qbfinから、以下の(7)式で算出されるものである。ここで、炉別・サイクル別煉瓦畜熱量Qbfinは、以下の(8)式で与えられる。(8)式の記号の意味は、前述した通りである。
【0053】
【数3】

【0054】
(炉別残熱量算出部501)
図5の説明に戻り、炉別残熱量算出部501は、計算を開始する時刻における炉別残熱量Qrm,iを算出する。
【0055】
図9は、炉別残熱量算出部501の詳細な機能構成の一例を示す図である。
図9において、炉別残熱量算出部501は、第1の煉瓦下端温度判定部901と、第2の煉瓦下端温度判定部902と、第1の送風流量変化分決定部903と、第1の残熱量判定部904と、該当炉残熱量算出部905と、残熱量記憶部906と、第2の残熱量判定部907と、第2の送風流量変化分決定部908と、第3の送風流量変化分決定部909と、第3の残熱量判定部910と、を有する。
【0056】
((第1の煉瓦下端温度判定部901))
第1の煉瓦下端温度判定部901は、珪石煉瓦温度計315a〜315dにより測定された炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの全てが基準温度を超えているか否かを判定する。
((第2の煉瓦下端温度判定部902))
第2の煉瓦下端温度判定部902は、第1の煉瓦下端温度判定部901により、炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの全てが基準温度を超えていると判定されると、珪石煉瓦温度計315a〜315dにより測定された炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iのうち、基準温度と等しい炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iがあるか否かを判定する。
【0057】
この判定の結果、第2の煉瓦下端温度判定部902は、基準温度と等しい炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iがあると判定すると、当該炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iを有する熱風炉iの残熱量Qrm,iは、最低熱量Qminとなる(「0」となる)。よって、残熱量記憶部906は、当該熱風炉iの残熱量Qrm,iとして「0」を記憶する。
【0058】
((第1の送風流量変化分決定部903))
第1の送風流量変化分決定部903は、第2の煉瓦下端温度判定部902により、基準温度と等しい炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iがないと判定されると、例えば二分法に基づき、目標送風流量BVmの増加分ΔBVを決定する。そして、第1の送風流量変化分決定部903は、目標送風流量BVmに増加分ΔBVを加算したものを新たな目標送風流量BVmとする。第1の送風流量変化分決定部903は、この新たな目標送風流量BVmを炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風時間BTimemと共に、熱風炉シミュレーション部503に出力する。
この出力に応じて、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」が、熱風炉シミュレーション部503から第1の残熱量判定部904に出力される。
【0059】
((第1の残熱量判定部904))
第1の残熱量判定部904は、熱風炉シミュレーション部503から出力された「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」を入力する。そして、第1の残熱量判定部904は、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iがあるか否かを判定する。
【0060】
この判定の結果、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iがなければ、第1の送風流量変化分決定部903は、例えば二分法に基づき、目標送風流量BVmの増加分ΔBVを更に決定して新たな目標送風流量BVmを決定する。そして、第1の送風流量変化分決定部903は、新たな目標送風流量BVmを熱風炉シミュレーション部503に出力する。そうすると、熱風炉シミュレーション部503から、新たな「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」が第1の残熱量判定部904に入力される。すなわち、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iが見つかるまで、第1の送風流量変化分決定部903と、第1の残熱量判定部904との処理を繰り返し行う。
【0061】
((該当炉残熱量算出部905、残熱量記憶部906))
該当炉残熱量算出部905は、第1の残熱量判定部904により、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iがあると判定されると、当該熱風炉iに対して熱風炉シミュレーション部503により算出された「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in」を用いて、当該熱風炉iの残熱量Qrm,iを算出する。残熱量記憶部906は、算出された当該熱風炉iの残熱量Qrm,iを記憶する。
【0062】
((第2の残熱量判定部907))
第2の残熱量判定部907は、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしたか否かを判定する。
全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしていると、全ての熱風炉100a〜100dの残熱量Qrm,iの計算が終了したことになる。これら熱風炉100a〜100dの残熱量Qrm,iは、残熱量記憶部906から炉別・サイクル別投入熱量決定部502(図5を参照)に出力される。
【0063】
((第2の送風流量変化分決定部908))
第2の送風流量変化分決定部908は、第2の残熱量判定部907により、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしていない場合に、次の処理を行う。
まず、第2の送風流量変化分決定部908は、第1の残熱量判定部904により、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしていると判定された熱風炉iに対して熱風炉シミュレーション部503により算出された「炉別・サイクル別送風流量BVk,in」を固定値とするように、熱風炉シミュレーション部503に指示する。このとき、第2の送風流量変化分決定部908は、複数の熱風炉iについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inを固定値とした場合には、その総和ΣBVk,inを計算する。
【0064】
そして、第2の送風流量変化分決定部908は、現在の目標送風流量BVmから、固定値とされた「炉別・サイクル別送風流量BVk,in」の総和ΣBVk,inを減算した送風流量BV´(BV´=BVm−ΣBVk,in)を基準に、目標送風流量BVmの増減分ΔBVを決定する。そして、第2の送風流量変化分決定部908は、目標送風流量BVmに増加分ΔBVを加算又は減算したものを新たな目標送風流量BVmとし、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風時間BTimemと共に、熱風炉シミュレーション部503に出力する。
この出力に応じて、熱風炉シミュレーション部503から、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」が、第1の残熱量判定部904に出力される。
そして、前述したように、第1の残熱量判定部904は、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iがあるか否かを判定する。
【0065】
((第3の送風流量変化分決定部909))
第3の送風流量変化分決定部909は、第1の煉瓦下端温度判定部901により、炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの全てが基準温度を超えていないと判定すると、例えば二分法に基づき、目標送風流量BVmの減少分ΔBVを決定する。そして、第3の送風流量変化分決定部909は、目標送風流量BVmに減少分ΔBVを減算したものを新たな目標送風流量BVmとし、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風時間BTimemと共に、熱風炉シミュレーション部503に出力する。
この出力に応じて、熱風炉シミュレーション部503から、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」が、第3の残熱量判定部910に出力される。
【0066】
((第3の残熱量判定部910))
第3の残熱量判定部910は、熱風炉シミュレーション部503から出力された「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」を入力する。そして、第3の残熱量判定部910は、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVkinが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度以上であるという条件を満たしたか否かを判定する。
【0067】
この判定の結果、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度以上であるという条件を満たしていななければ、第3の送風流量変化分決定部909は、例えば二分法に基づき、目標送風流量BVmの減少分ΔBVを決定して新たな目標送風流量BVmを決定する。そして、第3の送風流量変化分決定部909は、新たな目標送風流量BVmを熱風炉シミュレーション部503に出力する。そうすると、熱風炉シミュレーション部503から、新たな「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」が第3の送風流量変化分決定部909に入力される。すなわち、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度以上であるという条件を満たすまで、第1の送風流量変化分決定部903と、第1の残熱量判定部904との処理を繰り返し行う。
【0068】
そして、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度以上であるという条件を満たすと、第3の残熱量判定部910は、そのときに熱風炉シミュレーション部503から出力された「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in」を第1の残熱量判定部904に出力する。そして、前述したように、第1の残熱量判定部904は、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iがあるか否かを判定する。
【0069】
以上の第1の煉瓦下端温度判定部901と、第2の煉瓦下端温度判定部902と、第1の送風流量変化分決定部903と、第1の残熱量判定部904と、該当炉残熱量算出部905と、第2の残熱量判定部907と、第2の送風流量変化分決定部908と、第3の送風流量変化分決定部909と、第3の残熱量判定部910の処理は、全ての熱風炉100a〜100dの残熱量Qrm,iの計算が終了するまで繰り返し行われる。
【0070】
(評価値算出部504)
図5の説明に戻り、評価値算出部504は、熱風炉シミュレーション部503から、炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,inを入力する。
そして、評価値算出部504は、入力した情報を用いて、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度よりも大きいという制約条件(制約式)と、炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,inが基準温度よりも小さいという制約条件(制約式)を満たす範囲で、最も小さな評価値Yを算出する。評価値Yは、以下の(9)式で定められるものである。
Y=f(x1,x2) ・・・(9)
(9)式の右辺は、決定変数x1、x2とする評価関数を表す。
また、これら決定変数x1、x2は、それぞれ以下の(10)式、(11)式で表される。
【0071】
【数4】

【0072】
ここで、(10)式において、cost1は、出銑量単位重さ当たりの収益である。
また、IRONmは、目標操業時の出銑量である。
また、IRONnは、nサイクル目の炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,inに基づいて操業した場合の出銑量である。
また、(11)式において、cost2は、ガス単位量当たりのコストである。
【0073】
以上のように、決定変数x1は、減風・減温状態にしたことによる高炉の出銑機会の損失(コストの損失)を評価するものである。一方、決定変数x2は、熱風炉100a〜100dにおいて畜熱量を増やすために使用するガスのコストを評価するためのものである。
【0074】
(炉別・サイクル別投入熱量決定部502)
炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、減風・減温の状態から、要求操炉条件に応じた状態(高炉からの要求に応じた状態)に変更するための「炉別・サイクル別投入熱量Qin,in」を決定するものであり、図5に示す各ブロックの中枢となる部分である。尚、要求操炉条件は、熱風炉100a〜100dを、減風・減温状態にする前の元の状態に戻すという条件でも、そうでない条件でもよい。
まず、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを入力すると、減風・減温状態から、高炉からの要求に応じた状態に変更するための炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを決定する処理を開始する。
【0075】
また、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、現在の炉別残熱量Qrm,iの計算を炉別残熱量算出部501に指示して、炉別残熱量算出部501から現在の炉別残熱量Qrm,iを入力する。
また、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、設備負荷(炉別・サイクル別熱効率ηin、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、炉別・サイクル別蓄熱量Qbf,in、炉別・サイクル別蓄熱分担比率αin)の初期値を入力する。これらは、現在の操業に応じたものであり、以下に説明する繰り返し計算の最初の計算で使用されるものである。ここで、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inは、現在の炉別残熱量Qrm,iを基準とする値であるとする。
【0076】
また、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、評価値算出部504から評価値Yを入力して、その履歴を記憶しておく。
炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、前回、熱風炉シミュレーション部503に出力した炉別・サイクル別投入熱量Qin,inと、評価値Yの履歴とに基づいて、より値が低い評価値Yを得るために、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inのそれぞれをどれだけ変更すればよいのかを、統計的に判断する。この判断のロジックは、GA、山登り法、及び線形計画法等、公知の方法で実現することができる。炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの変更量は、このロジックに応じて定まるものである。
【0077】
ここで、前述したように、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inは、現在の炉別残熱量Qrm,iを基準とする値である。すなわち、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inは、現在の炉別残熱量Qrm,iに対して、各熱風炉100a〜100dにどれだけの熱量の熱を投入すればよいのかをサイクル毎に定めたものである。本実施形態では、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inは、現在の炉別残熱量Qrm,iの入力があってから、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの変更を行う。
【0078】
そして、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、変更後の炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemと共に、熱風炉シミュレーション部503に出力する。これにより、熱風炉シミュレーション部503で、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,in」が得られ、これらを用いて、評価値算出部504で、「評価値Y」が得られる。
【0079】
炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの変更終了条件を満足したか否かを判定する。この判定は、評価値Yが一定値以上変化しなくなったか否か(すなわち収束したか否か)、又は、繰り返しの計算の回数(評価値Yの個数)が所定回数になったか否か等により行うことができる。
炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの変更終了条件を満足したときに得られている最新の炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを、炉別・サイクル別投入熱量表示指示部505に出力する。
【0080】
(炉別・サイクル別投入熱量表示指示部505)
炉別・サイクル別投入熱量表示指示部505は、炉別・サイクル別投入熱量決定部502から出力された炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを表示装置303(図3を参照)に表示するための表示データを生成して、入出力装置302を介して表示装置303に出力する。これにより、オペレータは、減風・減温状態から、要求操炉条件(目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimem)に戻すのに、何サイクル必要であり、各サイクルにおいて各熱風炉100a〜100dにどのくらいの熱量を投入すればよいのかを知ることができる。尚、オペレータが、このことを把握できる情報を表示すれば、どのような情報を表示するようにしてもよい。
【0081】
[フローチャート]
次に、図10のフローチャートを参照しながら、熱風炉制御計算機301の処理の一例を説明する。
まず、ステップS1001において、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、要求操炉条件に応じた状態(高炉からの要求に応じた状態)に変更するための「炉別・サイクル別投入熱量Qin,in」を決定する計算を開始するか否かを判定する。この判定は、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを入力したか否かによって行われる。
【0082】
この判定の結果、計算を開始しないと判定した場合には、熱風炉制御計算機301が行うその他の公知の処理を行って、図10のフローチャートによる処理を終了する。
一方、計算を開始すると判定した場合には、ステップS1002に進む。
ステップS1002に進むと、炉別残熱量算出部501による炉別残熱量算出処理が行われる。この炉別残熱量算出処理により、現在の炉別残熱量Qrm,iが得られる。この炉別残熱量算出処理の詳細については後述する。
【0083】
次に、ステップS1003において、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの初期値を設定する。炉別・サイクル別投入熱量Qin,inは、現在の炉別残熱量Qrm,iを基準とした値である。そして、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、及び目標送風時間BTimemと、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inと、を熱風炉シミュレーション部503に出力する。
次に、ステップS1004において、熱風炉シミュレーション部503による熱風炉シミュレータ実行処理が行われる。この熱風炉シミュレータ実行処理により、ここでは、少なくとも、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガス温度Tex,in」が得られる。この熱風炉シミュレータ実行処理の詳細については後述する。
【0084】
次に、ステップS1005において、評価値算出部504は、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度よりも大きいという制約条件(制約式)と、炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,inが基準温度よりも小さいという制約条件(制約式)を満たす範囲で、最も小さな評価値Y((9)式を参照)を算出する。
次に、ステップS1006において、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの変更終了条件を満足したか否かを判定する。この判定の結果、変更終了条件を満足した場合には、後述するステップS1009に進む。一方、変更終了条件を満足していない場合には、ステップS1007に進む。
【0085】
ステップS1007に進むと、炉別残熱量算出部501による炉別残熱量算出処理が行われる。この炉別残熱量算出処理により、現在の炉別残熱量Qrm,iが得られる。この炉別残熱量算出処理の詳細については後述する。
次に、ステップS1008において、サイクル別投入熱量決定部502は、前回、熱風炉シミュレーション部503に出力した炉別・サイクル別投入熱量Qin,inと、評価値Yの履歴とに基づいて、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inのそれぞれをどれだけ変更すればよいのかを、統計的に判断する。そして、サイクル別投入熱量決定部502は、判断した炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの変更量に応じて新たな炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを決定する。この新たな炉別・サイクル別投入熱量Qin,inは、ステップS1007で得られた現在の炉別残熱量Qrm,iを基準とした値である。
【0086】
サイクル別投入熱量決定部502は、この新たな炉別・サイクル別投入熱量Qin,inと、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、及び目標送風時間BTimemと、を熱風炉シミュレーション部503に出力する。そして、ステップS1004に戻り、変更終了条件を満足するまで、ステップS1004〜S1008の処理を繰り返し行う。
そして、前述したように、変更終了条件を満足すると、ステップS1009に進む。ステップS1009に進むと、炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inの変更終了条件を満足したときに得られている最新の炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを、炉別・サイクル別投入熱量表示指示部505に出力する。そして、炉別・サイクル別投入熱量表示指示部505は、この最新の炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを表示装置303(図3を参照)に表示するための表示データを生成して、入出力装置302を介して表示装置303に出力する。そして、図10のフローチャートによる処理を終了する。
【0087】
次に、図11のフローチャートを参照しながら、図10のステップS1004の熱風炉シミュレータ実行処理の詳細を説明する。尚、この図11の熱風炉シミュレータ実行処理は、後述する図12のフローチャートにおいても実行されるものである。
まず、ステップS1101において、使用ガス容量算出部801aは、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを取得する。
次に、ステップS1102において、使用ガス容量算出部801aは、計算を行うサイクルnとして最初のサイクルを示す「1」を指定する。
次に、ステップS1103において、使用ガス容量算出部801aは、BFG、COG、LDG、及び空気の各使用ガスの容量を算出する。
【0088】
次に、ステップS1104において、モデル式計算部801bは、モデル式((1)式〜(3)式)を使用して、サイクルnにおける燃焼開始から燃焼終了までの、熱風炉100a〜100dにおける熱収支の計算を行う。この計算により、サイクルnの燃焼終了の時点での「炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度TCH,in、炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度TWb,in、炉別・サイクル別排ガス温度Tex,in、炉別・サイクル別燃焼効率ηin」が得られる。
次に、ステップS1105において、モデル式計算部801bは、サイクルnの燃焼終了の時点での「炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度TCH,in、炉別・サイクル別炉壁煉瓦(の構成煉瓦)温度TWb,in」を各炉運転内容指示部802aに出力する。また、モデル式計算部801bは、サイクルnの燃焼終了の時点での「炉別・サイクル別排ガス温度Tex,in」を、これらの情報を要求した「炉別残熱量算出部501又は炉別・サイクル別投入熱量決定部502」に出力する。
【0089】
次に、ステップS1106において、送風流量・温度決定部802cは、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを取得する。
次に、ステップS1107において、各炉運転内容指示部802aは、計算対象の時間tとしてt=1[秒]を設定する。
次に、ステップS1108において、各炉運転内容指示部802aは、計算対象の時間(t=1)の「炉別・時間別通過送風流量BHSitと、炉別・時間別混冷流量Airit」の初期値を決定し、モデル式計算部802bに与える。
【0090】
次に、ステップS1109において、モデル式計算部802bは、モデル式((1)式〜(3)式)を使用して、送風期間における計算対象の時間tでの熱収支の計算を行う。この計算により、送風期間における計算対象の時間tでの「炉別時間別ガス温度TG,it、炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度TCH,in」が得られる。
次に、ステップS1110において、モデル式計算部802bは、送風期間が終了したか否かを判定する。尚、前述したように、本実施形態では、目標送風期間BTimemを固定値としているので、この送風期間も固定値である。この判定の結果、送風期間が終了していない場合には、ステップS1111に進む。ステップS1111に進むと、送風流量・温度決定部802cは、計算対象の時間tに「1[秒]」を加算する。
【0091】
次に、ステップS1112において、送風流量・温度決定部802cは、(4)式〜(6)式により、目標送風温度BTm及び目標送風流量BVmが得られるように、「炉別・時間別送風流量BVi、炉別・時間別通過送風流量BHSi(t+1)、炉別・時間別混冷流量Airi(t+1)」を算出(決定)する。そして、送風流量・温度決定部802cは、各炉運転内容指示部802aを介して、計算対象の時間(t)の「炉別・時間別通過送風流量BHSitと、炉別・時間別混冷流量Airit」をモデル式計算部802bに与える。そして、送風期間が終了するまでの1秒毎の「炉別・時間別送風流量BVi、炉別・時間別通過送風流量BHSi(t+1)、炉別・時間別混冷流量Airi(t+1)」が得られるまで、ステップS1109〜S1112の処理を繰り返し行う。
【0092】
そして、前述したように、ステップS1110において、送風期間が終了したと判定すると、ステップS1113に進む。ステップS1113に進むと、送風流量・温度決定部802cは、サイクルnが、ステップS1101で取得した炉別・サイクル別投入熱量Qin,inで定まるサイクルNとなったか否かを判定する。この判定の結果、サイクルnがサイクルNとなっていない場合には、ステップS1114に進む。ステップS1114に進むと、使用ガス容量算出部801aは、計算を行うサイクルnに「1」を加算する。そして、サイクルNの送風期間が終了するまで、ステップS1103〜S1114の処理を繰り返し行う。
【0093】
そして、サイクルnがサイクルNになると、ステップS1115に進む。ステップS1115に進むと、送風流量・温度決定部802cは、送風終了時に得られた「炉別・時間別のガスの温度TG,it、炉別・時間別通過送風流量BHSit、炉別・時間別混冷流量Airit」を、(4)式〜(6)式の右辺に与えて、炉別・サイクル別送風温度BTk,in及び炉別・サイクル別送風流量BVk,inを算出する。また、送風流量・温度決定部802cは、送風終了時に得られた炉別・サイクル別蓄熱煉瓦温度TCH,inの中から珪石煉瓦下端部の温度を抽出し、抽出した温度を炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inとする。また、送風流量・温度決定部802cは、(7)式、(8)式により、燃焼効率ηinを算出する。
【0094】
そして、送風流量・温度決定部802cは、これらの「炉別・サイクル別送風温度BTkin、炉別・サイクル別送風流量BVkin、炉別・サイクル別送風時間BTimekin、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、燃焼効率ηin」を、これらの情報を要求した「炉別残熱量算出部501又は炉別・サイクル別投入熱量決定部502」に出力する。これにより、図11のフローチャートによる処理が終了する。
【0095】
次に、図12のフローチャートを参照しながら、図10のステップS1002、S1007における炉別残熱量算出処理の一例を説明する。
まず、ステップS1201において、第1の煉瓦下端温度判定部901は、珪石煉瓦温度計315a〜315dにより測定された炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの全てが基準温度を超えているか否かを判定する。この判定の結果、炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの全てが基準温度を超えていない場合には、後述するステップS1210に進む。一方、炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの全てが基準温度を超えている場合には、ステップS1202に進む。
【0096】
ステップS1202に進むと、第2の煉瓦下端温度判定部902は、珪石煉瓦温度計315a〜315dにより測定された炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの中に、基準温度と等しい炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iがあるか否かを判定する。この判定の結果、基準温度と等しい炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iがある場合には、当該炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iを有する熱風炉iの残熱量Qrm,iは「0」となる。よって、ステップS1203〜S1206の処理を省略して後述するステップS1207に進む。一方、基準温度と等しい炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iがない場合には、ステップS1203に進む。
【0097】
ステップS1203に進むと。第1の送風流量変化分決定部903は、例えば二分法に基づき、目標送風流量BVmの増加分ΔBVを決定する。そして、第1の送風流量変化分決定部903は、目標送風流量BVmに増加分ΔBVを加算したものを新たな目標送風流量BVmとし、これを、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風時間BTimemと共に、熱風炉シミュレーション部503に出力する。
【0098】
次に、ステップS1204において、熱風炉シミュレーション部503による熱風炉シミュレータ実行処理が行われる。この熱風炉シミュレータ実行処理により、ここでは、少なくとも、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガス温度Tex,in」が得られる。尚、この熱風炉シミュレータ実行処理の詳細は、図11に示した通りである。
【0099】
次に、ステップS1205において、第1の残熱量判定部904は、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iがあるか否かを判定する。この判定の結果、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしている熱風炉iがない場合には、当該熱風炉iが見つかるまでステップS1203〜S1205の処理を繰り返し行う。そして、当該熱風炉iが見つかると、ステップS1206に進む。
【0100】
ステップS1206に進むと、該当炉残熱量算出部905は、ステップS1204で算出された最新の「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in」を用いて、当該熱風炉iの残熱量Qrm,iを算出する。
次に、ステップS1207において、残熱量記憶部906は、当該熱風炉iの残熱量Qrm,iを記憶する。
【0101】
次に、ステップS1208において、第2の残熱量判定部907は、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たしたか否かを判定する。この判定の結果、当該条件を満たしている場合には、図12のフローチャートによる処理を終了する。一方、当該条件を満たしていない場合には、ステップS1209に進む。
【0102】
ステップS1209に進むと、第2の送風流量変化分決定部908は、ステップS1205において条件を満たしたと判定された熱風炉iに対してステップS1204で算出された最新の「炉別・サイクル別送風流量BVk,in」を固定値とするように熱風炉シミュレーション部503に指示する。そして、第2の送風流量変化分決定部908は、目標送風流量BVmの増減分ΔBVを決定する。そして、第2の送風流量変化分決定部908は、目標送風流量BVmに増加分ΔBVを加算又は減算したものを新たな目標送風流量BVmとし、これを、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風時間BTimemと共に、熱風炉シミュレーション部503に出力する。
【0103】
そして、ステップS1204に戻り、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しいという条件を満たすまで、ステップS1204〜S1209の処理を繰り返し行う。
【0104】
前述したように、ステップS1201において、炉別珪石煉瓦下端温度Tsi,iの全てが基準温度を超えていないと判定されると、ステップS1210に進む、ステップS1210に進むと、第3の送風流量変化分決定部909は、例えば二分法に基づき、目標送風流量BVmの減少分ΔBVを決定する。そして、第3の送風流量変化分決定部909は、目標送風流量BVmに減少分ΔBVを減算したものを新たな目標送風流量BVmとし、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風時間BTimemと共に、熱風炉シミュレーション部503に出力する。
【0105】
次に、ステップS1211において、熱風炉シミュレーション部503による熱風炉シミュレータ実行処理が行われる。この熱風炉シミュレータ実行処理により、ここでは、少なくとも、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガス温度Tex,in」が得られる。尚、この熱風炉シミュレータ実行処理の詳細は、図11に示した通りである。
【0106】
次に、ステップS1212において、第3の残熱量判定部910は、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度以上であるという条件を満たしたか否かを判定する。この判定の結果、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度以上であるという条件を満たしていない場合には、ステップS1210に戻り、この条件を満たすまで、ステップS1210〜S1213の処理を繰り返し行う。
一方、全ての熱風炉100a〜100dについて、炉別・サイクル別送風流量BVk,inが、目標送風流量BVmと等しく、且つ、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度以上であるという条件を満たしている場合には、前述したステップS1205に進む。
【0107】
[まとめ]
以上のように本実施形態では、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを少なくとも入力として、熱風炉100a〜100dにおける「ガスの熱収支と煉瓦の熱収支」の計算を行って、炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,inを計算する熱風炉シミュレーション部503を構築する。
炉別・サイクル別投入熱量決定部502が、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを熱風炉シミュレーション部503に与えると、熱風炉シミュレーション部503は、炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,inを算出する。評価値算出部504は、これらの情報を用いて、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度よりも大きいという制約条件と、炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,inが基準温度よりも小さいという制約条件を満たす範囲で、減風・減温により高炉の出銑量が減ったことに起因するコストの損失と、熱風炉100a〜100dの状態を減風・減温状態から目標の状態に変更するために使用するガスのコストと、が低いほど評価が高くなる評価関数の値(評価値Y)を求める。炉別・サイクル別投入熱量決定部502は、評価値Yに基づいて、熱風炉シミュレーション部503に与えた炉別・サイクル別投入熱量Qin,inが最適であると見なせるかどうかを判定し、最適であると見なせる炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを出力する。したがって、熱風炉100a〜100dの状態を、減風・減温の状態から、高炉の要求に応じた状態にするまでのサイクル数(時間)及び各サイクルにおける投入熱量を正確に把握することができる。
【0108】
また、本実施形態では、現在の炉別残熱量Qrm,iを基準にした炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを決定するようにした。したがって、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inをより正確に決定することができる。ここで、現在の炉別残熱量Qrm,iは、以下のようにして計算する。
まず、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemのうち、目標送風流量BVmを変更して熱風炉シミュレーション部503を与える。次に、熱風炉シミュレーション部503から得られた炉別・サイクル別送風流量BVk,inがこの目標送風流量BVmと等しくなり、且つ、熱風炉シミュレーション部503から得られた炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,inが基準温度と等しくなるという条件を満たす熱風炉iを見つけ出す。次に、当該条件を満たしたときの熱風炉iに対する「炉別・サイクル別送風温度BTk,inと、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、炉別・サイクル別送風時間BTimek,in」を用いて、当該熱風炉iの残熱量Qrm,iを算出する。そして、当該熱風炉iの送風流量を、当該条件を満たしたときの熱風炉iに対する「炉別・サイクル別送風流量BVk,in」に固定して、熱風炉シミュレーション部503による計算を、全ての熱風炉100a〜100dの残熱量Qrm,iが得られるまで繰り返し行う。
【0109】
[変形例1]
以上のように、本実施形態では、現在の炉別残熱量Qrm,iを計算する際に、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemのうち、目標送風流量BVmを変更するようにした。しかしながら、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、又は目標送風時間BTimemを変更するようにしてもよい。
【0110】
このようにした場合、まず、第1の送風流量変化分決定部903、第2の送風流量変化分決定部908、及び第3の送風流量変化分決定部909で決定するのは、「目標送風温度BTm」、「目標送風時間BTimem」、「熱風炉シミュレーション部503に入力する炉別・サイクル別投入熱量Qin,in」の変化分となる。
また、第1の残熱量判定部904、第2の残熱量判定部907、第3の残熱量判定部910では、「炉別・サイクル別送風流量BVk,in」・「炉別・サイクル別送風時間BTimek,in」・「熱風炉シミュレーション部503から出力された炉別・サイクル別投入熱量Qin,in」と、「目標送風温度BTm」・「目標送風時間BTimem」・「熱風炉シミュレーション部503に入力した炉別・サイクル別投入熱量Qin,in」とを比較することになる。
【0111】
また、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inを変更する場合、該当炉残熱量算出部905は、熱風炉シミュレーション部503で得られる燃焼効率ηinと、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inとを掛け合わせることにより、当該熱風炉iの残熱量Qrm,iを算出する(下記の(12)式も参照)。
また、炉別・サイクル別投入熱量Qin,inではなく、炉別・サイクル別蓄熱量Qbf,inを変更するようにしてもよい。このようにした場合、炉別・サイクル別蓄熱量Qbf,inと炉別・サイクル別投入熱量Qin,inと、燃焼効率ηinとが、以下の(12)式の関係にあることを利用すればよい。
in,in×ηin=Qbf,in ・・・(12)
すなわち、該当炉残熱量算出部905は、当該熱風炉iの炉別・サイクル別蓄熱量Qbf,inから、当該熱風炉iの残熱量Qrm,iが直接的に求められる。
【0112】
[変形例2]
炉別残熱量算出部501は、計算を開始する時刻における各熱風炉100a〜100dの残熱量Qrm,iを算出するようにして、残熱量Qrm,iを繰り返し算出するようにした。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、所定の時間隔で各熱風炉100a〜100dの残熱量Qrm,iを算出してもよい。
【0113】
[変形例3]
評価関数(評価値)と制約条件(制約式)とは、前述したものに限定されない。すなわち、熱風炉100a〜100dを減風・減温の状態にすることによる不利益が小さくなるほど評価が高くなるものとしていれば、どのような評価関数(評価値)を用いてもよい。また、適切な操業ができなくなることを制約条件(制約式)としていれば、どのような制約条件(制約式)を用いてもよい。
[変形例4]
また、熱風炉シミュレーション部503が実行する熱風炉シミュレータは、炉別・サイクル別投入熱量Qin,in、目標送風温度BTm、目標送風流量BVm、目標送風時間BTimemを少なくとも入力として、熱風炉100a〜100dにおける「ガスの熱収支と煉瓦の熱収支」の計算を行って、「炉別・サイクル別送風温度BTk,in、炉別・サイクル別送風流量BVk,in、及び炉別・サイクル別送風時間BTimek,in(好ましくは、これらに加えて、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,in)」を出力とするシミュレータであれば、前述したものに限定されない。
また、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度Tsi,in、及び炉別・サイクル別排ガスの温度Tex,in以外の操業制約・設備制約を採用してもよい。この場合、必ずしも熱風炉シミュレータにより操業制約・設備制約を得る必要はない。
【0114】
[請求項との対応]
<請求項1、6>
熱風炉操業推算装置は、例えば、熱風炉制御計算機301を用いることにより実現される。
熱風炉シミュレーション手段は、例えば、熱風炉シミュレーション部503を用いることにより実現される。熱風炉シミュレーション工程は、例えば、図11のフローチャートによる処理を行うことにより実現される。
評価値算出手段は、例えば、評価値算出部504を用いることにより実現される。評価値算出工程は、例えば、図10のステップS1005の処理を行うことにより実現される。
炉別・サイクル別投入熱量決定手段は、例えば、炉別・サイクル別投入熱量決定部502を用いることにより実現される。炉別・サイクル別投入熱量決定工程は、例えば、図10のステップS1006、S1008の処理を行うことにより実現される。
「前記評価値算出手段(工程)により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したか否かを判断し、当該変更終了条件を満足したと判断するまで、前記炉別・サイクル別投入熱量を繰り返し変更して、前記熱風炉シミュレーション手段(工程)による計算の入力とし、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したと判断したときの最新の前記炉別・サイクル別投入熱量を出力する」ことは、例えば、図10のS1004〜S1009の処理により実現される。
<請求項2、7>
炉別残熱量算出手段は、例えば、炉別残熱量算出部501を用いることにより実現される。
炉別残熱量算出工程は、例えば、図12のフローチャートによる処理を行うことにより実現される。
判別工程は、例えば、図12のステップS1205の処理を行うことにより実現される。判定手段は、例えば、このような処理を行う炉別残熱量算出部501により実現される。
算出工程は、例えば、図12のステップS1206の処理を行うことにより実現される。算出手段は、例えば、このような処理を行う炉別残熱量算出部501により実現される。
「前記判別した熱風炉については、前記条件を満たしたときに前記熱風炉シミュレーション手段により得られた値を固定値として、前記判別手段による判別と、前記算出手段による算出と、を、前記判別手段により全ての熱風炉が前記条件を満たすと判別されるまで繰り返し行う」ことは、例えば、ステップS1203〜S1206の処理を行うことにより実現される。
<請求項3、8>
「前記炉別残熱量を繰り返し算出」することは、例えば、図10において、ステップS1007が繰り返し算出されることにより実現される。
<請求項4、9>
「前記炉別・サイクル別送風温度、前記炉別・サイクル別送風流量、及び前記炉別・サイクル別送風時間に加えて、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度、及び炉別・サイクル別排ガス温度を少なくとも出力とする計算を行」うことは、ステップS1104において、燃焼終了の時点での炉別・サイクル別排ガス温度Tex,inが算出され、ステップS1111において、送風終了の時点での炉別時間別ガス温度TGitnが算出されることにより実現される。
【0115】
尚、以上説明した本発明の実施形態は、コンピュータがプログラムを実行することによって実現することができる。また、プログラムをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムを記録したCD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体、又はかかるプログラムを伝送する伝送媒体も本発明の実施の形態として適用することができる。また、前記プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体などのプログラムプロダクトも本発明の実施の形態として適用することができる。前記のプログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、伝送媒体及びプログラムプロダクトは、本発明の範疇に含まれる。
また、以上説明した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0116】
100 熱風炉
101 蓄熱室
102 燃焼室
103 混冷室
109 粘度煉瓦
110 ハイアルミナ煉瓦
111 珪石煉瓦
301 熱風炉制御計算機
310 熱風温度計
314 熱風流量計
315 珪石煉瓦温度計
501 炉別残熱量算出部
502 炉別・サイクル別投入熱量決定部
503 熱風炉シミュレーション部
504 評価値算出部
505 炉別・・サイクル別投入熱量表示指示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼ガスにより蓄熱煉瓦を加熱して蓄熱する燃焼期間と、当該蓄熱煉瓦に冷風を通して当該蓄熱煉瓦との熱交換により熱風を生成して高炉に供給する送風期間とを含む期間を1サイクルとしてそれぞれが稼働する複数の熱風炉の操業の状態を減風・減温状態にした後、当該複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための炉別・サイクル別の投入熱量を推算する熱風炉操業推算装置であって、
前記複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための、目標送風温度、目標送風流量、目標送風時間、及び炉別・サイクル別投入熱量を少なくとも入力とし、前記複数の熱風炉におけるガスの熱収支と煉瓦の熱収支の計算を行って、炉別・サイクル別送風温度、炉別・サイクル別送風流量、及び炉別・サイクル別送風時間を少なくとも出力とする計算を行う熱風炉シミュレーション手段と、
前記熱風炉シミュレーション手段による計算の結果に基づいて、前記複数の熱風炉を前記減風・減温の状態にすることによる不利益が小さいほど評価が高くなることを示す評価値を算出する評価値算出手段と、
前記評価値算出手段により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量を決定する炉別・サイクル別投入熱量決定手段と、
を有し、
前記炉別・サイクル別の投入熱量決定手段は、前記評価値算出手段により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したか否かを判断し、当該変更終了条件を満足したと判断するまで、前記炉別・サイクル別投入熱量を繰り返し変更して、前記熱風炉シミュレーション手段による計算の入力とし、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したと判断したときの最新の前記炉別・サイクル別投入熱量を出力することを特徴とする熱風炉操業推算装置。
【請求項2】
前記複数の熱風炉における炉別残熱量を算出する炉別残熱量算出手段を更に有し、
前記炉別・サイクル別投入熱量は、前記炉別残熱量を基準とした投入熱量であり、
前記炉別残熱量算出手段は、
前記炉別・サイクル別投入熱量、前記目標送風温度、前記目標送風流量、前記目標送風時間のうち、何れか1つのみを変更して前記熱風炉シミュレーション手段における計算の入力とし、入力した値と、当該熱風炉シミュレーション手段により得られた値とが等しくなり、且つ、前記熱風炉シミュレーション手段により得られた炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度が基準温度と等しくなるという条件を満たす熱風炉を判別する判別手段と、
前記条件を満たしたときに前記熱風炉シミュレーション手段により得られた値を用いて、前記判別した熱風炉の残熱量を算出する算出手段と、を更に有し、
前記判別した熱風炉については、前記条件を満たしたときに前記熱風炉シミュレーション手段により得られた値を固定値として、前記判別手段による判別と、前記算出手段による算出と、を、前記判別手段により全ての熱風炉が前記条件を満たすと判別されるまで繰り返し行うことを特徴とする請求項1に記載の熱風炉操業推算装置。
【請求項3】
前記炉別残熱量算出手段は、前記炉別残熱量を繰り返し算出し、
前記炉別・サイクル別投入熱量は、前記炉別残熱量算出手段により算出された最新の炉別残熱量を基準とした投入熱量であることを特徴とする請求項2に記載の熱風炉操業推算装置。
【請求項4】
前記熱風炉シミュレーション手段は、前記炉別・サイクル別送風温度、前記炉別・サイクル別送風流量、及び前記炉別・サイクル別送風時間に加えて、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度、及び炉別・サイクル別排ガス温度を少なくとも出力とする計算を行い、
前記評価値は、前記複数の熱風炉を減風・減温の状態にすることにより前記高炉における出銑量が減ったことに起因するコストの損失と、前記複数の熱風炉の状態を減風・減温の状態から目標の状態に変更するために使用するガスのコストと、が低いほど評価が高くなる評価値であり、
前記評価値算出手段は、前記炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度及び炉別・サイクル別排ガス温度に基づく制約式を満足する範囲で評価が最も高くなる前記評価値を算出することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の熱風炉操業推算装置。
【請求項5】
前記複数の熱風炉は、スタッガードパラレル方式で操業されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の熱風炉操業推算装置。
【請求項6】
燃焼ガスにより蓄熱煉瓦を加熱して蓄熱する燃焼期間と、当該蓄熱煉瓦に冷風を通して当該蓄熱煉瓦との熱交換により熱風を生成して高炉に供給する送風期間とを含む期間を1サイクルとしてそれぞれが稼働する複数の熱風炉の操業の状態を減風・減温状態にした後、当該複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための炉別・サイクル別の投入熱量を推算する熱風炉操業推算方法であって、
前記複数の熱風炉の操業を前記高炉の要求に応じた状態に変更するための、目標送風温度、目標送風流量、目標送風時間、及び炉別・サイクル別投入熱量を少なくとも入力とし、前記複数の熱風炉におけるガスの熱収支と煉瓦の熱収支の計算を行って、炉別・サイクル別送風温度、炉別・サイクル別送風流量、炉別・サイクル別送風時間、及び炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度を少なくとも出力とする計算を行う熱風炉シミュレーション工程と、
前記熱風炉シミュレーション工程による計算の結果に基づいて、前記複数の熱風炉を前記減風・減温の状態にすることによる不利益が小さいほど評価が高くなることを示す評価値を算出する評価値算出工程と、
前記評価値算出工程により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量を決定する炉別・サイクル別投入熱量決定工程と、
を有し、
前記炉別・サイクル別の投入熱量決定工程は、前記評価値算出工程により算出された評価値に基づいて、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したか否かを判断し、当該変更終了条件を満足したと判断するまで、前記炉別・サイクル別投入熱量を繰り返し変更して、前記熱風炉シミュレーション工程による計算の入力とし、前記炉別・サイクル別投入熱量の変更終了条件を満足したと判断したときの最新の前記炉別・サイクル別投入熱量を出力することを特徴とする熱風炉操業推算方法。
【請求項7】
前記複数の熱風炉における炉別残熱量を算出する炉別残熱量算出工程を更に有し、
前記炉別・サイクル別投入熱量は、前記炉別残熱量を基準とした投入熱量であり、
前記炉別残熱量算出工程は、
前記炉別・サイクル別投入熱量、前記目標送風温度、前記目標送風流量、前記目標送風時間のうち、何れか1つのみを変更して前記熱風炉シミュレーション工程における計算の入力とし、入力した値と、当該熱風炉シミュレーション工程により得られた値とが等しくなり、且つ、前記熱風炉シミュレーション工程により得られた炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度が基準温度と等しくなるという条件を満たす熱風炉を判別する判別工程と、
前記条件を満たしたときに前記熱風炉シミュレーション工程により得られた値を用いて、前記判別した熱風炉の残熱量を算出する算出工程と、を更に有し、
前記判別した熱風炉については、前記条件を満たしたときに前記熱風炉シミュレーション工程により得られた値を固定値として、前記判別工程による判別と、前記算出工程による算出と、を、前記判別工程により全ての熱風炉が前記条件を満たすと判別されるまで繰り返し行うことを特徴とする請求項6に記載の熱風炉操業推算方法。
【請求項8】
前記炉別残熱量算出工程は、前記炉別残熱量を繰り返し算出し、
前記炉別・サイクル別投入熱量は、前記炉別残熱量算出工程により算出された最新の炉別残熱量を基準とした投入熱量であることを特徴とする請求項7に記載の熱風炉操業推算方法。
【請求項9】
前記熱風炉シミュレーション工程は、前記炉別・サイクル別送風温度、前記炉別・サイクル別送風流量、及び前記炉別・サイクル別送風時間に加えて、炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度、及び炉別・サイクル別排ガス温度を少なくとも出力とする計算を行い、
前記評価値は、前記複数の熱風炉を減風・減温の状態にすることにより前記高炉における出銑量が減ったことに起因するコストの損失と、前記複数の熱風炉の状態を減風・減温の状態から目標の状態に変更するために使用するガスのコストと、が低いほど評価が高くなる評価値であり、
前記評価値算出工程は、前記炉別・サイクル別珪石煉瓦下端温度及び炉別・サイクル別排ガス温度に基づく制約式を満足する範囲で評価が最も高くなる前記評価値を算出することを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の熱風炉操業推算方法。
【請求項10】
前記複数の熱風炉は、スタッガードパラレル方式で操業されることを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の熱風炉操業推算方法。
【請求項11】
請求項1〜5の何れか1項に記載の熱風炉操業推算装置の各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−184495(P2012−184495A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50285(P2011−50285)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)