説明

燃料ガス化設備

【課題】固体燃料の微粒子を飛散させずに流動媒体と充分に接触させることができ、固体燃料の熱分解を確実に完了させて、冷ガス効率の向上と、C転換率並びにH転換率の向上と、ガス化ガス中のタールの改質とを図り得る燃料ガス化設備を提供する。
【解決手段】ガス化炉2側面における流動層1上面より低い位置に燃料供給管14を接続し、該燃料供給管14から固体燃料を流動層1内へ供給するよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料ガス化設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、燃料として、石炭、バイオマス、廃プラスチック、或いは各種の含水廃棄物等の固体燃料を用い、ガス化ガスを生成する燃料ガス化設備の開発が進められている。
【0003】
図6及び図7は従来の燃料ガス化設備の一例を示すものであって、該燃料ガス化設備は、蒸気、及び空気又は酸素等の流動用反応ガスにより流動媒体(硅砂、石灰石等)の流動層1を形成して投入される固体燃料(石炭、バイオマス等)のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉2と、該ガス化炉2で生成された可燃性固形分が流動媒体と共に導入管3から導入され且つ流動用反応ガスにより流動層4を形成して前記可燃性固形分の燃焼を行う燃焼炉5と、該燃焼炉5から排ガス管6を介して導入される排ガスより流動媒体を分離し該分離した流動媒体をダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に供給するホットサイクロン等の媒体分離装置8と、前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスより流動媒体を分離するホットサイクロン等の媒体分離装置9と、該媒体分離装置9で分離された流動媒体を回収する回収容器10とを備えてなる構成を有している。
【0004】
尚、図6及び図7中、11は前記ガス化炉2の底部へ導入される蒸気及び流動用反応ガスを流動層1内へ均一に吹き込むための分散板、12は前記ガス化炉2内部における導入管3が接続される部分を下方のみが開放されるように覆うことにより流動層1内の流動媒体が導入管3へ直接流出することを防止するための仕切壁、13は前記燃焼炉5の底部へ導入される流動用反応ガスを流動層4内へ均一に吹き込むための分散板、14´はガス化炉2側面における流動層1上面より高い位置に接続された燃料供給管である。
【0005】
前述の如き燃料ガス化設備においては、ガス化炉2において、蒸気、及び空気又は酸素等の流動用反応ガスにより流動層1が形成されており、ここに石炭、バイオマス等の固体燃料を燃料供給管14´から投入すると、該固体燃料は部分酸化してガス化され、ガス化ガスと可燃性固形分とが生成され、前記ガス化炉2で生成された可燃性固形分は流動媒体と共に導入管3から、流動用反応ガスにより流動層4が形成されている燃焼炉5へ導入され、該可燃性固形分の燃焼が行われ、該燃焼炉5からの排ガスは、排ガス管6を介してホットサイクロン等の媒体分離装置8へ導入され、該媒体分離装置8において、前記排ガスより流動媒体が分離され、該分離された流動媒体はダウンカマー7を介して前記ガス化炉2に戻され、循環される。
【0006】
ここで、前記ガス化炉2の内部では、ガス化炉2の底部へ供給される蒸気や固体燃料自体から蒸発する水分の存在下で高温が保持されると共に、固体燃料の熱分解によって生成したガスや、その残渣燃料が蒸気と反応することによって、水性ガス化反応[C+H2O=H2+CO]や水素転換反応[CO+H2O=H2+CO2]が起こり、H2やCO等の可燃性のガス化ガスが生成される。
【0007】
前記ガス化炉2で生成されたガス化ガスは、ホットサイクロン等の媒体分離装置9で流動媒体が分離され、該媒体分離装置9で分離された流動媒体は、回収容器10に回収される。
【0008】
尚、図6及び図7に示される燃料ガス化設備と類似した装置構成を有するものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開2006−207947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ガス化炉2の内部において固体燃料のガス化を行う際には、必ずタールや低級炭化水素ガスが発生し、該タールや低級炭化水素ガスが流動媒体と接触することによって改質が行われ、H2やCO等のガス化ガスに転換されるが、図6及び図7に示される従来例の如く、ガス化炉2の流動層1の上へ燃料供給管14´から固体燃料を供給する場合、該固体燃料の微粒子が飛散して流動媒体との接触が充分に行われず、固体燃料の熱分解が完了しにくくなって、得られるガス熱量即ち冷ガス効率が低くなる一方、C転換率やH転換率もあまり高くすることができないという欠点を有していた。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、固体燃料の微粒子を飛散させずに流動媒体と充分に接触させることができ、固体燃料の熱分解を確実に完了させて、冷ガス効率の向上と、C転換率並びにH転換率の向上と、ガス化ガス中のタールの改質とを図り得る燃料ガス化設備を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、流動用反応ガスにより流動媒体の流動層を形成して投入される固体燃料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉を備え、
該ガス化炉側面における流動層上面より低い位置に燃料供給管を接続し、該燃料供給管から固体燃料を流動層内へ供給するよう構成したことを特徴とする燃料ガス化設備にかかるものである。
【0012】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0013】
前述の如く、ガス化炉側面における流動層上面より低い位置に燃料供給管を接続し、該燃料供給管から固体燃料を流動層内へ供給するよう構成すると、従来例の如く、ガス化炉の流動層の上へ燃料供給管から固体燃料を供給する場合に比べ、該固体燃料の微粒子が飛散せずに流動媒体と充分に接触する形となって、固体燃料の熱分解が確実に完了し、得られるガス熱量即ち冷ガス効率が高まる一方、C転換率やH転換率も高くすることが可能となる。更に、ガス化したガスと流動媒体との接触が促進されることで、ガス化ガス中のタールを改質することも可能となる。
【0014】
前記燃料ガス化設備においては、前記燃料供給管のガス化炉に対する接続部近傍に、固体燃料の流動を促進するための流動ガスが供給される流動用ガス管を接続することができ、このようにすると、固体燃料の流動を促進し、溶融化した固体燃料が燃料供給管の接続部に固着して該燃料供給管が詰まることを防止する上で有効となる。
【0015】
又、前記燃料ガス化設備においては、前記流動用ガス管が接続される箇所における燃料供給管に、径が拡大されたバッファ部を形成することができ、このようにすると、燃料ガス化設備の規模が大きくなった場合に、単位時間当たりの固体燃料の供給量が増加しても、該固体燃料を一旦、バッファ部に受け入れてから安定して流動層へ供給することが可能となる。
【0016】
更に又、前記燃料ガス化設備においては、前記バッファ部を、内部に固体燃料の流動層が形成される固体燃料用流動層容器とすることもでき、このようにすると、燃料ガス化設備の規模が大きくなった場合に、単位時間当たりの固体燃料の供給量が増加しても、該固体燃料を一旦、固体燃料の流動層が形成される固体燃料用流動層容器に受け入れてからより安定して流動層へ供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の燃料ガス化設備によれば、固体燃料の微粒子を飛散させずに流動媒体と充分に接触させることができ、固体燃料の熱分解を確実に完了させて、冷ガス効率の向上と、C転換率並びにH転換率の向上と、ガス化ガス中のタールの改質とを図り得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の第一例であって、図中、図6及び図7と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図6及び図7に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1に示す如く、ガス化炉2側面における流動層1上面より低い位置に燃料供給管14を接続し、該燃料供給管14から固体燃料を流動層1内へ供給するよう構成した点にある。
【0020】
本図示例の場合、前記燃料供給管14のガス化炉2に対する接続部近傍には、固体燃料の流動を促進するためのN2や蒸気等の流動ガスが供給される流動用ガス管15を接続してある。
【0021】
尚、前記流動用ガス管15は、傾斜配置される前記燃料供給管14の下面側に対して、鉛直方向へ延びるよう接続してある。
【0022】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0023】
前述の如く、ガス化炉2側面における流動層1上面より低い位置に燃料供給管14を接続し、該燃料供給管14から固体燃料を流動層1内へ供給するよう構成すると、図6及び図7に示される従来例の如く、ガス化炉2の流動層1の上へ燃料供給管14´から固体燃料を供給する場合に比べ、該固体燃料の微粒子が飛散せずに流動媒体と充分に接触する形となって、固体燃料の熱分解が確実に完了し、得られるガス熱量即ち冷ガス効率が高まる一方、C転換率やH転換率も高くすることが可能となる。更に、ガス化したガスと流動媒体との接触が促進されることで、ガス化ガス中のタールを改質することも可能となる。
【0024】
ここで、図2は従来例(図6及び図7参照)を模擬して製作した研究室規模の試験装置で行った試験(固体燃料供給位置が流動層1上)、即ち、
分散板11から流動層1上面までの高さ:A=580〜600[mm]
分散板11から燃料供給管14´までの高さ:B´=1150[mm]
流動層1上面から燃料供給管14´までの高さ:C´=550〜570[mm]
とした場合と、
本発明を実施する形態の第一例(図1参照)を模擬して製作した研究室規模の試験装置で行った試験(固体燃料供給位置が流動層1内)、即ち、
分散板11から流動層1上面までの高さ:A=580〜600[mm]
分散板11から燃料供給管14までの高さ:B=350[mm]
流動層1上面から燃料供給管14までの深さ:C=230〜250[mm]
とした場合と
の間で、冷ガス効率、C転換率、H転換率の各々を比較した棒グラフである。
【0025】
因みに、図2には、従来例(図6及び図7参照)を模擬して製作した研究室規模の試験装置で行った試験(固体燃料供給位置が流動層1上)における冷ガス効率、C転換率、H転換率の各々を1.0とした相対値で示しており、本発明を実施する形態の第一例(図1参照)を模擬して製作した研究室規模の試験装置で行った試験(固体燃料供給位置が流動層1内)における冷ガス効率、C転換率、H転換率が各々約1.2倍に増加したことが確認できた。更に、タール濃度が約20%低下することも確認できた。
【0026】
尚、特に固体燃料としてバイオマスを使用した場合、該バイオマスは石炭より揮発分が多くガス化しやすいことから、ガス化炉2に対する燃料供給管14の接続部において、数百[℃]に昇温して溶融化し、それが固着していくと、燃料供給管14が詰まってしまう虞があるが、本図示例の場合には、燃料供給管14に接続した流動用ガス管15からN2や蒸気等の流動ガスが供給され、固体燃料の流動が促進されるため、固体燃料としてたとえバイオマスを使用したとしても、溶融化したバイオマスが燃料供給管14の接続部に固着せず、該燃料供給管14が詰まる心配もない。
【0027】
こうして、固体燃料の微粒子を飛散させずに流動媒体と充分に接触させることができ、固体燃料の熱分解を確実に完了させて、冷ガス効率の向上と、C転換率並びにH転換率の向上と、ガス化ガス中のタールの改質とを図り得る。
【0028】
図3は本発明を実施する形態の第二例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図3に示す如く、流動用ガス管15を傾斜配置される前記燃料供給管14の下面側に対して、水平方向へ延びるよう接続した点にある。
【0029】
図3の如く構成しても、図1に示す第一例の場合と同様、固体燃料の微粒子を飛散させずに流動媒体と充分に接触させることができ、固体燃料の熱分解を確実に完了させて、冷ガス効率の向上と、C転換率並びにH転換率の向上と、ガス化ガス中のタールの改質とを図り得る。
【0030】
図4は本発明を実施する形態の第三例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図1に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図4に示す如く、流動用ガス管15が接続される箇所における燃料供給管14に、径が拡大されたバッファ部16を形成した点にある。
【0031】
図4に示す如く、流動用ガス管15が接続される箇所における燃料供給管14に、径が拡大されたバッファ部16を形成すると、図6及び図7に示される従来例の如く、ガス化炉2の流動層1の上へ燃料供給管14´から固体燃料を供給する場合に比べ、該固体燃料の微粒子が飛散せずに流動媒体と充分に接触する形となって、固体燃料の熱分解が確実に完了し、得られるガス熱量即ち冷ガス効率が高まる一方、C転換率やH転換率も高くでき、ガス化ガス中のタールを改質することも可能となることに加え更に、燃料ガス化設備の規模が大きくなった場合に、単位時間当たりの固体燃料の供給量が増加しても、該固体燃料を一旦、バッファ部16に受け入れてから安定して流動層1へ供給することが可能となる。
【0032】
こうして、図4に示す第三例の場合、図1に示す第一例や図2に示す第二例の場合と同様、固体燃料の微粒子を飛散させずに流動媒体と充分に接触させることができ、固体燃料の熱分解を確実に完了させて、冷ガス効率の向上と、C転換率並びにH転換率の向上と、ガス化ガス中のタールの改質とを図り得ることに加え更に、燃料ガス化設備の大規模化にも対応できることとなる。
【0033】
図5は本発明を実施する形態の第四例であって、図中、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図4に示すものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図5に示す如く、前記バッファ部16を、内部に分散板17が配置され且つ固体燃料の流動層18が形成される固体燃料用流動層容器19とした点にある。
【0034】
図5に示す如く、前記バッファ部16を、内部に分散板17が配置され且つ固体燃料の流動層18が形成される固体燃料用流動層容器19とすると、図6及び図7に示される従来例の如く、ガス化炉2の流動層1の上へ燃料供給管14´から固体燃料を供給する場合に比べ、該固体燃料の微粒子が飛散せずに流動媒体と充分に接触する形となって、固体燃料の熱分解が確実に完了し、得られるガス熱量即ち冷ガス効率が高まる一方、C転換率やH転換率も高くでき、ガス化ガス中のタールを改質することも可能となることに加え更に、燃料ガス化設備の規模が大きくなった場合に、単位時間当たりの固体燃料の供給量が増加しても、該固体燃料を一旦、固体燃料の流動層18が形成される固体燃料用流動層容器19に受け入れてからより安定して流動層1へ供給することが可能となる。
【0035】
こうして、図5に示す第四例の場合、図4に示す第三例の場合と同様、固体燃料の微粒子を飛散させずに流動媒体と充分に接触させることができ、固体燃料の熱分解を確実に完了させて、冷ガス効率の向上と、C転換率並びにH転換率の向上と、ガス化ガス中のタールの改質とを図り得ることに加え更に、燃料ガス化設備の大規模化にもより確実に対応できることとなる。
【0036】
尚、本発明の燃料ガス化設備は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明を実施する形態の第一例におけるガス化炉を示す要部構成図である。
【図2】従来例を模擬して製作した研究室規模の試験装置で行った試験(固体燃料供給位置が流動層上)と、本発明を実施する形態の第一例を模擬して製作した研究室規模の試験装置で行った試験(固体燃料供給位置が流動層内)との間で、冷ガス効率、C転換率、H転換率の各々を比較した棒グラフである。
【図3】本発明を実施する形態の第二例におけるガス化炉を示す要部構成図である。
【図4】本発明を実施する形態の第三例におけるガス化炉を示す要部構成図である。
【図5】本発明を実施する形態の第四例におけるガス化炉を示す要部構成図である。
【図6】従来の燃料ガス化設備の一例を示す全体概要構成図である。
【図7】従来の燃料ガス化設備の一例におけるガス化炉を示す要部構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 流動層
2 ガス化炉
3 導入管
5 燃焼炉
7 ダウンカマー
8 媒体分離装置
10 回収容器
11 分散板
14 燃料供給管
15 流動用ガス管
16 バッファ部
18 流動層
19 固体燃料用流動層容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動用反応ガスにより流動媒体の流動層を形成して投入される固体燃料のガス化を行いガス化ガスと可燃性固形分とを生成するガス化炉を備え、
該ガス化炉側面における流動層上面より低い位置に燃料供給管を接続し、該燃料供給管から固体燃料を流動層内へ供給するよう構成したことを特徴とする燃料ガス化設備。
【請求項2】
前記燃料供給管のガス化炉に対する接続部近傍に、固体燃料の流動を促進するための流動ガスが供給される流動用ガス管を接続した請求項1記載の燃料ガス化設備。
【請求項3】
前記流動用ガス管が接続される箇所における燃料供給管に、径が拡大されたバッファ部を形成した請求項2記載の燃料ガス化設備。
【請求項4】
前記バッファ部を、内部に固体燃料の流動層が形成される固体燃料用流動層容器とした請求項3記載の燃料ガス化設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−208259(P2008−208259A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47556(P2007−47556)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】