説明

燃料タンク内のアレッジの生成方法および装置

【課題】火災防止のために、燃料タンク40,45におけるアレッジの酸素濃度を適切に維持する。
【解決手段】航空機の燃料タンク区画60内に一対の翼タンク40と中央タンク45とが設けられ、互いに連通している。翼タンク40はサージタンク35を介して外気に開放されている。不活性ガスとして窒素を多く含むNEAが、NEA供給源15からバルブ25,30を介して導入される。外気圧力が上昇する航空機の下降中には、バルブ30を介して混合チャンバ55へNEAが導かれ、外気と混合して翼タンク40さらには中央タンク45に導かれる。外気圧力が相対的に低くなる上昇中あるいは巡航中には、バルブ25を介して中央タンク45にNEAが導かれ、さらに翼タンク40へと流れる。これにより、タンク40,45全体の酸素濃度が適切なものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窒素富化空気(NEA)を用いて航空機等の燃料タンク内に適切なアレッジを生成する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の航空機は、一般に、不活性ガスの生成に基づく、火災・爆発の防止システムないし抑制システムを備えている。この種のシステムは、搭載型不活性ガス生成システムつまり「OBIGGS」(onboard inert gas generation system)としても知られている。このOBIGGSシステムにおいては、窒素富化空気(NEA:nitrogen enriched air)が燃料タンク内の空気と混合される。この混合物は、一般に、「アレッジ(ullage)」と呼ばれる。戦闘時や火花が生じた場合など燃料が点火され易い状況においても、燃焼が生じないように、酸素濃度が希釈される。燃料タンクの全ての箇所において、酸素濃度が、燃焼の虞を最小とするような十分に低い濃度となるように、燃料タンク内に導入されるNEAが既存のアレッジと適切に混合される必要がある。
【0003】
ボーイング747(登録商標)のような大型の航空機における燃料タンクとしては、燃料タンクの領域(区画)の中に、左右の翼タンクと中央タンクとが配置されている。また、サージタンクが翼タンクの外側に配置されており、操縦中に生じうる燃料タンクから飛び跳ねた燃料(sloshing)を捕捉する。このサージタンクは、翼タンクの外側に位置し、捕捉した燃料を重力により翼タンクに戻す構成となっている。燃料タンクはサージタンクを介して外気圧に開放されており、サージタンクを介して空気が流入可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の燃料タンクにおけるアレッジの生成方法は、下降中に、NEAを混合チャンバ内に導入し、上記混合チャンバを外気に開放し、NEAと外気との混合気を燃料タンクに導入する、ことを特徴とする。
【0005】
また、本発明に係る運転中の燃料タンクにおけるアレッジの制御方法においては、下降中には、NEAを混合チャンバ内に導入し、上記混合チャンバを外気に開放し、NEAと外気との混合気を燃料タンクに導入する。そして、上昇中あるいは巡航中は、NEAを上記燃料タンクに導入する。
【0006】
さらに、本発明に係る燃料タンク内にアレッジを生成する装置は、下降中にNEAが導入される混合チャンバと、下降中に上記混合チャンバと外気とを連通させる連通路と、下降中でない場合に、上記NEAを燃料タンクに導く連通路と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のNEA分配システムを下降モードにある状態で示した構成説明図。
【図2】上昇中あるいは水平に飛行している状態におけるNEA分配システムの構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、航空機(図示せず)内に設けられたNEA分配システム10の一実施例を示す構成説明図であって、特に、下降モードにあるシステム10を示している。このNEA分配システム10は、NEA供給源15と、供給されたNEA内の酸素の量を測定する酸素センサ20と、一対のバルブ25,30と、一対のサージタンク35と、一対の翼タンク40と、中央タンク45と、任意選択的な一対のO2センサ50と、一対の混合チャンバ55と、を備えている。一般的に、酸素希釈システムには窒素が用いられるが、他の酸素希釈用ガス(窒素を含む複数のガス、窒素を含まない複数のガス、複数の元素、およびこれらの組み合わせ、などを含む)を用いることもでき、これらも本実施例に含まれるものである。従って、本発明における用語「NEA」は、これらの酸素減少システムをも包含するように解釈されるべきものである。
【0009】
NEA分配システム10は、航空機(図示せず)の一領域における燃料タンク区画60(この区画60内には燃料が存在する可能性がある)内に配置されている。基本的に、燃料は、燃料タンク内およびサージタンク内に留まるように意図されているが、たまに漏洩することがある。航空機(図示せず)は、少量の燃料が燃料タンク区画60内に存在していても支障がないように設計されている。
【0010】
飛行機の下降中には、周囲環境からより高密度な空気(図示せず)が、サージタンク35ならびに開口部65,70を介して翼タンク40および中央タンク45へと流入するので、これらタンク40,45内の圧力が上昇する。この空気が翼タンク40へ流入する前に、翼タンク40および中央タンク45内のアレッジが適度な濃度となるように、混合チャンバ55においてこの空気がNEAと混合する。配管75を介してNEAが混合チャンバ55へ向かうように、バルブ30は開、バルブ25は閉、となり、サージタンク35を介して外部から流入してくる周囲空気と混合される。翼タンク40の内側にO2センサ50が配置されており、これにより、NEA分配システム10は、適切な濃度の酸素が各翼タンク40内のアレッジ中に存在しているか否か判定することができる。翼タンク40内の圧力が上昇することで、矢印70で示すように、中央タンク45へ向かう自然な流れが発生し、従って、NEAとの混合気が翼タンク40に流入するに伴って、中央タンク45においても適切な量のアレッジが確保される。これらのタンク内でのアレッジおよび空気の流れは、矢印によって示されている。
【0011】
図2は、航空機の非下降運転つまり巡航中あるいは上昇中の状態におけるNEA分配システム10を示している。この場合には、バルブ25が開で、バルブ30が閉、となる。NEAは、先ず中央タンク45に導入され、ここからライン70を介して各翼タンク40内へと分配される。航空機の上昇中には外気の圧力が低下し、また一般に巡航中は地上レベルに比較して低い圧力であるので、NEAは相対的に僅かに高い圧力でもって中央タンク45に導入され、アレッジがライン70を介して翼タンク40へと流れていく。これにより、全てのタンクのアレッジ中の酸素濃度が適切な濃度に維持される。タンク内でのアレッジおよび空気の流れが、矢印85によって示されている。
【符号の説明】
【0012】
10…NEA分配システム
25,30…バルブ
35…サージタンク
40…翼タンク
45…中央タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下降中に、NEAを混合チャンバ内に導入し、
上記混合チャンバを外気に開放し、
NEAと外気との混合気を燃料タンクに導入する、
ことを特徴とする燃料タンクにおけるアレッジの生成方法。
【請求項2】
上記の混合気の導入が、
上記混合気を翼タンクへ導くステップと、
この翼タンクから中央タンクへと混合気を導くステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の生成方法。
【請求項3】
下降中でない場合は上記NEAを上記中央タンクへ導き、この中央タンクから上記翼タンクへアレッジを導くことを特徴とする請求項2に記載の生成方法。
【請求項4】
運転中の燃料タンクにおけるアレッジの制御方法であって、
下降中には、NEAを混合チャンバ内に導入し、
上記混合チャンバを外気に開放し、
NEAと外気との混合気を燃料タンクに導入し、
上昇中あるいは巡航中は、NEAを上記燃料タンクに導入する、
ことを特徴とするアレッジの制御方法。
【請求項5】
上記の混合気の導入が、
上記混合気を翼タンクへ導くステップと、
この翼タンクから中央タンクへと混合気を導くステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
上記の上昇中あるいは巡航中におけるNEAの導入が、
NEAを中央タンクへ導くステップと、
この中央タンクから翼タンクへとNEAを導くステップと、
を含むことを特徴とする請求項4に記載の制御方法。
【請求項7】
燃料タンク内にアレッジを生成する装置であって、
下降中にNEAが導入される混合チャンバと、
下降中に上記混合チャンバと外気とを連通させる連通路と、
上記NEAと上記外気との混合気を燃料タンクに導く連通路と、
を備えてなる装置。
【請求項8】
上記燃料タンクと連通した第2の燃料タンクをさらに備え、アレッジが両タンクの間で通流することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
下降中に上記NEAを上記混合チャンバへ導くための第1のバルブをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
下降中でないときに上記NEAを上記第2の燃料タンクへ導くための第2のバルブをさらに備えることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項11】
下降中でないときに上記NEAを上記燃料タンクへ導くための第2のバルブをさらに備えることを特徴とする請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−63259(P2011−63259A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183542(P2010−183542)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(500107762)ハミルトン・サンドストランド・コーポレイション (165)
【氏名又は名称原語表記】HAMILTON SUNDSTRAND CORPORATION
【住所又は居所原語表記】One Hamilton Road, Windsor Locks, CT 06096−1010, U.S.A.