燃料電池その他の高温用途のための高温安定性を備えるイオン性液体及びイオン性液体酸、製造方法及びそれを使用する電池
高温安定性のイオン性液体を含む高温燃料電池における発展及び低揮発性ジアニオン塩としての無機酸の貯蔵を開示する。非水性系としてはかつてない大きさの導電率を有するこの種のイオン伝導性液体の形成を記載する。ジアニオン配置の安定性は高温燃料電池電解質として非腐食性プロトン移動イオン性液体の高性能に役割を果たすことが示される。新規電解質を有する単純なH2(g)電解質/O2(g)燃料電池の性能を記載する。周囲温度から200℃超温度にかけて優れた性能が達成される。中性プロトン移動塩、HSO4−アニオンを有する酸塩とも良好な結果を与え、重硫酸塩が低温及び超高温で特に良好である。全電解質の性能はバルク電解質を作る酸と塩基の中間のpKa値を有する不揮発性塩基の少量添加によって改善される。好ましい例はイミダゾールドープト硫酸水素エチルアンモニウムであり、工業標準リン酸電解質よりも全ての点で優れた挙動を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府助成金の陳述
本発明のために財政的な支援が米国政府、エネルギー省(U.S.Government,Department of Energy)第W7405−ENG−36号、及び米国科学財団固体化学認可番号(National Science Solid Foundation State chemistry Grant No.)DMR−9108028002によって提供された。したがって、米国政府は本発明に相応の権利を有する。
関連出願
本出願は、Angell、Xu、及びBelieresの「燃料電池及び他の高温用途のための高温安定性を備えるイオン性液体及びイオン性液体酸(Ionic Liquids and Ionic Liquid Acids with High Temperature Stability,for Fuel Cell and Other High Temperature Applications)」の名称で2003年5月1日出願の米国特許仮出願第60/467,796号、及び同一の名称及び発明者により2003年9月8日に出願された第60/501,626号に基づく優先権を主張するものである。両方の仮出願は参照により本明細書の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
背景
現在、燃料電池研究がますます盛んになっており、世界中の研究所が、他の携帯式電気化学発電系に対して、燃料電池によって提供されるエネルギー容量における優位性の利用を探求している。この活動の多くは高温燃料電池に向けられており、それらの燃料電池の活性成分には、高温安定性のあるプロトン透過可能なメンブレンが入手可能でなければならない。多くのグループが、不揮発性塩基、例えばプロトンキャリアになるイミダゾールを含む系で使用するための高温安定性ポリマーを調査している。イミダゾールをポリマー鎖に付けることによって不動性を付与することができ(局部的に可動性であるが)、したがって、プロトンだけが透過することができる(不動性はメンブレンの機能に重要ではないが)。
【0003】
高温燃料電池に対する他のアプローチは、プロトンが電池を通るための通路を提供する単一成分又は殆ど単一成分の電解質の使用を含む。多く研究された事例はリン酸燃料電池であり、電解質は殆ど純粋なリン酸であって、カソード反応は直接水を生成する(一方、ベーコン(Bacon)電池のカソード反応はOH−種を生成する)。リン酸燃料電池は大気圧で0.9Vの開路電圧を送達し、170℃の動作条件下で約0.7Vに降下する。プロトン移動機構は、特性的に主として輸送(vehicular)であり、プロトンがグロッタス(Grotthus)型機構によるのではなくプロトン化された化学種の一体的な部分として移動することを意味する。
【0004】
イオン性溶液中における電気伝導度の研究は、物理化学の最も早期の段階に遡る。それは圧倒的に水溶液の研究であった。イオン解離の概念並びにイオンの実在を確認する戦いは、水溶液について行われた観察に基づくものであった(1)。報告された最初のイオン性液体IL(又は周囲温度で溶融した塩、ambient temperature molten salt、ATMS)は1914年の硝酸エチルアンモニウムであった[16]。
【0005】
より最近の非水性電解質系への関心の高まり(2、3)は、部分的に、再充電可能なリチウム電池の探求によるものである。これに関して、非水性電解質に特徴的なはるかに低い導電率は重大な障害であった(3)。
【0006】
低い蒸気圧の液体をプロトン移動機構によって得る可能性が、ある時期軍事計画に利用された[29、30]。これらの応用において、小量の、制御された量の水を含む硝酸ヒドロキシルアンモニウム(HAN)などの可動液体中で、酸化性アニオンを還元性カチオンと結合させることは、砲火推薬用に適切な制御された酸化還元エネルギーの放出を可能にする。部分的に水和した実際の処方についての軍の報告データ[30]から判断すれば、これらの系に形成されたイオン性液体は低い粘度を有するようである(或る刊行物[31]に記載されたが、無水イオン性液体についての粘度又は導電率の値の報告は見当たらなかった)。
【0007】
更に最近では、イオン性液体媒体は様々な合成化学工程で応用が見出されつつある[32〜35]、そのような不揮発性液体(vaporless liquid)の大部分は本明細書に記載する種類のものではなかった。一方、強酸から塩基へのプロトン移動は、イオン性液体の形成の一般的な調製技術として最近利用されている。報告された例は、共通して非常に弱い塩基性アニオンであるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、TFSIを有していた[10、36]。イオン性液体のプロトン型と非プロトン型の間の関係、及び特にそれらの相対的蒸気圧間の関係に対しては、系統的な注目が待たれている。
【0008】
プロトン移動工程における自由エネルギー変化が大きいとき、プロトンはブレンステッド塩基に強く局在化するので、酸分子を再生成するボルツマン確率は周囲温度では無視できるようになる。或る場合には、300Kほどの高温でも無視できる。したがって、その塩は、ほとんどの基準に照らして、「非プロトン性」イオン性液体と呼ばれるもの(例えば、同一部位へのプロトンの移動によって形成されたものではなく、−CH3+の移動によって形成されたもの)としての塩である。実際に、それらの液体は、プロトン移動部位がなく、それゆえ正の電荷がイオンの内部に位置するある種の個々の塩よりも理想的にイオン性であることが理解されるであろう。
【0009】
イオン性液体のイオン化傾向を評価する一方法は、図C1[14、37]に示した古典的なワルデン則[21]に基づく分類図を使用することである。ワルデン則は、イオンの移動度(等価導電率Λ(Λ=FΣμizi)の式で表される)を、イオンがそこを通って動く媒体の流動性に関係付ける。液体を独立イオンの集団として表すことが充分に可能であるならば、ワルデンプロットはほぼ理想線に一致するであろう。理想的には、このことは、イオン−イオン相互作用がなければ傾斜は1にならなければならない、ということを意味する。その理想線の位置は高希釈のKCl水溶液を用いて確立される。
【0010】
他でも議論されているように[14、37、38]、イオンが反対に荷電したイオンに対して均一に分布している液体系は、対応する結晶のエネルギーに匹敵するマデルング(Madelung)エネルギーを発生する。このことは、マデルングエネルギーが融解で失われる場合にそうであるように、古典的イオン系の融解熱及びエントロピーについて何ら異常がないことによって証明される。したがって、「良好な」イオン性液体の蒸気圧は、イオン対が蒸気の状態へ進入し得る前にマデルングエネルギー並びにイオン対間の双極−双極相互作用を克服しなければならないので、必然的に非常に低い。
【0011】
プロトン移動によって形成された弱い塩は、電荷が均一に分布した液体を形成せず、したがって、それらのワルデンプロットは理想線未満に落ち込み、それらの蒸気圧は非常に低くはならないであろう。その場合、総蒸気圧が外部圧力に達した時に起きるはずの沸騰は分解温度未満に下がり、蒸気はイオン対よりも分子種を含み易くなろう。この研究において、本発明者らは、これらの概念の試験を助けるであろう、二成分の、溶媒なしの、ブレンステッド酸−塩基系の多数の実験データを提供する。
【0012】
図C1形式でのデータの提示は、アニオンとカチオンの結合に様々な形が存在することを検知させるだけでなく、荷電化学種の1種その他に異常に高い移動性が存在することを示すのにも役立つ。プロトンの側の過剰な移動性は古典的な主題であり、その理解を可能にする機構は、ベルナールとファウラーによって提起されたように、グロッタスの独創的な仕事に遡る[23]。さほど一般的に議論されないが、現象的に見分けが付かないのは、プロトンよりもはるかに大きな化学種が、粘性流動工程を特徴付けるエネルギー障壁よりも低いエネルギー障壁を呈するチャンネルを介して構造を滑り抜けることができるときに見出される過剰の導電率である。これらについて、その動きは、「部分的(fractional)ワルデン則」、Λφα=一定(α<1)で記述される。
【0013】
図C1の対数−対数プロットにおいて、この種の「デカップリング」を特徴とする系についてのデータ[22]は、傾斜αの直線として現れる。水性プロトン性溶媒中の強い無機酸の溶液の場合、このデカップリングは、液体ハロゲン化物中の銀イオンの場合よりも高い流動性で開始されるように見える[39、40]。グリセロール中の無機酸などのあまり知られない事例において、分離はより低い流動性で起きる。このデカップリング現象には更に追加の実験情報が必要である。無溶媒系中のデカップリングしたプロトンの動きに必要な条件の認定が非常に望まれる。
【0014】
Sem−1で測定される電流を運ぶ溶液の能力は、イオン濃度の増加と共に純粋な溶媒の低く、しばしば測定不能な値から増加する。しかし、溶媒の誘電率によって緩和された反対の電荷のイオン間の静電気相互作用が、個々のイオンの移動度に釣り合った減少をもたらすので、それは常に1Mオーダーの濃度でピークに達する(水性では〜5M)(2)。この理由のため、温度を高い値に上昇させないかぎり、純粋な塩が優れた導体になり得ることは一般に期待できない。本発明者らは、この期待が有効ではないことを示し、無溶媒イオン性液体の導電率を水性溶液のレベルまで上昇させることのできる条件を認定する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
本発明によれば、高温安定性を備えるイオン性液体及びそれを用いて形成される燃料電池が提供される。また、本発明は、非水性系ではかつてない大きさの導電率を有するこの種のイオン伝導性液体の形成方法を提供する。本発明の他の側面は、無機酸を低揮発性のジアニオン塩として貯蔵する能力である。ジアニオン配置の安定性は、非腐食性のプロトン移動イオン性液体の高温燃料電池電解質としての高性能において役割を果たすことができる。電池性能データから、本発明の電解質を用いる単純なH2(g)/電解質/O2(g)燃料電池の開回路電圧出力及び短絡電流性能が、周囲温度並びに約200℃以下及び200℃超温度の両方において、同等なリン酸電解質燃料電池の開回路電圧出力及び短絡電流性能よりも優れていることがわかる。中性プロトン移動塩及びHSO4−とH2PO4−アニオンを有する酸塩の両方とも良好な結果を与え、二硫酸塩の場合は低温及び超高温で特に良好である。これらの電解質の全ての性能は、バルクの電解質を作る酸と塩基の中間のpK3値を有する不揮発性塩基を少量添加することによって顕著に改善される。本発明の好ましい例示的実施態様は、イミダゾールをドープした硫酸水素エチルアンモニウムであり、工業標準リン酸電解質よりも全ての点で優れた挙動をもたらす。
【0016】
本発明の一側面によれば、プロトンの高温移動への別種のアプローチが提供される。プロトンがアニオンとカチオンの両方によって担われる、別種の輸送機構である。アニオン又はカチオンのいずれもデポジットすることができないので、メンブレンは一層有効にプロトン透過可能なメンブレンになる。最も好ましい場合には、電解質は化学量論的な物質であるので、分極の影響を受けにくい。単一成分電解質の変種はいくらか分極の影響を受けることがあるので、電解質中における高い拡散速度によって最小化しなければならない。いずれにしても、分極の問題は必ずしも重要ではない。分極の問題は全ての現在のリチウムイオン電池にあるが、重大問題ではないように見える。我々の電解質を用いるカソード反応は、
2e−+2HA2−+1/2O2(g)=H2O(g)+4A−
であると考えられ、式中、Aはアニオンであり、ジアニオンは水素結合している。しかし、ジアニオンは以下に示すように電解質中に自然発生するので、ジアニオンはカソード工程を進めるために高濃度で公式に存在する必要はない。電力発生の工程中には、電池を通るジアニオンの流れがなければならない。
【0017】
この電池が動作することが見込まれる高温のゆえに、水が準安定な液体状態で生成し、これは、流入する酸素を飽和し電池外部へのガスの拡散勾配を創出することによって、直ちにカソードで蒸留除去しなければならない。
【0018】
本発明のプロトン運搬液体は、多くの実施態様において200℃まで、他の実施態様においては250℃超において沸騰に対して安定である。プロトンは適用に十分であることが実証された速度で化学的移動に利用可能である。必要であれば、これらは別の触媒的アプローチによって高めることができる。電解質及びその酸変種の特定の好ましい実施態様を以下に説明する。これらの高温安定液体の代替例を電池電解質として利用する単純な水素−酸素燃料電池の実施態様の性能も説明する。
【0019】
特定の実施態様では、本発明者らは負荷をかけて検討した場合の燃料電池に関するデータを報告する。この試験は、同様に説明する開回路電圧(負荷なし)や短絡電流(バイアス電圧なし)の測定で行われるよりも厳格な性能評価を提供する。後者の結果は、新規な系の可能性を強く示唆するものであるが、電池の詳細な性能に関して誤り易いものでもある。
【0020】
負荷下の電池の試験は、測定中に電池電圧に対抗するバイアス電圧を印加することのできる手段による、更に複雑な機器の入手可能性に依存する。このようにすると、異なる負荷の下で動作する間に、すなわち単純な開回路条件ではなく電流が流れる間に、燃料電池の出力を測定することができる。これらのデータは電池電圧対電池電流のプロットの形で表される。これらの測定に利用される機器はKeithley 23 Source Measure Unitであった。
【0021】
これらの測定は2種類の電池を用いて行った。その1種は我々の初期の実験に利用された単純な設計のガラス電池であり、図7に示す。この電池は、比較性能データを得るのに非常に有用であることが実証されており、そのデータによれば、十分に研究されたリン酸燃料電池における負荷の下で発生した電流を、物理的に非常に似た条件の下で新規な電解質を用いて発生した電流と比較することができる。唯一の変更点は白金ワイヤ電極とガスの接触効率であり、さまざまな粘度の液体を通って気泡となるガスとはわずかに異なる。
【0022】
本発明の好ましい例示的電解質を実施する実験電池において、露出した白金が比較的小さな面積であるため、これらの電池を流れる電流は実際の電池に流れなければならない電流に比べて小さい。本発明を実施するひとつの提案された電池においては、電極面積は、リン酸燃料電池用に最適化された特殊設計の電極に白金の微細分散体を用いて、極めて大きくされる。また、本発明者らは、新規発明的な電解質を備えるそれらの電極を利用する「サンドイッチ」型の電池も作製した。その結果を本明細書に示す。これらの電極は長い期間かけて開発され、リン酸電解質と共に用いるよう最適化されてきたので、本発明の特定の電解質を利用する電池の可能性の評価において、結果が同じ匹敵し得る値であることを期待することはできない。最高の性能のためには、新規電解質は、新規な電解質の特定の濡れ特性と浸透特性用に最適化した電極と協調して適用される必要があろう。しかし、これらの比較から、可能な高い電流性能の或る程度の示唆が得られる。実際に、特に最適化をしていないにもかかわらず、殆どリン酸電池のレベルの性能が得られている。
【0023】
本発明の側面は注目すべきものがある。例えば、本発明の燃料電池は、特性的に酸でも塩基でもなく中性のイオン性液体である電解質を用いて極めて良好に作動する。本発明者らは、この原理が通常のリン酸燃料電池より一定の側面において優れた燃料電池性能をもたらす、例示的な好ましい実施態様を開示する。更に、本発明者らは、電池に流れる電流を顕著に増加させる中性燃料電池電解質への特殊な添加物について述べる。
【0024】
水溶液は、水の独特な誘電特性と流動特性のため、優れた電解質導体であると一般に考えられている。本発明者らは、それらの伝導性が溶媒を含まない液体電解質に匹敵し得ることを示す。これらは周囲温度で液体であるプロトン移動塩である。ある場合には可動性プロトン粒子数が無視できない影響を与えることがあるが、高い導電率は、ある種のグロッタス機構によるものではなく、高い流動性とイオン性によるものである。最も高い導電率はカチオンとアニオンが両方ともプロトンを含むときに得られた。25℃で、>150mScm−の値は可能に見え、100℃で470Scm−が測定された。低い蒸気圧での高いイオン性とプロトン交換動力学の組み合わせにより、説明される系は優れた燃料電池電解質にもなる。
【0025】
本発明の上記及び更なる特徴、利点及び目的は、添付の図面を考慮しつつ、本発明の好ましい例示的かつ非制限的な実施態様の以下の詳細な説明から、よりよく理解されるであろう。
【0026】
詳細な説明
電解質
1.プロトン移動酸塩基系
概念を実証する目的に用いられる塩基性電解質において、カチオンはプロトン移動工程によって形成される。移動は酸HAから何らかの塩基Bへ行われる。例えば、イオン性液体(IL)の硝酸エチルアンモニウム(EAN)を形成するには、1914年にワルデンが最初にイオン性液体を作ったとき行ったように、エチルアミンをHNO3と結合させることができる。本発明者らは、このプロトン移動化合物、及び単独又は他の類似の化合物との組み合わせで十分低い溶融点である他のプロトン移動化合物は室温で液体であると特徴付けてきた。これは通常それらが容易に過冷されてガラス状態になることを保証するのに十分である。硝酸エチルアンモニウムは14℃で溶融する。一方、エチルアミンとHNO3の組み合わせによる蒸気圧が外部圧力(通常の沸騰では1気圧)で到達することによって設定される沸点は240℃であり、成分のいずれよりもはるかに高い。もちろん、これは酸から塩基へのプロトン移動の大きな負の自由エネルギーによって起きる大きな蒸気圧低下によるものである。DTA線は図1に示される。線は、HNO3に富む溶液で得られるデータの外挿及び以下に与えられるpKaと沸点上昇の相関の両方によって予測される温度(240℃)で沸騰が開始することを示す。しかし、吸熱沸騰工程は化学分解(246℃)の発熱工程を伴い、これは急速に支配的になる。実際には、おそらく2つが同時に始まる。
【0027】
イオンC2H5NH3+とNO3−の移動度は、イオン性液体の低い粘度(25℃で0.28ポイズ又は0.028Pas)のため非常に高く、溶融物の伝導性(25℃で20.8mScm−1)は殆どの他のイオン性液体よりも高い。このIL及び若干の他の直接関連するもののデータを図2に示す。多くの他のもののデータを以下に示す。
【0028】
電荷の移動は、流動性に対する等価導電率の比が典型的にイオン性液体及び溶液のものであるので、プロトン性ではなく主としてイオン性である。これは図3のワルデンプロットに示され、以下で更に詳細に論じる。水性無機酸中におけるように移動がプロトンの独立のジャンプによって支援されるとき、ワルデンプロットは理想線を超え、典型的にはより小さな傾斜を有する。1M水性HClの若干のデータが例として図3に含まれる。
【0029】
硝酸エチルアンモニウムの導電率は高いが、硝酸ジメチルアンモニウムからのその異性体形DMANの導電率は更に高い。DMANの融点は室温よりも高い72℃であるが、その硝酸エチルアンモニウムとのモル比3:7の共晶混合物はより低く(Te=−20℃)、この溶液は結晶化が遅い。代りに、それは−93℃のガラス温度まで過冷される。この共晶混合物の導電率(25℃で27.8mScm−1)及びその溶融温度を超えるDMANの導電率は図2に含まれる。
【0030】
多数の代替のプロトン移動塩が入手可能であり、それらの多くは室温で安定な液体を生成する。ここで興味深いものは最も高い導電率を有するものである。若干の追加の例を図4に示す。それらの液体の導電率として予測される値を支配する若干の経験則は別の刊行物で論じられている。燃料電池目的として興味深いことには、周囲温度での電解質の導電率は少なくとも10mScm−1、好ましくは30mScm−1以上でなければならない。(96重量%リン酸の導電率は周囲温度で46.6mScm−1、及び200℃で0.51mScm−1である。)この条件はEANによって満たされるので、本発明者らの水素/酸素燃料電池性能の初期の研究は水含有量の少ない純粋な硝酸エチルアンモニウムを用いて行われた。追研究がDMAN及び硝酸メチルアンモニウムMANで実施された。水素/酸素燃料電池としては例外的な値(96重量%H3PO4の標準的な高温燃料電池で達成できる値を超える値)に導電率を高める方法を以下に説明する。
【0031】
或いは、プロトン移動塩BH+A−は非プロトン性イオン性液体B’Aで置き換えることができ、B’は、例えば、アミンの窒素をプロトンの代わりに−CH3でキャップすることによって形成されるカチオンとすることができ、最も一般的な種類の「イオン性液体」(IL)又は「周囲温度溶融塩」(ATMS)を与えることができる。しかし、この場合、プロトン性成分はいくらか過剰の酸を加えることによって形成しなければならない。非プロトン性カチオンは、我々が優先的に開発した例におけるよりも移動度は低く、粘度はより高く、導電率はより小さい。
【0032】
2.液体電解質
一連の溶媒を含まない高導電率のイオン性液体電解質を図A4に示しており、これは参照により本明細書の記載の一部とする報告[54]から引用している。この研究は、[12]の発見に続く進歩であった論文[13]によって刺激を受けたものであった。
【0033】
図1を含む報告[54]以来、本発明者らは[NH4][HF2]に類する若干のイオン性液体を合成し、化合物フッ化水素エチルアンモニウム[EtNH3][HF2]が周囲温度で液体であることを見出した。その導電率は非常に高いことがわかる(25℃で8.6mS/cm)が、予期したほどではない。この液体は以下に報告する燃料電池研究において電解質として使用された。合成は、アミン水溶液に水性HFを当量点まで滴下することによって水性媒体中で行い、続いて120℃で蒸発と乾燥を行った。
【0034】
本発明者らはプロトン性ILの流動性及び付随する導電率が非プロトン性ILよりもはるかに高いことを見出したが、理由は完全に明らかではない。残存H−結合は逆の効果を示唆するであろう。イオン性液体及び溶融塩の低い蒸気圧の原因は、マデルング(Madelung)エネルギーの減少(正の電荷中心の周りに均一な負の電荷が分布することによる自由エネルギーの低下)にあるのかもしれない。説明が何であれ、より高い流動性は、系のより塩基性の強い部位のプロトン化が問題にならない任意の応用において、プロトン性ILに重要な利点を与える。
【0035】
プロトン性ILの流動性が例外的になり得る可能性は、ILのガラス転移温度Tgの研究の過程で明らかになった(12)。Tgは液体状態が始まるところである。Tgはそれを超えると流動性が測定可能になる温度であり、もちろん、室温での流動性と関連が深い。類似の脆性のある液体(すなわち、Tgを超える温度における流動性が温度変化と同じ割合で変化する液体(15))では、より低いTgのILは周囲温度のILで更に流動性があるはずである。直接に又はそれらの混合物についてのデータの短い外挿によって得られる、単純なモノ−及びジ−置換アンモニウム塩のTg値は、異常に低いことが判る。硝酸エチルアンモニウム([EtNH3][NO3],I)(16)及び関連の深い2種のプロトン性ILである硝酸ジメチルアンモニウム([Me2NH2][NO3],II)とギ酸エチルアンモニウム([EtNH3][HCO2],III)の値を図A1に示す。そこでそれらは、弱く分極可能なアニオンの塩について、Tgをモル容積(したがってイオン間相互分離)に関連付ける最近のプロットと比較されている(12)。プロトン性ILについて見出された、驚くほど低いTg値は、データを入手可能な最も類似の非プロトン性IL、すなわち第四アンモニウム塩[N1−0−1,211][BF4]のそれよりも完全に1桁大きい(12)周囲流動性と解釈される。
【0036】
図A1は、参照12からの弱く分極可能なアニオンの非プロトン性塩についてのプロットに関連付けて、プロトン性ILのガラス転移温度を示すものである。プロトン性ILは、(I)硝酸エチルアンモニウム[EtNH3][NO3]、(II)硝酸ジメチルアンモニウム[Me2NH2][NO3]、(III)ギ酸エチルアンモニウム[EtNH3][HCO2]である。例(IV)は、正の電荷とエーテル溶媒を同一単位内に結合したメトキシプロピルアンモニウムカチオンのギ酸塩[MeOPrNH3][HCO3]である。非プロトン性アンモニウムカチオン[N1−0−1,211]+の最も単純な入手可能なガラス形成硝酸塩に対する値を含めてある。(注)1はメチルであり、2はエチルであり、4はn―ブチルであり、−O−はエーテル酸素であり、P14+はN−メチル−N−n―ブチルピロリジニウムである。点の間の線は視線の案内である。[EtNH3][NO3]及び[Me2NH2][NO3]についてのデータ点は、それらのガラス形成二成分溶液値の短い(15モル%)外挿により得られる。図1AのTg最小値でのモル容積を有する、弱く分極可能な非プロトン性イオン性液体の電荷密度は約4Mであることに注目すること。
【0037】
プロトン性ILの合成は非常に簡単である。市販のアミンを水に溶解し、酸で0℃で滴下し、続いて70℃で回転蒸発及び真空乾燥する。
【0038】
図A2(a)は、LiCl・6H2O(Tg=−134℃)及び1MのLiCl溶液と比較した、様々なプロトン性及び非プロトン性イオン性液体の流動性のアレニウスプロットである。
【0039】
これらの物質及び周囲温度で安定な若干の混合物の流動性データを図A2(a)のアレニウスプロットに示す。その長い歴史(16)から考えれば驚くべきことに、[EtNH3][NO3]の粘度値の報告はほとんどなく(25℃と50℃での値だけが入手可能である(17))、関連するメチルアンモニウムとジメチルアンモニウム塩についてのデータはない。比較のために、ガラス状態LiCl・6H2O(7.7M、Tg=−63℃)(18)へも冷却することのできる、盛んに研究された水溶液の流動性も示す。1MLiCl溶液についてのデータも含めている。プロトン性ILは関連する非プロトン性塩より1〜2桁流動性が大きいが、それらの流動性は濃縮された水溶液よりもはるかに低い。
【0040】
ギ酸塩アニオンは最も流動性のあるPiLを提供することに注目すること。また、ギ酸塩アニオンは最も流動性のあるILも提供する。((注):Vは硝酸メチルアンモニウム[MeNH3][NO3]であり、[BMIM]は1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである。V−IIは[MeNH3][NO3]と[Me2NH2][NO3]の混合物である。)
【0041】
図A2(a)の流動性データに対応する導電率は図A2(b)のアレニウスプロットに示される。示した1MLiCl溶液に比べて、それらはあらゆる非水性リチウム塩溶液について報告された最も高い導電率よりも顕著に高いが、やはりいくらか低くなる。図A2(b)には、SonyのLiイオン電池の電解質(炭酸エチレンと炭酸ジメチル混合物中のLiPF6)及び最も高い伝導性非水性Li塩溶液(アセトニトリル中のLiBOB)についてのデータが比較のために含まれる。任意の大気圧非水性リチウム塩溶液についての最も高い周囲温度の導電率はアセトニトリル中のLiBOBの導電率である(10)。(BOBはビス−オキサラート−オルソボラートである。)図A2(b)に見えるように、導電率は本液体が十分凌駕する。
【0042】
[EtNH3][HNO2]の流動性は硝酸塩よりも高いが、伝導性はそうではない。明らかに、プロトン移動は完全ではない。[EtNH3][NO3]は硝酸塩として「良好な」ILとは考えられず、分類及び/又はプロトン移動関連特性の問題を提起する。十分奇妙なことには、ヒドラジニウムカチオンのギ酸塩は、より高いTgを有するにもかかわらず[EtNH3][HNO3]よりも良好な導体として知られる(20)(より低い流動性を示唆する)。
【0043】
他にも(12、13)、電荷Λ(Λ=σVe、式中Veは体積当量である)のモルあたり導電率を伝導性媒体の流動性に結びつける古典的なワルデン則(21)が分類図表の基礎として用いられてきた。その表現は、同じ図表上で超イオン性とサブイオン性(subionic)挙動の両方を表示するという利点を有する。ここで、本発明者らはこの図表をTgで目盛ったΛのアレニウスプロットと組み合わせ、温度と等価導電率との間の関係が流動性と導電率との間の関係と同時に見られるようにした(図A3)。高温の限界での導電率は、高い流動性の限界での導電率と同じはずであり、約104.5ポイズ−1のあたりにあると認められている(15)。この限界は格子振動時間(〜10−14s)に達する剪断緩和時間によって決まる。
【0044】
図A3(a)は様々なプロトン性及び非プロトン性イオン性液体について流動性に対する等価導電率の関係をプロットしている。図A3の太線は理想的なワルデン線である。理想的には、決められた電位勾配下のイオンの動きに抗する唯一の力は粘性摩擦であるので、導電率の温度依存性は流動性の値によって決まる。理想的な線の位置は周囲温度での1MのKCl水溶液についてのデータによって決められる。LiCl・6H2Oについてのデータはそれに近くなる。大部分の電荷濃縮系のイオン間摩擦は、高温で更に重要な移動度の損失を招く。これは図A3に見えるように、プロトン性又は非プロトン性すべてのIlsについて見出される理想線未満の傾斜を生じさせる。「部分的ワルデン則」Ληα=一定(0<α<1)が適用される。コンダクタンスについて特殊な機構があるとき、超イオン性についてのワルデンプロットは理想線よりも上にあり、傾斜αはデカップリング指数の尺度を提供する(22)。
【0045】
図A3(a)は、コンダクタンスについての機構で液体を区別することを可能にし、ワルデン機構(例えば、ある種の溶融物における小さなイオンの超イオン性スリップ(22)及びある種のプロトン性溶液、特に水を有する溶液についてのグロッタス機構(23))よりも効率的である。しかし、それは強いプロトン性移動を有するプロトン性Ilsと非プロトン性Ils間の差異を何ら明らかにしない。それらのワルデンプロットから、それらは同じに見える。異なる場合のプロトン移動の程度を更に感度良く区別し、それによって、なお一層高い導電率への道を指し示すために、本発明者らは過剰沸点の測定を含む代替のアプローチに転じる。
【0046】
他にも示されるように(13)、その成分の沸点から加成された値に対する測定されたプロトン性ILの沸点の超過は、酸及び塩基についてのそれらのガーニーエネルギーレベル間のプロトンのための移動の自由エネルギーに比例する量と良く相関をとることができる(24)。これはpKn値の差であり、水分子についてのプロトンの値である(ΔG0=−RTln(ΔKa))特定の値に参照されるプロトン移動の自由エネルギーを実際に評価する。本発明者らは図A1及び図A2の3種類の硝酸塩プロトン性Ilsについての過剰沸点が、参照13のプロットによって正確に予測されることを見出す((25)も参照のこと)。したがって、このプロットは、外挿によって、過剰沸点、それゆえ未だ研究されていない任意のプロトン性ILの実際の沸点がどうであるか言うことを可能にする。それは、様々な強塩基と超酸であるトリフルオロメタンスルホン水素酸との組み合わせの沸点が、高過ぎて測定できない(カチオンの事前分解のため)ことを正確に予測する。
【0047】
したがって、図A3(a)によってイオン化傾向に関して区別できないプロトン性ILは、その相違を過剰沸点基準によって明らかにする。(電解質の沸騰と関係する)プロトンが電解質のアニオン上のその原点へ戻り、次いで蒸気の中に離脱する確率は、プロトン化反応の自由エネルギー変化のボルツマン関数でなければならない(13、25)。
【0048】
流動性と導電率の次のレベルに至る糸口を与えるのは、これらの液体の沸点の挙動である。このため、本発明者らは以下の観察を行う。[EtNH3][NO3]とその類縁体について、プロトン移動工程の平衡定数は周囲温度で分子よりも圧倒的にイオンを優先するが、プロトンがアニオン上に瞬間的に存在するであろう消滅確率は、やはり流動性の高さに或る役割を果たしているように見える(図A1及びA2)。もしそうであるならば、多分同一の原理がアニオンに働くことができるので、低い蒸気圧を維持しつつ流動性が高まる。したがって、本発明者らは、最近与えられた安定性の証拠である水素結合したジアニオン性プロトン性ILの例を検討する(13)。
【0049】
図A3(b)はTgで目盛ったアレニウスプロットであり、流動性が10−11ポイズ(無機網目ガラスでは10−13p)のガラス状値に達する温度に対する等価導電率の温度依存性を表示する。無機超イオン系はそのガラス温度で非常に高い導電率を有する。サブイオン性(会合、イオン対等)系は全ての温度で低い導電率を有する。導電率についての理想的な(イオン相互作用のない)挙動は、H2O中のKClについて、無限希釈導電率の点線プロットで示される(ロビンソンとストークスからのデータ(27))。これらのデータを含むためには、高温粘度あてはめに示唆されているので、Tgは138Kを割り当てる。水の実際の値には異論がある。
【0050】
部分(a)と(b)において選択されたプロットは、流動性=104.5ポイズ−1におけるのと同じ値を無限温度で有するように外挿された。イオン性相互作用のないので、T>2.5Tgでの挙動はアレニウス則に従うはずである(15)。
【0051】
α−メチルピリジン+トリフルオロ酢酸系において、沸点はジアニオン組成物で最大(200℃で)になり、ガラス転移温度は化学量論的(1:1)組成物で最大になることが見出された(13)。したがって、ジアニオン組成物で蒸気圧は最小化されるが、液体の導電率は増加する。プロトン性硝酸塩ILにおいて、化学量論的組成物でのプロトン移動エネルギーの方がより大きいため、ジアニオン組成物は最大沸点をもたない。しかし、それは比較的高く留まり(164℃)、導電率は無論増加する。データは図A4に含まれ、導電率は本質的に1M水性LiClと同じであることがわかる。
【0052】
図A4は、(i)通常のプロトン性IL(単一成分[EtNH3][NO3]及び混合物[MeNH3][NO3]−[Me2NH2][NO3])、(ii)非プロトン性第四アンモニウムIL、及び(iii)LiCl水溶液(1M及び7.7MすなわちLiCl・6H2O)と比較したジアニオン性プロトン性ILの比導電率を示す。ジアニオン硝酸塩は1MLiClのレベルに達し、[MeNH2][NO3]と[NH4][HF2]の混合物も達する。純粋な[NH4][HF2]を測定すると、LiCl・6H2O溶液の値に等しい値への驚くべき増加がある。[NH4]+を[EtNH3]+、[Me2NH2]+、[MeNH3]+などと置換すれば、周囲温度液体類似物が期待される。
【0053】
既知の最も強いジアニオン[HF2]−を導入することにより、ジアニオンプロトン性ILの概念を更に一段進めることができる。実際に、このアニオンを組み込むイオン性液体(しかし過剰のHFを有する)は、例外的な導電率を有することが既に報告された(26)。市販の[NH4][HF2]の導電率が測定されており(若干の電池腐食を代償に)、図A4に含めてある。導電率は、ここで>100℃の温度範囲で測定した7.7MLiCl溶液と同程度の高さであることがわかる。[NH4][HF2]が周囲温度ILではない(Tm=125℃)ので、比較は高温でのみ行った。しかし、[NH4][NO3]は[MeNH3][NO3]、[MeNH2][NO3]又は[EtNH3][NO3]及び[NH4][HF2]よりもはるかに高い溶融点を有しているので、[MeNH3][HF2]又は[Me2NH2][HF2]及び[MeNH3][HF2]とのその混合物は周囲温度で液体であり、また、それらが[NH4][HF2]のデータから示唆されるものに匹敵する導電率を有するであろうと予測することは合理的である。
【0054】
最終的に、本発明者らはまた、LiCl・6H2Oの−134℃に対して−130℃のTgでガラス形成する[Me2NH2][NO3]・6HNO3についてのデータを図A4に含めることによって、LiCl・6H2Oとの代替の比較を行う(沸点はLicl・6H2Oの138℃に対して103℃)。そのより高いTgにもかかわらず、明らかにより高い脆性のため、その導電率はLiCl・6H2Oよりも高い。
【0055】
本発明者らは、本明細書に説明するプロトン性ILよりもはるかに高い導電率を生じる系だけが、デカップリングしたプロトン(グロッタス機構)が作用する水性酸系であるという観察で結論付ける(23)。最近、Watanabeとその共同研究者達(28)は、弱いデカップリングが、イミダゾールとHTFSI(m.p.=73℃)から作られたプロトン移動塩の過剰のイミダゾール中の溶液で起きることを示した。実在のデカップリングしたプロトンの動きがニートのプロトン性IL中で起きる条件を求めるのが将来の仕事の目標である。[NH4][HF2]の非常な導電率は、それを見るのがさほど遠くないことを示唆する。
【0056】
プロトンに富む本発明のイオン性液体は、プロトン酸と、上述のプロトン移動によって形成される種類の弱塩基性カチオンの存在によって利用可能になった活性アニオンとの組み合わせに基づく。代りに、現在「イオン性液体」又は「周囲温度で安定な溶融塩」媒体に広く使用される非プロトン性カチオンを使用することができるが、導電率はいくらか犠牲になる。
【0057】
強い水素結合によって保持されるそれらのジアニオン(AHA)の形成は、以下に示すように、揮発性酸の沸点を100℃以上高める。
【0058】
本発明のプロトン運搬流体の特性を更に記述するために、本発明者らはプロトン移動塩とその過剰酸及び過剰塩基中の溶液の課題を研究した。プロトン酸とアニオン(第1プロトンの移動によって形成された塩の)との結合が非常に強いことを事例は示した。それは非常に強いので、通常の沸点(全ての揮発性化学種による総蒸気圧が1気圧に達する)はジアニオンの化学量論でその最大値に達する。図5を参照のこと。この図は、α−ピコリン+トリフルオロ酢酸系を示し、ガラス温度(白四角)、失透温度(黒菱形)、液状温度又は凝固点(白三角)及び1気圧での沸点(黒丸)を示す。トリフルオロ酢酸(HTFAc)と塩基であるα−ピコリン(α−pic)(2−メチルピリジン)から形成されるこの系において、系の最大溶融点は1:1化合物(単純なプロトン移動塩であるトリフルオロ酢酸2−メチルピリジニウム)で見出される。しかし、沸点は、酸と塩基成分の組み合わされた蒸気圧が水素結合ジアニオン(AHA)の化学量論量で1気圧に等しくなる点でその最大値に達する。ジアニオン化学量論量での沸点がこの開示の図1よりも更に高い他の事例を以下に示す。
【0059】
酸性化した溶融物の導電率は図2及び図4に示した中性液体のそれよりもかなり高いことが判る(図6参照)。エチルアンモニウムカチオンを含む液体がジアニオンの不存在下に周囲温度で20.8mScm−1までの導電率を示すことが判ったのに対し、[EAN]+[H(NO3)2]−の環境導電率は驚くべきことに37.6mScm−1に達する。最終的に、化学量論量のXA・HA(XAは硝酸ジメチルアンモニウムDMANであり、HAはHNO3である)の液体酸塩の導電率は、初めて非水性電解質の導電率を水溶液の範囲とする。この溶液の導電率は周囲温度で65.7mScm−1であることが見出された。XA・3HNO3への酸含有量を増加させると、最終的に非水性溶液としては初めて「100mSCM−1の壁」を破る。これは非水性液体でかつて測定された最高の導電率であると考えられる。図6において、これらの新規なイオン伝導性液体のデータは、塩化リチウムの1.1M溶液の導電率、96重量%リン酸の導電率、及び最終的に既知のイオン性導体の中で最も電導性のある4M水性H2SO4の導電率と比較される。
【0060】
本発明者らは、プロトンをギ酸、トリフルオロ酢酸、及びトリフリック酸(すなわちトリフルオロメタンスルホン酸)などの無水形で市販の無水酸に加える、系の系統的な研究を報告してきた。しかし、他も可能である。なるほど、本発明の例示的試験燃料電池は、それが既に十分既知であったので、電解質として使用する、本発明者らの報告したイオン性液体である硝酸エチルアンモニウムEANを含まなかった。しかし、今では燃料電池電解質としてのその適用は確信されている。EANは本発明者らの報告した仕事に説明されたどれよりも優れた導電率を有するが、その挙動は、系の塩基であるエチレンアミンが室温でガス(沸点Tb=16.6℃)であるため、酸/塩基組成物の全範囲にわたって容易に追跡することはできない。
【0061】
3.回転子相固体電解質
ここで、本発明者らは、調製され相転移と導電率について特徴付けた電解質を開示するが、作動する燃料電池の固体電解質として使用できることを未だ立証していなかった。それらは前節の置換硝酸アンモニウム及びアンモニウムビフルオリドに密接に関連している。
【0062】
本発明者らは、前例のない導電率[1]を有する周囲温度イオン性液体を開発する過程で、置換アンモニウムカチオン系に非常に高い電気導電率を有する多数の回転子相が存在することに気づいた。これらは、リチウム固体電解質[5〜7]の科学において開発された、イオン回転が係わる或る原理を用いて、Haileと共同研究者達[8]によって開発された無機回転子相の導電率を満足する、又は凌駕することのできそうなプロトン伝導性メンブレンを、より経済的で毒性少なく製造する可能性を高めた。我々がデータを有する多くの事例は、回転子相の物理[9、10]に興味を持った研究者らによって以前に研究されたが、それらが燃料電池の固体電解質として働く可能性があるとは以前には考えられなかった。この点で、これらの固体相の高い導電率がプロトン移動機構によるものか、又は輸送移動が関与するのかは明らかではない。そのことは機能的な燃料電池の目的のためには問題ではない。これらの単一成分系に濃度勾配を確立することができないからである。濃度勾配を確立することができないが、しかしプロトンをアノードで取り出しカソードでの電極反応へ移動することができるとき、電解質は事実上プロトンの単位輸送数電解質である。これは燃料電池電解質において長い間求められてきた目標である。
【0063】
ここで、本発明者らは硝酸エチルアンモニウム(EAN)、硝酸ジメチルアンモニウム(DMAN)、硝酸メチルアンモニウム(MAN)、及びその若干の混合物の相関係と導電率の挙動の最近のデータを示す。これらの電解質は、それらの高い導電率のため、同じ原理の実際例の開発を手始めに刺激するために必要な概念の実証を確立する基礎として役立つであろう。
【0064】
図B2は塩EAN、DMAN、及びMANの導電率をアレニウスプロットの形で示す。EANは室温で液体であるが、他の2種はそうではない。にもかかわらず、それらの1種であるDMANは室温で非常に高い導電率10−2.6S/cmを維持し、それが溶融する前に10−1S/cmに近づく。導電率はイオンの高速回転に関係することが予想され、これまではこれらの材料に対する興味の主因であった[9、10]。
【0065】
図B3はDMAN及びMANについての一組のDTA走査であり、固体状態と溶融相転移の相対強度を示す。DMANの場合、可塑性結晶は「ティンマーマンス回転子(Timmermans rotator)」である[9、10]。図B3は、温度変化に伴って起きる相転移に対する導電率挙動に関する。図B3に示すMANの示差熱分析DTA線から、この固体物質は、固体−固体転移が起きる78℃の温度での溶融に際して通常現れるエントロピーの過半を発生したことが明らかである。これはカチオン又はアニオン回転、多分両方が開始するためであり、これは多く研究された[9、10]。また、DMANも相対的に低い温度20℃で強い固体−固体転移を示すが、程度は溶融に比べて小さい。これらの回転子相の混合物の若干のデータは、追補資料として提供される。90DMAN−10MAN可塑性結晶の周囲温度の導電率は、驚くべきことに10mS/cmである。
【0066】
更に顕著な固体導体は、化合物NH4HF2の固体の形であり、以下の節で我々が報告している液体の1種に密接に関係する。固体NH4HF2の周囲温度での導電率は非常に高く(20mS/cm)、100℃で>100mS/cmである(図B4)。図B4は、NH4HF2(Tmelt=125℃)のイオン性(プロトン性)導電率の温度依存性を、6モルH2O/Li+の濃縮LiCl水溶液の導電率と比較してプロットしたものである。硝酸塩の場合の固体状態における導電率は、非常に再現性があるわけではないが、常に高い。それはあまり高いので、それがすべて格子のイオン成分の拡散によるものと考えることは困難である。むしろ、高速回転するイオン間を飛び回るプロトンからの寄与が大きいように思われる。硝酸塩の研究に基づいて(参照10及び図B2)、置換されたアンモニウムカチオン誘導体、及び特にその混合物は更に高い導電率が期待できる。
【0067】
4.ガラス電池:白金ワイヤ電極
電池を図B7に図表的に示す。
【0068】
(a)新規な電解質である硝酸エチルアンモニウムとリン酸電解質との100℃での性能比較
図B5は、[EtNH3][NO3](EAN)と85%リン酸との100℃における裸の白金ワイヤ電極でのI−V曲線比較のプロットである。結果は、EAN電解質を用いた電池の電圧が、リン酸電解質を用いたものよりも常に高く、前者によって発生される最大電力(最大傾斜(dE/di)maxで得られる)が新規電池ではるかに大きいことを示す。
【0069】
(b)新規な電解質である[Me2NH2][HF2]とリン酸電解質との性能比較
図B6から、ビフルオリドプロトン性ILを利用する電池の性能が非常なものであることが判る。室温での任意の所与の電流で発生される電圧は、150℃の温度でのリン酸電池のそれよりも優れている。このビフルオリド電池は、ガラスの腐食がフリットを崩壊させるので高温での研究は行えなかった。データは以下に説明するテフロン(登録商標)で挟んだ電池で高温で得られた。
【0070】
5.テフロン(登録商標)電池:コロイド状Pt電極(高表面積)
電池は図B7に示される。リン酸電解質を有し、それに対して電極を最適化してあるこの電池の性能を図B4に示す。これがリン酸電池に予想される性能である。それらの性能は「ならし(breaking−in)」時間、すなわち電解質への数時間の露出の後にのみ得られ、電流発生までに長い時間がかかる(初期には極めて小さい)。明らかに、電解質が適切に電極を適切に透過し、白金表面すべてに到達するには時間がかかる。これらのデータは、良好なリン酸電池についての文献中のデータと比較すべきものである[12]。
【0071】
イオン性液体電解質を新鮮な電極を設置した電池に導入すると、その性能は非常に悪い。その電解質が電極構造への初期透過を達成できないことは明らかである。これは驚くべきことではない。というのは、電極はH3PO4電解質で用いるように開発され最適化されたものだからである。
【0072】
一方、電池を最初H3PO4電解質でならし、次いでH3PO4電解質を取り除いて新規な電解質の1種と置き換えると、新しい安定した状態が直ちに得られ、おそらく、プロトン性IL電解質の特性に対して最適化された高分散白金電極を用いた場合ほど良好ではないにしても、電池性能は非常に良好になり得る。
【0073】
(a)[Me2NH2][HF2]電解質
図B8に、H3PO4と比較した電解質[Me2NH2][HF2]の性能を示す。この電解質用に最適化した電極で、優れた性能が達成できると考えられる。
【0074】
(b)[EtNH3][NO3]電解質
硝酸エチルアンモニウム電解質電池のリン酸を用いたものに対する優位性は、図B5に見られた。ここで、我々はリン酸電解質をEANに置き換えると、開回路条件下の電池の電圧が1.2ボルトまで大きく上昇することを見出す。より高い最大電力さえもつ、はるかに高いエネルギーの電池の可能性が高まる。しかし、電流の実体が尽きてしまうと、好ましい電圧を維持することができない。初期の優位性及びその急速な減衰は、新しいデータを図5のデータと組み合わせて図B9に示される。おそらく、電極設計の改善によって、非常に高性能の電池を得ることができるように思われる。
【0075】
(c)固体プロトン性[Me2NH2][NO3]電解質
リン酸電解質を固体プロトン性電解質DMAN[Me2NH2][NO3]に置き換えると、25℃での開回路条件下の電池の電圧は1.14ボルトまで大きく上昇する。おそらく、これらの電解質がリン酸用に特別に設計されているという理由で、電流の実体が尽きてしまうと、やはり好ましい電圧を維持することができない。初期の優位性及びその急速な減衰は図B10に示される。多分、電極設計の改善によって、非常に高性能の電池を得ることができるように思われる。
【0076】
本開示の電解質の化学的及び電気化学的用途
1.金属溶解
アニオンに捕捉されたプロトンは化学的仕事を行うのに利用可能であると考えられる。プロトンは水素の放出で示されるように、イオン性液体が粉状亜鉛と反応するとき亜鉛金属と交換することができるが、カチオン上に−OH基が存在しないかぎり、電子移動は少なく、電子移動を自由に起こすためには加熱を必要とする。酸性イオン性液体の応用のこの側面は、燃料電池への応用に関して今のところあまり重要ではない。
【0077】
2.燃料電池
これらの高伝導性高沸点電解質への主な興味は、その高温燃料電池における電解質として役立つ潜在的可能性にあるといわねばならない。確かに、プロトン移動イオン性液体電解質を利用するそれらの電池の実現性は発表されたばかりである。(速報刊行物Chem.Comm.の中で、Watanabeと共同研究者達は、水素電極及び水素/酸素燃料電池用の電解質としてのプロトン移動塩の実現性の証拠の最初の報告と考えられるものを提出している。)本発明者らの型の電解質は電流に関してはるかに高い性能を有し、標準的な高温燃料電池電解質である4重量%の水を有するリン酸の性能と競うことを可能とする。
【0078】
また、本発明者らは、競合し得る電池電圧を維持しながら、広範囲の温度にわたってリン酸燃料電池を超える値に電流を増加させる成功に導く戦略をも開示する。
【0079】
燃料電池用の、本発明の好ましい実施態様であるプロトン移動塩の電位を試験するために、図7に示したU電池設計を用いて簡単な水素酸素燃料電池を組み立てた。水素と酸素は、白金めっきしていない白金電極上に、電池のそれぞれ左側と右側にバブリングした。図8及び10(電池1)に示したデータを得るために使用した電池の第1の型には、電池2(図7)においてH2の泡を分散するのに使用するフリットは存在しなかった。
【0080】
電極では以下の反応が起きると考えられる。
アノードでは、
H2(g)→2H++2e−、及び
2H++4A−→2HA2−
正味:H2(g)+4A−→2HA2−+2e−、
カソードでは、
2e−+1/2O2(g)→O2−、及び
O2−+2HA2−→H2O(g)+4A−
正味:2e−+2HA2−+1/2O2(g)→H2O(g)+4A−
正味電池反応は、無論H2(g)+1/2O2(g)→H2O(g)である。
【0081】
電池の電位は、逆電池電位と最小化されるべきそれぞれの電極の過電位との和によって求められる。一般的に、最も重要な過電位は酸素還元過電位である。リン酸燃料電池の電位を理論的な値未満に低下させる主要な原因と考えられるのはこの過電位である。
【0082】
市販のシリンダーの水素と酸素を定常的にバブリングさせる間、電池の電位はKeithley Model No.177 Microvolt DMM電位計を用いて監視した。2つの電極を接続する外部回路を流れる電流をKeithleyのマルチメータを電流計モードにして用いて測定した。
【0083】
電池1の簡単な白金ワイヤの螺旋電極に水素と酸素を定常的に流し、電池中の電解質が標準的なリン酸(4重量%の水を有する)であるときに記録された電位を図8(a)に示す。電池の温度を室温から200℃に上昇させたときに記録された電流を図8(b)に示す。
【0084】
(図8(a)及び8(b)にはまた)これらの示したプロットと比較するために、我々は電解質が(i)硝酸エチルアンモニウムEAN、(ii)硝酸ジエチルアンモニウムDMAN、(iii)硝酸メチルアンモニウムMANであるときの電位と、同じ電池に流れる電流を示した。後者の2種の電解質は、溶融点がそれぞれ72℃と109℃であるので、高温でのみ使用することができる。しかし、周囲温度性能を必要とする応用では、それらを互いに又はEANと混合することができる。DMAN−MANの場合、共融温度は室温未満になる。
【0085】
このレベルで試験すると、新規な燃料電池は優れた性能を示すように思われる。EANの場合の電圧出力はリン酸燃料電池よりも顕著に高いが、より高温では電圧が下がり、この理由は今のところ理解できない。
【0086】
それらのコンダクタンスは非常に高いので、硝酸塩系電解質の使用にはその化学的な不安定さと爆発の可能性に関して欠点がある。したがって、アニオンを使用するこの一般的な種類で、酸化力のない、多くの他の可能な電解質を試験した。この場合、より少容量の電解質と、Ptワイヤ電極の近傍でより小さな液滴中にガスを分散させることを意図したガラスフリットを用いた修正された電極とを備えた、わずかに異なる設計(電池2、図7)の電池を用いた。各試験には同じ水素流量を用いた。図9はリン酸二水素エチルアンモニウム及び硫酸水素エチルアンモニウムのプロトン移動塩のデータを示す。特に、後者は低温で期待できるように思われるが、最高温度における以外はリン酸電池の性能に匹敵しない。200℃で、その性能は優れたものになるが、わずかである。H2SO4とは異なり、HSO4−は弱酸であり、その酸の塩が吸湿性でないことから考えて、高温燃料電池用途に大きな可能性を提供するように思われる。硫酸水素電解質は中性プロトン移動塩ですらない。
【0087】
本発明の燃料電池をあらゆる従来の研究から区別し、はるかに低い温度での利用を可能にする顕著な現象は、
(i)低蒸気圧媒体中で特に低濃度において不揮発性であり、
(ii)塩基(エチルアンモニウム)と酸(HNO3、H2SO4等)間の中間のブレンステッド塩基性であり、結合して一次プロトン移動電解質を形成し、優先的にプロトン化されない、という2つの特性のゆえに選択される分子状塩基を含むことによって単純なプロトン移動塩電解質が修正されるときに、電池中に流れる電流の顕著な増加である。
【0088】
図10は、添加剤として4重量%のイミダゾールを含む、及び含まない、硝酸エチルアンモニウム電池について、電流(図10(a))と電圧(図10(b))の比較を示す。比較のために、同じH2流量を用いる同じ電池中で、96重量%のリン酸が電解質であるときの電圧と電流を含めてある。電圧をわずかに犠牲にして、低温での電流は2倍近くなり、高温ではかなり改善されることを見ることができる。
【0089】
ギ酸エチルアンモニウム(より弱い酸)と硫酸水素エチルアンモニウム(より強い酸)を用いる電池で同じ現象が見出される。やはり同じ流量を用いて、電池2中に4重量%のイミダゾールを含む、及び含まない、硫酸水素エチルアンモニウム電池についてのデータを図11に示す。イミダゾールの添加によって高められたプロトン移動電解質のより粘性の高い特性にもかかわらず、EAHSO4の場合の電流もやはりより高い。高粘度のため、小さな泡はもはや、前の場合のようにフリットで形成されて離れることはなく、このことは電極被覆効果によって大きな電流変動を招く。この問題は、電極設計の改善と異なる粘度の混合電解質を使用することによって解決されるであろうと考えられている。今のところ、電流変動のピークが電池性能の真の表示であると理解されている。これがやはりリン酸電池よりも優れていることに注目すること。イミダゾールは、そのプロトン部位が作動温度でHSO4−化学種の部位よりも接近しやすいので、プロトン移動橋として働くことが可能である。
【0090】
等しい又はより優れた性能は、強酸CF3SO3H及びFSO3Hを用いて得ることができ、硝酸で形成されるような中性プロトン移動塩を生成するが爆発の危険性はないであろう。また、試験されるのはモノ−プロトン性で、フッ素化せず、安価で毒性のない酸HBOBであり、これは本発明者らが最初に報告した塩LiBOBに関連する[W.Xu and C.A.Angell、Electrochem.Solid State Lett.、2001年、4(1)、E1〜E4]。BOB−はビス(オキサラート)オルソボラートアニオンである。これは非常に弱く配位したアニオンであり、その酸は超酸であるが、大きなアニオンであって、通常液体と溶液の粘度を高める望ましくない効果を有する。
【0091】
本発明の多くの例及び期待できる好ましい実施態様を説明したが、更に開発すべきことは、代替の塩基でドープした電解質を用いる電池の挙動であり、非常に多数存在する中で、特に芳香族三塩基分子1,3,5−トリアジンC3H3H3である。
【0092】
まとめ
中性プロトン移動塩、又は酸塩のいずれかを使用し、移動されないプロトンが弱酸のみである新規なタイプの燃料電池を説明した。多くの場合、電解質は周囲温度で液体である。電池は、従来技術のリン酸電池よりも優れた電流−電圧性能を有し、一次プロトン移動塩の酸と塩基成分間の中間の塩基性である塩基で電解質をドープすることによって更に高めることができる。電解質が酸ではなく中性塩であることは、リン酸燃料電池に伴う主な欠点として共通に見られる腐食問題が発生し得ないことを意味する。
【0093】
実験
この研究で重要な熱的転移は、他[41]にも説明されている三端子系を利用する簡単な自製の示差熱分析DTAユニットを用いて求めた。過去に、ガラス転移及び溶融点の測定に広く用いられたが、この研究で非常に重要な、沸点測定への有用性は以前には多くの注目を引かなかった。ガラスサンプル管を使用していることとサンプルの近くに高価な構成要素がないことのため、DTAは腐食性系の研究に特別の利点を有する。更に、非封止サンプル容器の使用は、標準的な示差走査熱量計DSC装置において研究できずにいる沸点の測定を可能にする。
【0094】
液体プロトン性酸、トリフルオロ酢酸(HTFA、99%)、及びジクロロ酢酸(HDCA99+%)、塩基プロピルアミン(PA、99+%)、α−ピコリン(αPic,すなわち2−メチルピリジン98%)、及びメチルイミダゾール(Mim)(99%)はAldrich Chemical Co.から得た。無水酢酸(Hac、99+%)はMallinkrodtから、無水ギ酸(HFm、98%)はFlukaから得た。無水トリフルオロメタンスルホン酸(又はトリフリック酸、HTf、純度は特定されていない)はMatrix Scientificから得た。全ての化学薬品は受入れたまま使用した。
【0095】
DTAによる液体と溶液の沸点の測定は非常に簡単である[42、43]。沸点はDTA中にその独自の明確な信号を有する。沸騰が起きるとき、大きな蒸発熱の値と共にわずかに過熱された液体中の急速な泡の成長が急激なエネルギーの吸収を招く。これは鋭いペンの変位を起す(図C2を参照)。過熱による誤差は少量の不活性アルミナ粉をサンプル容器に加えて泡の核形成を促進することによって最小化される。
【0096】
純粋な液体において泡の成長は非常に速い。1成分だけが揮発性である溶液中では、揮発性成分が泡表面に拡散する必要があるため、泡の成長ははるかに遅くなり得る。イオン性化学種が静電気的な拘束を加える溶液のより高い粘度に伴う拡散の必要性は、二成分系溶液において、より目立たないが、やはり明らかな信号をもたらす。特にほぼ化学量論的組成物では、信号が弱いほど、次の部分で示す二成分系溶液データの分散において見られるように、中間範囲の沸点決定の不確定さが増加する。
【0097】
プロトン移動エネルギーが最大である場合(この研究ではα−ピコリン+トリフリック酸)、より揮発性の成分(過剰の酸又は過剰の塩基)の活性が非常に低減されるので、沸騰が観察される前に分解点に到達する。実際に、分解が起きないと、この場合の化学量論的組成物についての沸点は450℃近くであろうと予測される。
【0098】
分解が起きるとき、熱効果の方向はこの研究の物質では吸熱性から発熱性へ変化する。沸点の再現性(精度)は単一成分の1Kよりも良い。正確さと精度は、α−ピコリン(128℃(文献値)に対して連続運転の127℃としての127)及び酢酸116℃(文献は118℃)の結果から判断できる。第2の場合の差の増加は薬品が98〜99%の純度しかないことに起因する。
【0099】
外部圧力を環境よりもはるかに低い既知の値に低下させ、それによって液体/気体共存線(及び蒸発熱)を得る装置を用いて、これらの測定を繰り返すことは全く簡単なことであろうが、今までに実施されなかった。
【0100】
ギ酸+プロピルアミン溶液中に観察される転移の順序を示すDTA線は図C2に与えられる。それは、その沸点がわずかに53℃である10モル%の強塩基を組み込むことによって、酸の沸点がいかにして通常の値(100℃)から124℃へ上昇するかを示す。ガラス転移は純粋な塩基について見積もった約−133℃から上昇して、−123℃のようである。次いで系は−98℃で結晶化して固体の塩であるギ酸プロピルアンモニウムを生成し、続いて−17℃で再溶解する。したがって124℃の沸騰まで長い液体範囲がある。
【0101】
導電率は0.1mのKCl溶液で較正して約0.1cm−1の電池定数を有する浸漬式電池を用いて測定した。電池のコンダクタンスは、他にも多く記述のある[例えば37、43]自動HP4192LF周波数アナライザを用いて、10Hz〜1MHzの周波数範囲で求めた。導電率は殆ど周波数に依存しない初期の平坦部分から求めた(logσ対logfプロット)。得られた値は、複素インピーダンスプロットの実数軸への短い外挿によって得たデータに対してチェックした。
【0102】
イオン性液体の動的粘度は、周囲〜130℃の温度範囲で適切な粘度計定数を有するCannon−Ubbelohde粘度計を用いて測定した。CaCl2乾燥管を用いて空気中の湿度からサンプルを保護した。均一な温度環境を、メニスカス観察のできるスロットを備える背の高いカートリッジ加熱アルミニウム温度平滑化ブロックによって提供した。サンプルの温度は測定前に30分間維持した。Cannon−Ubbelohde粘度計の測定精度は流動時間の再現性によって制御され、正確さは較正定数の正確さと温度測定によって制御される。精度は、最高温度(100℃超)においては、我々が各サンプルに単一の粘度計しか使用しない結果、短い流動時間(<10s)に制約された。流動時間は再現性があり、標準偏差は±0.2sであった。40℃未満の温度では、読み取り誤差は流出時間のわずかに0.1%であるので、運転時間はしばしば200s又はそれ以上である。データは、ここでポイズ(10p=1Pax)で報告されている通常の粘度に変換し、ワルデンプロットの単純さを保った(図C1、更に詳細は以下に示す)。
【0103】
結果
図C2などの走査から得た様々な転移点(Tg、Tc、Tl、Tb)の温度を、系α−ピコリン+トリフルオロ酢酸について図C3に示す。
【0104】
本発明者らは、ガラス温度と液体温度の両方とも単純なプロトン移動化合物であるトリフルオロ酢酸α−ピコリニウムの化学量論量で最大値に達することに注目する。一方、沸点は、過剰の酸で、ジ−アニオンH(TFA)s−の形成に相当する67%酸組成物に達するまで上昇を続ける。明らかに、この水素結合化学種はこの系の中で非常に高い安定性を有する。最高沸点(酸と塩基成分の組み合わせ蒸気圧は1気圧に等しい)はジ−アニオン組成物で起きるが、一致融点の溶融塩は1:1の単一プロトン移動化学量論を有することに注目すること。
【0105】
図C4は、塩基α−ピコリンを各々共通に保持しながら、酸の強度を増加させた若干の二成分系の沸点を示す。研究の最も強い酸であるトリフリック酸の場合、沸点は芳香族塩基の分解温度を超える。沸騰が分解前に起きる組成物(黒い記号)について得たデータの外挿は、1:1に近い組成物を示し、酸又は塩基化学種の蒸気圧は250℃でさえ非常に低い。1:1化学量論の白三角は後の図で得られた相関を用いて予測した値である。分解が起きる前に直接測定する。
【0106】
図C5は、より強い非芳香族塩基のn−プロピルアミンが共通成分として使用される場合の図4に類似のデータを含む。この場合、ギ酸さえも、加成値を超える値である100Kの沸点上昇を有するプロトン移動塩を生成する。
【0107】
図C4の系の導電率のデータを図C6に示し、粘度データを図C7に示す。残りの系についての導電率及び粘度データは入手可能であるが、図C1の更に経済的な形に組み込み、考察の部分で示す。データは表1に示したフォーゲル−ファルチャー−タマン(Vogel−Fulcher−Tammann)式の因子に圧縮した。これらはデータの範囲中でのみ有効である。最終的に、比導電率を等価導電率に変換するために必要な密度についてのデータは、表2の線形式にまとめてある。
【表1】
【表2】
【0108】
考察
1.プロトン移動塩
図C4及び図C5のデータは、酸−塩基工程の概念から予想されることを定量化する機会を提供する。本発明者らは、プロトンを酸から塩基へ移動する大きな駆動力があり、それによって塩を形成するとき、個々の成分の活性は理想的な溶液の値から大きく低減されるであろうと予測する。水溶液において、移動を起させる自由エネルギーは、それぞれ酸から水及び水から塩基へのプロトンの移動の仕事量についてのデータから得ることができる。これらは、pKa値及びpKb値に関して広くカタログに記載されている。二者択一的に酸又は塩基として作用する所与の物質では、これらはpKa+pKb=14によって関係づけられる。値14は溶媒水の特性によって定まり、その自己解離定数pKwの基底10対数である。Gurney[24]の書籍中で詳細が説明されているように、pKwはプロトンを1水分子から水それ自体によって提供される溶液媒体内の離れた分子へ移動させる仕事量(−RTlnKw)に関連する。所与の塩のアニオンとカチオンを形成する酸と塩基のpKaとpKbの和によって、希釈水溶液中でそのイオンから塩を形成する自由エネルギーΔG=−RTln(ΔpKa)の値を得ることが可能になる。
【0109】
水溶液中のこれらの相互作用について入手可能な大量の情報が、水又は他の溶媒の不存在下で相互作用する同じ酸と塩基の挙動に何らかの関係があるかどうかを判断するのは興味深いことである。水性系中でプロトンの移動を起す水の誘電率は非常に大きく、約80である。塩から元の分子状酸と塩基成分へ復帰させる移動の仕事量は、したがって、誘電体、特に水の誘電率を有する媒体が存在しない場合はるかに大きいはずである。したがって、研究された系における塩形成の駆動力は水中の測定値とは大きく異なるであろう。それらのプロトン移動環境の劇的な変化に何らかの相互関係が存在するかどうかは、実験によってのみ決定することができる。
【0110】
相関の可能性は、まず、研究している各塩基/酸対の加成値(additive value)(図C4及び図C5)を超える沸点の上昇を、水中の酸及び塩基成分のpKa値の差の関数として比較することで試験される[44]。pKb値のみが記載されているときは、本発明者らは塩基にはpKa=14−pKbの値を用いる。個々の成分のpKa値は図の凡例に与えられる。
【0111】
図C8は、過剰沸点(1:1組成物で求めた)と、各イオン性液体の成分ブレンステッド酸及び塩基の水溶液pKa値における差との相関を示す。ΔTb値は、測定した沸点と、純粋な酸と純粋な塩基の沸点間の直線関係の1:1における値との差として求められる。超酸HTf(白い三角)から形成されるイオン性液体について外挿した非常に大きな過剰沸点に注目すること。これらの値は、事前の分解のため実験的には測定できないであろう。
【0112】
図C8は、この仕事で研究した全ての酸/塩基の組み合わせについてのデータを用いる。データでは、1:1の酸:塩基での沸点があらゆる分解温度よりも低くなる。4点は測定の不確実性の範囲内で正確に同じ線上に乗るが、5番目(酸と塩基成分の沸点の差が最大である、したがって加成基線が最も信頼性がない場合)はその線に近くなることが判る。すべての中で最も強い酸を含んで、ΔpKaの値が最大である場合について既に注目したとおり、実際に図C8の相関プロットが予測するように、沸点は分解温度を超える。我々が測定不能な沸点を予測するためにプロットを用いるならば、化学量論比のいずれかの側で測定した、溶液の沸点の2個の腕による外挿と整合するように思われる。これらは、分解がない場合に沸騰は450℃より前には起きないことを示唆する。明らかに、トリフリック酸α−ピコリニウムの塩は疑いもなくイオン性液体であると見なすべきである。
【0113】
他の測定に転じて、本発明者らは、図C1の流動性に関してプロトン移動によって形成されたイオン性液体の導電率を試験する。理想的な線は、イオンが媒体の粘度によってのみ決定される移動度を有すること、及び当量容積に存在するイオン数は塩組成物によって示される(すなわち全てのイオンが均しく寄与する)ことに基づいて得られることが想起される[21、45]。理想的な線の位置は、イオンが互いに離れ、ストークス−アインシュタイン(Stokes−Einstein)関係及びネルンスト−アインシュタイン(Nernst−Einstein)関係に良く従う希釈溶液のデータから定められる。イオン性液体中のイオン間の摩擦は不可避であるため、或る程度の乖離は予測しなければならない。理論[46]によって予測される、ネルンスト−アインシュタイン式からの偏差は、実験点を希釈溶液限界未満に低下させるであろう。所与の塩のデータが理想線に近く見出されるほど、それは理想に近いと考えることができる。
【0114】
図C4の比導電率σのデータを等価導電率Λへ変換した後、Λ=Veσとη=vρを用いて図C5の動的粘度vデータ(センチストークで)を動粘度ηデータ(センチポイズで)に変換する。Veが当量容積でありρが密度である場合、2系列の塩のデータ(1:1化学量論量で形成される)は図C9にプロットされる。
【0115】
再び、共通の塩基を有する所与の系列において、水溶液のpKa値に最大の差のある塩、プロピルアンモニウムトリフルオロ酢酸及びα−ピシリニウムトリフラートは、理想的なΛ/η−1値でワルデン則に最も近く一致するものであることが判る。実際に、それらは、最近記載された[37、47]第四アンモニウム塩のテトラフルオロボラート塩の非プロトン性塩の集合のいずれかのデータよりも、理想線に顕著により近くなる。その非プロトン性特性に基づいて、この塩はプロトン移動塩よりも更に典型的なイオン性液体を生成することが予測されるであろう。
【0116】
図C10は、各イオン性液体のブレンステッド酸及び塩基成分のΔpKa値に対してプロットしたイオン性液体の「理想的な」ワルデン挙動からの偏差を示す。明らかに小さなpKa値の場合はイオン性液体に分類することはできない。ΔpKaが約10よりも大きい時、プロトン移動イオン性液体と非プロトン性イオン性液体の間にはその移動挙動による相違を観察することはできない。
【0117】
本発明者らは、図C10中でワルデンの理想的な関係をより定量的に試験する。そこでは、彼らは各液体の実験的なワルデンプロットと、図C18で用いたような、水溶液酸及び塩基のΔpKa値の差に対して固定のlogη−1値で測定したΔWの理想線との間の間隔をプロットする。ここでもまた、驚くべき良好な(逆の)相関が見出される。図C9及び図C10は共に、水性のΔpKa値が約10よりも大きいとき、プロトン移動塩とプロトン移動が不可能な塩のワルデンプロット位置の間の差が消滅したことを示す。
【0118】
上で、本発明者らは、かなり異なる2種類の温度、すなわち、最初の例では沸点(図C8)で、第2で中範囲の同粘度点(図C10)で、プロトン移動塩の塩に類似した特性を成功裡に相関付けた。過剰ガラス温度ΔTgに関して試験的に行うことのできる低温での評価が残っている。ΔTbと同じように、ΔTgは化学量論的な塩組成物で測定されたTgと、同じ組成物の加成値間の差で評価される。過剰のTgは図C11中にΔpKaの関数として示される。それは他よりもはるかに大きく分散し、早期の研究から知られるように、他の重要な因子がガラス温度の決定に関与することを意味する。
【0119】
プロトン移動に起因する類似のTg上昇57Kは、ヒドロジン(8.1)+ギ酸(3.75)[48]の場合についてΔpKaは4.35であることがかなり昔に報告された。この系(35℃で液体であるが、明確な結晶固体としては存在しない)の1:1溶液の導電率は、おそらくこの場合の非常に低いTg値(−115℃)[48]のため、イオン性液体[20、49]についてかつて測定されたことのない最高の高さである。
【0120】
2.イオン性液体形成の熱力学
図C8と図C9の比較から、ワルデン則基準は、蒸気圧基準よりもプロトン移動によって形成されたイオン性液体間の区別が少ないことを見ることができる。ワルデン則基準で等しくイオン性に見える2種の液体は、沸点上昇基準によって互いに区別することができる。この節は、この区別の熱力学的理由を短く考察し、それが非プロトン性塩をプロトン性塩から区別する基準も提供することを注する。
【0121】
イオン性液体は、プロトンが酸分子の量子化エネルギーレベル(ガーニー(Gurney)後は「被占」レベルと呼ばれる[24])から、図C12に示したように、塩基上のもともと占拠されていない、すなわち「空(vacant)」レベル(量子化もされた)に「落ち(falling)」て、プロトン化したカチオン性化学種を形成する結果であると考えることができる。
【0122】
図C12において、酸/共役塩基対上のプロトンの自由エネルギーレベルGはガーニーに従う[24]。レベル間の間隙は、化学量論的組成物でのプロトン移動の遊離エネルギーの尺度である。空隙が大きいほど、任意の所与の温度で元の分子対を再形成するボルツマン確率は低く、したがって、周囲圧力でイオン性液体よりも蒸気圧が低い。沸点で、2種の分子の分圧の和は1気圧に達する。
【0123】
逆のプロトン移動によって2種の新規な化学種をイオン性液体内に生成することができる事実は、蒸気を発生させる熱力学的(エントロピー的)駆動力を提供する。これは、総自由エネルギー変化のTΔS成分のため、最終的に温度の上昇に帰結するにちがいない。問題は、分解によって関連性がなくなる前に沸点(2種の分子の分圧の和が1気圧に達する)に到達するかどうかのみである。沸騰に係わる平衡は単純な「二状態」の種類であり、熱容量の増加が先行するはずである。二状態系の過剰の熱容量はΔCp=R(ΔH/RT)2X(1−X)で与えられ、式中、Xは温度Tで高いエネルギー部位に励起されたプロトンの部分であり、ΔHは遊離エネルギーギャップのエンタルピー成分である。Xはそれ自体、図12中2つのレベル間の遊離エネルギーギャップで表されるプロトン移動の自由エネルギーにおけるエンタルピーとエントロピー項の両方に依存する。熱容量の増加が容易に検出されるかどうかはΔS自体の値に依存し、主として、分子とイオンの振動周波数及びプロトン移動が起きるときの液体の擬似格子の差によって決定される。一般に、この熱容量の増加は、定量的な熱容量の測定なしで検出するにはあまりにも広い温度範囲にわたって起きるであろう。
【0124】
非プロトン性イオン性液体については、アニオンとカチオン化学種の間の対応する交換は、プロトンよりも−CH3及び−C2H5などのアルキル基の移動を含むであろう。これははるかにエネルギー的な工程であって、通常他の分解モードで予め空にされる。
【0125】
3.高温プロトン性酸
この研究の潜在的に重要な側面は、説明を行った高温安定な、プロトンに富む、イオン性液体の一般的な存在に係わる。第1に、弱い場のカチオンの存在下でプロトン運搬ジアニオンの安定化が以前に報告されたことが注目される。NMRの時間尺度で長い寿命を有する安定なアニオン性化学種としてのHCl2−の存在は、初期のイオン性液体の研究[50]のいくつかに分光学的に示された。より最近、無機化学で良く知られたジフルオリドアニオンが若干のイオン性液体研究の課題であった[51、52]。原理的にそれらのアニオンは高温燃料電池のプロトン移動媒体として働くことができよう。化学量論量のジアニオンの安定性は図C4に最も良く見ることができ、最高沸点は1:1組成物ではなく2:1酸:塩基組成物で見られる。AHA−アニオンの安定性は、アニオンと酸の追加の分子間の強い水素結合の存在に由来する。この結合は、アニオンがアルカリカチオンの存在下でも形成されるHF2−の場合に十分強い。F−よりも電気陰性でないアニオンでは、カチオンがアニオン配列を制御するにはあまりにも弱い電場を使うときにのみ結合が形成される。
【0126】
将来の研究において、本発明者らはこれらの化学種をそれらのプロトンNMRスペクトル及びそれらのO−H振動周波数によって特徴付ける予定である。今のところ、本発明者らはそれらを含む溶液の特性、及び化学量論的な塩組成物に関してそれらの呈する特性について言及する。
【0127】
図C13に、これらの系の2種の溶液の導電率が示される。図13は2種の酸−塩基対の二成分溶液について導電率等温線をプロットし、ガラス温度が最大になる化学量論的組成物で導電率が最小になることを示している(図C3を参照)。高い導電率は、イオン濃度の減少が支配的になるまで酸と塩基に富む組成物中で実現される。両方の系は同じ塩基のα―ピコリンを有するが、酸の強度は大きく異なる。一事例のトリフルオロ酢酸の場合、ΔpK3値は7.3ユニットであり1:1化学量論量での沸点は容易に測定されて175℃である。第2のトリフリック酸の場合、ΔpKa値は約20であり、沸点は観察することができない。しかし、トリフリック酸塩のイオン化傾向はそのより強いプロトン移動の結果高いが、同時により高いTgがイオンの移動度をより小さくするので、導電率はそれほど異ならなかった。前者は明らかにトリフリック酸塩がより高い導電率を有するので、最も重要である。また、それはより低い蒸気圧をも有するので、伝導性が重要な考慮点であれば、それは2種の中で好ましいイオン性液体である。しかし、流動性を重要であると考えれば、トリフルオロ酢酸ILはより望ましい媒体であろう。
【0128】
用語集
BMI 1−nブチル−3−メチルイミダゾリウム
DMAN 硝酸ジメチルアンモニウム
EA エチルアンモニウム
EAN 硝酸エチルアンモニウム
EAH2PO4 リン酸二水素エチルアンモニウム
EAHSO4 硫酸水素エチルアンモニウム
EMI 1−エチル−3−メチルイミダゾリウム
Fm ギ酸塩
HOEA ヒドロキシエチルアンモニウム
HOEAN 硝酸ヒドロキシエチルアンモニウム
HTFAc トリフルオロ酢酸
MA メチルアンモニウム
MAN 硝酸メチルアンモニウム
MOENM2E メトキシエチルジメチルエチルアンモニウム
MOMNM2E メトキシメチルジメチルエチルアンモニウム
MOPA メトキシプロピルアンモニウム
αPci α−ピコリン
TFAc トリフルオロ酢酸塩
TFSI ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
Tb 沸点
Tc 失透温度
Tdec 熱分解温度
Tg ガラス転移温度
Tl 液状温度
【0129】
[参考文献]
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】硝酸エチルアンモニウムを室温から沸点を超える温度に加熱するときの熱的事象を示すDTA線である。
【図2】硝酸エチルアンモニウム(EAN)、硝酸ジメチルアンモニウム(DMAN)及びその共晶混合物の伝導性を、現在報告されている最もイオン導電率の高い液体(物質は用語集に示す)と比較して、プロットしたものである。
【図3】硝酸エチルアンモニウムの等価導電率/流動性相関と、他のプロトン移動電解質及びワルデン分類プロットを用いる非プロトン性イオン性液体の1種(MOENM2EBF4)の等価導電率/流動性相関とを比較する図であり、その非プロトン性の事例は、理想的なワルデン挙動に非常に近く一致するという理由で選択されている(他の物質は用語集に示す)。
【図4】様々な本プトロン移動塩の導電率の比較であり、ギ酸エチルアンモニウムEAFmの周囲温度での値が、記録にある最も高い導電率の非プロトン性イオン性液体であるEMIBF4のそれと同じであることを示している。
【図5】酸/塩基系、α−ピコリン+トリフルオロ酢酸において、組成物の変更に対して沸点その他の熱遷移温度をプロットしたものである。
【図6】本発明の2種の液体の導電率、既知の全てのリチウム塩溶液の中で最も導電率の高い、塩化リチウム溶液の最も伝導性の高い溶液、標準的なリン酸燃料電池電解質、最後に既知のイオン性導体の中で最も導電率の高い4M水性H2SO4の導電率の比較である。
【図7】広範囲の温度にわたって試験する燃料電池電解質用U電池の概略図である。
【図8】図8(a)は、電解質がEAN、DMAN、又はMANであるときの性能と比較した、電池中の電解質が標準的なリン酸(水4重量%を含む)であるときに記録された開回路電位である。図8(b)は、(a)部の開回路電位を与える電池中に流れる短絡電流である。
【図9】図9(a)は、同じ水素流量を用いて、電解質がリン酸二水素エチルアンモニウム又は硫酸水素エチルアンモニウムであるときの性能と比較された、電池中の電解質が標準的なリン酸(水4重量%)であるときに記録された開回路電位の、対温度プロットである。 図9(b)は、(a)部の開回路電位を与える電池に流れる短絡電流の対温度プロットである。
【図10】不揮発性(弱)塩基であるイミダゾール4重量%をEAN電解質に加えたときに電池Aを流れる短絡電流の増加を示す電流対温度プロットであり、比較は電解質としてEANと96%のH3PO4を含む電池で行った。
【図11(a)】不揮発性(弱)塩基であるイミダゾール4重量%を硫酸水素エチルアンモニウム電解質に加えたときに電池Bを流れる短絡電流の増加を示す電流対温度プロットであり、比較は電解質としてドープしていない電解質と96%のH3PO4を含む電池の性能について行った。
【図11(b)】電解質が硫酸水素エチルアンモニウムEAHSO4及び弱塩基イミダゾール4重量%でドープしたEAHSO4であるときの性能と比較された、電池中の電解質が標準的な96%リン酸H3PO4であったときに記録された開回路電位対温度である。
【図A1】弱く分極することの可能なアニオンの非プロトン性塩についてのプロットに対するプロトン性ILのガラス転移温度のグラフである。
【図A2】図A2(a)は、様々なプロトン性及び非プロトン性イオン性液体の流動性を他の記載された溶液と比較したアレニウスプロットである。 図A2(b)は、LiCl水溶液と比較した、プロトン性及び非プロトン性液体の伝導性の一組のアレニウスプロットである。
【図A3】図A3(a)は、様々なプロトン性及び非プロトン性液体の流動性に対する等価導電率の関係をプロットしたものである。 図A3(b)は、流動性がガラス状の値である10−11ポイズ(無機網目ガラスでは10−13p)に達する温度に対して等価導電率の温度依存性を示す、Tgで目盛ったアレニウスプロットである。
【図A4】ジアニオン性プロトン性IL、通常のプロトン性IL、及び更に示された混合物の比導電率をプロットしたものである。
【図B2】置換された硝酸アンモニウムの液体及び結晶状態における伝導性を示す図である。
【図B3】固体状態と溶融相転移の相対的強度を示す、DMAN及びMANについての一組のDTAアップスキャンである。
【図B4】6モルH2O/Li+の濃度のLiCl水溶液と比較した、NH4HF2(Tmelt=125℃)のイオン性(プロトン性)導電率の温度依存性をプロットしたものである。
【図B5】100℃、裸の白金ワイヤ電極を用いた[EtNH3][NO3](EAN)と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B6】裸の白金ワイヤ電極を用いた[Me2NH2][HF2](DMAHF2)と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B7】図B7(a)は、PTFE燃料電池の展開断面図である。図B7(b)は、図7(a)の電池の正面立面図である。
【図B8】100℃で、リン酸用に設計したガス拡散電極での[Me2NH2][HF2](DMAHF2)と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B9】100℃で、リン酸用に設計したガス拡散電極での[EtNH3][NO3](EAN)及び[Me2NH2][HF2]と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B10】25℃で、リン酸用に設計したガス拡散電極での[Me2NH2][NO3](DMAN)のI−V曲線のプロットである。
【図C1】古典的ワルデン則及びそこからの偏差に基づくイオン性液体の分類図である。
【図C2】ガラス温度(Tg)、失透温度(Tc)及び液状温度(Tl)(左走査)及び沸騰温度(Tb)(右走査)を特徴付けるための一組の示差熱分析走査図である。
【図C3】α−ピコリン+トリフルオロ酢酸系について、ガラス温度(白四角)、失透温度(黒菱形)、液状温度又は凝固点(白三角)及び1気圧での沸点(黒丸)をプロットしたものである。
【図C4】同じ塩基α−ピコリンと、水溶液中で求めたpKa値で示される異なる強度のプロトン性酸(凡例参照)との二成分系における沸点(C3の説明を参照のこと)をプロットしたものである。
【図C5】強塩基(n−プロピルアミン)とさまざまな酸の系における沸点の最大値のプロットである。
【図C6】さまざまなプロトン移動イオン性液体の比導電率のアレニウスプロットであり、伝導性の挙動は次の図で見られる粘度の挙動と全く対照的であることを示す。
【図C7】図C5のイオン性液体の粘度のアレニウスプロットであり、最も強い酸から形成されたILが最も粘度が高いことを示す。
【図C8】超沸騰点(1:1組成物で求めた)と、ブレンステッド酸成分とそれぞれのイオン性液体の塩基の水溶液pKa値の差との相関をプロットしたものである。
【図C9】凡例に示すように、この研究で得た様々なイオン性液体の一組のワルデンプロットであり、次の図を構成するのに用いられる「理想的な」ワルデン挙動からの偏差を定義するために、log(1/η)=1での縦線が用いられる。
【図C10】ブレンステッド酸成分とそれぞれのイオン性液体の塩基について、ΔpKa値に対してプロットしたイオン性液体の「理想的な」ワルデン挙動からの偏差をグラフに示したものである。
【図C11】酸と塩基を組み合わせたpKa値とガラス転移温度Tgは相関性が悪いことを示すグラフである。
【図C12】ガーニー(Gurney)に従う酸共役塩基対上のプロトンについての自由エネルギーレベルGを示す図表である。
【図C13】ガラス温度が最大になる(図C3参照)化学量論的組成物で導電率の最小値を示し、イオン濃度の減少が支配的になるまで、酸及び塩基に富む組成物中で実現された高い導電率を示す、2対の酸−塩基対の二成分溶液についての導電率等温線の一組のプロットである。
【技術分野】
【0001】
政府助成金の陳述
本発明のために財政的な支援が米国政府、エネルギー省(U.S.Government,Department of Energy)第W7405−ENG−36号、及び米国科学財団固体化学認可番号(National Science Solid Foundation State chemistry Grant No.)DMR−9108028002によって提供された。したがって、米国政府は本発明に相応の権利を有する。
関連出願
本出願は、Angell、Xu、及びBelieresの「燃料電池及び他の高温用途のための高温安定性を備えるイオン性液体及びイオン性液体酸(Ionic Liquids and Ionic Liquid Acids with High Temperature Stability,for Fuel Cell and Other High Temperature Applications)」の名称で2003年5月1日出願の米国特許仮出願第60/467,796号、及び同一の名称及び発明者により2003年9月8日に出願された第60/501,626号に基づく優先権を主張するものである。両方の仮出願は参照により本明細書の記載の一部とする。
【背景技術】
【0002】
背景
現在、燃料電池研究がますます盛んになっており、世界中の研究所が、他の携帯式電気化学発電系に対して、燃料電池によって提供されるエネルギー容量における優位性の利用を探求している。この活動の多くは高温燃料電池に向けられており、それらの燃料電池の活性成分には、高温安定性のあるプロトン透過可能なメンブレンが入手可能でなければならない。多くのグループが、不揮発性塩基、例えばプロトンキャリアになるイミダゾールを含む系で使用するための高温安定性ポリマーを調査している。イミダゾールをポリマー鎖に付けることによって不動性を付与することができ(局部的に可動性であるが)、したがって、プロトンだけが透過することができる(不動性はメンブレンの機能に重要ではないが)。
【0003】
高温燃料電池に対する他のアプローチは、プロトンが電池を通るための通路を提供する単一成分又は殆ど単一成分の電解質の使用を含む。多く研究された事例はリン酸燃料電池であり、電解質は殆ど純粋なリン酸であって、カソード反応は直接水を生成する(一方、ベーコン(Bacon)電池のカソード反応はOH−種を生成する)。リン酸燃料電池は大気圧で0.9Vの開路電圧を送達し、170℃の動作条件下で約0.7Vに降下する。プロトン移動機構は、特性的に主として輸送(vehicular)であり、プロトンがグロッタス(Grotthus)型機構によるのではなくプロトン化された化学種の一体的な部分として移動することを意味する。
【0004】
イオン性溶液中における電気伝導度の研究は、物理化学の最も早期の段階に遡る。それは圧倒的に水溶液の研究であった。イオン解離の概念並びにイオンの実在を確認する戦いは、水溶液について行われた観察に基づくものであった(1)。報告された最初のイオン性液体IL(又は周囲温度で溶融した塩、ambient temperature molten salt、ATMS)は1914年の硝酸エチルアンモニウムであった[16]。
【0005】
より最近の非水性電解質系への関心の高まり(2、3)は、部分的に、再充電可能なリチウム電池の探求によるものである。これに関して、非水性電解質に特徴的なはるかに低い導電率は重大な障害であった(3)。
【0006】
低い蒸気圧の液体をプロトン移動機構によって得る可能性が、ある時期軍事計画に利用された[29、30]。これらの応用において、小量の、制御された量の水を含む硝酸ヒドロキシルアンモニウム(HAN)などの可動液体中で、酸化性アニオンを還元性カチオンと結合させることは、砲火推薬用に適切な制御された酸化還元エネルギーの放出を可能にする。部分的に水和した実際の処方についての軍の報告データ[30]から判断すれば、これらの系に形成されたイオン性液体は低い粘度を有するようである(或る刊行物[31]に記載されたが、無水イオン性液体についての粘度又は導電率の値の報告は見当たらなかった)。
【0007】
更に最近では、イオン性液体媒体は様々な合成化学工程で応用が見出されつつある[32〜35]、そのような不揮発性液体(vaporless liquid)の大部分は本明細書に記載する種類のものではなかった。一方、強酸から塩基へのプロトン移動は、イオン性液体の形成の一般的な調製技術として最近利用されている。報告された例は、共通して非常に弱い塩基性アニオンであるビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、TFSIを有していた[10、36]。イオン性液体のプロトン型と非プロトン型の間の関係、及び特にそれらの相対的蒸気圧間の関係に対しては、系統的な注目が待たれている。
【0008】
プロトン移動工程における自由エネルギー変化が大きいとき、プロトンはブレンステッド塩基に強く局在化するので、酸分子を再生成するボルツマン確率は周囲温度では無視できるようになる。或る場合には、300Kほどの高温でも無視できる。したがって、その塩は、ほとんどの基準に照らして、「非プロトン性」イオン性液体と呼ばれるもの(例えば、同一部位へのプロトンの移動によって形成されたものではなく、−CH3+の移動によって形成されたもの)としての塩である。実際に、それらの液体は、プロトン移動部位がなく、それゆえ正の電荷がイオンの内部に位置するある種の個々の塩よりも理想的にイオン性であることが理解されるであろう。
【0009】
イオン性液体のイオン化傾向を評価する一方法は、図C1[14、37]に示した古典的なワルデン則[21]に基づく分類図を使用することである。ワルデン則は、イオンの移動度(等価導電率Λ(Λ=FΣμizi)の式で表される)を、イオンがそこを通って動く媒体の流動性に関係付ける。液体を独立イオンの集団として表すことが充分に可能であるならば、ワルデンプロットはほぼ理想線に一致するであろう。理想的には、このことは、イオン−イオン相互作用がなければ傾斜は1にならなければならない、ということを意味する。その理想線の位置は高希釈のKCl水溶液を用いて確立される。
【0010】
他でも議論されているように[14、37、38]、イオンが反対に荷電したイオンに対して均一に分布している液体系は、対応する結晶のエネルギーに匹敵するマデルング(Madelung)エネルギーを発生する。このことは、マデルングエネルギーが融解で失われる場合にそうであるように、古典的イオン系の融解熱及びエントロピーについて何ら異常がないことによって証明される。したがって、「良好な」イオン性液体の蒸気圧は、イオン対が蒸気の状態へ進入し得る前にマデルングエネルギー並びにイオン対間の双極−双極相互作用を克服しなければならないので、必然的に非常に低い。
【0011】
プロトン移動によって形成された弱い塩は、電荷が均一に分布した液体を形成せず、したがって、それらのワルデンプロットは理想線未満に落ち込み、それらの蒸気圧は非常に低くはならないであろう。その場合、総蒸気圧が外部圧力に達した時に起きるはずの沸騰は分解温度未満に下がり、蒸気はイオン対よりも分子種を含み易くなろう。この研究において、本発明者らは、これらの概念の試験を助けるであろう、二成分の、溶媒なしの、ブレンステッド酸−塩基系の多数の実験データを提供する。
【0012】
図C1形式でのデータの提示は、アニオンとカチオンの結合に様々な形が存在することを検知させるだけでなく、荷電化学種の1種その他に異常に高い移動性が存在することを示すのにも役立つ。プロトンの側の過剰な移動性は古典的な主題であり、その理解を可能にする機構は、ベルナールとファウラーによって提起されたように、グロッタスの独創的な仕事に遡る[23]。さほど一般的に議論されないが、現象的に見分けが付かないのは、プロトンよりもはるかに大きな化学種が、粘性流動工程を特徴付けるエネルギー障壁よりも低いエネルギー障壁を呈するチャンネルを介して構造を滑り抜けることができるときに見出される過剰の導電率である。これらについて、その動きは、「部分的(fractional)ワルデン則」、Λφα=一定(α<1)で記述される。
【0013】
図C1の対数−対数プロットにおいて、この種の「デカップリング」を特徴とする系についてのデータ[22]は、傾斜αの直線として現れる。水性プロトン性溶媒中の強い無機酸の溶液の場合、このデカップリングは、液体ハロゲン化物中の銀イオンの場合よりも高い流動性で開始されるように見える[39、40]。グリセロール中の無機酸などのあまり知られない事例において、分離はより低い流動性で起きる。このデカップリング現象には更に追加の実験情報が必要である。無溶媒系中のデカップリングしたプロトンの動きに必要な条件の認定が非常に望まれる。
【0014】
Sem−1で測定される電流を運ぶ溶液の能力は、イオン濃度の増加と共に純粋な溶媒の低く、しばしば測定不能な値から増加する。しかし、溶媒の誘電率によって緩和された反対の電荷のイオン間の静電気相互作用が、個々のイオンの移動度に釣り合った減少をもたらすので、それは常に1Mオーダーの濃度でピークに達する(水性では〜5M)(2)。この理由のため、温度を高い値に上昇させないかぎり、純粋な塩が優れた導体になり得ることは一般に期待できない。本発明者らは、この期待が有効ではないことを示し、無溶媒イオン性液体の導電率を水性溶液のレベルまで上昇させることのできる条件を認定する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
概要
本発明によれば、高温安定性を備えるイオン性液体及びそれを用いて形成される燃料電池が提供される。また、本発明は、非水性系ではかつてない大きさの導電率を有するこの種のイオン伝導性液体の形成方法を提供する。本発明の他の側面は、無機酸を低揮発性のジアニオン塩として貯蔵する能力である。ジアニオン配置の安定性は、非腐食性のプロトン移動イオン性液体の高温燃料電池電解質としての高性能において役割を果たすことができる。電池性能データから、本発明の電解質を用いる単純なH2(g)/電解質/O2(g)燃料電池の開回路電圧出力及び短絡電流性能が、周囲温度並びに約200℃以下及び200℃超温度の両方において、同等なリン酸電解質燃料電池の開回路電圧出力及び短絡電流性能よりも優れていることがわかる。中性プロトン移動塩及びHSO4−とH2PO4−アニオンを有する酸塩の両方とも良好な結果を与え、二硫酸塩の場合は低温及び超高温で特に良好である。これらの電解質の全ての性能は、バルクの電解質を作る酸と塩基の中間のpK3値を有する不揮発性塩基を少量添加することによって顕著に改善される。本発明の好ましい例示的実施態様は、イミダゾールをドープした硫酸水素エチルアンモニウムであり、工業標準リン酸電解質よりも全ての点で優れた挙動をもたらす。
【0016】
本発明の一側面によれば、プロトンの高温移動への別種のアプローチが提供される。プロトンがアニオンとカチオンの両方によって担われる、別種の輸送機構である。アニオン又はカチオンのいずれもデポジットすることができないので、メンブレンは一層有効にプロトン透過可能なメンブレンになる。最も好ましい場合には、電解質は化学量論的な物質であるので、分極の影響を受けにくい。単一成分電解質の変種はいくらか分極の影響を受けることがあるので、電解質中における高い拡散速度によって最小化しなければならない。いずれにしても、分極の問題は必ずしも重要ではない。分極の問題は全ての現在のリチウムイオン電池にあるが、重大問題ではないように見える。我々の電解質を用いるカソード反応は、
2e−+2HA2−+1/2O2(g)=H2O(g)+4A−
であると考えられ、式中、Aはアニオンであり、ジアニオンは水素結合している。しかし、ジアニオンは以下に示すように電解質中に自然発生するので、ジアニオンはカソード工程を進めるために高濃度で公式に存在する必要はない。電力発生の工程中には、電池を通るジアニオンの流れがなければならない。
【0017】
この電池が動作することが見込まれる高温のゆえに、水が準安定な液体状態で生成し、これは、流入する酸素を飽和し電池外部へのガスの拡散勾配を創出することによって、直ちにカソードで蒸留除去しなければならない。
【0018】
本発明のプロトン運搬液体は、多くの実施態様において200℃まで、他の実施態様においては250℃超において沸騰に対して安定である。プロトンは適用に十分であることが実証された速度で化学的移動に利用可能である。必要であれば、これらは別の触媒的アプローチによって高めることができる。電解質及びその酸変種の特定の好ましい実施態様を以下に説明する。これらの高温安定液体の代替例を電池電解質として利用する単純な水素−酸素燃料電池の実施態様の性能も説明する。
【0019】
特定の実施態様では、本発明者らは負荷をかけて検討した場合の燃料電池に関するデータを報告する。この試験は、同様に説明する開回路電圧(負荷なし)や短絡電流(バイアス電圧なし)の測定で行われるよりも厳格な性能評価を提供する。後者の結果は、新規な系の可能性を強く示唆するものであるが、電池の詳細な性能に関して誤り易いものでもある。
【0020】
負荷下の電池の試験は、測定中に電池電圧に対抗するバイアス電圧を印加することのできる手段による、更に複雑な機器の入手可能性に依存する。このようにすると、異なる負荷の下で動作する間に、すなわち単純な開回路条件ではなく電流が流れる間に、燃料電池の出力を測定することができる。これらのデータは電池電圧対電池電流のプロットの形で表される。これらの測定に利用される機器はKeithley 23 Source Measure Unitであった。
【0021】
これらの測定は2種類の電池を用いて行った。その1種は我々の初期の実験に利用された単純な設計のガラス電池であり、図7に示す。この電池は、比較性能データを得るのに非常に有用であることが実証されており、そのデータによれば、十分に研究されたリン酸燃料電池における負荷の下で発生した電流を、物理的に非常に似た条件の下で新規な電解質を用いて発生した電流と比較することができる。唯一の変更点は白金ワイヤ電極とガスの接触効率であり、さまざまな粘度の液体を通って気泡となるガスとはわずかに異なる。
【0022】
本発明の好ましい例示的電解質を実施する実験電池において、露出した白金が比較的小さな面積であるため、これらの電池を流れる電流は実際の電池に流れなければならない電流に比べて小さい。本発明を実施するひとつの提案された電池においては、電極面積は、リン酸燃料電池用に最適化された特殊設計の電極に白金の微細分散体を用いて、極めて大きくされる。また、本発明者らは、新規発明的な電解質を備えるそれらの電極を利用する「サンドイッチ」型の電池も作製した。その結果を本明細書に示す。これらの電極は長い期間かけて開発され、リン酸電解質と共に用いるよう最適化されてきたので、本発明の特定の電解質を利用する電池の可能性の評価において、結果が同じ匹敵し得る値であることを期待することはできない。最高の性能のためには、新規電解質は、新規な電解質の特定の濡れ特性と浸透特性用に最適化した電極と協調して適用される必要があろう。しかし、これらの比較から、可能な高い電流性能の或る程度の示唆が得られる。実際に、特に最適化をしていないにもかかわらず、殆どリン酸電池のレベルの性能が得られている。
【0023】
本発明の側面は注目すべきものがある。例えば、本発明の燃料電池は、特性的に酸でも塩基でもなく中性のイオン性液体である電解質を用いて極めて良好に作動する。本発明者らは、この原理が通常のリン酸燃料電池より一定の側面において優れた燃料電池性能をもたらす、例示的な好ましい実施態様を開示する。更に、本発明者らは、電池に流れる電流を顕著に増加させる中性燃料電池電解質への特殊な添加物について述べる。
【0024】
水溶液は、水の独特な誘電特性と流動特性のため、優れた電解質導体であると一般に考えられている。本発明者らは、それらの伝導性が溶媒を含まない液体電解質に匹敵し得ることを示す。これらは周囲温度で液体であるプロトン移動塩である。ある場合には可動性プロトン粒子数が無視できない影響を与えることがあるが、高い導電率は、ある種のグロッタス機構によるものではなく、高い流動性とイオン性によるものである。最も高い導電率はカチオンとアニオンが両方ともプロトンを含むときに得られた。25℃で、>150mScm−の値は可能に見え、100℃で470Scm−が測定された。低い蒸気圧での高いイオン性とプロトン交換動力学の組み合わせにより、説明される系は優れた燃料電池電解質にもなる。
【0025】
本発明の上記及び更なる特徴、利点及び目的は、添付の図面を考慮しつつ、本発明の好ましい例示的かつ非制限的な実施態様の以下の詳細な説明から、よりよく理解されるであろう。
【0026】
詳細な説明
電解質
1.プロトン移動酸塩基系
概念を実証する目的に用いられる塩基性電解質において、カチオンはプロトン移動工程によって形成される。移動は酸HAから何らかの塩基Bへ行われる。例えば、イオン性液体(IL)の硝酸エチルアンモニウム(EAN)を形成するには、1914年にワルデンが最初にイオン性液体を作ったとき行ったように、エチルアミンをHNO3と結合させることができる。本発明者らは、このプロトン移動化合物、及び単独又は他の類似の化合物との組み合わせで十分低い溶融点である他のプロトン移動化合物は室温で液体であると特徴付けてきた。これは通常それらが容易に過冷されてガラス状態になることを保証するのに十分である。硝酸エチルアンモニウムは14℃で溶融する。一方、エチルアミンとHNO3の組み合わせによる蒸気圧が外部圧力(通常の沸騰では1気圧)で到達することによって設定される沸点は240℃であり、成分のいずれよりもはるかに高い。もちろん、これは酸から塩基へのプロトン移動の大きな負の自由エネルギーによって起きる大きな蒸気圧低下によるものである。DTA線は図1に示される。線は、HNO3に富む溶液で得られるデータの外挿及び以下に与えられるpKaと沸点上昇の相関の両方によって予測される温度(240℃)で沸騰が開始することを示す。しかし、吸熱沸騰工程は化学分解(246℃)の発熱工程を伴い、これは急速に支配的になる。実際には、おそらく2つが同時に始まる。
【0027】
イオンC2H5NH3+とNO3−の移動度は、イオン性液体の低い粘度(25℃で0.28ポイズ又は0.028Pas)のため非常に高く、溶融物の伝導性(25℃で20.8mScm−1)は殆どの他のイオン性液体よりも高い。このIL及び若干の他の直接関連するもののデータを図2に示す。多くの他のもののデータを以下に示す。
【0028】
電荷の移動は、流動性に対する等価導電率の比が典型的にイオン性液体及び溶液のものであるので、プロトン性ではなく主としてイオン性である。これは図3のワルデンプロットに示され、以下で更に詳細に論じる。水性無機酸中におけるように移動がプロトンの独立のジャンプによって支援されるとき、ワルデンプロットは理想線を超え、典型的にはより小さな傾斜を有する。1M水性HClの若干のデータが例として図3に含まれる。
【0029】
硝酸エチルアンモニウムの導電率は高いが、硝酸ジメチルアンモニウムからのその異性体形DMANの導電率は更に高い。DMANの融点は室温よりも高い72℃であるが、その硝酸エチルアンモニウムとのモル比3:7の共晶混合物はより低く(Te=−20℃)、この溶液は結晶化が遅い。代りに、それは−93℃のガラス温度まで過冷される。この共晶混合物の導電率(25℃で27.8mScm−1)及びその溶融温度を超えるDMANの導電率は図2に含まれる。
【0030】
多数の代替のプロトン移動塩が入手可能であり、それらの多くは室温で安定な液体を生成する。ここで興味深いものは最も高い導電率を有するものである。若干の追加の例を図4に示す。それらの液体の導電率として予測される値を支配する若干の経験則は別の刊行物で論じられている。燃料電池目的として興味深いことには、周囲温度での電解質の導電率は少なくとも10mScm−1、好ましくは30mScm−1以上でなければならない。(96重量%リン酸の導電率は周囲温度で46.6mScm−1、及び200℃で0.51mScm−1である。)この条件はEANによって満たされるので、本発明者らの水素/酸素燃料電池性能の初期の研究は水含有量の少ない純粋な硝酸エチルアンモニウムを用いて行われた。追研究がDMAN及び硝酸メチルアンモニウムMANで実施された。水素/酸素燃料電池としては例外的な値(96重量%H3PO4の標準的な高温燃料電池で達成できる値を超える値)に導電率を高める方法を以下に説明する。
【0031】
或いは、プロトン移動塩BH+A−は非プロトン性イオン性液体B’Aで置き換えることができ、B’は、例えば、アミンの窒素をプロトンの代わりに−CH3でキャップすることによって形成されるカチオンとすることができ、最も一般的な種類の「イオン性液体」(IL)又は「周囲温度溶融塩」(ATMS)を与えることができる。しかし、この場合、プロトン性成分はいくらか過剰の酸を加えることによって形成しなければならない。非プロトン性カチオンは、我々が優先的に開発した例におけるよりも移動度は低く、粘度はより高く、導電率はより小さい。
【0032】
2.液体電解質
一連の溶媒を含まない高導電率のイオン性液体電解質を図A4に示しており、これは参照により本明細書の記載の一部とする報告[54]から引用している。この研究は、[12]の発見に続く進歩であった論文[13]によって刺激を受けたものであった。
【0033】
図1を含む報告[54]以来、本発明者らは[NH4][HF2]に類する若干のイオン性液体を合成し、化合物フッ化水素エチルアンモニウム[EtNH3][HF2]が周囲温度で液体であることを見出した。その導電率は非常に高いことがわかる(25℃で8.6mS/cm)が、予期したほどではない。この液体は以下に報告する燃料電池研究において電解質として使用された。合成は、アミン水溶液に水性HFを当量点まで滴下することによって水性媒体中で行い、続いて120℃で蒸発と乾燥を行った。
【0034】
本発明者らはプロトン性ILの流動性及び付随する導電率が非プロトン性ILよりもはるかに高いことを見出したが、理由は完全に明らかではない。残存H−結合は逆の効果を示唆するであろう。イオン性液体及び溶融塩の低い蒸気圧の原因は、マデルング(Madelung)エネルギーの減少(正の電荷中心の周りに均一な負の電荷が分布することによる自由エネルギーの低下)にあるのかもしれない。説明が何であれ、より高い流動性は、系のより塩基性の強い部位のプロトン化が問題にならない任意の応用において、プロトン性ILに重要な利点を与える。
【0035】
プロトン性ILの流動性が例外的になり得る可能性は、ILのガラス転移温度Tgの研究の過程で明らかになった(12)。Tgは液体状態が始まるところである。Tgはそれを超えると流動性が測定可能になる温度であり、もちろん、室温での流動性と関連が深い。類似の脆性のある液体(すなわち、Tgを超える温度における流動性が温度変化と同じ割合で変化する液体(15))では、より低いTgのILは周囲温度のILで更に流動性があるはずである。直接に又はそれらの混合物についてのデータの短い外挿によって得られる、単純なモノ−及びジ−置換アンモニウム塩のTg値は、異常に低いことが判る。硝酸エチルアンモニウム([EtNH3][NO3],I)(16)及び関連の深い2種のプロトン性ILである硝酸ジメチルアンモニウム([Me2NH2][NO3],II)とギ酸エチルアンモニウム([EtNH3][HCO2],III)の値を図A1に示す。そこでそれらは、弱く分極可能なアニオンの塩について、Tgをモル容積(したがってイオン間相互分離)に関連付ける最近のプロットと比較されている(12)。プロトン性ILについて見出された、驚くほど低いTg値は、データを入手可能な最も類似の非プロトン性IL、すなわち第四アンモニウム塩[N1−0−1,211][BF4]のそれよりも完全に1桁大きい(12)周囲流動性と解釈される。
【0036】
図A1は、参照12からの弱く分極可能なアニオンの非プロトン性塩についてのプロットに関連付けて、プロトン性ILのガラス転移温度を示すものである。プロトン性ILは、(I)硝酸エチルアンモニウム[EtNH3][NO3]、(II)硝酸ジメチルアンモニウム[Me2NH2][NO3]、(III)ギ酸エチルアンモニウム[EtNH3][HCO2]である。例(IV)は、正の電荷とエーテル溶媒を同一単位内に結合したメトキシプロピルアンモニウムカチオンのギ酸塩[MeOPrNH3][HCO3]である。非プロトン性アンモニウムカチオン[N1−0−1,211]+の最も単純な入手可能なガラス形成硝酸塩に対する値を含めてある。(注)1はメチルであり、2はエチルであり、4はn―ブチルであり、−O−はエーテル酸素であり、P14+はN−メチル−N−n―ブチルピロリジニウムである。点の間の線は視線の案内である。[EtNH3][NO3]及び[Me2NH2][NO3]についてのデータ点は、それらのガラス形成二成分溶液値の短い(15モル%)外挿により得られる。図1AのTg最小値でのモル容積を有する、弱く分極可能な非プロトン性イオン性液体の電荷密度は約4Mであることに注目すること。
【0037】
プロトン性ILの合成は非常に簡単である。市販のアミンを水に溶解し、酸で0℃で滴下し、続いて70℃で回転蒸発及び真空乾燥する。
【0038】
図A2(a)は、LiCl・6H2O(Tg=−134℃)及び1MのLiCl溶液と比較した、様々なプロトン性及び非プロトン性イオン性液体の流動性のアレニウスプロットである。
【0039】
これらの物質及び周囲温度で安定な若干の混合物の流動性データを図A2(a)のアレニウスプロットに示す。その長い歴史(16)から考えれば驚くべきことに、[EtNH3][NO3]の粘度値の報告はほとんどなく(25℃と50℃での値だけが入手可能である(17))、関連するメチルアンモニウムとジメチルアンモニウム塩についてのデータはない。比較のために、ガラス状態LiCl・6H2O(7.7M、Tg=−63℃)(18)へも冷却することのできる、盛んに研究された水溶液の流動性も示す。1MLiCl溶液についてのデータも含めている。プロトン性ILは関連する非プロトン性塩より1〜2桁流動性が大きいが、それらの流動性は濃縮された水溶液よりもはるかに低い。
【0040】
ギ酸塩アニオンは最も流動性のあるPiLを提供することに注目すること。また、ギ酸塩アニオンは最も流動性のあるILも提供する。((注):Vは硝酸メチルアンモニウム[MeNH3][NO3]であり、[BMIM]は1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムである。V−IIは[MeNH3][NO3]と[Me2NH2][NO3]の混合物である。)
【0041】
図A2(a)の流動性データに対応する導電率は図A2(b)のアレニウスプロットに示される。示した1MLiCl溶液に比べて、それらはあらゆる非水性リチウム塩溶液について報告された最も高い導電率よりも顕著に高いが、やはりいくらか低くなる。図A2(b)には、SonyのLiイオン電池の電解質(炭酸エチレンと炭酸ジメチル混合物中のLiPF6)及び最も高い伝導性非水性Li塩溶液(アセトニトリル中のLiBOB)についてのデータが比較のために含まれる。任意の大気圧非水性リチウム塩溶液についての最も高い周囲温度の導電率はアセトニトリル中のLiBOBの導電率である(10)。(BOBはビス−オキサラート−オルソボラートである。)図A2(b)に見えるように、導電率は本液体が十分凌駕する。
【0042】
[EtNH3][HNO2]の流動性は硝酸塩よりも高いが、伝導性はそうではない。明らかに、プロトン移動は完全ではない。[EtNH3][NO3]は硝酸塩として「良好な」ILとは考えられず、分類及び/又はプロトン移動関連特性の問題を提起する。十分奇妙なことには、ヒドラジニウムカチオンのギ酸塩は、より高いTgを有するにもかかわらず[EtNH3][HNO3]よりも良好な導体として知られる(20)(より低い流動性を示唆する)。
【0043】
他にも(12、13)、電荷Λ(Λ=σVe、式中Veは体積当量である)のモルあたり導電率を伝導性媒体の流動性に結びつける古典的なワルデン則(21)が分類図表の基礎として用いられてきた。その表現は、同じ図表上で超イオン性とサブイオン性(subionic)挙動の両方を表示するという利点を有する。ここで、本発明者らはこの図表をTgで目盛ったΛのアレニウスプロットと組み合わせ、温度と等価導電率との間の関係が流動性と導電率との間の関係と同時に見られるようにした(図A3)。高温の限界での導電率は、高い流動性の限界での導電率と同じはずであり、約104.5ポイズ−1のあたりにあると認められている(15)。この限界は格子振動時間(〜10−14s)に達する剪断緩和時間によって決まる。
【0044】
図A3(a)は様々なプロトン性及び非プロトン性イオン性液体について流動性に対する等価導電率の関係をプロットしている。図A3の太線は理想的なワルデン線である。理想的には、決められた電位勾配下のイオンの動きに抗する唯一の力は粘性摩擦であるので、導電率の温度依存性は流動性の値によって決まる。理想的な線の位置は周囲温度での1MのKCl水溶液についてのデータによって決められる。LiCl・6H2Oについてのデータはそれに近くなる。大部分の電荷濃縮系のイオン間摩擦は、高温で更に重要な移動度の損失を招く。これは図A3に見えるように、プロトン性又は非プロトン性すべてのIlsについて見出される理想線未満の傾斜を生じさせる。「部分的ワルデン則」Ληα=一定(0<α<1)が適用される。コンダクタンスについて特殊な機構があるとき、超イオン性についてのワルデンプロットは理想線よりも上にあり、傾斜αはデカップリング指数の尺度を提供する(22)。
【0045】
図A3(a)は、コンダクタンスについての機構で液体を区別することを可能にし、ワルデン機構(例えば、ある種の溶融物における小さなイオンの超イオン性スリップ(22)及びある種のプロトン性溶液、特に水を有する溶液についてのグロッタス機構(23))よりも効率的である。しかし、それは強いプロトン性移動を有するプロトン性Ilsと非プロトン性Ils間の差異を何ら明らかにしない。それらのワルデンプロットから、それらは同じに見える。異なる場合のプロトン移動の程度を更に感度良く区別し、それによって、なお一層高い導電率への道を指し示すために、本発明者らは過剰沸点の測定を含む代替のアプローチに転じる。
【0046】
他にも示されるように(13)、その成分の沸点から加成された値に対する測定されたプロトン性ILの沸点の超過は、酸及び塩基についてのそれらのガーニーエネルギーレベル間のプロトンのための移動の自由エネルギーに比例する量と良く相関をとることができる(24)。これはpKn値の差であり、水分子についてのプロトンの値である(ΔG0=−RTln(ΔKa))特定の値に参照されるプロトン移動の自由エネルギーを実際に評価する。本発明者らは図A1及び図A2の3種類の硝酸塩プロトン性Ilsについての過剰沸点が、参照13のプロットによって正確に予測されることを見出す((25)も参照のこと)。したがって、このプロットは、外挿によって、過剰沸点、それゆえ未だ研究されていない任意のプロトン性ILの実際の沸点がどうであるか言うことを可能にする。それは、様々な強塩基と超酸であるトリフルオロメタンスルホン水素酸との組み合わせの沸点が、高過ぎて測定できない(カチオンの事前分解のため)ことを正確に予測する。
【0047】
したがって、図A3(a)によってイオン化傾向に関して区別できないプロトン性ILは、その相違を過剰沸点基準によって明らかにする。(電解質の沸騰と関係する)プロトンが電解質のアニオン上のその原点へ戻り、次いで蒸気の中に離脱する確率は、プロトン化反応の自由エネルギー変化のボルツマン関数でなければならない(13、25)。
【0048】
流動性と導電率の次のレベルに至る糸口を与えるのは、これらの液体の沸点の挙動である。このため、本発明者らは以下の観察を行う。[EtNH3][NO3]とその類縁体について、プロトン移動工程の平衡定数は周囲温度で分子よりも圧倒的にイオンを優先するが、プロトンがアニオン上に瞬間的に存在するであろう消滅確率は、やはり流動性の高さに或る役割を果たしているように見える(図A1及びA2)。もしそうであるならば、多分同一の原理がアニオンに働くことができるので、低い蒸気圧を維持しつつ流動性が高まる。したがって、本発明者らは、最近与えられた安定性の証拠である水素結合したジアニオン性プロトン性ILの例を検討する(13)。
【0049】
図A3(b)はTgで目盛ったアレニウスプロットであり、流動性が10−11ポイズ(無機網目ガラスでは10−13p)のガラス状値に達する温度に対する等価導電率の温度依存性を表示する。無機超イオン系はそのガラス温度で非常に高い導電率を有する。サブイオン性(会合、イオン対等)系は全ての温度で低い導電率を有する。導電率についての理想的な(イオン相互作用のない)挙動は、H2O中のKClについて、無限希釈導電率の点線プロットで示される(ロビンソンとストークスからのデータ(27))。これらのデータを含むためには、高温粘度あてはめに示唆されているので、Tgは138Kを割り当てる。水の実際の値には異論がある。
【0050】
部分(a)と(b)において選択されたプロットは、流動性=104.5ポイズ−1におけるのと同じ値を無限温度で有するように外挿された。イオン性相互作用のないので、T>2.5Tgでの挙動はアレニウス則に従うはずである(15)。
【0051】
α−メチルピリジン+トリフルオロ酢酸系において、沸点はジアニオン組成物で最大(200℃で)になり、ガラス転移温度は化学量論的(1:1)組成物で最大になることが見出された(13)。したがって、ジアニオン組成物で蒸気圧は最小化されるが、液体の導電率は増加する。プロトン性硝酸塩ILにおいて、化学量論的組成物でのプロトン移動エネルギーの方がより大きいため、ジアニオン組成物は最大沸点をもたない。しかし、それは比較的高く留まり(164℃)、導電率は無論増加する。データは図A4に含まれ、導電率は本質的に1M水性LiClと同じであることがわかる。
【0052】
図A4は、(i)通常のプロトン性IL(単一成分[EtNH3][NO3]及び混合物[MeNH3][NO3]−[Me2NH2][NO3])、(ii)非プロトン性第四アンモニウムIL、及び(iii)LiCl水溶液(1M及び7.7MすなわちLiCl・6H2O)と比較したジアニオン性プロトン性ILの比導電率を示す。ジアニオン硝酸塩は1MLiClのレベルに達し、[MeNH2][NO3]と[NH4][HF2]の混合物も達する。純粋な[NH4][HF2]を測定すると、LiCl・6H2O溶液の値に等しい値への驚くべき増加がある。[NH4]+を[EtNH3]+、[Me2NH2]+、[MeNH3]+などと置換すれば、周囲温度液体類似物が期待される。
【0053】
既知の最も強いジアニオン[HF2]−を導入することにより、ジアニオンプロトン性ILの概念を更に一段進めることができる。実際に、このアニオンを組み込むイオン性液体(しかし過剰のHFを有する)は、例外的な導電率を有することが既に報告された(26)。市販の[NH4][HF2]の導電率が測定されており(若干の電池腐食を代償に)、図A4に含めてある。導電率は、ここで>100℃の温度範囲で測定した7.7MLiCl溶液と同程度の高さであることがわかる。[NH4][HF2]が周囲温度ILではない(Tm=125℃)ので、比較は高温でのみ行った。しかし、[NH4][NO3]は[MeNH3][NO3]、[MeNH2][NO3]又は[EtNH3][NO3]及び[NH4][HF2]よりもはるかに高い溶融点を有しているので、[MeNH3][HF2]又は[Me2NH2][HF2]及び[MeNH3][HF2]とのその混合物は周囲温度で液体であり、また、それらが[NH4][HF2]のデータから示唆されるものに匹敵する導電率を有するであろうと予測することは合理的である。
【0054】
最終的に、本発明者らはまた、LiCl・6H2Oの−134℃に対して−130℃のTgでガラス形成する[Me2NH2][NO3]・6HNO3についてのデータを図A4に含めることによって、LiCl・6H2Oとの代替の比較を行う(沸点はLicl・6H2Oの138℃に対して103℃)。そのより高いTgにもかかわらず、明らかにより高い脆性のため、その導電率はLiCl・6H2Oよりも高い。
【0055】
本発明者らは、本明細書に説明するプロトン性ILよりもはるかに高い導電率を生じる系だけが、デカップリングしたプロトン(グロッタス機構)が作用する水性酸系であるという観察で結論付ける(23)。最近、Watanabeとその共同研究者達(28)は、弱いデカップリングが、イミダゾールとHTFSI(m.p.=73℃)から作られたプロトン移動塩の過剰のイミダゾール中の溶液で起きることを示した。実在のデカップリングしたプロトンの動きがニートのプロトン性IL中で起きる条件を求めるのが将来の仕事の目標である。[NH4][HF2]の非常な導電率は、それを見るのがさほど遠くないことを示唆する。
【0056】
プロトンに富む本発明のイオン性液体は、プロトン酸と、上述のプロトン移動によって形成される種類の弱塩基性カチオンの存在によって利用可能になった活性アニオンとの組み合わせに基づく。代りに、現在「イオン性液体」又は「周囲温度で安定な溶融塩」媒体に広く使用される非プロトン性カチオンを使用することができるが、導電率はいくらか犠牲になる。
【0057】
強い水素結合によって保持されるそれらのジアニオン(AHA)の形成は、以下に示すように、揮発性酸の沸点を100℃以上高める。
【0058】
本発明のプロトン運搬流体の特性を更に記述するために、本発明者らはプロトン移動塩とその過剰酸及び過剰塩基中の溶液の課題を研究した。プロトン酸とアニオン(第1プロトンの移動によって形成された塩の)との結合が非常に強いことを事例は示した。それは非常に強いので、通常の沸点(全ての揮発性化学種による総蒸気圧が1気圧に達する)はジアニオンの化学量論でその最大値に達する。図5を参照のこと。この図は、α−ピコリン+トリフルオロ酢酸系を示し、ガラス温度(白四角)、失透温度(黒菱形)、液状温度又は凝固点(白三角)及び1気圧での沸点(黒丸)を示す。トリフルオロ酢酸(HTFAc)と塩基であるα−ピコリン(α−pic)(2−メチルピリジン)から形成されるこの系において、系の最大溶融点は1:1化合物(単純なプロトン移動塩であるトリフルオロ酢酸2−メチルピリジニウム)で見出される。しかし、沸点は、酸と塩基成分の組み合わされた蒸気圧が水素結合ジアニオン(AHA)の化学量論量で1気圧に等しくなる点でその最大値に達する。ジアニオン化学量論量での沸点がこの開示の図1よりも更に高い他の事例を以下に示す。
【0059】
酸性化した溶融物の導電率は図2及び図4に示した中性液体のそれよりもかなり高いことが判る(図6参照)。エチルアンモニウムカチオンを含む液体がジアニオンの不存在下に周囲温度で20.8mScm−1までの導電率を示すことが判ったのに対し、[EAN]+[H(NO3)2]−の環境導電率は驚くべきことに37.6mScm−1に達する。最終的に、化学量論量のXA・HA(XAは硝酸ジメチルアンモニウムDMANであり、HAはHNO3である)の液体酸塩の導電率は、初めて非水性電解質の導電率を水溶液の範囲とする。この溶液の導電率は周囲温度で65.7mScm−1であることが見出された。XA・3HNO3への酸含有量を増加させると、最終的に非水性溶液としては初めて「100mSCM−1の壁」を破る。これは非水性液体でかつて測定された最高の導電率であると考えられる。図6において、これらの新規なイオン伝導性液体のデータは、塩化リチウムの1.1M溶液の導電率、96重量%リン酸の導電率、及び最終的に既知のイオン性導体の中で最も電導性のある4M水性H2SO4の導電率と比較される。
【0060】
本発明者らは、プロトンをギ酸、トリフルオロ酢酸、及びトリフリック酸(すなわちトリフルオロメタンスルホン酸)などの無水形で市販の無水酸に加える、系の系統的な研究を報告してきた。しかし、他も可能である。なるほど、本発明の例示的試験燃料電池は、それが既に十分既知であったので、電解質として使用する、本発明者らの報告したイオン性液体である硝酸エチルアンモニウムEANを含まなかった。しかし、今では燃料電池電解質としてのその適用は確信されている。EANは本発明者らの報告した仕事に説明されたどれよりも優れた導電率を有するが、その挙動は、系の塩基であるエチレンアミンが室温でガス(沸点Tb=16.6℃)であるため、酸/塩基組成物の全範囲にわたって容易に追跡することはできない。
【0061】
3.回転子相固体電解質
ここで、本発明者らは、調製され相転移と導電率について特徴付けた電解質を開示するが、作動する燃料電池の固体電解質として使用できることを未だ立証していなかった。それらは前節の置換硝酸アンモニウム及びアンモニウムビフルオリドに密接に関連している。
【0062】
本発明者らは、前例のない導電率[1]を有する周囲温度イオン性液体を開発する過程で、置換アンモニウムカチオン系に非常に高い電気導電率を有する多数の回転子相が存在することに気づいた。これらは、リチウム固体電解質[5〜7]の科学において開発された、イオン回転が係わる或る原理を用いて、Haileと共同研究者達[8]によって開発された無機回転子相の導電率を満足する、又は凌駕することのできそうなプロトン伝導性メンブレンを、より経済的で毒性少なく製造する可能性を高めた。我々がデータを有する多くの事例は、回転子相の物理[9、10]に興味を持った研究者らによって以前に研究されたが、それらが燃料電池の固体電解質として働く可能性があるとは以前には考えられなかった。この点で、これらの固体相の高い導電率がプロトン移動機構によるものか、又は輸送移動が関与するのかは明らかではない。そのことは機能的な燃料電池の目的のためには問題ではない。これらの単一成分系に濃度勾配を確立することができないからである。濃度勾配を確立することができないが、しかしプロトンをアノードで取り出しカソードでの電極反応へ移動することができるとき、電解質は事実上プロトンの単位輸送数電解質である。これは燃料電池電解質において長い間求められてきた目標である。
【0063】
ここで、本発明者らは硝酸エチルアンモニウム(EAN)、硝酸ジメチルアンモニウム(DMAN)、硝酸メチルアンモニウム(MAN)、及びその若干の混合物の相関係と導電率の挙動の最近のデータを示す。これらの電解質は、それらの高い導電率のため、同じ原理の実際例の開発を手始めに刺激するために必要な概念の実証を確立する基礎として役立つであろう。
【0064】
図B2は塩EAN、DMAN、及びMANの導電率をアレニウスプロットの形で示す。EANは室温で液体であるが、他の2種はそうではない。にもかかわらず、それらの1種であるDMANは室温で非常に高い導電率10−2.6S/cmを維持し、それが溶融する前に10−1S/cmに近づく。導電率はイオンの高速回転に関係することが予想され、これまではこれらの材料に対する興味の主因であった[9、10]。
【0065】
図B3はDMAN及びMANについての一組のDTA走査であり、固体状態と溶融相転移の相対強度を示す。DMANの場合、可塑性結晶は「ティンマーマンス回転子(Timmermans rotator)」である[9、10]。図B3は、温度変化に伴って起きる相転移に対する導電率挙動に関する。図B3に示すMANの示差熱分析DTA線から、この固体物質は、固体−固体転移が起きる78℃の温度での溶融に際して通常現れるエントロピーの過半を発生したことが明らかである。これはカチオン又はアニオン回転、多分両方が開始するためであり、これは多く研究された[9、10]。また、DMANも相対的に低い温度20℃で強い固体−固体転移を示すが、程度は溶融に比べて小さい。これらの回転子相の混合物の若干のデータは、追補資料として提供される。90DMAN−10MAN可塑性結晶の周囲温度の導電率は、驚くべきことに10mS/cmである。
【0066】
更に顕著な固体導体は、化合物NH4HF2の固体の形であり、以下の節で我々が報告している液体の1種に密接に関係する。固体NH4HF2の周囲温度での導電率は非常に高く(20mS/cm)、100℃で>100mS/cmである(図B4)。図B4は、NH4HF2(Tmelt=125℃)のイオン性(プロトン性)導電率の温度依存性を、6モルH2O/Li+の濃縮LiCl水溶液の導電率と比較してプロットしたものである。硝酸塩の場合の固体状態における導電率は、非常に再現性があるわけではないが、常に高い。それはあまり高いので、それがすべて格子のイオン成分の拡散によるものと考えることは困難である。むしろ、高速回転するイオン間を飛び回るプロトンからの寄与が大きいように思われる。硝酸塩の研究に基づいて(参照10及び図B2)、置換されたアンモニウムカチオン誘導体、及び特にその混合物は更に高い導電率が期待できる。
【0067】
4.ガラス電池:白金ワイヤ電極
電池を図B7に図表的に示す。
【0068】
(a)新規な電解質である硝酸エチルアンモニウムとリン酸電解質との100℃での性能比較
図B5は、[EtNH3][NO3](EAN)と85%リン酸との100℃における裸の白金ワイヤ電極でのI−V曲線比較のプロットである。結果は、EAN電解質を用いた電池の電圧が、リン酸電解質を用いたものよりも常に高く、前者によって発生される最大電力(最大傾斜(dE/di)maxで得られる)が新規電池ではるかに大きいことを示す。
【0069】
(b)新規な電解質である[Me2NH2][HF2]とリン酸電解質との性能比較
図B6から、ビフルオリドプロトン性ILを利用する電池の性能が非常なものであることが判る。室温での任意の所与の電流で発生される電圧は、150℃の温度でのリン酸電池のそれよりも優れている。このビフルオリド電池は、ガラスの腐食がフリットを崩壊させるので高温での研究は行えなかった。データは以下に説明するテフロン(登録商標)で挟んだ電池で高温で得られた。
【0070】
5.テフロン(登録商標)電池:コロイド状Pt電極(高表面積)
電池は図B7に示される。リン酸電解質を有し、それに対して電極を最適化してあるこの電池の性能を図B4に示す。これがリン酸電池に予想される性能である。それらの性能は「ならし(breaking−in)」時間、すなわち電解質への数時間の露出の後にのみ得られ、電流発生までに長い時間がかかる(初期には極めて小さい)。明らかに、電解質が適切に電極を適切に透過し、白金表面すべてに到達するには時間がかかる。これらのデータは、良好なリン酸電池についての文献中のデータと比較すべきものである[12]。
【0071】
イオン性液体電解質を新鮮な電極を設置した電池に導入すると、その性能は非常に悪い。その電解質が電極構造への初期透過を達成できないことは明らかである。これは驚くべきことではない。というのは、電極はH3PO4電解質で用いるように開発され最適化されたものだからである。
【0072】
一方、電池を最初H3PO4電解質でならし、次いでH3PO4電解質を取り除いて新規な電解質の1種と置き換えると、新しい安定した状態が直ちに得られ、おそらく、プロトン性IL電解質の特性に対して最適化された高分散白金電極を用いた場合ほど良好ではないにしても、電池性能は非常に良好になり得る。
【0073】
(a)[Me2NH2][HF2]電解質
図B8に、H3PO4と比較した電解質[Me2NH2][HF2]の性能を示す。この電解質用に最適化した電極で、優れた性能が達成できると考えられる。
【0074】
(b)[EtNH3][NO3]電解質
硝酸エチルアンモニウム電解質電池のリン酸を用いたものに対する優位性は、図B5に見られた。ここで、我々はリン酸電解質をEANに置き換えると、開回路条件下の電池の電圧が1.2ボルトまで大きく上昇することを見出す。より高い最大電力さえもつ、はるかに高いエネルギーの電池の可能性が高まる。しかし、電流の実体が尽きてしまうと、好ましい電圧を維持することができない。初期の優位性及びその急速な減衰は、新しいデータを図5のデータと組み合わせて図B9に示される。おそらく、電極設計の改善によって、非常に高性能の電池を得ることができるように思われる。
【0075】
(c)固体プロトン性[Me2NH2][NO3]電解質
リン酸電解質を固体プロトン性電解質DMAN[Me2NH2][NO3]に置き換えると、25℃での開回路条件下の電池の電圧は1.14ボルトまで大きく上昇する。おそらく、これらの電解質がリン酸用に特別に設計されているという理由で、電流の実体が尽きてしまうと、やはり好ましい電圧を維持することができない。初期の優位性及びその急速な減衰は図B10に示される。多分、電極設計の改善によって、非常に高性能の電池を得ることができるように思われる。
【0076】
本開示の電解質の化学的及び電気化学的用途
1.金属溶解
アニオンに捕捉されたプロトンは化学的仕事を行うのに利用可能であると考えられる。プロトンは水素の放出で示されるように、イオン性液体が粉状亜鉛と反応するとき亜鉛金属と交換することができるが、カチオン上に−OH基が存在しないかぎり、電子移動は少なく、電子移動を自由に起こすためには加熱を必要とする。酸性イオン性液体の応用のこの側面は、燃料電池への応用に関して今のところあまり重要ではない。
【0077】
2.燃料電池
これらの高伝導性高沸点電解質への主な興味は、その高温燃料電池における電解質として役立つ潜在的可能性にあるといわねばならない。確かに、プロトン移動イオン性液体電解質を利用するそれらの電池の実現性は発表されたばかりである。(速報刊行物Chem.Comm.の中で、Watanabeと共同研究者達は、水素電極及び水素/酸素燃料電池用の電解質としてのプロトン移動塩の実現性の証拠の最初の報告と考えられるものを提出している。)本発明者らの型の電解質は電流に関してはるかに高い性能を有し、標準的な高温燃料電池電解質である4重量%の水を有するリン酸の性能と競うことを可能とする。
【0078】
また、本発明者らは、競合し得る電池電圧を維持しながら、広範囲の温度にわたってリン酸燃料電池を超える値に電流を増加させる成功に導く戦略をも開示する。
【0079】
燃料電池用の、本発明の好ましい実施態様であるプロトン移動塩の電位を試験するために、図7に示したU電池設計を用いて簡単な水素酸素燃料電池を組み立てた。水素と酸素は、白金めっきしていない白金電極上に、電池のそれぞれ左側と右側にバブリングした。図8及び10(電池1)に示したデータを得るために使用した電池の第1の型には、電池2(図7)においてH2の泡を分散するのに使用するフリットは存在しなかった。
【0080】
電極では以下の反応が起きると考えられる。
アノードでは、
H2(g)→2H++2e−、及び
2H++4A−→2HA2−
正味:H2(g)+4A−→2HA2−+2e−、
カソードでは、
2e−+1/2O2(g)→O2−、及び
O2−+2HA2−→H2O(g)+4A−
正味:2e−+2HA2−+1/2O2(g)→H2O(g)+4A−
正味電池反応は、無論H2(g)+1/2O2(g)→H2O(g)である。
【0081】
電池の電位は、逆電池電位と最小化されるべきそれぞれの電極の過電位との和によって求められる。一般的に、最も重要な過電位は酸素還元過電位である。リン酸燃料電池の電位を理論的な値未満に低下させる主要な原因と考えられるのはこの過電位である。
【0082】
市販のシリンダーの水素と酸素を定常的にバブリングさせる間、電池の電位はKeithley Model No.177 Microvolt DMM電位計を用いて監視した。2つの電極を接続する外部回路を流れる電流をKeithleyのマルチメータを電流計モードにして用いて測定した。
【0083】
電池1の簡単な白金ワイヤの螺旋電極に水素と酸素を定常的に流し、電池中の電解質が標準的なリン酸(4重量%の水を有する)であるときに記録された電位を図8(a)に示す。電池の温度を室温から200℃に上昇させたときに記録された電流を図8(b)に示す。
【0084】
(図8(a)及び8(b)にはまた)これらの示したプロットと比較するために、我々は電解質が(i)硝酸エチルアンモニウムEAN、(ii)硝酸ジエチルアンモニウムDMAN、(iii)硝酸メチルアンモニウムMANであるときの電位と、同じ電池に流れる電流を示した。後者の2種の電解質は、溶融点がそれぞれ72℃と109℃であるので、高温でのみ使用することができる。しかし、周囲温度性能を必要とする応用では、それらを互いに又はEANと混合することができる。DMAN−MANの場合、共融温度は室温未満になる。
【0085】
このレベルで試験すると、新規な燃料電池は優れた性能を示すように思われる。EANの場合の電圧出力はリン酸燃料電池よりも顕著に高いが、より高温では電圧が下がり、この理由は今のところ理解できない。
【0086】
それらのコンダクタンスは非常に高いので、硝酸塩系電解質の使用にはその化学的な不安定さと爆発の可能性に関して欠点がある。したがって、アニオンを使用するこの一般的な種類で、酸化力のない、多くの他の可能な電解質を試験した。この場合、より少容量の電解質と、Ptワイヤ電極の近傍でより小さな液滴中にガスを分散させることを意図したガラスフリットを用いた修正された電極とを備えた、わずかに異なる設計(電池2、図7)の電池を用いた。各試験には同じ水素流量を用いた。図9はリン酸二水素エチルアンモニウム及び硫酸水素エチルアンモニウムのプロトン移動塩のデータを示す。特に、後者は低温で期待できるように思われるが、最高温度における以外はリン酸電池の性能に匹敵しない。200℃で、その性能は優れたものになるが、わずかである。H2SO4とは異なり、HSO4−は弱酸であり、その酸の塩が吸湿性でないことから考えて、高温燃料電池用途に大きな可能性を提供するように思われる。硫酸水素電解質は中性プロトン移動塩ですらない。
【0087】
本発明の燃料電池をあらゆる従来の研究から区別し、はるかに低い温度での利用を可能にする顕著な現象は、
(i)低蒸気圧媒体中で特に低濃度において不揮発性であり、
(ii)塩基(エチルアンモニウム)と酸(HNO3、H2SO4等)間の中間のブレンステッド塩基性であり、結合して一次プロトン移動電解質を形成し、優先的にプロトン化されない、という2つの特性のゆえに選択される分子状塩基を含むことによって単純なプロトン移動塩電解質が修正されるときに、電池中に流れる電流の顕著な増加である。
【0088】
図10は、添加剤として4重量%のイミダゾールを含む、及び含まない、硝酸エチルアンモニウム電池について、電流(図10(a))と電圧(図10(b))の比較を示す。比較のために、同じH2流量を用いる同じ電池中で、96重量%のリン酸が電解質であるときの電圧と電流を含めてある。電圧をわずかに犠牲にして、低温での電流は2倍近くなり、高温ではかなり改善されることを見ることができる。
【0089】
ギ酸エチルアンモニウム(より弱い酸)と硫酸水素エチルアンモニウム(より強い酸)を用いる電池で同じ現象が見出される。やはり同じ流量を用いて、電池2中に4重量%のイミダゾールを含む、及び含まない、硫酸水素エチルアンモニウム電池についてのデータを図11に示す。イミダゾールの添加によって高められたプロトン移動電解質のより粘性の高い特性にもかかわらず、EAHSO4の場合の電流もやはりより高い。高粘度のため、小さな泡はもはや、前の場合のようにフリットで形成されて離れることはなく、このことは電極被覆効果によって大きな電流変動を招く。この問題は、電極設計の改善と異なる粘度の混合電解質を使用することによって解決されるであろうと考えられている。今のところ、電流変動のピークが電池性能の真の表示であると理解されている。これがやはりリン酸電池よりも優れていることに注目すること。イミダゾールは、そのプロトン部位が作動温度でHSO4−化学種の部位よりも接近しやすいので、プロトン移動橋として働くことが可能である。
【0090】
等しい又はより優れた性能は、強酸CF3SO3H及びFSO3Hを用いて得ることができ、硝酸で形成されるような中性プロトン移動塩を生成するが爆発の危険性はないであろう。また、試験されるのはモノ−プロトン性で、フッ素化せず、安価で毒性のない酸HBOBであり、これは本発明者らが最初に報告した塩LiBOBに関連する[W.Xu and C.A.Angell、Electrochem.Solid State Lett.、2001年、4(1)、E1〜E4]。BOB−はビス(オキサラート)オルソボラートアニオンである。これは非常に弱く配位したアニオンであり、その酸は超酸であるが、大きなアニオンであって、通常液体と溶液の粘度を高める望ましくない効果を有する。
【0091】
本発明の多くの例及び期待できる好ましい実施態様を説明したが、更に開発すべきことは、代替の塩基でドープした電解質を用いる電池の挙動であり、非常に多数存在する中で、特に芳香族三塩基分子1,3,5−トリアジンC3H3H3である。
【0092】
まとめ
中性プロトン移動塩、又は酸塩のいずれかを使用し、移動されないプロトンが弱酸のみである新規なタイプの燃料電池を説明した。多くの場合、電解質は周囲温度で液体である。電池は、従来技術のリン酸電池よりも優れた電流−電圧性能を有し、一次プロトン移動塩の酸と塩基成分間の中間の塩基性である塩基で電解質をドープすることによって更に高めることができる。電解質が酸ではなく中性塩であることは、リン酸燃料電池に伴う主な欠点として共通に見られる腐食問題が発生し得ないことを意味する。
【0093】
実験
この研究で重要な熱的転移は、他[41]にも説明されている三端子系を利用する簡単な自製の示差熱分析DTAユニットを用いて求めた。過去に、ガラス転移及び溶融点の測定に広く用いられたが、この研究で非常に重要な、沸点測定への有用性は以前には多くの注目を引かなかった。ガラスサンプル管を使用していることとサンプルの近くに高価な構成要素がないことのため、DTAは腐食性系の研究に特別の利点を有する。更に、非封止サンプル容器の使用は、標準的な示差走査熱量計DSC装置において研究できずにいる沸点の測定を可能にする。
【0094】
液体プロトン性酸、トリフルオロ酢酸(HTFA、99%)、及びジクロロ酢酸(HDCA99+%)、塩基プロピルアミン(PA、99+%)、α−ピコリン(αPic,すなわち2−メチルピリジン98%)、及びメチルイミダゾール(Mim)(99%)はAldrich Chemical Co.から得た。無水酢酸(Hac、99+%)はMallinkrodtから、無水ギ酸(HFm、98%)はFlukaから得た。無水トリフルオロメタンスルホン酸(又はトリフリック酸、HTf、純度は特定されていない)はMatrix Scientificから得た。全ての化学薬品は受入れたまま使用した。
【0095】
DTAによる液体と溶液の沸点の測定は非常に簡単である[42、43]。沸点はDTA中にその独自の明確な信号を有する。沸騰が起きるとき、大きな蒸発熱の値と共にわずかに過熱された液体中の急速な泡の成長が急激なエネルギーの吸収を招く。これは鋭いペンの変位を起す(図C2を参照)。過熱による誤差は少量の不活性アルミナ粉をサンプル容器に加えて泡の核形成を促進することによって最小化される。
【0096】
純粋な液体において泡の成長は非常に速い。1成分だけが揮発性である溶液中では、揮発性成分が泡表面に拡散する必要があるため、泡の成長ははるかに遅くなり得る。イオン性化学種が静電気的な拘束を加える溶液のより高い粘度に伴う拡散の必要性は、二成分系溶液において、より目立たないが、やはり明らかな信号をもたらす。特にほぼ化学量論的組成物では、信号が弱いほど、次の部分で示す二成分系溶液データの分散において見られるように、中間範囲の沸点決定の不確定さが増加する。
【0097】
プロトン移動エネルギーが最大である場合(この研究ではα−ピコリン+トリフリック酸)、より揮発性の成分(過剰の酸又は過剰の塩基)の活性が非常に低減されるので、沸騰が観察される前に分解点に到達する。実際に、分解が起きないと、この場合の化学量論的組成物についての沸点は450℃近くであろうと予測される。
【0098】
分解が起きるとき、熱効果の方向はこの研究の物質では吸熱性から発熱性へ変化する。沸点の再現性(精度)は単一成分の1Kよりも良い。正確さと精度は、α−ピコリン(128℃(文献値)に対して連続運転の127℃としての127)及び酢酸116℃(文献は118℃)の結果から判断できる。第2の場合の差の増加は薬品が98〜99%の純度しかないことに起因する。
【0099】
外部圧力を環境よりもはるかに低い既知の値に低下させ、それによって液体/気体共存線(及び蒸発熱)を得る装置を用いて、これらの測定を繰り返すことは全く簡単なことであろうが、今までに実施されなかった。
【0100】
ギ酸+プロピルアミン溶液中に観察される転移の順序を示すDTA線は図C2に与えられる。それは、その沸点がわずかに53℃である10モル%の強塩基を組み込むことによって、酸の沸点がいかにして通常の値(100℃)から124℃へ上昇するかを示す。ガラス転移は純粋な塩基について見積もった約−133℃から上昇して、−123℃のようである。次いで系は−98℃で結晶化して固体の塩であるギ酸プロピルアンモニウムを生成し、続いて−17℃で再溶解する。したがって124℃の沸騰まで長い液体範囲がある。
【0101】
導電率は0.1mのKCl溶液で較正して約0.1cm−1の電池定数を有する浸漬式電池を用いて測定した。電池のコンダクタンスは、他にも多く記述のある[例えば37、43]自動HP4192LF周波数アナライザを用いて、10Hz〜1MHzの周波数範囲で求めた。導電率は殆ど周波数に依存しない初期の平坦部分から求めた(logσ対logfプロット)。得られた値は、複素インピーダンスプロットの実数軸への短い外挿によって得たデータに対してチェックした。
【0102】
イオン性液体の動的粘度は、周囲〜130℃の温度範囲で適切な粘度計定数を有するCannon−Ubbelohde粘度計を用いて測定した。CaCl2乾燥管を用いて空気中の湿度からサンプルを保護した。均一な温度環境を、メニスカス観察のできるスロットを備える背の高いカートリッジ加熱アルミニウム温度平滑化ブロックによって提供した。サンプルの温度は測定前に30分間維持した。Cannon−Ubbelohde粘度計の測定精度は流動時間の再現性によって制御され、正確さは較正定数の正確さと温度測定によって制御される。精度は、最高温度(100℃超)においては、我々が各サンプルに単一の粘度計しか使用しない結果、短い流動時間(<10s)に制約された。流動時間は再現性があり、標準偏差は±0.2sであった。40℃未満の温度では、読み取り誤差は流出時間のわずかに0.1%であるので、運転時間はしばしば200s又はそれ以上である。データは、ここでポイズ(10p=1Pax)で報告されている通常の粘度に変換し、ワルデンプロットの単純さを保った(図C1、更に詳細は以下に示す)。
【0103】
結果
図C2などの走査から得た様々な転移点(Tg、Tc、Tl、Tb)の温度を、系α−ピコリン+トリフルオロ酢酸について図C3に示す。
【0104】
本発明者らは、ガラス温度と液体温度の両方とも単純なプロトン移動化合物であるトリフルオロ酢酸α−ピコリニウムの化学量論量で最大値に達することに注目する。一方、沸点は、過剰の酸で、ジ−アニオンH(TFA)s−の形成に相当する67%酸組成物に達するまで上昇を続ける。明らかに、この水素結合化学種はこの系の中で非常に高い安定性を有する。最高沸点(酸と塩基成分の組み合わせ蒸気圧は1気圧に等しい)はジ−アニオン組成物で起きるが、一致融点の溶融塩は1:1の単一プロトン移動化学量論を有することに注目すること。
【0105】
図C4は、塩基α−ピコリンを各々共通に保持しながら、酸の強度を増加させた若干の二成分系の沸点を示す。研究の最も強い酸であるトリフリック酸の場合、沸点は芳香族塩基の分解温度を超える。沸騰が分解前に起きる組成物(黒い記号)について得たデータの外挿は、1:1に近い組成物を示し、酸又は塩基化学種の蒸気圧は250℃でさえ非常に低い。1:1化学量論の白三角は後の図で得られた相関を用いて予測した値である。分解が起きる前に直接測定する。
【0106】
図C5は、より強い非芳香族塩基のn−プロピルアミンが共通成分として使用される場合の図4に類似のデータを含む。この場合、ギ酸さえも、加成値を超える値である100Kの沸点上昇を有するプロトン移動塩を生成する。
【0107】
図C4の系の導電率のデータを図C6に示し、粘度データを図C7に示す。残りの系についての導電率及び粘度データは入手可能であるが、図C1の更に経済的な形に組み込み、考察の部分で示す。データは表1に示したフォーゲル−ファルチャー−タマン(Vogel−Fulcher−Tammann)式の因子に圧縮した。これらはデータの範囲中でのみ有効である。最終的に、比導電率を等価導電率に変換するために必要な密度についてのデータは、表2の線形式にまとめてある。
【表1】
【表2】
【0108】
考察
1.プロトン移動塩
図C4及び図C5のデータは、酸−塩基工程の概念から予想されることを定量化する機会を提供する。本発明者らは、プロトンを酸から塩基へ移動する大きな駆動力があり、それによって塩を形成するとき、個々の成分の活性は理想的な溶液の値から大きく低減されるであろうと予測する。水溶液において、移動を起させる自由エネルギーは、それぞれ酸から水及び水から塩基へのプロトンの移動の仕事量についてのデータから得ることができる。これらは、pKa値及びpKb値に関して広くカタログに記載されている。二者択一的に酸又は塩基として作用する所与の物質では、これらはpKa+pKb=14によって関係づけられる。値14は溶媒水の特性によって定まり、その自己解離定数pKwの基底10対数である。Gurney[24]の書籍中で詳細が説明されているように、pKwはプロトンを1水分子から水それ自体によって提供される溶液媒体内の離れた分子へ移動させる仕事量(−RTlnKw)に関連する。所与の塩のアニオンとカチオンを形成する酸と塩基のpKaとpKbの和によって、希釈水溶液中でそのイオンから塩を形成する自由エネルギーΔG=−RTln(ΔpKa)の値を得ることが可能になる。
【0109】
水溶液中のこれらの相互作用について入手可能な大量の情報が、水又は他の溶媒の不存在下で相互作用する同じ酸と塩基の挙動に何らかの関係があるかどうかを判断するのは興味深いことである。水性系中でプロトンの移動を起す水の誘電率は非常に大きく、約80である。塩から元の分子状酸と塩基成分へ復帰させる移動の仕事量は、したがって、誘電体、特に水の誘電率を有する媒体が存在しない場合はるかに大きいはずである。したがって、研究された系における塩形成の駆動力は水中の測定値とは大きく異なるであろう。それらのプロトン移動環境の劇的な変化に何らかの相互関係が存在するかどうかは、実験によってのみ決定することができる。
【0110】
相関の可能性は、まず、研究している各塩基/酸対の加成値(additive value)(図C4及び図C5)を超える沸点の上昇を、水中の酸及び塩基成分のpKa値の差の関数として比較することで試験される[44]。pKb値のみが記載されているときは、本発明者らは塩基にはpKa=14−pKbの値を用いる。個々の成分のpKa値は図の凡例に与えられる。
【0111】
図C8は、過剰沸点(1:1組成物で求めた)と、各イオン性液体の成分ブレンステッド酸及び塩基の水溶液pKa値における差との相関を示す。ΔTb値は、測定した沸点と、純粋な酸と純粋な塩基の沸点間の直線関係の1:1における値との差として求められる。超酸HTf(白い三角)から形成されるイオン性液体について外挿した非常に大きな過剰沸点に注目すること。これらの値は、事前の分解のため実験的には測定できないであろう。
【0112】
図C8は、この仕事で研究した全ての酸/塩基の組み合わせについてのデータを用いる。データでは、1:1の酸:塩基での沸点があらゆる分解温度よりも低くなる。4点は測定の不確実性の範囲内で正確に同じ線上に乗るが、5番目(酸と塩基成分の沸点の差が最大である、したがって加成基線が最も信頼性がない場合)はその線に近くなることが判る。すべての中で最も強い酸を含んで、ΔpKaの値が最大である場合について既に注目したとおり、実際に図C8の相関プロットが予測するように、沸点は分解温度を超える。我々が測定不能な沸点を予測するためにプロットを用いるならば、化学量論比のいずれかの側で測定した、溶液の沸点の2個の腕による外挿と整合するように思われる。これらは、分解がない場合に沸騰は450℃より前には起きないことを示唆する。明らかに、トリフリック酸α−ピコリニウムの塩は疑いもなくイオン性液体であると見なすべきである。
【0113】
他の測定に転じて、本発明者らは、図C1の流動性に関してプロトン移動によって形成されたイオン性液体の導電率を試験する。理想的な線は、イオンが媒体の粘度によってのみ決定される移動度を有すること、及び当量容積に存在するイオン数は塩組成物によって示される(すなわち全てのイオンが均しく寄与する)ことに基づいて得られることが想起される[21、45]。理想的な線の位置は、イオンが互いに離れ、ストークス−アインシュタイン(Stokes−Einstein)関係及びネルンスト−アインシュタイン(Nernst−Einstein)関係に良く従う希釈溶液のデータから定められる。イオン性液体中のイオン間の摩擦は不可避であるため、或る程度の乖離は予測しなければならない。理論[46]によって予測される、ネルンスト−アインシュタイン式からの偏差は、実験点を希釈溶液限界未満に低下させるであろう。所与の塩のデータが理想線に近く見出されるほど、それは理想に近いと考えることができる。
【0114】
図C4の比導電率σのデータを等価導電率Λへ変換した後、Λ=Veσとη=vρを用いて図C5の動的粘度vデータ(センチストークで)を動粘度ηデータ(センチポイズで)に変換する。Veが当量容積でありρが密度である場合、2系列の塩のデータ(1:1化学量論量で形成される)は図C9にプロットされる。
【0115】
再び、共通の塩基を有する所与の系列において、水溶液のpKa値に最大の差のある塩、プロピルアンモニウムトリフルオロ酢酸及びα−ピシリニウムトリフラートは、理想的なΛ/η−1値でワルデン則に最も近く一致するものであることが判る。実際に、それらは、最近記載された[37、47]第四アンモニウム塩のテトラフルオロボラート塩の非プロトン性塩の集合のいずれかのデータよりも、理想線に顕著により近くなる。その非プロトン性特性に基づいて、この塩はプロトン移動塩よりも更に典型的なイオン性液体を生成することが予測されるであろう。
【0116】
図C10は、各イオン性液体のブレンステッド酸及び塩基成分のΔpKa値に対してプロットしたイオン性液体の「理想的な」ワルデン挙動からの偏差を示す。明らかに小さなpKa値の場合はイオン性液体に分類することはできない。ΔpKaが約10よりも大きい時、プロトン移動イオン性液体と非プロトン性イオン性液体の間にはその移動挙動による相違を観察することはできない。
【0117】
本発明者らは、図C10中でワルデンの理想的な関係をより定量的に試験する。そこでは、彼らは各液体の実験的なワルデンプロットと、図C18で用いたような、水溶液酸及び塩基のΔpKa値の差に対して固定のlogη−1値で測定したΔWの理想線との間の間隔をプロットする。ここでもまた、驚くべき良好な(逆の)相関が見出される。図C9及び図C10は共に、水性のΔpKa値が約10よりも大きいとき、プロトン移動塩とプロトン移動が不可能な塩のワルデンプロット位置の間の差が消滅したことを示す。
【0118】
上で、本発明者らは、かなり異なる2種類の温度、すなわち、最初の例では沸点(図C8)で、第2で中範囲の同粘度点(図C10)で、プロトン移動塩の塩に類似した特性を成功裡に相関付けた。過剰ガラス温度ΔTgに関して試験的に行うことのできる低温での評価が残っている。ΔTbと同じように、ΔTgは化学量論的な塩組成物で測定されたTgと、同じ組成物の加成値間の差で評価される。過剰のTgは図C11中にΔpKaの関数として示される。それは他よりもはるかに大きく分散し、早期の研究から知られるように、他の重要な因子がガラス温度の決定に関与することを意味する。
【0119】
プロトン移動に起因する類似のTg上昇57Kは、ヒドロジン(8.1)+ギ酸(3.75)[48]の場合についてΔpKaは4.35であることがかなり昔に報告された。この系(35℃で液体であるが、明確な結晶固体としては存在しない)の1:1溶液の導電率は、おそらくこの場合の非常に低いTg値(−115℃)[48]のため、イオン性液体[20、49]についてかつて測定されたことのない最高の高さである。
【0120】
2.イオン性液体形成の熱力学
図C8と図C9の比較から、ワルデン則基準は、蒸気圧基準よりもプロトン移動によって形成されたイオン性液体間の区別が少ないことを見ることができる。ワルデン則基準で等しくイオン性に見える2種の液体は、沸点上昇基準によって互いに区別することができる。この節は、この区別の熱力学的理由を短く考察し、それが非プロトン性塩をプロトン性塩から区別する基準も提供することを注する。
【0121】
イオン性液体は、プロトンが酸分子の量子化エネルギーレベル(ガーニー(Gurney)後は「被占」レベルと呼ばれる[24])から、図C12に示したように、塩基上のもともと占拠されていない、すなわち「空(vacant)」レベル(量子化もされた)に「落ち(falling)」て、プロトン化したカチオン性化学種を形成する結果であると考えることができる。
【0122】
図C12において、酸/共役塩基対上のプロトンの自由エネルギーレベルGはガーニーに従う[24]。レベル間の間隙は、化学量論的組成物でのプロトン移動の遊離エネルギーの尺度である。空隙が大きいほど、任意の所与の温度で元の分子対を再形成するボルツマン確率は低く、したがって、周囲圧力でイオン性液体よりも蒸気圧が低い。沸点で、2種の分子の分圧の和は1気圧に達する。
【0123】
逆のプロトン移動によって2種の新規な化学種をイオン性液体内に生成することができる事実は、蒸気を発生させる熱力学的(エントロピー的)駆動力を提供する。これは、総自由エネルギー変化のTΔS成分のため、最終的に温度の上昇に帰結するにちがいない。問題は、分解によって関連性がなくなる前に沸点(2種の分子の分圧の和が1気圧に達する)に到達するかどうかのみである。沸騰に係わる平衡は単純な「二状態」の種類であり、熱容量の増加が先行するはずである。二状態系の過剰の熱容量はΔCp=R(ΔH/RT)2X(1−X)で与えられ、式中、Xは温度Tで高いエネルギー部位に励起されたプロトンの部分であり、ΔHは遊離エネルギーギャップのエンタルピー成分である。Xはそれ自体、図12中2つのレベル間の遊離エネルギーギャップで表されるプロトン移動の自由エネルギーにおけるエンタルピーとエントロピー項の両方に依存する。熱容量の増加が容易に検出されるかどうかはΔS自体の値に依存し、主として、分子とイオンの振動周波数及びプロトン移動が起きるときの液体の擬似格子の差によって決定される。一般に、この熱容量の増加は、定量的な熱容量の測定なしで検出するにはあまりにも広い温度範囲にわたって起きるであろう。
【0124】
非プロトン性イオン性液体については、アニオンとカチオン化学種の間の対応する交換は、プロトンよりも−CH3及び−C2H5などのアルキル基の移動を含むであろう。これははるかにエネルギー的な工程であって、通常他の分解モードで予め空にされる。
【0125】
3.高温プロトン性酸
この研究の潜在的に重要な側面は、説明を行った高温安定な、プロトンに富む、イオン性液体の一般的な存在に係わる。第1に、弱い場のカチオンの存在下でプロトン運搬ジアニオンの安定化が以前に報告されたことが注目される。NMRの時間尺度で長い寿命を有する安定なアニオン性化学種としてのHCl2−の存在は、初期のイオン性液体の研究[50]のいくつかに分光学的に示された。より最近、無機化学で良く知られたジフルオリドアニオンが若干のイオン性液体研究の課題であった[51、52]。原理的にそれらのアニオンは高温燃料電池のプロトン移動媒体として働くことができよう。化学量論量のジアニオンの安定性は図C4に最も良く見ることができ、最高沸点は1:1組成物ではなく2:1酸:塩基組成物で見られる。AHA−アニオンの安定性は、アニオンと酸の追加の分子間の強い水素結合の存在に由来する。この結合は、アニオンがアルカリカチオンの存在下でも形成されるHF2−の場合に十分強い。F−よりも電気陰性でないアニオンでは、カチオンがアニオン配列を制御するにはあまりにも弱い電場を使うときにのみ結合が形成される。
【0126】
将来の研究において、本発明者らはこれらの化学種をそれらのプロトンNMRスペクトル及びそれらのO−H振動周波数によって特徴付ける予定である。今のところ、本発明者らはそれらを含む溶液の特性、及び化学量論的な塩組成物に関してそれらの呈する特性について言及する。
【0127】
図C13に、これらの系の2種の溶液の導電率が示される。図13は2種の酸−塩基対の二成分溶液について導電率等温線をプロットし、ガラス温度が最大になる化学量論的組成物で導電率が最小になることを示している(図C3を参照)。高い導電率は、イオン濃度の減少が支配的になるまで酸と塩基に富む組成物中で実現される。両方の系は同じ塩基のα―ピコリンを有するが、酸の強度は大きく異なる。一事例のトリフルオロ酢酸の場合、ΔpK3値は7.3ユニットであり1:1化学量論量での沸点は容易に測定されて175℃である。第2のトリフリック酸の場合、ΔpKa値は約20であり、沸点は観察することができない。しかし、トリフリック酸塩のイオン化傾向はそのより強いプロトン移動の結果高いが、同時により高いTgがイオンの移動度をより小さくするので、導電率はそれほど異ならなかった。前者は明らかにトリフリック酸塩がより高い導電率を有するので、最も重要である。また、それはより低い蒸気圧をも有するので、伝導性が重要な考慮点であれば、それは2種の中で好ましいイオン性液体である。しかし、流動性を重要であると考えれば、トリフルオロ酢酸ILはより望ましい媒体であろう。
【0128】
用語集
BMI 1−nブチル−3−メチルイミダゾリウム
DMAN 硝酸ジメチルアンモニウム
EA エチルアンモニウム
EAN 硝酸エチルアンモニウム
EAH2PO4 リン酸二水素エチルアンモニウム
EAHSO4 硫酸水素エチルアンモニウム
EMI 1−エチル−3−メチルイミダゾリウム
Fm ギ酸塩
HOEA ヒドロキシエチルアンモニウム
HOEAN 硝酸ヒドロキシエチルアンモニウム
HTFAc トリフルオロ酢酸
MA メチルアンモニウム
MAN 硝酸メチルアンモニウム
MOENM2E メトキシエチルジメチルエチルアンモニウム
MOMNM2E メトキシメチルジメチルエチルアンモニウム
MOPA メトキシプロピルアンモニウム
αPci α−ピコリン
TFAc トリフルオロ酢酸塩
TFSI ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド
Tb 沸点
Tc 失透温度
Tdec 熱分解温度
Tg ガラス転移温度
Tl 液状温度
【0129】
[参考文献]
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】硝酸エチルアンモニウムを室温から沸点を超える温度に加熱するときの熱的事象を示すDTA線である。
【図2】硝酸エチルアンモニウム(EAN)、硝酸ジメチルアンモニウム(DMAN)及びその共晶混合物の伝導性を、現在報告されている最もイオン導電率の高い液体(物質は用語集に示す)と比較して、プロットしたものである。
【図3】硝酸エチルアンモニウムの等価導電率/流動性相関と、他のプロトン移動電解質及びワルデン分類プロットを用いる非プロトン性イオン性液体の1種(MOENM2EBF4)の等価導電率/流動性相関とを比較する図であり、その非プロトン性の事例は、理想的なワルデン挙動に非常に近く一致するという理由で選択されている(他の物質は用語集に示す)。
【図4】様々な本プトロン移動塩の導電率の比較であり、ギ酸エチルアンモニウムEAFmの周囲温度での値が、記録にある最も高い導電率の非プロトン性イオン性液体であるEMIBF4のそれと同じであることを示している。
【図5】酸/塩基系、α−ピコリン+トリフルオロ酢酸において、組成物の変更に対して沸点その他の熱遷移温度をプロットしたものである。
【図6】本発明の2種の液体の導電率、既知の全てのリチウム塩溶液の中で最も導電率の高い、塩化リチウム溶液の最も伝導性の高い溶液、標準的なリン酸燃料電池電解質、最後に既知のイオン性導体の中で最も導電率の高い4M水性H2SO4の導電率の比較である。
【図7】広範囲の温度にわたって試験する燃料電池電解質用U電池の概略図である。
【図8】図8(a)は、電解質がEAN、DMAN、又はMANであるときの性能と比較した、電池中の電解質が標準的なリン酸(水4重量%を含む)であるときに記録された開回路電位である。図8(b)は、(a)部の開回路電位を与える電池中に流れる短絡電流である。
【図9】図9(a)は、同じ水素流量を用いて、電解質がリン酸二水素エチルアンモニウム又は硫酸水素エチルアンモニウムであるときの性能と比較された、電池中の電解質が標準的なリン酸(水4重量%)であるときに記録された開回路電位の、対温度プロットである。 図9(b)は、(a)部の開回路電位を与える電池に流れる短絡電流の対温度プロットである。
【図10】不揮発性(弱)塩基であるイミダゾール4重量%をEAN電解質に加えたときに電池Aを流れる短絡電流の増加を示す電流対温度プロットであり、比較は電解質としてEANと96%のH3PO4を含む電池で行った。
【図11(a)】不揮発性(弱)塩基であるイミダゾール4重量%を硫酸水素エチルアンモニウム電解質に加えたときに電池Bを流れる短絡電流の増加を示す電流対温度プロットであり、比較は電解質としてドープしていない電解質と96%のH3PO4を含む電池の性能について行った。
【図11(b)】電解質が硫酸水素エチルアンモニウムEAHSO4及び弱塩基イミダゾール4重量%でドープしたEAHSO4であるときの性能と比較された、電池中の電解質が標準的な96%リン酸H3PO4であったときに記録された開回路電位対温度である。
【図A1】弱く分極することの可能なアニオンの非プロトン性塩についてのプロットに対するプロトン性ILのガラス転移温度のグラフである。
【図A2】図A2(a)は、様々なプロトン性及び非プロトン性イオン性液体の流動性を他の記載された溶液と比較したアレニウスプロットである。 図A2(b)は、LiCl水溶液と比較した、プロトン性及び非プロトン性液体の伝導性の一組のアレニウスプロットである。
【図A3】図A3(a)は、様々なプロトン性及び非プロトン性液体の流動性に対する等価導電率の関係をプロットしたものである。 図A3(b)は、流動性がガラス状の値である10−11ポイズ(無機網目ガラスでは10−13p)に達する温度に対して等価導電率の温度依存性を示す、Tgで目盛ったアレニウスプロットである。
【図A4】ジアニオン性プロトン性IL、通常のプロトン性IL、及び更に示された混合物の比導電率をプロットしたものである。
【図B2】置換された硝酸アンモニウムの液体及び結晶状態における伝導性を示す図である。
【図B3】固体状態と溶融相転移の相対的強度を示す、DMAN及びMANについての一組のDTAアップスキャンである。
【図B4】6モルH2O/Li+の濃度のLiCl水溶液と比較した、NH4HF2(Tmelt=125℃)のイオン性(プロトン性)導電率の温度依存性をプロットしたものである。
【図B5】100℃、裸の白金ワイヤ電極を用いた[EtNH3][NO3](EAN)と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B6】裸の白金ワイヤ電極を用いた[Me2NH2][HF2](DMAHF2)と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B7】図B7(a)は、PTFE燃料電池の展開断面図である。図B7(b)は、図7(a)の電池の正面立面図である。
【図B8】100℃で、リン酸用に設計したガス拡散電極での[Me2NH2][HF2](DMAHF2)と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B9】100℃で、リン酸用に設計したガス拡散電極での[EtNH3][NO3](EAN)及び[Me2NH2][HF2]と85%リン酸とのI−V曲線比較のプロットである。
【図B10】25℃で、リン酸用に設計したガス拡散電極での[Me2NH2][NO3](DMAN)のI−V曲線のプロットである。
【図C1】古典的ワルデン則及びそこからの偏差に基づくイオン性液体の分類図である。
【図C2】ガラス温度(Tg)、失透温度(Tc)及び液状温度(Tl)(左走査)及び沸騰温度(Tb)(右走査)を特徴付けるための一組の示差熱分析走査図である。
【図C3】α−ピコリン+トリフルオロ酢酸系について、ガラス温度(白四角)、失透温度(黒菱形)、液状温度又は凝固点(白三角)及び1気圧での沸点(黒丸)をプロットしたものである。
【図C4】同じ塩基α−ピコリンと、水溶液中で求めたpKa値で示される異なる強度のプロトン性酸(凡例参照)との二成分系における沸点(C3の説明を参照のこと)をプロットしたものである。
【図C5】強塩基(n−プロピルアミン)とさまざまな酸の系における沸点の最大値のプロットである。
【図C6】さまざまなプロトン移動イオン性液体の比導電率のアレニウスプロットであり、伝導性の挙動は次の図で見られる粘度の挙動と全く対照的であることを示す。
【図C7】図C5のイオン性液体の粘度のアレニウスプロットであり、最も強い酸から形成されたILが最も粘度が高いことを示す。
【図C8】超沸騰点(1:1組成物で求めた)と、ブレンステッド酸成分とそれぞれのイオン性液体の塩基の水溶液pKa値の差との相関をプロットしたものである。
【図C9】凡例に示すように、この研究で得た様々なイオン性液体の一組のワルデンプロットであり、次の図を構成するのに用いられる「理想的な」ワルデン挙動からの偏差を定義するために、log(1/η)=1での縦線が用いられる。
【図C10】ブレンステッド酸成分とそれぞれのイオン性液体の塩基について、ΔpKa値に対してプロットしたイオン性液体の「理想的な」ワルデン挙動からの偏差をグラフに示したものである。
【図C11】酸と塩基を組み合わせたpKa値とガラス転移温度Tgは相関性が悪いことを示すグラフである。
【図C12】ガーニー(Gurney)に従う酸共役塩基対上のプロトンについての自由エネルギーレベルGを示す図表である。
【図C13】ガラス温度が最大になる(図C3参照)化学量論的組成物で導電率の最小値を示し、イオン濃度の減少が支配的になるまで、酸及び塩基に富む組成物中で実現された高い導電率を示す、2対の酸−塩基対の二成分溶液についての導電率等温線の一組のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2個の電極と、少なくとも1種のプロトン移動塩を含む少なくとも1種の構成成分を有する電解質とを有する燃料電池。
【請求項2】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が硝酸エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が硝酸ジメチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩がギ酸エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、室温(25℃)で安定な液体である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、室温(25℃)で少なくとも実質上10mScm−1の導電率を有する、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、室温(25℃)で少なくとも実質上30mScm−1の導電率を有する、請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
少なくとも2個の電極と、少なくとも1種のイオン性液体を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項9】
前記イオン性液体が、
(a)ギ酸エチルアンモニウム、
(b)硝酸ジメチルアンモニウム、
(c)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(d)フッ化水素エチルアンモニウム、
(e)硝酸メチルアンモニウム、
(f)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(g)硝酸エチルアンモニウム、
(h)フッ化水素メチルアンモニウム、
(i)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(j)エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(k)トリフルオロ酢酸エチルアンモニウム、
(l)硝酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(m)ギ酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(n)ヒドロキシエチルアンモニウムBF4、
(o)ヒドロキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(p)硝酸メトキシプロピルアンモニウム、
(q)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(r)リン酸二水素エチルアンモニウム、
(s)硫酸水素エチルアンモニウム
の1種又は複数からなる群から選択される、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記プロトン移動塩が中性プロトン移動塩及び酸プロトン移動塩の少なくとも1種である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記中性プロトン移動塩がイオンHSO4−及びH2PO4−の少なくとも1種を有する、請求項10に記載の燃料電池。
【請求項12】
少なくとも前記電解質の構成成分が重硫酸塩である、請求項10に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記電解質が、塩を形成する酸と塩基の中間のpK3値を有する不揮発性塩基である副構成成分を更に含む、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記少なくとも1種の構成成分が、不揮発性塩基をドープした硫酸水素エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記塩基がイミダゾールである、請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記少なくとも1種の構成成分が、不揮発性塩基をドープした硝酸エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項17】
前記塩基がイミダゾールである、請求項16に記載の燃料電池。
【請求項18】
前記電解質が実質上溶媒を含まない、請求項5に記載の燃料電池。
【請求項19】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が中性塩である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項20】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、ジアニオン性イオン性液体と及び通常のイオン性液体の1種である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項21】
(a)少なくとも1対の電極を提供するステップと、
(b)電解質を提供するステップであって、(i)酸HAを塩基Bと組み合わせて、酸から塩基へのプロトン移動によってイオン性液体電解質を形成するステップを含むステップと
を含む、燃料電池の製造方法。
【請求項22】
前記酸Hがエチルアミンであり、前記塩基がHNO3であり、前記電解質が硝酸エチルアンモニウムである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)少なくとも1対の電極を提供するステップと、
(b)少なくとも(1)ギ酸エチルアンモニウム、
(2)硝酸ジメチルアンモニウム、
(3)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(4)フッ化水素エチルアンモニウム、
(5)硝酸メチルアンモニウム、
(6)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(7)硝酸エチルアンモニウム、
(8)フッ化水素メチルアンモニウム、
(9)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(10)エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(11)トリフルオロ酢酸エチルアンモニウム、
(12)硝酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(13)ギ酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(14)ヒドロキシエチルアンモニウムBF4、
(15)ヒドロキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(16)硝酸メトキシプロピルアンモニウム、
(17)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(18)リン酸二水素エチルアンモニウム、及び
(19)硫酸水素エチルアンモニウム
の1種又は複数を含む群から選択される構成成分を有する電解質を提供するステップと
を含む、燃料電池の製造方法。
【請求項24】
少なくとも2個の電極と、非プロトン性イオン性液体及び酸を有するプロトン性成分を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項25】
少なくとも2個の電極と、[AHA]の形のジアニオンを含む電解質とを有し、Aはアニオンを表し、その対は水素[H]結合によって一緒に保持される、燃料電池。
【請求項26】
少なくとも2個の電極と、少なくとも部分的に回転子相塩を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項27】
前記電解質が、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ジメチルアンモニウム、及び硝酸メチルアンモニウムからなる群から選択される、請求項26に記載の燃料電池。
【請求項28】
少なくとも2個の電極と、少なくとも部分的に固体NH4HF2を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項29】
少なくとも2個の電極と、少なくとも部分的に[Me2NH2][HF2]を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項30】
少なくとも2個の電極と、非腐食性プロトン移動イオン性液体を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項31】
少なくとも2個の電極と電解質とを有する燃料電池であって、H2(g)/電解質/O2(g)型であり、その電解質の少なくとも1種の構成成分が、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ジメチルアンモニウム及び硝酸メチルアンモニウムからなる群から選択される、燃料電池。
【請求項32】
少なくとも2個の電極と、中性イオン性液体を含む少なくとも1種の構成成分を有する電解質とを有する燃料電池。
【請求項33】
少なくとも2個の電極と1種の電解質とを有し、その少なくとも1種の成分が化学量論XAHAの液体酸塩であり、XAが硝酸ジメチルアンモニウムである、燃料電池。
【請求項34】
前記HAがHNO3である、請求項33に記載の燃料電池。
【請求項1】
少なくとも2個の電極と、少なくとも1種のプロトン移動塩を含む少なくとも1種の構成成分を有する電解質とを有する燃料電池。
【請求項2】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が硝酸エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項3】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が硝酸ジメチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項4】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩がギ酸エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、室温(25℃)で安定な液体である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、室温(25℃)で少なくとも実質上10mScm−1の導電率を有する、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、室温(25℃)で少なくとも実質上30mScm−1の導電率を有する、請求項6に記載の燃料電池。
【請求項8】
少なくとも2個の電極と、少なくとも1種のイオン性液体を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項9】
前記イオン性液体が、
(a)ギ酸エチルアンモニウム、
(b)硝酸ジメチルアンモニウム、
(c)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(d)フッ化水素エチルアンモニウム、
(e)硝酸メチルアンモニウム、
(f)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(g)硝酸エチルアンモニウム、
(h)フッ化水素メチルアンモニウム、
(i)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(j)エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(k)トリフルオロ酢酸エチルアンモニウム、
(l)硝酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(m)ギ酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(n)ヒドロキシエチルアンモニウムBF4、
(o)ヒドロキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(p)硝酸メトキシプロピルアンモニウム、
(q)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(r)リン酸二水素エチルアンモニウム、
(s)硫酸水素エチルアンモニウム
の1種又は複数からなる群から選択される、請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記プロトン移動塩が中性プロトン移動塩及び酸プロトン移動塩の少なくとも1種である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項11】
前記中性プロトン移動塩がイオンHSO4−及びH2PO4−の少なくとも1種を有する、請求項10に記載の燃料電池。
【請求項12】
少なくとも前記電解質の構成成分が重硫酸塩である、請求項10に記載の燃料電池。
【請求項13】
前記電解質が、塩を形成する酸と塩基の中間のpK3値を有する不揮発性塩基である副構成成分を更に含む、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記少なくとも1種の構成成分が、不揮発性塩基をドープした硫酸水素エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記塩基がイミダゾールである、請求項14に記載の燃料電池。
【請求項16】
前記少なくとも1種の構成成分が、不揮発性塩基をドープした硝酸エチルアンモニウムである、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項17】
前記塩基がイミダゾールである、請求項16に記載の燃料電池。
【請求項18】
前記電解質が実質上溶媒を含まない、請求項5に記載の燃料電池。
【請求項19】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が中性塩である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項20】
前記少なくとも1種のプロトン移動塩が、ジアニオン性イオン性液体と及び通常のイオン性液体の1種である、請求項1に記載の燃料電池。
【請求項21】
(a)少なくとも1対の電極を提供するステップと、
(b)電解質を提供するステップであって、(i)酸HAを塩基Bと組み合わせて、酸から塩基へのプロトン移動によってイオン性液体電解質を形成するステップを含むステップと
を含む、燃料電池の製造方法。
【請求項22】
前記酸Hがエチルアミンであり、前記塩基がHNO3であり、前記電解質が硝酸エチルアンモニウムである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
(a)少なくとも1対の電極を提供するステップと、
(b)少なくとも(1)ギ酸エチルアンモニウム、
(2)硝酸ジメチルアンモニウム、
(3)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(4)フッ化水素エチルアンモニウム、
(5)硝酸メチルアンモニウム、
(6)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(7)硝酸エチルアンモニウム、
(8)フッ化水素メチルアンモニウム、
(9)フッ化水素ジメチルアンモニウム、
(10)エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(11)トリフルオロ酢酸エチルアンモニウム、
(12)硝酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(13)ギ酸ヒドロキシエチルアンモニウム、
(14)ヒドロキシエチルアンモニウムBF4、
(15)ヒドロキシエチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(16)硝酸メトキシプロピルアンモニウム、
(17)ギ酸メトキシプロピルアンモニウム、
(18)リン酸二水素エチルアンモニウム、及び
(19)硫酸水素エチルアンモニウム
の1種又は複数を含む群から選択される構成成分を有する電解質を提供するステップと
を含む、燃料電池の製造方法。
【請求項24】
少なくとも2個の電極と、非プロトン性イオン性液体及び酸を有するプロトン性成分を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項25】
少なくとも2個の電極と、[AHA]の形のジアニオンを含む電解質とを有し、Aはアニオンを表し、その対は水素[H]結合によって一緒に保持される、燃料電池。
【請求項26】
少なくとも2個の電極と、少なくとも部分的に回転子相塩を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項27】
前記電解質が、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ジメチルアンモニウム、及び硝酸メチルアンモニウムからなる群から選択される、請求項26に記載の燃料電池。
【請求項28】
少なくとも2個の電極と、少なくとも部分的に固体NH4HF2を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項29】
少なくとも2個の電極と、少なくとも部分的に[Me2NH2][HF2]を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項30】
少なくとも2個の電極と、非腐食性プロトン移動イオン性液体を含む電解質とを有する燃料電池。
【請求項31】
少なくとも2個の電極と電解質とを有する燃料電池であって、H2(g)/電解質/O2(g)型であり、その電解質の少なくとも1種の構成成分が、硝酸エチルアンモニウム、硝酸ジメチルアンモニウム及び硝酸メチルアンモニウムからなる群から選択される、燃料電池。
【請求項32】
少なくとも2個の電極と、中性イオン性液体を含む少なくとも1種の構成成分を有する電解質とを有する燃料電池。
【請求項33】
少なくとも2個の電極と1種の電解質とを有し、その少なくとも1種の成分が化学量論XAHAの液体酸塩であり、XAが硝酸ジメチルアンモニウムである、燃料電池。
【請求項34】
前記HAがHNO3である、請求項33に記載の燃料電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図A1】
【図A2】
【図A3】
【図A4】
【図B2】
【図B3】
【図B4】
【図B5】
【図B6】
【図B7】
【図B8】
【図B9】
【図B10】
【図C1】
【図C2】
【図C3】
【図C4】
【図C5】
【図C6】
【図C7】
【図C8】
【図C9】
【図C10】
【図C11】
【図C12】
【図C13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11(a)】
【図11(b)】
【図A1】
【図A2】
【図A3】
【図A4】
【図B2】
【図B3】
【図B4】
【図B5】
【図B6】
【図B7】
【図B8】
【図B9】
【図B10】
【図C1】
【図C2】
【図C3】
【図C4】
【図C5】
【図C6】
【図C7】
【図C8】
【図C9】
【図C10】
【図C11】
【図C12】
【図C13】
【公表番号】特表2007−500429(P2007−500429A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532544(P2006−532544)
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013719
【国際公開番号】WO2004/114445
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505405641)アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月3日(2004.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/013719
【国際公開番号】WO2004/114445
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(505405641)アリゾナ ボード オブ リージェンツ ア ボディー コーポレート アクティング オン ビハーフ オブ アリゾナ ステイト ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】
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