説明

燃料電池ケース

【課題】簡単な構成で、水素の換気性能を向上させることを目的とする。
【解決手段】燃料電池ケース10であって、燃料電池スタックを収納するための収納部100と、前記収納部100に接続されて、前記収納部100の上方に伸びるダクト200であって、前記収納部内のガスを外部に排気するための排気路201と、前記収納部内に外気を取り込むための吸気路202と、前記ダクトの前記収納部との接続端と反対側の端部203に形成され、前記排気路と前記吸気路とを連通する連通孔205と、を備えるダクト200と、前記ダクトの前記収納部100との接続端と反対側の端部203に配置される水素透過膜220と、前記排気路内のガスを前記水素透過膜方向に送風するためのファン210と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックを収納するケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池スタックを車両等に搭載する場合、一般に、燃料電池ケースに収納して搭載する。燃料電池ケースとして、燃料電池スタックから漏れる水素などを換気するための水素透過膜を燃料電池ケース上面に備えるものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−367647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両は様々な環境で使用される。例えば、車両が水の浸水した道路を走った場合、燃料電池ケースの水素透過膜に跳ね水がかかる場合がある。また、車両が冠水した道路を走った場合、水素透過膜まで水につかる場合がある。このような場合、水素透過膜が詰まり、換気性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも1つを解決し、簡単な構成で、燃料電池スタックの換気性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池ケースであって、燃料電池スタックを収納するための収納部と、前記収納部に接続されて、前記収納部の上方に伸びるダクトであって、前記収納部内のガスを外部に排気するための排気路と、前記収納部内に外気を取り込むための吸気路と、前記ダクトの前記収納部との接続端と反対側の端部に形成され、前記排気路と前記吸気路とを連通する連通孔と、を備えるダクトと、前記ダクトの前記収納部との接続端と反対側の端部に配置される水素透過膜と、前記排気路内のガスを前記水素透過膜方向に送風するためのファンと、を備える、燃料電池ケース。
この適用例によれば、燃料電池ケースは、排気路と、吸気路と、連通孔と、ファンを備えているので、ダクト内にガスの流れを作ることが出来る。この流れに燃料電池ケース内の水素を乗せて、水素透過膜に導くことが可能となる。そのため、簡単な構成で、水素の換気性能を向上させることが可能となる。
【0008】
本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池ケースの他、 燃料電池ケースの換気装置等、様々な形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施例に係る燃料電池ケースの断面を模式的に示す説明図である。
【図2】第2の実施例に係る燃料電池ケースの断面を模式的に示す説明図である。
【図3】第3の実施例に係る燃料電池ケースを上方から見た説明図である。
【図4】第4の実施例に係る燃料電池ケースの断面を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施例]
図1は、第1の実施例に係る燃料電池ケースの断面を模式的に示す説明図である。燃料電池ケース10は、燃料電池スタック収納部100と、ダクト200とを備える。燃料電池スタック収納部100は、略直方体形状をした箱であり、燃料電池スタック300より少し大きく作られている。
【0011】
ダクト200は、燃料電池スタック収納部100の上部に取り付けられ、燃料電池スタック収納部100の上方に伸びている。ダクト200の内部は、排気路201と吸気路202に2分割されている。ダクト200の、燃料電池スタック収納部100との反対側の端部(以下「端部203」と呼ぶ。)には、排気路201と吸気路202とを連通する連通孔205が形成されている。
【0012】
ダクト200の排気路201と、燃料電池スタック収納部100との間には、ファン210と、モータ215が配置されている。本実施例では、ファン210は、排気路201と、燃料電池スタック収納部100との間に配置されているが、排気路201上であればどこに配置されていてもよい。燃料電池ケース10は、ファン210を用いて、排気路201中の空気を端部203方向に送風できればよい。
【0013】
ダクト200の端部203には、水素透過膜220が配置されている。水素透過膜220は、水素は通すが、液水などは通さない素材で構成されている。
【0014】
以下、燃料電池ケース10の動作について説明する。モータ215がファン210を回すと、ファン210は、ダクト200近傍の水素を空気と共に吸い込んで、排気路201に取り込む。吸い込まれた水素と空気は、ファンにより、排気路201の中を、端部203まで送風される。端部203において、水素は、水素透過膜220を通ってダクト200の外に排気される。一方、ファン210により、空気が排気路201側に吸い込まれているため、燃料電池スタック収納部100内部の圧力は、下がっている。そのため、吸気路202の空気は燃料電池スタック収納部100に移動し、吸気路202内の圧力が下がる。そのため、端部203近傍の空気は、連通孔205を通り、吸気路202に移動する。すなわち、本実施例では、燃料電池スタック収納部100→ファン210→排気路201→端部203→連通孔205→吸気路202→燃料電池スタック収納部100、という循環する空気の流れ400が形成される。そして、燃料電池スタック収納部100内の水素は、空気と共に流れ400に沿って流れ、端部203に達すると、水素透過膜220を通ってダクト200の外部に排出される。
【0015】
以上、本実施例によれば、排気路201、吸気路202を通る一方通行の空気の流れ400を作り、燃料電池スタック収納部100の水素を、積極的に水素透過膜220に導き、水素の排気を行っている。そのため、水素の換気性能を向上させることが可能となる。また、ダクト200は、燃料電池スタック収納部100の上方に伸びているので、水素透過膜220の跳ね水が掛かりにくく、冠水時にも水素透過膜220まで水に浸かることが起こりにくい。その結果、水素透過膜220を詰まりにくくすることが可能である。なお、本実施例では、ファン210を回すのに必要な動力は、極めて少なく、例えば1W程度の小パワーであっても十分な空気の流れを作り出すことが可能である。そのため、ファン210の駆動は様々なものを用いて行うことが可能である。
【0016】
[第2の実施例]
図2は、第2の実施例に係る燃料電池ケースの断面を模式的に示す説明図である。第2の実施例では、ファン210、モータ215に代わりに、燃料電池スタック300の状況を観察するためのセルモニタ500を冷却するためのファン510を用いている。このように、独自のファン210やモータ215(第1の実施例)を使うのではなく、他の用途に利用しているファンやモータを利用してもよい。
【0017】
[第3の実施例]
図3は、第3の実施例に係る燃料電池ケースを上方から見た説明図である。第3の実施例では、ファン210の代わりに、車風速により回転するタービン230を備えている。このタービン230により、排気路201、吸気路202を通る一方通行の空気の流れ400を作る。この実施例によれば、車両が移動すれば車風速が発生するので、独自のモータを備える必要がない。
【0018】
[第4の実施例]
図4は、第4の実施例に係る燃料電池ケースの断面を模式的に示す説明図である。第4の実施例では、ファン210の代わりに、燃料電池スタック300を冷却するための冷却水の流れにより回転するタービン240を備えている。タービン240の一方の羽根車241は、排気路201の内部に配置され、他方の羽根車242は、燃料電池スタック300を冷却するための冷媒配管310内に配置されている。この実施例によれば、独自のモータを備える必要がなく、また、燃料電池を搭載した車両が移動していなくても、水素の排気を行うことが可能となる。なお、本実施例では、他方の羽根車242を冷媒配管310内に配置しているが、燃料ガスや酸化ガスを供給、排出するための配管内に配置してもよい。
【0019】
以上、いくつかの実施例に基づいて本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【符号の説明】
【0020】
10…燃料電池ケース
100…燃料電池スタック収納部
200…ダクト
201…排気路
202…吸気路
203…端部
205…連通孔
210…ファン
215…モータ
220…水素透過膜
230、240…タービン
241、242…羽根車
300…燃料電池スタック
310…冷媒配管
400…流れ
500…セルモニタ
510…ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池ケースであって、
燃料電池スタックを収納するための収納部と、
前記収納部に接続されて、前記収納部の上方に伸びるダクトであって、
前記収納部内のガスを外部に排気するための排気路と、
前記収納部内に外気を取り込むための吸気路と、
前記ダクトの前記収納部との接続端と反対側の端部に形成され、前記排気路と前記吸気路とを連通する連通孔と、
を備えるダクトと、
前記ダクトの前記収納部との接続端と反対側の端部に配置される水素透過膜と、
前記排気路内のガスを前記水素透過膜方向に送風するためのファンと、
を備える、燃料電池ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−182468(P2010−182468A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23302(P2009−23302)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】