説明

燃焼機関のガス交換弁

【課題】本発明は、弁棒と弁体とを備えたポペット弁を有する燃焼機関、特にディーゼル燃焼機関のガス交換弁に関する。
【解決手段】本発明は、弁棒は弁棒ガイドの貫通孔において直線的に移動可能にガイドされ、弁体の弁座面は弁座リングと協働しており、それによって閉じた状態では弁座面は弁座リングを押し、開いた状態では弁座面は弁座リングから持ち上げられている。本発明に従えば、弁棒と弁棒ガイドの貫通孔との間の間隙を密閉するために、温度耐性を有する材料たとえば金属製の材料又はセラミック製の材料から成る少なくとも1つのスライディングリングが、弁棒のノッチ又は弁棒ガイドのノッチに係合しており、1つ又はそれぞれのスライディングリングの厚みは、各スライディングリングが係合するノッチの幅よりも小さく、その結果、弁棒が動く際に潤滑剤が所定のポンプ作用によって、それぞれのスライディングリングを通過する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のおいて書きに記載の燃焼機関、特にディーゼル燃焼機関のガス交換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼機関には、多数のガス交換弁が設けられている。ここで、燃焼機関のガス交換弁とは、特にガス交換弁を通過して燃焼機関のシリンダー内に過給空気を取り込み可能とされるか、又は燃焼機関のシリンダーから当該交換弁を通過して排ガスを排気可能とされるガス交換弁を指している。
【0003】
従来から知られているガス交換弁には、弁棒と弁体とを備え、並進運動で移動可能なポペット弁が設けられている。ポペット弁の弁棒は、弁棒ガイドの貫通孔において直線的に移動可能にガイドされるか、又は軸受けされている。ポペット弁の弁体の弁座面は、弁座リングと協働しているので、ガス交換弁が閉じた状態では弁座リングを押圧しており、ガス交換弁が開いた状態では弁座リングから持ち上げられている。
【0004】
従来から知られているガス交換弁では、弁棒と弁棒ガイドの貫通孔との間の間隙が、弾性材料から成る少なくとも1つのパッキンリングを備えた弁棒パッキンを介して密閉されている。その際、弁棒パッキンは、弁の磨耗を低減し、且つ、弁棒と弁棒ガイドとの間における滑動を可能にするために、一定量の潤滑剤を送り込む必要がある。
【0005】
弁棒パッキンによって送り込まれる潤滑剤が少なすぎる場合には、潤滑剤が十分に作用しないことに起因して好ましくない混合摩擦が生じることがあり、当該混合摩擦によりポペット弁が動かなくことがある。これに対して、過剰な潤滑剤が弁棒パッキンを介して送り込まれた場合には、燃焼機関の排出値が上昇し、ポペット弁が炭化することがある。このため、上記の欠点を回避するガス交換弁が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−049307号公報
【特許文献2】特開平08−028350号公報
【特許文献3】特開平09−125922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決すべき課題は、燃焼機関、特にディーゼル燃焼機関の新式のガス交換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、請求項1に記載のガス交換弁によって解決される。本発明によれば、弁棒と弁棒ガイドの貫通孔との間の間隙を密閉するために、例えば金属製の材料やセラミック製の材料のような耐熱性材料から成る少なくとも1つのスライディングリングが、弁棒のノッチ又は弁棒ガイドのノッチに係合しており、1つ又はそれぞれのスライディングリングの厚みは、各スライディングリングが係合するノッチの幅よりも小さく、その結果、弁棒が動く際に、潤滑剤が所定のポンプ作用によってそれぞれのスライディングリングを通過する。
【0009】
本発明に係るガス交換弁においては、弁棒と弁棒ガイドの貫通孔との間の間隙は、例えば金属材料又はセラミック材料のような耐熱性材料から成る少なくとも1つのスライディングリングによって密閉される。当該スライディングリングは、弁棒のノッチ又は弁棒ガイドのノッチに係合し、当該係合は1つ又はそれぞれのスライディングリングのそれぞれの厚みが、各スライディングリングが係合するノッチの幅よりも小さくなるように行われる。これにより、弁棒が弁棒ガイドの貫通孔で動くと、潤滑剤のために所定のポンプ作用が実現し、その結果、一定量の潤滑剤が、1つ又はそれぞれのスライディングリングによって形成される弁棒パッキンを常に正確に通過することができる。
【0010】
これにより潤滑剤が弁棒と弁棒ガイドとの間で十分に作用することが常に保証される。他方で、過剰な潤滑剤が弁棒パッキンを介して送り込まれることが防止される。
【0011】
本発明の好ましいさらなる形態は、従属請求項と以下の詳細な説明からもたらされる。本発明の実施例は図に基づいて以下に詳述されるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。図に示されるのは、以下のとおりである。
[付記項1]
燃焼機関、特にディーゼル燃焼機関のガス交換弁であって、弁棒と弁体とを備えたポペット弁を有しており、前記弁棒は弁棒ガイドの貫通孔において直線的に移動可能にガイドされ、前記弁体の弁座面は弁座リングと協働しており、それによって閉じた状態では前記弁座面は前記弁座リングを押し、開いた状態では前記弁座面は前記弁座リングから持ち上げられているガス交換弁において、
前記弁棒(11)と前記弁棒ガイド(10)の前記貫通孔(12)との間の間隙(13)を密閉するために、例えば金属製の材料又はセラミック製の材料のような温度耐性を有する材料から成る少なくとも1つのスライディングリング(15)が、前記弁棒(11)のノッチ(16)又は前記弁棒ガイドのノッチに係合しており、前記スライディングリング(15)又は個々のスライディングリング(15)の厚みは、それぞれの前記スライディングリング(15)が係合する前記ノッチ(16)の幅よりも小さく、その結果、前記弁棒(10)が動く際に潤滑剤が所定のポンプ作用によって、それぞれの前記スライディングリング(15)を通過することを特徴とするガス交換弁。
[付記項2]
前記弁棒(11)の外径が、前記弁棒ガイド(10)の前記貫通孔(12)の内径よりも小さいことを特徴とする付記項1に記載のガス交換弁。
[付記項3]
前記スライディングリング(15)又は個々のスライディングリング(15)が前記弁棒(11)のノッチ(16)に係合するとき、それぞれの前記スライディングリング(15)の外径は前記弁棒ガイド(10)の前記貫通孔(12)の内径に相当し、それぞれの前記スライディングリング(15)の内径はそれぞれの前記ノッチ(16)のベース直径よりも大きいことを特徴とする付記項1又は付記項2に記載のガス交換弁。
[付記項4]
前記スライディングリング又は個々のスライディングリングが前記弁棒ガイドのノッチに係合するとき、それぞれの前記スライディングリングの内径は前記弁棒の外径に相当し、それぞれの前記スライディングリングの外径はそれぞれの前記ノッチのベース直径よりも小さいことを特徴とする付記項1又は付記項2に記載のガス交換弁。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】燃焼機関、特にディーゼル燃焼機関の本発明に係るガス交換弁の断面図である。
【図2】異なる状況下での図1の断面図の詳細である。
【図3】異なる状況下での図1の断面図の詳細である。
【図4】異なる状況下での図1の断面図の詳細である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、燃焼機関の本発明に係るガス交換弁の弁棒ガイド10及び弁棒11の領域における断面図であり、弁棒11は弁棒ガイド10の貫通孔12において直線的に移動可能にガイドされるか、又は軸受けされている。
【0014】
弁棒11には、図示しない弁体が接触しており、弁棒と弁体とが一緒になってガス交換弁のポペット弁を形成している。ポペット弁の弁体の弁座面は、同様に図示しない弁座リングと協働しているので、閉じた状態では弁座リングを押圧しており、開いた状態では弁座リングから持ち上げられている。
【0015】
図3及び図4を参照すると、弁棒11の外径は弁棒ガイド10の貫通孔12の内径よりも小さいので、弁棒11と弁棒ガイド10との間には間隙13が形成されている。
【0016】
弁棒11と弁棒ガイド10との間の間隙13は、弁棒パッキン14を用いて密閉されている。図1を参照すると、弁棒11の軸方向に縦に並列配置され、且つそれぞれが弁棒11の各ノッチ16に係合された3つのスライディングリングによって、弁棒パッキン14が形成されている。図2〜図4は、弁棒11のノッチ16に係合しているスライディングリング15の領域における図1の詳細図である。
【0017】
上述のように、図2〜図4の実施例では、各スライディングリング15が弁棒11のノッチ16に係合している。すなわちスライディングリング15の厚み又は軸方向の延伸は、ノッチ幅又はノッチ16の軸方向の延伸よりも小さくなっている。図2〜図4に表わす弁棒ガイド10に対する弁棒11の相対的な動きに応じて、ノッチ16に対するスライディングリング15の相対的位置が変化するので、所定のポンプ作用が潤滑剤に働き、一定量の潤滑剤が各スライディングリング15を通過可能となる。
【0018】
図2〜図4に表わすように、スライディングリング15が弁棒11のノッチ16に係合した場合に、挿入された状態においてはスライディングリング15の外径が弁棒ガイド10の貫通孔12の内径に相当するので、スライディングリング15は弁棒ガイド10の貫通孔13に常に当接している。一方、スライディングリングの内径が各ノッチ16のベース直径よりも大きいので、図2〜図4に表わすようにスライディングリング15と各ノッチ16との間には間隙が形成され、潤滑剤がポンプ作用によって間隙を通って誘導される。
【0019】
各ノッチ16の幅とスライディングリング15の厚みとの差、及びスライディングリング15の内径と各ノッチ16のベース直径との差によって、各スライディングリング15を通過する潤滑剤の量を一定に調節することができる。
【0020】
本発明に関する重要なことは、スライディングリング15が、エラストマ材料ではなく、例えば金属材料又はセラミック材料のような耐熱性材料から成ること、すなわち非エラストマ材料で構成されていることである。そのため、各スライディングリング15は耐熱性を有しているので、シリンダーにすぐ近接して、すなわち燃焼機関の高温の燃焼ガスの直近で用いられることができる。
【0021】
1つ又は複数のスライディングリングを弁棒ガイドの上部領域に設置することができることは言うまでもない。
【0022】
図示された実施例とは異なって、1つ又は各スライディングリングが弁棒ガイドのノッチに係合している場合もある。この場合にも、1つ又は各スライディングリングの厚みは、各ノッチの幅よりも小さい。しかしながら、図示された実施例とは異なって、この場合には、各スライディングリングの内径が弁棒の外径に相当するので、スライディングリングは挿入された状態では弁棒に常に当接する。この場合には、各スライディングリングの外径は、弁棒ガイドの各ノッチのベース直径よりも小さい。
【0023】
従って、本発明に係るガス交換弁では、弁棒ガイドの中の弁棒の潤滑は、例えば金属材料又はセラミック材料のような耐熱性材料から成る耐熱性を有する少なくとも1つのスライディングリングを通過可能な潤滑剤を用いて行われ、1つ又は各スライディングリングは、弁棒又は弁棒ガイドのノッチに係合しており、各スライディングリングの厚み又は軸方向の延伸は、各スライディングリングが係合しているノッチの幅又は軸方向の延伸よりも小さくなっている。
【0024】
それにより、弁棒ガイド10において弁棒11が軸方向に動くとき、それぞれのノッチ内でスライディングリング15が軸方向に往復運動することができ、それによって所定のポンプ作用が潤滑剤に生じるので、正確に一定量の潤滑剤を各スライディングリング15を通過させることができる。
【符号の説明】
【0025】
10 弁棒ガイド
11 弁棒
12 貫通孔
13 間隙
14 弁棒パッキン
15 スライディングリング
16 ノッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機関のガス交換弁であって、弁棒と弁体とを備えたポペット弁を有しており、前記弁棒は弁棒ガイドの貫通孔において直線的に移動可能にガイドされ、前記弁体の弁座面は弁座リングと協働しており、それによって閉じた状態では前記弁座面は前記弁座リングを押し、開いた状態では前記弁座面は前記弁座リングから持ち上げられているガス交換弁において、
前記弁棒(11)と前記弁棒ガイド(10)の前記貫通孔(12)との間の間隙(13)を密閉するために、温度耐性を有する材料から成る少なくとも1つのスライディングリング(15)が、前記弁棒(11)のノッチ(16)に係合しており、前記スライディングリング(15)又は個々のスライディングリング(15)の厚みは、それぞれの前記スライディングリング(15)が係合する前記ノッチ(16)の幅よりも小さく、その結果、前記弁棒(10)が動く際に潤滑剤が所定のポンプ作用によって、それぞれの前記スライディングリング(15)を通過し、
前記スライディングリング(15)又は個々のスライディングリング(15)が前記弁棒(11)のノッチ(16)に係合するとき、それぞれの前記スライディングリング(15)の外径は前記弁棒ガイド(10)の前記貫通孔(12)の内径に相当し、それぞれの前記スライディングリング(15)の内径はそれぞれの前記ノッチ(16)のベース直径よりも大きいことを特徴とするガス交換弁。
【請求項2】
前記弁棒(11)の外径が、前記弁棒ガイド(10)の前記貫通孔(12)の内径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のガス交換弁。
【請求項3】
前記燃焼機関が、ディーゼル燃焼機関であることを特徴とする請求項1に記載のガス交換弁。
【請求項4】
前記温度耐性を有する材料が、金属製の材料又はセラミック製の材料であることを特徴とする請求項1に記載のガス交換弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−246932(P2012−246932A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−205485(P2012−205485)
【出願日】平成24年9月19日(2012.9.19)
【分割の表示】特願2008−286970(P2008−286970)の分割
【原出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(500334036)エムアーエヌ・ディーゼル・エスエー (78)