説明

爆薬組成物

【課題】 発破等に使用される産業用爆薬組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の爆薬組成物は、ニトログリセリン、ニトログリコール、ニトロセルロースの混合物を基剤とする爆薬組成物において、前記基剤15〜25重量%、酸化剤50〜75重量%、燃料0.5〜9.0重量%、比重調整剤0.1〜0.4重量%、室温で液体である1種或いは2種以上の可塑剤3.5〜6.0重量%を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発破等に使用される産業用爆薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ニトログリセリン、ニトログリコール、ニトロセルロースを基剤とし、硝酸アンモニウム等の酸化剤、澱粉等の燃料、比重調整剤としての界面活性剤からなる爆薬組成物が、発破等に使用される産業用爆薬組成物として用いられている。
この爆薬組成物には、通常ジニトロトルエン等のニトロ化合物が使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記ジニトロトルエン(実際はジニトロキシレンとの混合物)は、起爆感度を高める鋭感剤の役割を果たすものであって、室温から0℃付近になると粘度が上昇し、更に約0℃で結晶が析出してくる為、約40℃に加温(結晶析出温度約0℃)することにより液体化するため、取り扱い性の向上や加温混合時に均一な混和性を与えるという役割も果たすが、各種の有害データが報告されている化学的毒性を有する物質であるという問題があった。また、その入手性が悪く、さらには混合時に加温しなければならないため、作業効率も悪くなり、危険でもあった。
【0004】
そこで、本発明は、前記問題を解決し、即ちジニトロトルエン等のニトロ化合物に替わる安全性が高く、且つ入手性の良い化合物を代替することにより、同等の爆薬性能を有する爆薬組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記に鑑み提案されたもので、ニトログリセリン、ニトログリコール、ニトロセルロースの混合物を基剤とする爆薬組成物において、前記基剤15〜25重量%、酸化剤50〜75重量%、燃料0.5〜9.0重量%、比重調整剤0.1〜0.4重量%、室温では液体である1種或いは2種以上の可塑剤3.5〜6.0重量%を含有することを特徴とする爆薬組成物に関するものである。
【0006】
また、本発明は、前記爆薬組成物において、酸化剤は主に硝酸アンモニウムであり、燃料は澱粉であり、比重調整剤は非イオン界面活性剤であることを特徴とする爆薬組成物をも提案するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の爆薬組成物は、従来の爆薬組成物におけるジニトロトルエン等のニトロ化合物に代えて少なくとも常温では(より好ましくは−30℃迄の低温に亘り)液体である1種又は2種以上の可塑剤を代替すると共に、各材料の割合を特定したものであり、従来の爆薬組成物と同等の爆薬性能を得ることができ、しかも従来の爆薬組成物よりも取り扱い性に優れ、安全性が高く、製造性が高いという特性を備えるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の爆薬組成物に用いられるニトログリセリン/ニトログリコール/ニトロセルロースの混合物は、基剤であって、以下、ゲルと称する。このゲルは、爆薬組成物に15〜25重量%の割合で含有させる。含有量が15重量%未満であると、爆薬性能が低下し、且つ薬質が堅くなり、製造性(混合性、包装性)が悪くなる。また、含有量が25重量%を越えると、爆薬性能は向上するものの、薬質に粘り気が増し(粘性が高くなり)、製造性が悪くなる。
【0009】
また、本発明の爆薬組成物に用いられる酸化剤としては、硝酸塩又は塩素酸塩又は過塩素酸塩が主に使用され、特に硝酸アンモニウムが好適に用いられる。この酸化剤は、爆薬組成物に50〜75重量%の割合で含有させる。含有量が50重量%未満であると、爆薬性能が低下し、且つ薬質の粘り気が増し(粘性が高くなり)、製造性が悪くなる。また、含有量が75重量%を越えると、爆薬性能が低下し、且つ薬質が堅くなり、製造性が悪くなる。
【0010】
さらに、本発明の爆薬組成物に用いられる燃料は、澱粉や木粉などがあるが、特に澱粉が好適に用いられる。この燃料は、爆薬組成物に0.5〜9.0重量%の割合で含有させる。含有量が0.5重量%未満であると、爆薬性能が低下する。また、含有量が9.0重量%を越えると、爆薬性能と薬質が堅くなり製造性が低下する。
【0011】
また、本発明の爆薬組成物に用いられる比重調整剤は、界面活性剤等であり、特に非イオン界面活性剤が好適に用いられる。この比重調整剤は、爆薬組成物に0.1〜0.4重量%で含有させる。含有量が0.1重量%未満であると、比重調整効果がなく、含有量が0.4重量%を越えると、それ以上の比重調整効果が得られず、無駄となる。比重調整効果(0.1重量%未満)がないと、爆薬性能を得る比重とはならず、薬質が堅くなり、製造性が悪くなる。また、0.4重量%を超えると、薬質が柔らかくなり、製造性が悪くなる。その結果、爆薬性能も、混合性、包装性も悪くなる。
【0012】
そして、本発明の爆薬組成物に用いられる可塑剤は、常温では液体であればよく、さらに−30℃迄の低温に亘り液体であることが好ましい。特に(ジ)アルキルフタレートが好適に用いられる。爆薬組成物に3.5〜6.0重量%の割合で、含有量が3.5重量%未満であると、適正な薬質と比重にならず爆薬性能が確保できず、含有量が6.0重量%を越えると、同様に適正な薬質と比重にならず、爆薬性能が確保できない。
【実施例】
【0013】
次に、実施例及び比較例を示す。
尚、以下の各例に用いた「ゲル(22重量部)」は、ニトログリセリン/ニトログリコール/ニトロセルロース(13重量部/8重量部/1重量部)であり、それらの組成分率は59.1wt%/36.4wt%/4.5wt%である。
【0014】
[実施例1]
ゲル22重量部、硝酸アンモニウム65重量部、硝酸ソーダ9重量部、澱粉4重量部、比重調整剤非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエステル0.2重量%添加し、可塑剤としてフタル酸ジブチル4.5重量%を添加し、実施例1の爆薬剤組成物を得た。
【0015】
[実施例2]
ゲル22重量部、硝酸アンモニウム65重量部、硝酸ソーダ9重量部、澱粉4重量部、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエステル0.2重量%添加し、可塑剤としてフタル酸ジブチルとフタル酸ジエチルの混合比を1:1として4.5重量%を添加し、実施例2の爆薬剤組成物を得た。
【0016】
[比較例1]
ゲル22重量部、硝酸アンモニウム65重量部、硝酸ソーダ9重量部、澱粉4重量部、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエステル0.04重量%、ジニトロトルエン6.0重量%を添加し、比較例1の爆薬剤組成物を得た。
【0017】
[比較例2]
ゲル22重量部、硝酸アンモニウム65重量部、硝酸ソーダ9重量部、澱粉4重量部、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエステル0.05重量%添加し、可塑剤としてフタル酸ジブチル4.5重量%を添加し、比較例2の爆薬剤組成物を得た。
【0018】
[比較例3]
ゲル22重量部、硝酸アンモニウム65重量部、硝酸ソーダ9重量部、澱粉4重量部、非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエステル0.2重量%添加し、可塑剤としてフタル酸ジブチル2.0重量%又は7.5重量%添加し、比較例3の爆薬剤組成物を得た。
【0019】
[仮比重測定]
前記実施例1〜2及び比較例1〜3の各爆薬組成物について、試料温度を20℃±2℃としてJIS K4810の仮比重法Aにより比重を測定した。その測定結果を表1に示した。
【0020】
[爆速測定]
前記実施例1〜2及び比較例1〜3の各爆薬組成物について、試料温度を20℃±2℃としてJIS K4810のイオンギャップ法により爆速を測定した。その測定結果を表1に示した。
【0021】
[殉爆度測定及び低温起爆性]
前記実施例1〜2及び比較例1〜3の各爆薬組成物について、試料温度を20℃±2℃としてJIS K4810の砂上殉爆試験により殉爆度を測定した。尚、本試験で使用した爆薬は爆薬直径30mm、爆薬重量100gである。その測定結果を表1に示した。
また、その際、低温起爆性についても完爆と不爆を判定し、その判定結果を表1に示した。
【0022】
[針入度(薬質)測定(薬質)]
前記実施例1〜2及び比較例1〜3の各爆薬組成物について、試料温度を20℃±2℃として円錐状(直径28mm、高さ52mm、重量87g)の重りを爆薬面の上45mmから円錐頂部を爆薬面に向け落下させ、円錐頂部の爆薬面への食い込み距離(針入度)を測定した。尚、本試験で使用した爆薬は爆薬直径30mm、爆薬量100gである。その測定結果を表1に示した。
【0023】
[混合性及び包装性]
前記実施例1〜2及び比較例1〜3の各爆薬組成物について、混合機による混合性及び包装機による包装性を評価した。その評価結果を表1に示した。
【0024】
[結果]
【表1】

【0025】
[考察]
本発明の爆薬組成物である実施例1,2は、従来の爆薬組成物と同等の爆薬性能を得られることが確認された。また、取り扱い性に優れ、安全性が高く、製造性が高いという特性も確認された。
これに対し、比較例1は、比重調整剤が少なく、可塑剤が用いられていない例であり、爆薬性能は優れていたが、混合に際して加温が必要であり、ジニトロトルエンを用いているため、化学的毒性を考慮する必要があった。
また、比重調整剤が少ない比較例2も、可塑剤が少ない又は多い比較例3も、爆薬性能においても混合性、包装性においても悪い結果となった。
【0026】
以上本発明の実施例を示したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りどのようにも実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトログリセリン、ニトログリコール、ニトロセルロースの混合物を基剤とする爆薬組成物において、前記基剤15〜25重量%、酸化剤50〜75重量%、燃料0.5〜9.0重量%、比重調整剤0.1〜0.4重量%、室温では液体である1種或いは2種以上の可塑剤3.5〜6.0重量%を含有することを特徴とする爆薬組成物。
【請求項2】
酸化剤は硝酸アンモニウムであり、燃料は澱粉であり、比重調整剤は非イオン界面活性剤であることを特徴とする請求項1に記載の爆薬組成物。

【公開番号】特開2007−197224(P2007−197224A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13943(P2006−13943)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(595079984)北海道日本油脂株式会社 (6)