爪切り
【課題】硬度の異なった切断対象物の切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先へのダメージを受けることなく使用することができる爪切りを提供する。
【解決手段】
爪切りは、上刃部材21と、下刃部材22と、上刃部材21を押圧して上刃先21bと下刃先22bとを噛み合わせる押圧レバー28を備える。下刃部材22には平坦部22cを形成するとともに、平坦部22cよりも基部側に折曲部23を形成する。上刃部材21と押圧レバー28間には、押圧レバー28の操作時に上刃先21bを押圧する押圧部30cを備えた押圧補助部材30を介在配置する。押圧補助部材30は平坦部22cに対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態となるように、上刃部材21の基部に対して取り付ける。押圧レバー28が押圧操作された際に、上刃先21bが下刃先22bに対して基部側にオフセットされた状態で噛み合うようにする。
【解決手段】
爪切りは、上刃部材21と、下刃部材22と、上刃部材21を押圧して上刃先21bと下刃先22bとを噛み合わせる押圧レバー28を備える。下刃部材22には平坦部22cを形成するとともに、平坦部22cよりも基部側に折曲部23を形成する。上刃部材21と押圧レバー28間には、押圧レバー28の操作時に上刃先21bを押圧する押圧部30cを備えた押圧補助部材30を介在配置する。押圧補助部材30は平坦部22cに対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態となるように、上刃部材21の基部に対して取り付ける。押圧レバー28が押圧操作された際に、上刃先21bが下刃先22bに対して基部側にオフセットされた状態で噛み合うようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、爪切りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の爪切りとしては、例えば図15に示すような構成が知られている。この従来構成の爪切りの組み立て時には、所定の形状に加工されるとともに熱処理が施された上刃部材51と下刃部材52とが、基部において溶接あるいはネジ等でカシメ付け固定される。そして、上下両刃部材51,52の刃部51a,52aに対して刃付けが施されて、上刃先51b及び下刃先52bが形成される。この刃付けに際しては、両刃部材51,52の刃部51a,52aを対向当接させた状態で、それらの刃部51a,52aに対して同時に研磨が施されるため、上刃先51bと下刃先52bとは互いに一致して噛み合った状態になる。
【0003】
その後、下刃部材52が基部のカシメ部付近から折り曲げ加工されて、両刃部51a,52aの刃先51b,52b間に所定の隙間が設けられる。そして、両刃部材51,52の刃部51a,52aの近傍位置に、押圧レバー53が支持ピン54を介して組み付けられることにより、爪切りが構成されている。
【0004】
このように構成された爪切りにおいては、前記下刃部材52の折り曲げ加工により、下刃部材52の刃先52bが爪切りの長手方向の軸線Lに対して乖離した状態になる。また、爪切りの使用時には、押圧レバー53の操作により両刃部材51,52の支点位置Fが変化するため、上刃先51bと下刃先52bとが噛み合わなくなる。これはオフセットと称し、爪切りにおいて機能上非常に重要な要素となる。
【0005】
すなわち、押圧レバー53の操作により両刃部材51,52を空切り確認した場合、図16(a)に示すように、上刃先51bが下刃先52bに対して内側に、つまり刃部材51,52の基部側に噛み込んだ状態になる。この場合、オフセット値OSはプラスという。このオフセット値OSが零に近くなるほど、両刃先51b,52b間での切れ味は良くなる。しかしながら、オフセット値OSが零の場合には、両刃先51b,52bがぶつかり合って潰れるおそれがある。このため、従来の爪切りでは、オフセット値OSがプラスとなるように設定されて、両刃先51b,52bが噛み合わないように構成されている。
【0006】
ところで、前記のような一般的な構成の爪切りにおいて、特に形状サイズの小さい爪切りでは、両刃部材51,52の厚みが薄くて、上刃部材51が撓曲しやすい。よって、図16(b)に示すように、例えば手の爪等の硬度の低い切断対象物Nを切断した場合には、押圧レバー53を強く押圧操作する必要がないので、上刃部材51が大きく撓曲するおそれはない。このため、オフセット値OSは若干減少するがプラスに維持される。
【0007】
これに対して、形状サイズの小さい爪切りを使用して、図16(c)に示すように、例えば足の爪等の硬度の高い切断対象物Nを切断した場合には、押圧レバー53を強く押圧操作する必要があるため、上刃部材51が弓なり状に撓曲してしまう。すると、上刃部材51の上刃先51bが爪切りの長手方向の前方側に向かって変形されるため、切れ味が悪くなる。しかも、切断後に上刃先51bが下刃先52bの外側にはみ出して、オフセット値OSがマイナスになったり、あるいはオフセット値OSが零になったりすることがある。オフセット値OSがマイナスになった場合には、押圧レバー53の操作が解除されたとき、上刃先51bが下刃先52b上を擦りながら、オフセット値OSがプラスの初期状態に戻るので、両刃先51b,52bは大きなダメージを受ける。
【0008】
このため、従来では形状サイズの異なった爪切りにおいても、上下刃部材51,52の厚みを変えた商品の品揃えを行う必要があった。これらの品揃え品では、オフセット値OSもそれぞれ設定する必要がある。つまり、サイズの大きな爪切りでは、硬度の高い切断対象物を想定しているので、オフセット値OSも大きく設定する必要がある。従って、爪切りの製造が煩雑になるという問題があった。
【0009】
このような問題に対応するため、例えば特許文献1〜特許文献4に開示されるような構成が従来から提案されている。
特許文献1及び特許文献2に記載の従来構成においては、上刃部材と押圧レバーとの間に補強板が介在配置されている。そして、この補強板によって、押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が弓なり状に湾曲するおそれが抑制されるようになっている。
【0010】
また、特許文献3に記載の従来構成においては、上刃部材及び下刃部材の側端に補強リブが一体に折り曲げ形成されている。そして、この補強リブによって、押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が弓なり状に湾曲するおそれが抑制されるようになっている。
【0011】
さらに、特許文献4に記載の従来構成においては、上刃部材の基部に弾性部が上方へ湾曲して弾性を持たせるように形成されている。上刃部材と下刃部材との先端部間には、両刃部材を互いに離間する方向に付勢するバネが介在されている。そして、押圧レバーが押圧操作されたとき、上刃部材の基部側が弾性部を回動中心にして撓み始めるとともに、その上刃部材の基部側の撓みがバネの付勢力により徐々に伸展されていく。これにより、上刃部材が円弧運動されることなく直線運動に近い軌跡で下動されて、上刃先が下刃先に対して基部側にオフセットされた状態、すなわちオフセット量がプラスの状態で噛み合うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開平5−68409号公報
【特許文献2】特開2001−46142号公報
【特許文献3】特表2006−509611号公報
【特許文献4】特開平7−163417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、これらの従来構成においては、次のような問題があった。
特許文献1及び特許文献2に記載の従来構成では、補強板が上刃部材の上面に沿って上刃部材の基部から刃部に向かい前上がりの傾斜状態に配置されている。このため、押圧レバーが押圧操作されたとき、上刃部材が補強板と一体的に前上がりの傾斜状態から基部側の支点を中心に下降回動される。よって、上刃先が円弧運動により下刃先に噛み合って、オフセット値がマイナスに近付くおそれがある。
【0014】
また、特許文献3に記載の従来構成においても、同様に押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が前上がりの傾斜状態から基部側の支点を中心に回動されて、上刃先が円弧運動により下刃先に噛み合うため、オフセット値がマイナスに近付くおそれがある。
【0015】
さらに、特許文献4に記載の従来構成では、押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が基部側の弾性部を中心に円弧運動されるのを、バネの付勢力により徐々に伸展させて緩和させ、上刃部材が直線運動に近い軌跡で下動されるように調整しなければならない。このため、爪切りの製造時に上刃先と下刃先とのシビアな位置合わせを行う必要があって、製造が煩雑となる問題がある。
【0016】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、硬度の異なった切断対象物の切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先へのダメージを受けることなく使用することができる爪切りを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、この発明は、上刃先を有する上刃部材と、その上刃部材に対して基部が連結されるとともに下刃先を有する下刃部材と、前記上刃部材及び下刃部材を貫通する支持ピンに連結されるとともに前記上刃部材を押圧して前記上刃先と下刃先とを噛み合わせる押圧レバーとを備えた爪切りにおいて、前記下刃部材には、少なくとも前記支持ピンを貫通させる部位に平坦部が形成されるとともに、その平坦部よりも基部側に折曲部が形成され、前記上刃部材と押圧レバーとの間には、押圧レバーの操作により押圧されて前記上刃部材の上刃先を押圧する押圧部を備えた押圧補助部材が介在配置され、その押圧補助部材は、前記下刃部材の平坦部に対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態で前記上刃部材の基部に対して取り付けられ、前記押圧レバーが押圧操作された際に、前記上刃先が下刃先に対して基部側にオフセットされた状態で噛み合うようにしたことを特徴としている。
【0018】
従って、この発明の爪切りにおいては、押圧レバーが押圧操作されると、押圧補助部材が下刃部材の平坦部に対して平行な状態またはヒップアップ状態から、上刃部材の基部に対する取付部を中心にして押圧回動される。この押圧補助部材の押圧回動により、押圧部を介して上刃部材の上刃先が押圧されて、その上刃先が下刃部材の下刃先の内側つまり下刃部材の基部側に向かって下降回動される。そして、上下両刃先が噛み合わされることにより、爪等の切断対象物が切断される。このため、押圧レバーの操作開始時における両刃先間のオフセット値を零に近いプラスに設定しても、上刃先が下刃先に接近して切断対象物の切断が進行するにつれて、オフセット値がプラス側へ徐々に移行する。よって、硬度の異なった切断対象物の切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先へのダメージを受けることなく使用することができる。
【0019】
前記の構成において、前記上刃部材と下刃部材とは基部の折曲部を介して一体に連結形成され、前記上刃部材には前記上刃先を有する刃部が設けられ、前記押圧補助部材の押圧部が前記刃部の基端を押圧可能に配置されているように構成するとよい。
【0020】
前記の構成において、前記支持ピンが押圧レバーに対して鈍角をなすように一体に連結された構成にするとよい。
前記の構成において、前記支持ピンは、下端において前記下刃部材の下面に揺動可能に支持されるとともに、上端において前記上刃部材にその長手方向へ移動可能に貫通され、前記押圧補助部材の上面には、押圧レバーの押圧操作時に、その押圧レバーに当接して押圧補助部材を下方に押圧するカム部が設けられているように構成するとよい。
【0021】
前記の構成において、前記カム部は曲面から構成するとよい。
前記の構成において、前記上刃部材と下刃部材とは別部材から構成され、それらの基部が互いに連結されているように構成するとよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、硬度の異なった切断対象物の切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先へのダメージを受けることなく使用することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の爪切りを示す斜視図。
【図2】図1の爪切りの平面図。
【図3】図2の3−3線における断面図。
【図4】図2の4−4線における断面図。
【図5】図3の5−5線における拡大断面図。
【図6】図1の爪切りの分解斜視図。
【図7】同爪切りの切断動作状態を示す断面図。
【図8】図7の状態の爪切りの刃先部分を拡大して示す要部側面図。
【図9】同爪切りの収納状態を示す斜視図。
【図10】同じく収納状態の爪切りの断面図。
【図11】第2実施形態の爪切りを示す断面図。
【図12】図11の12−12線における拡大断面図。
【図13】図11の爪切りの切断動作状態を示す断面図。
【図14】同爪切りの収納状態を示す断面図。
【図15】従来の一般的な爪切りを示す断面図。
【図16】(a)〜(c)は図15の爪切りの切断動作時における刃先部分の異なった噛み合い状態を示す要部拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した爪切りの第1実施形態を、図1〜図10に従って説明する。
【0025】
図1〜図3に示すように、この実施形態の爪切りにおいては、上刃部材21と下刃部材22とが基部のほぼU字状の折曲部23を介して一体に連結形成されている。なお、これから説明する上刃部材21及び下刃部材22自体にそれぞれ形成されている各部の構成は、後述する係止部27を除いて、同様の名称(「上」又は「下」を付したものも含む)を付した構成は、係止部27を通過する仮想平面を基準として互いに上下対称状に設けられているものとし、以下では、説明の便宜上、それらが上下対称状に設けられているとの説明を省略する。
【0026】
上刃部材21の先端には上刃先21bを有する刃部21aが形成されるとともに、下刃部材22の先端には下刃先22bを有する刃部22aが形成されている。この上刃先21b及び下刃先22bは、上刃部材21及び下刃部材22をほぼ平行に延びるように基部の折曲部23においてU字状に折り曲げ形成した後、上下両刃部21a,22aを対向当接させて同時に研磨することにより形成されている。従って、この刃先21b,22bの形成時には、両刃先21b,22b間のオフセット値OSが零となっている。
【0027】
図3及び図6に示すように、前記上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aと折曲部23との間には、平坦部21c,22cがそれぞれ形成されている。上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aの近傍において、各平坦部21c,22cの幅方向の中央部には貫通孔24が形成されている。この貫通孔24は、大径の円形孔部24aと、その円形孔部24aから刃部21a,22a側に延びる長孔部24bとから構成されている。各貫通孔24の長孔部24bの両側部において各平坦部21c,22cの外面には、幅方向に延びる各一対の凹溝25A,25Bが上刃部材21及び下刃部材22の長手方向に間隔をおいて形成されている。上刃部材21及び下刃部材22の基部側の折曲部23にはそれぞれ透孔26A,26Bが形成され、その透孔26A,26Bを区切るように幅方向に延出された係止部27が設けられている。
【0028】
図1〜図3及び図6に示すように、前記上刃部材21上には、押圧レバー28が支持ピン29を介して上下方向へ揺動可能に装着されている。この支持ピン29は、押圧レバー28の先端下面に対して鈍角をなすように一体に連結形成されている。支持ピン29の下端両側には、軸部29aが幅方向に突設されている。そして、図3及び図4に示すように、支持ピン29が上刃部材21及び下刃部材22の貫通孔24の円形孔部24aを介して長孔部24b内に長手方向へ移動可能に貫通されるとともに、下端の軸部29aが下刃部材22の下面における刃部22a側の凹溝25Aに対して揺動可能に係合支持されている。
【0029】
図1、図3、図5及び図6に示すように、前記上刃部材21と押圧レバー28との間には、押圧補助部材30が上刃部材21の長手方向へ相対移動可能に介在配置されている。この押圧補助部材30は上カバーを兼用するように、上刃部材21の上面を覆う上壁部30aと、上刃部材21の両側及び基部を覆う周壁部30bとを備えている。押圧補助部材30の上壁部30aの先端には、上刃部材21の刃部21aの基端に押圧可能に対応する押圧部30cが設けられている。そして、図7に示すように、押圧レバー28が押圧操作されたとき、この押圧補助部材30の押圧部30cにより上刃部材21の上刃先21bが押圧されて、上刃先21bと下刃先22bとが噛み合わされるようになっている。
【0030】
図3、図4及び図6に示すように、前記押圧補助部材30の上壁部30aにおいて押圧部30cと近接する位置には、上刃部材21及び下刃部材22上の貫通孔24と対応した円形孔部31a及び長孔部31bを有する貫通孔31が形成されている。図3〜図6に示すように押圧補助部材30の周壁部30bの基部には、上刃部材21及び下刃部材22の基部の係止部27に係止可能な取付片32が折り曲げ形成されている。そして、押圧補助部材30の貫通孔31を介して上刃部材21及び下刃部材22の貫通孔24に支持ピン29が貫通されるとともに、押圧補助部材30の取付片32が上刃部材21及び下刃部材22の係止部27に対して上刃部材21及び下刃部材22の長手方向へ相対移動可能に係合取着されている。これにより、図3に示すように、押圧補助部材30の上壁部30aが、下刃部材22の平坦部22cに対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態に配置されている。
【0031】
また、この押圧補助部材30及び押圧レバー28の取付状態において、押圧レバー28が操作された際に、上下両刃先21b,22b間のオフセット値OSが零に近いプラスとなるように設定されている。
【0032】
図3、図4及び図6に示すように、前記押圧補助部材30の上壁部30aの上面において貫通孔31の幅方向の両側位置には、一対のカム部33が突出形成されている。このカム部33は、円弧曲面や楕円曲面等の曲面から構成されている。そして、使用状態の押圧レバー28の押圧操作時に、その押圧レバー28の先端縁がカム部33に摺接係合されて、そのカム部33のカム作用により、押圧補助部材30が下方に押圧されるようになっている。
【0033】
図3、図6、図9及び図10に示すように、前記押圧補助部材30の上壁部30aの下面において貫通孔31の長孔部31bと両カム部33との間の位置には、一対の位置決め突部34が形成されている。そして、爪切りの通常の使用時には、図3に示すように、位置決め突部34が上刃部材21上の基部側の凹溝25Bに係合されることにより、上刃部材21及び下刃部材22がその刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から突出させた状態に位置決め保持される。この押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から突出させた状態は、爪切りの使用可能状態である。
【0034】
これに対して、爪切りの不使用時、すなわち収納時には、押圧レバー28を上刃部材21及び下刃部材22の基部側に引っ張りながら、押圧補助部材30の上面と当接する位置まで押圧回動させることにより、図9及び図10に示すように、上刃部材21及び下刃部材22がその刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から没入させた状態に移動される。このとき、位置決め突部34が上刃部材21上の基部側の凹溝25Bから離脱されて刃部21a側の凹溝25Aに係合されることにより、上刃部材21及び下刃部材22が刃部21a,22aの没入状態に位置決め保持される。
【0035】
図1、図3、図5及び図6に示すように、前記下刃部材22の下部には下カバー35が装着されている。この下カバー35には、下刃部材22の下面を覆う下壁部35aと、下刃部材22の両側及び基部を覆う周壁部35bとが設けられている。下カバー35の下壁部35aの先端側内面には、前記支持ピン29の下端の軸部29aを覆うための凹部36が形成されている。下カバー35の下壁部35aの内面には、各一対の係止爪37が下カバー35の幅方向及び長手方向に間隔をおいて突出形成されている。そして、図5に示すように、これらの係止爪37が下刃部材22の両側縁に係止されることにより、下カバー35が下刃部材22、すなわち、平坦部22cに対して長手方向に相対移動可能に取り付けられている。
【0036】
(第1実施形態の作用)
次に、前記のように構成された爪切りの作用を説明する。
さて、この爪切りを使用して爪等の切断対象物Nを切断する場合には、図1〜図3に示すように、上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aが押圧補助部材30及び下カバー35の先端から突出した爪切りの使用可能状態で、上下両刃先21b,22b間に切断対象物Nを配置した後、押圧レバー28を押圧操作する。すると、押圧レバー28が支持ピン29の下端の軸部29aを中心に揺動され、その押圧レバー28の先端下面が押圧補助部材30上のカム部33に当接して、そのカム部33を介して押圧補助部材30が下方に押圧される。このとき、押圧補助部材30の上壁部30aは、下刃部材22の平坦部22cに対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態に配置されている。このため、その押圧補助部材30は平行状態またはヒップアップ状態から、基部側の取付片32と係止部27との係合取着部を中心にして押圧回動される。
【0037】
このように、押圧補助部材30が押圧回動されると、その押圧補助部材30の先端の押圧部30cを介して上刃部材21の刃部21aの基端が押圧され、上刃先21bが下刃部材22の下刃先22bの内側つまり下刃部材22の基部側に向かって下降回動される。このため、押圧レバー28の操作開始時の状態では、両刃先21b,22b間のオフセット値OSが零に近いプラスに設定されていても、上刃先21bが下刃先22bに接近するにつれて、オフセット値OSが増加するプラス側へ徐々に移行する。
【0038】
また、押圧レバー28の押圧操作時には、支持ピン29の下端の軸部29aが円弧運動して、下刃部材22の刃部22aが持ち上げ回動されるため、下刃先22b側においても上刃先21b側と同様に、オフセット値OSがプラス側へ移行するように作用する。そして、図7及び図8に示すように、上下両刃先21b,22bが噛み合わされることによって、爪等の切断対象物Nが切断される。よって、切断対象物Nの硬度が異なっていても、切れ味を保ちながら刃先21b,22bへのダメージを受けることなく切断することができる。
【0039】
さらに、爪切りを格納する場合には、図1〜図3に示す爪切りの使用可能状態において、押圧レバー28を上刃部材21及び下刃部材22の基部側に引っ張りながら、押圧補助部材30の上面と当接する位置まで押圧回動させる。すると、上刃部材21及び下刃部材22が押圧補助部材30及び下カバー35に対して基部側に移動されて、図9及び図10に示すように、上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aが押圧補助部材30及び下カバー35の先端から没入される。このとき、押圧補助部材30の位置決め突部34が上刃部材21上の基部側の凹溝25Bから離脱されて刃部21a側の凹溝25Aに係合され、これによって上刃部材21及び下刃部材22が刃部21a,22aを没入させた格納状態に位置決め保持される。
【0040】
また、爪切りを格納状態から使用可能状態に戻す場合には、図9及び図10に示す格納状態において、押圧レバー28を押圧補助部材30の上面と当接した位置から起立回動させる。すると、押圧レバー28の先端縁が押圧補助部材30上のカム部33に摺接して、そのカム部33のカム作用により、上刃部材21及び下刃部材22が押圧補助部材30及び下カバー35に対して基部と反対側に移動され、図1〜図3に示すように、上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aが押圧補助部材30及び下カバー35の先端から突出される。このとき、押圧補助部材30の位置決め突部34が上刃部材21上の刃部21a側の凹溝25Aから離脱されて基部側の凹溝25Bに係合され、これによって上刃部材21及び下刃部材22が刃部21a,22aを突出させた使用可能状態に位置決め保持される。
【0041】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この爪切りにおいては、上刃部材21と押圧レバー28との間に介在配置された押圧補助部材30が、下刃部材22に設けられた平坦部22cに対して平行状態、または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態となるように、上刃部材21の基部に対して取り付けられている。
【0042】
このため、押圧レバー28が押圧操作されたとき、押圧補助部材30が下刃部材22の平坦部22cに対して平行な状態またはヒップアップ状態から、上刃部材21の基部に対する取付部を中心にして押圧回動される。この押圧補助部材30の押圧回動により、押圧部30cを介して上刃部材21の上刃先21bが押圧されて、その上刃先21bが下刃部材22の下刃先22bの内側つまり下刃部材22の基部側に向かって下降回動される。そして、上下両刃先21b,22bが噛み合わされることにより、爪等の切断対象物Nが切断される。このため、押圧レバー28の操作開始時における両刃先21b,22b間のオフセット値OSを零に近いプラスに設定しても、上刃先21bが下刃先22bに接近して切断対象物Nの切断が進行するにつれて、オフセット値OSが増加するプラス側へ徐々に移行する。よって、硬度の異なった切断対象物Nの切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先21b,22bへのダメージを受けることなく使用することができる。
【0043】
(2) この爪切りにおいては、前記上刃部材21と下刃部材22とが基部の折曲部23を介して一体に連結形成されている。上刃部材21には上刃先21bを有する刃部21aが設けられている。そして、前記押圧補助部材30の押圧部30cが、上刃部材21の刃部21aの基端を押圧するように配置されている。このため、上刃部材21と下刃部材22とを基部においてカシメ等により連結固定する必要がなく、構造及び組み付けを簡略化することができる。また、押圧補助部材30の押圧部30cにより上刃部材21の刃部21aの基端を直接押圧することができるため、上刃先21bがオフセット値OSの零方向に向かって下降されるのを阻止して、オフセット値OSのプラス方向に向かって下降されるように誘導することができる。
【0044】
(3) この爪切りにおいては、前記押圧レバー28を支持する支持ピン29が押圧レバー28に対して鈍角をなすように一体に連結され、その下端の軸部29aにおいて下刃部材22の下面に揺動可能に支持されるとともに、上端において上刃部材21にその長手方向へ移動可能に貫通されている。また、押圧補助部材30の上面には、押圧レバー28の押圧操作時に、その押圧レバー28に当接して押圧補助部材30を下方に押圧するカム部33が設けられている。
【0045】
このため、支持ピン29を押圧レバー28と一体に形成することができて、構造及び組み付けを簡略化することができる。また、支持ピン29の下端の軸部29aが下刃部材22の下面に揺動可能に支持されているため、押圧レバー28の押圧操作時に、支持ピン29の軸部29aが円弧運動して、下刃部材22が持ち上げ回動される。よって、下刃先22b側においても前記上刃先21b側と同様に、オフセット値OSをプラス側へ移行させることができる。さらに、押圧補助部材30の上面にカム部33が設けられているため、押圧レバー28の軽い押圧操作により、カム部33を介して押圧補助部材30を強く押圧回動させることができる。
【0046】
(4) この爪切りにおいては、前記カム部33が曲面から構成されている。このため、押圧レバー28の押圧操作時に、押圧レバー28が曲面からなるカム部33に対して滑らかに摺接して、押圧レバー28の操作を容易に行うことができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した爪切りの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0048】
さて、この第2実施形態においては、図11〜図14に示すように、上刃部材21と下刃部材22とが別部材から構成されている。そして、上刃部材21及び下刃部材22の基部が、カシメピン41のカシメにより互いに連結固定されている。下刃部材22の長手方向の中間部よりも刃部22a側の位置には折曲部42が形成され、その折曲部42と刃部22aとの間の部分が平坦部22cとなっている。
【0049】
また、この実施形態においては、支持ピン29が押圧レバー28と別部材で構成されている。そして、上刃部材21及び下刃部材22の平坦部21c,22c及び押圧補助部材30の上壁部30aに設けられた貫通孔24,31に対して支持ピン29が回転可能に貫通支持されるとともに、その支持ピン29の上端に押圧レバー28が取付ピン43を介して反転回動可能に取り付けられている。また、押圧レバー28の先端下面に、側面ほぼ三角山形状のカム部33が形成されている。
【0050】
さらに、この実施形態においては、押圧補助部材30の上壁部30aの基部が前記カシメピン41の上端にカシメ付け固定されている。そして、カシメピン41の上端により、上刃部材21の基部から上方に上壁部30aの基部が離間することにより、前記第1実施形態の場合と同様に、この押圧補助部材30の取付状態で、押圧補助部材30の上壁部30aが下刃部材22の平坦部22cに対して平行状態、または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態となるように構成されている。
【0051】
(第2実施形態の作用)
よって、この実施形態の爪切りにおいても、爪等の切断対象物Nを切断する場合には、図11に示す使用可能状態で押圧レバー28を押圧操作すると、押圧補助部材30が前記の平行状態またはヒップアップ状態から押圧回動される。それにより、押圧補助部材30の押圧部30cを介して上刃部材21の刃部21aが押圧され、その上刃先21bが下刃部材22の下刃先22bの内側に向かって下降回動される。このため、第1実施形態の場合と同様に、押圧レバー28の押圧操作に伴って、上刃先21bが下刃先22bに接近するにつれて、両刃先21b,22b間のオフセット値OSがプラス側へ徐々に移行され、図13に示すように、切断対象物Nの切断が行われる。
【0052】
これに対して、爪切りを格納する場合には、図11に示す使用可能状態から、押圧レバー28を取付ピン43の周りで上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22a側に反転回動させた後、その押圧レバー28を支持ピン29とともに上刃部材21及び下刃部材22の基部側に回転させる。すると、図14に示すように、押圧レバー28が押圧補助部材30の上面に接合した格納状態に配置される。
【0053】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(5) この爪切りにおいては、前記上刃部材21と下刃部材22とが別部材から構成され、それらの基部が互いに連結されている。このため、上刃部材21と下刃部材22とを別部材で構成した従来の爪切りに対して、構造を大きく変更することなく具体化することができる。
【0054】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記両実施形態において、押圧補助部材30を上カバーと兼用することなく、別部材として設けること。
【0055】
・ 前記第1実施形態において、押圧補助部材30上のカム部33を、側面多角形等の異なった形状に形成すること。
・ 前記第2実施形態において、上刃部材21及び下刃部材22の基部を、溶接等の異なった固定構造で連結すること。
【0056】
・ 前記第1実施形態において、上刃部材21及び下刃部材22がその刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から没入させた状態に移動する代わりに、刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁と略面一になるように、位置決め突部34と、凹溝25Aとの係合の位置関係を設定して位置決め保持すること。
【符号の説明】
【0057】
21…上刃部材、21a…刃部、21b…上刃先、22…下刃部材、
22b…下刃先、22c…平坦部、23…折曲部、24…貫通孔、
25A,25B…凹溝、27…係止部、28…押圧レバー、
29…支持ピン、29a…軸部、30…押圧補助部材、30c…押圧部、
31…貫通孔、32…取付片、33…カム部、41…カシメピン、
42…折曲部、N…切断対象物、OS…オフセット値。
【技術分野】
【0001】
この発明は、爪切りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の爪切りとしては、例えば図15に示すような構成が知られている。この従来構成の爪切りの組み立て時には、所定の形状に加工されるとともに熱処理が施された上刃部材51と下刃部材52とが、基部において溶接あるいはネジ等でカシメ付け固定される。そして、上下両刃部材51,52の刃部51a,52aに対して刃付けが施されて、上刃先51b及び下刃先52bが形成される。この刃付けに際しては、両刃部材51,52の刃部51a,52aを対向当接させた状態で、それらの刃部51a,52aに対して同時に研磨が施されるため、上刃先51bと下刃先52bとは互いに一致して噛み合った状態になる。
【0003】
その後、下刃部材52が基部のカシメ部付近から折り曲げ加工されて、両刃部51a,52aの刃先51b,52b間に所定の隙間が設けられる。そして、両刃部材51,52の刃部51a,52aの近傍位置に、押圧レバー53が支持ピン54を介して組み付けられることにより、爪切りが構成されている。
【0004】
このように構成された爪切りにおいては、前記下刃部材52の折り曲げ加工により、下刃部材52の刃先52bが爪切りの長手方向の軸線Lに対して乖離した状態になる。また、爪切りの使用時には、押圧レバー53の操作により両刃部材51,52の支点位置Fが変化するため、上刃先51bと下刃先52bとが噛み合わなくなる。これはオフセットと称し、爪切りにおいて機能上非常に重要な要素となる。
【0005】
すなわち、押圧レバー53の操作により両刃部材51,52を空切り確認した場合、図16(a)に示すように、上刃先51bが下刃先52bに対して内側に、つまり刃部材51,52の基部側に噛み込んだ状態になる。この場合、オフセット値OSはプラスという。このオフセット値OSが零に近くなるほど、両刃先51b,52b間での切れ味は良くなる。しかしながら、オフセット値OSが零の場合には、両刃先51b,52bがぶつかり合って潰れるおそれがある。このため、従来の爪切りでは、オフセット値OSがプラスとなるように設定されて、両刃先51b,52bが噛み合わないように構成されている。
【0006】
ところで、前記のような一般的な構成の爪切りにおいて、特に形状サイズの小さい爪切りでは、両刃部材51,52の厚みが薄くて、上刃部材51が撓曲しやすい。よって、図16(b)に示すように、例えば手の爪等の硬度の低い切断対象物Nを切断した場合には、押圧レバー53を強く押圧操作する必要がないので、上刃部材51が大きく撓曲するおそれはない。このため、オフセット値OSは若干減少するがプラスに維持される。
【0007】
これに対して、形状サイズの小さい爪切りを使用して、図16(c)に示すように、例えば足の爪等の硬度の高い切断対象物Nを切断した場合には、押圧レバー53を強く押圧操作する必要があるため、上刃部材51が弓なり状に撓曲してしまう。すると、上刃部材51の上刃先51bが爪切りの長手方向の前方側に向かって変形されるため、切れ味が悪くなる。しかも、切断後に上刃先51bが下刃先52bの外側にはみ出して、オフセット値OSがマイナスになったり、あるいはオフセット値OSが零になったりすることがある。オフセット値OSがマイナスになった場合には、押圧レバー53の操作が解除されたとき、上刃先51bが下刃先52b上を擦りながら、オフセット値OSがプラスの初期状態に戻るので、両刃先51b,52bは大きなダメージを受ける。
【0008】
このため、従来では形状サイズの異なった爪切りにおいても、上下刃部材51,52の厚みを変えた商品の品揃えを行う必要があった。これらの品揃え品では、オフセット値OSもそれぞれ設定する必要がある。つまり、サイズの大きな爪切りでは、硬度の高い切断対象物を想定しているので、オフセット値OSも大きく設定する必要がある。従って、爪切りの製造が煩雑になるという問題があった。
【0009】
このような問題に対応するため、例えば特許文献1〜特許文献4に開示されるような構成が従来から提案されている。
特許文献1及び特許文献2に記載の従来構成においては、上刃部材と押圧レバーとの間に補強板が介在配置されている。そして、この補強板によって、押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が弓なり状に湾曲するおそれが抑制されるようになっている。
【0010】
また、特許文献3に記載の従来構成においては、上刃部材及び下刃部材の側端に補強リブが一体に折り曲げ形成されている。そして、この補強リブによって、押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が弓なり状に湾曲するおそれが抑制されるようになっている。
【0011】
さらに、特許文献4に記載の従来構成においては、上刃部材の基部に弾性部が上方へ湾曲して弾性を持たせるように形成されている。上刃部材と下刃部材との先端部間には、両刃部材を互いに離間する方向に付勢するバネが介在されている。そして、押圧レバーが押圧操作されたとき、上刃部材の基部側が弾性部を回動中心にして撓み始めるとともに、その上刃部材の基部側の撓みがバネの付勢力により徐々に伸展されていく。これにより、上刃部材が円弧運動されることなく直線運動に近い軌跡で下動されて、上刃先が下刃先に対して基部側にオフセットされた状態、すなわちオフセット量がプラスの状態で噛み合うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開平5−68409号公報
【特許文献2】特開2001−46142号公報
【特許文献3】特表2006−509611号公報
【特許文献4】特開平7−163417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、これらの従来構成においては、次のような問題があった。
特許文献1及び特許文献2に記載の従来構成では、補強板が上刃部材の上面に沿って上刃部材の基部から刃部に向かい前上がりの傾斜状態に配置されている。このため、押圧レバーが押圧操作されたとき、上刃部材が補強板と一体的に前上がりの傾斜状態から基部側の支点を中心に下降回動される。よって、上刃先が円弧運動により下刃先に噛み合って、オフセット値がマイナスに近付くおそれがある。
【0014】
また、特許文献3に記載の従来構成においても、同様に押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が前上がりの傾斜状態から基部側の支点を中心に回動されて、上刃先が円弧運動により下刃先に噛み合うため、オフセット値がマイナスに近付くおそれがある。
【0015】
さらに、特許文献4に記載の従来構成では、押圧レバーの押圧操作時に、上刃部材が基部側の弾性部を中心に円弧運動されるのを、バネの付勢力により徐々に伸展させて緩和させ、上刃部材が直線運動に近い軌跡で下動されるように調整しなければならない。このため、爪切りの製造時に上刃先と下刃先とのシビアな位置合わせを行う必要があって、製造が煩雑となる問題がある。
【0016】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、硬度の異なった切断対象物の切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先へのダメージを受けることなく使用することができる爪切りを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、この発明は、上刃先を有する上刃部材と、その上刃部材に対して基部が連結されるとともに下刃先を有する下刃部材と、前記上刃部材及び下刃部材を貫通する支持ピンに連結されるとともに前記上刃部材を押圧して前記上刃先と下刃先とを噛み合わせる押圧レバーとを備えた爪切りにおいて、前記下刃部材には、少なくとも前記支持ピンを貫通させる部位に平坦部が形成されるとともに、その平坦部よりも基部側に折曲部が形成され、前記上刃部材と押圧レバーとの間には、押圧レバーの操作により押圧されて前記上刃部材の上刃先を押圧する押圧部を備えた押圧補助部材が介在配置され、その押圧補助部材は、前記下刃部材の平坦部に対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態で前記上刃部材の基部に対して取り付けられ、前記押圧レバーが押圧操作された際に、前記上刃先が下刃先に対して基部側にオフセットされた状態で噛み合うようにしたことを特徴としている。
【0018】
従って、この発明の爪切りにおいては、押圧レバーが押圧操作されると、押圧補助部材が下刃部材の平坦部に対して平行な状態またはヒップアップ状態から、上刃部材の基部に対する取付部を中心にして押圧回動される。この押圧補助部材の押圧回動により、押圧部を介して上刃部材の上刃先が押圧されて、その上刃先が下刃部材の下刃先の内側つまり下刃部材の基部側に向かって下降回動される。そして、上下両刃先が噛み合わされることにより、爪等の切断対象物が切断される。このため、押圧レバーの操作開始時における両刃先間のオフセット値を零に近いプラスに設定しても、上刃先が下刃先に接近して切断対象物の切断が進行するにつれて、オフセット値がプラス側へ徐々に移行する。よって、硬度の異なった切断対象物の切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先へのダメージを受けることなく使用することができる。
【0019】
前記の構成において、前記上刃部材と下刃部材とは基部の折曲部を介して一体に連結形成され、前記上刃部材には前記上刃先を有する刃部が設けられ、前記押圧補助部材の押圧部が前記刃部の基端を押圧可能に配置されているように構成するとよい。
【0020】
前記の構成において、前記支持ピンが押圧レバーに対して鈍角をなすように一体に連結された構成にするとよい。
前記の構成において、前記支持ピンは、下端において前記下刃部材の下面に揺動可能に支持されるとともに、上端において前記上刃部材にその長手方向へ移動可能に貫通され、前記押圧補助部材の上面には、押圧レバーの押圧操作時に、その押圧レバーに当接して押圧補助部材を下方に押圧するカム部が設けられているように構成するとよい。
【0021】
前記の構成において、前記カム部は曲面から構成するとよい。
前記の構成において、前記上刃部材と下刃部材とは別部材から構成され、それらの基部が互いに連結されているように構成するとよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、硬度の異なった切断対象物の切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先へのダメージを受けることなく使用することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態の爪切りを示す斜視図。
【図2】図1の爪切りの平面図。
【図3】図2の3−3線における断面図。
【図4】図2の4−4線における断面図。
【図5】図3の5−5線における拡大断面図。
【図6】図1の爪切りの分解斜視図。
【図7】同爪切りの切断動作状態を示す断面図。
【図8】図7の状態の爪切りの刃先部分を拡大して示す要部側面図。
【図9】同爪切りの収納状態を示す斜視図。
【図10】同じく収納状態の爪切りの断面図。
【図11】第2実施形態の爪切りを示す断面図。
【図12】図11の12−12線における拡大断面図。
【図13】図11の爪切りの切断動作状態を示す断面図。
【図14】同爪切りの収納状態を示す断面図。
【図15】従来の一般的な爪切りを示す断面図。
【図16】(a)〜(c)は図15の爪切りの切断動作時における刃先部分の異なった噛み合い状態を示す要部拡大側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下に、この発明を具体化した爪切りの第1実施形態を、図1〜図10に従って説明する。
【0025】
図1〜図3に示すように、この実施形態の爪切りにおいては、上刃部材21と下刃部材22とが基部のほぼU字状の折曲部23を介して一体に連結形成されている。なお、これから説明する上刃部材21及び下刃部材22自体にそれぞれ形成されている各部の構成は、後述する係止部27を除いて、同様の名称(「上」又は「下」を付したものも含む)を付した構成は、係止部27を通過する仮想平面を基準として互いに上下対称状に設けられているものとし、以下では、説明の便宜上、それらが上下対称状に設けられているとの説明を省略する。
【0026】
上刃部材21の先端には上刃先21bを有する刃部21aが形成されるとともに、下刃部材22の先端には下刃先22bを有する刃部22aが形成されている。この上刃先21b及び下刃先22bは、上刃部材21及び下刃部材22をほぼ平行に延びるように基部の折曲部23においてU字状に折り曲げ形成した後、上下両刃部21a,22aを対向当接させて同時に研磨することにより形成されている。従って、この刃先21b,22bの形成時には、両刃先21b,22b間のオフセット値OSが零となっている。
【0027】
図3及び図6に示すように、前記上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aと折曲部23との間には、平坦部21c,22cがそれぞれ形成されている。上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aの近傍において、各平坦部21c,22cの幅方向の中央部には貫通孔24が形成されている。この貫通孔24は、大径の円形孔部24aと、その円形孔部24aから刃部21a,22a側に延びる長孔部24bとから構成されている。各貫通孔24の長孔部24bの両側部において各平坦部21c,22cの外面には、幅方向に延びる各一対の凹溝25A,25Bが上刃部材21及び下刃部材22の長手方向に間隔をおいて形成されている。上刃部材21及び下刃部材22の基部側の折曲部23にはそれぞれ透孔26A,26Bが形成され、その透孔26A,26Bを区切るように幅方向に延出された係止部27が設けられている。
【0028】
図1〜図3及び図6に示すように、前記上刃部材21上には、押圧レバー28が支持ピン29を介して上下方向へ揺動可能に装着されている。この支持ピン29は、押圧レバー28の先端下面に対して鈍角をなすように一体に連結形成されている。支持ピン29の下端両側には、軸部29aが幅方向に突設されている。そして、図3及び図4に示すように、支持ピン29が上刃部材21及び下刃部材22の貫通孔24の円形孔部24aを介して長孔部24b内に長手方向へ移動可能に貫通されるとともに、下端の軸部29aが下刃部材22の下面における刃部22a側の凹溝25Aに対して揺動可能に係合支持されている。
【0029】
図1、図3、図5及び図6に示すように、前記上刃部材21と押圧レバー28との間には、押圧補助部材30が上刃部材21の長手方向へ相対移動可能に介在配置されている。この押圧補助部材30は上カバーを兼用するように、上刃部材21の上面を覆う上壁部30aと、上刃部材21の両側及び基部を覆う周壁部30bとを備えている。押圧補助部材30の上壁部30aの先端には、上刃部材21の刃部21aの基端に押圧可能に対応する押圧部30cが設けられている。そして、図7に示すように、押圧レバー28が押圧操作されたとき、この押圧補助部材30の押圧部30cにより上刃部材21の上刃先21bが押圧されて、上刃先21bと下刃先22bとが噛み合わされるようになっている。
【0030】
図3、図4及び図6に示すように、前記押圧補助部材30の上壁部30aにおいて押圧部30cと近接する位置には、上刃部材21及び下刃部材22上の貫通孔24と対応した円形孔部31a及び長孔部31bを有する貫通孔31が形成されている。図3〜図6に示すように押圧補助部材30の周壁部30bの基部には、上刃部材21及び下刃部材22の基部の係止部27に係止可能な取付片32が折り曲げ形成されている。そして、押圧補助部材30の貫通孔31を介して上刃部材21及び下刃部材22の貫通孔24に支持ピン29が貫通されるとともに、押圧補助部材30の取付片32が上刃部材21及び下刃部材22の係止部27に対して上刃部材21及び下刃部材22の長手方向へ相対移動可能に係合取着されている。これにより、図3に示すように、押圧補助部材30の上壁部30aが、下刃部材22の平坦部22cに対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態に配置されている。
【0031】
また、この押圧補助部材30及び押圧レバー28の取付状態において、押圧レバー28が操作された際に、上下両刃先21b,22b間のオフセット値OSが零に近いプラスとなるように設定されている。
【0032】
図3、図4及び図6に示すように、前記押圧補助部材30の上壁部30aの上面において貫通孔31の幅方向の両側位置には、一対のカム部33が突出形成されている。このカム部33は、円弧曲面や楕円曲面等の曲面から構成されている。そして、使用状態の押圧レバー28の押圧操作時に、その押圧レバー28の先端縁がカム部33に摺接係合されて、そのカム部33のカム作用により、押圧補助部材30が下方に押圧されるようになっている。
【0033】
図3、図6、図9及び図10に示すように、前記押圧補助部材30の上壁部30aの下面において貫通孔31の長孔部31bと両カム部33との間の位置には、一対の位置決め突部34が形成されている。そして、爪切りの通常の使用時には、図3に示すように、位置決め突部34が上刃部材21上の基部側の凹溝25Bに係合されることにより、上刃部材21及び下刃部材22がその刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から突出させた状態に位置決め保持される。この押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から突出させた状態は、爪切りの使用可能状態である。
【0034】
これに対して、爪切りの不使用時、すなわち収納時には、押圧レバー28を上刃部材21及び下刃部材22の基部側に引っ張りながら、押圧補助部材30の上面と当接する位置まで押圧回動させることにより、図9及び図10に示すように、上刃部材21及び下刃部材22がその刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から没入させた状態に移動される。このとき、位置決め突部34が上刃部材21上の基部側の凹溝25Bから離脱されて刃部21a側の凹溝25Aに係合されることにより、上刃部材21及び下刃部材22が刃部21a,22aの没入状態に位置決め保持される。
【0035】
図1、図3、図5及び図6に示すように、前記下刃部材22の下部には下カバー35が装着されている。この下カバー35には、下刃部材22の下面を覆う下壁部35aと、下刃部材22の両側及び基部を覆う周壁部35bとが設けられている。下カバー35の下壁部35aの先端側内面には、前記支持ピン29の下端の軸部29aを覆うための凹部36が形成されている。下カバー35の下壁部35aの内面には、各一対の係止爪37が下カバー35の幅方向及び長手方向に間隔をおいて突出形成されている。そして、図5に示すように、これらの係止爪37が下刃部材22の両側縁に係止されることにより、下カバー35が下刃部材22、すなわち、平坦部22cに対して長手方向に相対移動可能に取り付けられている。
【0036】
(第1実施形態の作用)
次に、前記のように構成された爪切りの作用を説明する。
さて、この爪切りを使用して爪等の切断対象物Nを切断する場合には、図1〜図3に示すように、上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aが押圧補助部材30及び下カバー35の先端から突出した爪切りの使用可能状態で、上下両刃先21b,22b間に切断対象物Nを配置した後、押圧レバー28を押圧操作する。すると、押圧レバー28が支持ピン29の下端の軸部29aを中心に揺動され、その押圧レバー28の先端下面が押圧補助部材30上のカム部33に当接して、そのカム部33を介して押圧補助部材30が下方に押圧される。このとき、押圧補助部材30の上壁部30aは、下刃部材22の平坦部22cに対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態に配置されている。このため、その押圧補助部材30は平行状態またはヒップアップ状態から、基部側の取付片32と係止部27との係合取着部を中心にして押圧回動される。
【0037】
このように、押圧補助部材30が押圧回動されると、その押圧補助部材30の先端の押圧部30cを介して上刃部材21の刃部21aの基端が押圧され、上刃先21bが下刃部材22の下刃先22bの内側つまり下刃部材22の基部側に向かって下降回動される。このため、押圧レバー28の操作開始時の状態では、両刃先21b,22b間のオフセット値OSが零に近いプラスに設定されていても、上刃先21bが下刃先22bに接近するにつれて、オフセット値OSが増加するプラス側へ徐々に移行する。
【0038】
また、押圧レバー28の押圧操作時には、支持ピン29の下端の軸部29aが円弧運動して、下刃部材22の刃部22aが持ち上げ回動されるため、下刃先22b側においても上刃先21b側と同様に、オフセット値OSがプラス側へ移行するように作用する。そして、図7及び図8に示すように、上下両刃先21b,22bが噛み合わされることによって、爪等の切断対象物Nが切断される。よって、切断対象物Nの硬度が異なっていても、切れ味を保ちながら刃先21b,22bへのダメージを受けることなく切断することができる。
【0039】
さらに、爪切りを格納する場合には、図1〜図3に示す爪切りの使用可能状態において、押圧レバー28を上刃部材21及び下刃部材22の基部側に引っ張りながら、押圧補助部材30の上面と当接する位置まで押圧回動させる。すると、上刃部材21及び下刃部材22が押圧補助部材30及び下カバー35に対して基部側に移動されて、図9及び図10に示すように、上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aが押圧補助部材30及び下カバー35の先端から没入される。このとき、押圧補助部材30の位置決め突部34が上刃部材21上の基部側の凹溝25Bから離脱されて刃部21a側の凹溝25Aに係合され、これによって上刃部材21及び下刃部材22が刃部21a,22aを没入させた格納状態に位置決め保持される。
【0040】
また、爪切りを格納状態から使用可能状態に戻す場合には、図9及び図10に示す格納状態において、押圧レバー28を押圧補助部材30の上面と当接した位置から起立回動させる。すると、押圧レバー28の先端縁が押圧補助部材30上のカム部33に摺接して、そのカム部33のカム作用により、上刃部材21及び下刃部材22が押圧補助部材30及び下カバー35に対して基部と反対側に移動され、図1〜図3に示すように、上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22aが押圧補助部材30及び下カバー35の先端から突出される。このとき、押圧補助部材30の位置決め突部34が上刃部材21上の刃部21a側の凹溝25Aから離脱されて基部側の凹溝25Bに係合され、これによって上刃部材21及び下刃部材22が刃部21a,22aを突出させた使用可能状態に位置決め保持される。
【0041】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この爪切りにおいては、上刃部材21と押圧レバー28との間に介在配置された押圧補助部材30が、下刃部材22に設けられた平坦部22cに対して平行状態、または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態となるように、上刃部材21の基部に対して取り付けられている。
【0042】
このため、押圧レバー28が押圧操作されたとき、押圧補助部材30が下刃部材22の平坦部22cに対して平行な状態またはヒップアップ状態から、上刃部材21の基部に対する取付部を中心にして押圧回動される。この押圧補助部材30の押圧回動により、押圧部30cを介して上刃部材21の上刃先21bが押圧されて、その上刃先21bが下刃部材22の下刃先22bの内側つまり下刃部材22の基部側に向かって下降回動される。そして、上下両刃先21b,22bが噛み合わされることにより、爪等の切断対象物Nが切断される。このため、押圧レバー28の操作開始時における両刃先21b,22b間のオフセット値OSを零に近いプラスに設定しても、上刃先21bが下刃先22bに接近して切断対象物Nの切断が進行するにつれて、オフセット値OSが増加するプラス側へ徐々に移行する。よって、硬度の異なった切断対象物Nの切断に対しても、切れ味を保ちながら刃先21b,22bへのダメージを受けることなく使用することができる。
【0043】
(2) この爪切りにおいては、前記上刃部材21と下刃部材22とが基部の折曲部23を介して一体に連結形成されている。上刃部材21には上刃先21bを有する刃部21aが設けられている。そして、前記押圧補助部材30の押圧部30cが、上刃部材21の刃部21aの基端を押圧するように配置されている。このため、上刃部材21と下刃部材22とを基部においてカシメ等により連結固定する必要がなく、構造及び組み付けを簡略化することができる。また、押圧補助部材30の押圧部30cにより上刃部材21の刃部21aの基端を直接押圧することができるため、上刃先21bがオフセット値OSの零方向に向かって下降されるのを阻止して、オフセット値OSのプラス方向に向かって下降されるように誘導することができる。
【0044】
(3) この爪切りにおいては、前記押圧レバー28を支持する支持ピン29が押圧レバー28に対して鈍角をなすように一体に連結され、その下端の軸部29aにおいて下刃部材22の下面に揺動可能に支持されるとともに、上端において上刃部材21にその長手方向へ移動可能に貫通されている。また、押圧補助部材30の上面には、押圧レバー28の押圧操作時に、その押圧レバー28に当接して押圧補助部材30を下方に押圧するカム部33が設けられている。
【0045】
このため、支持ピン29を押圧レバー28と一体に形成することができて、構造及び組み付けを簡略化することができる。また、支持ピン29の下端の軸部29aが下刃部材22の下面に揺動可能に支持されているため、押圧レバー28の押圧操作時に、支持ピン29の軸部29aが円弧運動して、下刃部材22が持ち上げ回動される。よって、下刃先22b側においても前記上刃先21b側と同様に、オフセット値OSをプラス側へ移行させることができる。さらに、押圧補助部材30の上面にカム部33が設けられているため、押圧レバー28の軽い押圧操作により、カム部33を介して押圧補助部材30を強く押圧回動させることができる。
【0046】
(4) この爪切りにおいては、前記カム部33が曲面から構成されている。このため、押圧レバー28の押圧操作時に、押圧レバー28が曲面からなるカム部33に対して滑らかに摺接して、押圧レバー28の操作を容易に行うことができる。
【0047】
(第2実施形態)
次に、この発明を具体化した爪切りの第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0048】
さて、この第2実施形態においては、図11〜図14に示すように、上刃部材21と下刃部材22とが別部材から構成されている。そして、上刃部材21及び下刃部材22の基部が、カシメピン41のカシメにより互いに連結固定されている。下刃部材22の長手方向の中間部よりも刃部22a側の位置には折曲部42が形成され、その折曲部42と刃部22aとの間の部分が平坦部22cとなっている。
【0049】
また、この実施形態においては、支持ピン29が押圧レバー28と別部材で構成されている。そして、上刃部材21及び下刃部材22の平坦部21c,22c及び押圧補助部材30の上壁部30aに設けられた貫通孔24,31に対して支持ピン29が回転可能に貫通支持されるとともに、その支持ピン29の上端に押圧レバー28が取付ピン43を介して反転回動可能に取り付けられている。また、押圧レバー28の先端下面に、側面ほぼ三角山形状のカム部33が形成されている。
【0050】
さらに、この実施形態においては、押圧補助部材30の上壁部30aの基部が前記カシメピン41の上端にカシメ付け固定されている。そして、カシメピン41の上端により、上刃部材21の基部から上方に上壁部30aの基部が離間することにより、前記第1実施形態の場合と同様に、この押圧補助部材30の取付状態で、押圧補助部材30の上壁部30aが下刃部材22の平坦部22cに対して平行状態、または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態となるように構成されている。
【0051】
(第2実施形態の作用)
よって、この実施形態の爪切りにおいても、爪等の切断対象物Nを切断する場合には、図11に示す使用可能状態で押圧レバー28を押圧操作すると、押圧補助部材30が前記の平行状態またはヒップアップ状態から押圧回動される。それにより、押圧補助部材30の押圧部30cを介して上刃部材21の刃部21aが押圧され、その上刃先21bが下刃部材22の下刃先22bの内側に向かって下降回動される。このため、第1実施形態の場合と同様に、押圧レバー28の押圧操作に伴って、上刃先21bが下刃先22bに接近するにつれて、両刃先21b,22b間のオフセット値OSがプラス側へ徐々に移行され、図13に示すように、切断対象物Nの切断が行われる。
【0052】
これに対して、爪切りを格納する場合には、図11に示す使用可能状態から、押圧レバー28を取付ピン43の周りで上刃部材21及び下刃部材22の刃部21a,22a側に反転回動させた後、その押圧レバー28を支持ピン29とともに上刃部材21及び下刃部材22の基部側に回転させる。すると、図14に示すように、押圧レバー28が押圧補助部材30の上面に接合した格納状態に配置される。
【0053】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(1)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(5) この爪切りにおいては、前記上刃部材21と下刃部材22とが別部材から構成され、それらの基部が互いに連結されている。このため、上刃部材21と下刃部材22とを別部材で構成した従来の爪切りに対して、構造を大きく変更することなく具体化することができる。
【0054】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記両実施形態において、押圧補助部材30を上カバーと兼用することなく、別部材として設けること。
【0055】
・ 前記第1実施形態において、押圧補助部材30上のカム部33を、側面多角形等の異なった形状に形成すること。
・ 前記第2実施形態において、上刃部材21及び下刃部材22の基部を、溶接等の異なった固定構造で連結すること。
【0056】
・ 前記第1実施形態において、上刃部材21及び下刃部材22がその刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁から没入させた状態に移動する代わりに、刃部21a,22aを押圧補助部材30の上壁部30aの先端縁と略面一になるように、位置決め突部34と、凹溝25Aとの係合の位置関係を設定して位置決め保持すること。
【符号の説明】
【0057】
21…上刃部材、21a…刃部、21b…上刃先、22…下刃部材、
22b…下刃先、22c…平坦部、23…折曲部、24…貫通孔、
25A,25B…凹溝、27…係止部、28…押圧レバー、
29…支持ピン、29a…軸部、30…押圧補助部材、30c…押圧部、
31…貫通孔、32…取付片、33…カム部、41…カシメピン、
42…折曲部、N…切断対象物、OS…オフセット値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上刃先を有する上刃部材と、その上刃部材に対して基部が連結されるとともに下刃先を有する下刃部材と、前記上刃部材及び下刃部材を貫通する支持ピンに連結されるとともに前記上刃部材を押圧して前記上刃先と下刃先とを噛み合わせる押圧レバーとを備えた爪切りにおいて、
前記下刃部材には、少なくとも前記支持ピンを貫通させる部位に平坦部が形成されるとともに、その平坦部よりも基部側に折曲部が形成され、
前記上刃部材と押圧レバーとの間には、押圧レバーの操作により押圧されて前記上刃部材の上刃先を押圧する押圧部を備えた押圧補助部材が介在配置され、
その押圧補助部材は、前記下刃部材の平坦部に対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態で前記上刃部材の基部に対して取り付けられ、
前記押圧レバーが押圧操作された際に、前記上刃先が下刃先に対して基部側にオフセットされた状態で噛み合うようにしたことを特徴とする爪切り。
【請求項2】
前記上刃部材と下刃部材とは基部の折曲部を介して一体に連結形成され、前記上刃部材には前記上刃先を有する刃部が設けられ、前記押圧補助部材の押圧部が前記刃部の基端を押圧可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項3】
前記支持ピンが押圧レバーに対して鈍角をなすように一体に連結され、
前記支持ピンは、下端において前記下刃部材の下面に揺動可能に支持されるとともに、上端において前記上刃部材にその長手方向へ移動可能に貫通され、
前記押圧補助部材の上面には、押圧レバーの押圧操作時に、その押圧レバーに当接して押圧補助部材を下方に押圧するカム部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の爪切り。
【請求項4】
前記カム部は曲面であることを特徴とする請求項3に記載の爪切り。
【請求項5】
前記上刃部材と下刃部材とは別部材から構成され、それらの基部が互いに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項1】
上刃先を有する上刃部材と、その上刃部材に対して基部が連結されるとともに下刃先を有する下刃部材と、前記上刃部材及び下刃部材を貫通する支持ピンに連結されるとともに前記上刃部材を押圧して前記上刃先と下刃先とを噛み合わせる押圧レバーとを備えた爪切りにおいて、
前記下刃部材には、少なくとも前記支持ピンを貫通させる部位に平坦部が形成されるとともに、その平坦部よりも基部側に折曲部が形成され、
前記上刃部材と押圧レバーとの間には、押圧レバーの操作により押圧されて前記上刃部材の上刃先を押圧する押圧部を備えた押圧補助部材が介在配置され、
その押圧補助部材は、前記下刃部材の平坦部に対して平行状態または平行状態よりも基部側ほど上がったヒップアップ状態で前記上刃部材の基部に対して取り付けられ、
前記押圧レバーが押圧操作された際に、前記上刃先が下刃先に対して基部側にオフセットされた状態で噛み合うようにしたことを特徴とする爪切り。
【請求項2】
前記上刃部材と下刃部材とは基部の折曲部を介して一体に連結形成され、前記上刃部材には前記上刃先を有する刃部が設けられ、前記押圧補助部材の押圧部が前記刃部の基端を押圧可能に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項3】
前記支持ピンが押圧レバーに対して鈍角をなすように一体に連結され、
前記支持ピンは、下端において前記下刃部材の下面に揺動可能に支持されるとともに、上端において前記上刃部材にその長手方向へ移動可能に貫通され、
前記押圧補助部材の上面には、押圧レバーの押圧操作時に、その押圧レバーに当接して押圧補助部材を下方に押圧するカム部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の爪切り。
【請求項4】
前記カム部は曲面であることを特徴とする請求項3に記載の爪切り。
【請求項5】
前記上刃部材と下刃部材とは別部材から構成され、それらの基部が互いに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−232052(P2012−232052A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104211(P2011−104211)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000112473)フェザー安全剃刀株式会社 (17)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000112473)フェザー安全剃刀株式会社 (17)
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