説明

爪切り

【解決手段】上下両刃先1a,2aより内側で上下両刃体1,2間にストッパ12を配設したので、使用時にストッパ12が邪魔にならず、爪を上下両刃先1a,2a間に円滑に挿入することができる。互いに離間する上下両刃先1a,2a間に対向する爪当接部24をストッパ12に設け、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lを変更してその変更距離ごとに保つように、ストッパ12を位置決めすることができるので、上下両刃先1a,2aの外側から上下両刃先1a,2a間に挿入した爪を爪当接部24に当てがった際、ストッパ12に対する爪の押当て力をさほど必要とせず、使用時に爪切りを安定させて操作することができるとともに、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lを保って所望の切込み寸法で爪を切断することができる。
【効果】爪切りの操作性を向上させて使い勝手を良くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用時に互いに接近または離間する両刃体の刃先間に挿入した爪が当てがわれるストッパを備えた爪切りに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1では、互いに接近または離間する刃先を有する上下両刃体を備えた爪切りにおいて、上下両刃体の刃先より内側で上下両刃体間に、刃先の外側から上下両刃先間に挿入した爪が当てがわれるストッパ(支板1)が取り付けられている。このストッパは弾性のある合成樹脂板により湾曲成形されている。そのため、ストッパに爪を当てがって押すと、その押当て力に応じてストッパが撓んで刃先に対するストッパの距離が任意に設定され、その押当て力を維持してこの距離を保ちながら、押圧操作部により上下両刃体の刃先を互いに接近させて爪を切断する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭47−24792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1では、ストッパに爪を押し当てた状態を維持したまま、上下両刃体を押圧操作部により操作して爪を切断しなければならないので、その押当て力により爪切りが動くことのないようにその押当て力に抗して爪切りを支えなければならず、使用時の操作において爪切りの安定性に欠けるおそれがあった。また、その押当て力を維持して刃先に対するストッパの距離を保つことにより所望の切込み寸法で爪を切断することが難しかった。従って、爪切りを操作する際の使い勝手が悪くなっていた。
【0005】
この発明は、上記ストッパを備えた爪切りの操作性を向上させて使い勝手を良くすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜8に示す第1実施形態、図9に示す第1実施形態の別例、図10に示す第2実施形態、図11に示す第3実施形態)の符号を援用して本発明を説明する。
【0007】
請求項1の発明(第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態とに対応)においては、互いに接近または離間する刃先(1a,2a)を有する両刃体(1,2)を備えた爪切りにおいて、両刃体(1,2)の刃先(1a,2a)より内側で両刃体(1,2)間には、刃先(1a,2a)の外側から両刃先(1a,2a)間に挿入した爪(N)が当てがわれるストッパ(12)を、刃先(1a,2a)に対する距離(L)が変更されて位置決めし得るように移動可能に設けている。
【0008】
請求項1の発明では、両刃体(1,2)の刃先(1a,2a)より内側で両刃体(1,2)間にストッパ(12)を配設したので、ストッパ(12)を両刃先(1a,2a)より外側に配設した場合と比較して、使用時にストッパ(12)が邪魔にならず、爪(N)を両刃先(1a,2a)間に円滑に挿入することができるばかりでなく、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の距離(L)を保つようにストッパ(12)を位置決めし得るので、ストッパ(12)に対する爪(N)の押当て力をさほど必要とせず、使用時に爪切りを安定させて操作することができるとともに、爪切りを使用する身体箇所や姿勢などに応じてストッパ(12)に対する爪(N)の押当て力が変化しても、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の距離(L)を保って所望の切込み寸法で爪(N)を切断することができる。
【0009】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明(第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態とに対応)において、前記ストッパ(12)は互いに離間する両刃先(1a,2a)間に対向する爪当接部(24)を有している。請求項2の発明では、刃先(1a,2a)の外側から両刃先(1a,2a)間に挿入した爪(N)をストッパ(12)に対し爪当接部(24)で容易に当てがうことができる。
【0010】
請求項2の発明を前提とする請求項3の発明(第1実施形態及びその別例と第2実施形態とに対応)において、前記ストッパ(12)は刃体(1,2)に対し間隙(G)をあけて浮いた腕部(23)を有し、前記爪当接部(24)はこの腕部(23)に設けられている。請求項3の発明では、両刃体(1,2)間でストッパ(12)の周辺に空間を残して、両刃体(1,2)の刃先(1a,2a)をストッパ(12)で邪魔されることなく互いに接近または離間させることができる。
【0011】
請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項4の発明(第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態とに対応)において、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の距離(L)を変更距離ごとに保つことができる位置決め手段(13)を設けている。請求項4の発明では、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の変更距離(L)ごとにストッパ(12)を位置決めして、請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明の効果を発揮させることができる。
【0012】
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明(第1実施形態及びその別例に対応)において、前記位置決め手段(13)は、前記ストッパ(12)とともに刃先(1a,2a)に対する接離方向へ移動するスライダ(14)と、このスライダ(14)を刃先(1a,2a)に対する接離方向へ移動させる移動操作手段(15)とを有している。請求項5の発明では、移動操作手段(15)によりスライダ(14)をストッパ(12)とともに移動させて、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の距離(L)を容易に変更することができる。
【0013】
請求項5の発明を前提とする請求項6の発明(第1実施形態及びその別例に対応)において、前記移動操作手段(15)は、刃体(2)に対し回動可能に支持された回動操作軸(16)と、この回動操作軸(16)の回動中心(16a)に対する距離が異なるカム面(20)を有するカム部(19)と、この回動操作軸(16)によりカム部(19)を回動させた際にこのカム面(20)が当接してスライダ(14)を刃先(1a,2a)に対する接離方向へ移動させるカム連動部(21)とを有している。請求項6の発明では、移動操作手段(15)としてカム機構を採用して、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の距離(L)を容易に変更することができる。
【0014】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項3の発明を前提とする第7の発明(第1実施形態及びその別例と第2実施形態とに対応)において、前記爪当接部(24)は前記腕部(23)で屈曲して設けられている。第7の発明では、両刃先(1a,2a)間に爪当接部(24)を対向させ易い。
【0015】
請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第8の発明(第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態とに対応)において、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の距離(L)を複数段階に変更して段階ごとに所定距離に保つことができる位置決め手段(13)を設けている。第8の発明では、刃先(1a,2a)に対するストッパ(12)の変更距離(L)ごとにストッパ(12)を位置決めして、請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項の発明の効果を発揮させることができる。
【0016】
請求項5の発明を前提とする第9の発明(第1実施形態及びその別例と第2実施形態とに対応)において、前記ストッパ(12)とスライダ(14)とは一体成形されている。第9の発明では、位置決め手段(13)のスライダ(14)をストッパ(12)とともに容易に成形することができる。
【0017】
請求項6の発明を前提とする第10の発明(第1実施形態及びその別例に対応)にかかる位置決め手段(13)においては、スライダ(12)と、移動操作手段(15)のカム部(19)及びカム連動部(21)とをそれぞれ両刃体(1,2)間の内側に配設し、移動操作手段(15)の回動操作軸(16)は、両刃体(1,2)間の内側でカム部(19)をスライダ(14)に対し回動可能に支持し、刃体(1,2)の外側に配設した操作摘み(29)と一体的に回動可能に連結されている。第10の発明では、移動操作手段(15)として採用したカム機構において、刃体(1,2)の外側に配設した操作摘み(29)により回動操作軸(16)を容易に操作することができる。
【0018】
第10の発明を前提とする第11の発明(第1実施形態及びその別例に対応)において、前記スライダ(14)は回動操作軸(16)を挿通して刃先(1a,2a)に対する接離方向へスライダ(14)を回動操作軸(16)に対し相対移動させるガイド孔(27)を有し、前記カム連動部(21)はこのガイド孔(27)を挟む両側でスライダ(14)に設けられている。第11の発明では、位置決め手段(13)をコンパクトにまとめることができる。
【0019】
請求項1から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明、または、第7〜11の発明のうちいずれか一つの発明を前提とする第12の発明(第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態とに対応)において、刃先(1a,2a)に隣接して両刃体(1,2)に支軸(6)を挿通し、この支軸(6)の一端部を一方の刃体(2)の外側に係止するとともに、他方の刃体(1)の外側でこの支軸(6)の他端部には両刃体(1,2)の刃先(1a,2a)を互いに接近または離間させる押圧操作部(9)を連結している。第12の発明では、特定構造の爪切りにおいて、請求項1から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明、または、第7〜11の発明のうちいずれか一つの発明の効果を発揮させることができる。
【0020】
第12の発明を前提とする第13の発明(第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態とに対応)において、前記ストッパ(12)は前記支軸(6)を挿通して刃先(1a,2a)に対する接離方向へストッパ(12)を支軸(6)に対し相対移動させるガイド孔(25)を有している。第13の発明では、位置決め手段(13)をコンパクトにまとめることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、刃先(1a,2a)の外側から両刃先(1a,2a)間に挿入した爪(N)が当てがわれるストッパ(12)を備えた爪切りの操作性を向上させて使い勝手を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は第1実施形態にかかる爪切りにおいて刃先に対するストッパの距離を「中間」に設定した不使用状態を示す側面図であり、(b)は同じく底面図であり、(c)は同じく平面図であり、(d)は同じくこの距離を「中間」に設定した使用状態を示す一部切欠き側面図である。
【図2】(a)は図1(a)の爪切りを側面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく平面側から見た部分拡大断面図である。
【図3】図1(a)の爪切りの部品を示す分解斜視図である。
【図4】(a)は第1実施形態にかかる爪切りにおいて刃先に対するストッパの距離を「最小」に設定した不使用状態を示す側面図であり、(b)は同じく底面図である。
【図5】(a)は第1実施形態にかかる爪切りにおいて刃先に対するストッパの距離を「最大」に設定した不使用状態を示す側面図であり、(b)は同じく底面図である。
【図6】(a)は図4(a)の爪切りを側面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく平面側から見た部分拡大断面図である。
【図7】(a)は図5(a)の爪切りを側面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく平面側から見た部分拡大断面図である。
【図8】(a)は図2(a)のスライダ及びカム部材を平面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は図6(a)のスライダ及びカム部材を平面側から見た部分拡大断面図であり、(c)は図7(a)のスライダ及びカム部材を平面側から見た部分拡大断面図である。
【図9】(a)は第1実施形態の別例にかかる爪切りにおいて図2(a)に相当する部分拡大断面図であり、(b)は同じく図2(b)に相当する部分拡大断面図である。
【図10】(a)は第2実施形態にかかる爪切りにおいて刃先に対するストッパの距離を「中間」に設定した不使用状態を側面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく「最小」に設定した不使用状態を側面側から見た部分拡大断面図であり、(c)は同じく「最大」に設定した不使用状態を側面側から見た部分拡大断面図である。
【図11】(a)は第3実施形態にかかる爪切りにおいて刃先に対するストッパの距離を「最小」に設定した不使用状態を側面側から見た部分拡大断面図であり、(b)は同じく平面側から見た部分拡大断面図であり、(c)は同じくこの距離を「第一中間」に設定した不使用状態を平面側から見た部分拡大断面図であり、(d)は同じくこの距離を「第二中間」に設定した不使用状態を平面側から見た部分拡大断面図であり、(e)は同じくこの距離を「最大」に設定した不使用状態を平面側から見た部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の第1実施形態にかかる爪切りについて図1〜8を参照して説明する。
図1(d)に示すように、上刃体1の基端部と下刃体2の基端部とが互いに取着され、上刃体1の先端部に形成された上刃先1aと下刃体2の先端部に形成された下刃先2aとが上下方向で互いに離間して対向している。上刃体1及び下刃体2の基端部側はケース3に挿入されている。図1(a)及び図2(a)に示すように、上刃先1aに隣接して上刃体1に形成された上支持孔4と下刃先2aに隣接して下刃体2に形成された下支持孔5とに支軸6がその軸線6aを中心に回動可能に挿通されている。この支軸6の下端部に形成された頭部7は下刃体2の外側で下支持孔5の外周縁部に係止されている。この支軸6の上端部に形成された支持部8は上支持孔4を通して上刃体1の外側に突出している。この支持部8には支持孔8aが形成されている。上刃体1の外側でこの支持孔8aには押圧操作部9の先端部に形成された二股状の支持部10が図1(c)に示すように支軸6の軸線6aに対し直交する中心線10aで回動可能に支持されている。上刃体1と下刃体2とは上刃先1aと下刃先2aとが上下方向へ互いに離間する弾性を有している。上刃体1の弾性により上刃体1の先端部が押圧操作部9の支持部10に圧接されている。図1(a)(c)に示す不使用状態では押圧操作部9が上刃体1に寝かせられる。図1(d)に示すように、押圧操作部9を支軸6に対し回動させるとともに支軸6も回動させると、押圧操作部9が上刃体1で斜め上方に起立する使用状態となる。その使用状態で押圧操作部9を押し下げると、支軸6の頭部7で下刃体2を支えながら上刃体1がその弾性に抗して押し下げられて上刃先1aと下刃先2aとが互いに接近する。
【0024】
下刃体2には図3に示すストッパ機構11が取り付けられている。このストッパ機構11は、ストッパ12以外に位置決め機構13(位置決め手段)を備えている。この位置決め機構13は、このストッパ12と一体成形されたスライダ14と、このスライダ14を介してストッパ12と連動する移動操作機構15(移動操作手段)とを備えている。移動操作機構15は、互いに螺合される雄ねじ部材17及び雌ねじ部材18を有する回動操作軸16と、この回動操作軸16の回動中心16aに対する距離が異なるカム面20を有するカム部材19と、スライダ14に形成されたカム連動部21とを備えている。
【0025】
ストッパ12とスライダ14とは共に金属板材をプレス加工して一体成形されている。スライダ14の先端部で上方へ段差状に形成された屈曲部22からストッパ12が下刃先2a側へ向けて延設されている。ストッパ12は下刃体2に対し間隙Gをあけて浮いた状態でスライダ14と平行に延設された腕部23を有している。この腕部23の先端部には上下両刃先1a,2aと前記支軸6との間で爪当接部24が上方へ屈曲して形成されている。この爪当接部24は、互いに離間する上下両刃先1a,2a間の空隙Sに対向している。この腕部23には前記支軸6を挿通するガイド孔25が形成されている。
【0026】
スライダ14が載置された下刃体2には支持孔26が形成されている。スライダ14には下刃体2の基端部と先端部とを結ぶ長手方向へ延びるガイド孔27が形成されているとともにガイド孔27を挟む長手方向両側で前記両カム連動部21が上方へ折曲されて突設されている。金属により成形されたカム部材19には、カム部材19の外周に形成されたカム面20の下側で回動中心16aを有する円筒部19aが形成されているとともに、円筒部19aの下端両側に舌片部19bが突設されている。このガイド孔27及び支持孔26には円筒部19aが挿通されているとともに、下刃体2の外側に配設された操作摘み29に舌片部19bが係入されて、カム部材19がガイド孔27及び支持孔26に回動可能に嵌め込まれている。図8(a)(b)(c)に示すように、カム部材19のカム面20はこの両カム連動部21に摺接されている。カム部材19には図2(a)(b)に示すようにカム面20及び両カム連動部21の上方で180度間隔の係止突部28aを有する止め板部28がそのカム面20及び両カム連動部21を覆う防塵蓋として機能するように形成されている。回動操作軸16において、雌ねじ部材18は止め板部28の上方からカム部材19に挿嵌され、雄ねじ部材17は下刃体2の外側との間で操作摘み29を挟んで雌ねじ部材18に螺合されている。カム部材19と操作摘み29とは雄ねじ部材17及び雌ねじ部材18を介して一体的に回動する。カム部材19の回動に伴い止め板部28の両係止突部28aは、スライダ14に突設された係止凸部30に当接して、カム部材19の回動を阻止する。
【0027】
花模様に成形された操作摘み29の外周には、90度間隔で膨出部31が花びらとして形成され、一対の膨出部31が下刃体2の幅方向両側から摘みとして機能するように突出している。図1(b)に示すように各膨出部31のうち三つの膨出部31に目印31a,31b,31cが付されているとともに、三つの目印31a,31b,31cのうち二つの目印31a,31bには「1」や「2」の番号が付されている。下刃体2には操作摘み29の回動に伴い三つの目印31a,31b,31cのうちいずれかの目印に近接する目印32が付されている。なお、番号なしの膨出部31の目印31cに「3」の番号を付してもよいし、目印31a,31b,31cに番号以外に文字や色などの識別手段を付してもよい。この目印31a,31b,31cは、打刻や印刷や貼付けやレーザマーキングや腐食などの各種方法により付すことができる。
【0028】
前記カム面20は回動操作軸16の回動中心16aに対し偏心距離e(例えば約1mm)だけ離れた円形中心20aを有する直径D(例えば約7mm)の円形状をなし、その直径Dは前記両カム連動部21間の長手方向距離Mとほぼ等しく設定されている。また、前記カム部材19の円筒部19aの外径dはスライダ14のガイド孔27の幅方向距離Wとほぼ等しく設定されている。操作摘み29を回動操作すると、カム部材19が回動操作軸16を介して回動し、カム部材19のカム面20がカム連動部21を押すため、スライダ14がストッパ12とともに上下両刃先1a,2aに対する接離方向へ移動する。その際、一体成形されたストッパ12及びスライダ14が支軸6とカム部材19の円筒部19aとの二箇所で支持されながら、ストッパ12のガイド孔25が支軸6に対し移動するとともに、スライダ14のガイド孔27が回動操作軸16及びカム部材19に対し移動する。そのため、前述した直径Dと長手方向距離Mとの設定や、外径dと幅方向距離Wとの設定と相俟って、スライダ14及びストッパ12が円滑に移動する。
【0029】
さて、図1(a)(b)に示すように操作摘み29の目印31bを下刃体2の目印32に合わせた状態では、図2(a)(b)に示すように、カム部材19が回動操作軸16を介して回動し、カム部材19のカム面20がカム連動部21を押すため、スライダ14がストッパ12とともに上下両刃先1a,2aに対する接離方向へ移動し、ストッパ12の爪当接部24が位置決めされて保持される。従って、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離L(約1.5mm)が「中間」に設定される。上下両刃先1a,2a間に挿入した爪Nは、爪当接部24に当接し、その中間距離Lに応じた寸法で上下両刃先1a,2aにより切断される。
【0030】
図4(a)(b)に示すように操作摘み29の目印31aを下刃体2の目印32に合わせると、図6(a)(b)に示すように、同様にして上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離L(約0.5mm)が「最小」に設定され、その最小距離Lに応じた寸法で爪Nが上下両刃先1a,2aにより切断される。その際、カム部材19の回動に伴い止め板部28の係止突部28aがスライダ14の係止凸部30に当接するため、前記距離Lを「最小」にしたことを認識することができる。
【0031】
図5(a)(b)に示すように操作摘み29の目印31cを下刃体2の目印32に合わせると、図7(a)(b)に示すように、同様にして上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離L(約2.5mm)が「最大」に設定され、その最大距離Lに応じた寸法で爪Nが上下両刃先1a,2aにより切断される。その際、カム部材19の回動に伴い止め板部28の係止突部28aがスライダ14の係止凸部30に当接するため、前記距離Lを「最大」にしたことを認識することができる。
【0032】
なお、これらの距離Lについては、例えば0.1mm〜5mmの範囲で適宜変更して設定することができる。
操作摘み29の目印31aと目印31bとの間の任意位置を下刃体2の目印32に合わせることもでき、その場合には距離Lが「最小」と「中間」との間に設定される。また、操作摘み29の目印31bと目印31cとの間の任意位置を下刃体2の目印32に合わせることもでき、その場合には距離Lが「中間」と「最大」との間に設定される。
【0033】
図9に示す第1実施形態の別例では、カム部材19の止め板部28において180度間隔の両係止突部28aに対し90度間隔をなす係止突部28bがさらに形成され、図1(b)と同様に操作摘み29の目印31bを下刃体2の目印32に合わせた状態で、その係止突部28bがスライダ14の係止凸部30に係止される。その係止抵抗により、前記距離Lを「中間」にしたことを認識することができるとともに、その「中間」の状態でカム部材19を位置決めすることができる。
【0034】
次に、本発明の第2実施形態にかかる爪切りについて第1実施形態との相違点を中心に図10を参照して説明する。
スライダ14の下側に歯33aが形成されているとともに、下刃体2にはその歯33aに対向して歯33bが形成され、それらの歯33a,33bが互いに噛み合わされている。下刃体2の歯33bに対するスライダ14の歯33aの噛合い位置を変更するように、スライダ14を上下両刃先1a,2aに対する接離方向へ移動させることができる。図示しないが、スライダ14に操作部を設けてもよい。スライダ14の歯33aは下刃体2の歯33bに対する任意位置で位置決めされて保持される。例えば、図10(a)では、図1(a)(b)及び図2(a)(b)に示す場合と同様に、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lが「中間」に設定される。図10(b)では、図4(a)(b)及び図6(a)(b)に示す場合と同様に、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lが「最小」に設定される。図10(c)では、図5(a)(b)及び図7(a)(b)に示す場合と同様に、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lが「最大」に設定される。
【0035】
次に、本発明の第3実施形態にかかる爪切りについて第1実施形態との相違点を中心に図11を参照して説明する。
図11(a)に示すように、回動操作軸16は、上下両刃体1,2間で支軸6の外周に軸線6aを中心に回動可能に挿嵌されているとともに、下刃体2に支軸6の軸線6aを中心に回動可能に支持され、下刃体2の外側に係止された操作摘み29と一体的に形成されている。支軸6の頭部7は操作摘み29に係止されている。上下両刃体1,2間で回動操作軸16と一体的に設けられたストッパ12の外周には支軸6の軸線6aに対する距離の異なる四辺の爪当接部24が形成されている。図11(b)(c)(d)(e)に示すように、操作摘み29には各爪当接部24に対応して90度間隔で係止凹部34a,34b,34c,34dが形成され、下刃体2には操作摘み29の回動に伴いいずれかの係止凹部34a,34b,34c,34dに係入される一つの係止凸部35が形成されている。操作摘み29の回動に伴い、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lを各爪当接部24ごとに「最小」と「第一中間」と「第二中間」と「最大」とに変更することができる。
【0036】
本実施形態は下記の効果を有する。
(1) 第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態においては、上下両刃体1,2の刃先1a,2aより内側で上下両刃体1,2間にストッパ12を配設したので、使用時にストッパ12が邪魔にならず、爪Nを上下両刃先1a,2a間に円滑に挿入することができる。従って、爪切りの操作性を向上させて使い勝手を良くすることができる。
【0037】
(2) 第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態においては、互いに離間する上下両刃先1a,2a間に対向する爪当接部24をストッパ12に設け、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lを変更してその変更距離ごとに保つように、ストッパ12を位置決め機構13により位置決めすることができる。そのため、上下両刃先1a,2aの外側から上下両刃先1a,2a間に挿入した爪Nを爪当接部24に当てがった際、ストッパ12に対する爪Nの押当て力をさほど必要とせず、使用時に爪切りを安定させて操作することができるとともに、上下両刃先1a,2aに対する爪当接部24の距離Lを保って所望の切込み寸法で爪Nを切断することができる。また、爪切りを使用する身体箇所や姿勢などに応じてストッパ12に対する爪Nの押当て力が変化しても、この距離Lを一定に保つことができる。従って、爪切りの操作性を向上させて使い勝手を良くすることができる。
【0038】
(3) 第1実施形態及びその別例と第2実施形態において、ストッパ12は下刃体2)に対し間隙Gをあけて浮いた腕部23を有し、爪当接部24をこの腕部23に屈曲させて設けたので、上下両刃体1,2間でストッパ12の周辺に空間を残して、上下両刃体1,2の刃先1a,2aをストッパ12で邪魔されることなく互いに接近または離間させることができる。
【0039】
(4) 第1実施形態及びその別例において、位置決め機構13は、ストッパ12と一体成形したスライダ14と、回動操作軸16と、カム面20を有するカム部材19と、カム面20が当接するカム連動部21とを備えているので、カム機構を採用して、上下両刃先1a,2aに対するストッパ12の距離Lを容易に変更することができる。
【0040】
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
・ 第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態においては、上下両刃体1,2に挿通した支軸6に押圧操作部9を連結した形態の爪切りにストッパ12を設けたが、その支軸6を省略して押圧操作部9を例えば下刃体2に連結した形態の爪切りにストッパ12を設けることができる。
【0041】
・ 第1実施形態及びその別例と第2実施形態にかかる位置決め機構13は、ストッパ12と一体成形したスライダ14と、移動操作機構15とにより構成されているが、ストッパ12と分離させたスライダ14をストッパ12とともに上下両刃先1a,2aに対する接離方向へ移動させるように構成してもよい。
【0042】
・ 第1実施形態及びその別例において、スライダ14と、回動操作軸16やカム部材19やカム連動部21を含む移動操作機構15とを備えた位置決め機構13を上刃体1側やケース3側に配設してもよい。
【0043】
・ 第1実施形態及びその別例において、操作摘み29やその膨出部31の形態を変更してもよい。
・ 第1実施形態及びその別例において、操作摘み29の回動操作可能角度として、180度以外に、180度から360度の範囲や180度未満の範囲に設定してもよい。
【0044】
・ 第2実施形態において、スライダ14及び下刃体2の歯33a,33bの代わりに磁力を利用した着脱機構を採用し、その着脱機構でスライダ14と下刃体2とを互いに着脱させてスライダ14を下刃体2に対し移動させるようにしてもよい。
【0045】
・ 第1実施形態及びその別例と第2,3実施形態において、ケース3を上下両刃先1a,2aまで延設してケース3による爪飛散防止機能を高めてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…上刃体、1a…上刃先、2…下刃体、2a…下刃先、11…ストッパ機構、12…ストッパ、13…位置決め機構(位置決め手段)、14…スライダ、15…移動操作機構(移動操作手段)、16…回動操作軸、16a…回動中心、19…カム部材、20…カム面、21…カム連動部、23…腕部、24…爪当接部、N…爪、L…距離、G…間隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接近または離間する刃先を有する両刃体を備えた爪切りにおいて、両刃体の刃先より内側で両刃体間には、刃先の外側から両刃先間に挿入した爪が当てがわれるストッパを、刃先に対する距離が変更されて位置決めし得るように移動可能に設けたことを特徴とする爪切り。
【請求項2】
前記ストッパは互いに離間する両刃先間に対向する爪当接部を有していることを特徴とする請求項1に記載の爪切り。
【請求項3】
前記ストッパは刃体に対し間隙をあけて浮いた腕部を有し、前記爪当接部はこの腕部に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の爪切り。
【請求項4】
刃先に対するストッパの距離を変更距離ごとに保つことができる位置決め手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一つの請求項に記載の爪切り。
【請求項5】
前記位置決め手段は、前記ストッパとともに刃先に対する接離方向へ移動するスライダと、このスライダを刃先に対する接離方向へ移動させる移動操作手段とを有していることを特徴とする請求項4に記載の爪切り。
【請求項6】
前記移動操作手段は、刃体に対し回動可能に支持された回動操作軸と、この回動操作軸の回動中心に対する距離が異なるカム面を有するカム部と、この回動操作軸によりカム部を回動させた際にこのカム面が当接してスライダを刃先に対する接離方向へ移動させる連動部とを有していることを特徴とする請求項5に記載の爪切り。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−106788(P2013−106788A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254103(P2011−254103)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)