説明

牛等の四足動物の衣服

【課題】胴回り全体を覆うことにより腹部を保温可能な四足動物の衣服において、胴回りの大きさの異なる四足動物に対して着用可能とする。
【解決手段】展開状態で1枚のシート状であり、四足動物の胴回りに巻きつけて胴回り方向の一方の端部に形成した連結具と他方の端部に形成した連結具を相互に連結することにより連結することにより四足動物の胴回り全体を被覆する。一方の端部に所定間隔を置いて複数の連結具32,33を設定し、他方の端部に所定間隔をおいて複数の連結具34,45を設定することにより、四足動物の胴回りの大きさに応じて複数の連結具のいずれかを選択して連結可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛等の四足動物の衣服に関する。より詳細には、牛等の四足動物の胴回りを被覆する衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
子牛は抵抗力が弱いため疾病にかかりやすく、特に、出生後約2ヶ月間は寒さや昼夜の温度差により下痢等の疾病を引き起こして死亡することが少なくない。酪農業又は畜産業においては、家畜である子牛の死亡は大きな損失となる。そこで、子牛の疾病を防ぐために細心の注意を払い防寒対策を施している。防寒対策としては、例えば、ヒーターにより牛舎内を暖房したり、あるいは、牛用の衣類を着用させたり、毛布を被せたり、人用の衣服を転用して着用させる場合もある。
【0003】
牛用の衣類として、例えば特許文献1には牛用の衣服が開示されている。この牛用の衣服は生地部分を牛の背中に被せ、生地部分に備えられた紐を首の下と腹部とで結び合わせることにより、生地部分が牛の体から脱落するのを防ぐ形態となっている。この衣服は、生地部分がポリビニルアルコール系繊維からなる割繊不織布によって構成されており、それにより屋外に放牧する牛を悪天候や害虫から守ることができる。また、特許文献2には子牛用の胴巻きが開示されている。この胴巻きは、全体的にひし形をしており、子牛の背中に被せて胴に巻きつけ、ひし形の相対する頂点部分を腹側で互いに連結することにより子牛に着用させる胴巻きである。この胴巻きによれば、子牛に容易に着用させることができ、保温することができるため暖房費を削減することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平3−224421号公報
【特許文献2】特開昭59−31635号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、出生後約2ヶ月間の子牛の下痢等の疾病を防ぐためには防寒対策が必要であるが、特に腹部を冷えから守ることが有効である。上述したように、牛は衣類を着用させることにより保温することができるが、出生後約2ヶ月の間の子牛は体重が約2倍に増えるため、この時期の子牛に衣類を着用させる場合は、その成長に対応して衣類を着用させなければならない。引用文献1に記載の衣服は、紐を結び合わせることにより生地部分が体から脱落するのを防ぐ形態となっているため、紐の結び合わせる長さを変化させることにより牛の成長に対応して着用させることが可能である。しかしながら、背中側を覆い、腹部側は紐を結び合わせる形態となっているため、牛の胴回りが小さいうちは生地部分を腹部で突き合わせ紐を結び腹部を保温することができたとしても、成長に伴い胴回りが大きくなると腹部が生地部分からはみ出てしまい、腹部を保温することは困難であるという問題がある。一方、引用文献2に記載の胴巻きは、腹部がひし形の頂点部分が連結した状態となっており、腹部に対する保温効果が十分なものであるかは疑問である。また、牛の成長に伴い頂点部を連結することができなくなるため、胴回りの大きさに合わせて大きい胴巻きに交換しなければならないという問題がある。
【0006】
本発明の牛等の四足動物の衣服は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、牛等の四足動物の胴回りの大きさが異なる場合であっても、胴回り全体を被覆しつつ胴回りの大きさに合わせて衣服の胴回り寸法を調節可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る牛等の四足動物の衣服は次の手段をとる。
先ず、第1の発明は、牛等の四足動物の胴回りを被覆する衣服であって、展開状態で1枚のシート状であり、四足動物の胴回りに巻きつけて胴回り方向の両端部間に形成した連結手段により連結することにより胴回り全体を被覆することができ、該連結手段は一方の端部に形成される連結具と他方の端部に形成される連結具とからなり、該両連結具が相互に連結可能に形成されており該両連結具が一体に結合されることにより連結されるものであって、前記一方の端部の連結具と他方の端部の連結具の少なくともどちらかの連結具が胴回り方向に所定間隔をおいて複数設定されており、四足動物の胴回りの大きさに応じて複数の連結具のいずれかを選択して連結することを特徴とする牛等の四足動物の衣服である。
この第1の発明の牛等の四足動物の衣服によれば、先ず第1に四足動物の胴回りに巻きつけて胴回り方向の両端部間に形成した連結手段により連結することにより胴回り全体を被覆することができる。加えて、一方の端部の連結具と他方の端部の連結具の少なくともどちらかの連結具が胴回り方向に所定間隔をおいて複数設定されていることにより、四足動物の胴回りの大きさに応じて複数の連結具のいずれかを選択して連結し、胴回りを覆う長さを変化させることができる。それにより胴回りの大きさの異なる四足動物に対して胴回りの大きさに合わせて着用させることができる。
【0008】
次に、第2の発明は、上記第1の発明の牛等の四足動物の衣服であって、前記連結手段は、背中側に設けられていることを特徴とする牛等の四足動物の衣服である。
この第2の発明の牛等の四足動物の衣服によれば、連結手段が背中側に設けられていることにより四足動物の腹部を確実に被覆することができる。
【0009】
次に、第3の発明は、上記第1または第2の発明の牛等の四足動物の衣服であって、前記連結手段の連結具は四足動物の身体の長さ方向に配設されるファスナーであることを特徴とする牛等の四足動物の衣服である。
この第3の発明の牛等の四足動物の衣服によれば、連結手段がファスナーであるためその連結が確実に行われ、容易に外れることがない。また、連結箇所の周辺をいかなる方向へ引っ張っても連結が外れにくい。さらにファスナーが四足動物の身体の長さ方向に配設されていることにより両端部を隙間無く閉じ合わせることができる。
【0010】
次に、第4の発明は、上記第1から第3の発明のうちいずれかの牛等の四足動物の衣服であって、前方には、胸部の前に掛ける前方掛止手段を備えていることを特徴とする牛等の四足動物の衣服である。
この第4の発明の牛等の四足動物の衣服によれば、胸部の前に掛ける前方掛止手段を備えていることにより当該牛等の四足動物の衣服が後方へずれるのを防ぐことができる。
【0011】
次に、第5の発明は、上記第1から第4の発明のうちいずれかの牛等の四足動物の衣服であって、後方には、後足に掛止する後方掛止手段を備えていることを特徴とする牛等の四足動物の衣服である。
この第5の発明の牛等の四足動物の衣服によれば、後足に掛止する後方掛止手段を備えていることにより当該牛等の四足動物の衣服が捲れ上がるのを防ぐことができる。
【0012】
次に、第6の発明は、上記第1から第5の発明のうちいずれかの牛等の四足動物の衣服であって、陰部付近には、開状態と閉状態とに変化可能な切れ込み部を有していることを特徴とする牛等の四足動物の衣服である。
この第6の発明の牛等の四足動物の衣服によれば、陰部付近に開状態と閉状態とに変化可能な切れ込み部を有していることにより、陰部形状に対応し開状態または閉状態とすることができ尿排泄時の便宜を図ることができる。
【0013】
次に、第7の発明は、上記第1から第6の発明のうちいずれかの牛等の四足動物の衣服であって、撥水加工された布からなる牛等の四足動物の衣服である。
この第7の発明の牛等の四足動物の衣服によれば、撥水加工された布からなるため、雨や尿などをはじき吸水しにくく、保温性に優れるとともに衛生的である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述した手段をとることにより、次の効果を得ることができる。
先ず、上記第1の発明によれば、胴回り全体を被覆することができる。それに加えて、胴回りの大きさの異なる四足動物に対して着用させることができる。
次に、上記第2の発明によれば、四足動物の腹部を確実に被覆することができる。
次に、上記第3の発明によれば、連結箇所の周辺をいかなる方向へ引っ張っても連結が外れにくく、両端部を隙間無く閉じ合わせることができる。
次に、上記第4の発明によれば、牛等の四足動物の衣服が後方へずれるのを防ぐことができる。
次に、上記第5の発明によれば、牛等の四足動物の衣服が捲れ上がるのを防ぐことができる。
次に、上記第6の発明によれば、陰部形状に対応し開状態または閉状態とすることができ尿排泄時の便宜を図ることができる。
次に、上記第7の発明によれば、雨や尿などをはじき吸水しにくく、保温性に優れるとともに衛生的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の牛等の四足動物の衣服(以下、単に「衣服」と記載することがある。)の最良の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本実施の形態の衣服20を着用した牛10の正面図である。図2は、図1に示す牛10を斜め下から見た様子を示す斜視図であり、図3は、図1に示す牛10の平面図である。図1〜図3に示すように、衣服20は牛10の胴回り全体を被覆することができる衣服である。
【0016】
まず、本実施の形態の衣服20の基本構造について説明する。
図4は、衣服20を牛に着用させた場合に外面となる面を表面として示した展開状態図である。なお、図4の左右方向は牛10の胴回り方向に対応しており、図4の中央が牛10の腹側、図4の左右の端が牛10の背中側に対応しており、図4の右側が牛10の左側、図4の左側が牛10の右側に対応している。また、図4の上下方向は牛10の身体の長さ方向に対応しており、図4の上方は牛10の前方、図4の下方は牛10の後方に対応している。
衣服20は、図4に示すように、展開状態で1枚のシート状である。
具体的には、衣服20は、右身頃21a、左身頃21b、右身頃切替部22a、及び左身頃切替部22bの4枚の布地パーツを縫合し、一枚のシート状に形成されている。
【0017】
衣服20は、牛10の胴回りに巻きつけて胴回り方向(図4の左右方向)の両端部間に形成した連結手段により連結することにより牛10の胴回り全体を被覆することができる。連結手段は一方の端部に形成される連結具と他方の端部に形成される連結具とからなり、両連結具が相互に連結可能に形成されており両連結具が一体に結合されることにより連結される。
具体的には、本実施の形態の衣服20は、胴回り方向の両端部間がファスナー30により連結可能となっている。このファスナー30が本発明の連結手段に対応する。ファスナー30は一般に用いられるスライド式のファスナーであり、布テープに金属あるいはプラスチックの歯が留め付けられたファスナー片を相対向して配置し、一方のファスナー片に設けられたスライド具に他方のファスナー片を係合し、スライド具を滑らせることにより相対向する歯が係脱可能となっている。本明細書においては、説明の便宜上、スライド具32a,33aを備えたファスナー片を雌ファスナー片(第1の雌ファスナー片32,第2の雌ファスナー片33)と呼び、スライド具を備えず雌ファスナーに対して係脱可能なファスナー片を雄ファスナー片(第1の雄ファスナー片34,第2の雄ファスナー片35)と区別して呼ぶ。この雌ファスナー片と雄ファスナー片とが本発明の連結具と対応する。本実施の形態においては、衣服20の胴回り方向の一方の端部には雌ファスナー片が備えられており、他方の端部には雄ファスナー片が備えられており、雌ファスナー片と雄ファスナー片とが一体に結合されることにより、衣服20の胴回り方向の両端部が連結される。
【0018】
より具体的には、胴回り方向(図4の左右方向)の両端部にはそれぞれ2本のファスナー片が牛10の身体の長さ方向(図4の上下方向)に配設されている。右身頃切替部22aの最端位置に第1の雌ファスナー片32が縫着されており、右身頃切替部22aと右身頃21aとに挟み込まれて第2の雌ファスナー片33が縫着されている。対称的に、左身頃切替部22bの最端位置には第1の雄ファスナー片34が縫着されており、左身頃切替部22bと左身頃21bとに挟み込まれて第2の雄ファスナー片35が縫着されている。第1の雌ファスナー片32又は第2の雌ファスナー片33と、第1の雄ファスナー片34又は第2の雄ファスナー片35とを係合させることにより、両端部を一体に結合することができる。
【0019】
衣服20は、上記のように胴回り方向の両端部においてファスナー片が所定の間隔をおいて2本ずつ配設されている。それにより、胴回り方向の両端部を連結するときに係合させるファスナー片を選択することができ、係合させるファスナー片の組み合わせを変化させることにより、衣服20が牛10の胴回りを覆う長さを変化させることができる。具体的には、図5(a)〜(c)は、衣服20の胴回り方向の両端部を連結した態様を外面から見た平面図であって、ファスナー片の組み合わせの異なる3態様を示している。図5(a)に示すように、第1の雌ファスナー片32と第1の雄ファスナー片34を係合させて連結したときは、衣服20の胴回りを覆う長さは最も長くなる。図5(b)に示すように、第1の雌ファスナー片32と第2の雄ファスナー片35を係合させて連結したときは、図5(a)に示す態様に比べて胴回りを覆う長さは短くなる。図5(c)に示すように、第2の雌ファスナー片33と第2の雄ファスナー片35を係合させて連結したときは、衣服20の胴回りを覆う長さは最も短くなる。なお、第2の雌ファスナー片33と第1の雄ファスナー片34とを係合させて連結してもよい。その際の衣服20の胴回りを覆う長さは図5(b)示す状態とほぼ同じであるので図示は省略する。
【0020】
図4を参照しながら、衣服20の形状について更に説明する。牛10の前方(図4の上方)の端部においては、両サイドには背中側(図4の左右方向の両端)が下がるように緩やかに傾斜した傾斜部23a,23bが形成されており、ほぼ中央にはU字状に切り欠かれたU字状切り欠き部42が設けられている。U字状切り欠き部42のU字状の両端はスナップ44により閉じ合わせ可能となっている。牛10の後方側(図4の下方)の端部においては、ほぼ中央にはI字状に切り込まれた切れ込み部60が設けられている。詳細は後述するが、この切れ込み部60は牛10の陰部付近に対応し、開状態と閉状態とに変化可能となっている。また、切れ込み部60を挟み対称にゴムひも状の後方係止手段50a,50bが備えられている。
【0021】
図6(a)〜(c)は切れ込み部60付近の内面を示しており、図6(a)は展開状態、図6(b)は閉状態、図6(c)は開状態を示している。図6(a)に示すように、切れ込み部60には切れ込み60aを挟み相対向する位置において対をなす互いに係脱可能な3対のスナップ62a,62b,62cが設けられている。図6(b)に示すように、右身頃21aの内面と左身頃21bの外面とを重ね合わせ、図6(b)中に黒丸で示すスナップ62a,62b,62cを係合させることにより切れ込みを閉じた状態で保持することができる(閉状態)。また、右身頃21a上には、閉状態にするためのスナップ62a,62b,62cとは別に、切れ込み60aの脇と切れ込み60aに対して所定角度位置とにおいて対をなす互いに係脱可能な2対のスナップ65a,65bが設けられている。左身頃21bには、切れ込み60aを挟んで右身頃21aと対称位置にスナップ64a,64bが設けられている。図6(c)に示すように右身頃21aと左身頃21bのそれぞれを折り返して切れ込み60aを拡開し、図6(c)に黒丸で示したスナップ64a,64b,65a,65bをそれぞれ係合させることにより切れ込み60aを拡開した状態に保つことができる(開状態)。
【0022】
以下、衣服20の着用形態について説明する。
衣服20は、展開状態で1枚のシート状であり、牛10の胴回りに巻きつけて、図3に示すように牛10の背中側でファスナー30により両端部間を連結する。したがって、容易に牛10に着用させることができる。また、牛10の胴回りに巻きつけて両端部間を連結して着用させることにより、牛10の胴回りの全体を被覆することができる。さらに、ファスナー30が背中側に設けられており、両端部を背中側で連結することにより、より確実に牛10の腹部を被覆することができる。
【0023】
ファスナー30により両端部を連結するときに、上述したように牛10の胴回りの大きさに応じて係合させるファスナー片の組み合わせを選択することができる。それにより、胴回りを覆う長さを変化させることができ、胴回りの大きさの異なる牛10に対して胴回りの大きさに合わせて着用させることができる。また、牛10が成長し胴回りの大きさが変化した場合でも、大きさの異なる衣服20に取り替えることなく、胴回りの大きさに対応して係合させるファスナー片の組み合わせを変更させることにより1枚の衣服20で対応することができる。また、ファスナー片の組み合わせの異なるいずれの連結態様においても、牛10の胴回り全体を被覆することができ、確実に牛10の腹部を被覆することができる。なお、図3は、図5(b)に示す態様に対応し、第1の雌ファスナー片32と第2の雄ファスナー片35とを連結した状態を示している。
【0024】
また、衣服20は、ファスナー30が牛10の身体の長さ方向に配設されていることにより、衣服20の胴回り方向の両端部を隙間無く閉じ合わせることができ、牛10の胴回りの全体を隙間無く被覆することができる。加えて、本実施の形態では、両端部を連結する連結手段がファスナーであるため、基本的にはスライド具を滑らせない限り連結が外れず、連結箇所の周辺をいかなる方向へ引っ張っても連結が外れにくい。したがって、着用している牛10の動作や他の牛との接触等によっても連結が外れて衣服20が脱落するのを防ぐことができる。さらに、本実施の形態においては、ファスナー以外の連結手段として、ファスナーを係合させる時のスライド具の進行方向の先方位置に係脱可能なスナップ38をも備えている。具体的には、図3に示すように、第1の雌ファスナー片32と第2の雄ファスナー片35を係合させるときスライド具32aを滑らす係合方向(図3の矢印方向)の先方位置において両端部を2対のスナップ38で連結することができる。第1の雌ファスナー片32と第2の雄ファスナー片35は、スライド具32a付近において左右方向へ引っ張ると、スライド具32aが滑り戻り連結が外れる可能性がある。しかしながら、左右方向への引張りにより係合が外れにくいスナップ38により係合方向を閉じ合わせることにより、スライド具32aが滑り戻るのを防ぎ、両端部の結合はより外れにくくなっている。
【0025】
衣服20を牛10に着用させる際は、図2に示すように、U字状切り欠き部42で前足を囲み、胸部の前でU字状の両端に設けられたスナップ40を閉じ合わせる。それにより、牛10は、衣服20の前方が胸部の前に掛けられた状態となり、前足をU字状切り欠き部42から出し、首を傾斜部23a,23bに囲まれた穴から出した格好となる。したがって、このU字状が閉じ合わされた箇所が本発明の前方係止手段40に対応する。この前方係止手段40により、衣服20の後方へずれるのを防ぐことができる。また、前足と首がそれぞれ位置決めされることにより、衣服20が胴回り方向に回転してずれることがない。したがって、常に背中側に係止具(ファスナー30)がある状態を保つことができ、確実に腹部を被覆することができる。
【0026】
後方掛止手段50a,50bは、図2に示すようにそれぞれ牛10の後足に掛止される。これにより、衣服20が捲れ上がるのを防ぐことができ、衣服20が腹部を覆った状態を維持することができる。また、衣服20の後方が後方掛止手段50a,50bにより後ろ足に掛止されることにより、衣服20が胴回りに回転してずれることがなく、陰部付近に対応する切れ込み部60の位置がずれるのを防ぐことができる。
【0027】
切れ込み部60は、上述したように、開状態と閉状態とに変化可能となっている。牛10の陰部付近に対応して位置決めされ、例えば、陰部形状に対応し、雄であれば開状態、雌であれば閉状態とすることができ、尿排泄時の便宜を図ることができる。
【0028】
衣服20は、撥水加工された布により形成されている。したがって、雨や尿などをはじき吸水しにくく、保温性に優れるとともに衛生的である。なお、この衣服20を形成する布は、撥水剤にディッピングすることにより繊維の表面に撥水剤を固着させ撥水加工されている。この布は、内側は有毛であり外面は無毛となっており、無毛な外面が特に撥水性に優れ、肌に接触する内面は有毛で保温性に優れている。また、撥水剤が繊維の表面に固着しており、布の表面全体を覆う被膜となっていないため、撥水加工により通気性が損なわれていない。また、撥水剤としては人及び動物の身体に対して安全性の高いパラフィン系の撥水剤を用いている。
【0029】
以上の構成の牛等の四足動物の衣服20を牛等の四足動物に着用させると、胴回りを覆う長さを容易に変化させることができ、その胴回りを覆う長さを変化させたいずれの態様においても四足動物の胴回り全体を覆うことができる。
したがって、例えば、抵抗力の弱い生後約2ヶ月以内の子牛に対して着用すれば、胴回り全体を覆うことにより腹部を確実に保温することができ疾病予防に寄与することができる。それに加えて、成長に対応して胴回りを覆う長さを変化させることにより、サイズの異なる衣服を用意することなく1枚の衣服20で対応可能である。
【0030】
なお、本発明の牛等の四足動物の衣服は、着用する四足動物は特に限定されず、牛の他、馬、ヤギ、羊、豚、犬等の各種の四足動物に着用可能である。また、本発明の牛等の四足動物の衣服は、上記実施の形態に限定されるものではない。連結手段は、ファスナーの他、例えば面ファスナー、スナップ、釦等の種々の連結手段を用いることができる。また、連結具は、胴回り方向の端部の少なくともどちらかの連結具が胴回り方向に所定間隔をおいて複数設定されていればよく、設定される間隔や数は特に限定されない。前方掛止手段は、上記実施の形態のように衣服の本体であるシートに延長して設けられていてもよいし、別体として形成し衣服の前方に配置して一体化してもよい。後方掛止手段の材質及び形状は特に限定されない。四足動物の後足の運動を妨げないように伸縮性を有する素材であれば好ましい。
【0031】
本発明の牛等の四足動物の衣服を構成する布は特に限定されない。撥水加工されていればより好ましい。この場合、撥水加工方法は特に限定されないが、布の通気性を損なわない方法で撥水加工するのが好ましい。例えば、上記のように布を撥水剤にディッピングするか、あるいは撥水剤をスプレー等で吹き付てもよい。布は、種々の製法により作られた織物、編物、不織布等いかなるものであってもよいが、伸縮性を備えていれば、四足動物が運動しやすいため好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】牛等の四足動物の衣服を着用した牛の正面図である。
【図2】図1に示す牛を斜め下から見た様子を示す斜視図である。
【図3】図1に示す牛の平面図である。
【図4】牛等の四足動物の衣服の展開状態の外面を示す図である。
【図5】牛等の四足動物の衣服の胴回り方向の両端部を連結した態様を外面から見た平面図であって、(a)〜(c)は、それぞれ異なるファスナー片の組み合わせにより連結した態様を示す図である。
【図6】図6(a)〜(c)は切れ込み部60付近の内面を示しており、(a)は展開状態、(b)は閉状態、(c)は開状態を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 牛
20 衣服
30 ファスナー(連結手段)
32 第1の雌ファスナー片(連結具)
33 第2の雌ファスナー片(連結具)
34 第1の雄ファスナー片(連結具)
35 第2の雄ファスナー片(連結具)
38 スナップ(連結手段)
40 前方係止手段
50a,50b 後方掛止手段
60 切れ込み部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛等の四足動物の胴回りを被覆する衣服であって、
展開状態で1枚のシート状であり、四足動物の胴回りに巻きつけて胴回り方向の両端部間に形成した連結手段により連結することにより胴回り全体を被覆することができ、
該連結手段は一方の端部に形成される連結具と他方の端部に形成される連結具とからなり、該両連結具が相互に連結可能に形成されており該両連結具が一体に結合されることにより連結されるものであって、
前記一方の端部の連結具と他方の端部の連結具の少なくともどちらかの連結具が胴回り方向に所定間隔をおいて複数設定されており、四足動物の胴回りの大きさに応じて複数の連結具のいずれかを選択して連結することを特徴とする牛等の四足動物の衣服。
【請求項2】
請求項1に記載の牛等の四足動物の衣服であって、
前記連結手段は、背中側に設けられていることを特徴とする牛等の四足動物の衣服。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の牛等の四足動物の衣服であって、
前記連結手段の連結具は四足動物の身体の長さ方向に配設されるファスナーであることを特徴とする牛等の四足動物の衣服。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の牛等の四足動物の衣服であって、
前方には、胸部の前に掛ける前方掛止手段を備えていることを特徴とする牛等の四足動物の衣服。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の牛等の四足動物の衣服であって、
後方には、後足に掛止する後方掛止手段を備えていることを特徴とする牛等の四足動物の衣服。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の牛等の四足動物の衣服であって、
陰部付近には、開状態と閉状態とに変化可能な切れ込み部を有していることを特徴とする牛等の四足動物の衣服。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の牛等の四足動物の衣服であって、
撥水加工された布からなる牛等の四足動物の衣服。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−29250(P2008−29250A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205989(P2006−205989)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【出願人】(391012095)中部飼料株式会社 (11)
【出願人】(504155260)艶金化学繊維株式会社 (3)