説明

物体ホルダ用の受入装置

【課題】操作性が改善された物体ホルダ(12)を提供する。
【解決手段】物体ホルダ(12)用の受入装置は基部(14)を備える。複数のセンタリング要素(16,18,20)は基部(14)と接続されている。前記センタリング要素(16,18,20)は、各々1つの物体ホルダ(12)を受け入れる複数の受入領域(22)を構成するよう配置される。センタリング要素(16,18,20)は、各受入領域(22)の周囲に周センタリングフレームを形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体ホルダ用の受入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体ホルダとは、例えばその上に被分析試料が配置される薄いガラス板のことである。被分析試料、特に液体の被分析試料が2つの物体ホルダ間に位置するように、このような2つの物体ホルダを一方が他方の上になるように置くことは頻繁にある。物体ホルダは更に、タイタープレート、又は個々の試料を受け入れる凹部が設けられた同様のプレートであってもよい。
【0003】
物体ホルダは、例えば組織試料を分析するために用いられる。これに関連して、例えばDNA断片、すなわち遺伝子フラグメントを物体ホルダの表面上に載置する。DNA断片の添加は、ロボットを用いて滴下することによって実施する。このようにして、物体ホルダ上の個々のDNA断片の位置を知る。このDNA断片は物体ホルダの表面と結合し、付着する。これにより、その後の分析プロセスにおいて、それらの位置は変化しない。
【0004】
次の工程においては、例えば被検査腫瘍からRNAを取る。酵素を用いてRNAをDNAに変換し、続いて適宜のマーカー、好ましくは蛍光色マーカーで標識する。
【0005】
更に、正常な組織から比較用の試料を作製する。この正常なDNAも適宜のマーカーで標識する。このマーカーは別の色の蛍光マーカーであることが好ましい。これにより、正常な組織を緑色の蛍光マーカーで標識し、腫瘍から取り出される分析対象の組織を、例えば赤色マーカーで標識する。
【0006】
その後、両試料を物体ホルダ全体に載置する。2つの試料中に含まれるDNAストランドは、それらの対応物、すなわち物体ホルダの表面上に存在するDNA断片と強固に結合する。試料中に含まれるDNAと、物体ホルダに付着しているDNA断片との結合は、ハイブリッド形成プロセスで行われる。その後、2つの試料から、強固に付着したDNA断片及び鎖状DNAのみが物体ホルダ上に存在するように、この物体ホルダを洗浄する。
【0007】
物体支持台を乾燥させた後、検出プロセスに進む。その中で、DNA断片が付着している物体ホルダの個々の位置を、適宜の顕微鏡によって分析する。その際、蛍光マーカーが対応する色の蛍光を発するように、個々のDNA断片を例えばレーザー光によって刺激する。1つのDNA断片が付着する1つの特定の位置が、例えば赤色のスポットとして現れる場合、この遺伝子は腫瘍組織内で活性状態であったのであって、正常組織内ではそうではなかったことを、そのことから結論付けることができる。1つのスポットが緑色の蛍光を発する場合、この遺伝子は正常組織でのみ活性状態であったことを、そのことから結論付けることができる。黄色の蛍光が現れた場合、対応する遺伝子は両方の組織内で活性状態であった。上述の方法によって、例えば、どの遺伝子が腫瘍内で活性状態であるのかを診断することが可能である。このことから、組織の変化の種類などに関する結論を引き出すことが可能である。
【特許文献1】米国特許第3746161号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようなプロセスにおいて、個々の物体ホルダの操作は特に難しい。特に、薄いガラスの物体ホルダは容易に壊れ得る。更に、物体ホルダを操作するときには、試料を載置した領域への接触を確実に避けなければならない。この理由から、対応する分析装置内で物体ホルダを整列させることは困難である。
【0009】
本発明の目的は、物体ホルダの操作性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、請求項1の特徴によりこの目的を達成する。
【0011】
物体ホルダの操作性を改善するために、本発明は物体ホルダ用の受入装置を提供する。該受入装置は、好ましくは複数の物体ホルダを並べて載置することが可能な基部を備える。本発明によれば、センタリング要素は底部と接続される。該センタリング要素は、各々1つの物体ホルダを受け入れる複数の受入領域が構成されるように配置してある。
【0012】
このように、例えばDNA断片が既に所定の位置に付着している1つの物体ホルダを、受入装置のそれぞれの受入領域内に置くことが可能である。次いで、いくつかの物体ホルダを担持する受入装置を、例えばロボットの把持アーム等を用いて容易に操作することが可能である。例えばセンタリング要素又は基部で受入装置を容易に把持することができるため、物体ホルダを容易に操作することが可能である。本発明に係る装置により、薄いガラスの物体ホルダを操作中に損傷することを特に確実に避けることができる。同様に、物体ホルダ上に既に位置する試料への接触も回避される。
【0013】
本発明に係る受入装置の第1の好ましい実施の形態において、基部は、連続した構成を有する底部であることが好ましい。センタリング要素はこの底部と接続され、複数の受入領域を画定する。
【0014】
センタリング要素は、一体フレーム部のように構成することが好ましい。したがって、各物体ホルダはフレームにより取り囲まれる。このことには、物体ホルダを受入領域内に保護された状態で配置するという利点がある。物体ホルダをフレーム部内で完全に受け入れるように、フレーム部の高さが物体ホルダの厚さよりも大きいことが好ましい。その結果、物体ホルダの表面への接触と共に、受入装置を操作する際の物体ホルダの損傷も回避される。いくつかの受入領域を単一のフレーム部で形成することが好ましい。この場合、各受入領域は完全にフレームにより取り囲まれる。このようにして、隣接する2つの物体支持台間に設けられるフレーム部の壁は、2つの受入領域のフレームの一部として機能する。
【0015】
前記フレーム部の各々が受入領域を取り囲んでもよく、周センタリングフレームとして完全に取り囲むことが好ましい。しかしながら、これらは受入領域を取り囲むための個別のフレーム部でなくてもよく、例えば物体ホルダを受入装置内で中心に位置させるため物体ホルダの角を受け入れる役割を有するだけでもよい。この場合、物体支持台の受入装置への挿入をより容易に行うことができる。物体ホルダの受入装置内への挿入をより容易にするために、センタリング要素を更に面取りしてもよい。この面取りは、物体ホルダの挿入が容易になるように、各々1つの物体ホルダを受け入れる受入領域が上向きに広がるように構成される。
【0016】
特に好ましい実施の形態において、底部は、少なくとも受入領域においては可撓性材料からなる。特に、底部全体が連続する可撓性材料からなる。物体ホルダはこの可撓性材料の上に載置される。可撓性材料を用いる利点は、例えば物体ホルダがピペット等と接触したとき、その物体ホルダが確実にある程度復元することにある。これにより、分析プロセス中に物体ホルダが損傷するリスクが軽減される。更に、物体ホルダを例えば水平に整列させることが可能である。このとき、例えば好適に整列した要素は下からダイアフラムを押圧して、物体ホルダの位置を変える。このような方法で、物体ホルダに触れる必要なく、物体ホルダを極めて正確に整列させることが可能となる。特に例えば、適宜装置の助けを借りて物体ホルダを下から少し持ち上げ、その物体ホルダを例えば第2の物体ホルダプレートに対して押圧することも可能である。
【0017】
可撓性材料としては、特にジアテルミー性ダイアフラムが挙げられる。これにより、ペルチェ素子などの加熱要素を個々の受入領域の下方に設けて、個々の物体ホルダを加熱することが可能となる。本発明に係る受入装置を用いることにより、物体ホルダに直接触れる必要なく、物体ホルダのおそらく個別の部分的な領域のみを極めて限定的に加熱することが可能となる。この場合にも、物体支持台の損傷が回避される。ダイアフラムは、4〜100℃の温度を物体支持台に伝えることができるように構成することが好ましい。
【0018】
他の好ましい実施の形態において、基部はフレーム形状の構造を有する。この基部は、複数の物体ホルダを受け入れるための受入領域を備える。この基部は、例えば複数の中間ウェブにより複数の受入領域に分割される矩形のフレームである。これらの受入領域は本質的に矩形であり、フレーム形状の基部上に載置される受入領域内に物体ホルダを挿入できるように、これらの受入領域の寸法は標準的な物体ホルダの寸法よりもわずかに小さい。
【0019】
バネ要素の形態をなしたセンタリング要素が、物体ホルダを支持するためにフレーム形状基部に設けられることが好ましい。前記バネ要素は、物体ホルダを固定する機能と、それらを夫々位置決めする機能とを有する。物体ホルダが1つの面で支持されるように、すべてのセンタリング要素をバネ要素として構成することが可能である。この場合、物体ホルダはバネ要素の間に固定される。
【0020】
いくつかのセンタリング要素だけがバネ要素として構成されることが好ましい。この実施の形態において、残りのセンタリング要素は停止要素として構成される。バネ要素が停止要素と協働することによって、物体ホルダは個々の受入領域において位置決めされる。この場合、バネ要素は物体ホルダを、対応して配置された停止要素に対して押圧する。例えばバネ要素が水平面上に設けられ、そのバネ要素は物体ホルダを、本質的に、x方向及びy方向に対して垂直に整列している停止要素に対してx方向及びy方向に押圧する。この場合、各方向に対する1つのバネ要素と、各方向に対する1つの停止要素とを設けることが好ましい。特に、矩形の物体ホルダの長手方向側において、好ましくはこの方向に対して垂直に整列している2つの停止要素に対して物体ホルダを押圧する2つのバネ要素を設けた場合、より正確かつ限定的な位置決めが可能である。
【0021】
好ましいバネ要素は、基部と弾性接続された突起である。特に、バネ要素及び基部は互いに一体に形成される。ここで、前記一体成形部は射出成形部であることが好ましい。前記射出成形部は更に停止要素を備えることが好ましい。
【0022】
特に現行の配置にて本発明に係る受入装置を使用できるように、受入装置の外側寸法をマイクロタイタープレートの標準寸法に対応させる。特に、受入装置の幅は96±4mmであり、長さは148±4mmである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について詳述する。
【0024】
いくつかの物体ホルダ12用の受入装置10は、底部14(図2)を備える。底部14は、センタリング要素16、18、20と接続されている。図示した実施の形態では、各々1つの物体ホルダ12を配置可能な4つの矩形の受入領域22が形成されるようにセンタリング要素16、18、20を配置してある。このセンタリング要素16、18、20には、対向する2つのより短い側壁16と、更に、側壁16の間に配置された、対向する2つのより長い側壁18とがある。図示した実施の形態では、より短い側壁18に対して平行に配置されている3つの隔壁20が、側壁18の間に設けられている。
【0025】
センタリング要素16、18、20の裏面24には、ダイアフラムとして構成される底部14が取り付けられる。したがって、受入領域22は、それぞれの物体ホルダ12がその上に支持される底としての可撓性ダイアフラムを有する。したがって、例えば物体ホルダを水平に整列させるために、図2のダイアフラムを下から押圧することが可能である。更に、加熱要素を物体支持台12の下方に設けることも可能である。ダイアフラムの可撓性により、物体ホルダ12は、平坦な加熱要素の表面に接した状態で平坦に置かれる。これにより、加熱要素と物体ホルダとの間の均一かつ良好な熱伝達が確実に行われる。
【0026】
これらの内部23において、すなわち受入領域22に向いている側において、センタリング要素16、18、20は面取りされている。その結果、図2で上を向いている個々の受入領域の開口部が上方に向けて拡張される。これにより、物体ホルダ12の受入領域22への挿入がより容易になる。
【0027】
図3及び図4に示す本発明に係る受入装置の第2の好ましい実施の形態において、同一又は同様の構成要素は同一の参照符号で示す。
【0028】
図3及び図4に示す受入装置において、物体ホルダ12は個々の受入領域22に配置されていない。図4では、これらの物体ホルダ12は最上層から設けられている。この目的のために、フレーム形状基部30は、物体ホルダ12が載置される平坦な上側32を備える。物体ホルダを確実に支持するために、支持突起34が設けられる。ここで、前記支持突起34は、貫通している開口部として構成される受入領域22内に突出している。更に、製造上の理由から、受入領域22の角の領域に達する支持突起36が設けられている。また、支持突起34に従って前記突起36を構成してもよい。
【0029】
フレーム形状基部30の上側32上に物体ホルダ12を正確に位置決めするために、フレーム形状基部30はセンタリング要素としてバネ要素38を備える。該バネ要素38は、基部30と共に一体に形成される。この基部30及びバネ要素38はプラスチック材料によって、特に好ましくは射出成形プロセスを適用することによって作られるため、バネ要素38はある程度の弾性を有する。更に、バネ要素38は、上側32上にある物体ホルダを図4における下向きに押下する斜めの前端縁40を有する。したがって、物体ホルダも図4におけるz方向に位置決めされる。
【0030】
更に、基部30の上側32上に物体ホルダを位置決めするために、停止要素42、44として構成されるセンタリング要素を設ける。図2において、バネ要素38はx方向及びy方向に物体ホルダを押圧する。ここで、物体ホルダ12の長手方向側に2つのバネ要素38が設けられている。前記バネ要素38に対向して2つの停止要素44が設けられ、x方向に物体ホルダが押圧されている。図3において、下方のバネ要素38は物体ホルダを2つの停止要素42に対してy方向に押圧する。残りの停止要素42及び44は、物体ホルダ12が載置される領域を特に画定する安全性停止要素である。
【0031】
個々の物体ホルダ12は、例えばDNA試料の分析に役立つ。この目的を達成するために、図5に示すように、各物体ホルダを異なる領域に分割する。内部領域46には、例えば試料の小滴を添加する。次いで、試料ホルダ12と強固に結合する。このように、領域46はアレイを配置するための表面としての機能を有する。この領域46は幅2.5mmのマージン48で取り囲まれることが好ましい。このマージン48により、例えば領域46内に供給される試料のすべてが物体ホルダ12の外縁50との間に十分な距離を確実に有することになる。更に、物体ホルダ12に向けて降下する洗浄ヘッド等のシールを、例えばマージン48の領域内に配置することが可能である。図3に示す線54によってマージン48と分けられている領域52は、試料ホルダと接触する機能を有する。この領域内で物体ホルダを操作することができるように、この領域には試料を配置しない。例えば物体ホルダを本発明に係る受入装置内に挿入できるようにするためには、接触領域が必要である。
【0032】
例えばハイブリッド形成ヘッドを備える分析装置56(図4)内に、本発明に係る受入装置10を挿入することが可能である。この目的を達成するために、分析装置56は、受入装置10を受け入れるためのドロア状の受入手段58を備える。CDプレーヤー等のドロアに対応してこのドロアを構成してもよい。このドロアが開いたときに、物体ホルダ12を支持する受入装置10を、上方からこのドロア内に挿入し、次いで分析装置56内に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る受入装置の好ましい実施の形態の略平面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った略断面図である。
【図3】本発明に係る受入装置の他の好ましい実施の形態の略平面図である。
【図4】図3の線IV−IVに沿った略断面図である。
【図5】図1に示す受入装置に挿入されるべくなされた単一の物体ホルダを示す。
【図6】受入装置内に挿入されるべくなされた分析装置の略斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
12 物体ホルダ
14、30 基部
16、18、20 センタリング要素
22 受入領域
38 バネ要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部(14,30)と、該基部(14,30)に接続されるフレーム部とを備えており、前記フレーム部は、複数の受入領域(22)が各々1つの物体ホルダ(12)を受け入れるべく構成されるように配置されている、物体ホルダ(12)用の受入装置において、 前記フレーム部はセンタリング要素(16,18,20;38,42,44)として構成されており、
前記センタリング要素(16,18,20)は一体フレーム部からなり、
単一のフレーム部が複数の受入領域(22)を画定し、
前記フレーム部は、各受入領域(22)が周センタリングフレーム(16,18,20)により取り囲まれるように構成されていることを特徴とする受入装置。
【請求項2】
前記センタリング要素(16,18,20)は、受入領域(22)の方向に面取りされていることを特徴とする請求項1に記載の受入装置。
【請求項3】
前記基部(30)はフレームとして構成され、物体ホルダ(12)を受け入れるための複数の受入領域(22)を備えることを特徴とする請求項1に記載の受入装置。
【請求項4】
少なくともいくつかのセンタリング要素(38,42,44)はバネ要素(38)として構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の受入装置。
【請求項5】
いくつかのセンタリング要素(38,42,44)は、物体ホルダ(12)を位置決めするための停止要素(42,44)として構成されており、バネ要素(38)と協働することを特徴とする請求項4に記載の受入装置。
【請求項6】
前記バネ要素(38)は、基部(30)と弾性接続された突起であることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の受入装置。
【請求項7】
物体ホルダ(12)を支持するための複数の支持突起(34,36)が受入領域(22)に突出していることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の受入装置。
【請求項8】
受入装置の外側寸法がタイタープレートの標準寸法を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の受入装置。
【請求項9】
少なくとも2つ、好ましくは少なくとも4つの受入領域(22)を設けてあることを特徴とする請求項1乃至項8のいずれかに記載の受入装置。
【請求項10】
前記受入装置は一体成形部として、特に射出成形部として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の受入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−70386(P2008−70386A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311005(P2007−311005)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【分割の表示】特願2002−579122(P2002−579122)の分割
【原出願日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【出願人】(504201121)ミルテニイ バイオテック ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】