説明

物品ホルダ

【課題】永久磁石の磁力を利用して取付け対象面に取り付けて使用する物品ホルダにおいて、全体構造の簡素化を図りつつ、保持される物品の形状に制約なく使用することが可能な物品ホルダを提供すること。
【解決手段】本発明に係る物品ホルダA1は、正面1a、背面1b、およびこれら正面1aと背面1b間をつなぐ側面1cを有する磁石体1と、磁石体1の正面1aに密着させて当該正面1aを覆う正面被覆部21、および磁石体1の側面1cを覆う側面被覆部22を一体に有するカバー体2と、を備え、磁石体1の磁力によって背面側が取付け対象面Sに吸着固定され、磁石体1の磁力によって正面被覆部21の外面21aに物品Gを吸着保持する物品ホルダA1であって、正面被覆部21の厚みt2は、磁石体1の正面1aと背面1b間の厚みt1に対して所定の比率以下の寸法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石の磁力を利用してドアなどの取付け対象面に取り付けて使用される物品ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
玄関ドア等の取付け対象面に取り付けて使用される物品ホルダの一例として、永久磁石の磁力を利用して取り付けられるものが知られている(たとえば特許文献1を参照)。特許文献1に開示された物品ホルダは、磁石体の正面ないし側面を磁性板で覆い、この磁性板を吊下具本体の凹部に収容するように構成されたものである。吊下具本体の正面側下端には、物品を吊下げて保持するための鉤部が設けられている。また、磁石体および磁性板の背面側(取付け対象面に取り付けられる方)には、傷防止用のシートが貼り付けられており、磁性板等の取付け対象面への接触が防止されている。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された物品ホルダの使用に際し、鉤部に吊下げられる物品については、フック状ないしリング状の引っ掛け部を有する必要があるので、保持される物品の形状に制約があった。また、上記従来の物品ホルダは、磁石体、磁性板、鉤部を有する吊下具本体、およびシートを備えて構成されており、部品点数が多い。このため、全体構造が比較的複雑になり、製造コストの上昇といった不都合が生じ得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−284439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、永久磁石の磁力を利用して取付け対象面に取り付けて使用する物品ホルダにおいて、全体構造の簡素化を図りつつ、保持される物品の形状に制約なく使用することが可能な物品ホルダを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0007】
本発明によって提供される物品ホルダは、正面、背面、およびこれら正面と背面間をつなぐ側面を有する磁石体と、上記磁石体の上記正面に密着させて当該正面を覆う正面被覆部、および上記磁石体の上記側面を覆う側面被覆部を一体に有するカバー体と、を備え、上記磁石体の磁力によって背面側が取付け対象面に吸着固定され、上記磁石体の磁力によって上記正面被覆部の外面に物品を吸着保持する物品ホルダであって、上記正面被覆部の厚みは、上記磁石体の上記正面と上記背面間の厚みに対して所定の比率以下の第1寸法であることを特徴としている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記所定の比率は、1/2である。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記カバー体の上記側面被覆部の上記背面側の端面は、上記磁石体の上記背面に対して第2寸法をもって突出しており、この第2寸法は上記第1寸法よりも小である。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記カバー体は、木製である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記カバー体は、無垢の木材を切削して形成されている。
【0012】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る物品ホルダの一例を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示す物品ホルダの断面図である。
【図3】図1に示す物品ホルダの使用状態の一例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る物品ホルダの他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る物品ホルダの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0015】
図1〜図3は、本発明に係る物品ホルダの一例を示している。図1および図2に表れているように、本実施形態の物品ホルダA1は、磁石体1およびカバー体2を備えており、強磁性材料からなる金属製部材の取付け対象面S(たとえば玄関ドア等の表面)に取り付けて使用するものである(図3参照)。
【0016】
磁石体1は、正面1a、背面1b、およびこれら正面1aと背面1b間をつなぐ側面1cを有し、たとえば円柱状とされている。磁石体1は、たとえばフェライト磁石などの永久磁石からなり、比較的大きな磁力を発揮するものが用いられる。磁石体1の寸法の一例を挙げると、正面1aと背面1b間の厚みt1が15〜20mm程度であり、側面1cの外径が20〜40mm程度である。詳細は後述するが、磁石体1は、カバー体2に固定されている。なお、磁石体1としては、1部材からなるものに限定されず、たとえば厚み方向に分離した2以上の部材を接着等により連結したものを採用してもよい。
【0017】
カバー体2は、薄肉な円形状の正面被覆部21と、この正面被覆部21の外縁に一体につながる円筒状の側面被覆部22とを備え、非磁性材料からなる。正面被覆部21は、磁石体1の正面1aに密着しており、当該正面1aを覆っている。側面被覆部22は、磁石体1の側面1cを覆っている。本実施形態において、カバー体2は、木製であり、たとえばブナなど無垢の木材を切削して形成される。なお、上記磁石体1は、たとえば正面被覆部21の内面と磁石体1の正面1aとが接着剤(図示略)によって接着されることにより、カバー体2に固定される。
【0018】
正面被覆部21の厚みt2は、上記磁石体1の厚みt1に対して所定の比率以下とされている。磁石体1の厚みt1に対する正面被覆部21の厚みt2の比率は、好ましくは1/2以下とされ、より好ましくは1/10以下とされる。正面被覆部21の厚みt2は、たとえば1〜2mm程度とされる。
【0019】
側面被覆部22の内径は、たとえば20〜40mm程度とされており、磁石体1の側面1cの外径よりも僅かに大とされている。側面被覆部22の背面側の端面22aは、磁石体1の背面1bに対して突出している。磁石体1の背面1bに対して側面被覆部22の端面22aが突出する寸法t3(第2寸法)は、正面被覆部21の厚みt2よりも小であり、たとえば0.5〜1mm程度とされる。
【0020】
上記構成の物品ホルダA1を使用する際には、図3に表れているように、磁石体1の磁力によって物品ホルダA1の背面側が取付け対象面Sに吸着固定される。そして、磁石体1の磁力によって、カバー体2の正面被覆部21の外面21aに、磁性材料を含む物品G(たとえばキーホルダなど)を吸着保持させる。
【0021】
次に、上記した物品ホルダA1の作用について説明する。
【0022】
本実施形態の物品ホルダA1によれば、カバー体2の正面被覆部21の厚みt2が磁石体1の厚みt1に対応した薄肉状とされている。このため、磁石体1の磁力は殆ど減じられることなく正面被覆部21の外面21aにまで作用することになり、比較的重量の大きい物品Gを正面被覆部21の外面21aに接触させるだけで吸着保持することができる。なお、カバー体2の外面21aにおいて吸着保持される物品Gの重量は、たとえば100〜200g程度以上である。また、本実施形態の物品ホルダA1は、磁石体1とカバー体2とによって構成されており、部品点数が少なく、各部品の構造もシンプルである。したがって、上記構成の物品ホルダA1によれば、全体構造の簡素化を図るとともに、保持される物品Gの形状に制約なく使用することができる。
【0023】
カバー体2の側面被覆部22の背面側の端面22aは、磁石体1の背面1bに対して突出している。これにより、物品ホルダA1を取付け対象面Sに取り付けたときに、当該取付け対象面Sにカバー体2の上記端面22aが接触する一方、比較的硬質な磁石体1は取付け対象面Sに接触しない。したがって、このような構成によれば、取付け対象面Sに傷が付くのを防止することができる。
【0024】
また、側面被覆部22の端面22aから磁石体1の背面1bまでの寸法t3(第2寸法)は、正面被覆部21の厚みt2よりも小であるため、取付け対象面Sへの物品ホルダA1の取り付け時には、磁石体1の磁力の作用によって、物品ホルダA1が取付け対象面Sに適確に吸着固定される。
【0025】
カバー体2は、木製であるため、柔らかい質感を呈して外観体裁に優れている。また、カバー体2が比較的に軟質な木製であることにより、このカバー体2に接触して吸着保持される物品Gに傷が付くのを防止することができる。また、カバー体2は無垢の木材を切削して形成されている。このことは、物品ホルダA1の外観体裁を良くするうえでより好ましい。
【0026】
図4および図5は、本発明に係る物品ホルダの他の例を示している。なお、これらの図においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0027】
図4に表された物品ホルダA2は、カバー体2の構成が上記実施形態と異なっている。本実施形態では、カバー体2の正面被覆部21は、正面側に部分的に膨らむ膨出部21Bを有する。この膨出部21Bは、たとえば装飾のために設けられる。物品ホルダA2を使用する際には、カバー体2の正面被覆部21のうち膨出部21Bを除いた外面21aに物品Gを吸着保持させることができる。本実施形態の物品ホルダA2によれば、上記実施形態の物品ホルダA1に関して上述したのと同様の効果を奏することができる。
【0028】
図5に表された物品ホルダA3は、カバー体2の構成が上記実施形態と異なっている。本実施形態では、カバー体2は、磁石体1の背面1bを覆う背面被覆部23を備えており、これにより、カバー体2は磁石体1の全体を覆っている。すなわち、上記実施形態では磁石体1の背面1bが外部に開放されていたが、本実施形態では、磁石体1の背面1bは背面被覆部23に覆われている。このような構成のカバー体2は、たとえば、正面側と背面側とに分離された2つの部材間に磁石体1を収容し、上記2つの部材を接合することによって形成される。なお、物品ホルダA3においては、使用時にカバー体2の正面被覆部21が正面側に向いて正しく取付けられるように、カバー体2の外周面に取付け方向を示す表記(図示略)を施してもよい。本実施形態の物品ホルダA3によっても、上記実施形態の物品ホルダA1に関して上述したのと同様の効果を奏することができる。
【0029】
以上、本発明の具体的な実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。本発明に係る物品ホルダの各部の具体的な形状や材質、寸法なども、上記実施形態に限定されるものではない。
【0030】
上記実施形態では、カバー体2が木製である場合を例に挙げて説明したが、カバー体の材質としては、樹脂などの他の材料(非磁性材料)によって構成してもよい。また、カバー体に対して磁石体を固定する手法としては、上記実施形態のような接着に限定されない。たとえば、磁石体の側面の外径寸法をカバー体の側面被覆部の内径寸法よりも大にし、磁石体をカバー体の側面被覆部に圧入することによって固定してもよい。なお、上記実施形態では、カバー体2の正面被覆部21全体が磁石体1の正面1aに密着している場合を例に挙げて説明したが、カバー体の正面被覆部と磁石体の正面との間に僅かな隙間が介在していてもよい。圧入等によって磁石体をカバー体に固定する方法では、カバー体の正面被覆部と磁石体の正面との間に上記した隙間が生じ得る場合があるが、かかる場合でも、カバー体の正面被覆部と磁石体の正面とは、実質的に密着しているものと解される。
【0031】
磁石体の形状については、円柱状に限定されず、多角柱状などの他の形状を採用してもよい。この場合、カバー体の側面被覆部については、磁石体の側面に対応した形状とすればよい。また、上記実施形態では、カバー体2の正面被覆部21が平板状とされていたが、これに限定されない。カバー体の正面被覆部については、たとえば厚みが均一な曲面板状に形成してもよく、この場合、磁石体の正面については、正面被覆部の内面に対応した曲面形状とすればよい。
【符号の説明】
【0032】
A1,A2,A3 物品ホルダ
G 物品
S 取付け対象面
1 磁石体
1a (磁石体の)正面
1b (磁石体の)背面
1c (磁石体の)側面
2 カバー体
21 正面被覆部
21a (正面被覆部の)外面
22 側面被覆部
22a (側面被覆部の背面側の)端面
t1 (磁石体の正面と背面間の)厚み
t2 正面被覆部の厚み(第1寸法)
t3 寸法(第2寸法)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面、背面、およびこれら正面と背面間をつなぐ側面を有する磁石体と、
上記磁石体の上記正面に密着させて当該正面を覆う正面被覆部、および上記磁石体の上記側面を覆う側面被覆部を一体に有するカバー体と、を備え、上記磁石体の磁力によって背面側が取付け対象面に吸着固定され、上記磁石体の磁力によって上記正面被覆部の外面に物品を吸着保持する物品ホルダであって、
上記正面被覆部の厚みは、上記磁石体の上記正面と上記背面間の厚みに対して所定の比率以下の第1寸法であることを特徴とする、物品ホルダ。
【請求項2】
上記所定の比率は、1/2である、請求項1に記載の物品ホルダ。
【請求項3】
上記カバー体の上記側面被覆部の上記背面側の端面は、上記磁石体の上記背面に対して第2寸法をもって突出しており、この第2寸法は上記第1寸法よりも小である、請求項1に記載の物品ホルダ。
【請求項4】
上記カバー体は、木製である、請求項1ないし3のいずれかに記載の物品ホルダ。
【請求項5】
上記カバー体は、無垢の木材を切削して形成されている、請求項4に記載の物品ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94382(P2013−94382A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239285(P2011−239285)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000133928)株式会社テラモト (62)
【Fターム(参考)】