説明

物品収納トレー及び物品収納トレーの搬送方法

【課題】物品収納トレーの搬送を簡便かつ効率的に行うことができる物品収納トレー及び物品収納トレーの搬送方法を提供すること。
【解決手段】物品収納トレー1は、部品13を収納する物品収納凹部21と、物品収納トレー1の略中央に設けられた被把持部12と、を備えており、被把持部12は、該物品収納トレー1の積層方向に設けられた貫通孔である。そして、物品収納トレー1は、部品13を把持して物品収納トレー1から移送する把持装置5により、被把持部12が把持されて搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品収納トレー及び物品収納トレーの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械の部品等を収納したり、運搬したりするために、物品収納トレーが使用されている。この物品収納トレーは、中に納めた部品等が全て取り出されて空の状態となった場合には、専用のラインに移動され排出される。このとき、物品収納トレーは、部品等を収納したまま積み重ねられており、部品等が全て取り出されると、空のトレー同士で互いに積層される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−168385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、物品収納トレーから物品を全て取り出した後は、当該物品収納トレーを排出し、物品を収納した他のトレーに交換する必要がある。この交換作業はこれまで作業者が手作業で行ったり、トレー用の把持装置により空のトレーを移動させたりしていたため、コストが高くなったり、装置を設置するためのスペースを必要としたりしていた。
【0005】
本発明は、トレーに収納される部品用の把持装置と物品収納トレー用の把持装置とを兼用とし、物品収納トレーの搬送を簡便かつ効率的に行うことができる物品収納トレー及び物品収納トレーの搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る物品収納トレーは、薄板により形成された積層可能な物品収納トレーであって、物品を収納する物品収納凹部と、該物品収納トレーの略中央に設けられた被把持部と、を備え、前記被把持部は、該物品収納トレーの積層方向に形成された貫通穴であり、前記物品を把持する把持部により把持されることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、物品を収納する物品収納凹部と、物品収納トレーの略中央に設けられた被把持部と、を備えており、被把持部は、該物品収納トレーの積層方向に形成された貫通孔であり、物品を把持する把持部により被把持部が把持される。
これにより、物品を把持する把持部と、物品収納トレーを搬送する把持部とを兼用することができる。また、物品収納トレーが空の場合に、別途物品収納トレーを搬送する搬送手段を設ける必要が無く、経済的である。
【0008】
また、本発明にかかる物品収納トレーの搬送方法は、物品を収納する物品収納凹部と、略中央に形成された貫通穴である被把持部と、を有する物品収納トレーを搬送する物品収納トレー搬送方法であって、前記物品を把持する把持部により、前記物品収納トレーに収納された全ての物品が取り出された場合に、前記物品収納トレーの被把持部が把持され、前記物品収納トレーを排出位置に移動させることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、上述の効果と同様の効果がある。
【0010】
また、本発明に係る物品収納トレーの搬送方法は、物品を収納する物品収納凹部と、略中央に形成された貫通穴である被把持部と、を有する物品収納トレーを搬送する物品収納トレー搬送方法であって、物品供給位置に積層された複数の前記物品収納トレーのうち最上段に配置された前記物品収納トレーに収納された物品を、円柱状に形成されたコレットチャック式の把持部により把持して前記物品収納トレーから取り出し、前記物品収納トレーに収納された全ての物品が前記把持部により取り出された場合に、前記把持部により、前記物品収納トレーの被把持部が把持され、前記物品収納トレーを排出位置に移動させることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、物品供給位置に積層された複数の物品収納トレーのうち、最上段に配置された物品収納トレーに収納された物品を、コレットチャック式の把持部により把持して物品収納トレーから取り出す。当該物品収納トレーから全ての物品が取り出された場合には、物品収納トレーが有する被把持部を把持部が把持し、物品収納トレーを排出位置に移動させる。
これにより、物品を把持する把持部と、物品収納トレーを搬送する把持部とを兼用することができる。また、物品収納トレーが空の場合に、別途物品収納トレーを搬送する搬送手段を設ける必要が無く、経済的である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、物品収納トレーの搬送を簡便かつ効率的に行うことができる物品収納トレー及び物品収納トレーの搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る物品収納トレーの平面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る組立装置の一例の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る把持装置の概略構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る把持装置の側面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る把持装置の一部の分解斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るコレットおよび駒に加圧した状態を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るコレットが拡張した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態にかかる物品収納トレー1について説明する。図1は、物品収納トレー1の平面図である。図2は、図1のA−A断面図である。
【0016】
物品収納トレー1は、例えば、フォーク等の部品類を収納するための略矩形状のトレーであり、物品収納凹部21と、収納凸条部24と、被把持部12と、を有する。
【0017】
物品収納凹部21は、縦長状の凹部であり、例えばフォーク等の縦長形状の部品13が収納される。収納凸条部24は、3つの物品収納凹部21の間に形成された凸部であり、その頂面は、物品収納トレー1の基準面11の高さよりも低い位置となるように形成される(図2参照)。収納凸条部24の裏面側は、上面側に形成された収納凸条部24の形状に沿った凹部となっており、その側面は下面方向に所定角度をなすように形成されている。
【0018】
また、物品収納凹部21と収納凸条部24は、本実施形態においては、それぞれ3つずつ交互に形成されており、これらそれぞれ3つの物品収納凹部21及び収納凸条部24を一組として、物品収納トレー1には、2組が被把持部12を中心に左右に分かれて形成されている。
【0019】
被把持部12は、物品収納トレー1の略中央に設けられた略円形の貫通孔であり、断面円筒状に形成される(図2参照)。また、被把持部12は、2組の物品収納凹部21及び収納凸条部24の間に設けられる。被把持部12は、把持装置5の先端部分が挿入されて把持される部分となる(後述)。よって、把持装置5により把持された場合にバランスが維持できる位置に形成されることが好ましい。
【0020】
物品収納トレー1は、本実施形態では、部品13の組立装置4において、部品13を把持する把持装置5により把持されて所定の場所に移動される(図3参照)。図3のテーブル41には、例えば部品13としてフォークが収納されている物品収納トレー1が図2のように積層されて供給エリア413に配置されている。また、全ての部品13が使用され、空となった物品収納トレー1が払出エリア416に積層される。
【0021】
物品収納トレー1から部品13を取り出すには、把持装置5の先端部分(第2加圧部551、後述)を部品13の被把持部に挿入する。本実施形態では、部品13には、一方の端部に物品収納トレー1の被把持部12と同様の円形の孔が形成されており、把持装置5は、その先端部分を挿入して部品13を把持する。
【0022】
また、全ての部品13が取り出され、空になった物品収納トレー1は、被把持部12に把持装置5の先端部分が挿入されて、部品13を把持した把持装置5により把持される。そして、物品収納トレー1は、被把持部12が把持装置5により把持されて、払出エリア416に移動され、積層される。
【0023】
図3から図8を参照して、組立装置4について説明する。図3は、組立装置4を上面から見た場合の平面図であり、図4は、把持装置5の概略構成を示す斜視図であり、図5は、把持装置5の側面図であり、図6は、把持装置5の一部の分解斜視図であり、図7は、コレット51および駒52に加圧した状態を示す断面図であり、図8は、コレット51が拡張した状態を示す断面図である。
【0024】
図3に示すとおり、組立装置4は、組立装置4の外壁となる壁部411と、壁部411に囲まれたテーブル41と、を有する。また、テーブル41の上には、各部品又は物品収納トレー1を把持する把持装置5を移動させる搬送装置42と、部品13及びその他の部品を組み立てる作業スペースである反転テーブル43と、各部品を収納した物品収納トレー1を置く供給エリア413と、空になった物品収納トレー1を積層する払出エリア416と、が少なくとも設けられる。
【0025】
搬送装置42は、部品等を把持する把持装置5と、把持装置5を上昇あるいは下降させる昇降機構421と、この昇降機構421をY軸方向に移動させる第1移動機構422と、この第1移動機構422をX軸方向に移動させる第2移動機構423と、を有する。
これら第1移動機構422および第2移動機構423により、供給エリア413及び払出エリア416を含むテーブル41のほぼ全域に亘って、把持装置5を移動させることができる。
【0026】
図4から図8を参照して把持装置5について説明する。
把持装置5は、一列に配置された複数の円筒状のコレット51と、複数のコレット51同士の間に配置された複数の駒52と、これらコレット51および駒52を両端側から挟んで加圧する加圧装置53と、を備える。
【0027】
複数のコレット51は、中心軸が同軸になるように配置され、駒52は、コレット51同士の間に、中心軸がコレット51と同軸になるように配置される。つまり、コレット51と駒52とは、一直線上に交互に配置される(図5参照)。
【0028】
コレット51には、図6に示すように、一端縁付近から他端縁に至るスリット511と、他端縁付近から一端縁に至るスリット512と、が交互に形成されている。
【0029】
駒52の外径は、中央部では、コレット51の内径よりも大きく、中央部から両端部に向かうにしたがって小さくなり、両端部では、コレット51の内径よりも小さくなっている。よって、駒52の両端部はコレット51の内径よりも小さいので、駒52の両端側は、コレット51内部に入り込んだ状態となっている(図5参照)。
【0030】
図4および図5に戻って、加圧装置53は、上述の昇降機構421(図4参照)に支持されて貫通孔541が形成された把持フランジ54と、貫通孔541に挿通され、さらにコレット51および駒52に挿通されて第2加圧部551(後述)に連通する加圧ピン55と、把持フランジ54に設けられ加圧ピン55を進退させるアクチュエータ56と、物品収納トレー1に部品13が収納されているか否かをセンシングするセンサ57と、を備える。
【0031】
把持フランジ54は、平板状のプレート542と、このプレート542の中央に一体に形成された第1加圧部543と、を備える。この第1加圧部543は、駒52を半分にした形状である。すなわち、この第1加圧部543の外径は、プレート側ではコレット51の内径よりも大きく、先端部に向かうにしたがって小さくなり、先端部では、コレット51の内径よりも小さくなっている。
上述の貫通孔541は、プレート542および第1加圧部543を貫通して形成されている。
【0032】
加圧ピン55は、アクチュエータ56に接続され、把持フランジ54の貫通孔541及び交互に配置されたコレット51及び駒52の中心に挿通される。そして、加圧ピン55の先端には、駒52と同一形状の第2加圧部551が一体に形成されている。加圧ピン55は、アクチュエータ56により、軸方向に沿って進退される。
アクチュエータ56は、加圧ピン55を進退させるものであり、制御盤20により制御される。
センサ57は、物品収納トレー1の物品収納凹部21に部品13が収納されているか否かをセンシングする。このセンサ57は、制御盤20により制御される。
【0033】
この加圧装置53によれば、加圧ピン55を進退させて、第1加圧部543および第2加圧部551により、コレット51および駒52を両端側から挟んで加圧する。
【0034】
次に、図7及び図8を参照して把持装置5の動作について説明する。図7は、コレット51および駒52に加圧した状態を示す断面図である。図8は、前記実施形態に係るコレット51が拡張した状態を示す断面図である。
アクチュエータ56を動作させない場合、駒52の両端側がコレット51内部に入り込んでいるが、コレット51は、加圧されないため拡張しない。
【0035】
次に、アクチュエータ56を動作させて、加圧ピン55を加圧力Fで後退させる(図6参照)。すなわち、加圧ピン55を第2加圧部551方向に向けて移動させる。すると、第1加圧部543および第2加圧部551は、コレット51および駒52を加圧力Fで加圧する。この加圧力Fは、各コレット51および各駒52を介して伝達し、全てのコレット51および駒52に対して均等に作用する。
例えば、あるコレット51について説明すると、コレット51の両側に位置する2つの駒52が、それぞれ、コレット51内部に向かって前進し、互いに隣り合う駒52同士の間隔が短くなる。すると、駒52の中央部の外径は、コレット51の内径よりも大きいので、図7に示すように、駒52の外周面はコレット51の内壁面を矢印A方向に押圧する。その結果、コレット51が弾性変形し、図8に示すように、コレット51の外径は矢印B方向に拡張される。このとき、拡張したコレット51の側面に、部品13や物品収納トレー1の被把持部が当接し、コレット51による矢印B方向への圧力により、部品13又は物品収納トレー1が把持される。
【0036】
その後、加圧装置53による加圧を解除すると、今度は、コレット51の弾性変形の復元力により、コレット51の内壁面により駒52が押圧されて、駒52がコレット51の外部に向かって後退すると共に、コレット51の外径が収縮して元の外径に戻る。
【0037】
図8に戻って、搬送装置42及び把持装置5の動きについて説明する。
まず、制御盤20は、搬送装置42を動かし、目的とする部品13を把持させるため、把持装置5を供給エリア413に移動させる。詳細には、第1移動機構422によりY軸方向の位置を供給エリア413に合わせた後、第2移動機構423によりX軸方向に把持装置5を移動させて、部品13の被把持部分の位置に把持装置5の先端を移動させる。このとき、センサ57によりセンシングを行い、積層された物品収納トレー1のうち、最上段にある物品収納トレー1に部品13が収納されているか否かを判別する。
【0038】
物品収納トレー1に部品13が収納されている場合には、把持装置5の先端(第2加圧部551)を部品13の被把持部分に挿入する。そして、把持装置5の先端が部品13の被把持部分に挿入されると、加圧装置53によりコレット51及び駒52が加圧されて部品13が把持され、反転テーブル43に移動される。
【0039】
また、センサ57によりセンシングを行った際に、物品収納トレー1に部品13が収納されていない場合には、把持装置5の先端(第2加圧部551)を物品収納トレー1の被把持部12に挿入し、物品収納トレー1自体を把持する。そして、把持装置5は、把持した物品収納トレー1を払出エリア416に所定数積層する。そして所定数の物品収納トレー1が払出エリア416に積層されると、積層された物品収納トレー1は、払出手段により、テーブル41から自動的に他の領域に払い出される。
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
【0041】
(1)物品収納トレー1の略中央に被把持部12を設けた。この被把持部12は、物品収納トレー1の物品収納凹部21に収納される物品を把持する把持装置5と兼用であるので、物品収納トレー1をテーブル41から搬出するための搬送手段を別途設ける必要がない。
【0042】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は、本発明に含まれるものである。
【0043】
上述の実施形態においては、物品収納トレー1は、縦長状の収納凸条部24を備えるとしたが、これに限らない。収納凸条部24の形状は、物品収納凹部21に収納される部品13の形状に応じて形成されてよい。例えば、収納凸条部24を円形に形成し、その内側部分を部品13の形状に合わせて変形させたものであってよい。
【符号の説明】
【0044】
1 物品収納トレー
12 被把持部
13 部品
21 物品収納凹部
24 収納凸条部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板により形成された積層可能な物品収納トレーであって、
物品を収納する物品収納凹部と、
該物品収納トレーの略中央に設けられた被把持部と、を備え、
前記被把持部は、該物品収納トレーの積層方向に形成された貫通穴であり、
前記物品を把持する把持部により把持されることを特徴とする物品収納トレー。
【請求項2】
物品を収納する物品収納凹部と、略中央に形成された貫通穴である被把持部と、を有する物品収納トレーを搬送する物品収納トレー搬送方法であって、
前記物品を把持する把持部により、前記物品収納トレーに収納された全ての物品が取り出された場合に、前記物品収納トレーの被把持部が把持され、
前記物品収納トレーを排出位置に移動させることを特徴とする物品収納トレーの搬送方法。
【請求項3】
物品を収納する物品収納凹部と、略中央に形成された貫通穴である被把持部と、を有する物品収納トレーを搬送する物品収納トレー搬送方法であって、
物品供給位置に積層された複数の前記物品収納トレーのうち最上段に配置された前記物品収納トレーに収納された物品を、円柱状に形成されたコレットチャック式の把持部により把持して前記物品収納トレーから取り出し、
前記物品収納トレーに収納された全ての物品が前記把持部により取り出された場合に、前記把持部により、前記物品収納トレーの被把持部が把持され、
前記物品収納トレーを排出位置に移動させることを特徴とする物品収納トレーの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−208647(P2010−208647A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54887(P2009−54887)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】