説明

物品搬送用昇降部材の昇降装置

【課題】昇降用モータとして小型のものを用いることができるようにした物品搬送用昇降部材の昇降装置を提供することである。
【解決手段】昇降用モータ58の駆動により駆動スプロケット54を回転させ、その駆動スプロケット54に掛けられた吊下げチェーン51の移動により積付け物品Aを吸着する吸着グリップ40を上下動させるようにする。吸着グリップ40を上方に引き上げる際に、昇降用モータ58に大きな負荷が作用すると、その負荷の増大に応じてチェーン移動用シリンダ55に対するエアの供給圧を増大させてシリンダ55の出力を高め、そのシリンダ55で吊下げチェーン51を移動させて昇降用モータ58の負荷を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送用物品を所定の高さまで搬送する物品搬送用の昇降部材の昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
商品を収容する段ボール箱等の各種の物品をパレット上に積付けるパレタイザや、パレット上に積付けられた物品を、そのパレット上から取り出して目的位置まで搬送して積み降ろしするデパレタイザにおいては、物品を支持する昇降部材を昇降装置により上下動させるようにしている。
【0003】
上記パレタイザやデパレタイザのように、昇降部材によって搬送用物品を支持し、その昇降部材の昇降動により搬送用物品を上げ下ろしするようにした装置、機械類において、上記昇降部材を昇降動させる昇降装置として、チェーンやワイヤ、ベルト、あるいはロープ等のロープ類で昇降部材を吊下げ支持し、そのロープ類を昇降用モータにより駆動される駆動ホイールの回転により移動させて昇降部材を昇降動させるようにしたものが従来から知られている。
【0004】
バランスウェイトを採用する上記のような昇降装置においては、普通、ロープ類の端部にバランスウェイトを接続して昇降用モータの負荷の低減を図るようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バランスウェイトを採用する従来の昇降装置においては、モータ負荷の低減効果を一定に保持する場合、搬送用物品の重量に応じて重さの異なるバランスウェイトに取り替える必要があるが、その取り替えは困難である。このため、従来の昇降装置においては、搬送用物品の最大重量を設定し、その最大重量に応じて昇降用モータの容量を決定するようにしているため、上記昇降用モータとして容量の大きな大型のものを必要とするという問題があった。
【0006】
また、昇降部材を所定の位置まで上昇させて昇降用モータを停止させると、昇降用モータの回転軸は慣性力によって回り続けようとし、また、昇降部材も慣性力により上方へ移動しようとするため、昇降部材を高速で上限位置に位置決めすることはできないという問題もあった。
【0007】
この発明は、昇降用モータとして小型のものを用いることができるようにし、かつ、昇降部材を高速で上限位置に位置決めすることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明においては、搬送用物品を支持する昇降部材に吊下げロープ類の一端部を連結し、その昇降部材から引き上げられた前記吊下げロープ類を昇降用モータの駆動により正逆両方向に回転される駆動ホイールの外周に掛け、その駆動ホイールの一方向への回転により昇降部材を上昇させて搬送用物品を上方に搬送するようにした物品搬送用昇降部材の昇降装置において、前記吊下げロープ類に、流体の供給により伸縮して吊下げロープ類を前記昇降用モータの駆動による吊下げロープ類の移動方向と同方向に移動させるシリンダを接続し、前記昇降用モータの負荷の増大に応じて前記シリンダに対する流体の供給圧を増大させてシリンダの出力を高めるようにした構成を採用したのである。
【0009】
ここで、吊下げロープ類とは、チェーンやワイヤ、ベルト、あるいはロープをいい、駆動ホイールは、そのロープ類の種類に応じて適切なものを採用する。例えば、吊下げロープ類がチェーンの場合は、駆動ホイールとしてスプロケットを用い、ワイヤやロープの場合はシーブを採用する。また、ベルトの場合はプーリを採用する。
【0010】
上記の構成からなる物品搬送用昇降部材の昇降装置において、昇降部材を下降し、その昇降部材が物品を支持する状態で昇降用モータの駆動により駆動ホイールを回転させて昇降部材を上方に引き上げると、昇降用モータに負荷が作用することになる。その負荷の増大に応じてシリンダに対する流体の供給圧が増大し、シリンダの出力が高められて、吊下げロープ類を物品引き上げ方向に移動させる作用力が増す。このため、シリンダの出力が増大した分、昇降用モータの負荷の低減が図られることになる。
【0011】
ここで、シリンダは、その伸張により吊下げロープ類を物品引き上げ方向に移動させるようにしてもよく、あるいは、収縮により吊下げロープ類を物品引き上げ方向に移動させるようにしてもよい。そのシリンダが最も伸張した状態あるいは最も収縮した状態によって物品の上限停止位置を決定することができるため、物品を高速で上限位置に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0012】
上記のように、この発明においては、昇降用モータの駆動により駆動ホイールを回転させて昇降部材を上方に引き上げる際に、昇降用モータに負荷が作用すると、その負荷の増大に応じてシリンダに対する流体の供給圧が増大し、シリンダの出力が高められて、ロープ類を物品引き上げ方向に移動させる作用力が増すため、シリンダの出力が増大した分、昇降用モータの負荷の低減を図ることができ、昇降用モータとして容量の小さい小型のものを採用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3は、この発明に係る物品搬送用昇降部材の昇降装置を採用したパレタイザを示す。パレタイザは、搬送用物品としての積付け物品Aを下流側に搬送する搬送コンベヤ11を有し、その搬送コンベヤ11の搬出端部に板状の位置決め部材12が設けられ、この位置決め部材12により積付け物品Aは停止され、かつ、位置決めされる。
【0014】
搬送コンベヤ11の下流側にはテーブルリフタ13が設けられている。テーブルリフタ13はリフトテーブル14を有し、そのリフトテーブル14の上面にローラコンベヤ15が設けられている。ローラコンベヤ15は、積付け物品Aが積付けられるパレットPを支持し、そのパレットP上に積付け物品Aが所定段数積み付けられると、そのパレットPを図1の左方向に送り出すようになっている。
【0015】
搬送コンベヤ11の上方には搬送用枠体17が設けられている。搬送用枠体17は、側面枠17aの上端部に上部枠17bを設け、かつ、側面枠17aの下部に上記上部枠17bと上下対向する下部枠17cを設けたコの字形をなしている。
【0016】
搬送用枠体17の上部枠17bには搬送コンベヤ11による積付け物品Aの搬送方向に対して直交方向に長く延びる駆動軸18と、その駆動軸18に平行するローラ軸19とが回転自在に支持され、上記駆動軸18とローラ軸19のそれぞれ両端部に回転自在に支持されたローラ20、21は固定配置の一対のレール支持部材22のそれぞれ上面に設けられたレール23に沿って移動自在とされている。
【0017】
ここで、レール23は、一端が搬送コンベヤ11の搬入端上に位置しかつ、他端がローラコンベヤ15の搬出端上に位置する長さとされている。このため、搬送用枠体17は搬送コンベヤ11とローラコンベヤ15との間で移動自在とされ、移動装置30によって往復移動されるようになっている。
【0018】
移動装置30は、搬送用枠体17の側面枠17aの下部に回転自在に支持されたピニオン31を前記レール23の下方においてそのレール23と平行する固定配置のラック32に噛合し、そのピニオン31を上記側面枠17aの上部に支持された移動用モータ33で回転駆動させるようにしている。
【0019】
移動用モータ33の回転をピニオン31に伝達するため、ここでは、移動用モータ33の回転をベルト伝動機構34を介して駆動軸18に伝達し、その駆動軸18の回転をチェーン伝動機構35を介してピニオン31に伝達するようにしている。
【0020】
搬送用枠体17には、上端部が上部枠17bで支持され、下端部が下部枠17cで支持された4本のガイド軸24が設けられ、そのガイド軸24によって昇降部材としての吸着グリップ40が昇降自在に支持されている。
【0021】
吸着グリップ40は、矩形のヘッド支持枠41の下面に複数の角柱状の吸着ヘッド42を側面が互いに接触するようにして固定した構成とされ、上記吸着ヘッド42はそのヘッド内部に付与される真空圧により積付け物品Aを吸着する従来から周知のものであるため、詳細を省略している。
【0022】
昇降部材としての吸着グリップ40は昇降装置50によって昇降動される。昇降装置50は、吸着グリップ40の移動方向の下流側端部の両側と上流側端部の両側に吊下げロープ類としての4本の吊下げチェーン51のそれぞれ一端部を固定し、下流側端部の2本の吊下げチェーン51を上部枠17bに回転自在に支持されたガイド用スプロケット52の外周に掛け、そのガイド用スプロケット52から上流側に引き出された2本の吊下げチェーン51と上流側2本の吊下げチェーン51のそれぞれを上部枠17bに回転自在に支持された駆動軸53上の駆動ホイールとしての4枚の駆動スプロケット54に掛け、各駆動スプロケット54から下流側に引き出された吊下げチェーン51のそれぞれを上部枠17bの上部両側に支持されたシリンダ55により搬送用枠体17の移動方向に進退される可動スプロケット56の外周に掛け回すことにより反転して他端を上部枠17bの上面から起立する連結片57に固定し、上記上部枠17bの上部に支持された昇降用モータ58の駆動により駆動軸53を回転し、その駆動軸53と一体に回転する駆動スプロケット54の回転により吊下げチェーン51を移動させて吸着グリップ40を昇降動させるようにしている。
【0023】
シリンダ55は、エア圧の供給により伸縮して吊下げチェーン51を昇降用モータ58の駆動による吊下げチェーン51の移動方向と同方向に移動させるようになっている。
【0024】
図4は、シリンダ55および昇降用モータ58の制御回路を示す。圧力発生源60とシリンダ55のボトム室55aはエア供給路61で連通し、そのボトム室55aに対するエア圧の供給によりシリンダ55が伸張して、吊下げチェーン51を吸着グリップ40が上昇する方向に移動させるようになっている。
【0025】
エア供給路61には、圧力発生源60側から圧力調整弁62と急速排気弁63が組込まれている。圧力調整弁62はコントローラ64から入力される信号により圧力調整されるようになっている。
【0026】
コントローラ64は、正回転駆動信号Nおよび逆回転駆動信号Rが入力され、正回転駆動信号Nが入力されると、昇降用モータ58を正回転(図1の矢印で示す方向の反対の方向)させて吸着グリップ40が上昇する方向に吊下げチェーン51を移動させる。また、逆回転駆動信号Rが入力されると、コントローラ64は昇降用モータ58を逆回転させて吸着グリップ40が下降する方向に吊下げチェーン51を移動させる。
【0027】
昇降用モータ58は、上方に搬送する積付け物品Aの重量の変動により負荷が変動し、その負荷が大きくなると電流値も大きくなる。そこで、昇降用モータ58の電流値を電流検出センサ65で検出し、その検出信号をコントローラ64に出力している。コントローラ64は電流検出センサ65から入力される信号により圧力調整弁62を圧力調整するようになっており、昇降用モータ58の負荷の増大に応じてシリンダ55のボトム室55aに対するエアの供給圧が増大する方向に圧力調整弁62を圧力調整するようになっている。
【0028】
実施の形態で示すパレタイザは上記の構成からなり、積付け物品Aが搬送コンベヤ11の搬出端に送り込まれて、図1に示すように、位置決め部材12に当接して停止すると、昇降用モータ58が駆動し、駆動スプロケット54を図1の矢印で示す方向に回転させる。このとき、圧力調整弁62は零とする状態にあり、シリンダ55のボトム室55aのエアが急速排気弁63から排気されてシリンダ55が収縮し、上記駆動スプロケット54の回転とシリンダ55の収縮とにより吊下げチェーン51が引き下げられ、吸着グリップ40が下降する。
【0029】
吸着グリップ40がその下降路の下方で停止する積付け物品Aの上面に当接する位置まで下降すると、昇降用モータ58が停止する。
【0030】
吸着グリップ40が積付け物品Aを吸着すると、昇降用モータ58が逆方向に回転し、駆動スプロケット54を図1の矢印で示す逆の方向に回転させる。また、シリンダ55のボトム室55aにエア圧が供給され、シリンダ55が伸張する。
【0031】
このため、吊下げチェーン51は引き上げられて吸着グリップ40が積付け物品Aを吸着する状態で上昇する。吸着グリップ40が所定の高さまで上昇すると、昇降用モータ58が停止する。
【0032】
昇降用モータ58の停止後、移動用モータ33が作動し、ピニオン31を回転させる。このピニオン31は固定配置のラック32と噛合しているため、上記ピニオン31の回転により搬送用枠体17がテーブルリフタ13に向けて移動する。
【0033】
搬送用枠体17と共に移動する積付け物品Aがローラコンベヤ15の搬送面上にセットされたパレットPと上下で対向する位置まで搬送用枠体17が移動すると、移動用モータ33が停止する。
【0034】
移動用モータ33が停止すると、昇降用モータ58の駆動により駆動スプロケット54が図1の矢印で示す方向に回転される。また、シリンダ55のボトム室55aのエアが急速排気弁63から排気されてシリンダ55が収縮し、吊下げチェーン51の引き下げにより吸着グリップ40が下降する。
【0035】
積付け物品AがパレットPで支持されると、吸着グリップ40は積付け物品Aの吸着を解除し、積付け物品Aの積付けが完了する。積付け物品Aの積付け後、昇降用モータ58の駆動により、駆動スプロケット54が図1の矢印で示す反対の方向に回転し、また、シリンダ55のボトム室55aに対するエア圧の供給によりシリンダ55が伸張し、吊下げチェーン51の引き上げにより吸着グリップ40が上昇する。
【0036】
シリンダ55が最大に伸張すると、昇降用モータ58が停止し、吸着グリップ40は昇降ストロークの上限位置おいて停止状態とされる。その停止後、移動用モータ33が駆動し、ラック32に噛合するピニオン31の回転により、搬送用枠体17が搬送コンベヤ11上に向けて移動する。
【0037】
搬送用枠体17が搬送コンベヤ11の上方位置まで移動すると、移動用モータ33が停止し、その停止後、次の積付け物品が搬送コンベヤ11上に送り込まれる。以後、上記の動作が繰り返し行なわれ、パレットP上に次々と積付け物品Aが積付けられる。
【0038】
ここで、昇降用モータ58の駆動およびシリンダ55の伸張によって吸着グリップ40に吸着された積付け物品Aが上方に引き上げられる時、昇降用モータ58およびシリンダ55のそれぞれに吸着グリップ40の重さと積付け物品Aの重さを加えた重量に相当する大きさの負荷が作用することになる。積付け物Aの重量は一定でないため、昇降用モータ58に作用する負荷は変動する。
【0039】
上記負荷が増大すると、昇降用モータ58の電流値が変化し、その電流値の変化は図4に示す電流検出センサ65により検出され、その検出信号がコントローラ64に入力される。
【0040】
コントローラ64はモータ負荷の増大に応じて電流検出センサ65から入力される信号により圧力調整弁62をシリンダ55のボトム室55aに対するエアの供給圧が増大する方向に一次側の圧力を調整する。
【0041】
このため、シリンダ55の出力が高められることになり、吊下げチェーン51を引き上げ方向に移動させる作用力が増大し、そのシリンダ55の出力が増大した分、昇降用モータ58の負荷の低減が図られることになる。その結果、昇降用モータ58として容量の小さい小型のものを採用することができる。
【0042】
なお、実施の形態では、シリンダ55としてエアシリンダを採用したが、油圧シリンダであってもよい。また、シリンダ55を横向きにして使用したが、その向きも横向きに限定されるものではない。さらに、シリンダ55は吊下げチェーン51に一端を連結し、他端を搬送用枠体17に連結してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明に係る物品搬送用昇降部材の昇降装置を採用したパレタイザの正面図
【図2】図1の平面図
【図3】図1の右側面図
【図4】昇降用モータおよびシリンダの制御回路図
【符号の説明】
【0044】
A 積付け物品(搬送用物品)
P パレット
40 吸着グリップ(昇降部材)
51 吊下げチェーン(吊下げロープ類)
54 駆動スプロケット(駆動ホイール)
55 シリンダ
58 昇降用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送用物品を支持する昇降部材に吊下げロープ類の一端部を連結し、その昇降部材から引き上げられた前記吊下げロープ類を昇降用モータの駆動により正逆両方向に回転される駆動ホイールの外周に掛け、その駆動ホイールの一方向への回転により昇降部材を上昇させて搬送用物品を上方に搬送するようにした物品搬送用昇降部材の昇降装置において、
前記吊下げロープ類に、流体の供給により伸縮して吊下げロープ類を前記昇降用モータの駆動による吊下げロープ類の移動方向と同方向に移動させるシリンダを接続し、前記昇降用モータの負荷の増大に応じて前記シリンダに対する流体の供給圧を増大させてシリンダの出力を高めるようにしたことを特徴とする物品搬送用昇降部材の昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−89862(P2010−89862A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259345(P2008−259345)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000115980)レンゴー株式会社 (502)