説明

物干し具

【課題】ベランダに容易かつ強固に物干し具を設置することができ、しかも、日除け機能を付加した物干し具を提供すること。
【解決手段】伸縮自在となされると共に、上下方向に相対向する二つの面の間にその上下端を突っ張らせるようにして適宜間隔を空けて立設された2本の支柱と、該支柱の上部間に差し渡された水平杆と、前記各支柱の中間部から前方へ水平方向に延び、物干し竿を保持するための竿受け部が形成された竿受けアームと、該竿受けアーム間に差し渡されて保持された物干し竿と、前記水平杆に巻き付けられた日除けシートとを備え、該日除けシートの下端部には、支柱に係止するための係止部が設けられ、日除けシートを水平杆から引き出して、前記物干し竿の前方側から回すようにして下方に広げ、係止部を支柱に係止させることによって、2本の支柱間に形成される空間部の少なくとも一部を覆うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物干し具に関するものであり、より詳しくは、マンションのベランダなどに容易かつ安定的に設置され、かつ日除けの機能を付加した物干し具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多種多様な物干し具が提案され、その形態、形状及び機能等は様々である。その中で、例えばマンションのベランダなどに設置される物干し具として、ベランダの床面と天井面との間に突っ張らせるようにして取り付けられた複数の支柱に物干し竿を保持する竿受け部を設け、当該竿受けに物干し竿を保持させるようにした物干し具が多く利用されている(下記特許文献1及び2)。
【0003】
このような従来の物干し具によれば、ベランダに容易かつ強固に物干し具を設置することができる。それゆえ、強風が吹く可能性のある地域や中高層のマンションのベランダなどに設置した場合でも、物干し具が強風で倒れたり吹き飛ばされたりする恐れがないので安心して設置、利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−79492号公報
【特許文献2】特開2006−340875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただし、ベランダには非常に強い太陽光が当たる場合も多く、充分な庇が配されていないベランダであれば、余り太陽光を当てるのが好ましくないような洗濯物を干すことができない。また、近年の地球温暖化の進行により、夏場の気温の上昇によるヒートアイランド現象や室内の極端な温度上昇等が生じている。
【0006】
これらの問題への対処として、日除けの器具・装置を設置することも可能であるが、上記従来の物干し具に加えて日除けの器具などをベランダに設置すると、多くのスペースを占めてしまうこととなる。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を克服するためになされたものであり、ベランダに容易かつ強固に物干し具を設置することができ、しかも、日除け機能を付加した物干し具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る物干し具は、伸縮自在となされると共に、上下方向に相対向する二つの面の間にその上下端を突っ張らせるようにして適宜間隔を空けて立設された2本の支柱と、該支柱の上部間に差し渡された水平杆と、前記各支柱の中間部から前方へ水平方向に延び、物干し竿を保持するための竿受け部が形成された竿受けアームと、該竿受けアーム間に差し渡されて保持された物干し竿と、前記水平杆に巻き付けられた日除けシートとを備え、該日除けシートの下端部には、支柱に係止するための係止部が設けられ、日除けシートを水平杆から引き出して、前記物干し竿の前方側から回すようにして下方に広げ、係止部を支柱に係止させることによって、2本の支柱間に形成される空間部の少なくとも一部を覆うようにしたことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る物干し具によれば、2本の支柱が上下に相対向する二つの面、すなわち例えばベランダの床面と天井面(庇部の裏面)との間に突っ張らせるようにして固定されて立設されるので、強固にかつ安定的に設置され、それゆえ、強風によっても容易に倒れたり吹き飛ばされたりすることがない。しかも、日除けシートを水平杆から引き出して広げるだけで、簡易な日除けとして利用でき、これによりベランダに面したマンションの壁面や窓へ差し込む太陽光及び太陽熱を遮って、室内の温度上昇を抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る物干し具をベランダに面した窓の前面に設置する場合、日除けシートは、上記物干し竿の前方側から回すようにして広げられており、日除けシートの窓側に空間部が形成されるので、室内にいる居住者にとって圧迫感が無い。しかも、この空間部があることによって、窓を開放したときには風が通り易いので、より一層室内の温度上昇を抑制できる。
【0011】
更に、本発明に係る物干し具において、2本の支柱のそれぞれの中間部から後方かつ水平方向へ延び、物干し竿を保持するための竿受け部が形成された第二の竿受けアームと、該第二の竿受けアーム間に差し渡されて保持された物干し竿を備えるようにしてもよい。
【0012】
このようにすれば、日除けシートを広げた状態でも洗濯物を干すことができる。それゆえ、あまり太陽光を当てるべきでない洗濯物でも干すことが可能となり、また周辺から見られたくない洗濯物についての目隠しにもなる。
【発明の効果】
【0013】
以上のとおり、本発明に係る物干し具によれば、2本の支柱が上下に相対向する二つの面間に突っ張らせるようにして固定されて立設されるので、強固にかつ安定的に設置され、それゆえ、強風によっても容易に倒れたり吹き飛ばされたりすることがない。しかも、日除けシートを水平杆から引き出して広げるだけで、簡易な日除けとして利用でき、これによりベランダに面したマンションの壁面や窓へ差し込む太陽光及び太陽熱を遮って、室内の温度上昇を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る物干し具をベランダに面した窓の前面に設置する場合、日除けシートは、上記物干し竿の前方側から回すようにして広げられており、日除けシートの窓側に空間部が形成されるので、室内にいる居住者にとって圧迫感が無い。しかも、この空間部があることによって、窓を開放したときには風が通り易いので、より一層室内の温度上昇を抑制できる。
【0015】
更に、2本それぞれの支柱の中間部から後方かつ水平方向へ延び、物干し竿を保持するための竿受け部が形成された第二の竿受けアームと、該第二の竿受けアーム間に差し渡されて保持された物干し竿を備えるようにすれば、日除けシートを広げた状態でも洗濯物を干すことができる。それゆえ、あまり太陽光を当てるべきでない洗濯物でも干すことが可能となり、また周辺から見られたくない洗濯物の目隠しにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る物干し具の一実施形態を示す図であり、マンションのベランダに設置され、日除けシートを広げた使用状態を示す図である。
【図2】図1に示した物干し具であって、日除けシートで隠れている部分を破線で示した図である。
【図3】図1に示した物干し具であって、日除けシートを水平杆に巻き取って収納した状態を示す説明図である。
【図4】図1に示した物干し具における竿受けアームを拡大した図であり、アームの先端部を折り曲げる動作を示した説明図である。
【図5】図4と同じく、竿受けアームの先端部を折り曲げる動作を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1〜3は、本発明に係る物干し具1の一実施形態におけるベランダへの設置状態を示す図である。図3に示すように、この実施形態においては、所定の間隔を空けて立設された2本の支柱2のそれぞれの中間部に竿受けアーム3を取り付け、当該竿受けアーム3に物干し竿4を保持させることによって、2本の支柱2間に物干し竿4が差し渡されている。また、2本の支柱2の上部間には水平杆5が差し渡され、当該水平杆5に日除けシート6が巻き付けられている。この日除けシート6の下端部を引っ張って引き出し、物干し竿4の前方側を回すようにして日除けシート6の下端部左右両端に設けられた2つの係止部61をそれぞれ2本の支柱2に係止させることによって、図1及び図2に示すように、2本の支柱2間の空間部に日除けシート6を広げ、これによりベランダに面する壁面ないし窓への太陽光及び太陽熱を遮るようになされている。以上が、図1〜3に示した実施形態における物干し具1の基本的な構成である。
【0019】
この実施形態の物干し具1をより詳細に説明すると、2本の支柱2は、それぞれ管状の外パイプ21と、外パイプ21の内径よりも僅かに小さい外径を有し前記外パイプ21内に嵌挿される同じく管状の内パイプ22と、任意の高さ位置で内パイプ22を外パイプ21に対して固定可能とすることにより支柱2の長さを任意に調整できるようにするためのロック部材23とを備えている。また、支柱2の上下それぞれの端部には、端部キャップ24、25が被せられている。これにより、支柱2は、その上下端部がそれぞれ端部キャップ24、25を介してベランダの天井面Cと床面Fとを押圧するように所定の長さに調整され、天井面Cと床面Fとの間に突っ張らせた状態で固定されることにより設置される。
【0020】
また、図1〜3に示すように、竿受けアーム3は、支柱2の中央あたりの高さ位置に取り付けられている。この竿受けアーム3は、図4及び図5に示すように、支柱2に取り付けられる支持アーム部31と、支持アーム部31の先端部に回動軸35を中心として回動可能に軸支された回動アーム32とからなる。支持アーム部31は、その基端部に支柱2を挿通可能な支柱挿通孔311が形成されるとともに、図示しないが、支持アーム部31を任意の高さ位置において支柱2に対して固定するためのストッパー機構を備えており、これによって竿受けアーム3を任意の高さ位置において支柱2に取り付けることが可能となる。なお、当該ストッパー機構は、既知の任意の機構を選択して利用することができ、また、図1〜図3においては竿受けアーム3を支柱2の中央あたりの高さ位置に取り付けた使用状態を示しているが、これよりも上の位置或いは下の位置に取り付けるようにしてもよい。
【0021】
回動アーム32は、上述のとおり回動軸35を中心として回動可能となされていて、図1に示したように前方へ延ばした状態とすることもでき、また図4〜5に示すように、回動アーム32の先端部を物干し具1の背面側方向へ回動させて、竿受けアーム3を短くすることもできる。このとき、図5の二点破線で示すように、支持アーム部31に形成したスリット部312に回動アーム32を収納することも可能となされている。
【0022】
また、回動アーム32の先端部近傍および回動軸35の位置には、左右方向に貫通し物干し竿4を挿通させて保持させることが可能な挿通孔が形成され保持部321、36となされている。この保持部321、36に物干し竿4を保持させることにより、2本の竿受けアーム間3に物干し竿4を差し渡して保持させることができる。
【0023】
なお、上記回動アーム32の伸縮機構(回動軸を中心に回動アームを回動させて前方に伸ばし、あるいは背面側方向へ収納する機構)については、このような形態に限られるものでなく、他の任意の機構を選択して採用することが可能なものである。
【0024】
水平杆5は、円筒状の棒状体であり、図1〜3に示すように、水平杆保持腕7を介して支柱2間に差し渡されて取り付けられている。水平杆5は、その長手方向の中心軸を中心として水平杆保持腕7に対して回動可能であり、水平杆保持腕本体71の左右いずれか一方又は双方に設けられたハンドル72に接続され(図1〜3に示した実施例においては一方のみ)、当該ハンドル72を回すことによって、水平杆5も回動するようになされている。また、水平杆5には日除けシート6の上端縁が固定されており、当該日除けシート6を使用しないときは、ハンドル72を回して図3に示すように日除けシート6を巻き上げた状態とできるものである。そして、日除けシート6を使用するときは、ハンドル72を回して、或いは日除けシート6の下端縁を引っ張ることにより、日除けシート6を引き出せばよいものである。
【0025】
さらに、日除けシート6の下端縁には、当該下端縁に沿って棒状体により形成される下端芯材63が設けられ、また下端芯材の両端部、すなわち日除けシート6の下端における左右両端部には、支柱2対して着脱自在に係止可能とした係止部61が設けられている。この実施形態における係止部61は、合成樹脂材料で形成されたものであって、支柱2の外径よりも小さい内径を備えた環状の一部を切り欠いた形状となされており、弾性的に拡径可能であると共にその表面が一定以上の摩擦係数を備えることで、支柱2に係止可能となされている。尚、当該係止部61は、上記の形態に限られず、支柱2に着脱自在に係止可能なものであれば、任意の構成を採用することができる。
【0026】
上述のような構成を備えることにより、日除けシート6を使用するときには、日除けシート6を水平杆5から引き出して下方へ引っ張り、物干し竿4の前方側から回すようにして下方に広げ、係止部を支柱に係止させることによって、簡単に2本の支柱間に形成される空間部の少なくとも一部を覆ことができる。このとき、日除けシート6を物干し竿4の前方側から回すようにしているので、図1に示すように、日除けシート6は側面視で「く」の字状となる。このようにすることで、日除けシート6の背面側に空間部が形成されるので、この物干し具1をベランダに面した窓の前面に設置した場合、室内にいる居住者にとっては日除けシート6による圧迫感がない。また、この空間部があることによって、窓を開放したときの通風状態が良好となるので、室温の上昇をより好適に抑制することが可能となる。
【0027】
また、この実施形態においては、各支柱2に設けられた竿受けアーム3よりやや低い位置に第二の竿受けアーム8が設けられている。第二の竿受けアーム8は支柱2から後方に延びるように配され、また、それぞれ左右に貫通する貫通孔が形成されて物干し竿44を挿通させて保持するための保持部81となされ、当該第二の竿受けアーム8間に物干し竿44が差し渡されている。
【0028】
このように支柱2より背面側に物干し竿44が配され、また上述のとおり日除けシート6は物干し竿4の前方側から回すようにされて側面視で「く」の字状となるようになされているので、日除けシート6を使用しているときにも物干し竿44に洗濯物を干すことができる。
【0029】
なお、日除けシート6は、様々な形態のものを適用できる。すなわち、合成樹脂材料や各種天然素材を適宜選択して利用でき、通風性のないシート材を利用してもよいが、線材を編成するなどして通風性を持たせたものを利用してもよい。また、光反射性能を有する材料を日除けシートの表面に塗布したり或いはシート材料に練り込むようにしてもよい。さらに、必要に応じて、遮熱、遮光、遮音、防水などの性能を適宜付与することも可能である。
【0030】
以上のとおり、具体的な実施形態を示して本発明に係る物干し具を説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々に形態等を変更することが可能なものである。
【0031】
例えば、日除けシート6をハンドルの回転動作により巻き上げられるものとせず、係止部61の係止状態を解除すれば自動的に巻き上げられるものとしてもよい。即ち、スプリング等を用いることにより、水平杆保持腕7に水平杆5が日除けシートを巻き取る方向へ付勢する付勢力を生じさせる付勢手段を備えるようにし、これによって日除けシートの下端縁の係止を解除すれば、自動的に日除けシート6が水平杆に巻き上げられるようにすることができる。このようにすれば、日除けシート6の収納作業が非常に簡便となり、また、日除けシート6を使用している場合には、当該シートがピンと張った状態となる。
【符号の説明】
【0032】
1 物干し具
2 支柱
3 竿受けアーム
4 物干し竿
5 水平杆
6 日除けシート




【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在となされると共に、上下方向に相対向する二つの面の間にその上下端を突っ張らせるようにして適宜間隔を空けて立設された2本の支柱と、
該支柱の上部間に差し渡された水平杆と、
前記各支柱の中間部から前方へ水平方向に延び、物干し竿を保持するための竿受け部が形成された竿受けアームと、
該竿受けアーム間に差し渡されて保持された物干し竿と、
前記水平杆に巻き付けられた日除けシートとを備え、
該日除けシートの下端部には、支柱に係止するための係止部が設けられ、
日除けシートを水平杆から引き出して、前記物干し竿の前方側から回すようにして下方に広げ、係止部を支柱に係止させることによって、2本の支柱間に形成される空間部の少なくとも一部を覆うようにしたことを特徴とする物干し具。
【請求項2】
2本の支柱のそれぞれの中間部から後方かつ水平方向へ延び、物干し竿を保持するための竿受け部が形成された第二の竿受けアームと、
該第二の竿受けアーム間に差し渡されて保持された物干し竿を備えたことを特徴とする請求項1に記載の物干し具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210336(P2012−210336A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77573(P2011−77573)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)