説明

物流品質検査システム及びその構成装置

【課題】輸送物の破損事故がどのような状況で起きたのかを把握することにより、その原因を特定し、物流の品質改善に役立てることができる物流品質検査方法を提供する。
【解決手段】輸送物に取り付けられたデータレコーダ10が、当該輸送物が特定の状況下にある事実、例えば衝撃が加えられた事実を検出したときに、当該輸送物の現在位置を表す位置データをサーバコンピュータ30に伝達する。サーバコンピュータ30は、それぞれ輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラのうち、受信した位置データに基づいて輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、このカメラの撮像データを取り込むための制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、輸送物に大きな衝撃が加わる等の異常事態を検知した際に、その輸送物のおかれた周囲環境輸送環境を記録することにより、その原因を特定し、物流の品質を検査する方法及びシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
運送業界では、輸送物が粗雑に扱われ、強い衝撃が加わることにより発生する、「角打ち」、「破れ・擦れ」等の破損事故を防止し、物流の品質を向上したいとの要望が存在している。特に、破損事故がどのような状況で起こったかを把握し、その原因を特定し、物流の品質改善に役立てることが求められている。また、実際に破損事故が起こった場合には、その当事者を特定したいとの要望も存在している。
従来、輸送物に衝撃センサを有する衝撃検知装置を取付け、衝撃値を記録するとともに、その衝撃値が所定の大きさを超えた場合に警報を発することにより、輸送物が所定の衝撃値以上の衝撃を受けていないことを保証するシステムが知られていた(特許文献1参照)。このようなシステムでは、所定の大きさ以上の衝撃値の発生を特定できるものの、その衝撃値の発生がどのような状況で起きたのかを把握することはできず、その原因を特定することはできなかった。
また、波形採取センサ、GPSシステム、CCDカメラを輸送車両に設置し、これらによって、輸送物の健全性を常時リアルタイムに双方向確認することを特徴とするシステムが知られていた(特許文献2参照)。しかし、このシステムも、輸送物の衝撃等の原因を特定することを意図するものではなく、単に輸送車両内で輸送物を監視するに止まっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−243755
【特許文献2】特開2003−232888
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、輸送物に大きな衝撃が加わった等の異常事態がどのような状況で起きたのかを把握することにより、その原因を特定し、物流の品質改善に役立てることができる物流品質検査技術を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するために、物流品質検査システム及びその構成装置を提供する。
本発明の物流品質検査システムは、輸送物に取り付けられたデータレコーダと、このデータレコーダと非接触通信を行うとともに、それぞれ前記輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラを制御可能なデータ処理装置とを有する物流品質検査システムであって、前記データレコーダは、前記輸送物が特定の状況下にある事実及びそのときの現在位置を検出するセンサ部と、このセンサ部で前記事実が検出されたときに前記現在位置を表す位置データを前記データ処理装置へ伝達する伝達手段とを含んでおり、前記データ処理装置は、前記複数のカメラの設置位置を表す設置位置データを保持する保持手段と、前記データレコーダから受信した前記位置データと前記保持手段に保持されている設置位置データとを照合することにより、前記位置データを受信したときの輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、特定したカメラを制御して当該状況を撮影した撮像データを取得する制御手段とを含んで構成される。前記センサ部は、前記輸送物に作用する加速度、当該輸送物の周囲の温度又は湿度のいずれか1つを検出する計器を含んでおり、前記伝達手段は、前記加速度、前記温度又は湿度が、予め設定された閾値を超えたときに前記位置データを前記データ処理装置へ伝達するものとしてもよい。本発明の物流品質検査システムは、それぞれ輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラのうち、受信した位置データに基づいて輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、このカメラの撮像データを取り込むための制御を行うため、その撮像データを検証することにより、どのような状況で輸送物に大きな衝撃が加わった等の異常事態が発生したかを把握することができ、その原因をより具体的に特定することができる。搬送経路には、営業所・倉庫、車両の荷台等も含まれる。
【0006】
ある実施の態様では、前記複数のカメラのいくつかが、前記輸送物が積載される車両に設置されるものとしてもよい。また、前記複数のカメラは、前記輸送物が搬送される設備内に設置されるものとしてもよい。車両に設置される構成とする場合には、路面状況も撮像データで視認できるため、段差や急カーブなどの路面状況が異常事態の原因となった場合に、その原因を特定することが可能となる。
【0007】
本発明のデータ処理装置は、それぞれ輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラを制御可能なデータ処理装置であって、前記輸送物が特定の状況下にあるときに、そのときの当該輸送物の現在位置を表す位置データを送信するデータレコーダから、前記位置データを受信する受信手段と、前記複数のカメラの設置位置を表す設置位置データを保持する設置データ保持手段と、前記データレコーダから受領した前記位置データと前記設置データ保持手段に保持されている設置位置データとを照合することにより、前記位置データを受領したときの輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、特定したカメラを制御して当該状況を撮影した撮像データを取得する制御手段とを含んで構成される。このデータ処理装置では、輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、特定したカメラを制御するため、具体的に輸送物に異常事態が発生した際の状況を捉えた撮像データを受信できるようになる。そのため、膨大な撮像データから、異常事態が発生した際の状況を捉えた撮像データを抽出する作業が不要となり、作業負担が大幅に軽減される。
【0008】
本発明のデータレコーダは、輸送物に取り付け可能な可搬性の筐体に、前記輸送物が特定の状況下にある事実及びそのときの現在位置を検出するセンサ部と、このセンサ部で前記事実が検出されたときに、当該事実を表すデータ及び前記現在位置を表す位置データとを所定の記録媒体に記録する記録手段と、前記位置データを外部通信装置へ非接触通信により伝達する非接触通信手段と、を内蔵させて成る。本発明のデータレコーダは、特定の状況下にある事実の発生時の位置データを伝達することができる。
【0009】
上記の課題は、以下のコンピュータプログラムによっても解決が可能である。
それぞれ輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラを制御可能なコンピュータ装置を、前記輸送物が特定の状況下にあるときに、そのときの当該輸送物の現在位置を表す位置データを送信するデータレコーダから、前記位置データを受信する受信手段、前記複数のカメラの設置位置を表す設置位置データを所定のメモリに保持する設置データ保持手段、前記データレコーダから受領した前記位置データと前記設置データ保持手段に保持されている設置位置データとを照合することにより、前記位置データを受領したときの輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、特定したカメラを制御して当該状況を撮影した撮像データを取得する制御手段、として機能させる、物流品質検査のためのコンピュータプログラム。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、それぞれ輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラのうち、受信した位置データに基づいて輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、このカメラの撮像データを取り込むための制御を行うため、その撮像データを参照することにより、どのような状況で輸送物に大きな衝撃が加わった等の異常事態が発生したかを把握することができ、その原因をより具体的に特定することができる。これにより、物流の品質改善に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した物流品質検査システムの全体構成図である。
【図2】(a)は、データレコーダの構成を示す図であり、(b)は、データレコーダ使用状態を示す図である。
【図3】データレコーダの機能ブロック図である。
【図4】サーバコンピュータの機能ブロック図である。
【図5】データレコーダでの処理手順図である。
【図6】出力結果の一例を示す説明図である。
【図7】出力結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した物流品質検査システムの実施の形態を説明する。
図1は、この物流品質検査システムの全体構成図である。この物流品質検査システム1は、輸送物に取り付けられるデータレコーダ10と、営業所・倉庫、車両等に取付けられた複数のカメラ20と、サーバコンピュータ30とからなり、携帯電話網、PHS(Personal Handy-phone System)網、インターネット等のネットワーク40を介して通信可能に接続されている。
【0013】
[データレコーダ]
図2及び図3を参照して、データレコーダ10について説明する。
まず、図2(a)を参照して、データレコーダ10の構成例について説明する。
図2(a)はデータレコーダ10の構成を示す図である。データレコーダ10は、筐体11内に、センサ12、GPS(Global Positioning System)受信機13、記録媒体14、通信機15を収納して構成されており、可搬型の装置となっている。
センサ12は、加速度計と、温度・湿度計を備えており、無線通信機能、データ処理機能、計時機能を有している。記録媒体14は、センサ12に接続されており、センサ12の計測データを記録できるようになっている。通信機15は、携帯電話網、PHS網又はインターネットに接続して、無線通信により、センサ12の計測データを外部に送信できるようになっている。
本構成例では、位置情報を取り込む手段として、GPS受信機13のみを挙げているが、輸送物によっては、GPSデータの受信が妨害されたり、干渉したりして、充分機能しない場合がある。そこで、PHSの位置検出機能を利用して、これをGPS受信機13と併用する構成としてもよい。この場合には、例えば障害物によりGPSデータが妨害・干渉され取得できないときであっても、PHSの位置検出機能によって位置情報を受信できるため、位置情報の取得がより確実なものとなる。
つぎに、図2(b)を参照して、データレコーダ10の使用方法について説明する。データレコーダ10は、通常、ダミーの輸送物70の梱包内に設置される。梱包内に設置されるので、輸送に携わる関係者に知られることなく、物流の品質について検査が可能となる。また、データレコーダ10は、可搬型となっているため、一度使用した後も、直ぐに他の輸送物の梱包内に設置しなおすことができ、再利用が容易である。
【0014】
つぎに、データレコーダ10の機能について説明する。
図3はデータレコーダ10の機能ブロック図である。データレコーダ10は、センサ部16、データ処理部17、データ記録部18、入出力制御部19を含んで構成されている。センサ部16は、輸送物に加わる衝撃を検知するための加速度計161、輸送物の現在の位置を表すGPSデータを受信するGPSレシーバ162、輸送物の周囲の温度・湿度を測るための温度・湿度計163、計測開始時からの経過時間を計るためのタイマー164を有している。また、入出力制御部19は、無線通信機能を有しており、データレコーダ10は、ネットワーク40を介して、サーバコンピュータ30と、無線通信により、データのやり取りが可能となっている。
【0015】
センサ部16は、輸送物の周囲の環境を示す輸送環境データを計測するためのものである。輸送環境データには、以下のものが含まれる。
(1)輸送物に加わる加速度データ
(2)輸送物の位置データ
(3)輸送物の周囲の温度データ
(4)輸送物の周囲の湿度データ
(5)時刻(計測開始時からの経過時間)データ
【0016】
データ処理部17は、CPUが、所定のプログラムを読み込むことにより実現される。データ処理部17は、センサ部16で計測された輸送環境データを受け付け、種々のデータ処理を行う。例えば、計測された輸送環境データが、所定の記録領域に記録されている判定条件と適合するか否かの判定を行う。
判定条件の例としては輸送物の異常状態を判定するための警告条件が挙げられる。この警告条件は、加速度(衝撃の大きさ)の閾値、温度の閾値、湿度の閾値、住所、時間帯等であり、予めデータ記録部18に記録される。この警告条件は、ネットワークを介して、直接サーバコンピュータ30内のデータベース34に同時に、又は選択することによって記録されるものとしてもよい。
また、データ処理部17で、所定の判定の結果が得られた場合には、輸送物に大きな衝撃が加わる等の異常事態が発生したとして、入出力制御部19から、所定の警告信号をサーバコンピュータ30に送信する。この際、データ処理部17は、警告信号と併せて、輸送環境データも送信する。
さらに、データ処理部17は、データレコーダ10の故障・破損に備えて、輸送環境データを常時又は間欠的にサーバコンピュータ30に送信するものとしてもよい。
【0017】
データ記録部18は、半導体メモリ等の記録媒体を有している。データ記録部18は、センサ部16から、直接、または、データ処理部17を介して送信された輸送環境データを記録する。また、データ処理部17での判定で用いられる警告条件が予め記録されている。
【0018】
入出力制御部19は、ネットワーク40を介して、データを送受信する。本実施形態では、データレコーダ10に内蔵するものとしたが、外部のPHS発信機等を利用する構成としてもよい。
【0019】
[カメラ]
カメラ20は、輸送物の周囲の環境を撮影するためのものであり、撮影した撮像データを記録する記録手段と外部に撮像データを送信するための通信手段を有している。カメラ20は、通信手段により、ネットワーク40を介して、サーバコンピュータ30と無線通信可能に接続されている。カメラ20は、輸送物の搬送経路(営業所、倉庫、車両等)に設置され、輸送物が通過する際に、その輸送環境を撮影する。また、カメラ20で撮影された撮像データは、一旦、記録手段に記録され、サーバコンピュータ30からの制御信号に応じ、サーバコンピュータ30に送信される。カメラ20の設置場所は、輸送物が経由される営業所や倉庫の他、輸送物が乗せられる車両等であり、カメラ20の設置場所を示す設置位置データは、サーバコンピュータ30のデータ記録部18に記録され、管理されている。
【0020】
[サーバコンピュータ]
サーバコンピュータ30は、図4のように構成される。図4はサーバコンピュータの機能ブロック図である。サーバコンピュータ30は、コンピュータ装置のCPUが所定の記録媒体に記録されたコンピュータプログラムを読み込んで、そのコンピュータ装置のオペレーティングシステム(OS)と共に実行することにより、入出力制御部31、データ処理部32、カメラ制御部33が形成される。サーバコンピュータ30は、さらに、データベース34を有している。
【0021】
入出力制御部31は、ネットワーク40を介して、データレコーダ10からの警告信号及び輸送環境データやカメラ20からの撮像データを受け付け、データ処理部32やカメラ制御部33に送信する。また、入出力制御部31は、外部の入力装置からの入力や、外部の出力装置へのデータ解析処理の結果の出力も制御する。
【0022】
データ処理部32は、入出力制御部31を介して、データレコーダ10から、輸送環境データと警告信号を受け付ける。データ処理部32は、輸送環境データに含まれる位置データを参照し、警告対象の輸送物の位置を特定し、さらに、データベース34に記録されている設置位置データを参照し、警告対象の輸送物の近辺のカメラを特定する。カメラを特定したデータは、カメラ制御部33に送られる。データ処理部32は、データレコーダ10からの輸送環境データやカメラ20からの撮像データも基づき、種々のデータ解析処理も行う。
【0023】
カメラ制御部33は、データ処理部32から送られた警告対象の輸送物の近辺のカメラを特定するデータを参照し、特定されたカメラに対して、警告対象の輸送物の周囲を撮影した撮像データを返信するように、制御信号を送信する。
【0024】
データベース34には、予めカメラ20の設置場所を示す設置位置データと地図データが記録されている。また、データベース34には、データレコーダ10から送信された輸送環境データやカメラ20から返信された撮像データが記録される。地図データは検査結果のデータ解析処理で用いられる。さらに、データベース34は、データレコーダ10が故障・破損した場合のバックアップ用の記録媒体としても用いられる。
【0025】
[運用形態]
次に、上記のように構成される物流品質検査システムの運用形態を説明する。
1.データレコーダの設置
データレコーダ10に、初期設定として、警告信号と輸送環境データを送信する契機となる警告条件を設定する。設定項目としては、例えば、加速度(衝撃の大きさ)の閾値、温度の閾値、住所、時間帯等であり、これらのうち複数の項目を複合したものとしてもよい。この設定項目は、データレコーダ10のデータ記録部18に記録される。その後、データレコーダ10を、輸送物の梱包の中に設置する。通常は、ダミーの輸送物の梱包を用意して、輸送に携わる関係者に知られないように、その梱包の内部に設置する。
【0026】
2.データレコーダによる輸送環境データ記録
データレコーダ10のセンサ部16は、輸送環境データを計測する。計測された輸送環境データは、警告条件の判定のためにデータ処理部17に送られるとともに、記録のためにデータ記録部18にも送られる。データレコーダ10のデータ記録部18は、センサ部16からから輸送環境データを受け付け、記録する。輸送環境データの記録は、例えば、データレコーダの電源がオンのときに常時記録するものとしてもよく、例えば、5分おきのように間欠的に記録するものとしてもよく、また、警告条件に適合すると判定された前後の所定期間だけ記録するものとしてもよい。
【0027】
3.データレコーダによる警告条件の判定
データレコーダ10のデータ処理部17は、輸送環境データを受け付けると、データ記録部18に記録された警告条件と受け付けた輸送環境データとが適合するか否かの判定処理を行う。
例えば、警告条件が加速度(衝撃の大きさ)の閾値、温度の閾値、湿度の閾値の場合には、データ処理部17は、加速度計161、温度・湿度計163で計測される加速度データ、温度データ、湿度データが、警告条件として設定された閾値を超過したか否かの判定を行う。
また、例えば、警告条件が住所、時間帯の場合には、データ処理部17は、GPSレシーバ162、時計タイマー164で計測される位置データ、時刻(計測開始時からの経過時間)データが、警告条件として設定された位置、時刻(計測開始時からの経過時間)に適合するか否かの判定を行う。
データレコーダ10のデータ処理部17は、判定処理の結果、輸送環境データが警告条件に適合すると判定すると、輸送物に異常事態が発生したとして、警告信号とそれに対応する輸送環境データをサーバコンピュータ30に送信する。警告信号と併せて送信される輸送環境データには、少なくとも警告条件に適合すると判定されたデータが計測された場所の位置データと時刻(計測開始時からの経過時間)データとが含まれる。また、警告信号と併せて送信される輸送環境データは、所定の判定の結果が得られたデータが計測された瞬間のデータを含むものとする。例えば、所定の判定の結果が得られたデータが計測された前後1分のデータとする。
【0028】
4.サーバコンピュータによるカメラ制御信号の送信
サーバコンピュータ30によるカメラ制御信号の送信の処理を、図5のサーバコンピュータの処理手順図を参照しながら説明する。
サーバコンピュータ30の入出力制御部31は、データレコーダ10から、警告信号と輸送環境データを受け付けると、データ処理部32に送信する(ステップS100)。データ処理部32は、警告信号に対応する輸送環境データに含まれる位置データを参照し、警告条件に適合すると判定されたデータが計測された時の輸送物の位置を特定する処理を行う(ステップS110)。また、同時に、警告条件に適合すると判定されたデータが計測された時間を特定する処理を行う。
サーバコンピュータ30のデータ処理部32は、データベース34に記録されている設置位置データを参照し、複数のカメラ20から、先の処理で特定された輸送物の位置の近辺に設置されたカメラ20を特定する処理を行う(ステップS120)。
サーバコンピュータ30のカメラ制御部33は、データ処理部32でカメラ20が特定されると、特定されたカメラ20に制御信号を送信する(ステップS130)。この制御信号には、警告条件に適合すると判定されたデータが計測された時間を指定する情報が含まれてもよい。また、制御信号が送信されるカメラ20は、複数であってもよい。
【0029】
5.カメラによる撮像データの返信
カメラ20は、サーバコンピュータ30からの制御信号を受け付けると、記録されている撮像データのうち、警告条件に適合すると判定されたデータが計測されデータを選定し、ファイル化して、サーバコンピュータ30に送信する。制御信号に時間を指定する情報が含まれる場合には、指定された時間帯のデータを選定する。
【0030】
6.サーバコンピュータによるデータ解析処理
サーバコンピュータ30のデータ処理部32は、データレコーダ10から受け付けた輸送環境データとカメラ20から受け付けた撮像データに基づき、種々の解析処理を行う。
【0031】
(解析処理例1)
サーバコンピュータ30のデータ処理部32は、物流品質の検査結果に関する帳票の発行のための解析処理を行う。
まず、データ処理部32は、データレコーダ10から送信された輸送環境データを解析し、警告条件に適合すると判定されたデータが計測されたのが、輸送の全工程のうち、どの工程であったのかを特定する。この解析処理は、輸送環境データのうち、例えば、加速度データと位置データを用いて行う。例えば、位置データが輸送物が所定の位置に止まっていることを示し、加速度データが特に上下の加速度が急激に上昇したことを示す場合は、営業所等における積込又は荷卸の工程であると特定できる。
次に、データ処理部32は、データベース34に記録されている帳票テンプレートのうちから、特定された工程に対応する帳票テンプレートを選定する。さらに、データ処理部32は、選定された帳票テンプレートに、必要に応じて、輸送環境データや撮像データを添付して、出力する。
図6は、サーバコンピュータ30から出力される帳票の例を示している。
帳票80において、項目81は、輸送環境データのうち加速度データと温度データを時系列グラフにしたものである。項目82は、輸送の工程を示すものである。項目83は、再発防止策等を記載したコメント欄である。本解析処理例では、加速度データと温度データをグラフ処理するものとしたが、輸送環境データに応じて、湿度データ等をグラフ処理するものとしてもよい。
【0032】
(解析処理例2)
サーバコンピュータ30のデータ処理部32は、輸送物に大きな衝撃が加わった等の異常事態が発生した場所を地図上に表示して出力するための処理を行う。
まず、データ処理部32は、データレコーダ10から送信された輸送環境データを解析し、警告条件に適合すると判定されたデータが計測されたのが、どの位置だったのかを特定する。次に、データ処理部32は、データベース34に記録されている地図データの対応箇所に異常事態が発生したことを示すアイコンを表示させるための処理を行い、出力する。地図データの代わりに、航空写真や地上写真を用いてもよい。また、この地図データと関連付けて、撮像データや画像データを表示するようにしてもよい。
図7は異常事態が発生した位置を地図に表示した出力の例を示している。
出力画面90において、項目91は地図であり、項目92は異常事態が発生した地点を示すアイコンであり、項目93はアイコンに対応した輸送環境データを示す表である。図示しないが、このアイコンをクリックすると、対応する映像が再生されるようになっている。
【0033】
(解析処理例3)
サーバコンピュータ30では、データ処理部で、映像に映っている人物を特定するために、映像解析処理を行う。
データ処理部32は、カメラ20から送信された撮像データについて顔認識処理を行い、異常事態の発生に関係した当事者を特定する。この顔認識処理は、公知の顔認識プログラムを用いることができる。
【0034】
このように、本実施形態の物流品質検査システムでは、警告条件に適合すると判定されたデータが計測されたときの輸送物の位置を特定し、特定した位置からこの輸送物の周囲を撮影しているカメラを特定し、このカメラから撮像データを受け付けるものとしたため、輸送物に大きな衝撃が加わった等の異常事態が発生した事実、場所、時間等を特定するだけではなく、その際の状況がどのようなものであったかを具体的に視認したり、記録することができ、その異常事態の原因をより具体的に特定することができる。また、映像解析処理をすることにより、実際にその異常事態の当事者を特定することもできる。
これにより、物流の品質改善に役立てることができる。
【0035】
本実施形態は以上の通りであるが、この実施形態例に限定されることなく、例えば、以下のような実施も可能である。
本実施形態では、カメラ20は、特に、輸送物を撮影するものとして説明したが、さらに、車両が走る路面を撮影するものとしてもよい。この構成によると、段差や急カーブなどの道路状況が異常事態の原因となった場合に、その原因を特定することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
10 データレコーダ
11 筐体
12 センサ
13 GPS受信機
14 記録媒体
15 通信機
16 センサ部
17 データ処理部
18 データ記録部
19 入出力制御部
20 カメラ
30 サーバコンピュータ
31 入出力制御部
32 データ処理部
33 カメラ制御部
34 データベース
40 ネットワーク
50 車両
60 営業所・倉庫
70 輸送物
80 帳票
90 出力画面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送物に取り付けられたデータレコーダと、このデータレコーダと非接触通信を行うとともに、それぞれ前記輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラを制御可能なデータ処理装置とを有する物流品質検査システムであって、
前記データレコーダは、
前記輸送物が特定の状況下にある事実及びそのときの現在位置を検出するセンサ部と、
このセンサ部で前記事実が検出されたときに前記現在位置を表す位置データを前記データ処理装置へ伝達する伝達手段とを含んでおり、
前記データ処理装置は、
前記複数のカメラの設置位置を表す設置位置データを保持する保持手段と、
前記データレコーダから受信した前記位置データと前記保持手段に保持されている設置位置データとを照合することにより、前記位置データを受信したときの輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、特定したカメラを制御して当該状況を撮影した撮像データを取得する制御手段とを含む、
物流品質検査システム。
【請求項2】
前記センサ部は、前記輸送物に作用する加速度、当該輸送物の周囲の温度又は湿度のいずれか1つを検出する計器を含んでおり、
前記伝達手段は、前記加速度、前記温度又は湿度が、予め設定された閾値を超えたときに前記位置データを前記データ処理装置へ伝達する、
請求項1記載の物流品質検査システム。
【請求項3】
前記複数のカメラのいくつかが、前記輸送物が積載される車両に設置される、
請求項1記載の物流品質検査システム。
【請求項4】
前記複数のカメラは、前記輸送物が搬送される設備内に設置される、
請求項1記載の物流品質検査システム。
【請求項5】
それぞれ輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラを制御可能なデータ処理装置であって、
前記輸送物が特定の状況下にあるときに、そのときの当該輸送物の現在位置を表す位置データを送信するデータレコーダから、前記位置データを受信する受信手段と、
前記複数のカメラの設置位置を表す設置位置データを保持する設置データ保持手段と、
前記データレコーダから受領した前記位置データと前記設置データ保持手段に保持されている設置位置データとを照合することにより、前記位置データを受領したときの輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、特定したカメラを制御して当該状況を撮影した撮像データを取得する制御手段とを含む、
データ処理装置。
【請求項6】
輸送物に取り付け可能な可搬性の筐体に、
前記輸送物が特定の状況下にある事実及びそのときの現在位置を検出するセンサ部と、
このセンサ部で前記事実が検出されたときに、当該事実を表すデータ及び前記現在位置を表す位置データとを所定の記録媒体に記録する記録手段と、
前記位置データを外部通信装置へ非接触通信により伝達する非接触通信手段と、を内蔵させて成る、
物流品質検査のためのデータレコーダ。
【請求項7】
それぞれ輸送物の搬送経路上の所定位置に設置された複数のカメラを制御可能なコンピュータ装置を、
前記輸送物が特定の状況下にあるときに、そのときの当該輸送物の現在位置を表す位置データを送信するデータレコーダから、前記位置データを受信する受信手段、
前記複数のカメラの設置位置を表す設置位置データを所定のメモリに保持する設置データ保持手段、
前記データレコーダから受領した前記位置データと前記設置データ保持手段に保持されている設置位置データとを照合することにより、前記位置データを受領したときの輸送物の状況を撮影可能なカメラを特定し、特定したカメラを制御して当該状況を撮影した撮像データを取得する制御手段、
として機能させる、物流品質検査のためのコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−197136(P2012−197136A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61521(P2011−61521)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(595140170)東京海上日動火災保険株式会社 (13)