説明

物流機器の安全柵

【課題】物流機器の移動経路に設けられる安全柵において、作業者の進入を防止しかつ物流機器との間に物品が挟まれても物品が破損しないようにする。
【解決手段】第1安全柵20は、搬送台車10のレール11の周囲に設けられる安全柵であって、支柱30と、柵部32と、を有している。支柱30は、レール11の周囲の搬送台車10と干渉しない位置に配置される。柵部32は、搬送台車10に接近する方向に移動不能かつ搬送台車10から離反する方向に移動自在に支柱30に装着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全柵、特に物流機器の移動経路の周囲に設けられた物流機器の安全柵に関する。
【背景技術】
【0002】
移動経路を移動する物流機器の移動経路の周囲には、作業者の安全性を確保するために安全柵が設けられている。特に、作業者が荷役作業等の作業する荷役領域では、作業者と物流機器との境界を明確にするために、通常、荷役高さより低い安全柵が設けられている。この安全柵により作業者の移動経路への進入を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の安全柵は、支柱と、支柱に係合する柵本体と、を有している。支柱は、上部ブラケットと、下部ブラケットとを有し、上部ブラケットには上方に開口するスリットを設け、下部ブラケットには貫通孔を設けている。柵本体には、スリットに係合するストレートピンが固定されている。柵本体を支柱に取り付ける際には、上部ブラケットの上方からストレートピンをスリットに係合させ、貫通孔に曲がりピンを貫通させて柵本体を支柱に着脱可能に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−52143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の安全柵では、柵本体が支柱にピンにより固定されている。このため、物流機器と柵本体との間に誤って物品が配置されると、物流機器の移動により柵本体との間に物品が挟まれて物品が破損するおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、物流機器の移動経路の周囲に設けられる安全柵において、作業者の進入を防止しかつ物流機器との間に物品が挟まれても物品が破損しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る物流機器の安全柵は、物流機器の移動経路の周囲に設けられる安全柵であって、固定部と、柵部と、を有している。固定部は、移動経路の周囲の物流機器と干渉しない位置に配置される。柵部は、物流機器に接近する方向に移動不能かつ物流機器から離反する方向に移動自在に固定部に装着される。
この安全柵では、柵部が物流機器から離反する方向には移動自在でありかつ物流機器に接近する方向には移動不能である。このため、作業者が物流機器に接近して柵部を物流機器側に押圧しても柵部が固定部から外れにくい。また、物品が柵部と物流機器の間に配置され、物流機器が物品に接近し柵部との間に挟まれても、物品により柵部が押圧されると柵部が物流機器から離反する方向に移動する。
ここでは、柵部を物流機器から離反する方向に移動自在にしたので、物流機器との間に物品が挟まれても柵部が移動して物品が破損しにくい。しかも、作業者が移動経路に近づいても、柵部は物流機器に接近する方向には移動不能であるので、柵部が固定部から外れにくく作業者の進入を防止できる。
【0008】
固定部は、移動経路の端部に設けられ、柵部は、固定部に対して着脱自在であっても良い。この場合には、物流機器が移動経路の端部に到達したときに端部に物品があっても、物流機器により押圧された物品が破損しにくくなる。
【0009】
柵部は、固定部に弾性係止されていても良い。この場合には、柵部が弾性係止されているだけであるので、柵部ががたつきにくくなり、かつ力が作用すると柵部が物流機器から離反する方向に外れやすい。
【0010】
柵部は、固定部に磁力により吸着されていても良い。この場合には、柵部が磁力により固定部に吸着しているので、柵部ががたつきにくくなり、かつ磁力より大きな力が作用すれば柵部が物流機器から離反する方向に外れやすい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、柵部を物流機器から離反する方向に移動自在にしたので、物流機器との間に物品が挟まれても柵部が移動して物品が破損しにくい。しかも、作業者が移動経路に近づいても、柵部は物流機器に接近する方向には移動不能であるので、柵部が固定部から外れにくく作業者の進入を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態が採用された物流倉庫の平面図。
【図2】本発明の一実施形態による安全柵の分解斜視図。
【図3】柵部の取付部分の一部断面図。
【図4】支柱の一例を示す斜視図。
【図5】他の実施形態の図3に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)物流倉庫
図1は、本発明の一実施形態が採用される物流倉庫の一例を示している。物流倉庫には、物品を搬送する搬送台車(物流機器の一例)10と、物品を搬出又は搬入する際に物品を載置する載置台12と、物品を保管する複数の棚14と、搬送台車10及び載置台12と複数の棚との間で物品を入出庫するスタッカクレーン16と、が設けられている。物品は、例えば、パレットに載置された状態で取り扱われる。搬送台車10は、移動経路としてのレール11上を走行可能である。レール11は、物品を荷受けする荷受け位置(移動経路の端部)からスタッカクレーン16との移載位置まで配置されている。
【0014】
搬送台車10のレール11の周囲、スタッカクレーン16の移動経路の周囲及び載置台12の周囲には、第1安全柵20、第2安全柵22、及び点検扉24が設けられている。第1安全柵20は、本発明の一実施形態による安全柵であり、本実施形態では、搬送台車10の荷役領域を三方から囲むように設けられている。したがって、第1安全柵20の高さは、例えばフォークリフトなどの荷役機械との干渉を避けるために荷役高さより低い。第2安全柵22は、第1安全柵20より高さが高く、荷役領域以外に設けられている。
【0015】
(2)第1安全柵
第1安全柵20は、固定部としての支柱30と、支柱30に装着された柵部32と、を備えている。第1安全柵20は、図1に示すように、搬送台車10のレール11の荷受け位置側の端部と、レール11の両側部分とに配置され、レール11を三方から囲むように配置されている。なお、図2では、柵部32の中間部分を切って描いている。
【0016】
(3)支柱
支柱30は、図2から図4に示すように、搬送台車10と干渉しない位置に複数(例えば4つ)配置される。支柱30は、例えば、柱部34と、柱部34の基端に固定された矩形の座板36と、先端に着脱可能に装着された合成樹脂製のキャップ38と、固定ブラケット40と、を有している。柱部34は、例えば、短辺部34aと長辺部34bとを有する矩形の角形鋼管で形成されている。この実施形態では、長辺部34bは、短辺部34aの例えば1.6倍の長さを有している。柱部34は、荷役高さより低い長さに形成されている。2つの短辺部34aの上部には、上下に間隔を隔てて配置された2つの貫通孔34cがそれぞれ形成されている。2つの長辺部34bの上部には、上下に間隔を隔てて配置されかつ中心対称に配置された4つの貫通孔34dがそれぞれ形成されている。
【0017】
座板36は、第1安全柵20を床に固定するための部材であり、例えば、後施工可能なアンカーボルト42が貫通する2つの固定孔36aを有している。キャップ38は、柱部34の短辺部34a及び長辺部34bと面一になるように形成され、柱部34の上部の開口を塞いでいる。
【0018】
固定ブラケット40は、図2に示すように、搬送台車10に接近する方向に移動不能かつ離反する方向に移動自在に柵部32を支柱30に装着するために設けられている。固定ブラケット40は、図3及び図4に示すように、柱部34に固定される固定部分40aと、固定部分40aと一体形成され断面C字状に折り曲げられた係止部分40bと、を有している。固定部分40aには、上下に離反した2つの貫通孔34c又は貫通孔34dに対向して配置可能な2つの取付孔40cが形成されている。固定部分40aは、貫通孔34c又は貫通孔34dと、取付孔40cとを貫通して配置された2本のボルト44及びボルト44に螺合するナット46により柱部34に固定される。
【0019】
係止部分40bは、柵部32を弾性係止可能なように、上下に対向するように折り曲げられた2つの係止片40dと、2つの係止片40dをつなぐ連結片40eと、を有している。連結片40eは固定部分40aに一体で形成されている。
【0020】
この固定ブラケット40は、2つの係止片40d,40dの先端が搬送台車10に接近する状態で柱部34に固定される。したがって、係止片40dは、柱部34の短辺部34a又は長辺部34bに重なるように配置される。固定ブラケット40は、第1安全柵20のレイアウトに応じて柱部34の短辺部34a及び長辺部34bの少なくともいずれかに装着される。図2では、レール11の端部の角部に配置された2つの支柱30には、固定ブラケット40が外側の短辺部34a及び長辺部34bに装着されている。レール11の端部から離れた位置に配置された2つの支柱30には、外側の短辺部34aに1つの固定ブラケット40が装着されている。
【0021】
(4)柵部
柵部32は、支柱30に対して着脱自在であり、支柱30の間に配置される。柵部32は、図2及び図3に示すように、リップ溝形鋼に似た断面形状であり、対向する2つの片32a,32bと、2つの片32a,32bを連結する連結片32cと、を有している。2つの片32a,32bのうち、一方の片32a(図3下側の辺)は、中央部分でわずかに山形に内側に折り曲げられている。一方の片32aの内側面と他方の片32bの内側面との間の距離は、固定ブラケット40の2つの係止片40dの外側面の距離以下の長さとなっている。これにより、柵部32を固定ブラケット40に装着すると、柵部32がわずかに上下方向に広がり弾性復元力が発生する。この弾性復元力により柵部32が固定ブラケット40に弾性係止される。
【0022】
柵部32は、支柱30の柱部34の間に配置される。柵部32の両端部分は、2つの片32a,32bの先端部分に形成されたリップ32d,32dが固定ブラケット40の係止部分40bに干渉しないように切り欠かれた切り欠き部32e,32eが形成されている。
【0023】
柵部32を固定ブラケット40に装着した状態では、図3に示すように、柵部32が固定ブラケット40の係止部分40bを外側から抱くように配置される。このため、柵部32は、内側(図3の右側であり搬送台車10に接近する方向)には移動できない。しかし、外側(図3の左側であり搬送台車10から離反する方向)には、柵部32の弾性力だけで固定ブラケット40に係止されている状態であり、外側に押圧されると固定ブラケット40から柵部32が外れる。
【0024】
したがって何らかの物品が柵部32の内側に誤って配置され、搬送台車10がレール11の端部に移動して物品を押圧しても物品が柵部32に接触すると柵部32が物品により押圧されて柵部32が支柱30から外れる。このため、搬送台車10と第1安全柵20の間に物品が配置されても、その物品が破損しにくくなる。しかも内側に移動できないので、外側から作業者が柵部32に接触しても柵部32は移動しない。
【0025】
(5)特徴
第1安全柵20では、柵部32が搬送台車10から離反する方向には移動自在でありかつ搬送台車10に接近する方向には移動不能である。このため、作業者が搬送台車10に接近して柵部32を搬送台車側に押圧しても柵部32が支柱30から外れにくい。また、物品が柵部32と搬送台車10の間に配置され、搬送台車10が物品に接近し柵部32との間に挟まれても、物品により柵部32が押圧されると柵部32が搬送台車10から離反する方向に移動する。
ここでは、柵部32を搬送台車10から離反する方向に移動自在にしたので、搬送台車10との間に物品が挟まれても柵部32が移動して物品が破損しにくい。しかも、作業者がレール11に近づいても、柵部32は搬送台車10に接近する方向には移動不能であるので、柵部32が固定部から外れにくく作業者の進入を防止できる。
【0026】
支柱30は、レール11の端部に設けられ、柵部32は、支柱30に対して着脱自在である。このため、搬送台車10がレール11の端部に到達したときに端部に物品があっても、搬送台車10により押圧された物品が破損しにくくなる。
【0027】
柵部32は、支柱30に弾性係止されているので、柵部32ががたつきにくくなり、かつ力が作用すると柵部32が搬送台車10から離反する方向に外れやすい。
【0028】
柱部34の短辺部34a又は長辺部34bに重なるように配置された係止片40dを外側から抱くように柵部32が装着される。このため、柵部32が支柱30から外側にあまりはみ出さなくなり、かつ支柱30から内側にはみ出さない。このため、第1安全柵20の設置エリアを小さくすることができる。
【0029】
(6)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0030】
図5に示すように、第1安全柵120において、柵部132は、支柱130に磁力により吸着されていても良い。
【0031】
支柱130の固定ブラケット140の連結片140eには、磁石150を収納する、例えば円形に凹んで形成された磁石収納凹部140fが形成されている。この磁石収納凹部140fが例えば接着等の適宜の固定手段により円形の磁石150が固定されている。2つの係止片140dは、前述した実施形態と同様な構成である。その他の支柱の構成は前述した実施形態と同様なため説明を省略する。
【0032】
柵部132は、2つの片132a,132bと、連結片132cと、を有している。前述した実施形態と異なり、2つの片132a,132bは同じ形状であり山形に凹んでいない。その他の柵部132の構成は、前述した実施形態と同様なため説明を省略する。
【0033】
このような実施形態では、柵部132が磁力により支柱130に吸着しているので、柵部132ががたつきにくくなり、かつ磁力より大きな力が作用すれば柵部132が搬送台車10から離反する外側方向に外れやすい。
【0034】
上記実施形態では、弾性係止又は磁力により柵部を支柱に装着したが、本発明はこれに限定されない。例えば、柵部を支柱に垂直軸周りに外側(搬送台車10から離反する方向)に回動自在かつ接近する内側に回動不能に装着してもよい。この場合には、柵部は支柱から外れない。
【0035】
支柱に外側に突出して配置された軸部材で柵部を支持するようにしてもよい。さらに柵部のがたつきを防止するために柵部を弱い磁力の磁石で吸着しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、物流機器が移動する移動経路に設けられる安全柵に広く適用できる。
【符号の説明】
【0037】
10 搬送台車
11 レール
12 載置台
14 棚
16 スタッカクレーン
20 第1安全柵
22 第2安全柵
24 点検扉
30 支柱(固定部)
32 柵部
32a 片
32b 片
32c 連結片
32d リップ
32e 切り欠き部
34 柱部
34a 短辺部
34b 長辺部
34c 貫通孔
34d 貫通孔
36 座板
36a 固定孔
38 キャップ
40 固定ブラケット
40a 固定部分
40b 係止部分
40c 取付孔
40d 係止片
40e 連結片
42 アンカーボルト
44 ボルト
46 ナット
120 第1安全柵
130 支柱
132 柵部
132a 片
132b 片
132c 連結片
140 固定ブラケット
140d 係止片
140e 連結片
140f 磁石収納凹部
150 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物流機器の移動経路の周囲に設けられる物流機器の安全柵であって、
前記移動経路の前記物流機器と干渉しない位置に配置される固定部と、
前記物流機器に接近する方向に移動不能かつ前記物流機器から離反する方向に移動自在に前記固定部に装着される柵部と、
を備えた物流機器の安全柵。
【請求項2】
前記固定部は、前記移動経路の端部に設けられ、
前記柵部は、前記固定部に対して着脱自在である、請求項1に記載の物流機器の安全柵。
【請求項3】
前記柵部は、前記固定部に弾性係止されている、請求項2に記載の物流機器の安全柵。
【請求項4】
前記柵部は、前記固定部に磁力により吸着されている、請求項2に記載の物流機器の安全柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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