説明

物質検出装置

【課題】低コストかつ低消費電力の物質検出装置を提供することなどを目的とする。
【解決手段】本発明の一態様の物質検出装置は、測定対象物質を含む測定対象媒体を吸入するように構成された吸入部110と、吸入部110から吸入された測定対象媒体を加熱するように構成された加熱部120と、加熱部120で加熱された測定対象媒体に含まれる気相のみを実質的に通過させるように構成されたフィルタ部130と、気相に含まれる物質を検出可能に構成された検出部140と、を備え、測定対象媒体が酸素を含むことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、測定対象物質が含まれる媒体を加熱した上で物質の検出を行う物質検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体などの測定対象媒体に含まれる物質を検出し、または測定対象媒体に所定の物質が含まれるか否かを検出する方法として、物質検出用のセンサを用いる方法がある。この方法では、例えば、所定の物質を吸着可能に構成された吸着膜を備えた振動子を、測定対象媒体に暴露して、この振動子を含んで構成された発振回路から出力される周波数の時間変化を測定することで、測定対象媒体に含まれる物質を検出する。それぞれ異なる物質を吸着する吸着膜を備えた振動子を複数設ければ、測定対象媒体に含まれる複数の物質を検出可能となり、例えば、ニオイセンサなどに応用することができる。
【0003】
しかし、花粉のような粒子状の物質を測定対象物質として検出しようとすると、上記従来の方法では検出が困難であった。そこで、花粉のような粒子状の物質を検出する方法として、測定対象物質を含む測定対象媒体を加熱する方法があった。この方法では、測定対象物質及び気体窒素を含む媒体を250℃程度に加熱してアウトガスを発生させた上で捕集し、捕集した媒体にセンサを暴露することで、所定の花粉が含まれるかどうかを検出していた(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
ここで、非特許文献1の記載事項を確認するために実験を行った。図8、図9、及び図10は、それぞれ日本スギ、シラカバ、及びブタクサの花粉を気体窒素に含ませたものを測定対象媒体として、上記のように測定対象媒体を加熱して花粉の検出を、GC分析(ガスクロマトグラフ分析)を利用して行ったものである。図8〜図10において、縦軸はアバンダンス(存在量)、横軸は時間を示しており、いずれの図においても、(a)は室温で、(b)は100度に加熱して、(c)は200℃に加熱して、(d)は250℃に加熱して、(e)は300℃に加熱して、GC分析を行ったものである。これらの実験によれば、250℃程度に加熱することで、花粉の検出が可能なアウトガスが発生し、花粉の種類を判別可能となることが分かった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Atmospheric Environment Vol. 31, No.11, pp. 1715-1719, 1997 "TECHNICAL NOTE A NEW POLLEN DETECTION METHOD BASED ON AN ELECTRONIC NOSE"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記方法では、測定対象媒体を250℃程度の高熱に加熱する必要があることから、検出装置に耐熱構造を用いるため高コストになったり、消費電力が高くなったりするという課題があった。
【0007】
さらに、アウトガスを発生させた媒体を一度捕集し、その後、捕集した媒体にセンサを暴露するという方法を採用していたため、検出が煩雑であったり、検出に時間を要したりするという課題もあった。
【0008】
そこで、本発明の一形態では、従来技術にあった上記のような課題を解決可能な検出装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するために、本発明の一態様の物質検出装置は、測定対象物質を含む測定対象媒体を吸入するように構成された吸入部と、前記吸入部から吸入された前記測定対象媒体を加熱するように構成された加熱部と、前記加熱部で加熱された前記測定対象媒体に含まれる気相のみを実質的に通過させるように構成されたフィルタ部と、前記気相に含まれる物質を検出可能に構成された検出部と、を備え、前記測定対象媒体が酸素を含むことを特徴としている。
【0010】
かかる構成の物質検出装置によれば、加熱部で測定対象媒体を加熱したとき、この測定対象媒体に酸素が含まれることによって測定対象媒体に含まれる測定対象物質等が酸化する。これによって、例えば、120℃程度の比較的低い温度でアウトガスを発生させることができるため、装置に用いる耐熱構造のコストを削減したり、消費電力を低減したりすることができる。
【0011】
また、前記加熱部は、前記測定対象媒体を95℃以上に加熱可能に構成されることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、アウトガスを発生させるのに十分な温度まで加熱可能な物質検出装置を提供することができる。
【0013】
また、前記吸入部は、流入路と、前記流入路よりも前記加熱部に近い部位に配された流出路と、を備えて構成されており、前記流出路の流路は、前記流入路の流路よりも狭くなっていることが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、流出路が流入路よりも狭いため、流出路以降の部分を通過する測定対象物質同士の間隔を広げることができる。そのため、個々の測定対象物質から発生するアウトガスを分離することが容易となり、高精度に、測定対象物質の有無や含有量を測定することができる。
【0015】
また、前記吸入部は、前記測定対象物質を含まない媒体を前記測定対象媒体に混合させるように構成された混合部をさらに備えることが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、測定対象媒体における測定対象物質の濃度を薄くすることができるので、混合部以降の部分を単位時間当たりに通過する測定対象物質を減らすことができる。そのため、個々の測定対象物質から発生するアウトガスを分離することが容易となり、高精度に、測定対象物質の有無や含有量を測定することができる。
【0017】
また、前記測定対象物質を花粉とすることができる。
【0018】
花粉は、加熱することによってアウトガスを発生するので、上記構成の物質検出装置は、花粉を対象とした物質検出に適している。
【0019】
また、前記加熱部及び前記フィルタ部は、加熱可能フィルタ部として一体的に構成されていることが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、より小型の物質検出装置を提供することが可能となる。
【0021】
また、前記検出部は、吸着膜を備えた振動子を備えて構成されることができる。
【0022】
また、前記検出部は、酸化物半導体センサによって構成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1における物質検出装置の構成例を示す図。
【図2】スギ花粉を含む大気に対して実施形態1の物質検出装置を用いて検出を試みたときの実験結果を示すグラフ。
【図3】発振回路から出力される周波数のピーク強度をデータとして用いて主成分分析を行ってプロットした例を示すグラフ。
【図4】ブタクサ花粉を含む大気に対して実施形態1の物質検出装置を用いて検出を試みたときの実験結果を示すグラフ。
【図5】測定対象物質としてブタクサ花粉を含む大気を実施形態1の物質検出装置を用いて検出を試みたときの主成分分析の結果を示すグラフ。
【図6】実施形態2における物質検出装置の構成例を示す図。
【図7】実施形態3における物質検出装置の構成例を示す図。
【図8】日本スギの花粉を測定対象物質として検出を行った実験結果を示すグラフ。
【図9】シラカバの花粉を測定対象物質として検出を行った実験結果を示すグラフ。
【図10】ブタクサの花粉を測定対象物質として検出を行った実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、以下の構成に従って、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その構成要素についての説明を省略する場合がある。
1.実施形態1
(1)物質検出装置の構成例
(2)物質検出装置の動作例
2.実施形態2
3.実施形態3
4.補足事項
【0025】
<1.実施形態1>
以下、図1乃至5を参照しながら本発明の実施形態1について説明する。
【0026】
<(1)物質検出装置の構成例>
図1は、本実施形態1における物質検出装置の構成を示す図である。図1に示すように、物質検出装置100aは、吸入部110、加熱部120、フィルタ部130、検出部140、バルブ150、及びポンプ160を含んで構成される。
【0027】
(吸入部110)
吸入部110は、測定対象物質を含む測定対象媒体を吸入するように構成されている。より具体的な例を挙げると、この吸入部は筒状に形成されたガラス(ガラスチューブ)からなり、後述するポンプ160によって提供される吸引力によって、外気として存在する測定対象媒体(主に気体)を吸入可能に構成されている。吸入部を通過した測定対象媒体は、加熱部120に流入する。
【0028】
(加熱部120)
加熱部120は、吸入部110から吸入された測定対象媒体を加熱可能に構成されている。より具体的な例を挙げると、加熱部120は、外側周辺に電熱線が配置されたガラスチューブからなり、その出口温度を電流によって調整可能に構成されている。
【0029】
(フィルタ部130)
フィルタ部130は、加熱部120で加熱された測定対象媒体に含まれる気相のみを実質的に通過可能に構成されている。より具体的な例を挙げると、このフィルタ部は、数μm粒子の遮断性能を有するセルロース及びナノファイバーからなる耐熱性フィルタを用いて構成される。
【0030】
(検出部140)
検出部140は、フィルタ部を通過した気相に含まれる物質を検出可能に構成されている。より具体的な例を挙げると、検出部140は、吸着膜を備えた水晶振動子141を複数備えて構成されており、さらに、水晶振動子141を含んで構成される発振回路、及び計算器(いずれも図示せず)などを含んで構成される。この吸着膜は、所定の物質を選択的に吸着可能に構成されており、例えば、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェニル、ポリビニルカルバゾール、エチルセルロース、ポリブタジエン、及びポリアミド樹脂を用いることなどができる。
【0031】
水晶振動子141は、発振回路(図示せず)の一部を構成している。この発振回路は、吸着膜に吸着された物質の重みにより、出力される信号の周波数が変動する。本実施形態1の物質検出装置100aでは、この出力信号の周波数の変動を測定することにより、測定対象媒体に所定の物質が含まれるか否か、または所定の物質が含まれる量を検出可能である。検出方法としては、予め準備されたデータベースを利用したパターン認識や主成分分析などが用いられる。パターン認識または主成分分析を用いれば、測定対象媒体に含まれる物質を具体的に特定することなく、例えば花粉などの測定対象物質が測定対象媒体に含まれるか否かを測定可能となる。例えば、いくつかの花粉について、本実施形態1の物質検出装置100aを用いて測定された発振回路の出力信号の周波数の変動をデータベースとして準備しておけば、これらの花粉が測定対象媒体に含まれるか否か、及びその含まれる量を検出可能となる。
【0032】
(バルブ150)
バルブ150は、開閉状態を複数段階に調整可能であって、開閉状態の調整によって、流入及び流出する媒体の流量を調整可能に構成されている。
【0033】
(ポンプ160)
ポンプ160は、物質検出装置100aに測定対象媒体の吸引力を提供可能に構成されており、この吸引力を調整可能に構成されている。
【0034】
上記バルブ150とポンプ160とを組み合わせて利用することにより、物質検出装置100aの吸入部110から吸入される測定対象媒体の量を調整することができる。吸入・排気量は、例えば毎分100cc程度に調整する。
【0035】
<(2)物質検出装置の動作例>
次に、本実施形態1の物質検出装置100aの動作について、図1乃至図5を参照しながら具体的に説明する。
【0036】
まず、予備実験として、花粉が加熱されることでアウトガスが発生することを、温度を一定に保ったホットプレート上に花粉を配置し、発生する匂いを確認することで確かめた。具体的には、ホットプレートの温度を70℃から5℃刻みで上昇させ、それぞれの温度において安定化した時点でホットプレートの上に花粉を配置した。すると、ホットプレートの設定温度が95℃に達した時点で、花粉を配置した際にかすかな匂いを感じるようになった。さらに、設定温度を上げるに従い、焦げるような臭いを明確に感じるようになり、設定温度が120℃を超える辺りからは、花粉の配置直後に匂いが発生することが分かった。このことから、花粉は、周辺気体が酸素を含む大気であれば、95℃以上に加熱することでアウトガスを発生することが分かった。以下の本実施形態1の具体的動作の説明においては、花粉がより安定してアウトガスを発生するよう、花粉を120℃に加熱する例について説明する。
【0037】
本実施形態1の物質検出装置100aでは、バルブ150及びポンプ160によって発生された吸引力により、吸入部110から測定対象媒体が吸入される。吸入された測定対象媒体は、加熱部120によって120℃程度に加熱される。この測定対象媒体には少なくとも酸素が含まれているため、測定対象媒体及び測定対象媒体に含まれる測定対象物質は、ここで、その少なくとも一部が酸化される。加熱部120で120℃程度に加熱された測定対象媒体は、花粉のような物質が含まれる場合には、加熱されたことによりアウトガスを発生して、フィルタ部130に到達する。フィルタ部130は、加熱された測定対象媒体に含まれる数μmの粒子を遮断し、それよりも小さな粒子のみを通過させることで、実質的に気相のみを通過させる。すなわち、アウトガスを発生した花粉の残骸などが除去される。検出部140では、フィルタ部130を通過した気相に水晶振動子141が暴露される。これによって、水晶振動子141の表面に配置された吸着膜は、フィルタ部を通過した気相に含まれる物質のうちの所定の物質を吸着する。吸着膜が所定の物質を吸着することにより、水晶振動子141を含んで構成された発振回路(図示せず)から出力される周波数が変動する。検出部140は、この周波数の変動を、例えば計算器を用いてパターン認識または主成分分析により解析させることにより、測定対象媒体に、所定の花粉が含まれるかどうか、及び含まれる量を検出する。
【0038】
図2は、測定対象物質としてスギ花粉を含む測定対象媒体(大気)に対して、本実施形態1の物質検出装置100aを用いて検出を試みたときの実験結果を示している。具体的には、この実験結果は検出部140に含まれる発振回路からの出力信号の周波数の時間変化を示すグラフであり、グラフ中の7つの値は、別個の発振回路から出力される周波数を示している。すなわち、本実施形態1の物質測定装置の検出部140は、7つの発振回路を含んで構成されている。なお、本実験においては、一立方メートル当たり約10〜400個程度のスギ花粉を含むように調整したものを測定対象媒体として利用した。また、物質検出装置100aの稼働直後は加熱部120による加熱が十分でないことがあるので、加熱部120の温度が安定し、検出部140に含まれる発振回路から出力される周波数が定常状態になってから実験を開始した。
【0039】
図2に示すように、時間経過とともに検出部140で測定される周波数が変化していることが分かる。また、周波数変化のピーク強度と花粉の濃度との間には、各々の花粉による周波数変化のピークが重なる場合、正の相関が確認された。
【0040】
図3は、検出部140に含まれる発振回路から出力される周波数のピーク強度をデータとして用いて、主成分分析を行ってプロットした例を示している。
【0041】
本実施形態1の物質検出装置では、検出部140が7つの発振回路(水晶振動子141を備える)を含むことから、周波数変化のピーク強度は7点のサンプルが得られる。そのため、測定対象媒体に含まれる測定対象物質が変わったときの周波数変化の変化を直感的に把握することは難しい。そこで、7点のピーク強度のサンプルを1つのベクトルとして考え、スギ、シラカバ、及びブタクサの3種類の花粉についてそれぞれ5回の測定を行い、15個の単位ベクトルとした上で主成分分析を行った。図3では、そのうちの第1主成分(PC1)及び第2主成分(PC2)を平面にプロットしたものであり、横軸が第1主成分(PC1)、縦軸が第2主成分(PC2)となっている。なお、第1主成分スコアは0.821、第2主成分スコアは0.114であった。
【0042】
図3に示したように、スギ、シラカバ、及びブタクサはそれぞれ第1主成分及び第2主成分からなる平面上の異なる場所に分布している。よって、本実施形態1では、検出部140の発振回路の出力信号の周波数変化に対して主成分分析を行うことによって、スギ、シラカバ、及びブタクサのどの花粉が測定対象媒体に含まれるかを検出することが可能となる。
【0043】
図4は、測定対象物質としてブタクサ花粉を含む測定対象媒体(大気)に対して、本実施形態1の物質検出装置を用いて検出を試みたときの実験結果を示している。図4に示すように、時間経過とともに、検出部140に含まれる発振回路からの出力信号の周波数が変化することが分かる。
【0044】
図5は、上記同様、測定対象物質としてブタクサ花粉を含む測定対象媒体(大気)を、本実施形態1の物質検出装置を用いて検出を試みたときの、主成分分析の結果を示している。図5において、Aは今回の解析の結果を示している。図5から分かるように、Aは予め準備されたデータベースにおけるブタクサ花粉のプロットデータの付近に位置しており、これによって検出部140は測定対象物質がブタクサ花粉であることを検出することができた。また、スギ花粉及びシラカバ花粉についても同様に、良好に検出することが可能であった。
【0045】
以上のように、本実施形態1に示した物質検出装置100aによれば、特に、測定対象媒体が酸素を含むことによって、加熱部120で測定対象媒体を加熱したとき、測定対象媒体に含まれる測定対象物質等が酸化する。これによって、例えば、120℃程度の比較的低い温度でアウトガスを発生させることができるため、装置に用いる耐熱構造のコストを削減したり、消費電力を低減したりすることができる。
【0046】
また、本実施形態1に示した物質検出装置100aによれば、加熱部120が、測定対象媒体を95℃以上に加熱可能に構成されているので、アウトガスを発生させるのに十分な温度まで加熱可能な物質検出装置を提供することができる。なお、加熱部120が、測定対象媒体を120℃程度、またはそれ以上の温度に加熱可能に構成されると、より安定して花粉にアウトガスを発生させることができるためより好ましい。
【0047】
また、本実施形態1の物質検出装置100aは、加熱することによってアウトガスを発生する、花粉のような物質を測定対象物質とすることが有効である。
【0048】
また、本実施形態1の物質検出装置100aは、検出部140が、吸着膜を備えた水晶振動子141を備えている。これによれば、パターン認識や主成分分析を行うことで、測定対象物質の検出を有効に実施することができる。
【0049】
<2.実施形態2>
次に、図6を参照しながら、本発明の実施形態2について説明する。
【0050】
図6は、本実施形態2における物質検出装置の構成を示す図である。図6に示すように、本実施形態2の物質検出装置100aは、実施形態1と比較して、吸入部110が吸入部111に変更されている点で異なり、それ以外の構成と機能は実施形態1と同様である。以下、本実施形態2の物質検出装置100aについて、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0051】
(吸入部111)
吸入部111は、流入路112及び流出路113を備えて構成される。流出路113は流入路112よりも加熱部120に近い部位に配されており、流入路112は流出路113よりも測定対象媒体が流入する側に配されている。流出路113の流路は、流入路112の流路よりも狭くなっている。なお、図6に示す本実施形態2の物質検出装置100aでは、流入路112に対して、流出路113が急激に狭くなるよう図示されているが、流入路112から流出路113にかけて徐々に狭くなるよう構成されると、測定対象媒体がスムーズに流れるためより好ましい。
【0052】
本実施形態2の物質検出装置100bでは、流出路113が流入路112よりも狭く構成されているため、流出路以降の部分を通過する測定対象物質同士の間隔を広げることができる。そのため、個々の測定対象物質から発生するアウトガスを分離することが容易となり、高精度に、測定対象物質の有無や含有量を測定することができる。
【0053】
<3.実施形態3>
次に、図7を参照しながら、本発明の実施形態3について説明する。
【0054】
図7は、本実施形態3における物質検出装置の構成を示す図である。図7に示すように、本実施形態3の物質検出装置100cは、実施形態1と比較して、吸入部110が吸入部114に変更されている点、並びに、加熱部120及びフィルタ部130が、加熱部120とフィルタ部130とが組み合わせられた加熱可能フィルタ部121に変更されている点で異なり、それ以外の構成と機能は実施形態1と同様である。以下、本実施形態3の物質検出装置100cについて、実施形態1と異なる点を中心に説明する。
【0055】
(吸入部114)
吸入部114は、測定対象媒体吸入部115と、混合部116とを備えて構成される。測定対象媒体吸入部115は、測定対象媒体を吸入するように構成されている。混合部116は、フィルタを備えて構成されており、吸入した測定対象媒体から測定対象物質を除去するよう構成されている。さらに、混合部116は、測定対象媒体吸入部115から吸入した測定対象媒体に、測定対象物質を除去した媒体を混合させ、混合媒体を生成するよう構成される。混合媒体は、加熱可能フィルタ部121に流出される。
【0056】
(加熱可能フィルタ部121)
加熱可能フィルタ部121は、実施形態1の加熱部120とフィルタ部130とを組み合わせて構成されている。すなわち、加熱可能フィルタ部121は、混合媒体を加熱し、かつ、加熱された混合媒体に含まれる気相のみを実質的に通過させるように構成されている。
【0057】
本実施形態3の物質検出装置100cによれば、測定対象媒体吸入部115と混合部116とを備えた吸入部114を備えているため、測定対象媒体における測定対象物質の濃度を薄くすることができ、混合部116以降の部分を単位時間当たりに通過する測定対象物質を減らすことができる。そのため、個々の測定対象物質から発生するアウトガスを分離することが容易となり、高精度に、測定対象物質の有無や含有量を測定することができる。
【0058】
また、本実施形態3の物質検出装置100cによれば、加熱可能フィルタ部121を備えているため、より小型の物質検出装置を提供することが可能となる。
【0059】
<4.補足事項>
上記複数の実施形態で説明した本発明の物質検出装置は、それぞれの部分を組み合わせて構成することも可能である。例えば、実施形態2において、加熱部120及びフィルタ部130に代えて、実施形態3で説明した加熱可能フィルタ部121を配置することなどが可能である。
【0060】
なお、上記の説明では検出部140は水晶振動子141を備えていたが、これは必ずしも水晶振動子である必要はなく、他の振動子に置き換えることも可能である。
【0061】
また、検出部140は、振動子を用いずに、酸化物半導体センサによって構成されても良い。
【0062】
また、上記実施形態の物質検出装置は、いずれもバルブ150及びポンプ160を備えて構成されていたが、必ずしもこの構成に限るものではなく、バルブ150を備えない構成とすることも可能である。
【0063】
また、実施形態3で説明した吸入部114に含まれる混合部116は、測定対象媒体に、測定対象物質を除去した測定対象媒体を混合するよう構成されていたが、この構成に限るものではない。すなわち、例えば、タンクから供給される不純物を取り除いた大気を測定対象媒体に混合するよう構成されてもよい。または、タンクから供給される窒素ガスまたは酸素ガスを測定対象媒体に混合するよう構成されてもよい。
【0064】
なお、上記の説明はあくまで本発明に関するいくつかの実施形態に過ぎず、これらの実施形態から当業者に理解される範囲の発明は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
100a、100b、100c……物質検出装置、110……吸入部、111……吸入部、112……流入路、113……流出路、114……吸入部、115……測定対象媒体吸入部、116……混合部、120……加熱部、121……加熱可能フィルタ部、130……フィルタ部、140……検出部、141……水晶振動子、150……バルブ、160……ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物質を含む測定対象媒体を吸入するように構成された吸入部と、
前記吸入部から吸入された前記測定対象媒体を加熱するように構成された加熱部と、
前記加熱部で加熱された前記測定対象媒体に含まれる気相のみを実質的に通過させるように構成されたフィルタ部と、
前記気相に含まれる物質を検出可能に構成された検出部と、を備え、
前記測定対象媒体が酸素を含むことを特徴とする物質検出装置。
【請求項2】
前記加熱部は、前記測定対象媒体を95℃以上に加熱可能に構成されたことを特徴とする、請求項1記載の物質検出装置。
【請求項3】
前記吸入部は、流入路と、前記流入路よりも前記加熱部に近い部位に配された流出路と、を備えて構成されており、
前記流出路の流路は、前記流入路の流路よりも狭くなっていることを特徴とする請求項1または2記載の物質検出装置。
【請求項4】
前記吸入部は、前記測定対象物質を含まない媒体を前記測定対象媒体に混合させるように構成された混合部をさらに備える請求項1乃至3のいずれか1項記載の物質検出装置。
【請求項5】
前記測定対象物質が花粉であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の物質検出装置。
【請求項6】
前記加熱部及び前記フィルタ部は、加熱可能フィルタ部として一体的に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の物質検出装置。
【請求項7】
前記検出部は、吸着膜を備えた振動子を備えて構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の物件検出装置。
【請求項8】
前記検出部は、酸化物半導体センサによって構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の物件検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−132841(P2012−132841A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286557(P2010−286557)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)