説明

特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システム

【課題】出願明細書作成に不慣れな技術者でも発明技術を整理して、まとめることで容易に出願明細書文書を作成することが可能な特許出願又は実用新案登録出願明細書作成支援システムを提供する。
【解決手段】下記A〜C欄およびF欄を有する明細書要素一覧表を格納する記憶手段と、明細書定形文を格納する記憶手段とを備えた特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システムであり、A欄:発明特定事項を入力するための欄、B欄:A欄の各発明特定事項に対応した好適範囲を入力するための欄、C欄:B欄の各発明特定事項に対応した効果を入力するための欄、F欄:前記Aおよび/またはB欄に対応した具体的データを入力するための欄、前記A〜C欄に入力した文言と、前記明細書定形文とをそれぞれの欄毎に対応結合させてテキスト出力させることを特徴とする特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書の作成に関し、研究開発の中からどのように発明又は考案を把握し、どのような発明又は考案について特許又は実用新案登録を受けようとするのか、具体的な技術に特許的な配慮を加え発明思想として拡張し、実効性のある明細書を作成することは重要である。本発明は、特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システムに関し、更に詳しくは、発明(以下考案を含む)した技術の全体を確認して、発明を構築し、明細書を作成する要件を纏め上げていくものであり、明細書に記載していく内容の齟齬を逐次チェックして、出願明細書の作成を支援するシステムである。
【背景技術】
【0002】
多くの企業において、技術系社員により発明がなされた場合、特許明細書は発明者が作成することも多い。発明に関わる技術は先行技術なども含めて発明者がよく理解しているものではあるが、いざそれを特許出願明細書(以下実用新案登録出願明細書を含む)に仕上げるとなると、明細書作成の実務経験を踏まねばならず、完成度の高い明細書の作成にはほど遠いことが多かった。
【0003】
これらを補うために、以下に示すような数々の特許明細書作成支援の方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−306754号公報
【特許文献2】特開2003−242142号公報
【特許文献3】特開2002−207720号公報
【特許文献4】特開2002−99525号公報
【特許文献5】特開2007−257668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、初期に全体的作業手順が表示され、明細書作成作業時には明細書作成ガイドおよび明細書原稿が同時表示されるので、明細書作成を進める場合明細書の作成が不慣れなものでもガイドに従い文書を作成することができるという技術が記載されている。しかし、かかる従来技術は発明技術に照らして内容を説明し切れておらず発明思想を明確に掴むことができないので、齟齬を見逃しやすいという問題点があった。
【0006】
特許文献2によれば、明細書作成者の経験レベルを確認し、あらかじめ設定した記載項目を段階的に、加筆しながら特許明細書作成を進め、ネットワークを介して操作、基本文型および参考公報についてのガイドを提示し、問い合わせ事項に対してアドバイスを与えることにより明細書作成のレベルに合わせ効率よく文書を作成することができる技術が記載されている。しかし、かかる従来技術は発明技術を充分説明し切れておらず全体を掴むことができないので齟齬を見逃しやすいという問題点があった。
【0007】
特許文献3によれば、特許明細書の各項目を作成する作成プログラムにより学術論文から特許明細書を容易に作成することができるという技術が記載されている。しかし、かかる従来技術は請求項の広い範囲からより好ましい狭い範囲に絞り込んでいく特許特有の表現をカバーしきれないという問題点があった。
【0008】
特許文献4及び5によれば、明細書の各項目を作成するにあたり、予め抽出された情報の中から類似した技術をもとにして、文書を作成する上で参照または編集利用するのに適切な文章を呼び出し、それに編集を加えていく方法が開示されている。この方法は、明細書作成に不慣れなものであっても、ひな形となるべき文書に修正を加えることで容易に明細書文書を作成することが記載されている。しかし、これらの従来技術は発明技術の説明が不十分であり、従って、発明の全体を掴むことができない。さらに齟齬を見逃しやすい、またひな形の編集漏れがあった場合には明細書文章中で重大な齟齬が生じるという問題点があった。
【0009】
このように、従来の明細書作成支援システムは、発明の属する技術分野、従来の技術、発明が解決しようとする課題といった明細書項目毎に順に文書を作成していくことに重点が置かれている。一方、特許明細書においては、発明技術を説明するための必要な要件項目のもれ、請求項に記載した事項の明細書や実施例での記載もれ、減縮の根拠となるより好ましい範囲の記載もれ、特許請求の範囲、明細書の記載事項、実施例および比較例でのデータの齟齬などがあれば、必要とする権利が確保できなくなり致命的な瑕疵につながるといった問題がある。
【0010】
上述のように、従来の特許明細書作成支援システムは、発明技術を説明するための必要な要件項目とその範囲をどの様にするか、明細書での記載内容をどのようにするか、実施例、比較例に用いる具体的データとしてどれを採用するかといった本質的な記載に関して考慮されていないので、発明技術や明細書の記載全体を掴むことができず、前記した致命的明細書の欠陥を防ぐことは困難なものであった。
【0011】
本発明の目的は、かかる従来技術の有する問題を解決せんとしたものであり、発明した技術の全体像を確認し、技術を説明するために必要な要件の抜けや明細書での記載もれ、特許請求の範囲、明細書内容、具体例のデータ間の齟齬といった致命的な瑕疵を防ぐことができる特許明細書作成支援システムの達成であり、特許明細書作成に不慣れな技術者でも発明技術を整理してまとめることにより、特許明細書または実用新案登録出願明細書文書を容易に作成することが可能な明細書作成支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、下記A〜C欄およびF欄を有する明細書要素一覧表を格納する記憶手段と、明細書定形文を格納する記憶手段とを備えた特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システムであり、
A欄:発明特定事項を入力するための欄、
B欄:A欄の各発明特定事項に対応した好適範囲を入力するための欄、
C欄:B欄の各発明特定事項に対応した効果を入力するための欄、
F欄:前記Aおよび/またはB欄に対応した具体的データを入力するための欄、
前記A〜C欄に入力した文言と、前記明細書定形文とをそれぞれの欄毎に対応結合させてテキスト出力させることを特徴とする特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システムである。
【0013】
前記F欄の入力値がB欄の限定範囲を外れた場合に警告を発するようにすることが好ましい。
【0014】
前記B欄は、左端から限定範囲を、次に好ましい範囲を、更に好ましい範囲を、逐次段階的に範囲は狭くなるよう設定し、入力される数値がその左欄の値と比べて同等若しくは大きくなる場合に警告を発するようにすることが好ましい。
【0015】
達成手段を示すD欄を有し、D欄に入力された情報と予めシステムに定型文として記憶させた文章をそれぞれの欄毎に対応結合させて一覧表に出力させるようにすることが望ましい。
【0016】
測定方法を示すE欄を有し、E欄に入力された情報と予めシステムに定型文として記憶させた文章をそれぞれの欄毎に対応結合させて一覧表に出力させるようにすることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、発明技術を説明するために必要な要件項目と明細書での記載内容、実施例などに用いる具体的データを発明の構成、効果等に係る要素一覧表にしてディスプレイ等に表示することができる。
さらに、予め格納して用意された定型文書にこれら表の記載事項を自動的に入れ込んでテキスト出力することができる。そのため、発明技術と特許明細書全体の内容を一目で把握することができ、発明技術を説明するために必要な要件項目のもれ、請求項に記載した事項の明細書や実施例での記載もれ、減縮の根拠となるより好ましい範囲などの記載もれを見逃すことが非常に少なくなる。また、特許請求の範囲、明細書の記載事項、実施例〜比較例でのデータの齟齬などのチェックも行いやすく、自動でチェックし警告を発することもできる。
【0018】
従って、従来の明細書作成システムに見られる、必要な権利が確保できないことにつながる明細書の致命的な漏れの発生を大幅に防ぎ止めることが可能である。特に、発明者同志や発明者の上司、知的財産部員等が技術内容をヒアリングしながらディスカッションをして表(明細書要素一覧表)にまとめることができ、すぐに活用できるので、技術者が苦手とする出願明細書に用いられる発明定型文書を半自動的に作成することができる。後は勿論必要に応じて修正、加筆を行わなければならないが、明細書の整理から明細書作成の業務を効率よく進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例においてディスプレイされた発明要素一覧表の全体を示す図である。
【図2】図1を6分割拡大した左上部分を示す図である。
【図3】図1を6分割拡大した左下部分を示す図である。
【図4】図1を6分割拡大した中上部分を示す図である。
【図5】図1を6分割拡大した中下部分を示す図である。
【図6】図1を6分割拡大した右上部分を示す図である。
【図7】図1を6分割拡大した右下部分を示す図である。
【図8】実施例においてディスプレイされた技術対比一覧表の全体を示す図である。
【図9】実施例においてディスプレイされた定型文と結合させた文章の状態を示す図である。
【図10】図9を拡大した図である。
【図11】図8を2分割拡大した左部分を示す図である
【図12】図8を2分割拡大した右部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の特許明細書の文書を作成するシステムは、特許技術の内容を整理するための表(発明の構成、効果等に係る明細書要素一覧表)をテキスト出力することができる。なお、以下では、特許明細書の文書を作成するシステムを単に本システムと表すことがある。
【0021】
まず、明細書要素一覧表に関して説明する。明細書要素一覧表は、少なくとも、特許発明または考案を特徴づける発明特定事項を入力するための欄(A欄)、前記発明特定事項に対応した範囲を入力するための欄(B欄)、前記発明の特定事項に対応した効果を入力するための欄(C欄)および前記A、B欄に対応した具体的データを入力するための欄(F欄)を有する。
【0022】
A欄の発明特定事項とは、具体的には、例えば、基材樹脂、難燃剤、樹脂の融点、塗膜の厚さ、などといった特許請求の範囲となる要件や発明技術を特徴づける要件の事項を入力・テキスト出力表示する部分である。発明技術はこれら要件項目を複数組み合わせることで説明づけられる。
【0023】
B欄の限定範囲とは、要件項目に対応して具体的に限定されていく範囲を入力・表示する欄である。具体的に例えば、要件項目が基材樹脂である場合にはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂など具体的な上位概念の物質名や個々の化合物名を記入する。(選択型)。また、要件項目が樹脂の融点などのように数値で限定していくタイプのものである時には、少なくとも数値の上限か下限の一方、好ましくは上下限の数値を記入する。(範囲限定型)。
【0024】
B欄の好適範囲の欄は1つの要件項目に対して複数の欄を持つ。これは、ポリエステルの中でもより好ましいもの、例えば芳香族ジカルボン酸からなるポリエステル、さらに好ましいものとして、ポリエチレンテレフタレート、というようにさらに好ましい範囲を限定していくためである。なお、融点などのような数値で限定していくものである場合には段階的により効果の高い狭い範囲に限定していくことになる。また、B欄は段階的に限定されていくことが分かりやすくなるため、1列に並んでいることが好ましい。
【0025】
また、B欄は特定項目が数値で限定していくタイプのものである場合には、一方の端の欄に最も広い範囲を入力し、順に他端に向かって順に狭い範囲となるように入力されることが好ましい。順に狭い範囲となっていない場合には警告を発することが好ましい。警告の手段としては、入力時に入力した文字や欄の色が変わるなど手段が好ましいが、警告文字がポップアップされる方法も挙げられる。独自にプログラムするか、簡単には表計算ソフトの条件付き書式や入力制限の機能を利用することができる。具体的には、例えば下限値の数値を記入し、最も広い範囲を左端に配置する場合である場合、右の欄には「左の欄より小さい値が入力された時に赤文字とする」といった条件付きの書式設定を設けるか、「左の欄の数値より大きい数値のみ入力を許可する」といった入力条件を設定することができる。
【0026】
C欄の効果は、該当する特定項目が好適範囲内となった場合、または好適範囲外を外れた場合(下限を外れた場合、上限を外れた場合)にどの様になるかを記入する。
【0027】
F欄の具体的データは、実験などで得た具体的データを入力する。特許明細書では実施例、比較例に該当する部分であり、複数の実験結果に合わせて複数の欄を持つ。欄は一列であることが望ましい。
【0028】
また、特定項目が数値範囲である場合には、F欄の入力値がB欄の最も広い範囲から外れた場合には警告を発するようにするのが好ましい。警告の手段としては、B欄の場合と同様に、入力時に入力した文字や欄の色が変わるなどの手段を取るのが好ましいが、警告文字がポップアップされる方法も挙げられる。独自にプログラムするか、簡単には表計算ソフトの条件付き書式や入力制限の機能を利用することが可能である。
【0029】
実施例を想定して実験データを入力する際、請求項1などの独立請求項の要件として採用する予定の要件項目で警告が出た場合は、入力データがおかしいか、請求項範囲を見直すべきかのどちらかであることが分かる。一方、比較例を想定してデータ入力した際、請求項1などの独立請求項の要件として採用する予定の要件項目のいずれにも警告が出ない場合でも入力データがおかしいか、請求項範囲を見直すべきかのどちらかが必要であることが分かる。また、実験結果のデータを実施例として用いるべきか比較例として用いるべきかが容易に判断できる。
【0030】
さらに明細書要素一覧表には、特定項目が物性値である場合には達成手段の欄(D欄)を有していることが好ましい。D欄には特定項目の物性値を好適範囲にするための方法を記入する。また、前記同様に、特定項目が物性値である場合には測定方法の欄(E欄)を有していることが好ましい。E欄にはその物性、測定方法を記入する。
【0031】
また、明細書要素一覧表には、その特定項目を明細書のどの部分に記載するか記入する記載位置欄(G欄)を設けていることが好ましい。G欄には、その特定項目を請求項の何番目(請求項1、請求項2など)に配置するか、明細書文書中のみに配置するかを記入する。
【0032】
明細書要素一覧表では、A〜G欄が横または縦の一列に配置されていることが好ましい。複数の特定項目はそれぞれがバラバラに表示されるのではなく、並んで配置されていることが好ましい。
【0033】
本システムは上記のような明細書要素一覧表を有しており、特許技術に関して実施例、比較例にする実験データも含めて一つの表として全体を見渡すことが出来る。そのために、発明の技術を表すのに必要な要件項目で抜けているものがないか、請求項に用いた要件項目がすべて説明されているかなどを容易に確認することが出来る。
さらには、数値範囲で記載に関して齟齬があった場合には警告を発し、明細書の重大な瑕疵を防止することが出来る。この明細書要素一覧表(発明の構成、効果等に係る明細書要素一覧表)はディスプレイにテキスト表示される。また、表の形式として印刷することができる。
【0034】
さらに、本システムではA欄、B欄およびC欄に入力された情報とシステムに記憶された各欄に対応する定型文書とを結合してテキスト出力することができる。また、D欄、E欄に入力された情報とシステムに記憶された各欄に対応する定型文書とを結合してテキスト出力させることが出来る。
【0035】
一般に、特許出願明細書は「○○(要件項目)としては、××(限定範囲の一番広い範囲)である。」、「○○は△△(限定項目のより狭い範囲)が好ましく、さらに好ましくは、□□である。」といった文書から構成される。このような文書を出力するためには、定型文書として予め、「としては」、「である。」、「が好ましく、さらに好ましくは」、「である。」といった文書を準備格納しておく。A欄、B欄の入力値と結合する操作を自動で行う命令文を作成しておくことで入力作成、出力することができる。具体的には、表計算ソフトなどに備えられているセルの入力値を結合させる関数などを利用することができる。例えば、B欄で範囲の広い方からB1欄、B2欄、B3欄とした場合、「(A欄入力値)としては、(B1欄入力値)である。さらに(A欄入力値)は(B2欄入力値)が好ましく、より好ましくは(B3欄入力値)である。」と文書を繋ぎ、セルに表示するよう設定する。なお、B欄の数に合わせて表現を調整したりしても良いし、要件項目が従属請求項や本文のみで用いられる場合には、「(A欄入力値)としては、(B1欄入力値)が好ましい。」と表現を変えることも可能である。
【0036】
また、C欄に入力された情報とシステムに記憶された各欄に対応する定型文書とを結合して出力する場合には、例えば「(A欄入力値)を前記にすることにより、(C欄入力値)とすることができる。」や「(A欄入力値)を前記範囲以下(以上)とすることにより、(C欄入力値)となることがある。」との設定が可能である。
【0037】
同様にD欄に入力された情報とシステムに記憶された各欄に対応する定型文書とを結合してテキスト出力する場合には、例えば「(D欄入力値)ことにより、(A欄入力値)を前記範囲にすることができる。」との設定が可能である。
E欄に入力された情報とシステムに記憶された各欄に対応する定型文書とを結合して出力する場合には、例えば「(A欄入力値)は、(E欄入力値)により測定した値である。」との設定が可能である。
【0038】
表計算ソフトを用いた場合にはこのような文書を出力、表示させるセルは、A欄から一列に並んだ各欄に引き続き配置させることが望ましい。
【0039】
このようにして各設定要件項目に対応した文書が作成される。作成された要件項目に対応した文書は、出願明細書を仕上げる際には、文書作成ソフトにまとめてテキスト出力させることが好ましい。このようなプログラムを組むか、マクロを利用するか、手動で行う場合にはコピーし、テキスト形式などで文書作成ソフトに貼り付けることによって実行が可能となる。
【0040】
さらに、文書作成ソフトで書式を整え、文書の不自然な部分の修正を行い、実施例での具体事例を補うことで、出願明細書の文書を完成させることができる。
また、実施例等で使用する表は、A欄とF欄をそのまま使用することができ、ここでも書き写しミスなどによる明細書の瑕疵をなくすことができる。
【0041】
本システムは、上記機能を達成するために、データを入力するためのキーボード等の入力手段、定型文書や表形式、処理プログラムを記憶するための記録媒体、演算処理を行うCPU、整理表などを表示するディスプレイを必要とする。
【0042】
さらに、本システムは先行文献と発明技術を比較するための技術対比一覧表を有することが好ましい。なお、以下では該技術対比一覧表を単に技術比較表と言い表すことがある。
【0043】
一般に発明技術を特許出願するまでには、技術的に近い先行技術を選び発明技術との違いを整理して、特許発明により奏する効果を把握する作業を行い、これらを対比させて新規性・進歩性の確保できる特許請求の範囲を決めていくことが必要である。
【0044】
しかしながら、従来の明細書作成支援システムは、単に明細書文書の手順やそこにどの様な事柄を書くかのサポートが中心であり、特許性のある出願をするためにはシステム外で別個にこれらの特許性について、整理して把握する必要があり、従って、特許性を含めた明細書の作成については全く考慮されていなかった。
【0045】
このような従来のシステムを用いて明細書を作成する場合は、特許性の整理を行わずにシステムを利用すると、背景技術で記載する内容は特許発明の技術とは関係の薄い単に技術の歴史の紹介であったり、的はずれなものであったりする場合が多かった。また、整理作業を行った場合でも、整理の結果を書き写すという作業が要求されるものであった。
【0046】
本発明のシステムは、発明技術と近い先行文献と発明技術との相違を一覧表に整理した技術比較表を併せて用いることができる。従って、発明技術の特徴を明確にし、また、この比較表を作成するのみで、後は自動的に[技術分野]から[発明の効果]までの文書を作成、出力することが出来るので、的確で容易に特許出願明細書の作成を支援することができる。
【0047】
技術対比一覧表には、少なくとも従来技術である先行技術文献の書誌事項を表示する欄(a欄)、先行技術文献の技術的特徴を表示する欄(b欄)、先行技術文献の技術要件によってもたらされる効果を表示する欄(c欄)、先行技術文献の技術的要件から読み取れる問題点および解決しきれなかったりする問題点を表示する欄(d欄)、発明技術の技術的特徴を示す技術概要の欄(e欄)、発明技術の効果を表示する欄(f欄)、を設けることが好ましい。さらに、比較表には発明の対象となる技術分野を表示する欄(g欄)を設けることが好ましい。
【0048】
先行技術文献の書誌事項を表示する欄(a欄)は、先行文献が特許や実用新案などである場合は、公開番号、登録番号、公開日、登録日、出願人、名称などを、表示することができる。学術文献、雑誌などの場合は、文献名、巻、ページなどを表示することができる。尚、先行技術文献が複数存在する場合には、個々の先行技術文献に対応して、a1欄、a2欄等とする。
【0049】
先行技術文献の技術的特徴を表示する欄(b欄)には、先行技術文献に記載された発明の請求項要件に類似する事項を中心に入力することができる。なお、先行技術文献が複数存在する場合には、個々の先行技術文献に対応して、b1欄、b2欄等とすることができる。
【0050】
先行技術文献の技術的要件によってもたらされる効果を表示する欄(c欄)、先行技術文献の技術要件から読み取れる問題点および解決しきれなかったりする問題点を表示する欄(d欄)を設けることができる。なお、先行技術文献が複数件存在する場合には、個々の先行技術文献に対応して、それぞれc1欄、c2欄等、およびd1欄、d2欄とすることができる。
【0051】
発明技術の技術的特徴を示す技術概要の欄(e欄)には、それによってもたらされる効果について表示することができる(f欄)。
【0052】
発明の対象となる技術分野の欄(g欄)には、その中でも特に好ましい技術分野の欄を段階的に備えて表示することができる。なお、このように段階的に発明の対象となる技術分野の欄を設けた場合は順にg1欄、g2欄等とすることができる。
【0053】
特許請求の範囲の欄(h欄)には、特許請求の範囲を要件毎に分けて表記することができる(i欄)。通常は請求項の要件は複数存在するため、それぞれi1欄,i2欄等とすることができる。
【0054】
各要件に対応する先行文献の記載事項の欄(j欄)を設けることがより好ましい。j欄もi欄に対応して、j1欄,j2欄等とするのがよい。
【0055】
出願に際しては、本システム利用者は発明の技術を把握し、先行文献調査終了後に出願する特許の概要(技術分野、請求項案)を決め、比較表に入力していくことができる。
この際に、本システムでは発明技術を先行文献と一覧表にして表示させるため、その違いを明確に把握し、先行文献に対して何が新しい技術であるかを容易に把握することができる。
【0056】
さらに、発明技術を元に特許請求の範囲を決定していく過程においては、特許請求の範囲の案の要件毎に先行文献に記載されている内容を正確に比較することができ、特許請求の範囲の案が先行文献に対して新規性、進歩性が有るものかの検討が容易に可能となる。先行文献と比較検討の結果、新規性、進歩性が無いと考えられた場合には、さらに発明技術から特許性が出せる要件を検討することが行い易くなる。
【0057】
この技術対比一覧表はディスプレイに表の形式として表示される。また、表の形式として印刷することができる。また、各欄の入力は手動により、キーボード等で行っても良いし、先行文献の記載の場合には、先行文献から該当箇所からコピーして貼り付けても良い。先行文献のテキストファイル等の該当部分を選択することで、自動的に入力できるようプログラムされていても良い。尚、以下に示す実施例に基づいてディスプレイされた技術対比一覧表の全体を図8に示した。また実施例に基づいてディスプレイされた定型文と結合させた文章の状態を図9に示した。図10は図9の拡大図である。図11は図8の左部分拡大図である。図12は図8の右部分拡大図である。
【0058】
本システムは、少なくともa欄、b欄、f欄に入力された文書と予めシステムに記憶された各欄に対応する雛形定型文書とを結合して出力する手段を備えていることが好ましい。
さらには、本システムはc欄、d欄、g欄、h欄に入力された文書とシステムに記憶された各欄に対応する定型文書とを結合して出力する手段を備えていることが好ましい。
【0059】
これらの各欄に対応する定型文書と結合して出力する方法に関して、特許明細書の順に合わせて例をもって説明する。
まず、[技術分野]部分では、例えば、「[技術分野] [0001] 本発明は、」、「に関する。更に詳しくは、」、「に関する。」との定型文書を準備する。さらに、g1欄、g2欄の入力値と結合する操作を自動で行う命令文を作成することで作成、出力することができる。具体的には、表計算ソフトなどに備えられているセルの入力値を結合させる関数などを利用することができる。例えば、「[技術分野] [0001] 本発明は、(g1欄入力値)に関する。更に詳しくは、(g2欄入力値)に関する。」と文書をつなげ、セルに表示するよう設定する。なお、定型文書には適宜改行の命令を入れても良い。
【0060】
[背景技術]の部分では、例えば、定型文書として、「[背景技術] [0002] 従来、」、「により」、「するという技術が知られていた(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術は」、「という問題点があった。」、といった文書を予め準備しておき。各欄の入力値と結合する操作を自動で行う命令文を作成することで入力作成、出力することができる。具体的には、例えば、「[背景技術] [0002] 従来、(b1欄入力値)により、(c1欄入力値)するという技術が知られていた(例えば特許文献1参照)。しかしかかる従来技術は、(d1欄入力値)という問題があった。」と文書をつなげ、セルに表示するよう設定する。なお、b2以後の先行文献に関しては、「[背景技術] [0002] 従来、」の文書ではなく、この部分を省略するか、「さらに、」という文書に置き換える。
【0061】
さらに、[先行技術文献]の部分では、「[先行技術文献] [特許文献] [0003] [特許文献1]」、「号公報○○[特許文献2]」、「号公報○○[特許文献3]」、「号公報○○」との文書を用意しておき、先行文献の出典を入力、表示する欄(a欄)の入力値と結合させて出力するように設定する。
【0062】
なお、技術対比一覧表に別途先行文献を特許文献、非特許文献に分けて整理番号を付与し、上記の「特許文献1○○」の番号部分にこの整理番号を入力することも可能である。このようにすることにより、背景技術の部分の技術の変遷などを記載する場合に、技術対比一覧表で先行文献に任意の先行文献番号を付けて、明細書の体裁を整えることができる。
【0063】
[発明の概要]の部分では、例えば、「[発明の概要] [発明が解決しようとする課題] [0004] 本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、」、「に優れた」、「を提供することにある。」といった定型文書を予め用意しておき、技術分野を入力、表示する欄(g欄)と発明技術の効果を表示する欄(f欄)の入力値と結合させる。具体的には、「[発明の概要] [発明が解決しようとする課題] [0004] 本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、(発明技術の効果を表示する欄(f欄)入力値)に優れた(技術分野を入力、表示する欄(g1欄)の入力値)を提供することにある。」といった文書を出力させる。
【0064】
以下同様に、[課題を解決するための手段]の部分では、例えば「[課題を解決するための手段] [0005] 本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、(h欄入力値)である。」
[発明の効果]の部分では、例えば、「[発明の効果] [0006] 本発明により、(技術分野を入力、表示する欄(g1欄)の入力値)において、(発明技術の効果を表示する欄(f欄)の入力値)ことができる。」との文書を出力するよう設定する。なお、この後には、明細書の[発明を実施するための形態]につなげるため、「[発明を実施するための形態] [0007]」といった定型文書をつなげていても良い。
【0065】
表計算ソフトを用いた場合にはこのような文書を出力、表示させるセルは、一列に並べて配置されることが好ましい。
このようにして明細書の各部分に対応した文書が作成される。作成された各部分の文書は、出願明細書を仕上げる際には、文書作成ソフトにまとめて出力されることが好ましい。
このようなプログラムを組むか、マクロを利用するか、手動で行う場合にはコピーし、テキスト形式などで文書作成ソフトに貼り付けることで、行うことができる。
さらに、文書作成ソフトで書式を整え、文書の不自然な部分の修正をする、必要によっては背景技術の定型的な内容説明を付け加える程度などを行い、明細書文書を完成させることができる。なお、これらの最終的作業は技術に対する理解や明細書作成に関する熟練も要求されないため、技術内容や特許明細書作成に特別の教育を受けていないものであっても明細書を完成させることができる。
【0066】
このように、比較表を備えることで、発明の技術と従来の技術(先行文献)とを比較してまとめ、明細書要素一覧表を作成していくことによるのみで、後は自動的に明細書の[技術分野]から[発明を実施するための形態]までの文書の作成を概略行うことができる。
【実施例】
【0067】
本発明の特許出願明細書作成システムを用いた具体的な実施例として、ボールペンのグリップの開発をモデル事例として詳細に記述する。
【0068】
ボールペングリップの開発の経緯はつぎのとおりである。
従来技術の前提として、グリップ部に滑り止めのゴムチューブを巻いた程度の物(弾性率100MPa程度)しか知られていなかった。
【0069】
まず、グリップ部に柔軟な樹脂A(弾性率20MPa)を巻いてみたところ書き心地が良く、長時間文字を書いても疲れなかった。しかし、試作品を10本まとめて箱に入れておいたところ、次の日にグリップ部がお互い貼り付いてしまった(ブロッキング)。
【0070】
そこで樹脂Aに架橋剤Xを導入したところ、架橋剤Xが多すぎると書き心地は悪くなるが、適正な架橋を導入することで、書き心地を確保して(15%以下であれば弾性率50MPa以下)かつ、上記ブロッキング問題を解決することができた。
しかし、さらに長期の使用テストを行ったところ、1年後には樹脂に皮脂が染み込んでグリップがべとべとになってしましまった(耐油性)。
架橋剤Y、Zなど他添加剤などを工夫したがどうしても解決できなかった。
【0071】
樹脂D+架橋剤Yに変えたところ、書き心地、ブロッキング、耐油性、他すべての問題をクリアし、いよいよ上市することになった。
なお、樹脂Cのみでもすべての問題をクリアしたが、樹脂Cの価格が非常に高いので断念した。
【0072】
その後のサンプルの分析で以下のことがわかった。
クリップ材を切り開いたサンプル同士を重ね、0.5MPa加圧、30℃1day保存後の剥離強度で1N/15mm程度以下であれば問題は起きない。
剥離強度は、架橋を多くする、架橋剤を用いない場合は結晶部融点120℃以上の熱可
塑性エラストマーを用いることでコントロールできる。
べとつきは、同上サンプルをオレイン酸油50℃24hr浸漬後の質量増加量(%)10%以下程度であれば問題は起きない。
オレイン酸油吸油量は、架橋剤を多く用いる、SP値が10以上の樹脂を用いることで
コントロールできる。但し、SP値20以上は汗や水で膨潤して良くないことが予測され
る。
【0073】
知財部門と検討をして決定したクレームは、以下のようになった。
(請求項1)
硬質素材からなる軸部、軟質素材からなるグリップ部を有し、グリップ材の圧縮弾性率が5〜50MPa、グリップ材の長さが軸部長さに対して20%〜70%、である筆記用具。
(請求項2)
グリップ部のブロッキング性が1N/15mmである請求項1記載の筆記用具。
(請求項3)
グリップ部の吸油性が0.1〜10%である請求項1または2に記載の筆記用具。
【0074】
なお、試作のペンは軸がポリカーボネート製で直径12mm、長さ150mm。先端から20〜65mmの部分にグリップ材が巻かれている。
【0075】
明細書要素一覧表にデータを入力してディスプレイした。ディスプレイされた明細書要素一覧表は図1に示す通りである。尚、図1はそのままでは字が小さくて読みにくいので、6分割拡大図として図2から図7に分けて示した。
【0076】
この一覧表のデータはシステム内に保存された定型文章との結合が行われて、特許出願明細書の文章としてテキスト出力される。図1に実施例に基づいてディスプレイされた明細書要素一覧表を示す。図2から図7に前記図1の明細書要素一覧表を6分割拡大して示す。
【0077】
以下に、本実施例により、得られた特許出願明細書を示す。尚、以下に示す特許出願明細書全文は、前記するボールペングリップの開発に基づく各要素の詳細を本発明のシステムを用いて入力し、自動的にテキスト出力した文章に、更に人力で加筆修正を加えた特許出願明細書であり、アンダーラインの部分は加筆部分を示す。
【0078】
[技術分野]
[0001]
本発明は、筆記用具に関する。更に詳しくは、ボールペンに関する。
[背景技術]
[0002]
従来、筆記用具のグリップ部に溝を設けることにより滑り止めするという技術が知られていた(例えば特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術は指が痛くなるという問題点があった。
筆記用具のグリップ部にゴムを装着することにより滑り止めするという技術が知られていた(例えば、特許文献2参照)。しかし、かかる従来技術は長時間使用すると疲れるという問題点があった。
ボールペンなどの筆記用具に柔軟樹脂からなる人形を装着することにより、踏んだりしても痛くない、さわり心地良い、キャラクター付き筆記用具とするという技術が知られていた(例えば、特許文献3参照)。しかし、かかる従来技術はデザイン性重視であり、書き心地など考慮されていないという問題点があった。
金槌のグリップ部にゴムを装着することにより振動が手に伝わらず、疲れにくいものとするという技術が知られていた(例えば、特許文献4参照)。しかし、かかる従来技術の金槌を筆記用具には展開できない。疲れる部位、機構が異なる。という問題点があった。
[先行技術文献]
[特許文献]
[0003]
[特許文献1]特開平10−111×××号公報
[特許文献2]特開2000−222○○○号公報
[特許文献3]実開平08−123×××号公報
[特許文献4]特開2008−456○×△号公報
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
[0004]
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、樹脂が指の形状に変形、フィットし、圧力が分散するため、全体で支えるため力が不要であり、長時間書いても疲れないという優れた筆記用具を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
[0005]
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、
(1)硬質素材からなる軸部、軟質素材からなるグリップ部を有し、
グリップ材の圧縮弾性率が5〜50MPa、
グリップ材の長さが軸部長さの20%〜70%、
である筆記用具。
(2)上記においてグリップ部のブロッキング性が1N/15mmである筆記用具。
(3)上記においてグリップ部の吸油性が0.1〜10%である筆記用具である。
[発明の効果]
[0006]
本発明により、筆記用具において文字を書くなどの使用のために握った際にグリップ部の樹脂が指の形状に変形、フィットし、指先の圧力が分散するため、全体で支えるため力が不要となり、長時間書いても疲れない筆記用具とすることができる。
[発明を実施するための形態]
[0007]
(グリップ部樹脂)
[0008]
本発明は、硬質素材からなる軸部と軟質素材からなるグリップ部を有する筆記用具である。
なお、ここで言うグリップ部とは筆記用具を使用する時に指先付近が触れる部分である。
グリップ部素材としては軟質樹脂が好ましく、樹脂A、C、Dがより好ましく、樹脂C、Dがさらに好ましい。樹脂C、Dにすることにより、長期間使用した場合にグリップ部の皮脂の染み込みによるべとつきを抑えることができる。
[0009]
樹脂Aとしてはa1、a2、a3が好ましい。
[0010]
樹脂Cとしてはc1、c2、c3が好ましい。
[0011]
樹脂Dとしてはd1、d2、d3が好ましい。これらの樹脂は架橋がなくても本発明に用いるグリップ材として効果を発揮することができ、さらに、成形時に樹脂の軸部とグリップ部の2色射出成形ができるため、簡便に製造することができる
[0012]
(架橋剤)
本発明において、グリップ部の樹脂は架橋剤を用いて架橋することができる。
架橋剤種類としてはエポキシ系、イソシアネート系が好ましく、イソシアネート系がより好ましい。これらにより筆記用具を束ねて保管した際のグリップ部同士のブロッキングを抑えるとすることができる。
[0013]
エポキシ系としてはEP1、EP2が好ましい。これらにより とすることができる。
[0014]
イソシアネート系としてはX、Y、Zが好ましい。これらにより とすることができる。
[0015]
架橋剤量(対樹脂組成物中)の下限は好ましくは1%であり、より好ましくは3%であり、さらに好ましくは5%である。上記未満であると架橋不足、ブロッキング、べとつき発生となることがある。
架橋剤量(対樹脂組成物中)の上限は好ましくは15%であり、より好ましくは13%であり、さらに好ましくは10%である。上記を越えると弾性率がオーバー、書き心地悪化となることがある。
[0016]
(グリップ部物性)
グリップ部素材圧縮弾性率の下限は好ましくは5MPaであり、より好ましくは8MPaであり、さらに好ましくは10MPaである。上記未満であると柔らかすぎて扱いにくくなることがある。
グリップ部素材圧縮弾性率の上限は好ましくは50MPaであり、より好ましくは45MPaであり、さらに好ましくは40MPaである。上記を越えると長時間使用すると疲れることがある。グリップ部素材圧縮弾性率は適正な樹脂の選択、架橋剤量の調整により、範囲内とすることが出来る。
[0017]
本発明者らは、柔軟なグリップ部は場合により、束ねて保管した際にグリップ部がお互い固着してしまうことがあり、このような現象はグリップ部の素材を、実施例に記載する方法によるブロッキング性評価で特定値以下にすることにより解決できることを見出した。
グリップ材のブロッキング性の上限は好ましくは1N/15mmであり、より好ましくは0.5N/15mmであり、さらに好ましくは0.3N/15mmであり、特に好ましくは0.2N/15mmである。上記を越えると束ねて保管時にお互いが融着することがある。グリップ材ブロッキング性は架橋を導入するか、架橋剤を用いない場合は、結晶部融点120℃以上の熱可塑性エラストマーを用いることにより、範囲内とすることが出来る。
[0018]
また、本発明者らは柔軟なグリップ材は長期間使用した際に皮脂を吸収し、べとついてくる場合があり、このような現象はグリップ部の素材を、実施例に記載する方法によるグリップ材の吸油量評価で特定値範囲にすることにより解決できることを見出した。
グリップ材耐油性(吸油量)の下限は好ましくは0.1%であり、より好ましくは0.5%であり、さらに好ましくは1%である。上記未満は現実的困難である
グリップ材耐油性(吸油量)の上限は好ましくは10%であり、より好ましくは8%であり、さらに好ましくは5%である。上記を越えると上期間使用時に皮脂でベトベトすることがある。グリップ材耐油性(吸油量)はSP値10以上の樹脂を用いる、架橋剤量調整により、範囲内とすることが出来る。
[0019]
グリップ部素材のSP値の下限は好ましくは10であり、より好ましくは10.5であり、さらに好ましくは11であり、特に好ましくは であり、最も好ましくは である。上記未満であると給油量増加、上期間使用時に皮脂でベトベトすることがある。
グリップ部素材のSP値の上限は好ましくは20であり、より好ましくは18であり、さらに好ましくは17である。上記を越えると水、汗に溶解、膨潤することがある。
[0020]
(グリップ材の装着位置)
本発明においては、グリップ材は筆記具全体を覆うのではなく、筆記時に指が触れる範囲を中心に用いる。
グリップ部長さ(対軸部比)の下限は好ましくは20%であり、より好ましくは23%であり、さらに好ましくは25%である。上記未満であると小さく、万人に適応し難いことがある。
グリップ部長さ(対軸部比)の上限は好ましくは70%であり、より好ましくは60%であり、さらに好ましくは50%であり、特に好ましくは45%である。
[0021]
グリップ部長さの下限は好ましくは20mmであり、より好ましくは25mmであり、さらに好ましくは30mmである。上記未満であると小さく、万人に適応し難いことがある。
グリップ部長さの上限は好ましくは70mmであり、より好ましくは60mmであり、さらに好ましくは50mmである。
[0022]
グリップ材がカバーする位置は先端からの長さ 25〜40mmをカバーしていることが好ましく、22〜45mmをカバーしていることがより好ましい。
[0023]
(軸部)
軸部素材としては硬質材料が好ましく、金属、樹脂、木材など従来通常に用いられているものを用いることができる。中でも各種樹脂が好ましく、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステルが特に好ましい。
[0024]
軸部弾性率の下限は好ましくは1000MPaであり、より好ましくは1500MPaであり、さらに好ましくはMPaであり、特に好ましくはMPaであり、最も好ましくはMPaである。上記未満であると柔らかすぎとなることがある。
軸部弾性率の上限は好ましくは10000MPaである。上記を越えると現実的入手性が困難となることがある。
[0025]
(筆記用具の形状)
本発明の筆記用具は主に勉学、事務に用いるものであり、略円柱形、多角柱形であることが好ましい。
筆記用具の最大径の下限は好ましくは5mmであり、より好ましくは7mmである。上記未満であると書きにくく疲れやすいとなることがある。
筆記用具の最大径の上限は好ましくは20mmであり、より好ましくは18mmである。上記を越えるとバランス悪く持ちにくなることがある。
なお、ここで言う最大径とは、筆記用具を長さ方向に投影した場合、その影を円内に納めることができる最小の真円の直径である。
[0026]
筆記用具の長さの下限は好ましくは50mmであり、より好ましくは70mmであり、さらに好ましくは90mmである。上記未満であると書きにくくなることがある。
筆記用具の長さの上限は好ましくは200mmであり、より好ましくは180mmであり、さらに好ましくは170mmである。上記を越えるとバランス悪く持ちにくなることがある。
なお、ここで言う長さは通常の使用時における長さであり、ペン先から逆の先端部までの長さであり、使用時に取り外すキャップは含まない。
[0027]
(適応できる筆記用具)
本発明の筆記用具種類としてはボールペン、万年筆、サインペン、シャープペンシルが好ましく、ボールペン、シャープペンシルがより好ましく、ボールペンがさらに好ましい。
[0028]
ボールペン種類としては油性インキ、水性インキ、ゲルインキなど様々な物に適用できる。
(筆記用具の製造方法)
本発明の筆記用具は、通常の製造方法で作ることができる。
[0029]
グリップ部の装着法としては別途成形しかぶせる、2色成形などが好ましい。
別途成形する場合は、射出成形、押し出し成形、など用いることができる。
架橋させる場合は、成形後もしくは装着後に加熱架橋させることができる。
[0030]
架橋温度の下限は好ましくは70℃であり、より好ましくは80℃である。上記未満であると架橋不足ブロッキング発生となることがある。
架橋温度の上限は好ましくは120℃であり、より好ましくは110℃である。上記を越えると装着後に加熱架橋する場合に軸部が軟化変形することがある。
[0031]
架橋時間の下限は好ましくは1hrであり、より好ましくは2hrであり、さらに好ましくは3hrであり、特に好ましくは hrであり、最も好ましくは hrである。上記未満であると架橋不足でブロッキング発生となることがある。
架橋時間の上限は好ましくは24hrであり、より好ましくは20hrであり、さらに好ましくは15hrである。上記を越えると装着後に加熱架橋する場合に軸部が軟化変形することがある。
[0032]
グリップ成形時の射出温度の下限は好ましくは200℃であり、より好ましくは210℃である。上記未満であると溶け残り、異物となることがある。
グリップ成形時の射出温度の上限は好ましくは280℃であり、より好ましくは270℃である。上記を越えると樹脂劣化、変色となることがある。
[実施例]
[0033]
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性値や評価は以下の方法に従った。
[0034]
(1)グリップ部素材圧縮弾性率:JIS Kに従った。
[0035]
(2)グリップ材ブロッキング性:
クリップ材を切り開いたサンプル同士を重ね、0.5MPa加圧、30℃1day後の剥離強度をテンシロン××−200(東洋ボールドウイン社製)で測定した。速度20cm/分で行った。
[0036]
(3)グリップ材耐油性(吸油量):
同上サンプルをオレイン酸油に50℃24hr浸漬し、その後の重量増加量(%)とした
[0037]
(4)グリップ部素材のSP値:
××法による計算で算出した。
[0038]
(5)書きやすさ、疲れにくさ:
10人のテスターによる評価。A4で10枚分の文書を書いてもらい、書きやすい、疲れにくいと感じた人の数で評価した。
×:2人以下
△:3から5人
○:6〜9人
◎:全員
(6)保管時の融着:
10本をゴムで束ね、40℃1日保管したのち、融着の状態を調べた。
(7)長期間使用時のベタつき:
10人のテスター評価。6ヶ月使用してもらい、6ヶ月後のベタつきを評価した。全員がベタつきないと感じた物を「なし」、1人でもベタつきを感じた場合は「あり」とした。
[0039]
実施例1
(架橋剤を使用しない樹脂a1の例)
[0040]
実施例2
(架橋剤を使用した例)
[0041]
実施例3〜7、比較例1,2
樹脂、架橋剤、架橋条件を表1にする以外は実施例2と同様に作製した。結果を表1に示す。
[0042]
実施例8
(2色成形での例)
[0043]
[表1]
[産業上の利用可能性]
[0044]
本発明により、筆記用具において文字を書くなどの使用のために握った際にグリップ部の樹脂が指の形状に変形、フィットし、指先の圧力が分散するため、全体で支えるため力が不要となり、長時間書いても疲れない筆記用具とすることができ、産業界に寄与すること大である。
【0079】
かくして得られた特許出願明細書は、発明した技術の全体像が把握されており、技術を説明するために必要な要件の抜けや明細書での記載もれ、特許請求の範囲、明細書内容、具体例のデータ間の齟齬といった致命的な瑕疵が無い状態で作成される。
このようにして明細書の各部分に対応した文書が作成される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記A〜C欄およびF欄を有する明細書要素一覧表を格納する記憶手段と、明細書定形文を格納する記憶手段とを備えた特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システムであり、
A欄:発明特定事項を入力するための欄、
B欄:A欄の各発明特定事項に対応した好適範囲を入力するための欄、
C欄:B欄の各発明特定事項に対応した効果を入力するための欄、
F欄:前記Aおよび/またはB欄に対応した具体的データを入力するための欄、
前記A〜C欄に入力した文言と、前記明細書定形文とをそれぞれの欄毎に対応結合させてテキスト出力させることを特徴とする特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システム。
【請求項2】
F欄の入力値がB欄の限定範囲を外れた場合に警告を発するようにした請求項1に記載の特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システム。
【請求項3】
B欄は、左端から限定範囲を、次に好ましい範囲を、更に好ましい範囲を、逐次段階的に範囲は狭くなるよう設定されており、入力される数値がその左欄の値と比べて同等若しくは大きくなる場合に警告を発するようにした請求項1または2に記載の特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システム。
【請求項4】
達成手段を示すD欄を有し、D欄に入力された情報と予めシステムに定型文として記憶させた文章をそれぞれの欄毎に対応結合させて一覧表に出力させるようにした請求項1乃至3のいずれかに記載の特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システム。
【請求項5】
測定方法を示すE欄を有し、E欄に入力された情報と予めシステムに定型文として記憶させた文章をそれぞれの欄毎に対応結合させて一覧表に出力させるようにした請求項1乃至4のいずれかに記載の特許出願明細書又は実用新案登録出願明細書作成支援システム。






【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図1】
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【公開番号】特開2013−80279(P2013−80279A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218553(P2011−218553)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】