説明

犬用保持具

【課題】 容易に保持姿勢をとることでき、犬を拘束又は束縛せずに保持することができ、保持中に犬が暴れたり、保持具から飛び出したり落下することが無く、安静状態で保持することが可能な犬の外出用具を提供する。
【解決手段】 犬の体と接する保持手段と、保持手段を持ち上げるための把持手段と、保持手段と把持手段とを結ぶ連結手段とからなり、保持手段は、犬の足を挿通させるための足通し部と、犬の胸部と接する胸部保持部と、両後足間の内股と接する内股保持部とを備え、犬の保持又は運搬時には、犬の全ての足がぶら下がり状態となることを特徴とする。また、胸部保持部は、犬の胸骨から剣状突起とその近傍に渡って接する構造でも良いし、犬の首から剣状突起とその近傍に渡って接する構造でも良い。また、内股保持部は、犬の臀部から両後足間の内股とその近傍に渡って接する構造でも良い。また、保持手段に複数の足通し孔を設けて足通し部としても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散歩や外出時に、ペット犬を持ち上げた状態で保持又は運搬するために使用する犬用保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペット犬を飼う人が非常に増え、様々なペット関連グッズが開発・販売されている。その中に、ペットの散歩や外出時に使用する外出用具がある。従来の外出用具は、リードと呼ばれるペットの首輪に連結して使用する引き綱が一般的であった。しかし、近年は、小型犬や中型犬を飼う人が多いため、ペットを持ち運んだり、抱きかかえるためのバッグやスリングが人気である。
【0003】
ペット用バッグは、特開平10−215932号に示されたような、収容ゲージタイプや、トートバッグのような手提げ・肩掛けタイプがある。前者は、バッグの開口部を塞ぐ蓋やファスナー等が設けられており、犬をバッグ内に完全収容する点が特徴である。後者は、開口部を塞ぐ部材が無いため、開口部から犬が頭部を出すことができ、犬の出し入れが容易であるという点が特徴である。
【0004】
また、スリングは、環状又は長尺状の布を保持者が襷がけし、その布内に犬を収容して抱きかかえる保持具である。人間の赤ちゃん用抱っこ紐やスリングは従来から人気であったが、それをペット用として使用するケースが増えてきている。
【0005】
これらのペット用バッグやスリングは、収容中の犬がバッグやスリング内で自由に動けてしまうという問題があった。犬が体勢を変える程度に動くのは問題無いが、他の犬や猫等を認識したり、興奮状態になると、突発的に動いたり暴れたりしてしまう。そのため、保持バランスが崩れ、バッグやスリングを周囲にぶつけたり、バッグを落としてしまうということがあった。また、口の開いたバッグやスリングは、犬がバッグやスリングから落下してしまうということもあった。特に、バッグやスリング使用時は、人の腰から胸近辺の高さで犬を保持するため、この高さから犬が飛び出したり、落下すると、骨折したり、命に関わる大惨事となってしまっていた。
【0006】
このような問題に対し、特開2008−142322号公報では、バッグ又はスリングに犬の首輪と連結するハーネスや連結具を設け、犬の飛び出しや落下を防止する発明が開示されている。
【特許文献1】特開平10−215932号公報
【特許文献2】特開2008−142322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した特開平10−215932号公報、特開2008−142322号公報は、バッグ又はスリングから犬が飛び出したり落下することは防げるが、収容中に動いたり暴れたりすることは防止できない。これは、従来のバッグやスリング、いずれの公報においても、犬が接地状態で収容され、収容中の犬の周囲には壁が存在する構造をしていることが原因である。そのため、収容中の犬はどこでも足場や足蹴り箇所とすることができてしまい、自由に動いたり、暴れることが可能であった。この様な問題の解決には、犬を拘束、束縛する方法があるが、肉体的・精神的に負担が大きすぎる。
【0008】
また、特開平10−215932号公報は、開口部を塞いで収容するため、バッグ内が完全な閉塞空間となり、犬に多大なストレスを与えてしまうという問題も有している。また、特開2008−142322号公報は、首輪をハーネスや連結具と繋げて収容するため、犬が飛び出し又は落下した時に、首吊り状態となってしまい、非常に危険であるという問題も有している。また、バッグ又はスリングから犬を出し入れする度に、ハーネスや連結具と首輪を着脱する手間がかかり、非常に面倒であるという問題も有している。
【0009】
以上のことから、容易に保持体勢をとることができ、犬を拘束又は束縛せずに保持することができ、保持中の犬が安静状態になりやすく、保持中に犬が暴れたり、飛び出したり、落下することを防ぐことが可能な犬の外出用具の開発が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る犬用保持具は、犬の体と接する保持手段と、保持手段を持ち上げるための把持手段と、保持手段と把持手段とを結ぶ連結手段とからなり、保持手段は、犬の足を挿通させるための足通し部と、犬の胸部と接する胸部保持部と、両後足間の内股と接する内股保持部とを備え、犬の保持又は運搬時には、犬の全ての足がぶら下がり状態となることを特徴とする。本発明に係る犬用保持具は、犬が足場や足蹴り箇所の無い状態で空中に保持されると、身動きがとれないため保持者に身を任せるという犬の性質を利用したもので、保持中に全ての犬の足をぶら下がり状態で保持することで、犬を安静状態で保持しようとするものである。更に、保持中に犬が動いたり暴れても、足場や足蹴り箇所を無くした状態で保持することで、保持具から飛び出したり落下することを防ごうとするものでもある。
【0011】
また、胸部保持部は、犬の胸骨から剣状突起とその近傍に渡って接する構造でも良い。また、胸部保持部は、犬の首から剣状突起とその近傍に渡って接する構造でも良い。また、内股保持部は、犬の臀部から両後足間の内股及びその近傍と接する構造でも良い。
【0012】
また、足通し部は、保持手段に複数の足通し孔を設けてなる構造でも良い。この足通し孔の径は、20mm〜200mmであっても良い。また、犬の保持時において、足通し孔縁部が、犬の足の可動境界線上又は可動境界線に沿って位置する構造でも良い。また、隣り合う前記足通し孔が、犬の胸骨幅より隔離されて設けられているのが良い。
【0013】
また、保持手段及び連結手段が、一枚の布地製部材から形成され、隣り合う足通し孔を結ぶ線が、布地製部材の長手方向又は幅方向と略水平であっても良い。
【0014】
また、連結手段が略筒状で、保持手段が連結手段の一方の開口部側を閉塞状に設けられている構造でも良い。
【0015】
また、保持具外面には、保持手段を覆うカバー部材が設けられ、カバー部材及び保持手段間には収納空間が設けられ、収納空間は、足通し部を挿通した犬の足を宙に浮いた状態で収納可能である構造でも良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る犬用保持具は、犬の体と接する保持手段と、保持手段を持ち上げるための把持手段と、保持手段と把持手段とを結ぶ連結手段とからなり、保持手段は、犬の足を挿通させるための足通し部と、犬の胸部と接する胸部保持部と、両後足間の内股と接する内股保持部とを備え、犬の保持又は運搬時には、犬の全ての足がぶら下がり状態となるため、犬の足場や足蹴り箇所を無くした状態で保持することができ、犬が身動き取れずに安静状態となり、安定的に犬を保持することができる。更に、保持中に突発的に動いたり暴れても、犬の足場や足蹴り箇所が無いため、保持具から飛び出したり落下するおそれが無い。更に、保持中は足を動かすことはできるため、拘束感や束縛感を感じさせずに保持することができ、ストレスや恐怖感を感じさせること無く保持することができる。更に、保持具を使用する度に、恐怖心や不安を和らげ、安心感を感じさせることができるため、犬が保持者に身を任せて従順となる癖や習性が付きやすくなり、調教用、学習用、躾用の用具としても使用することができる。
【0017】
また、足通し部は、保持手段に複数の足通し孔を設けてなるため、保持具の製造が容易である。
【0018】
また、胸部保持部は、犬の胸骨から剣状突起とその近傍に渡って接するため、犬の胸部を安定的且つ確実に保持することができ、犬を保持するバランスが良くなり、保持者が疲れにくい。
【0019】
また、胸部保持部は、犬の首から剣状突起とその近傍に渡って接するため、頭部の重さを補助的に支持することができ、保持中の犬の体勢維持が困難でなくなる。更に、頭部や首を胸部保持部に預けて休憩することができるため、長時間使用でも犬が疲れにくい。
【0020】
また、内股保持部は、犬の臀部から両後足間の内股及びその近傍と接するため、犬が重心を体の後側に掛かて休憩することができ、保持中の犬が重心移動が可能となり、長時間使用でも犬が疲れにくい。
【0021】
また、足通し孔の径が20mm〜200mmであるため、保持手段が犬の足に引っ掛からずに足の付け根まで達することができ、犬に違和感やストレスを感じさせずに保持することが可能となる。
【0022】
また、犬の保持時において、足通し孔の縁部が、犬の足の可動境界線上又は可動境界線に沿って位置するため、犬が足を動かしても、前腕部や大腿部が保持手段に触れず、違和感やストレスを感じさせずに保持することができる。
【0023】
また、隣り合う足通し孔は、犬の胸骨幅より隔離されて設けられているため、前足間の胸骨を確実に保持でき、安定して犬を保持することができる。
【0024】
また、保持手段及び連結手段が、一枚の布地製部材から形成され、隣り合う足通し孔を結ぶ線が、布地製部材の長手方向又は幅方向と略水平であるため、保持具の製造が非常に容易である。更に、一枚の布地製部材を輪っか状とした時、足通し孔の形成位置によって保持する犬の体が輪っかの開口側を向くため、保持者が楽な姿勢・体勢で保持することができる。
【0025】
また、連結手段が略筒状で、保持手段が、連結手段の一方の開口部側を閉塞状に設けられているため、保持者の楽な姿勢・体勢で保持することができる。
【0026】
また、保持具外面には、保持手段を覆うカバー部材が設けられ、カバー部材及び保持手段間には収納空間が設けられ、収納空間は、足通し部を挿通した犬の足を宙に浮いた状態で収納可能であるため、保持具外に突出した犬の足を隠蔽することができ、見栄えが損なわれ無い。また、カバー部材が突出した足を保護するため、犬の足に危害が加わることを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明に係る犬用保持具2について図を参照にしながら説明する。図1及び図2は、本発明に係る犬用保持具2の使用状態を示した説明図である。図1は、スリング型保持具2を使用した状態を示した図で、図2は、バッグ型保持具2を使用した状態を示した図である。なお、これらの図は本発明を説明するためだけのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0028】
本発明に係る犬用保持具2は、犬22の体と接する保持手段4と、保持手段4を持ち上げるための把持手段16と、保持手段4と把持手段16とを結ぶ連結手段14とからなることを特徴とする。そして、犬22の保持又は運搬時には、犬22の全ての足がぶら下がり状態となることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る保持手段4は、図4又は図6に示されたように、犬22の足を通すための足通し部10と、犬22の胸部と接する胸部保持部6と、両後足間の内股と接する内股保持部8とを備えている。図4では、保持具2内に点線が示されているが、これは説明の便宜上、保持手段4と連結手段14との境界を示している。なお、本文中で使用する胸骨とは、胸郭の前面中央にある扁平骨で、肋骨と連結している骨を指すものとする。また、剣状突起は、胸骨体の下端に続く薄い扁平な突起部分を指すものとする。本発明は、犬22の胸部を保持する点が特徴であるが、特に、胸骨から剣状突起とその近傍に渡って保持する点が特徴である。犬22を抱く時、前足及び後足間の腹部を保持しがちであるが、犬は頭部が重いため、この様な保持の仕方では頭が下がり、前のめりになりやすい。この姿勢は、胸が圧迫されるため、疲労しやすい。そこで、胸骨から剣状突起にかけて保持することで、頭部と体の重量バランスをとり、保持者20及び犬22にとって楽な姿勢で保持しようとするものである。
【0030】
保持手段4の形状については、特に限定せず、胸部保持部6及び内股保持部8の形状、保持具2の形状や形態等に応じて適宜設定すれば良い。胸部保持部6の形状については、犬の胸部と接する形状であれば良く、胸骨から剣状突起とその周辺に渡って接する形状であれば更に良い。また、犬22の首から、前胸部、両前足間を渡って、剣状突起及びその周辺と接する形状であると尚良い。胸部保持部6が接する首の位置については、顔との境界近傍でも良いし、咽喉近傍でも良いが、胸部と首の境界に近すぎると、犬22が首を下げることができてしまうので、調節する必要がある。また、内股保持部8は、両後足間の内股及びその周辺と接する形状であれば良いが、臀部から内股及びその周辺に渡って接する形状であると更に良い。また、保持手段4は、犬22の前足及び後足間の腹部と接しない形状・構造でも良い。例えば、図9に示されたように、胸部保持部6及び内股保持部8間に間隙を設けても良い。また、胸部保持部6及び内股保持部8間を弛ませても良く、保持手段4の形状や形態、保持具2の形状等を考慮して適宜設定すれば良い。また、胸部保持部6及び内股保持部8は、図6に示されたように、一体的に繋がっていても良いし、図9に示されたように、分離していても良い。
【0031】
保持手段4の大きさについては、保持しようとする犬22の体長、体幅、腹部の大きさ等に応じて設定するのが好ましいが、犬種、体格、体重、年齢等によって体型等が異なるため、幅10cm〜30cm、長さ20cm〜60cmの範囲内で適宜設定すれば良い。また、保持手段4の面積や形状を幾つかのパターンにグループ分けし、犬種や体格等に応じて選択して設定しても良い。この時、胸部保持部6としては、少なくとも犬22の剣状突起と接することが可能な大きさを有しているのが良い。超小型犬以上の大きさの犬22は、剣状突起の幅が20mm程度であるため、胸部保持部6もこの数値以上の幅を有しているのが良い。胸部保持部6の長さについては、首から剣状突起までの距離が犬種や体格等によって異なるため、適宜設定すれば良い。また、内股保持部8についても、犬種、体格、体重、年齢等によって両後足間の大きさや面積が異なるが、幅3cm〜30cm、長さ5cm〜30cmの範囲内で適宜設定すれば良い。
【0032】
保持手段4の材料としては、犬22を長時間保持できる程度の強度を有し、適度な弾力性や柔軟性を有する材料が良い。具体的には、布、ウレタン、ゴム、スポンジ等が良いが、他の材料でも使用可能である。また、胸部保持部6と内股保持部8を別の材料で形成しても良い。例えば、胸部保持部6を若干硬度の高い材料で形成し、内股保持部8を柔軟な材料で形成しても良い。更には、胸部保持部6と内股保持部8を同一材料で形成し、前足及び後足間の腹部と接する箇所を異なる材料で形成しても良い。例えば、胸部保持部6と内股保持部8をある程度強度を有する材料で形成し、前足及び後足間の腹部と接する箇所に収縮性を有する材料で形成すれば、胸部保持部6、内股保持部8、足通し部10が若干移動するため、犬22の体格や体型を問わずに保持することが可能となる。この様に、保持手段4を複数の材料を組み合わせて形成しても良い。
【0033】
また、足通し部10については、保持手段4外へ犬22の足を挿通させることができれば、どの様な形態でも良いが、足通し部10挿通時に足が締め付けられず、保持中でも足を動かすことができるような形態や形状であると更に良い。具体例としては、図4又は図6に示されたように、保持手段4に足通し孔12を設けるのが良いが、図8に示されたように、保持手段4と連結手段14の間に間隙を設け、この間隙を足通し部10としても良い。
【0034】
足通し部10として足通し孔12を設ける場合は、図4又は図6に示されたように、一つの孔に一足を挿通させるように4つの孔を設けるのが良いが、図7に示されたように、孔を2つ設け、一つの孔に前後の足を同時に挿通させても良い。一つの孔に両前足又は両後足を同時に挿通させる構造も可能であるが、この場合は、犬22の頭部の重みで首が下がってしまい、孔へ両前足を挿通させる時に、頭が孔に潜ってしまうおそれがある。また、犬22の前胸部は発達して隆起していることが多く、孔の縁部が胸部の隆起部に引っ掛かり、窮屈な体勢になるおそれもある。また、犬22の後足は、大腿部から臀部にかけて平坦状になっているため、孔へ両後足を挿通させた時に、孔の縁部が臀部まですり抜けてしまい、尻側から抜け落ちるおそれがある。以上のことから、足通し孔12を2つ設ける場合は、図7に示されたように、左右どちらかの前後の足を同時に入れる構造が良い。足通し孔12の大きさについては、図4又は図6に示されたように4つの孔を設ける場合は、孔の径を20mm〜200mm程度とすれば良い。特に、後足の大腿部は発達しているので、後足を挿通させる孔は、前足を挿通させる孔よりも大きく形成しても良い。また、図7に示されたように2つの孔を設ける場合は、長さ20〜50cm程度、幅20mm〜40mm程度の大きさとすれば良い。また、図4や図6中では、足通し孔12の形状が正円となっているが、楕円形でも良いし、その他の形状でも良い。また、全ての孔を同一形状で形成すれば、犬22の足を挿通させる箇所を選択できるため、犬22の向きを特定せずに保持することができる。これに対し、図10又は図11に示されたように、保持する犬22の向きが予め決められている保持具2の場合は、前足を挿通ための孔と後足を挿通ための孔をそれぞれ設けても良い。
【0035】
また、犬22の足を足通し孔12に挿通した時、足通し孔12の縁部が、図14及び図15に示されたように、犬22の足の可動境界線上又は可動境界線に沿って位置するのが良い。可動境界線とは、犬22の足と胴体の境界で、足の動作時に移動する部分と、不動又は微動部分の境界で、具体的には、脇周りから肩周り及びその近傍である。足通し孔12の縁部が、この可動境界線上また可動境界線に沿って位置することで、保持中でも足を自由に動かせると共に、足通し孔12の縁部が前腕部又は大腿部に接触しなくなり、違和感やストレスを与えるおそれが無くなる。
【0036】
また、足通し部10の設置箇所については、足通し部10の形態、孔や間隙の形状等を考慮して適当な位置を設定すれば良い。足通し孔12を形成する場合、隣り合う足通し孔12の最も近接する箇所の距離が、犬22の胸骨幅より隔離されて設けられているのが良い。この幅よりも近接すると、保持手段4にかかる重量をバランス良く保持することが出来なくなるおそれがある。具体的な数値としては、4cm以上離れているのが良い。
【0037】
また、足通し部10の縁部や、犬22の足と接する保持手段4には、擦れ防止、衝撃吸収等のためのクッション部材やパット部材等を設けても良い。なお、足通し部10や足通し孔12の縁部等に収縮材料を用い、足通し部10や足通し孔12を拡張させて足を挿通させる方法があるが、足に物体がまとわりつくような感覚を与えてしまい、ストレスとなるおそれがある。よって、足通し部10や足通し孔12を収縮可能とするよりは、足通し部10や足通し孔12の縁部が足に接触しないように、十分なスペースを設けたり、足通し部10や足通し孔12の縁部が垂れ下がる構造の方が良い。
【0038】
次に、本発明に係る連結手段14は、保持手段4と把持手段16とを結ぶ部材を指す。なお、本発明では連結手段14と称しているが、犬22を保持するための補助的部材、犬22の体を隠蔽するための部材、装飾のための部材等であっても保持手段4と把持手段16との間に設けられていれば連結手段14とする。従って、連結手段14の形状、形態、保有する機能等については、保持具2の形状や形態等に応じて適宜設定することができる。連結手段14の材料については、適度な強度を有する材料が良く、柔軟性を有する材料であれば更に良い。具体例としては、布、ゴム、皮革等が良いが、他の材料でも使用可能である。また、保持手段4や把持手段16と同一の材料で形成しても良いが、異なる材料で形成しても良い。
【0039】
次に、本発明に係る把持手段16は、犬22を積載した保持手段4を持ち上げ、運搬、保持及びその状態を維持可能な手段を指す。把持手段16の形状や形態としては、保持具2の形状や形態等に応じて設定すれば良い。例えば、図5に示されたようなバッグ型保持具2の場合は、手提げ用の取っ手部材、袈裟懸け又は肩掛け用の帯部材や肩ベルト等を把持手段16とするのが良い。また、図3及び図4に示されたようなスリング型保持具2のように、保持手段4、連結手段14、把持手段16が一体形成され、それぞれの部材や手段が明確に区別できない場合は、人が手に持つ部位、首に掛ける部位、肩に掛ける部位を把持手段16とすれば良い。また、把持手段16が肩や手に食い込むことを防止するために、把持手段16にクッション部材やパット部材等を設けても良い。
【0040】
また、保持具2の外面には、図12に示されたように、保持手段4を覆うカバー部材18が設けられていても良い。このカバー部材18は、保持手段4との間に間隙又は空間を設けて設置され、この空間内に足通し部10から挿通した犬22の足が宙に浮いた状態で収納可能であるのが良い。カバー部材18は、保持具2の外面に他の部材を取り付けて設けられても良いが、図13に示されたように、保持具2内に保持手段4を設け、保持手段4より下の箇所をカバー部材18としても良く、その形態や設置方法については適宜設定すれば良い。カバー部材18の材料については、布、ゴム、樹脂、金属等どの様な材料でも使用可能であり、カバー部材18の設置目的等に応じて適宜設定すれば良い。また、カバー部材18は、保持具2と着脱可能に取り付けられていても良い。例えば、保持具2の一部にカバー部材18を収納する収納部を設け、必要に応じて収納部からカバー部材18を取り出して設置する構造であっても良い。
【0041】
また、本発明に係る保持具2は、保持手段4と連結手段14が着脱可能な構造であっても良い。前記したとおり、犬22の種類、体重、体格、年齢等によって、それぞれ大きさや足の位置が異なるため、足通し部10の形状や形成位置等の異なる保持手段4を複数用意し、条件に応じて取り替えれば、同一の保持具2で様々な大きさや体格の犬22に対応することが可能となる。保持手段4と連結手段14を着脱可能とする方法としては、保持手段4及び連結手段14に、種々の連結具や手段、嵌合具や手段、係合具や手段等を設けるのが良い。また、図5又は図12に示されたようなバッグ型保持具2の場合は、バッグの底板を保持手段4として形成し、連結手段14に突起や係止部材を設ければ良い。保持手段4と連結手段14を着脱可能とする場合は、両部材の連結が容易に外れず、保持手段4に犬22を積載する時や、犬22の保持中に連結が外れないような連結方法や構造であると更に良い。
【0042】
また、本発明に係る保持具2の形状としては、図2及び図5に示されたようなバッグ型、または、図1及び図3に示されたようなスリング型のいずれかの形状が良い。これらの形状は、保持中に保持者20と犬22が密着しやすくなる。本発明に係る保持具2を使用すると、足場や足蹴り箇所が無い状態で犬22が保持されるため、犬22に不安感や恐怖心を与えてしまうが、保持者20と密着することで、安心感を感じ、保持者20に身を預けやすくなる。よって、保持具2を使用時には、犬22と保持者20が密着しやすい形状が良い。また、犬22及び保持者20が、保持中に互いの体温を感じられるような形状、形態、構造、材料等で形成されると更に良い。
【0043】
バッグ型保持具2としては、略筒状の連結手段14の一方の開口部を、保持手段4が閉塞するように設けられるのが良く、図6に示されたように、バッグ又は袋の底部位置に保持手段4が設けられる構造が良い。本発明に係る保持具2は、足場や足蹴り箇所を無くした状態で保持するため、保持具2から犬22が飛び出したり落下するおそれは無く、バッグ型保持具2は、開口部を必ずしも塞ぐ必要は無い。また、雨よけや風よけ用に、開口部を塞いだり、犬22の体に被せる部材を設けても良い。また、図10又は図11に示されたように、犬22が顔や首を動かし易くなるように、連結手段14の一部をU字形に形成したり、遊び部を設けても良い。図中では、これらの箇所が一つしか設けられていないため、保持する犬22の向きが特定されてしまうが、当該箇所を複数設け、保持する犬22の向きを選択できるようにしても良い。
【0044】
また、スリング型保持具2としては、保持手段4及び連結手段14で犬22の腹部、側部、臀部、胸部を覆う又は包みこむような構造が良い。スリング型保持具2は、保持手段4、連結手段14を一枚の布地製部材から形成するのが良いが、例えば、保持手段4、連結手段14や把持手段16をそれぞれ別の部材で形成し、組み合わせて保持具2としても良く、構造については適宜設定すれば良い。また、図3に示された保持具2は、図4に示されたような長尺状の保持具2の両端部を連結又は結びつけ、輪っか状として使用するタイプのスリングであるが、予め輪っか状となっているタイプのスリングでも良く、保持具2の形態については適宜設定すれば良い。また、スリング型保持具2の場合は、図4に示されたように、隣り合う足通し孔12を結ぶ線が、布地製部材の長手方向又は幅方向と略水平であるのが良い。つまり、保持具2使用時に、スリングの輪っか開口部側に犬22の頭部及び臀部が位置するように、足通し部10又は足通し孔12を設けるのが良い。
【0045】
以上が本発明に係る犬用保持具2に関する説明であるが、本発明の目的を逸脱しない限り、種々の条件や設定は変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に掛かる犬用保持具2は、散歩や外出時に犬22を保持するための用具であるが、上述したとおり、保持具2を使用するたびに犬22が保持者20に身を任せ、従順になる癖や習性が付きやすくなることから、調教用、教育用、躾用のための用具としても使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る犬用保持具の使用例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る犬用保持具の使用例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る犬用保持具の一実施の形態を示す説明図である。
【図4】図3に示された犬用保持具の展開図である。
【図5】本発明に係る犬用保持具の一実施の形態を示す説明図である。
【図6】図5に示された犬用保持具の部分展開図である。
【図7】足通し部の一実施の形態を示す説明図である。
【図8】足通し部の一実施の形態を示す説明図である。
【図9】保持手段の一実施の形態を示す説明図である。
【図10】本発明に係る犬用保持具の一実施の形態を示す説明図である。
【図11】本発明に係る犬用保持具の一実施の形態を示す説明図である。
【図12】本発明に係る犬用保持具の一実施の形態を示す説明図である。
【図13】図13に示された犬用保持具の部分展開図である。
【図14】本発明に係る犬用保持具の使用状態を示す説明図である。
【図15】本発明に係る犬用保持具の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
2 保持具
4 保持手段
6 胸部保持部
8 内股保持部
10 足通し部
12 足通し孔
14 連結手段
16 把持手段
18 カバー部材
20 保持者
22 犬

【特許請求の範囲】
【請求項1】
犬を持ち上げた状態で保持又は運搬するための犬用保持具であって、犬の体と接する保持手段と、該保持手段を持ち上げるための把持手段と、該保持手段と該把持手段とを結ぶ連結手段とからなり、前記保持手段は、犬の足を挿通させるための足通し部と、犬の胸部と接する胸部保持部と、両後足間の内股と接する内股保持部とを備え、犬の保持又は運搬時には、犬の全ての足がぶら下がり状態となることを特徴とする犬用保持具。
【請求項2】
前記足通し部は、前記保持手段に複数の足通し孔を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の犬用保持具。
【請求項3】
前記胸部保持部は、犬の胸骨から剣状突起とその近傍に渡って接することを特徴とする請求項1又は2に記載の犬用保持具。
【請求項4】
前記胸部保持部は、犬の首から剣状突起とその近傍に渡って接することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の犬用保持具。
【請求項5】
前記内股保持部は、犬の臀部から両後足間の内股及びその近傍に渡って接することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の犬用保持具。
【請求項6】
前記足通し孔の径が20mm〜200mmであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の犬用保持具。
【請求項7】
犬の保持時において、前記足通し孔縁部が、犬の足の可動境界線上又は該可動境界線に沿って位置することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の犬用保持具。
【請求項8】
隣り合う前記足通し孔は、犬の胸骨幅より隔離されて設けられていることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の犬用保持具。
【請求項9】
前記保持手段及び前記連結手段が、一枚の布地製部材から形成され、隣り合う前記足通し孔を結ぶ線が、該布地製部材の長手方向又は幅方向と略水平であることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の犬用保持具。
【請求項10】
前記連結手段が略筒状で、該保持手段が、該連結手段の一方の開口部側を閉塞状に設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の犬用保持具。
【請求項11】
前記保持具外面には、前記保持手段を覆うカバー部材が設けられ、該カバー部材及び該保持手段間には収納空間が設けられ、該収納空間は、前記足通し部を挿通した犬の足を宙に浮いた状態で収納可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の犬用保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−136672(P2010−136672A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315839(P2008−315839)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(508047244)合資会社 家庭動物総合研究所 (3)
【Fターム(参考)】